男「あ~あ、ラクして金儲けできる方法ないかなぁ」
女「そうねえ」
男「自分は動かず、勝手に金を恵んでもらえるような仕事ってないかなぁ」
女「そんなの、募金ぐらいじゃないの?」
男「!」ハッ
男「そう、それだよ!」
男「たまに、子供の治療費のためだとかいって、寄付を募ってる団体あるじゃん?」
女「駅前にいたりするわね」
男「俺たちもあれやろうぜ!」
女「でもあたしたち、子供なんかいないわよ」
男「俺たちが病気ってことにすりゃいいのさ!」
女「あたしたち、健康だけど」
男「なぁに、病気のフリすりゃいいのさ!」
男「そうすりゃきっと、俺たちに同情したバカどもが次々金を恵んでくれるぜ!」
女「面白そうね、やりましょう!」
男「ゴッホ、ゴッホ、ゴッホ……」
女「ゲッホ、ゲッホ、ゲッホ……」
男「俺たち、病気です!」
女「病気です!」
男「しかも、保険がきかない病気なので、多額の治療費が必要です!」
女「だけど、あたしたちにはとてもそんなお金はありません!」
男「どうか、寄付をお願いします!」
「へぇ、可哀想に……」
「少しだけど……」
「はい、100円」
チャリン… チャリーン… チャリン…
男(おほっ! さっそく!)
女(すごいわ!)
チャリン… チャリーン… チャリン… チャリ… チャリン…
男(マジかよ! 通りがかる人がみんな金を入れてくれるぞ!)
女(まさか、こんなに効果があるなんて思わなかったわ!)
ジャラジャラ… ジャラジャラ…
男「いやぁ~、ビックリしたな!」
男「今日だけで軽く10万円は稼げちまったぞ!」
女「ええ、世の中って善人……もといバカばっかりなのね~」
男「まったくだ!」
男「こりゃ今日だけで終わらす手はないな! 明日も続けていこう!」
女「そうね!」
チャリン… チャリーン… ジャラッ… チャリン… チャリーン…
男(あれから毎日のように、募金活動を続けてるが──)
女(お金を入れる人は決して途絶えることがないわ)
男(明らかに俺らより貧しいだろってヤツも入れてくれるしな)
男(こんなにラクな金稼ぎ方法があるとは、夢にも思わなかったぜ!)
俳優「これ、少しだけど……」パサッ…
社長「早くよくなるといいね」パサッ…
政治家「ほんのわずかであるが……」パサッ…
男「うひゃ~、万札かよ!」
女「すごいわ!」
男「やっぱり有名人ともなると、寄付金もちがうよなぁ」
猫「ニャーニャー」チャリン…
犬「ワンワン」チャリン…
ハト「ポッポー」チャリン…
カラス「カー、カー!」チャリン…
男「動物たちまで! どっかからお金を拾ったり、貴金属を持ってきたりしてるんだな」
女「いい子たちねえ……」ジーン…
ジャラジャラジャラ…
男「うひょ~! こりゃすげえ! もう軽く一千万は越えたぞ!」ジャラジャラ…
女「……」
女「ねえ、あのさ」
男「うん?」
女「もう……この辺にしといた方がいいんじゃない?」
女「だんだん大騒ぎになってきたしさ」
女「こないだなんて、マスコミの取材まで来ちゃったじゃない」
男「なにいってんだよ!」
男「まだ一千万だぞ? これっぽっち、ちょっと贅沢したらすぐなくなっちゃうよ!」
女「まあねえ」
女「でも、この短期間でこれだけ集まるのは、いくらなんでもおかしくない?」
男「きっと、これは……神様が恵まれない俺たちにパワーを与えてくれたにちがいない」
女「神様かぁ……たしかにそうかも」
男「だとしたら、とことん利用しなきゃ損だ!」
男「なあに、いざとなったら金持って逃げりゃいいさ」
女「それもそうね!」
チャリン… チャリーン… ジャリッ… パサッ… チャリン…
男(それからも、金は次々に集まり続け──)
女(ついには──)
大統領「これ、少ないけれど、ワタシのマネーデース!」
女王「わたくしからのせめてもの気持ちです」
国家主席「これで、病気治して欲しいアル」
法王「あなた方に神の祝福があらんことを……」
男「ははーっ!」
女「ありがとうございます!」
……
……
……
チャリン… チャリン… チャリーン… チャリン… チャリン…
チャリーン… チャリ… チャリン… ジャラッ… チャリーン…
男「……」
女「……どうしたの?」
男「お金、もうどのぐらい貯まったかな?」
女「さぁ……いつからか、数えるのもめんどくさくなっちゃったもん」
男「だよな……」
男「あのさ……」
女「なに?」
男「いや、なんつうかさ……さすがの俺もだんだん心が痛んできたよ」
女「!」
男「人の善意につけ込んで、金を恵んでもらおう、だなんてさ」
男「俺、決めたよ! とりあえず集めた金は、できる限り返却するなり」
男「あるいはちゃんとした団体に改めて寄付しよう!」
女「うん!」
男「そして俺たちは……やっぱりマジメに働こう!」
女「そうね! それが一番よね!」
その頃──
宇宙人A「発射したか?」
宇宙人B「おう、バッチリよ!」
宇宙人B「大部分は地球とかいう星に突入する時に燃え尽きちまうだろうが」
宇宙人B「いくらかは二人にダイレクトに届く計算になってる」
宇宙人B「だけどあの二人、うまくキャッチできるかな?」
宇宙人A「遠く離れた我々を動かすほどの強烈な思念を放てる二人組だ」
宇宙人A「黄金の隕石くらい、わけなくキャッチできるだろうさ」
宇宙人B「そりゃそうだな」
END
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