【安価】男「人喰いの夜からの脱出」 (69)

台本形式のSSです
主人公である男を、その時々で募集する安価で操り、人喰いの化け物が蠢くB市から脱出させるというものです
できるだけ安価には忠実に書きますが、あまりにも突拍子もない安価は再安価を募集するかもしれません
更新は不定期気味 ちょっとだけでもなるべく毎日更新したいです
なお、次レスから投下する分は安価はないので、その点だけご了承ください
では、よろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1431006964

とあるアパート


男「あー暇だ。せっかくの春休みだってのに、何の予定もないなんて」

男「こんなことなら、バイトかサークルでも入っときゃよかったなー」

男「大学も私立の滑り止めだし、そんなに興味ある分野じゃないし」

男「おまけに工学系だから出会いもほぼ皆無だし、何のために生きてんだろ、俺」

男「……くだらねー。ラーメン食ってシコって寝よ」

男「って、明日燃えるゴミの日か……今のうちにゴミ出してこねーとな」ガサッ


 ――――――――


男「ふー。最近溜まってたから、運ぶのにも一苦労だったよ」

男「さて、帰るかな」

男「――――――」

男「変な色した月だな……黄砂の影響ってヤツか? それに、妙に獣臭いな。このへんに家畜飼ってるとこなんかなかったはずだけど……」クンクン

男「ま、どうでもいいや。さっさと帰ろ」


 ――――――――


男「さーて、ラーメンラーメン……」


???「おめでとうございまーす! 男さん、貴方は栄えある百人目の『プレイヤー』に選ばれました!」


???「これからこの『ナビ子』と一緒に、『人喰いの夜』から脱出しましょう!」


男「な、なんだ!? いきなり脳内に女の子の声が……疲れてんのかな、俺」

ナビ子「なーに言ってるんですか男さん! 日がな一日ネット三昧で、さっき以外部屋から一歩も出てない男さんが疲れてるわけないでしょ! まったくもう!」

男「…………」イラッ


男「……それで、何だよプレイヤーって。それに、人喰いの夜って何なんだ」

ナビ子「今この瞬間から、男さんの住むB市の夜は異界に変わり、人間を食べたくてウズウズしてる怪物さん『グレンデル』が大量発生します」

ナビ子「グレンデルは日に日に数を増し、31日目の夜には街中を埋め尽くし、プレイヤーだろうとそうでなかろうと、問答無用に食べてしまうんです! うう、怖いですねー」

ナビ子「プレイヤーこと男さんは、グレンデルたちに食べられないよう、30日目の時点で上手いことB市から脱出しなくてはなりません!」

ナビ子「他に、何か質問はありますか? ナビ子、何でも答えちゃいます」

男「……そのプレイヤーってのは、誰かに代わってもらうこととかはできないのか?」

ナビ子「うう~んいきなり後ろ向きですねー男さん。そんなことじゃ、この人喰いの夜は攻略できませんよ?」

ナビ子「ですが、最初にその質問をしたプレイヤーさんの86%は、少なくとも初日を生き抜くことに成功しています! これはナビ子も期待せざるを得ませんよ~!」

男「後の14%はどうなったんだ?」


ナビ子「そりゃもちろん、グレンデルに食べられてしまいました。ナビ子も辛かったですー……」

男「た、食べられた後は……」

ナビ子「食べられた後?」

男「食べられた後、どうなったんだ?」

ナビ子「なーんだ、そんなことですか!」

ナビ子「やだなー男さん、怖い顔しないでくださいよ」

ナビ子「ちゃんと、その日の朝からナビ子がリトライさせてあげてますよ。ちなみに、脱出できずに31日目を迎えた場合は、初日からリスタートです!」

ナビ子「結構死にゲーなとこありますからね、一度や二度死んだくらいじゃ、ゲームオーバーにはなりません」

男「なんだ、生き返れるのか……」ホッ


ナビ子「はい! ですから男さんも、どしどし攻略に乗り出しちゃってください!」

男「ああ。よかった、死ななくて済むならまだ……」

男「……待てよ。なあナビ子、この人喰いの夜ってのは、誰かクリアしたヤツはいるのか?」

ナビ子「いえ、いませんよ? いたら、ナビ子は99回も担当変えられてないです」

男「え? いや、ちょっと待てよ。おかしくないか? だったら、俺以外の99人はどうしてるんだよ」

男「死んでも死なないし、かといって降りることもできないんだろ? じゃあ、どうやってこのゲームから……」

ナビ子「あ、そのことだったんですね。失礼失礼。ナビ子ったら察しが悪いっていつも……ゴホン」

ナビ子「ゲームオーバーになる条件は2つです。1つは人喰いの夜からの脱出に成功すること。2つ目は」


ナビ子「自殺することです」


男「…………ッ! じゃ、じゃあ、俺以外の99人は……」


ナビ子「はい! 終わりの見えないゲームに嫌気が差したのか、皆さん自ら命を絶ってしまいました! うう、ナビ子も辛かったですよ~」

男「…………」

ナビ子「どうされました、男さん? 気分の方が優れないのですか? それなら、家に居るというのも一つの選択です! 無理を押して攻略に出ても、良いことはありませんからねー」

男「…………」


ナビ子「ただ! 初日でなければ出会えない人がいるんですが、この人と知り合えないと後々結構苦労することになっちゃうんですよね~。ですから、ナビ子的にはこの選択はおすすめしません。いかがなさいます?」

男「……やるしかないってことか」


ナビ子「お! 行くんですね、男さん! いいですねー、ナビ子も積極的なプレイヤーさんにはいっぱいアドバイスしちゃいます!」

男「……99人も死なせたヤツのアドバイスか。あんまり聞く気にならないな」

ナビ子「ぐさっ! そ、それを言われると辛いものがありますね~……あはは……」

ナビ子「でも、ナビ子も一生懸命がんばってるんです。それだけは分かってもらいたいなーなんて」

男「……ま、今日死なずに済んだら、考えとくよ」

男「じゃ、行こうか。ナビ子」

ナビ子「はい! それでは、『人喰いの夜:脱出編』スタートです!」

これにて今回の投下は終了となります
明日の夜9~10時頃からの投下では、安価を募集したいと思います
では、読了いただきありがとうございました

期待

市外に出るだけなら割りと簡単そうだけど、それだけじゃないんだろうなぁ

面白そうだぜ

終盤のボスにロケットランチャー使いそう

バールのようなものを使えばよかろうなのだぁ!!!!
異界ジェノサイダーを呼ぼう

こんばんは、>>1です
投下にやってまいりました
今回の投下からは安価を募集いたしますので、皆さんご協力の方よろしくお願いします
では次レスより本編の方始めたいと思います



 ――――――――


 アパートの駐車場


男「なあナビ子。このゲーム、乗り物を使うってのはアリなのか?」

男「アリなら、原付で国道を20分も走れば隣の市に出られるんだけど……」

ナビ子「…………」

男「ナビ子? どうかしたのか?」

ナビ子「えっ!? はわわ、すいません! ちょっとボーっとしてまして……っていうのは冗談で」

ナビ子「非常に申し訳ないんですが、ナビ子は攻略の成否に直結するアドバイスをすることはできないんです」


ナビ子「『選択肢』という形で男さんの行動方針をお示しし、その中から男さんにご自分で選んでもらうというのが、ナビ子としての最大の譲歩点なんです……お役に立てなくてごめんなさい……」

男「そうなのか……まあ、無理だって言うんなら仕方ない。じゃあその選択肢とやらを教えてもらえるか?」

ナビ子「了解しました! 男さんは話が分かる方でナビ子も嬉しいです~。いつかのプレイヤーの方は、このことでずいぶんナビ子に対して不信感を抱かれたみたいで、以後一言も口を利いてもらえなかったです……」シュン

ナビ子「おっと、無駄口は叩かない! それでは男さん、選択を!」


1、行けるところまで行ってみよう。原付で市外を目指す。

2、急がば真っ直ぐ進んじゃ……地道に徒歩。


>>直下

2


→2

男「(……ゾンビものとかだと、真っ先に車とかで逃げ出そうとした奴は間違いなく死ぬよな)」

男「(それに、乗り物を使えばいいっていう安直な発想を、ゲームマスターが想定してないはずがない)」

男「(……いや、どうせ死んでも生き返るんだ。原付でどこまで行けるか試してみるか)」

男「(いやいや、割り切りが早えよ! 下手打ったら生きたまま食い殺されるんだぞ! もっとじっくり考えろ!)」

ナビ子「どうしますか男さん? 外に出たら、あんまりグズグズしてるのもオススメできませんよ?」


男「……徒歩で行く。原付を使うのは、これが悪手だったときにするよ」

ナビ子「了解しました! では、男さん、未来に向かってゴーゴーです!」

男「テンション高いな……」テクテク

ナビ子「いえ、ただでさえ血なまぐさいゲームですから、ナビ子くらいは賑やかな方がいいかなーと思いまして……もしかして、お気に障っちゃいましたか?」

男「いや、そのままでいいよ。気分が紛れる」

男「…………(しかし、いまいち現実味がないな。本当にこの街に、人喰いの化け物がうろついてるってのか? 夢でも見てるみたいな気分だ)」


男「(このナビ子とかいう女の子だって、本当にいるのかどうかも分からない。何せ、脳内で声が聞こえてるだけだし)」

男「(単に、暇すぎて頭がおかしくなっただけだったりして……)」

ナビ子「お! 男さん、分かれ道ですよ!」

ナビ子「一つは国道に出る道……に続いている大きな道! もう一つは、男さんが大学までの近道に使う細い裏道です!」

ナビ子「ところで男さん、今日はどちらまで行くおつもりで?」

男「んー……とりあえず、コンビニまで行ってみるよ。アイスでも買って帰ろうかな。大きい道でも裏道でも行けるし」


男「って、コンビニとか営業してるのか?」

ナビ子「大丈夫です! グレンデルは、屋内の人間は決して襲ったりしませんし、プレイヤー以外の人間には姿が見えません! ですから、お店の方では異常は一切察知できない状態になっています!」

男「……それ、外を出歩いてる一般人はヤバいってことじゃないのか?」

ナビ子「ですから、男さんには頑張って人喰いの夜から脱出してもらわなくてはならないのです!」

男「責任重大だな……」

ナビ子「それでは男さん、次の選択肢です、どうぞ!」


1、裏道は危険に対応しにくい。大きな道。

2、なるべく屋外にいる時間は短い方がいい。裏道


安価
>>22

2
もし裏道で人が襲われてたらどうするんだ!


→2


男「(裏道でグレンデルとやらに鉢合わせしたら、まず殺される)」

男「(でも、見通しが利く大きな道なら、遠くから相手を見つけられるかもしれない)」

男「(人喰いの化け物なんか、できれば一度も出くわさずにクリア――――)」


 ぴろりろりん♪


男「おっと……LINEだ。誰からだ……って、幼馴染か」


幼馴染『今から遊びに行っていい? 鍵失くしちゃって寮に入れないんだよー』


男「馬鹿丸出しだな。つか、最近アイツの顔も見てないな。まず文系だから接点がねえ」


男「どうせ法文あたりのイケメンくんと飲み会でもした帰りだろ? 何で俺が面倒見てやんなきゃいけねぇんだっつーの」

男「それ以前に、アイツの相手してる暇ねーよ」

男「『今忙しい。他あたれ』……っと。よし、送信――――」


 ぴろりろりん♪


幼馴染『今コンビニの前だから、5分くらいでそっち行くねー』


男「――――ッ!」ダッ

男「馬っっ鹿野郎……! どうしてアイツはいつも俺の話聞かねえんだ!」

ナビ子「お、男さん!? どうしました、急に血相変えて……!?」


男「アイツが……幼馴染が俺のとこに向かって来てる! 裏道使うだろうから、すぐに合流しないと……!」

ナビ子「あの……! 選択された後なので言えるんですが、実はこの選択肢は……!」

男「黙ってろ! 気が散る!」

ナビ子「でも、男さんが……!」

男「うるせえ! 関係あるか!」

男「こんな物騒な街を、あんな薄らぼんやりしたの一人で歩かせてたまるかよ――――!」

ナビ子「男さん……」


ナビ子「……いえ、ナビ子は何も言いません」

ナビ子「それが男さんの選択なら、黙って従うのみです」

男「それで! そのグレンデルってのはどういう奴なんだ! それが分かれば対策も――――」


 それは、突然俺の目の前に現れた。

 身の丈3メートルを上回るだろう体躯。両腕に生えた、大木だって一撃で斬り倒せそうな鋭い鎌。

 一言で言うなら、そいつはカマキリの化け物だった。

 臙脂色の月光を反射する一対の複眼が、目の前の肉を吟味している。

 ――――これは、無理だ。

 滾っていた内心は、水をぶっかけたみたいに一気に冷えきった。


男「(――――何も、)」

男「(勝てるわけ、)」

幼馴染「おーい、男くーん! こっちこっち! 迎えに来てくれたんだねー!」

男「(しまっ……!)」

グレンデル「■■■■」ギョロッ


 グレンデルが脳天気な声に振り向いた。

 その先には18年間一緒だった俺の幼馴染がいる。

 覚束ない足取りで、それでもにこにこ笑いながら俺の方へ向かって駆けて来ていた。

 その無防備な胴体を斬り裂こうと、死の大鎌が振り上げられた。


男「や、めろこの野郎――――!」

ナビ子「男さん! せめてこれを!」


1、ここは戦略的撤退。勝てない相手と戦うなんて蛮勇でしかない。

2、奴に立ち向かう。ただの犬死に。


安価直下

2


→2


 何か、目障りな文字列が一瞬見えたが完全に無視する。

 こんなときに、のんきに自分の行動を頭の中で議論して決めてる余裕なんかない。

 ただ衝動の赴くままに。

 握りこんだ拳を、全力でグレンデルの後頭部に叩きこむ。


 グシュ


「は……?」

 
 突き入れたはずの拳が、逆に何かに突き刺さってしまった。

 それもそのはず。

 グレンデルの体表は、水筒大の大量の棘に覆われていたのだ。

 そして、当然それは頭部にも――――



男「はっ……がああああああ!!」

幼馴染「お、男くん!? どうしたの、何かあったの!?」

男「く……来るな! 逃げ――――!」


 ドッ


男「――――かっ……は……」

ナビ子「男さん!」

幼馴染「待ってて男くん! 今行くから……!」

男「だ……から……俺の、話を……!」

グレンデル「■■■■!」ブンッ

男「聞―――!」



 ズドンッ!


グレンデル「…………■」


 ドサッ


男「な……に、が」

ナビ子「と、突然グレンデルの頭が……! 一体、誰が、どこから」

男「…………」


???「………………」


男「(あれは……弓?)」

男「(俺を、助けて)」


幼馴染「男くーん! どうしたのその傷! 大丈夫!? 怪我はない!?」

男「…………あ」

男「(ダメだ。もう、意識が)」

男「(ちくしょう。早速、死ん……)」

幼馴染「男くん!? 男くん!? 待ってて、今救急車呼ぶから!」


ナビ子「(ちょっと冷や汗かきましたけど、何とか危機は脱したみたいですね)」

ナビ子「(1日目ですから、他のグレンデルはまだこのあたりには湧いていないでしょう)」

ナビ子「(病院に搬送されれば、もう大丈夫ですね)」

ナビ子「(何はともあれ)」

ナビ子「(お疲れ様でした、男さん)」

ナビ子「(『人喰いの夜』1日目、無事終了です)」


残り猶予:29日

なんだこれ面白い

続き期待

これで本日の投下は終了です
続きは明日の夕方くらいからになると思います
読了いただきありがとうございました

なかなか面白い

面白いけど幼馴染から漂うビッチ臭。無駄なNTR展開とか要らないからな?物語だけ進めて欲しい。

それは警戒し過ぎ

グレンデル一般人には見えないのか。これ三十日目になったら一般人いなくなるよね?

こんにちは
次レスから投下を開始します


 ――――――――

 N大学附属病院


看護師「男さん、お加減の方いかがですか? どこか痛むところなどがありましたら、遠慮なく言ってください」

男「あ……いえ、全然問題ないです」

看護師「そうですか、それはよかったです」

看護師「先生も、あれだけひどい傷だったのに、縫合して一晩で起き上がれるようになるなんて奇跡だって仰ってました」

男「昔から、頑丈なのが取り柄なんで……はは」

看護師「では、何か用件などがありましたら、ナースコールでお呼びください」


 ――――――――


男「……ナビ子。この傷の治りの早さって、もしかして」

ナビ子「はい! プレイヤーに選ばれた方は、自然治癒力や身体能力が、普通の人よりちょーっとだけアップするんです!」

ナビ子「上昇度合は日数を経るごとに大きくなります! 最終日近くになれば、まあZ戦士レベルにはなれないまでも、人間の限界に迫れるくらいになっちゃうんです! すごいですね~」

男「逆に言えば、今はまだ『ちょっと治りが早い人』程度ってわけか」

ナビ子「そうですねー。傷はほとんど塞がってますけど、まだ内部の損傷は治りきってないですし、できれば2日3日、せめて今日くらいは療養に専念した方が得策かもしれません」



男「今日くらいは、か……」

男「そうこうしてる間にも、普通の人たちが犠牲になってるかもしれないんだよな……」

ナビ子「……男さん。昨日は言いそびれましたが、ナビ子は男さんに言わなくてはならないことがあります」

男「何だよ、急にかしこまって」

ナビ子「今は『人喰いの夜』から脱出することだけを最優先に考えてください」

男「……そりゃあれか? ナビゲーターとしての言葉か? それともお前個人の言葉か?」

ナビ子「両方です。見ず知らずの人のことを気にしていては、クリアどころか『7日の壁』を超えることだってできません」

男「7日の壁……?」


ナビ子「最初の一週間はならしみたいなもので、グレンデルもそんなに多くは出現しませんし、ある程度距離が離れていれば見逃してくれることもあります」

ナビ子「でも、一週間が過ぎた途端に出現率は指数関数的に跳ね上がりますし、目だけでなく、音や匂いでもプレイヤーの動向を感知し、襲ってくるようになります」

ナビ子「そんなとき、自分以外の誰かのことを気遣っていては、すぐに男さんは殺されてしまいます」

ナビ子「ですから……」

男「……分かってるよ。そのくらい」

男「昨晩死にかけて身にしみた。俺だけの力じゃ、一番身近にいる奴だって助けられない」

男「ちょっとくらい強くなったって、グレンデルの方も強化されるんなら同じことだ」


男「そんな体たらくで、不特定多数の人間の面倒なんて見きれるわけがないってな」

男「それに自慢じゃないけど、俺は人助けって奴を今までろくにしたことがないんだ」

男「まず外出自体滅多にしないし、困ってる人を見ても、基本的にスルーしてたからな」

男「そもそも、俺は人を助けるのには向いてない人間なんだよ」

男「だから安心してくれ、ナビ子。もう昨日みたいなことはないからさ」

ナビ子「……男さんがそんな人なら、ナビ子はこんな風に助言したりしないです」

ナビ子「昨晩、あれだけナビ子が止めたのに、男さんは全然耳を貸してくれなかった……」


ナビ子「自分が死ぬって分かってるのに、幼馴染さんのためにグレンデルに立ち向かいました」

ナビ子「どうしてですか? ナビ子には分かりません。自分の命は、何よりも大切にしないといけないものなんじゃないんですか?」

男「……頭に血が上って、身体が勝手に動いたんだ。どうしようもなかったんだよ」

男「幼馴染には、これから夜間不用意に出歩くなって言い含めとくから、もう心配ない」

男「アイツより仲がいい奴なんて、少なくとも大学周りにはいないからな」

男「幼馴染以外の奴なら、別に生きていようが死んでいようがどうだっていい」

ナビ子「……それならいいんですけど」


男「ていうか、昨日会ったばかりの俺のことを、何でそんなに心配するんだ」

男「攻略期限は実質ないようなもんだし、死んだって生き返れるし、何より俺が自殺したら次に行けばいいだけだろ?」

ナビ子「お、男さんはナビ子をカーナビか何かと勘違いしているんですか!? 非常に心外です!」

ナビ子「ナビ子だって怒るときは怒りますし、悲しいときは悲しいです。声だけでしか意思表示できないですけど、れっきとした人格を持ってるんです!」

ナビ子「ナビとしてプレイヤーさんに就く以上はできるだけ死なれたくありませんし、仲良くなれるよう精一杯努力します!」

ナビ子「攻略を円滑に進めるためだと言われてしまえばそれまでですけど……少なくともナビ子はナビ子として、男さんと良好な関係を築きたいと思ってるんですよ!」

男「……悪いこと言ったな、ナビ子。ごめん、謝るよ」

ナビ子「いえ、その、ナビ子も少し熱くなりすぎました……ごめんなさい」


 こんこん


男「ん? 誰か来たのかな。どうぞー」


幼馴染「…………」

男「あ、幼馴染。怪我は――――」

幼馴染「…………っ!」ヒシッ

男「なっ……ちょ、おま!?」

幼馴染「心配してたんだよー! 男くんが急にお腹と手から血を出し始めたから、変な病気にでも罹ったのかなーって……ううう」

男「どんな病気だよ……つか、まだ治りきってないんだから、あんまり触らないでくれ」

幼馴染「あ! ご、ごめんね……嬉しくてつい」

幼馴染「……男くん。何か運動とか始めた? 前より筋肉ついてきてる感じするんだけど」

男「俺がか? いや、何も。家でゴロゴロしてるだけだよ。たまに気まぐれで筋トレルームには行ってるけど」

幼馴染「そうかなー? 筋トレとかじゃなく、自然についた感じの筋肉だと思うんだけどなー……」


ナビ子「男の人の身体つきに詳しいって、何だかちょっといやらしい感じですね? どこで知ったんでしょうね、にひひ」

男「変なこと言うな!」

幼馴染「わっ!? ど、どうしたの急に」

男「いや、何でもない。突然昨日見た悪夢の内容がフラッシュバックして……」

幼馴染「フラッシュバック? それって、怖い目に遭った人がなるのだよね? 大丈夫なの?」

男「心配ないって」

ナビ子「言い忘れましたが、ナビ子と会話するときは心の中で言葉を思い浮かべるだけで結構です」

男(先に言え!)

ナビ子「はいはいその調子ですよー。にっひひひひ」

男(こ、この女~!)プルプル


幼馴染「ま、元気そうだし安心したよ。じゃあ私、これから学科の先輩とスポッチャ行ってくるから!」

男「新歓か何かか? 気が早いな……」

幼馴染「うん、そんなとこー! じゃあね~」

男「あ、ちょっと待て、話が」


 ばたん


男「自由な奴……」

ナビ子「先輩って男の人ですかね?」

男「知らん。無駄に交友関係だけは広いからな。フェイスブックの友達が500人近くいるらしい。俺の100倍だ」

ナビ子「あの、それは男さんが少なすぎるだけじゃ……」


男「うるさいな。連絡はLINEでとれるんだからいいだろ」

ナビ子「まあそうですけど……しかし、見た感じフラグ立ってるっぽいのに、男の人と普通に遊びに行ったりしちゃうんですね」

男「だから、先輩が男だって決まったわけじゃねーだろ。勝手に決めつけるな」

ナビ子「またまた。男同士ならともかく、女性が後輩の女の子誘ってスポッチャなんか行くわけないでしょ。十中八九男ですよ。しかも割りと遊び人タイプ」

男「……別に。アイツの勝手だろ。俺が知るかよ」

ナビ子「男さん、ペットだって構ってあげないと愛想つかされるんですよ? あんまり余裕かましてると、横から誰かにかっさらわれてっちゃいからね」

男「別に好きじゃねーっつーの……」

ナビ子「ま、幸せは失って初めて幸せと気づくものですからね。それもまた、若いうちに経験しておくべき小さな不幸ってヤツですよ」

男「お前いくつだよ」

ナビ子「禁則事項です☆ にぱ~」

男「…………」


 ――――――――


 ラウンドワン


幼馴染「すいませーん! ちょっと遅れちゃいました~」

チャラ男「おっせぇよ幼馴染~! 皆待ちくたびれちゃってんだけど?」

幼馴染「あはは……すいません(いきなり呼び捨てって……なれなれしいなあ。名前もよく知らないのに)」

マッチョ「悪いな、幼馴染。学科の新歓に全然人が集まらなくてな。チャラ男が幼馴染なら盛り上がるって言うから、急遽ピンチヒッターに来てもらったんだ」

マッチョ「お詫びと言っちゃなんだが、今日は全部俺が奢るよ。もちろんスポッチャもな」

幼馴染「ホントですか先輩!? ねー友人ちゃん! 後でゲーセン行こー! UFOキャッチャーやらない?」

友人「いいねー! 行こ行こ!」

マッチョ「おま、容赦ねえな! つか、友人! お前にゃ奢らねえぞ! 勝手に来たくせに!」

幼馴染「あはは、冗談ですよ、冗談!」

マッチョ「全然そうは聞こえなかったんだが」

チャラ男「幼馴染マジ悪女だなー。男に奢らせるの得意っしょ?」

幼馴染「やだなー……えーとチャラ男さん。私これ素ですよ、素。奢らせようなんてしてないですよ~」

チャラ男「またまたー。手馴れてるって感じじゃん。そうやって男を手玉に取ってきたんだろ? ズルいね~」

チャラ男「付き合い出したら豹変するっしょ? ものとか超買わされそうだし」

幼馴染「あはは……」

友人「ちょっと、言い過ぎじゃ」

マッチョ「チャラ男」

チャラ男「え? 何ですかマッチョさん」


マッチョ「そういやお前、俺から10000円借りてたよな? スロットで教科書代スッたって言うから、翌月に返すって約束でもう半年経ってるぞ。あれどうなってんだ? おい」

チャラ男「いや、その、利子つけて返そうと思って、今バイトしてんすよ、はは……」

マッチョ「利子? そんなのいらねえよ。金貸しじゃあるまいし」

チャラ男「や、マジ今手持ちないんで、後ちょっとだけ待ってもらえたらなーなんて」

マッチョ「そこにコンビニあるじゃねえか。行ってこいよ」

チャラ男「ま、マジっすか!? いや、先月も余計に金下ろして親にクソ怒られたんですよ。だからそれだけは勘弁してほしいっす」

マッチョ「は? まだ月初めだろ。もう生活費使いきったのか?」

マッチョ「つーことはお前、今月も俺に金返せねえじゃねえか。どうなってんだコラ」

チャラ男「え、ええと、その……」


幼馴染「先輩、そのへんにしといてあげてくださいよ~。チャラ男さん可哀想ですって」

友人「そうですよー。チャラ男くんがダメダメでチャラくて甲斐性ないってことくらい皆知ってますし」

友人「そんなだから彼女にもフラれたんだよね~?」

チャラ男「う、うっせ! 今は関係ねーだろそれは!」

幼馴染「チャラ男さんフラれちゃったんですか? ドンマイでーす!」

友人「今日は皆でチャラ男くんを慰めてあげましょー!」

後輩「チャラ男先輩かっこわるーい!」

チャラ男「や、やめてくれよ……」


 どっ

(みんな良いやつじゃないか!)


 ――――――――


 居酒屋『響』


幼馴染「先輩、今日はありがとうございました」

マッチョ「何だよ、藪から棒に。むしろありがとうございましたはこっちの台詞だよ」

幼馴染「とぼけないでくださいよ。昼間チャラ男さんから庇ってくれたじゃないですか」

マッチョ「アイツは絡めると見たら徹底的に上から目線になるからな。悪い奴じゃないんだが……」

幼馴染「そ、そうなんですか……」

マッチョ「ま、アイツにも良いところはあるんだ。あんまり嫌わないでやってくれ」

幼馴染「先輩って、ホントいい人ですよねー」

マッチョ「何だよ、お前もしかして俺に惚れたのか?」


幼馴染「はい! 私、先輩の筋肉大好きです! かっこいいですよね~、彼女さんも鼻が高いんじゃないですか?」

マッチョ「自分より胸がデカいのが気に食わんってさ。向こうから告ってきたくせに」

幼馴染「照れ隠しですよ~」

マッチョ「はっはっは、まあな」

マッチョ「俺のことはいいんだよ。お前の方はどうなんだ。引く手数多だろ、特にチャラ男とか」

幼馴染「いやー、あの人モヤシですし、私より筋肉ある人じゃないとちょっと恋愛対象には見れないですねー、あははっ」

マッチョ「わははは! それならしょうがないな!」


マッチョ「ま、いつか出てくるだろ。お前の眼鏡に適う奴が」

幼馴染「……まあ、いないではないんですけど」

マッチョ「何!? 本当か、詳しく聞かせろ!」

幼馴染「あ、いやその! 今のはく、口が滑ったというか、なんというか……」

チャラ男「えーどしたの幼馴染ちゃん。何かあったの?」

幼馴染・マッチョ「「お前(チャラ男さん)には関係ない(です)!」」

チャラ男「ひぃ!?」



 ――――――――


 病院


男「……ダメだ、アイツまだLINE見てねえ」

ナビ子「困った人ですねー。今日は白馬の王子様も参上できないのに」

男「誰が白馬の王子様だ、誰が……!」

ナビ子「そうですよね、どっちかというと魔法使いですもんね」

男「やかましい!」

男「クソ、まずいな。そろそろ日没だっていうのに……」

ナビ子「二度目になりますが、今日だけは大人しくしておいた方が得策ですよ」

男「分かってるよ!」


男「(確かスポッチャに行くって言ってたよな? 大方その後は『響』か『くれない』……スポッチャ後なら一汗かいてるだろうし、一端解散してから再集合って流れのはず)」

男「(学科の新歓ってことは、参加者は文系だろう。なら、住んでる場所も南口付近のはず)」

男「(この時期ならまだそんなに混んでないから、順当に南口の居酒屋に行ってるに違いない)」

男「(となると、『響』だろうな)」

男「(ここからもほど近いし、何なら直接行ったっていい……)」

男「(行くなら今だ。急げば夜になる前に行けるはず……)」

ナビ子「お悩みのようですねー。では選択肢を提示しますので、バシッとお選びください! さあ、どうぞ!」


1、行くなら今だ。『響』へ。

2、軽はずみな行動はよくない。もう少し考えてみる。

 
安価直下


まぁただ行っても、守れるわけでも逃げられる訳でもないからね
せいぜい居ることが分かるくらいだし

→2


男「(いや、落ち着いて考えてみよう)」

男「(居酒屋にいる限りはグレンデルに襲われることはないし、上手くいけば日付が変わるまで外に出ることはないかもしれない)」

男「(さすがにそれは都合が良すぎるにせよ、今から無理に行ったところで、何ができるわけでもない)」

男「(ここは大人しく、こまめにLINEを送るだけにしておこう)」

男「くそ、歯痒いな……!」ポポポポポポポポ

ナビ子「ス、ストーカーみたいな勢いで送りまくってますね……そんなに心配なら行ってくれば――とは言いませんけど」



 ――――――――


 居酒屋『響』


マッチョ「じゃ、今日はここらでお開きにしようか」

一同『お疲れ様でーす!』

チャラ男「なあ幼馴染、これからカラオケ行かね? 俺EXILEとか超上手いよ?」

幼馴染「遠慮しときまーっす! 私、これから病院行って男くんと一緒にお泊りしなきゃなんで!」

チャラ男「お、男? 誰だよそれ、聞いてないぞ!?」

幼馴染「そりゃ言ってませんし」

チャラ男「うぐっ……」


幼馴染「じゃ、お先失礼します! 友人ちゃん、かえろー」

友人「おっけー。じゃ、お疲れさまでしたー! マッチョ先輩今日はごちそうさまでーす!」

マッチョ「奢ってねえからな! 絶対返せよこのアマ!」

友人「まあ近いうちに~」

マッチョ「明日だ!!」


 ――――――――


友人「しかし病院にお泊りってどんな断り方よ。今日昼間に男くんのお見舞い行ってきたんでしょ?」

友人「お腹と右手に大穴空いたのに、次の日になったらけろっとしてるって、何者なのその人」

幼馴染「うーん……新陳代謝がいいんじゃない? よく分かんないけど」

友人「いい加減ね……ま、お医者さんが分からないことが、幼馴染に分かるわけないか」

幼馴染「そうそう」


 ――――――――


 N大学附属病院


幼馴染『心配してくれてありがとー! 今日は友人ちゃんのお家に泊めてもらうね!』

幼馴染『見てー! 友人ちゃんのお家すっごい大きいよー! 寮とは大違い! びっくりだよ~』


男「……文面が俺っぽくなくなかったか?」

ナビ子「何恥ずかしがってるんですか、もう! 中学生じゃないんだから、このくらい女の子に優しくできないとダメです!」

男「いや、絶対おかしい。俺はこんな文章書かない」

ナビ子「はいはい、分かりました分かりました」

男「真面目に聞け……!」


 かつ、かつ、かつ、かつ


看護師「男さーん。もう消灯時間過ぎてますので、お静かにお願いしますねー」


男「す、すいません……!」

ナビ子「今日のところは、大人しく寝た方がいいですね」

男(そうするよ。何も進展なかったけどな)

ナビ子「誰も死なずに済んだんですから、喜ばないとダメですよ?」

男(俺の知る範囲では、だけどな)

ナビ子「それは言わない約束ですよ、男さん」

男(分かったよ)

ナビ子「まあそういうわけで」

ナビ子「『人喰いの夜』2日目、無事終了です!」


残り猶予:28日

これにて投下は終了です
次は明日の午前中くらいからの投下になると思います
読了いただきありがとうございました

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