私の名はサチコ。人々に神の祝福を授けるため、地上に舞い降りた天使の一人です。
しかし、いくら最高の造形を誇るとはいえ、世を忍ぶ仮の姿では限界があります。私はもっともっと多くの人々に、もっともっとたくさんの幸せを届けたい。
そこで私は一計を案じることにしました。
モバP(以下P)「お、はじまるぞ幸子!」
幸子「は、はい!」
司会(テレビ)『さぁ!それでは紹介いたしましょう!本日初テレビ出演の新人アイドル、輿水幸子ちゃんです!どうぞ!』
幸子(テレビ)『フフーン!テレビの前のみなさん初めまして!ボクは輿水幸子といいます!現世に舞い降りた天使の一人として、みなさんにボクのカワイさに触れる喜びをお伝えしてあげますよ!』
司会(テレビ)『はっはっは!自信はたっぷりですね!それでは―――』
P「おー、よくうつってるじゃないか!」
幸子「フフーン!当然です!なんたってボクは天使ですからね!」
P「おうおうその調子でこれからも頼むぞ!」
幸子「もちろんです!」
この地上で太陽のような輝きを誇るアイドル。私は一人のアイドルとなり、天使たるこの身を、この声を使って人々に感動をお届けしようと思うのです!
あぁ…テレビを通して幸せの波動を感じる…
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―――――
智絵里「……………」
―――――
幸子「ふー、ただいまお家に帰りましたっと。ふふふ、初テレビ大成功です!みなさんの幸せを感じることもできました。今日は本当にいい日ですね!」
Prrrrr…
幸子「おや、電話ですか?しらない番号ですね。プロデューサーさん以外でボクに電話なんて…もしもし?」
智絵里『もしもし天使サチコですね?チエリです』
幸子「はい?」
智絵里『チエリです』
幸子「…え?チ、チエリ?大天使チエリさま!?」
智絵里『さきほど、テレビを通してサチコのことを見ました』
幸子「は、はいっ!」
智絵里『いわく、地上に舞い降りた天使であると』
幸子「…あ!あーいやぁ、それは…」
智絵里『私はいいましたね?天使はその正体を明かしてはならぬ、と。確かにいいましたね?』
幸子「は、はい…で、でもつい…」
智絵里『つい、じゃありません!』
幸子「うひゃあ!」
智絵里『テレビの向こうには多くの人々がいます!仮に少数でも信じる人がいればどうするのですか!?』
幸子「う、うぅ…」
智絵里『今回はそれほど騒ぎになってないようですから大目に見ます。アイドル活動も続けてもらって構いません。けれど本物の天使だとばれないよう、くれぐれも気を付けるように』
幸子「わ、わかりました」
智絵里『わかってくれればいいのです。私とて本当はこんな風にお説教なんてしたくないのです…それではおやすみなさい、天使サチコ』
幸子「は、はい、申し訳ありませんでした。おやすみなさい……大天使チエリさま」―ピッ
幸子「………ヒグッ、べ、べつに怒られて泣いてなんかいません。いませんよ!……今日はお風呂入ってもう寝ましょう。…明日も頑張ろう」
私の名は幸子。人々に神の祝福を授けるため、地上に舞い降りた天使の一人です。
人々に幸せを届けるために、これからも要努力、ですね
ピロン!
幸子「あれ?メール?」
From 大天使さま
To 天使サチコ
件名 私も
天使サチコよ
私もアイドルになりたいです
どうすればいいのか教えてください
幸子「…ふ、ふぎゃー!」
―――――
智絵里「ちょ、ちょっと厳しかったかな…?だいじょうぶかな…?落ち込んでたな、サチコちゃん」
智絵里「でも、一応階級は上だし、威厳出さなきゃだし…」
テレビ『フフーン!テレビの前のみなさん初めまして!ボクは―――』
智絵里「あ、録画ながしっぱなし…でもそっか、アイドルか…すごいな…」
智絵里「わたしもみんなに幸せ、届けてあげたいな……」
智絵里「……う、うん!やっぱり、私もアイドルになりたい!」
智絵里「でもどうすればいいんだろう…?サチコちゃんに聞いてみようかな」
智絵里「…電話だとちょっと、声がふるえちゃいそう…メールにしよう」
智絵里「えーっと、『天使サチコよ』っと――――」ポチポチ...
――――
私の名はサチコ。人々に神の祝福を授けるため、地上に舞い降りた天使の一人です。
この私の名案たるアイドル活動が認められたのはうれしいのです。しかし最近は大天使さまからの無茶な相談にどう答えたものか考えるばかり…だったのですが…
P「よーしみんな集まれー!今日は新人を紹介するぞー!」
ワイワイガヤガヤ
幸子「…なんだか無性に嫌な予感が…」
P「このあいだ俺がスカウトしてアイドルになってもらえることになった子なんだがな、さ、入ってくれ!」
智絵里「み、みなさんこんにちは…緒方智絵里って――」
幸子「…やっぱりー!!」
智絵里「ひゃ!」
幸子「ちょ、ちょっと何してるんですか大天使さ――」
智絵里「智絵里」
幸子「へ?」
智絵里「智絵里」ニコッ
幸子「は、っひ…」
智絵里「緒方智絵里です。智絵里、と呼んでくださいね」ニコニコ
幸子「は、はいぃぃ!」
P「なんだ幸子、知り合いだったのか?ふむ、よしちょうどいいな。専属の先輩としてこれからいろいろ教えてやってくれ!」
幸子「え?」
智絵里「…よろしくおねがいしますね、サチコ」
幸子「え?え?…ふぎゃー!」
――――――――――
幸子「というか、大天使さ――」
智絵里「智絵里、です」
幸子「智絵里、さん?って、なんだかみなさんの前では性格が違くないですか?」
智絵里「え?そ、そうですか?」
幸子「態度はおどおど、言葉はつっかえつっかえ、もっと自信を持ってもいいと思います!…ボクには結構高圧的なのに…」ボソッ
智絵里「そ、それは…みんな初めて会う人ばっかりだし、緊張しちゃって…」
幸子「それがいけないって言ってるんです!仮にも天使なんですからもっと堂々とですね…」
智絵里「じ、実は、現世で仮の姿で生活してるうちに、こんな性格に…」
幸子「え、でも、ボクにはずっと変わらず話してるじゃないですか。こう威厳があるというか、なんというか…」
智絵里「サチコは別です」
幸子「え」
智絵里「サチコは別です」
幸子「」
智絵里「……せ、せめて天界関係の方には頑張らなきゃ」ボソッ
幸子「え?いまなんて――」
智絵里「な、なんでもないです!あ、そ、そうだ、せめてこれからは幸子ちゃんと呼びますよ!改めてよろしくお願いします幸子ちゃん」
幸子「は、はぁい…」
――――――――――
―――――
智絵里「あ、そういえば、幸子ちゃんってどうして“ボク”っていうんですか?」
幸子「フフーン知らないんですか?この国では天使のことを“神のボク”って書くんですよ?だからボクの一人称もボクにしました!ほら、こんな字です!」サラサラー
智絵里「…?“神の僕(しもべ)”?」
幸子「え?」
智絵里「その、ごめんなさい…これ、“神のシモベ”って読むんですよ?」
幸子「そんなそれじゃあ…ボクは…」プルプル
智絵里「えっと…その…気にしなければきっと大丈夫ですよ?」
幸子「ふぎゃー!」
後日、もうこれで押し通す覚悟を決めました…
私の名はサチコ。人々に神の祝福を授けるため、地上に舞い降りた天使の一人です。
最近は大天使チエリさまも大分アイドル活動になれてきました。
幸子「それで、プロデューサーさん。今日は重要なお話があるってことですけど」
智絵里「あ、あの、幸子ちゃんとふたりでって…私たち、なにかしちゃったのかな…?」
P「いや悪い話ではないんだ。今度のイベントのスポンサーさんがぜひ二人に参加してほしいっておっしゃっててな」
幸子「え、それって」
P「ああ、次のイベントから幸子、智絵里の二人でユニットを組んでもらうことになった」
智絵里「幸子ちゃんと、ですか?」
P「ユニット名は“ツインエンジェル”を考えてる。幸子はいつもボク達は天使だっていうからな。そこから思いついたんだが、どうだ?」
幸子「あ……」チラッ
智絵里「……その、大丈夫…です…少し思うところもありますけど…」ボソボソ
P「なんだ、二人とも歯切れが悪いな。まぁなにかほかに希望があったらまたあとで教えてくれれば一考するさ。そんなわけで、よろしくな」
幸子「は、はい!」
智絵里「……はい」
―――――――
智絵里「…幸子ちゃん」
幸子「っひ!そ、その…すいませんまたボクのせいで天使って…」
智絵里「え?あ、いや、それはいいの」
幸子「え?いいんですか?てっきりまた怒られるのかと…」
智絵里「…そこはまぁ、もう仕方ないです。ただ…」
幸子「ただ?」
智絵里「私って“アークエンジェル”なんだけど…ツイン“エンジェル”って名乗っていいのかなって…?」
幸子「え?」
智絵里「だから…!私ってもうただのエンジェルじゃないから…もうアークエンジェルになって結構たつし…いまさら自分でエンジェルって名乗るのも…ちょっと、はずかしい…」
幸子「そ、そんなことですか!?」
智絵里「そ、そんなことじゃないよ…!私たち神の僕にとって階級ってとっても大事なんだよ…!うぅ、みんな笑ったりしないかな、大丈夫かな…」
幸子「え、えー…?」
智絵里「天界のみんなには絶対話せないよ…」
幸子「は、はぁ…」
私も天使ですが、大天使さまのこだわりは時々わかりません…
私の名はサチコ。人々に神の祝福を授けるため、地上に舞い降りた天使の一人です。
本日はチエリさまと一緒に老人ホームで慰問のお仕事です。いままで世の中を支えてくださった人々の余暇を、この私が美しく飾ってさしあげます!
幸子「…と意気込んでいたのに、なんですかこの惨状は!」
P「救急車!職員さん救急車早く!あとそっとのおばあさん二人はお願いします!おじいさん!おじいさんしっかりして!」
智絵里「あ、あわわ…」
老人1「あぁ…あれが天国かい…」
老人2「とうとう、わしにもお迎えがきたのう…わしは満足じゃわい…」
老人3「うへ、うへへ…サチコさまぁ、チエリさまぁ…うへへへへ」
幸子「ちょっと!リクエストがあったから少しだけ讃美歌うたっただけじゃないですか!」
幸子「ち、智絵里さんの“お力”で何とかできないんですか!?」
智絵里「だ、だめ…助けようと“力”を使ったら、天に召されちゃう…」
幸子「た、確かにそれもボク達のお仕事ですけど!お仕事ですけど!!今は違うんですって!」
P「おじいさん! 天使さまはここですよ!そっちじゃありません!おじいさん!!っくそ…幸子!智絵里!」
幸子「ひゃっ!ひゃい!
智絵里「え、は、はい!」
P「俺に考えがある!いまから―――」
――――――――
幸子「…………」
智絵里「…………」
幸子「…なんとか、なりましたね」
智絵里「う、うん…」
幸子「まさか、ボクたちのダンスで現世に戻ってこれるなんて…」
智絵里「むしろ、起きてからの方が生き生きとしてた、ような…」
幸子「“サチコさまもチエリさまもいない天国に用はない!”って叫んでましたね」
智絵里「て、天国、いいところなんだけどな…?」
幸子「それは知ってます」
智絵里「う、うん…」
幸子「…幸せ、届きましたかね?」
智絵里「き、きっと届いたと、思う…よ?」
幸子「…………」
智絵里「…………」
あの方たちにはもう少しだけ、現世で頑張ってもらいましょう…
私の名はサチコ。人々に神の祝福を授けるため、地上に舞い降りた天使の一人です。
本日のお仕事のラジオでは、私の天上生まれの声しかお届けすることはできませんが、それでも私は全力を尽くしますよ!
幸子『―――フフーン!みなさん!本当に、本当に残念ですが今夜ももうこんなお時間です!ラジオ越しとはいえ、今夜も天使たるボクの声が聴けて幸せでしたね!また来週もぜひボクとお会いしましょう!それでは、さようなら!』
P「お疲れ様、幸子。今日もよかったぞ」
幸子「フフーン!あったりまえです!なんたってボクはこの世界に舞い降りた天使なのですから!」
P「おうそうだな。まさしく天使さまだ。このラジオのリスナーからも、幸子の声を聴いてると一日の疲れが抜けていくようだと評判らしいぞ?スタッフの皆さんも楽しんでいただけてるようだし、いうことなしだ」
幸子「フフーンフフーン!!当然です!……ちょっとだけ“力”を使いましたからね」ボソ
P「うん?」
幸子「あ、いやいや!えっと、プロデューサーさんももっと敬意をもって接してくれもバチは当たりませんよ!?」
P「はは、わかったわかった。さぁ、そんな天使さまももうお疲れだろう?家まで送ってやるから準備してくれ。」
幸子「はい!わかりました!」
―――――
智絵里「……………」
―――――
智絵里『ら、ラジオの前のみなさんこんばんは。緒方智絵里です。今日は私の声を通して、みんなに幸せ、届けばいいな♪』
P「みえる!みえるぞー!!ラジオの声を聴くだけで智絵里の姿が!いやチエリさまの御身が目の前にみえるぞー!!」
Prrrrr
Prrrrr
Prrrrr……
ちひろ「…はい!…はい!いえ、御社はまだホログラム技術は導入しておらず…いやですから、いま見えているのは幻覚でして…いえ決して精神に異常はおこらないはずですが…いや…はい………それでは…。あーもう!電話がおいつきません!!!」
幸子「ち、智絵里さんなにやってるんですかーーー!!!!“お力”使いすぎじゃないですかやだーーー!!!!」
智絵里『うわぁ、今日はお便りがいっぱい来てるみたいです。みなさんありがとうございます。みんなが楽しんでくれて、私もうれしいです。えへへ♪』
――――
Prrrrr…
智絵里「あ、も、もしもし…え、え?神様ですか?」
幸子「…………」
智絵里「…い、いやその、この間はその…なんていうか…幸子ちゃんのラジオをきいて…それで、ですね…?」
幸子「…………」
智絵里「ちょっとだけうらやましくって…その…」
幸子「…………」
智絵里「はい…すいません…いえ、けっしそのような…はい…」
幸子「…………」
智絵里「はい…はい…以後気を付けます…はい、それでは…失礼します…」
幸子「…………」
智絵里「ふぅ…ハッ、幸子ちゃん…!?…そ、その…きいてました…?」
幸子「…………」
智絵里「そ、その…これは………ご、ごめんなさい!」タタタッ
幸子「あっ…………逃げました」
天使、堕ち(やめ)ようかな…
私の名はサチコ。人々に真の幸福を授けるため、天さえ裏切った堕天使の一人です。
私を縛るものはもう存在しません!この魔性の魅力で人々を終わりのない幸福の中にいざなって差し上げましょう!
幸子「フフフーン!この万能感!いまのボクなら何でもできる!口うるさい上司なんていないのです!」
蘭子「煩わしい太陽ね!!!(こんにちは!!!)」
幸子「うひゃあ!い、いきなり近くで大声あげないでください!どなたですか!?」
蘭子「我が名はランコ!先たる時を刻む堕天使よ!(私はランコって言います!堕天使の先輩ですよ!)」
幸子「…へ?」
蘭子「天の理に絶望しその翼が黒く染まるとき、我はその足元より誘いの手を伸ばす!(新しく堕天使になる子がいるってきいて、いろいろ教えてあげようかと思って!)」
幸子「あ、はい…?」
蘭子「その身は未知の恐怖に打ち震える!せめて我が叡智にてその道が明るくならんことを!(初めてでわからないことばかりですもんね!何でも聞いてくださいね!)」
幸子「あ、ありがとうございます…?」
蘭子「今宵は歓喜の時!闇に飲まれよ!!!(あなたと出会えてうれしいです!これからよろしくお願いしますね!)」
幸子「」
こ、これが堕天使のあるべき姿なのですか!!?
私の名はサチコ。人々に真の幸福を授けるため、天さえ裏切った堕天使の一人です。
この魔性の魅力で人々を終わりのない幸福の中にいざなって差し上げる…前に、堕天使としての振る舞いを覚える必要があるのだとか…
蘭子「闇に飲まれよ!」
幸子「や、やみに…?」
蘭子「飲まれよ!!」
幸子「の、飲まれよ…」
蘭子「闇に飲まれよ!」フリツケ、バッ!
蘭子「ふん!」ワクワクキラキラッ! ミ☆
幸子「や、やみにのまれよ…!」バッ…?
蘭子「わぁ!」パァァ! 握手ギュッ!
幸子「あ、あはは…」
蘭子「あたかも歴戦のワルキューレがごとし!さぁ連なる時の彼方へ赴かん!(すごくお上手ですよ!さぁどんどん行きましょう!)」
幸子「と、ところでそんなに急がなくても…また今度にしませんか?」
蘭子「…え?」シュン…
幸子「あ、いえ、なんでもないです。…次はどんなことをおしえてくれますか?」
蘭子「うむ!うむ!次は―」パァ!
幸子「…………」
私には堕天使の常識は難しすぎます!!!
ピロン!
幸子「…………」
From大天使さま
to堕天使サチコ
件名 ごめんなさい
まず長文のメールになってしまうことをご容赦ください
サチコが天使に絶望し堕ちてから、もういくばくかの時が流れました
私はずっとあなたと話したいと思っています
直接会う機会は得られず、電話もつながらず、夢のなかにも入れてもらえない
このような一方的なメールを送りつけることが何より心苦しいです
あのときは逃げてしまってごめんなさい
言い訳はしません
ただ情けなく、未熟な自分を恥じるばかりです
熟な私は、失敗をしました
思いついた妙案が完璧だと妄信し、過信のために無謀を演じ、あなたの不審をも招きました
もともとアイドルという職業もあなたのたどり着いた答えでしたね
アイドル活動を通して日々届けられる幸せの波動に、勘違いをしていました
私は天使として、アイドルには向いていなかったのです
しかしサチコ、あなたは別です
あなたがアイドルとしてなしてきたことは我らが神様のお耳にも触れ、大きく賞賛されているのです
あなたが必死に考え至った答えは、正しく人々に幸せをもたらし、現世に多くの祝福をあたえた、と
あなたの大天使への昇進のお話もほぼ決定していました
いまならまだ間に合います
戻ってきてください
私がアイドルを、天使を辞することで嘆願としようとしています
あなたはこれからの天界、そして地上になくてはならない方なのです
私のようなものとは違ってこれから天使たちを先導する方なのです
どうかもう一度、考え直してください
このメールがいつ見てもらえているかはわかりません
いつでも返信をお待ちしています
最期にもういちど、ごめんなさい
幸子「…………」
蘭子「天使サチコ(幸子ちゃん)」
幸子「な!!?う、後ろから覗き込むなんてマナー違反ですよ!!」
蘭子「悔恨を示そう。しかし、悔いはまた別の側面を見せるだろう(ごめんなさい。でもマナー違反ついでにもうひとつ)」
蘭子「…あなたは、あなたのしたいようにするべきです」
幸子「…!」
蘭子「停滞はよどみを生む。無限にも必ず原初の一歩がある!(なにもしないで悶々とするより、まずは行動!ですよ!)」
蘭子「それに(それに)」
幸子「それに?」
蘭子「天が省みないならば、何度でも汝が闇は甦る。我は闇の門番たろうぞ!(なんか違うなって思ったら、またこっちに戻ってきてもいいですし。私はいつでも幸子ちゃんのこと待ってますよ♪)」
幸子「……フフーン!そんなこと言って、後悔しても知りませんからね!」
蘭子「ふん、堕天使のたわむれよ!(もちろんです♪)」
幸子「それでは、またいつの日か!闇に飲まれよ!」ッバ!
蘭子「うむ!闇に飲まれよ!」ッバ!
堕天使もなかなか捨てたものじゃありませんね
……ありがとうございます、ランコさん
私の名はサチコ。天使でも堕天使でもないただのサチコ。
今日はおバカな元上司にお説教です!ボクはボクの正しいと思った幸せをつかむのです!
幸子「智絵里さん!!」
智絵里「さ、幸子ちゃん…あ、その…私いま来たところで、ぜ、全然待ってないから…」
幸子「このおバカ!」オデコペチン!
智絵里「あう…!」
幸子「メール読みましたよ!なんでもこのカワイイボクがウツクシイ大天使へと生まれ変わるとか!」
智絵里「う、うん、だから私は…」
幸子「ですが!!!」
智絵里「…!?」ビクッ
幸子「そのために、あなたがいなくなって喜ぶとでも思っているのですか!?」
智絵里「…え?」
幸子「天使としての心構え、天界と地上の違い、私たちのなすべきこと。私はすべてあなたに教わりました。この恩を忘れることも、あだで返す気も、ボクには毛頭ありませんよ!」
智絵里「で、でも…私なんか…」
幸子「でももへちまもありません!それに智絵里さん、あなただって楽しかったでしょう?“ツインエンジェル”」
幸子「あなたがもし、ボクに何かしたいと思うのなら、“ツインエンジェル”再結成、それ以外は許しません!」
智絵里「幸子ちゃん…」
幸子「そもそもボクまで大天使になったら、“ツインアークエンジェル”に名前を変えなきゃですしね!これじゃゴロが悪すぎますよ!」
幸子「ボクはまだ天使で十分です!自力で堕天使から復帰します!あなたの力添えなんかいりません!」
幸子「だからまた二人で“ツインエンジェル”、やりましょう?…わかりましたか?わかったら返事!」
智絵里「う、うん…うん!わかった。私、もう一度頑張ってみるから…だから…」
幸子「はい!よろしくお願いしますね!大天使さま!」
智絵里「はい!よろしくお願いします!天使サチコ!」
フフーン!大天使さまのちょろいこと!
これはボクがより一層、しっかりしなければいけませんね!
さぁ、私たちの活躍はまだまだこれから!です!
私の名はサチコ。人々に神の祝福を授けるため、地上に舞い降りた天使の一人です。
しかし、いくら最高の造形を誇るとはいえ、世を忍ぶ仮の姿では限界があります。私はもっともっと多くの人々に、もっともっとたくさんの幸せを届けたい。
そこで私は大天使さまをも巻き込んで、光り輝くアイドルになったのです!
幸子「みなさーん!元気ですかー!!?ツインエンジェルの輿水幸子です!」
智絵里「み、みなさん、こんにちは…!ツインエンジェルの緒方智絵里です…!」
幸子「今日はこの合同フェスに来てくれてありがとうございます!」
智絵里「ぜ、ぜひ楽しんでいってくださいね♪」
ウオォォォ――
サチコチャーン!!!
チエリサマーーチエリサマーーココダーーー!!!
幸子「フフーン!なかなかの盛り上がりですね!…さて、宴もたけなわということで」
智絵里「ご、合同フェス恒例、即席ユニットライブのお時間です…!」
幸子「なんと!今回はボクたちも誰が来るのか知りません!ほんとのほんとうにぶつけ本番です!」
智絵里「お相手の方は、私たちのことよく見てくれていて、なんでも合わせられるっていってるらしい、です」
幸子「それは光栄ですね!…おや準備ができたみたいです!それではステージの上にー、どうぞー!」
蘭子「――闇に飲まれよ!!!」
幸子「!!?」
智絵里「だ、堕天使!!?」
ウワーーランコチャーン!!
コレゾシッコクノヤミ!!
ランコサマランコサマ!!
蘭子「今このときこの場所で!光と闇が合わさり最強に見える!」
智絵里「な、なんで堕天使が…そ、そんな…戦う…?でもいまは…」
幸子「い、いつのまにアイドルに…しかも結構人気…?」ヒヤアセダラダラ
蘭子「さぁ天使サチコ!ともに参ろうぞ!!」
智絵里「!?…天使サチコ!わ、私とがんばりましょう!!」
幸子「お、お二人とも!?どうしてボクにだけ言うんです!?」
蘭子「ふん!大天使チエリよ!ついてこれるかな?」
智絵里「ま、負けません!」
蘭子「―――」バチバチッ!
智絵里「―――」バチバチッ!
幸子「……ふ、ふぎゃー!」
大天使と堕天使の仲介なんて、ボクには荷が重すぎます!
助けてかみさま!かみさまーーー!
おわり!
ただ大天使チエリエル様にお説教される天使サチコが書きたかっただけ
おもったより長くなってびっくり
ついでに過去作もいくつかおいておきます
よかったらどうぞ
千川ちひろ「我が名はちひろ。邪神が一柱なり」
モバP「トレーナーさんとの約束」 etcetc...
ではでは
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