幼「何故だい?」
男「俺たち、幼馴染だろ?」
幼「幼少期から仲良く過ごしてきたからね」
幼「まぁ、そう言っても差し支えないだろうね」
幼「だからってキミが気にするような事じゃあないんだよ」
男「だけど!」
幼「立候補してきたとは言え、副会長を指名したのは私だし」
幼「半年間、彼がしていた事に気付かなかったのも私」
幼「つまり生徒会長である、私に全責任がある」
男「だからってあのアホどもがしたことの責任を…」
男「何で全部、幼が取る事になるんだよ!」
幼「全部ではないよ、男」
幼「私は私の本分を果たすだけだよ」
男「本分って…」
幼「学校というコミュニティ内でのリーダーとして選ばれた私には」
幼「責任という物があるんだよ、男」
男「…」
幼「そんな目をしないでくれ、男」
幼「私まで悲しくなってしまうじゃないか」
男「…」
3日前
幼「…案外遅くなってしまったな」
幼「最近は日が落ちるのも早い」
幼「早く職員室に鍵を戻して、帰ろう」
幼「…?三階のあの教室…カーテンの隙間から光が漏れているな」
幼「完全下校時刻は過ぎている…消灯し忘れか?」
幼「いや、そもそも、あの角の教室は使われていないはずだな」
幼「…見てくるか」
・
・
・
幼「…中から話し声が聞こえるな」
副会長「あ、それロン!メンタンピンドラ3!」
不良a「ぎゃー!やられたー!」
不良b「オーラスでマクられるとはな…」
副会長「ハハハ、これで俺がトップか?」
不良c「お前たまにすげーな」
副会長「頭の出来が違うよ、ハハハ」
不良a「マージャンって、頭の良さ関係あるか?」
副会長「フフ。ある程度は運だけど、頭の良さは関係あるさ」
副会長「さぁ、負けた分払えよ?」
不良a「わかってるよ、おらよ」
不良b「おう、今日はそろそろ帰るか?」
副会長「もう半荘やろうぜ?」
不良c「タバコ切れた…集中できねー」
副会長「メンソールで良ければ一本やるよ」
不良c「お、ありがとよ」
不良a「じゃ、あと半荘いくとすっか!」
幼「…君たち。下校時間は過ぎているが?」
副会長「!!!!」
不良達「あぁん?」
幼「副会長…くわえ煙草で賭けマージャンか」
幼「窓も開けず換気もせず」
幼「ゴミ溜めの匂いだな、これは」
副会長「か、会長」
不良a「あ?こいつがいつも話してるバカな生徒会長様か?」
不良b「何だよ、結構可愛いじゃん」
不良c「あれ?ここ、絶対バレないんじゃなかったか?」
幼「こんな時間に、使われていない教室の電気が付いていたんだ」
幼「不審に思うのは当然だろう?」
副会長「な、なぜこんな時間まで残って居たんですか」
幼「図書館の司書先生に頼まれてね」
幼「さっきまで図書室で手伝いをしていたんだ」
副会長「…」
幼「申し開きがあるなら聞くが?」
副会長「…黙ってろって言っても、聞かないよな。アンタなら」
幼「言葉使いがよろしくないな。普段の口調は嘘だったという訳か」
副会長「あぁ、そうだよ!」
副会長「俺は大学へ行く時に有利になると思って、生徒会に入ったんだ!」
副会長「幸い、仕事は、有能なアンタと、アンタの子分が片付けてくれるからな!」
幼「男は私の子分じゃない」
副会長「知るか!だいたい俺は生徒会長になるはずだったのに」
副会長「アンタが…アンタなんかが選ばれたから…」
幼「…」
副会長「知ってると思うが、俺の親は市長なんだぜ?」
副会長「エリートなんだ!」
副会長「その俺より上の立場のお前が憎かった!」
不良a「なぁ、その話し長いのか?」
副会長「黙れよ!クソが!」
不良a「ぁあ?誰がクソだと?」
幼「…いい加減にしないか、見苦しい」
幼「そこの3人も含めて、生活指導に報告させてもらう」
幼「…では、失礼する。この臭いにもう耐えられない」
副会長「…頭が良いと思っていたけど、買いかぶりだったみたいだな」
幼「…何だい、副会長。言いたい事があるなら言うと良い」
副会長「そのまま帰す訳ないだろって言いたいんだよ、バカか?」
不良達「おう、やっちまおうぜ!」
幼「古今東西、悪の栄えた試しは無し、だよ」
副会長「このクソが!」
幼「…どうやら殴られないと、解らないようだね」
・
・
・
幼「さて」
幼「すぐに職員室へ行き、先生を呼んでこよう」
幼「大した怪我もないはずだが、救急車でも呼ぼうか?」
不良達「」
副会長「…覚えていろよ…親父に言いつけてやるからなっ」
幼「お好きにどうぞ」
副会長「学校に居られなくしてやる!」
幼「それだけ大声が出せるなら、救急車は必要ないようだね」
・
・
・
幼「先生達も事情は分かっているさ」
幼「だからこそ、退学ではなく、私は自宅謹慎3日で済んだんだよ」
幼「副会長は自主退学、不良達は退学になってしまったがね」
男「でも、幼は生徒会長を…」
幼「まぁ、それは仕方のない事だよ」
幼「暴力事件を起こした人間が、生徒の見本となれる訳がない」
男「悔しくないのかよ?」
幼「それが不思議と悔しさは無いよ」
幼「…いや、嘘だな」
男「やっぱり悔しいんだな?」
幼「違う。私がついた嘘とは、悔しいと思っていないと言う事ではないよ」
男「ん?」
幼「私は全然悔しくない理由を、明確に分かっているんだ」
幼「不思議でも何でもないんだよ」
男「相変わらずの遠回しな物言いだな、幼」
幼「歯痒いかい?」
男「付き合い長いんだ。別になんともないよ」
幼「フフ。そうかい」
男「で?もちろん理由は教えてくれるんだろうな?」
幼「もちろんさ」
幼「あぁ、これは良い機会かもしれないね」
幼「私の思いの丈を伝えてしまおうか」
男「思いの丈?」
幼「私はね、男」
幼「生徒会長として、全校生徒の為を思い、行動していた訳ではないんだよ」
幼「ただ一つの事だけを想い、行動していたんだ」
男「何の事だ?」
幼「ふふ。ちょっと昔ね」
幼「ある事をしたら、ある人に褒められた」
幼「私はまたそれが欲しかっただけなんだ」
男「ん?」
幼「その人に褒められただけで、私は何でも出来た」
幼「体に羽根が生えたら、きっとこんな感覚なんだろうとさえ思えた」
幼「どんなに大変な事も、その人の一言で」
幼「全部、軽々と乗り越えられた」
幼「単純だろう?」
幼「だから別に良いんだ」
幼「庶務の後輩男君は、しっかり者だから」
幼「立派に次の生徒会長を務めてくれるよ」
…過去…
保育園の先生「はーい、それじゃあみんなー」
保育園の先生「仲の良い人と4人で輪になってくださーい」
園児「はーい」
幼「男くん、いっしょにわになろ?」
男「いいよっ」
幼「友くんと、幼友ちゃんもいっしょにやろう?」
友「わーい」
幼友「はーい」
男「幼ちゃんはえらいね!」
幼「えー?なにがー?」
男「みんなでなんかするとき、いつでもいちばんにやるよね!」
男「えらい!」
幼「えへへ。そうかな?」
男「えらいよ、幼ちゃん」
ナデナデ
幼「男くん、はずかしいよー」
男「えらい人はあたまナデナデしてもらえるんだよ!」
幼「えへへ。ありがとう、男くん」
・
・
・
男「幼ちゃん。委員長頑張ってね!」
幼「うん。頑張るよ」
男「もう4年連続で委員長だね!凄いよ幼ちゃん」
幼「えへへ。そうかな」
男「うん。偉い!」
ナデナデ
幼「お、男くん…恥ずかしいよ」
男「偉い事した人は頭を撫でて貰えるんだよ!」
ナデナデ
幼「あ、ありがとう。男くん」
・
・
・
男「幼、空手大会優勝おめでとう!」
幼「ありがとう、男君」
男「小学生の頃から頑張ってきたもんな」
幼「フフ。そうだね」
男「委員長やら、児童会長やらをやりつつ」
男「空手、頑張ってたもんな」
幼「体を動かすのは楽しいし」
幼「精神の鍛錬にもなるからね」
幼「それに、男君が色々手伝ってくれたから、ここまで頑張れたんだよ」
幼「男君、いつもありがとう」
男「いやいや。頑張ったのは幼だろ?」
男「俺はほんの少し手伝っただけだよ」
男「偉いのは幼の方!偉いぞっ幼」
ナデナデ
幼「…ありがとう、男君」
・
・
・
幼「それじゃあ、生徒会に入るつもりはないんだね?」
男「あぁ。今まで通り、自主的に幼の手伝いをするって感じで頼む」
男「全校生徒の前で壇上に上がるなんて、ぞっとする」
男「俺、ヘタレだからさ」
幼「そうかい…では立候補してきた彼を副会長に指名しよう」
男「大丈夫。生徒会長、頑張れよ!」
男「いつも隣りで見てたからわかる」
男「幼ならやれるよ」
幼「そうかな?」
男「間違いないよ」
ナデナデ
幼「…頑張るよ」
・
・
・
幼「保育園の年長組の時、班分けの時、男君が私を褒めてくれた」
幼「フフフ。幼いながらに感じる事があったんだよ」
幼「それからかな。私は君に褒めて欲しくて」
幼「ただそれだけが欲しくて、頑張っていたんだよ」
幼「だから、生徒会長に固執していないんだよ」
男「幼…」
幼「私は男君が思っているような、善人ではないという事さ」
幼「偽善の塊みたいな存在だよ」
幼「幻滅されても仕方のない事だけど」
幼「この気持ちは偽れないよ、男」
幼「私は幼い頃から、ずっと君の事が好きだったんだ」
幼「ただ君だけを見ていたんだよ」
幼「でもこれは私の一方的な想いだから…」
幼「君が気にする事じゃないよ」
男「気にするよ!」
幼「!」
男「幼っ!俺も思いの丈を伝えるぞ!」
幼「…なんだい?」
男「幼のその気持ちは一方的なんかじゃない!」
男「俺も、幼の事が好きだ!」
幼「ほ、本当に?」
男「俺が嫌いな奴の側にずっと居るわけがない。わかってるだろ?」
幼「…そうだね」
男「理由はどうあれ、幼は何をするのも一生懸命だった」
男「俺はそれを隣りでずっと見てきた」
男「一生懸命に頑張る幼の事が大好きだ」
男「できればこれからもずっと、幼の側に居させてくれ」
幼「…フフフ。それは愛の告白と受け取っていいのかな?」
男「あぁ。そのつもりで言った」
幼「私の勘違いではないんだね?」
男「俺、はっきり言葉にしただろ?」
幼「あぁ、夢みたいで、信じられないよ」
男「なら改めてもう一回言うぞ」
男「幼さん、俺とお付き合いして下さい」
幼「…こんな、偽善者な私で良ければ、貴方の彼女にしてください」
幼「ずっと…私の側に居て下さい
・
・
幼「良かったよ」
男「何がだ?」
幼「実はね…大学には生徒会なんて無いだろうから」
幼「もう褒めてもらえないな…などと思っていたんだ」
幼「滑稽だろう?」
男「もう良いだろ、幼」
ギュッ
幼「なっ…」
男「俺に褒められる事で幸せになるなら、いつでも褒めてやるよ」
男「幼の良い所なんて、山ほど知ってるぞ?」
男「毎日褒めてやるからな?覚悟しろよ」
幼「嬉しいよ、男」
幼「…ずっと一緒に居て、ね、男」
男「…おう」
おわり
これで終わりです
読んでくれた人がいたら嬉しいです
次スレは
幼馴染「大丈夫だからね」男「何がだ」
ってタイトルで立てたいと思ってます
では。
乙
いつも疑問だったんだがタイトル先に考えてストーリーねってるんだろうか
深い意味はないんだけど
読んでくれたみなさん、本当にありがとうございます
>>43
自分はワンシーンを妄想して、そこからタイトルになりそうなセリフを考えて
それをスレタイにしています
スレタイを話しの途中にも出すようにしてます
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