士郎「河川敷で必死に小石を投げてるライトニングさんを見つけた」 (31)

士郎「なにしてるんだろう、あれ」

士郎「……」

士郎「ああ、水切りか?」

ライトニング「……」ブンッ ブンッ

士郎「……いや、ただ石を投げてるだけみたいだな」

ライトニング「ほーぷのばかやろぉ……」ブンッ ブンッ

士郎「すさまじい悲壮感だ」

士郎「話だけでも聞いてみよう」

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士郎「ライトさん」

ライトニング「ひょわっ!?」ビクンッ ブンッ

士郎「うわっ」ヒュンッ

士郎「振り向きざまに石を投げないで」

ライトニング「す、すまない」

士郎「『光速』の異名を持つライトニングさんらしい速度だったけど」

ライトニング「やめろ!」マッカ

士郎「それで、どうしてそんなに石を?」

ライトニング「ちょっと…な」

士郎「……」

士郎「じゃあ話を変えて、ホープに肉じゃがを作ってあげるっていう件は、あれからどうなった?」

ライトニング「話が変わってないじゃないか!」

士郎「…あー……」

ライトニング「あ…」

士郎「……なにか、やらかした?」

ライトニング「……」

ライトニング「あれから、何回か練習したんだ」

ライトニング「最初は味付けが上手く行かなかったんだが」

ライトニング「それも次第に上手になっていった」

士郎「うんうん」

ライトニング「妹のセラにも『これなら大丈夫』と言ってくれるくらいの出来にはなったんだ」

士郎「セラさんがそう言ってくれるのなら、確かみたいだ」

ライトニング「ああ」

ライトニング「それで自信を持った私は、ようやくホープ用の肉じゃがを作った」

ライトニング「それをホープの家まで持っていったんだが……」

士郎「ん?」

ライトニング「私を見た瞬間、ホープは『信じられない』といった顔をした」

士郎「ライトさんが料理を作れば誰だって驚くさ」

ライトニング「たしかにそれもあったのかもしれない」

ライトニング「ただ、肉じゃがを渡したら、ホープは逃げるように家の中に帰ってしまった」

士郎「変な話だな」

ライトニング「ああ、私もそのときは狐につままれたような感覚だった」

ライトニング「それから何日かあと、商店街でランサーと話すホープを見かけたんだ」

士郎「ランサーと?」

ライトニング「ああ、意外と仲がいいらしい」

士郎「ふうん」

~回想~

ホープ『ライトさんが……で、肉じゃがを……』

ライトニング「あれは、ホープと…ランサーか」

ライトニング「肉じゃがの件、結局わからないままだったな」

ライトニング「申し訳ないが少し盗み聞きをさせてもらう……」ゴソゴソ


ランサー「かーっ!マジかよボウズ!」

ホープ「ですよね、信じられませんよね?」

ランサー「ったりめーだ、あの姉ちゃん、まさかそんなことやるなんてなあ」

ホープ「僕もびっくりですよ。ライトさん、あそこまでその…ぶっ飛んだ人だったなんて」


ライトニング「!?」

ランサー「なんとなく俺はそんな気もしてたがな」

ホープ「そうなんですか?」

ランサー「昔っからいい女には縁がなかったが、ああいった手合の女はよく見てきた」

ランサー「良く言えば一途なんだが、一途すぎるのが問題だ」

ホープ「そう……なんですよね」

ホープ「気持ちは嬉しいんですけど、その、さすがにあれは、ちょっと」

ランサー「で、お前それどうした。まさか食べたのか?」

ホープ「少しだけ食べましたけど、あとは、スノウさんに…」

ランサー「あー、あの兄ちゃんか。あいつならまあ、食べるかもな」

ホープ「スノウさんにも悪いことをしました…」

ランサー「スノウのやつも驚いただろ」

ホープ「ええ……『マジでこれ、義姉さんが……』って、絶句してました…」


ライトニング「ホープぅ……」ポタポタ

ライトニング「私が一体……なにを……」ポタポタ

ライトニング「うっ……」ダダダ

~回想終わり~

ライトニング「……ということがあったんだ……」ポタポタ

士郎「ラ、ライトさん、涙ふいて、ほら」ヒョイ

ライトニング「ああ、ありがとう……」ゴシゴシ

士郎「せっかくの肉じゃがを、ホープのやつ、なんで……」ヨシヨシ

ライトニング「わからない……うぅ……」ゴシゴシ

ライトニング「……士郎は、優しいな」

士郎「」ドキッ



~木陰~

桜「」ピキッ

士郎「ラ、ライトさん、その、いくつか確認したいんだけど」アセアセ

ライトニング「……なんだ」

士郎「あー、なんか、レシピ以外のものを入れたとか、してない?」

ライトニング「そんなことはしない」

ライトニング「完璧にレシピの分量のまま素材を使い、それぞれの細かな調理法もセラに手ほどきを受けた」

ライトニング「ホープに持って行く前にもちゃんと味見してもらい、太鼓判をもらったほどだ」

士郎「なら肉じゃがには問題なかったんだな」

ライトニング「ああ、あるわけがない。ホープが食べるものなのだから、細心の注意を払うのは当然だ」

士郎「うーん……」

ライトニング「士郎でもわかるわけはない、か……」

士郎「いや、さすがに考えたくないけど、ホープが嫌がりそうなことはある」

ライトニング「……なんだと?」

士郎「ライトさん……」

士郎「ホープに一体、どれくらいの量の肉じゃがをプレゼントしたんだ?」

ライトニング「セラから教わった調理法の一つに、『同時に大量に作る』というものがあった」

ライトニング「試してみたら確かに味が違った。私でもわかるほどおいしくなった」

ライトニング「だからホープのために作るときにもそれを実行した」

ライトニング「とりあえず寸胴鍋があったからそれを使って作り、ホープに渡したんだ」

士郎「……え?」

ライトニング「なんだ」

士郎「寸胴鍋って、どれくらいの大きさの?」

ライトニング「どれくらいって、こう、小学校の給食とかで使う、あれくらいだ」

士郎(やっぱり)

士郎「それ、どうやってホープに渡したんだ?」

ライトニング「どうやってって、どうもこうもないだろう」

ライトニング「ホープの家は近いからな、鍋ごとだ」

士郎「……なんでさ」

ランサー「な?そういう反応になるだろ?」スッ

士郎「うわ、いたのかランサー」

ランサー「おう、川に石を投げてるライトニングなんざ、珍しかったからな」

ライトニング「な、なんだ!なんなんだ!一体私の、なにが悪かったと言うんだ!」

ライトニング「ただ、ただ私は、ホープの喜ぶ顔が見たかっただけだ!」ポロポロ

ライトニング「なにも、なにも悪いことなんて、して、ないじゃない、か……」ポロポロ

桜「重すぎたんです……愛が……」スッ

士郎「さ、桜まで……」

ライトニング「おも、すぎ、た……?」

桜「ええ…私も、ライトさんの気持ちはわかります」

桜「大好きなひとを、好きすぎて、気持ちを抑えられなくて、かえってそのひとを傷つけてしまう……」

桜「愛はときに、人を傷つけてしまうものなんです……」

士郎(説得力あるな)

ランサー(説得力あるな)

ライトニング「なら……私は…どうすればよかったんだ……」

桜「簡単です……」

桜「量を…量を減らすのです……」

ライトニング「……量…」ハッ

ライトニング「そうか、それであのときセラは、あんなことを……」

士郎「あんなこと?」

ライトニング「ああ、『お姉ちゃんこれ、士郎くんのおうちにも持っていくの?』とな」

士郎「ああ……」

ランサー「なるほどなるほど、ボウズんとこは大所帯だし、そのボウズに習ったんだもんなあ」

ランサー「大量に作ったんだ、おすそ分けするって考えるのが当然だわな」ガハハ

ライトニング「あのときの私は、ただホープのためにと、それしか考えていなかった……」

ライトニング「だからセラの質問の意味もわからなかったんだ……」

桜「でも……」

桜「でも、今は違う……そうでしょう?」

ライトニング「ああ……食べて欲しいのなら、それに相応しい量がある……」

ライトニング「そんなことすら、わからなかったんだな、私は……」

桜「恋は盲目……しかたのないことです……」

桜「さあ、もう一度、ちょうどいい量をホープ君に作ってあげましょう、ライトさん?」

ライトニング「ああ、そうだな……」

桜「それから、お鍋のまま渡すのもいけませんね……」

桜「ホープ君をお家に招待するか、それなりの入れ物に入れてあげないといけません……」

ライトニング「そ、そうか……!そうだ、セラもいつも、そうしていた……!」

桜「では、ライトさんのお家で作り直しましょうか……」スッ・・・

ライトニング「ああ、頼む……!」ギュッ

ランサー「行ったか」

士郎「桜、なんか雰囲気おかしくなかったか?」

ホープ「ええ、なんだか女神様というか、そんな感じでしたね」スッ

ランサー「うおっ?」

士郎「……なんでみんなあとから出てくるんだ……」

ホープ「すみません、さすがに今のライトさんにはちょっと会えないかなと思って、物陰から見てました」

士郎「気持ちはわかるけど、その、ちゃんと言ったほうがよかったんじゃないか?『量が多いです』って」

ホープ「……そう言えるのは、あのときのライトさんの表情を知らないからです」

士郎「え?」

ホープ「あの、達成感と期待感に満ちた顔、あんなきれいなライトさんを見てしまうと、文句なんて付けられませんよ……」

士郎「ホープ……」

ランサー「はっ、なんだよボウズ、お前もぞっこんじゃねーかおい!」バンバン

ホープ「いた、いたいですよ、ランサーさん」テレテレ

ランサー「かーっ、いいねえ若い連中は」

士郎「アンタが言うと、重みが違うな」

ランサー「そうかよ」

ホープ「神話の大英雄に羨ましがられるなら本望ですよ」

士郎「で、どんな味だったんだ?食べたんだろ」

ホープ「はい、できるだけたくさん食べたつもりです」

ホープ「思っていたよりも遥かに美味しくてびっくりしましたよ」

ランサー「スノウのやつは、どうだったんだ」

ホープ「彼も驚いていました。あんまりにも美味しかったんでひとりで食べきっちゃったそうです」

士郎「それ、伝えてあげればよかったんじゃないか」

ホープ「ええ、そうすべきでした。ですけど、もらったときにとった態度がひどかったから、どんな顔をすればいいかわからなくて……」

士郎「それもそうか」

ランサー「ま、いいんじゃねえか?また旨い手料理が食えることになったんだしよ」

ホープ「そうですね。今度はちゃんと、おいしいって伝えます」

士郎「そうだな、それがいい」

ホープ「それじゃあ、僕は家に帰ってライトさんを待ちますね」

士郎「ああ」

ホープ「はい、失礼します」スタスタ

ランサー「あーあ、俺にも誰か手料理作ってくれねえかなあ」ヒュッ ポチャン

士郎「魚持ってきてくれれば、俺が作ってあげるけど」

ランサー「へっ、どっかの赤いのにも同じこと言われたがよ、野郎の手料理はいらねーな」

士郎「じゃあ、桜の、とか」

ランサー「……あー、あの『愛が重い』嬢ちゃんか…」

ランサー「……」

ランサー「……手料理ってのも、難しいもんだな」トオイメ

士郎「ああ、作る側も、貰う側も、な」トオイメ

おわりです。前スレはこちらになります→ 士郎「いらっしゃい、ライトニングさん」 ライトニング「ああ、邪魔をする」ガラッ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433765470/)
ありがちな展開でしたがどうでしょう。個人的には書いててライトニングさんがかわいいだけでした。

ライトニングリターンズやってたら料理のクエストもあってちょっとびっくりしました。
ライトニングさんいわく腕前は「中の下」だそうですね。やっぱりなー。

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