哀しかった魔物の話(10)
すごく時間が有り余ってすごく暇になってしまたので書いてみました。
SSの形すらなしてない、妄想というか舞台設定の垂れ流しです。
誤字、脱字、駄文ご容赦ください。
哀しい魔物
遠い遠い世界のお話
あるところに悲しい世界がありました。
世界では悲しいことがたくさんあって、人々は毎日悲しく過ごしていました
そんな悲しい思い出から魔物が一匹生まれました。
魔物はとても小さくて弱くて、
思い出の国の姫様はそんな魔物を優しく見守っていました。
魔物は悲しい思い出が大好きで、
幸いにも世界には悲しい思い出が溢れていましたから
悲しい思い出をたくさん食べてどんどん大きくなりました。
やがて、世界はほんの少し悲しくなくなりました。
それは、世界が落ち着いたからなのか、魔物がたくさん思い出を食べたからなのか、わかりません。
思い出の国の姫様も赤い水晶の従者たちも、みんなみんな喜びました。
魔物以外は。
お腹が空いた
だから魔物はもう一度世界を悲しくしようとしました。
姫様は言います。“ラモエ、いけません。あなたはそんなことをするために生まれてきたのではありません”
魔物は答えます。“ミオ様、お腹が空いたのです。どおしても、お腹が空いたのです”
姫様はとめようとしたけれど、
魔物はもう大きくて強くて、とめることができません。
魔物は悲しい思い出から、たくさんのマモノを生み出して世界中にばらまきました。
そうやって、世界は前よりももっと悲しくなくなりました。
そうやって哀しい魔物になりました。
やがて時がたち、また世界はほんの少し悲しくなくなった頃
世界の片隅の小さな村で、若者たちが命を繋ぐ旅に出ます。
小鬼が住む街道を
かつて栄華を夢見た古びた坑道を
おなかを空かせた魔物夫婦の館を
世界の種族の英知が詰まった水門を
風が生まれるという洞窟を
追われた民が行きついた湿原を
宝物が眠るといわれる砂漠を
そして、御伽噺の中で聞いた赤い水晶の従者の村と
かつて世界の希望が詰まっていた元凶の場所を。
旅のなかで若者たちは沢山の思い出に出会い、命を繋いでいきました。
世界の真実に辿りついた若者たちは、魔によって思い出の国へと招待されます。
姫の希望を託され、光り輝く思い出をもって魔を撃ち滅ぼす
、はずでした。
私はどうしてもあの世界が魔に喰い荒らされてしまった時のことを、考えてしまいます。
その後も、光り輝く思い出を持つものが現れますが、誰も魔にはかないません。
だって魔は、すでに一番強い光を喰べてしまったのですから。
姫様も赤い水晶の従者たちも、もうどうすることも出来ません。
従者たちは諦めて御伽噺の繭の中に包まって、永い眠りにつきました。
姫様は細々と、世界を生きながらえさせることしか出来ません。
その後も世界は何度も何度も哀しくなって、とうとう喰い尽くされてしまいましたとさ。
世界が喰い尽くされてしまって、思い出の国は自ら滅んでしまいました。
魔を他の世界に繋げるわけにはいきません。
けれどその程度のこと、魔はあっけからんとしています。
だって、世界中の力が魔にはあるんですから。世界に出来ることが、思い出の国が出来たことが魔にできないはずがありません。
けれどひとつだけ、魔は困ってしまいました。
魔は世界を喰べてどんどん大きくなったけど、姫様は世界を喰われてとっても小さくなっていました。
このままでは世界をぺろりと平らげた時、姫様も一緒に消えてなくなってしまいます。
だから魔は姫様だけ、鳥籠の中に入れて大事に大事に閉じ込めました。
姫様だけは消えてなくならないように。
世界が消えて、やがておなかが空いた魔は他の世界を喰べにいきました。
悲嘆に満ちた世界を、冒険短を
平穏な世界も、騒がしい世界も
どんな神様だって英雄だって魔にはちっともかまいません。
所詮はひとつの世界の力でしかないのですから
たくさんたくさん世界を喰べました。もうどんな思い出もひと飲みです。
ずっとずっと生きてきました。もう何度永遠を繰り返したのか覚えていません。
それでもおなかは空きました。
”おなかが空いた”
姫様は見ていることしか出来ません。
魔が哀しかった最後の世界は、神様が人になった世界でした。
その世界では神様は仕事を終えて、わずかに残っていた力も捨てて普通の男の子になって生きていました。
そんな神様の前にあらわれた魔は言います。
"あしたせかいをたべちゃうよ”
神様は突然のことにびっくりして、そしてすぐにわかってしまいました。
たとえ力が戻っていてもとても太刀打ちできないことを。
でも、絶望はしませんでした。もう一度だけ力を使う覚悟をします。
その日の夜、夢の中
こっそりと鳥籠を抜け出した姫様は神様だった少年に尋ねます。
"その力を使えばあなただけでも逃げられる。どうして逃げないの?”
少年は応えます。
「×××や△△△をおいて逃げられるわけないじゃないか」
"あなたはきっと死んでしまう。もう、あなたのような思い出が砕かれるのを見たくないの"
「でも、行かなきゃいけないから。それに、ぼく一人だけずっと生きてても意味なんかないから」
そして次の日の朝、魔は落胆して歓喜します。
こんなに絶望的でもまだ思い出が光り輝いていることを、これからこの思い出を自ら砕いて味わうことが出来ることを。
けれど魔は少年たちに負けてしまいます。
少年に力をかした姫様が、神様のかつての仲間の消えてしまった記憶と力を呼び戻します。
魔は始めは笑っていましたが、だんだん苦戦していきました。
少年たちはかつての若者たちに、あまりにそっくりでしたから。
世界の全てを知って、誰よりも強く光り輝く思い出をもって、姫様の希望を託されて
あの時以来に追い詰められた魔は、あの時と同じ言葉を紡ぎます。
"ミオ様、消えたくない"
あの時と同じ言葉を紡がれて、姫様はあの時出来なかったことをします。
"ごめんね、ラモエ"
そうやって魔は破れてしまいました。
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