魔王「魔界が奪われた。」(14)
魔王「いや、残った魔族がこれだけって……」
吸血鬼「まあまあ、そう気を落とされるな、王よ。」
悪魔「我々がついている限りは、御身の安らぎは揺るぎないものとなりましょう。」
魔犬「ワォウ?」
龍鬼「それに、たかが城を奪われただけですぞ。まだまだ挽回のチャンスは……」
魔王「ねえよ。」
魔王「まず、爵位持ちクラスが三人。その配下数人。ケルベロス一匹。
トータルで頭数を数えてもたったの十五だぞ。」
吸血鬼「いやぁ、ケルベロスは双頭ですから。」
魔王「十五が十六になったって変わらねえよ。」
悪魔「元気をお出し下さい。陛下がそのような有り様では、示しがつきませんぞ。」
魔王「示しを付けるべき配下も民も、全て奴に奪われたんだよ。」
龍鬼「勇者……でございますか。」
魔王「命からがら魔界の端っこまで来たは良いが、もう馬は走れないだろう。
食料も残り僅か。残り僅かな配下も疲弊してグッタリじゃねえか。」
吸血鬼「むぅ……確かに今の状況は好ましいとは言えませんな。」
魔王「もしこの場で人間に見つかりでもしたら……と思うと…………」
悪魔「人間の部隊を発見!数二十!」
魔王「終わった…………」
龍鬼「まあまあ、二十程度なら何とかなるでしょう。」
魔王「もう疲れた。辞めてくれ。」
吸血鬼「泣き言を言っていても敵は剣を収めはしませんぞ。」
悪魔「いざ、参る!!」
兵士A「よし!魔王だ!やっちまうぞ!」
悪魔「やらせはしない!」
兵士B「手柄は俺のもんだ!」
龍鬼「人間ごときが生意気な!」
兵士C「これで俺も兵士長だ!」
吸血鬼「お前の血の味、確かめてやろう……」
兵士D「覚悟!」
魔王「…………」
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魔王「何とかこれで、全て倒したか……」
吸血鬼「…………」
悪魔「…………」
龍鬼「…………」
魔王「済まない……お前達の配下を一人残らず……」
吸血鬼「何、気になさるな、王よ。」
悪魔「兵は主を命を懸けて守り、己を知ります。これが運命。」
龍鬼「王の為に死ねたなら本望でしょう。」
魔王「俺が、俺が情けないばかりに…………」
魔犬「バウワゥ。」
悪魔「まだ私達が残っている、だそうです。」
魔王「ああ…………」
吸血鬼「人間達の馬、馬車、食糧がたっぷりとあります。」
龍鬼「まずはゆっくりと休むべきでしょうな。」
魔王「ああ。すまない。」
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吸血鬼「おはようございます。」
魔王「おはよう。」
悪魔「そろそろここを動きましょう。次の人間達の部隊が来るやも知れません。」
魔王「ああ。そうだな。」
龍鬼「まずは……どうしましょうか。」
魔王「街を一つ拠点に出来れば……」
悪魔「ここから十里北に軍備の強化された街があります。
そこなら、魔族の生き残りが居てもおかしくありません。」
魔王「まあ、当然人間も少なからず居るだろうな。」
龍鬼「敵中突破は、得意ですぞ。」
魔王「それしかあるまい。死ぬなら死のう。」
吸血鬼「死なれては我々が困りますぞ。」
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~最期の街~
人間兵士「諦めろ!この防壁が崩れればお前らなんて……」
魔族兵士「うるさい。大岩でもかじってな。」ドン
人間兵達「うわあああああぁぁぁ!!」
堕天使「……まずいな。」
馬鬼「何がだ。」
堕天使「人間の兵が集まり始めている。これでは兵糧攻めに合っているようなものだ。」
馬鬼「確かにこのままではまずいな。打って出るか?」
堕天使「いや、城門を開くのはまずい。……クソッ……」
魔兵物見「魔族部隊が駆けて来ます!援軍のようです!」
堕天使「何!?」
馬鬼「これで勝てるぞ!!何騎だ!」
魔兵物見「四騎です!」
馬鬼「よ、四騎…………」ガクッ
堕天使「たかが四騎ではどうする事も出来ん。目の前で惨く
殺されるのを眺めている事しか出来んだろうな。」
馬鬼「よくも四騎等でこちらに駆けてくる気になりよったわ。」
魔兵物見「援軍四騎、敵部隊100に向かって行きます!」
~城壁前~
吸血鬼「我々が一人30、数を減らします。我が王よ、貴方は残りの10が
御身に危機を及ぼさぬよう、気を張っていられれば良い。」
魔王「馬鹿にするな。一人25で良い。」
悪魔「もう疲労も気を掛けるべき部下もありません。」
龍鬼「その上、仕掛けるのはこちら。勝機はあります。」
魔王「突破して内に入れれば良かったんだけどな。」
悪魔「籠城戦のようです。それは仕方がありませぬ。」
吸血鬼「行くぞ!」
~防衛施設内~
魔兵物見「援軍四騎、敵部隊をとんでもない勢いで蹴散らして行きます!」
堕天使「なるほど……烏合の衆では無い訳か。」
馬鬼「敵数は?」
魔兵物見「既に70を切っています。」
堕天使「下の者の伝えて門を開かせろ!援護だ!打って出る!」
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