勇者「魔王倒したらどうなんの?」 (21)
魔法使い「……えっと?勇者様?何を言っているんですか?」
勇者「いや、俺たちってさ、魔王倒すために冒険してきたじゃん?」
僧侶「まぁそうですね」
勇者「で、長い冒険をして、いよいよ魔王のいる部屋の前についたじゃん?」
剣士「そうだね、ついたね」
勇者「で、俺たち長い冒険で色んな敵と戦って強くなったから多分魔王に勝てるじゃん?」
剣士「いや、それは知らんが」
勇者「いざ魔王倒せる、ってなるとさ、その後の事考えるじゃん?で、俺たちって魔王倒したらどうなるのかな?って」
魔法使い「えぇっと……えぇ?」
僧侶「ちょっと場所を変えようか」
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魔王「感じる……扉の方から、強い力を……」
側近「いよいよ来たようですね……勇者達が……」
魔王「我の家臣達を次々となぎ倒したその力……試してやろうではないか……」
側近「いえ、魔王様が出向くまでもなく、私が倒してみせますよ」
魔王「そうか……頼もしいな……え?あれ?なんで?」
側近「魔王様?いかがなされました?」
魔王「いや、強い力がだんだん遠ざかっていくんだけど……あれ?勇者達どしたの?」
側近「きっと魔王様に恐れをなして撤退したんですよ」
魔王「えぇ……ちょ、ええぇ……ここまで来て?えぇ……」
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僧侶「さて、勇者。先ほどの話だが……」
勇者「そうそう。さっきの話ね。いや、実際俺たちって勇者倒したらどうなんのって話よ」
剣士「どうって……魔王を倒せばモンスター達は滅び、世界に平和が訪れるのだ」
勇者「そうね。平和訪れるね。それ大事ね。じゃあ平和の後は?」
魔法使い「えぇっと……人々が幸せに暮らせる?」
勇者「そうね、幸せに暮らせるね。よし、じゃあ質問変えよう。皆ってさ、魔王倒したらどうするの?」
剣士「魔王を倒したら……」
魔法使い「そうですね……とりあえず故郷に戻って、大魔導士様の所でより一層修行をします」
剣士「ならば、俺も師範の元に行き、修行を積もうか」
僧侶「私はそうですね……国中を回って、人々を治療しましょう」
勇者「あーいいねー、それぞれ違ってていいねー……じゃあさ、魔法使い」
魔法使い「はい?」
勇者「魔王倒して平和が訪れたのに、修行する意味ある?」
魔法使い「え?」
勇者「だってさ、もう世界からモンスターはいなくなるじゃん。なのにさ、魔法を使う意味ってある?」
魔法使い「あっ……えっと……」
勇者「まぁ、あるとは思うよ。火を付けたり、氷で冷やしたり、色々魔法でできるけどさ、でも魔法の基本は戦闘じゃん」
魔法使い「……」
勇者「戦闘する必要がなくなった世界に、戦闘技能って必要かな?」
魔法使い「……それは」
勇者「必要、だよね。だってモンスターいなくなったって人と人とは争うし。そりゃ必要ない世界になればいいけど、そんなん綺麗事だしね。でも、魔王を倒して訪れる世界は、魔法のような、対モンスター用の戦闘技能を必要としない世界じゃないのかな」
魔法使い「……………」
勇者「剣士、お前もだよ」
剣士「…………」
勇者「魔法はまだいい。戦闘以外にも使えた。でも、剣術はどうだ?」
剣士「……魔法のようにはいかないな」
勇者「それこそ剣術なんて、ようはモンスターを殺すための技術だ。そんなもん、モンスターがいない世界に必要か?」
剣術「……ある、と言いたい」
勇者「……ま、剣術は人を鍛える、なんて言うし、実際感じる。でも、不要な物にはなってしまうかな」
剣術「……だな」
勇者「まぁ、それでもまだ僧侶は救いがあるね。回復魔法なんてモンスターがいなくなっても需要がある」
僧侶「そうですね……悲しい話ですけど」
勇者「だね。人に傷つけられた人、そんな人が生まれてしまうかもしれない世界だ。悲しいよ」
勇者「でも、それぞれ色々あるけど、俺よりマシじゃない?俺なんて魔王倒すだけの存在だからね」
僧侶「……」
勇者「天からのお告げー、なんて言って、魔王倒せっつったってさ、じゃあ魔王倒したら俺は用無しかーって話だよ」
剣士「……」
勇者「そりゃあ、魔王倒して、世界平和にしたら英雄さ。歴史に名を残せるよ。でも、それだけだ。栄光ってさ、その瞬間が過ぎれば、所詮は過去の物になって終わりなんだ。」
魔法使い「……」
勇者「魔王を倒すべき勇者が、魔王を倒したら過去の英雄、昔の人に成り下がる。そしたら勇者の俺の価値は、意味はなくなる」
剣士「……何が言いたい」
勇者「……魔王倒して、本当にいいのかなーって」
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魔王「勇者達の気配随分遠く行ったなぁ……早く来ないかなぁ」
側近「そうですねぇ、暇ですねぇ」
魔王「魔王なんてさー、たまーにくる勇者の迎撃が生き甲斐みたいなもんなのにさー、生き甲斐に引き換えされちゃ敵わんよ」
側近「魔王様はまだいいじゃないですか。私はそんな魔王様のお側にいるだけの役目ですよ」
魔王「あれ?何それ?悪口?今悪口言った?魔王の側の悪口言った?」
側近「いえ、そんな滅相もありません」
魔王「はぁ……暇だねえ」
側近「そうですね」
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魔法使い「勇者様、そのような事、考えるまでもないのでは?どう考えても、魔王は倒すべきです!」
僧侶「そうです!魔王を倒し平和を迎える!それが我々の望んだ世界なんですよ!?」
勇者「でも、そろ我々が望んだ世界に我々は望まれてはないけどね」
剣士「……だな」
勇者「ぶっちゃけ、どうだっていいんだよ。自分以外の誰かが魔王さえ倒してくれりゃあ誰だって。それが勇者であってもなくても」
魔法使い「そんな……」
勇者「俺達が魔王を倒す事を望まれてるのは、魔王を倒せる可能性が高いからで、魔王を倒してくれるなら国王でも山賊でもいいんだよ」
僧侶「そんな事……」
勇者「あるさ。だってそうだろ。世界が望んだのは魔王を倒す勇者じゃない。魔王を倒す英雄だ。」
剣士「…………」
ーーーーー
魔王「よくぞここまで来たな勇者よ……そなたの力、私に見せてみよ!!」
側近「……」
魔王「……今のどうだったかなー?ちょっと短すぎたかなー?」
側近「いえいえ、余り喋りすぎると威厳がなくなってしまいますから。長いよりはいいのでは?」
魔王「どうだろー?あ、じゃあこれは?ッオホン!……勇者よ……待ちわびたぞ……全力で来るがよい……この魔王が返り討ちにしてくれる……」
側近「……いいんじゃないですかぁ!?」
魔王「だよね!だよね!こう、全力で来るがよい……で、魔王感出るよねー!」
側近「これでいつ勇者がきても大丈夫ですね!」
魔王「あー!勇者まだかなー!まだかなー!」
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剣士「勇者、お前の言う事も分かる。だが、俺も一つお前に問いたい」
魔法使い「剣士様……」
剣士「確かに、俺たちが望む世界に、俺たちは望まれない。しかし、それでも魔王を倒さずにいるよりはよほどいいんじゃないか!?」
勇者「うん。そうだよ……だからさ、決めたのよね。俺」
僧侶「……決め、た?」
勇者「うん。魔王を倒してら、俺は世界に望まれなくなる。でも魔王を倒さない勇者は、何よりも望まれない。だから、さ」
ソッ
剣士「……勇者?」
勇者「俺だけで、魔王は倒す」
ヒュンッ!!
魔法使い「ッ!!ルーラ!?」
僧侶「勇者様!これは一体!?」
ヒュンッ!!
魔法使い「僧侶さん!!」
勇者「魔王を倒した英雄は、魔王がいなくなった世界にはいらない。だったら、いなくていいやと思ったんだ」
魔法使い「……勇者、様……」
勇者「魔王と一緒に、俺も死ねば、世界が望んだ英雄は、英雄が作った、英雄を必要としない世界にはいないから」
魔法使い「そんな……嫌です!だったら!私も共に死にます!勇者様を見殺しには……」
勇者「魔法使い」
スッ
魔法使い「……見殺しには……出来ません……」
勇者「……俺も、お前を道連れには出来ない」
魔法使い「……ゆう……しゃ……さま……」
勇者「つまんない事だけどさ……お前が好きだからさ」
ヒュンッ!!
ーーーーー
キィィィィ……
魔王「……来たか、勇者よ」
勇者「あぁ、お邪魔するぞ」
魔王「待ちわびたぞ……貴様を我が手で葬る、この時を……」
勇者「ソイツは嬉しいね、俺の事考えてくれてたんだ。もしかして俺に惚れてた?」
魔王「御託はいらん……全力で来るがよい……」
勇者「……言われなくても、アンタみたいな厳つい野郎なら、全力で行けるさ」
魔王「来い……勇者よ!!」
勇者「行くぜ、魔王!!」
後日、王国騎士団の調査により、魔王城から、一つの遺体が発見された。
身につけていた物から、勇者の遺体と発覚した。
勇者が倒したであろう魔王の遺体は、発見出来なかった。
が、モンスターが同時に灰となって消えたとの各地からの情報により、魔王は死に、魔王の遺体も各地のモンスター同様、灰になって消えたと推測される。
なにはともあれ、世界に平和が訪れた。
惜しむらくは、世界を平和に導いた、我らの英雄が、自身の導いた世界をその目にする事は無かったことだろうか。
ーーーーー
?「……アンタ、誰だ」
?「……へー、そうか。じゃあ俺は無事に[ピーーー]たって訳か」
?「……は?俺が望む世界だ?」
?「んな……急に言われたってな……」
?「……そうだな、じゃあ……」
?「魔王を倒す事を望まれ、神に選ばれし力を持つ、そして、世界から望まれる」
?「……本物の勇者がいる、そんな世界を望む」
?「……なに、良いんだよ。これからは、ここで高見の見物と洒落込むさ」
神「……それじゃあ、次の世界。俺が描く世界に、行こうじゃないか」
「さて……どんな世界になるのやら」
くぅ疲おしまい。
よくSSは自己満足の物とか言わるけど、これほど自己満足なSSもねえなと思いながら書いてました。
前におーぷんで書いててSS速報を知って、じゃあここで書こうと思って、書きました。
次書くとしたらおーぷんで書いた物のリメイクになると思います。
とりあえず、また見かけたらよろしくお願いします。
稚拙な文章でしたが、ありがとうございました。
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