女「き、今日こそは靴箱にラブレターを入れるんだ……」
女「思い切りが大事だって言われたし……」
女「誰もいないよね…」
女(ずっと好きだった男君…育ちがよくて恰好よくって…そして優しくて)
女(私が落ち込んでいた時に差し出してくれたハンカチ…あれ本当にうれしかったんだよ)
女(男君…)ドキドキ
女「よし、入れるぞ!!」カチャ
バシッ
女「えっ?」
メイド「……」
女「…」
女(え、今手紙を入れようと思ったら手を払われたような…)
メイド「……」
女「…」
女(拾わなくっちゃ…)カサッ
女「よし、入れるぞー」
バシッ
メイド「……」
女「…」
女「あのぅ……何か?」
メイド「その手紙はお通しできかねます」
女「えっ…えぇ?」
女(なんでこの人にこんなこと言われなくちゃいけないんだろう…)
メイド「薄さからして物理的なトラップとしてそれほど脅威ではない…ところを見ると」
メイド「主人の精神を侵すものであるという可能性が高い、そのようなものが主人の手に渡ることはこの私が許しません」
女(この人男君に仕えるメイドさんなんだ…)
女「ち、違います…そんな物騒なものは入っていませんよ」
メイド「では私が内容を拝見しましょう、それで主人にその手紙を渡すかの決定します」
女「えぇっ!?」
メイド「何か不都合でも?」
女「そ、その……他人に読まれるのはいくらなんでも」モジモジ
メイド「やはり疚しいものが入っているのですね」ギロッ
女「そ、そうじゃないです!決して疚しいものではないです!」ブンブン
メイド「では読ませてください、読後に判断を下します」
女(こんな文章読まれたら恥ずかしくて死んじゃうよぉ……)
メイド「さぁ早く」
女「し、失礼しました~~~!!!」ダッ
メイド「あっ、待ちなさい!!」
ヒラリ
メイド「……あの生徒、手紙を落として行ってしまったけれど」
カサッ
メイド「…一応あの生徒の所有物ですし、また会ったときにでも渡しましょう」
女友母「女友ー、女ちゃんが来てくれてるわよ」
女友「んー、上がって来てって言ってー」
ダダダダダダダ
女友「むっ…大人しい女がこれほど慌ただしく階段を上がってくるとは…さては何かあったな」
女「女友ちゃーん!」ウワーン
女友「何?靴箱に入れてもう返信きたの?ドンマイ」
女「違うよ~!手紙を入れられなかったんだよ~!!」
女友「えー…男の靴箱の場所知らない……なんてことあんたに限ってあるわけないか」
女「実はかくかくしかじか!」
女友「メイドぉ?」
女友「ウチの学校でメイドなんて見た事ないよ」ゲラゲラ
女「本当なんだってばー!ほら手形!」グイッ
女友「いや手形を見せられてもその人がメイドだって認証しかねるけどね…」
女友「けど男ってボンボンらしいし仕えるメイドがいる可能性はなきしにもあらずって感じなのかー」
女友「いや…にしても男と同じクラスになって2年だけどそんな人がいつの気付かなかったな…」
女「だからいたんだってー!」
女友「指示された通り見せれば事はうまく行ったんじゃないの?」ニヤニヤ
女「で、できるわけないでしょ!!それにプライバシーの侵害だよ!」
女友「あはは、ごめんごめん」
女「もう……」
女「やっぱり直接言うしかないのかな…」
女友「ん、多分同じことになるんじゃない?」
女「え?」
女友「だって手紙渡すくらいでそんなに警戒されるんだからさ」
女友「告白するって男を人気のない場所に連れ出すってアンタの場合同義なわけでしょ?」
女「え…だって告白ってそんなもんじゃないの……?」
女友「そんなのそのメイドさんが許すわけないじゃん、男の身を案じてるのに」
女友「立ち会わせてもらいますなんて言うんじゃない?告白シーン超シュール」ゲラゲラ
女「そんなの絶対イヤだよ~!!」ガビーン
女友「SMSとか使えたらいいんだけどねー……男使ってなさそうだし」
女友「そこらへんもやっぱ管理されてるか…
女「女友ちゃん…いっそのこと女友ちゃんが私の想いを伝えてよ…女友ちゃんなら信用されてそうだし」
女友「あー無理無理、私馴れ馴れしく話してるけど男と全然仲良くないから」
女「ええっ!」ガビーン
女友「でもでもー、やっぱり直接男に伝える方がやっぱ相手としてはグッと来るよー?」
女友「それにもし自分が他人にさー、『あいつお前の事好きなんだって』なんて言われてもイマイチ信用できないっしょー?」
女「それは言う人のさじ加減だと思うけど…」
女友「まぁとりあえずあともうちょっと頑張ってみなって!私も協力してやるからさ」バンバン
女「う、うん……」
女友「まずそのメイドさんをどうにかしない事には始まらないなー」
女「」ゴソゴソ
女友「何やってるの?」
女「今日渡し損ねた手紙捨てようと思って…よく考えたらすごく駄文かもって…恥ずかしい」カァァァ
女友「いやいや恥ずかしくないラブレターとかないから」ノシ ナイナイ
女「あれっ…」
女友「ん、どうしたの?」
女「ない……ラブレターがない!!」ガビーン
女友「あらら」
女「どうしよどうしよ!!落としちゃった!!」
女友「そりゃ災難だね~…言った話だと相当慌ててたんじゃない?
女「だ、だって恥ずかしかったし怖かったし…」
女友「まあ誰かが拾ってくれるんじゃない?」
女「そんなー!困るよ!!」
女「もし明日誰かがそれを拾ったとしようよ」
女友「うん」
女「稚拙な表現で綴った恋文を誰かが面白半分で学校にさらしあげたりしたら!」
女友「いやいやないない、普通の生徒が綴った恋文晒したくらいで盛り上がらないって」
女友「せいぜいクラスでちょっかいかけられるくらい」
女「女友ちゃんは他人事だからそんな事が言えるんだよ!」
ザワザワ
男子生徒『おいおいあいつかよあの恥ずかしい文章書いたやつ』
女子生徒『うっわwダッサー……このご時世にラブレターとか時代錯誤ー』
男子生徒『大好きな男君へー、初めて会った時の事を覚えていますか?』
女『やめてーー!!!』
男子生徒『ププーー!他人だけど声に出すのも恥ずかしいわこれーwww』
女子生徒『ツイッターに晒しあげちゃおー』スマホポチー
男子生徒『2ちゃんに上げるわ、あいつらエグい事するからwww面白いwwww』
女『イヤーーーーーーー!!』
男子生徒2『おいおい緊急集会ってなんだよ…誰かが事故ったりでもしたのか?』
男子生徒『まぁ見てろって…すぐ何があったのかわかるからw』
ザワ…ザワ…
校長『ええー放課後に時間を取って申し訳ない、しかし緊急集会を開かなければならない事態が発生したのです』
校長『これは学校全体に関わる問題です』
ダレガナニヤラカシタンダー?ザワザワ…
校長『昨日、一人の生徒がこの手紙を拾って私のもとに持ってきました』
校長『一見何の変哲のない手紙に思えますが、その内容が大問題なのです』
女『』ビクビク
校長『読み上げます』
校長『えー……Dear男君』
校長『女です。こんな粗末な手紙を出して申し訳ありません』
教頭『そう思ってるなら最初から出すなしwwww』
校長『それなwww』
ワハハハハハ!
女(ひぃいいい~~~)ビクビク
校長『……ですがこの想いは積るに積もって抑えられないほどになってしまったのです』
校長『初めて会ったときのことを覚えていますか?私が泣いていた時にハンカチを差し出してくれましたよね?』
男『覚えてねぇ~っすわーーーwwwww』
ワハハハハハハ!
女『うぅ…』
校長『うっわ…これ以上恥ずかしくて読めないので以下略www』
ワハハハハ!
校長『これを書いた彼女は一介の生徒で、学力がこの学校できわめて平均的な生徒です』
校長『つ ま り、このようなダメな文章を書く生徒がこの学校の平均的な学力の持ち主なのです』
ザワザワ
校長『稚拙な表現に加え段落をつける場所も粗雑、曖昧に文章をぼかし明確にかかない』
校長『私はガッカリしました!!国語教育を受けているにもかかわらずこんな文章を書くのかと!』
男子生徒『せんせーwwそんな痛い文章を書くのはそいつだけだと思いまーすwwww』
校長『え?やっぱそう?wwww』
ワハハハハ
女(やめてぇ…やめてぇ!!)
男『やだわ…こんな文章読んでたら別の意味で心痛くなるわ』
男『俺の前に二度と顔出さないでくれる?』
女子生徒『ふ~られた~ふ~られた~!!』
男子生徒『一生言い続けてやるからなwwww』
女『ひいいい!許してぇぇぇぇ!!!』
○
◌
・
女「なんて事に…恐ろしくて学校いけないよ…」
女友「あんたの被害妄想スケールでかすぎだわ…たかが恋文くらいで皆ケチつけすぎでしょ…」
女友「わかったわかった、一緒に探しに行ってあげるから…」フゥ
女「いいの!?」
女友「こんな事一晩中考えられて胃に穴開けられちゃ困るからね…」
女「ありがと~~~女友ちゃん!」
カーッカーッ
女友「本当にここー?」
女「うん…靴箱のあたりにあると思うんだけど……」
女友「ちゃんと女が来たっていう道辿ってきたし…やっぱ誰かに拾われたんじゃない?」
女「そ、そんなぁ~~…」
女友「この辺りに落としたっていうのならもしかしたら言ってたメイドさんが拾ってくれたんじゃない?」
女「め、メイドさんに…あれを読まれて悪いように男君に話を吹き込まれたら…」ゾーッ
女友「ないっての…メイドなんてのは大体礼儀正しい人がするもんだろうし、普通に預かってくれてるだろうから大丈夫だって」
女友「もし他の奴に拾われてても私が助けてやるから安心して今日は家に帰りな、な?」
女「う、うん…」
女「はーっ…」
女(女友ちゃんに説得されたはいいものの…やっぱり不安だなー…)
女「」ブンブン
女「ダメダメ!せっかく女友ちゃんが励ましてくれたんだから立ち直らないと!!」
女「さって、気分転換に宿題でもしy…」
シュッ
女「キャッ!!!」
ビィィィィィン…
女「な、何…窓からなんか飛んできた…」
女「これ矢文…?リアルで初めて見た……」
女(怖いし風変りすぎるけど…書いてるものが気になる)
女「…」パラッ
女「画仙紙……達筆だなぁ…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
男様に仕えるメイドです。明日放課後体育館裏へ来てください
話があります。
PS.貴方が落としていった手紙は預かっております。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーパラッ
女「め、メイドさんから…?あ、手紙拾っててくれたんだ…よかったぁ」
女「明日安心して学校に行けるよ…」
女「少し怖い雰囲気もあったし矢文なんか送ってくる変な人だけど、やっぱりメイドさんって礼儀もあって優しいんだな~」
女「心の蟠りもなくなったし、今日はグッスリ眠れそう!!」
翌日ゥ!
女友「あはははは!ひーっ!ひーっ!矢文って何時代の人だよ…」
女「女友ちゃん笑いすぎ…」
女友「いやいやごめんごめん、リアルに友達からそんな話聞くとは夢にも思わなくてさ」
女「でもよかったよ…メイドさんがちゃんと預かってくれてて…」
女友「でもまぁ一番謎なのがさー…」
女友「家わかってるのになんで昨日直接届けなかったのかって事だよね?」
女「……」
女「え?」サーッ
女友「いや単純に夜分遅くだから気を遣ったのかもしれないけど…でも気を遣った結果が矢文って…w」
女「…も、もしかして私シメられるの…?」
女友「いやいやメイドがそんなことしたら御法度でしょうが、第一する意義が見当たらないし」
女「そ、そうだよね…」
女友「うん、まぁ今日の放課後まで気長に待ってなって」ニッ
女「うん、それじゃ首あらって待ってる……」
女友「ほんとにシメられるみたいじゃないかそれ…」
女友「本当女は神経質なヤツだなぁ…」
女「はぁっ…」
女(よく考えるとまたあの人と会うのか…雰囲気怖いしちょっと苦手なんだよねぇ…)
ドンッ
女「あっ、すいま…」
男「あ、女」
ズッキュウウウウウウウウウウウウウウン!!!!!
女(ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!)
男「どうしたんだ?」
女「イエ、ナンデモアリマセン……」プシュー…
男「?」
女(びびびびびび、びっくりしたぁ…考え事してたらいきなり目の前に男君が現れたんだもん、心臓止まりそうになったよ)
女「オホホホホホ…本日は天気が良くて私の気分も上々でしてよ……」
男「プッ」
女(し、しまった…私緊張すると自分にないキャラを引き出してしまうクセがあるんだった…)ガビーン
男「女って本当おもしろいよな…前は歌舞伎役者で今度はイイトコのお嬢様か?」
女「オホホホホ…実際私は庶民で育ちがいいとは言えなくてよ…」
男「アハハハハハハ!!」
女(わ、笑われてる…けどいっか、男君なんだか喜んでくれてるみたいだし…)
男「俺の婚約者もお前みたいに面白い奴だったらいいのにな…」
女「え、え……?」カァァァァァ
女(こここ、これっていわゆる脈ありってやつなのかな…いくらバカで鈍い私でも今のは脈ありって受け取っていいんだよね!?)
男「実は今度俺親父の命でお見合いすることになってよ…」
女「えっ…?」
男「その中からいいのを一人必ず選べっつわれてんだよ…何でも血族上婚約者候補の奴らはウチと関係が断ち切れない家柄の奴なんだと…」
男「ったくこっちにゃ好みってのがあるのに……金持ちってのも考え物だな」
女「……」
男「…女ー、どうした?」
女「ハッ!!!」
女「いいんじゃないかな!!きっといいところのお嬢様達なら男君に見合った人がきっといるよ!!」
男「え…?あぁそうか?まぁたしかに可愛い子は写真で何人かみたけど…」
男「まぁ婚約したって友達とは縁を切りたくねぇ」
男「いつか一緒に遊ぼうぜ、おめーと遊ぶの楽しそうだ」ニシシ
女「う、うん…楽しみにしてる」
男「おっとHR始まっちまうしそろそろ教室に戻ろうぜ」
女「そうだね」
女(もしかして私……フラれちゃったのかな…)
女「はぁ…」
女友「男が婚約ゥ?」
天パ娘「王手や!!!」パチン
天パ娘「どうや…これやったら逃げられんやろうて…」
女友「受けはあるよ……」
天パ娘「んー…受けに持ち駒の金銀使いおったか…逃げ腰やがええ判断や」
女「あのぅ…真面目に聞いてる?女友ちゃん」
女友「私が女の話をいい加減に聞くわけないでしょー…ほら」パチン
天パ娘「何ッ!?そこで飛車捨てる手があったんか……ウチ全然気づかんかったわ…」
女友「別にまだフラれたって決まったわけじゃないでしょ、そんな落ち込むなって」
女「で、でも…」
天パ娘「女……ゆーたか?」
女「は、はい」
天パ娘「勝負ってのはわからんもんなんや…勝ったと思ったら相手に逆転する一手があるときもあるし」
天パ娘「負けたと思っても必死に策を考えてたらこっちが逆転勝ちする時もある…」
天パ娘「どっちの立場にたってもな、油断せず、そしてあきらめずにいる奴が勝利を掴みとるんや」
天パ娘「話聞いたところによるとあんたはまだ詰みに入ってへんで…きっと必殺の一手があるわ」
女友「まぁあんたはもう詰みだけどね」パチン
天パ娘「かーーーーっ!!負けたぁっ!!!」
女友「私もまだチャンスはあると思うな…絶望的ではないと思う」
女「女友ちゃん…」
女友「メイドさんと今日放課後会うんでしょ?詳しく話を聞いてみたらどう?」
女友「もしかしたら有力な情報が手に入るかも…ね?とりあえずあきらめんのはまだ早いよ」
女友「どんな結果に転んでも私は受け止めてやるからさ、頑張りな」ニッ
女「ありがとう…なんか勇気湧いてきた」グッ
天パ娘「ところであんたも将棋やるか?おもろいでー」
女「えーっと…はさんだらひっくり返るんだっけ?」
女友「いや多分それ違う……」
放課後ッ!!
女「…」
メイド「来ましたか……」
女「あ、あの…手紙預かってくれてありがとうございました…」
メイド「ええ、これはお返しします」サッ
女「あ、ありがとうございま…」
シャキン
女「えっ…?」
メイド「貴方は……主人の事を狙っているのですか?」
女「えっ…えっ…?」
女(は、刃物…?本当に私シメられちゃってる!?)
メイド「大変失礼ながらその手紙を拝見させていただきました」
女「…」
女(よ)
女(読まれたぁ~~~~~~~~~!!?)カァーーー
メイド「狙いは金ですか…それとも主人の命……?」
女「ちちちちちち、違います違います!!それはその…本当に私の想いをつづった恋文なんです!!」
メイド「怪しいですね…記述されているのは無意味な詩に偽装工作かと疑問を抱くような稚拙な文章…」
女(も、もういっその事殺してほしい……)プシュー
メイド「しかし……貴方は悪い者ではないようです」
女「えっ……?」
メイド「感情論と経験則だけで決定するのは好きではありませんが、貴方からは悪意が感じられません」
メイド「きっとこの手紙は…純粋に主人への想いを綴っただけなのでしょう」
女「は、はい…そうです」
メイド「申し訳ありません……危険物確認とはいえ個人情報を勝手に盗み見るようなことをしてしまって…」
女(危険物って…)
メイド「命じられるならば自分の腸を切り裂いて見せましょう」シャキン
女「いやいや、そんな時代錯誤な事されても困りますよ…」
メイド「そう言っていただけると助かります…」
女「ふぅ…」
女「あ、あの…もしかしてその手紙男君は見たんですか?」
メイド「安心してください、見たのは私だけです」
メイド「これは本当にお返しいたします、寝首をかくような行為をしてしまって申し訳ない」
女「は、はい…」
メイド「ですが女さん」
女「はい?」
メイド「その手紙を主人に通すことは承諾しかねます」
女「……え?」
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