ブラック・ジャック「コルシカの双海」 (19)

・ブラック・ジャック×アイマスSS
・ブラック・ジャック中の「コルシカの兄弟」という話をアイマスに置き換えただけ
・アイドルが重症を負う展開を含むので注意

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1432559190

§ライブ中

亜美『へいへーい! 会場の兄ちゃん姉ちゃんたちー!』

真美『もぉり上がってるー?』

観客『おおーーーーーっ!』



ピノコ「ねーっ、先生どうして返事しないのよさ」

BJ「ピノコだってしてないじゃないか」

ピノコ「らってシュルメ食べてるんらもん」

BJ「わざわざアイドルのライブまで来てスルメ食べてる奴もないもんだ」

ピノコ「せっかくもらったチケット捨てるよりいいわのよ」

亜美『んっふっふ~、なんかチョ→いいカンジじゃん!』

真美『んっふっふ~、真美たちもチョ→がんばっちゃうよー!』



ピノコ「らいたい人が多しゅぎて亜美ちゃんも真美ちゃんもれんれん見えないのよ」

BJ「だから肩車してやろうかと言っただろ」

ピノコ「ピノコ18やからそんなことできましぇん。先生が八頭身にしてくれればよかったのに」

BJ「大人扱いしてもらいたかったらくちゃくちゃスルメ噛むのやめな」


真美『それじゃあ次の曲いっちゃおうか! 亜美真美で、スタ→トスタ……!?』ぐらっ

亜美『あっ! 真美、危なっ』

真美『うわあああっ!?』

亜美『ま、真美!?』

 どずんっ

亜美『ま、真美! 真美ーっ!』


 ざわざわ ざわざわ


ピノコ「真美ちゃんになにかあったみたい!」

BJ「事故のようだぞ。ステージの中心にあった穴に落ちたらしい」

ピノコ「最初にピョーンて2人が出てきたとこ?」

BJ「みたいだな。スタッフのミスで穴を開けたままにしていたのかもしれん」

ピノコ「真美ちゃん落ちちゃったの? かわいちょー……」


小鳥『会場のみなさんにお知らせします。大変申し訳ありませんが、出演者の事故のため本日のライブは中止となります。
   チケットの払い戻しなどについては後日連絡いたしますので、今はスタッフの指示に従って……』


BJ「だそうだ。帰るぞ、ピノコ」

ピノコ「765プロのライブ、楽ちみにちてたんらけどなー」

§会場の外

双海「もし……もし! そこにいらっしゃるのは、ブラック・ジャック先生ではありませんか?」

BJ「あなたは……双海医院の」

ピノコ「チケットくれたおじちゃんなのよ」

双海「はい、あの時はお世話になりました。来てくださってたんですね」

BJ「この子がおたくのお子さんたちの事務所のファンだとかでね。だがどうやら事故があったようで」

双海「そうなんです。お願いします、どうか娘の手術をしてください」

BJ「私が? なんでまた」

双海「私には正直手に負えないんです。どうかお願いします、娘を助けてください」

BJ「勘弁してくださいよ、私は今日は家族サービスなんです。ただの落下事故でしょう?」

双海「それが……そうもいかない奇妙な問題がありまして」

BJ「そんなことは私には関係ないですな。他の医者に頼んでくださいよ」

律子「先生!」

ピノコ「わ、りっちゃんなのよ!」

律子「私はあの子達のプロデューサーです。お願いします、あの子を救ってください」

BJ「…………」

律子「真美たちを失っては……お願いします、どうか」

ピノコ「先生、ピノコもお願いするのよさ。真美ちゃんがちんじゃったら悲ちちゅぎるもん」

BJ「……わかりましたよ。それで奇妙な問題というのはなんです」

双海「まあ見てください、こちらです」

§会場裏

亜美「助けて! 助けてぇ! 亜美死んじゃうよぉ!」

伊織「ちょっと、落ち着きなさい亜美!」

春香「亜美、落ち着いて! 真美を病院へ運ぶんだよ」

亜美「真美が死ねばそのとき亜美も死ぬ! 死にたくないよお!」


BJ「誰です騒いでるのは」

律子「双子の無事な方です」

伊織「あ、律子! どこいってたのよ!」

春香「律子さん、亜美をなんとかしてください! すっかりパニックなんです」

律子「ええ。亜美、お腹をこの先生に見せてみなさい」

亜美「り、りっちゃん……助けて……うう……」

BJ「むっ……なんだ? このミミズばれは」

律子「真美のケガとまったく同じ部分がはれてきてるんです。
   この亜美と真美は一卵性双生児なんです、昔は入れ代わりでアイドルをやっていたくらいで」

ピノコ「ピノコ知ってるのよさ。亜美ちゃんの名前で交代交代やってたのよ」

律子「だけど……そのうちにおかしなことに気づいたんです」

双海「亜美と真美は奇妙なことにどちらかが傷つくともう片方も同じように苦しむんです。一心同体というわけですね」

律子「一方がケガをすると一方にも同じ場所にミミズばれができます」

BJ「じゃあ亜美が死ぬと言ったのは?」

双海「2人は、どちらかが死んだ時に自分も死ぬと信じてるんですよ」

BJ「そんなバカな!」

律子「先生は『コルシカの兄弟』という小説をご存知ですか?」

BJ「最近は小説は『カモメのジョナサン』さえ読まなくなってねえ」

律子「あれも一卵性双生児が主人公の話でしてね……コルシカ島で生まれた双子が別れ別れになり呪われた運命を辿ります。
   兄の方が敵に傷つけられると弟はベッドで寝ていようとどこにいようと突然ものすごく痛がるのです」

BJ「『コルシカの兄弟』か! もしあったとしたっておれは信じないがね」

律子「先生も今にわかりますよ」

§手術室

真美「…………」

BJ「内蔵が破裂して腸管と胆管が離断している。これの縫合と感染の防止だ」

医師たち『…………』

BJ「ひとことことわっとくが患者は昏睡状態にある。心拍と呼吸、血圧には最大に注意をはらうように。
   ポイント○○一でも異常がある場合はショック死の可能性がある、オペは中断する」

双海「どうです。助かるでしょうか……」

BJ「まあ確率はほとんどないですよ。メス!」

医師「はい」

BJ「では、手術を開始する」

§手術室前

亜美「ウアアァーッ!」

律子「亜美!」

伊織「どうしたの!」

亜美「うう……ううん……」

春香「真美の手術が始まってます」

律子「例のミミズばれね……」

亜美「アアァッ! う、ああっ! おなかが痛い……痛いよぉ……」

春香「あ、亜美……」

伊織「見てらんないわ……」

春香「先生呼んできました!」

BJ「どうしたっ」

律子「先生、診てください! 亜美が……」

春香「亜美にも麻酔をかけますか?」

BJ「そいつには及ばない、これでたくさんだっ!」

 ドスッ

亜美「うっ……ん……」がくり

春香「あ、亜美!」

BJ「気絶させただけだ。苦しみ続けるよりいい」

双海「先生! 来てください、真美の呼吸が止まりました!」

BJ「なんですって?」

双海「さっき急に真美の息が乱れて……」

亜美「…………」

BJ「くそっ、こんなやっかいなペアははじめてだっ」

§しばらくの後

亜美「…………」

BJ「亜美……亜美!」

亜美「う……ううん……」

BJ「亜美、私の話がわかるか?」

亜美「あ……先生……」

BJ「お前は真美が死ねば自分も死ぬ運命だと思い込んでるな。
   だがそいつはバカ正直というもんだ、よく聞け!」

亜美「……?」

BJ「いいかお前たちは一卵性双生児だと思い込んでるが……
   ほんとは一卵性の三つ子だったんだぞ!」

亜美「えっ……!?」

BJ「お前たちには3人目の姉妹がいたんだ。お前たちは小さすぎて覚えていないだろうが、
   そいつは小さい頃に病気で死んだんだ! いいか死んだんだぞ」

亜美「し……死んだの……?」

BJ「お前たち2人はなぜそのとき同時に死ななかった?
   わかったか、1人が死ぬと同時にもう1人も死ぬなんてのは気のせいだ」

亜美「……!」

BJ「お前たちのミミズばれや痛みは本物じゃない。暗示で起こるんだ。
   気にしなければ起こるはずがない!」

亜美「で……でも……」

BJ「信じられないようだな、じゃあこれを見ろ!」

亜美「え……この写真……」

BJ「これが死んだ3人目の姉妹だ。双海医師が持ってたんだ」

亜美「亜美と、真美に……そっくり」

BJ「わかったな? じゃあ私は手術室に戻る。いいか、お前は普通の体だぞ! シャンとしろ、死ぬ心配なんかふっ消せ!」

亜美「…………」

律子「亜美! 見て、あのミミズばれが消えていくわ」

亜美「あ……」

§手術室

BJ「腸圧挫鉗子」


BJ「血圧は? よしいいな」


BJ「バクェリン焼灼器で腸管のはしを焼く」


BJ「縫合器を」


BJ「よし……どうにか持ち直したな」

§手術室外

春香「あ、先生!」

BJ「手術は終わりだ」

伊織「先生、真美は助かったの?」

BJ「ああ。フフ……患者と健康な方と2人いっしょに扱うのはくたびれたな……フフフ」

律子「ブラック・ジャック先生……お礼の言いようがありません!」

BJ「お礼なんかより手術料をいただきたいですな。2人直したんだから2人分、2000万円ね」

律子「あ……そ、それは……」

BJ「だがまあ、うちの子がおたくらのファンなのでね。サイン1枚1000万ってとこにしときましょう」

律子「は、はい! ありがとうございます!」

BJ「真美が回復したらお願いしますよ。では私はその子を会場に残してるのでこれで」

§駐車場

亜美「先生!」

BJ「亜美か」

亜美「真美を助けてくれてほんとにありがとうね!」

BJ「おまえさんも命に別状がなくてよかったな」

亜美「ねえ先生、亜美たちの3人目の姉妹ってなんて名前だったの?」

BJ「3人目の姉妹? なんだいそれは」

亜美「だ、だってあの写真! 先生がそう話したんじゃん」

BJ「そんなこといったっけかな。覚えてないな」

亜美「ほら、この写真だよ!」

BJ「ああ、そいつはおまえさんの小さい頃の写真だ。双海医師に返しときな」

亜美「えっ!」

BJ「……じゃあな」




おしまい。手塚治虫は偉大。

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