綾乃「私が私である限り歳納京子とは結ばれない」 (19)

好きな人にありのままの自分を振舞える子って

「きっと私の気持ちなんて理解できないんだろうな」

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綾乃「少しは前進出来たかしら・・・」

千歳「心配せんでええんよ綾乃ちゃん?」

千歳「綾乃ちゃんのひたむきな努力はきっと神様が見てくれとると思うよ」

綾乃「そうよね・・・ありがと千歳」

千歳「ええんよ綾乃ちゃん、いつでも話聞くで!頼ってな」

綾乃「ありがと」


綾乃(神様はなんで見てるだけなんだろう)

きっと、それは神様がいないからだと思う。

自分でもわかってる。

遠くから姿を眺めるだけで胸が苦しくなる。
笑った顔を見ると、その笑顔が私のためだけであったらいいのにな、なんて心が切なくなる。

それなのに、いざ目の前に立つと、鼓動が激しくなり、呂律が思うように回らなくなる。

体との距離が近くなると、何を話しているかすらわからなくなり、呼吸すら危うくなる。

そんな私が以前と比べると少しは前進出来たのも、

親友である千歳のフォローであったり、歳納京子自らこんな私に対して根気よく声をかけてくれたりして、

そして私は気づいてしまったのだ。

肝心の私はというと、逃げ道を見つけては使っているということを。

ちなつ「結衣先輩〜ぎゅっとしていいですか」

結衣「うん、というかもう待ったなしだねちなつちゃん・・・」

ちなつ「えへへ、今日は1日ハードで"センパイ"成分が不足しちゃいましたっ」

結衣「ははは・・・」

京子「ちーなつちゃんは私のものだー」

結衣「わぁっ、京子」

ちなつ「もう京子先輩ー」

結衣(でかした京子)

ちなつ「このひと時のために学校来てるんですから邪魔しないでくださいよ〜」

京子「ちなちゅ〜アイラブユー」

京子「それは私も同じだよ?」

結衣「はいはいそこまで、早く部室でゆったりしよう」

京子「ちな・・・ぶふぇっ」

結衣「しつこい」

ちなつ「先輩、聞いてください」

ちなつ「今日のお茶は・・・・・」

千歳「綾乃ちゃん、ぼんやり窓の外なんか眺めとってなしたんや?」

綾乃「え、あっ、ごめん気にしないで」

向日葵「先輩らしくないですわね?」

千歳「やっぱり昨日のこと・・・?」

綾乃「歳納京子のことはなんでもないの」

櫻子「歳納先輩?!センパイがどうかしたんですか?」

向日葵「馬鹿櫻子」

綾乃「あっ、気にしないでいいのよ」

綾乃「古谷さんは・・・自分の欠点を一つ治せるとしたらどこを治すかしら?」

向日葵「欠点・・・ですか・・・」

櫻子「おっぱい」

向日葵「うるさい」

向日葵「欠点が多すぎて一つに絞るのは
難しいですけど」

櫻子「嫌味か」

向日葵「いちいち突っかかってくるんじゃないわよ」

向日葵「強いて言えばもっと体型をスレンダーにしたいです」

綾乃「・・・」

千歳「古谷さんは十分体細いと思うんやけどなぁ」



櫻子「結局それを言ってほしかっただけかよ!」

櫻子「つかなんだ、今よりもっと痩せてみろ?」

櫻子「そのデカいおっぱいが余計に妙に目立つぞ!」

向日葵「な、なんですって!?」

千歳「まあまあ、大室さん」

櫻子「まだ懲りてないのかよ」

櫻子「ダイエットのこととなると何かムカッとくるんだよな」

向日葵「そ、そうでしたわね」

向日葵「気を付けますわ」

綾乃「大室さんは?」

櫻子「うーん、自分を大好きであれって歳納先輩から志を教わったしなぁ」

綾乃「歳っ・・・そう」

櫻子「強いて言えば身長を高くしたいですかね〜〜」

綾乃「千歳はどう?」

千歳「絶対あかんよ」

向日葵「池田先輩?杉浦先輩はもしもの話で・・・」

千歳「綾乃ちゃんは今のままが一番や」

千歳「たとえ素直になれなくても、それを必死でなんとかしようとしている綾乃ちゃんが」

千歳「私は綾乃ちゃんらしくて可愛いと思うで」

綾乃「千歳・・・」

綾乃「ありがとう千歳」

綾乃「それでも私は変わろうと思うの」

綾乃「変わることでもっと自分を好きになれるし、」

綾乃「今よりももっと人を愛せるようになると思うの」

櫻子「先輩方なんの話してるんだろう」

綾乃「ごめんなさいね、今日は早めに切り上げましょ」

櫻子「いいんですか?」

櫻子「わーい」

向日葵「杉浦先輩・・・」

綾乃「何かしら」

向日葵「杉浦先輩の気持ち・・・私も何となくですがわかる気がします」

向日葵「もし欠点を一つでもなくせるのでしたら」

向日葵「喉から手が出るほど欲しいです」

千歳「・・・」

向日葵「でも、悩んだところで、自分を傷付けたところでどうにも出来ないのが現実だから」

向日葵「受け入れるしかないんだと思います」


登校中

あかり「・・・それでね、今日は家族でお食事なんだ」

結衣「そうなんだ、じゃあ娯楽部は?」

あかり「早めに帰る・・・かな」

あかり「身支度とかあるから」

京子「あかりはいいよな、私もあかりの家の子どもが良かった」

結衣「8時には布団入らなきゃな」

京子「それは絶対嫌だな」

あかり「もぉ〜、最近は9時だもん」

京子「おっ?綾乃」

綾乃「・・・」

京子「綾乃おっは」

綾乃「京子おはよ!!」

京子「・・・綾乃」

京子・結衣・あかり・ちなつ「エェ!?」

綾乃「えへへ」

京子「あ、綾乃だよね?」

結衣「綾乃、どこか悪いところでもない?」

ちなつ「でも目の前にいるのは杉浦先輩・・・」

綾乃「京子っ!」ギュ

京子「ちょっ、綾乃ここ校門前」

綾乃「もっと触れていたい京子ぉ・・・」

結衣「えっ、えっ、なんで」

京子「や、やめて〜〜」サッ

結衣「綾乃どうしちゃったんだろ」

ちなつ「・・・」

結衣「ちなつちゃん?」

ちなつ「結衣先輩からは私ってあんなふうにうつっているんですか」

娯楽部部室

京子「ええと、ちなつさん?」

ちなつ「ほっといてください・・・」

京子「結衣・・?」

結衣「じつは、・・・」

結衣「・・・てなわけで萎えるんだそう」

京子「あー」

京子「でもちなつちゃんのいいところはそこなんだし」

一か月後


ちなつ「結衣先輩、先輩の全てが好きです」

結衣「私も、ちなつちゃんの態度がこれまでとは丸っきり変わっちゃって」

結衣「正直寂しかった」

結衣「だからいつものちなつちゃんの存在が私には必要なんだ」

結衣「私なんかと付き合ってくれるかな・・・?」

ちなつ「ぐすっ・・・お願いします」

綾乃「この性格を変えたら京子は付き合ってくれるって言ってたけど」

綾乃「どうやって変えたらいいのだろうか」


明るい未来なんてあらへんよ

一発ホームランなんかねらわなくたって構わない。



おわり

おつ

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