男「まどマギの世界に来てしまった」 (165)
転生もの。
他の作品からの能力輸入。
原作崩壊。
多重クロスあるかも。
その他いろいろ地雷要素てんこ盛り。
適当に書いて行きます。
それでは始まり~。
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反逆視聴終了
男「…………」
男「……なんだよ……なんだよコレェェェ!!」
男「なんでほむほむ悪魔になっちゃってんですかァァァ!?」
男「そこはまどかに導かれて、ほむらちゃんがんばったねってハッピーエンドでいいでしょ!?」
男「つーかほむほむこえーよ!! 目ぇ、こえーって!!」
男「はぁ……はぁ……」
男「あまりの衝撃に我を忘れて叫んでしまった」
男「くそったれ……興奮しすぎて眠れやしねぇぞ」
男「……TV版でもほむほむとまどかは分かり合えたと思ったら離れ離れになって、映画では今度こそ一緒になれるって思ってみてたのによぉ……」
男「……なんでほむほむ、あんな事になっちまってんだよぉ……」
男「……もっとさぁ……こう……なんかあったでしょ……」
男「……ああ……俺が……まどマギの……世界に……行ければ……こんなことには……」
男「」zzz
―――――――
――――
――
―
「目を覚まして」
男「……? ……んあ?」
「目を覚ましてよ」
男「……もーすこし寝させろよ。…………!?!?!?」
「やぁ、目が覚めたようだね」
男「お、お前……」
「どうしたんだい?」
男「き、QB?」
QB「キュービー? 僕の名前はキュゥべえだよ」
男「やっぱりQBじゃねーーーか!! う、動いてるし、喋ってるぞこれ!?」
QB「僕を誰かと勘違いしていないかな?」
男「あ、そーいうことか」
QB「どうしたんだい? いきなり何かを納得したような感じだけど」
男「これは夢か。昨日まどマギ全話と反逆まで夜通し見続けて眠っちまったからまだ夢の中ってことか」
QB「まどマギ? 君は一体何を言っているのかな?」
男「夢とはいえ、お前が出てきたって事は俺を魔法少女にするつもりだろ!?」
QB「……どうして僕のやろうとしていることがわかったんだい? まあ、正確には魔法少女じゃなくて魔法使いになってもらいたくお願いしに来たんだけどね」
男「なーんちゃって、俺男だし魔法少女になんか……って、魔法使い?」
QB「そうだよ」
男「なれるの?」
QB「うん」
男「なんというご都合主義の夢……まあ、夢だし深く突っ込んでも仕方ないか」
QB「どうかな? 僕と契約をしてくれないかな?」
男「うーん……どうすっかな」
QB「お願いだよ」
男「だってさ、お前と契約したら石ころに変えられちゃうじゃん?」
QB「……ソウルジェムのことを指しているのかな?」
男(あー、それでも魔法使いになれるんなら夢の中でもほむほむがあんな目に会うことなんて無い様にできるかも……)
男(そもそもアニメ本編もみんな救われなさ過ぎなんだよな。結局最後はほむほむ以外全員死んじまってんだよな? ……つーか、あれほむほむ最後はどこで戦ってんの?)
男(それにまどかが一人で犠牲になって円環の理になるってのも救われないよな。導いた魔法少女とは一緒に入れるのかもしれないけど誰にも認識されないって酷すぎだぜほんとに……)
男(ほむほむなんか反逆ではあんな事になっちまったし……)
男「…………」
男「よし! 俺があんな事にならないように全員救ってみせるぜ!!」
QB「…………?」
男「おい、QB。俺を魔法使いにしろ!」
QB「それは僕と契約してくれると考えていいのかな?」
男「おう。俺がお前のたくらみを全部ぶち壊してやるから覚悟しておけよ?」
QB「……君の願いを教えてもらってもいいかな?」
男「? ああ、願い事があったな……お前達の存在をこの宇宙から消してくれって願えば全部解決しそうだけど……」
QB「…………それは遠慮してほしいな」
男「わかってるっつーの。お前いないと物語が始まらないし、マミさんも死んでしまうからな。お前は生かしておいてやる感謝しろ」
QB「……感謝するよ」
男(しかし願いか。……困ったな、何も思いつかん)
男(まあ、夢だし適当でいいか。適当に……)
男(って、ちょっとまてよ? 確か願い事で自分の魔法って決まってたよな?)
男「なあ、ちょっと聞かせろ」
QB「なんだい?」
男「魔法少女……あー、俺の場合は魔法使いか。俺の魔法って願い事によって変わるんだよな?」
QB「そうだね」
男「願い事次第でどんな魔法でも使うことが出来るんだよな?」
QB「そうだよ」
男「ふむ……」
男(どうせなら強い魔法がいいけど……やはり願い事次第か……)
男(それならほむほむと同じように時間停止魔法を使うための願い……いや、どんな願いにすればいいんだよ……)
男(ん? 願い……)
男「おい。も一個聞かせろ」
QB「なんだい?」
男「願い事に時間操作魔法を使えるようにしてくれって願えば俺は時間操作魔法を使うことが出来るのか?」
QB「できるだろうね」
男「!! それなら…………」
男(いやいや、まてよ)
男(時間操作魔法はほむほむの魔法だし、俺が使うのはちょっと違うような気がする)
男(願いで魔法を選択するなら、もっと色々とできる能力)
男(……あ! 最近見たアニメでやべー能力あったな)
男(そうだ、アレにしよう! あの能力)
男(あの能力があれば、全員に魔女化しないって書き込めば魔女化しないだろうし、アニメでも出てこなかったキャラの心の内を読んで知ることが出来るかもしれない……よし、決定だ!)
男「願い事が決まったぞ!」
QB「本当かい?」
男「ああ、俺の願い事は、俺がスタンドのヘブンズ・ドアーを使える様になることだ!」
QB「……よく分からないんだけど」
男「は? スタンドだぞ? お前ジョジョ知らねーの?」
QB「よく分からないよ」
男「おいおいおい……宇宙人の癖にジョジョも知らないのかよ……」
QB「すまないね。いまいちよく分からないけど、君の願いは本当にそれだいいんだね?」
男「おい、いまいちよく分からないとか言っておきながら本当に願いは叶うのかよ?」
QB「問題ないよ。願いは君の思考が強く影響される。僕が理解していなくても君が理解しているのならば、君の望む結果が願いとして叶うことだろう。ましてやこの宇宙の因果に縛られていない君のことだ、この宇宙に存在しない新たな法則や因果を生み出すことも可能だろう」
男「???」
QB「契約は成立だ。これで君の魂は僕達の宇宙の因果に縛られることとなった」
男「うお!? おああああああああ!?!?」
男はその時に初めて自分の身体の異変に気が付いた。
手も足も無い、白く光る丸いなにか。
その白いなにかから眩い光が発せられ、次の瞬間には白いなにかは白く輝く宝石へと変わっていた。
そこで漸く男は今置かれている状況に不安を持ち始めた。
男「な、なんだ? 今の?」
QB「……驚いた。ここまでのエネルギーが得られるとは思ってもいなかったよ」
男「へ?」
QB「……君の魂は恐らくはこの宇宙とは別の宇宙からやってきた魂だ。この宇宙の因果とは別の因果を持つ君の魂。いわばこの宇宙におけるイレギュラーといえる存在が君だった」
QB「君の魂に手を加える上で、君のいた宇宙と干渉できるかと思ったが君の因果の糸は既に君のいた宇宙からは切り離されていた。非常に残念だね」
男「ちょ、ちょっと待ってくれよ……なんかこの夢リアルすぎるんですけど。なんか無性に嫌な予感がするんですけど」
QB「さて、君の魂に触れさせてもらった結果、君は太陽系における、地球の類人猿の一種・所謂人類とほぼ同じ魂・感情を持っているようだ」
QB「君の魂から、外付けの肉体を生み出した結果、君は人類と変わらない肉体を持っているようだね」
QBの横に男が見慣れた肉体が現れる。
男「お、俺?」
QB「この肉体で活動できるのは地球くらいのものだ。サービスで君を地球に転送しておいてあげるよ。ここは太陽系から遠く離れた宇宙空間なんだからね」
男「ま、まて、ちょっとまて!」
QB「それじゃあね」
QBが言うと男のソウルジェムと肉体は掻き消え、その場、真っ暗な宇宙空間にはQBのみが残った。
QB「やれやれ。実に興味深い存在だった」
QB「宇宙空間に現れた謎のエネルギー体を観測しに来てみれば、人類の魂に酷似したエネルギー体」
QB「エネルギー体の観測対象とは意思の疎通が可能、契約まで漕ぎ着けられたのは僥倖といえるのだろうね」
QB「観測対象は上位宇宙の存在である可能性が極めて高い。契約の際に発生したエネルギーは明らかにこの宇宙に存在しないエネルギーだった」
QB「観測対象のようなエネルギー体は何体も観測されている……それが今回のケースのように契約まで行えるようならば……宇宙のエネルギー枯渇問題解決の新たな糸口となるだろう」
QB「しかし観測対象は我々の容姿、目的も知っているような様子だった。……さらに明確な敵意も伺え、願いにより我々が滅ぶ可能性もあった……」
QB「今後は我々の姿を隠蔽し交渉をして見るとしよう」
そして宇宙空間からQBの姿も消え、その場には静寂だけが残った。
どこかの建物の屋上
男「…………」
男「うっ……」
男「ここは……?」
男「……屋上? どこの屋上だ?」
男「まて、なんで俺はどこかもわからない屋上で寝てたんだ?」
男「確かに昨日は家で眠ったはずだけど……」
男「俺夢遊病にでも罹ったか? ……ん?」
男「なんだこれ………………えっ?」
男が見たもの。
それは男の手にある白いソウルジェムだった。
男「は?」
男「ちょ、ちょっと待て。これってアレだよな? ソ、ソウルジェムだよな?」
男「ははは……。そういうことか! まだ夢だっていうことだな!」
男「よし! もう一回目を瞑ってあければ……」
男「……何も変わってない」
男「まてまてまて……」
しばらくの間、目を覚ますために様々なことを試していた男だったが、目を覚ますことは一向に無く。皮膚に伝わる刺激や、クリアな思考がこれは現実だと男に理解させた。
男「お、おいおいおい……コレって現実? 嘘だろオイ……」
男「お、俺、夢の中でQBと契約したのって……アレも現実?」
男「そ、そんなわけないよな……これもおもちゃで、いつの間にか俺は……」
男「…………念のために試してみよう」
男「……」
男がソウルジェムを持って強く念じると、ソウルジェムから突如光が溢れ出し、男の姿は光につつまれ、次の瞬間には白いシルクハットと白いコートを纏った姿に変わっていた。
男「う、うっそだろオイ」
男「変身しちまったぞ、俺……しかもヘブンズ・ドアーのスタンドのような格好……」
男「……ということは、アレは全部現実?」
男「俺、QBと契約しちゃった?」
男は数分呆然と立ち尽くし、急に叫びだした。
男「ちょっとまてえええええええ!! つーことはなんだ!? アレか!? 俺、二次元に来ちゃった!?」
男「この感覚どー考えても現実!! 俺、二次元に来ちまったよぉぉぉぉぉ!!」
男「普段なら喜ぶけど、俺QBと契約しちまってんじゃねーかよ!! この時点でアウトじゃねーかよ!! 俺のバカ!!」
男「お、落ち着け、クールになれ俺。絶望するのはアカン、ソウルジェムのケアは重要だ!!」
男「状況を整理しよう。今出来ることを探すんだ……」
男「俺は夢だと思って、QBと契約して。願い事を……」
男「そ、そうだ! 確か願いで俺はスタンドを使えるようになってるんだよな!?」
男「ヘブンズ・ドアーで俺に魔女化しないって書き込めばとりあえずは最悪の状況から逃れることは出来るはずだ!!」
男「よ、よし。まずはスタンド……って、スタンドってどーやって出すんだよ!?」
男「だ、駄目だ。絶望するんじゃない……出来ると考えるんだ。空気を吸って吐く事の様に……HBの鉛筆をベキッっとへし折ることと同じようにできて当然だと思うんだ……」
男「『ヘブンズ・ドアー』頼む出てくれーーーー!!!!」
ズキュウウウウゥゥゥンンン!!!!
男「で、出た」
男の隣には、男が見たジョジョのスタンド、ヘブンズ・ドアーが現れていた。
それと同時に男の右手には古びた本が現れていた。
男「よ、よしっ! スタンドは出たぞ!! これで最悪の事態は回避できる…………」
そこで男は思い出した。
男「……まてよ。ヘブンズ・ドアーの発動条件って……」
男「自分で描いた絵を見ること……」
男「うおおおおおおおおおお!? やっべぇ、俺、絵心なんてないぞ!?」
男「と、とりあえず、空中に絵を……って描ける訳ねーだろ!?」
男「こ、混乱している。落ち着け、クールになれ」
男「まずはペンと紙を用意して……って、いつの間に俺、本なんて持ってんだ?」
男「ま、まあいい。この本に書き込めば……なんだこれ?」
本を開き最初のページを見た男は、そこに書かれていた内容に目を留める。
名前:男
種族:転生者・魔法使い・スタンド使い
SP:97/100
状態:変身中……変身中は1時間毎にSP1消費。
スタンド発現中……ヘブンズ・ドアー発現中は1時間毎にSP2消費。
弱点:なし
装備:男のソウルジェム
転生記録書
能力:スタンド『ヘブンズ・ドアー』……発現可能、能力使用不能。
固有魔法『ライブラ』……対象の能力をみやぶる。SP5消費。
固有魔法『自動書記』……ライブラを使用した対象の情報を転生記録書に登録する。
男「……な、なんだこりゃ? 俺の情報?」
男「わ、わけわからん……なんなんだよコレ?」
男が本を凝視していると、スタンドのコントロールを切らしたのかヘブンズ・ドアーは消えてしまった。
そして、それと同時に男の周囲の空間が変わっていた。
それに気が付いた男は目を見開き、灰色に変わった空間を呆然と見つめる。
男「な、なんだ……これ……」
???「その姿、あなた転生者ね?」
男「?」
男「なっ!?」
男が振り向いた先にいたのは、男が見ていたアニメに登場していた人物。
黄色を基調にしたデザインの魔法少女衣装を纏った少女。
男「マ、マミ……さん?」
マミ「私の名前を知っているということは間違いなさそうね」
男(ま、まてまてまて!! やっぱり二次元だコレ!! まどマギ世界だよコレ!!!!)
男(というか、今マミさんは何て言った? 転生者? というか、何かマミさんの表情怖いぞ?)
マミ「あなたに質問があります。出来れば何もせずに私の質問に答えてくれればうれしいのだけど」
男「な、何? し、ししし質問?」
男(や、やべえ、緊張してうまく喋れねぇ……つーか、めちゃくちゃ可愛い……)
マミ「あなたのその姿。キュゥ……いえ、神と名乗る存在と契約した、別の世界からやってきた転生者で間違いないわね?」
男「へ?」
マミ「……あなたはこの世界に来る際に何かと契約した記憶は?」
男「け、契約って……お、俺は確かにQBと契約したけど……」
マミ「!! QB……キュゥべえのことね。それじゃあ、次の質問よ。あなたは私の名前を知っていた。ということは魔法少女まどか☆マギカという言葉に聞き覚えは?」
男「はぁっ!?」
男(な、何でマミさんがアニメの題名を……?)
マミ「その反応、あなたはこの世界を知っている転生者ね……」
マミ「……最後の質問よ。あなたは私たちに危害を加える意思があるのかしら?」
男「き、危害って? お、俺はそんな事するつもりは……」
マミ「…………」
男「お、俺はアニメで見て……それで、いつの間にか契約してて……や、やっぱりコレって夢? で、でも……」
マミ「…………」
???「マミ、この男は嘘を言ってはいない」
男「!?」
背後から聞こえた声に、男は振り向く。
そこにいた人物の姿格好に男の視線は釘付けとなっていた。
マミ「……本当に?」
???「ああ、私のこの導く薬指の鎖に無反応だ。その男、“今”は無害な転生者だ」
その人物は、整った顔をしており、誰もが美人というであろう風貌。
その目は赤く輝き、右手を前に突き出し、薬指を立てその指から伸びる鎖を男に向けながら近づいてくる。
マミ「……分かったわ。クラピカさん」
男「はぁぁぁっ!?」
マミが発した名前に、男は目を見開きクラピカと呼ばれた人物を凝視した。
今日はここまでで。
乙
地雷臭さがプンプンするが、一応もうちょっとだけ付き合ってやるぜ
感謝しろ
クラピカ「……私の名前を聞いて驚く。君はハンターハンターを知っているな?」
男「へ? う、うん」
クラピカ「ふむ……」
男(ま、まてまてまて……どういうことだ? 何でマミさんとH×Hのクラピカが一緒にいんの?)
クラピカ「君のその姿、君も願いに何か特殊能力を得る願いをしたと推測できる。君の願いを良かったら教えてくれないか?」
男「お、俺の願い? 俺の願いはスタンドのヘブンズ・ドアーがほしいって願いをしたんだけど」
クラピカ「……スタンド、確かジョジョの奇妙な冒険か。……そのスタンドの能力はどのような能力なんだ?」
男「え? えっと……人を本にして、人の記憶を読んだり、本にした人に命令を書き込んで操ったりできる…………」
男がスタンドの説明をしたと同時に、マミは男に向けてマスケット銃を構える。
男「うぇっ!?」
クラピカ「マミ、落ち着け。その銃を下ろすんだ」
マミ「いいえ、下ろさないわ」
クラピカ「分かった。それならそのままでいい……質問を続ける、君はその力でマミやまどかマギカに出てくる登場人物を操ろうと考えていたか?」
男「あ、操るってそんな事考える分けないだろ!? 何かをするつもりなんか……」
男が発言したと同時にクラピカの鎖が動く。
クラピカ「何かを隠しているな? 私を偽ることは出来ない、全てを話したほうがいい、もう一度隠し事をするようならば君の安全を保障できない状態になる可能性がある」
マミ「……」カチャリ
男「ま、待てって! そりゃ、アニメで見れなかった、みんなの心の内とかを本にすれば読めるかもしれないって思ったりしたけど、それもちょっと……いや思いました……はい」
マミの視線が鋭く男を貫き、男はマミの視線に耐えられず本音を零し続ける。
男「で、でも、この能力で全員に魔女化しないって書き込めばみんなを助けることが出来るって思ったんだ。それがこの能力を選んだ一番の……いや、やっぱり、本にして心の内を読むことが一番だったと思います……」
クラピカ「……なるほどな」
マミ「……」
男「で、でも、操るつもりは一切無いって! 本当なんだって!!」
クラピカ「この言葉に偽りは無い。マミ、君が決めればいい。この男を連れて行くか、それともこの場で私が戒めの鎖を撃ちこみ放置するか」
男「うげっ!?」
マミ「……」
男(オイオイオイ、ちょっと待てよ!? 頭が追いつかねぇよ!? なんで俺尋問されてんの? なんで俺マミさんに銃を向けられてるの? つーかなんでまどマギにクラピカ!?)
男(マミさんの目すげー冷たいし、このクラピカも物騒なこと言ってやがるぞ!? 戒めの鎖ってアレだよな? ウヴォーの心臓を潰したアレだよね!? そんなの撃ち込まれたら俺死んじゃうよ!?)
男(やっぱ夢だコレ。だって滅茶苦茶だもん。あー、夢か。そうだね、夢だよ)
男が現実逃避をしていると、灰色の空間の上空に異変が起きた。
空間に無数の線が入り、それは徐々に広がって行っていたのだ。
マミ「っ!?」
クラピカ「なんだ……? まさか!?」
異変に気が付いたマミとクラピカはそれぞれ行動を開始した。
マミは手に持ったマスケット銃を男から上空に構えなおし、警戒態勢を取る。
クラピカは手を耳に当て、何かを呟き始めた。
クラピカ「私だ。一体何があった?」
クラピカ「……何だと?」
マミ「クラピカさん、状況は? フェレットさんは何て?」
クラピカ「……敵だ。コードネーム・一方通行。フェレットの封時結界もあと数分で破られる」
マミ「嘘……」
クラピカ「マミ。君はオセロにテレパシーを送ってくれ。数分以内に幻想殺しを連れて加勢に来るように、と」
マミ「……分かったわ」
クラピカ「それまでは、私が時間を稼ぐ」
二人のやり取りを口を開けながら見ていた男は思う。
男(なーんかまた変な言葉が聞こえたような? 一方通行に幻想殺し? アクセラレーターにイマジンブレイカー? とあるじゃねーか……)
男(もうわけわからねーって。なんか考えるのもめんどくさくなってきたぞ)
ぼーっと立ったままの男だったが、その男の姿を見てマミは焦りながら呼びかける。
マミ「あなた、こっちに来て!!」
男「? 俺?」
マミ「そうよ!! 早くこの場から離れなさい!!」
男「???」
マミ「~~~っ!! 早くしなさ……!?」
マミが苛立った顔をして男を強制的にこの場から移動させようとしたときに、空間に入ったひびは空間全体に広がり、灰色の空間ははじけ飛び、元の色のある空間に戻った。
弾けとんだ空間に男は驚き、周囲を見渡す。
そして、違和感に気が付いた。
上空に人が浮かんでいたのだ。
その人物は上空から3人を見下ろしながら口を開いた。
???「ご開帳~~~てかァ? どれどれ、どんな野郎が…………」
???「あァ? 鎖野郎とリボン女じゃねェか。なンだよ、魔力反応があったから折角来てやったのによォ、オマエらじゃ……」
???「おォ? そこの白いヤツは初顔だなァ? オマエもコイツ等の仲間か?」
男「へ? お、俺?」
クラピカ「この男は関係の無い一般人だ。貴様が……」
???「オイオイオイ、俺はその白いヤツと話してンの。口だしてンじゃねェよ」
???「そンで、オマエ。コイツ等の仲間か?」
男「え? えーっと?」
男(な、なんかよく分からんがやばそうなやつだぞ? マミさんやクラピカもすげー怖い顔してるし、それにこいつなんかすげー圧迫感があるって言うか……)
その時、轟音と共に何かが男に向かって投げつけられ、男の耳元をかすめ屋上のフェンスを吹き飛ばした。
男「……? い、痛っでぇぇぇぇぇ!?」
???「無視してンじゃねェよ。オマエ、何なンだよ? この俺の前でずいぶんと余裕かましてンじゃねェかよ?」
一方通行「最強の能力者。この一方通行(アクセラレータ)様の前でよォ!」
男は自分の耳を押さえ、耳から流れ出す血を見て顔を青ざめた。
男(痛い! 痛い痛い痛い!! 夢じゃねーよ!? マジだよコレ!! 現実だよコレ!!)
男(つーことは……俺、今空中に浮いてる野郎に殺されかけた……?)
男(一方通行とか名乗ったこの野郎に殺されかけたの……?)
男(う、嘘だろ? い、嫌だぞ。死にたくないぞ俺)
男はふらふらと後ずさり、数歩後退したところで足を取られ転倒してしまった。
それを見た一方通行と名乗った男は笑い始める。
一方通行「……プハッ、ギャハッ! ギャハハハハハハハハ!! なンだそりゃ!? ビビってンのオマエ!? 今のでビビっちゃったの!?」
男「ひぃっ……」
一方通行「ギャハハハハハハハハハハハ!! は、ハラ痛てェよ!! オマエ、そりゃねーだろ!? 今まで見たヤツ等の中で一番情けねェぞ!?」
空中で腹を抱えながら笑い続ける一方通行を見ながら必死に逃げようとする男。
だが、男は腰が抜けてしまったようで、ぐねぐねとのたうちながら転がるだけだった。
それを見て、一方通行はさらに笑い声を上げる。
男「た、たすけ……」
男の情けない姿を見て、クラピカとマミから完全に視線を外した一方通行。
そして、二人はその隙を見逃さずそれぞれ一方通行に向かって攻撃を行った。
クラピカは右手の中指から鎖を伸ばし、マミはリボンを伸ばしそれぞれ一方通行を拘束する為に一方通行に攻撃をした。
だが、二人の鎖とリボンは一方通行に届く寸前で弾き返されるように空中を彷徨い、二人はそれを見て顔を顰める。
一方通行「ン? 今なンかしたのか?」
目に笑い涙を浮かべながら一方通行は語る。
それと同時に、男の頭の中に声が聞こえてきた。
クラピカ『マミ、増援は後どれくらいで来る?』
マミ『……駄目。幻想殺しさんが動いてくれないみたい……、絶対に行かないって言っているって……』
クラピカ『……オセロに伝えてくれ、無理矢理にでも連れて来るようにと』
男『!?!? な、何だこりゃ!? 頭の中に声が!?』
クラピカ『……君も出来るなら逃げてくれ。奴の相手をしながら君を守ることは出来ない』
男『ま、ままま、待ってくれよ!! わけわかんねーって!! 何が起こってんのこれ!?』
クラピカ『説明している時間はない。……来るぞ』
クラピカの声に男はハッとした顔で空中を、一方通行を見た。
一方通行「なァに仲良くテレパシーしちゃってンですかァ? やっぱりその白いヤツはオマエらの仲間ってことだよな?」
一方通行「さっきの情けねェ行動も演技ってことかァ? 俺の隙を誘うための? イヤ、そんな感じじゃなかったなァ……」
一方通行「まァいい、少し試してみれば分かることだ」
一方通行「簡単に死ンでくれるなよ?」
一方通行がそう言った瞬間、マミとクラピカは同時に散開し、一方通行に向けて攻撃を開始した。
今日はこのへんで。
>>28 感謝するぜ。お前と出会えた、これまでの全てに!!!
何というか、こう、いい具合に厨二心を擽られるから頑張って欲しい
こういう>>1が好きな作品が入り混じった作品は完結まで行った試しがないから尚頑張って欲しい
えーっと、うん……
頑張れ☆
空中でへらへらと笑う一方通行に先手を取ったのはマミだった。
マミ「レガーレ・ヴァスタアリア!!」
マミの叫びと共に、瞬く間にリボンが絡み合い一方通行を囲むように広がり続ける。
広がり、絡み合い、十数メートルはあろうかというリボンで作られた球体が空中に出来上がった。
もちろんその中には一方通行がいる。隙間すらなく、脱出することすら不可能かと思えるリボンの牢獄。
だが、それだけでは終わらず、さらにマミは手元のリボンを引きつけ、球体を一瞬で数メートルの球体にまで収縮してしまった。
マミ「クラピカさんっ!!」
クラピカ「……はぁっ」
さらにそのリボンの球体を覆うように、クラピカの右手中指から伸びた鎖が何重にも重なり、数秒後には鎖の鉄球が完成していた。
男はその一連の光景を目に映し呆然と口を開け呟く。
男「す、すげぇ……」
男が呆然と立ち尽くしているところを目の端に捕らえたマミが男に向かって言い放った。
マミ「何をしているの!? 早く逃げなさいって言っているでしょう!?」
男「え? だ、だって、そいつもう動けないでしょ?」
クラピカ「マミ!! 気を逸らすな!!」
クラピカが叫んだ瞬間、鎖の鉄球は内側からはじけ飛び、中からいまだに笑っている一方通行が現れる。
男「!?!?!?」
一方通行「駄目だね、全ッ然ッ駄目だ! そンな攻撃じゃ、100万年経っても俺に攻撃を当てることなンざできねェよ!」
一方通行「オマエ等はつまんねェから下がってな。そこの白いヤツと遊ンでからオマエ等の相手をしてやンよ」
一方通行が二人に手を向けると、先ほど弾けとんだ鎖の破片が意思を持った銃弾のように二人に降り注ぐ。
10メートルもない距離を、高速で迫る破片。
通常の人間ならばなすすべなく全身を貫かれるであろう凶弾。
だが、マミとクラピカは迫り来る凶弾を、マミはマスケット銃ですべて撃ち落し、クラピカは薬指から伸びる鎖ですべて受け止めていた。
一方通行「ほォ……、防御はやるじゃン」
一方通行「……なら、コレはどうする!?」
一方通行が両腕を薙いだ。
その瞬間、マミとクラピカに向かって突風と共に、圧縮された空気の塊が襲い掛かった。
マミ「うぁっ!!」
クラピカ「っっ!!」
二人は咄嗟に防御をするが、まるで巨大な丸太に殴られたかと錯覚するような衝撃が二人の全身を襲う。
そして二人はそのまま上空に吹き飛ばされていった。
一方通行になすすべも無く、マミとクラピカの姿は屋上から消え、残ったのは男と一方通行のみであった。
男(へ? な、何? 二人ともどこに行っちゃったの? 俺が見間違えてなかったら二人ともどっかにとんでっちゃったよ?)
一方通行「よォ、待たせたなァ。そンじゃ、やるか」
男(や、ややや、やるって何? い、嫌な予感しかしないけど、い、一応聞いてみないと)
男「やややや、やる? ななな何を?」
一方通行「決まってンじゃねェか」
一方通行「殺し合いだ」
男(嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!)
男「ま、待って待ってくれ!」
一方通行「待たねェよ」
一方通行が男に向かって鎖の欠片を投げつける。
その鎖の欠片は1個だけだったが一直線に男の額に向かって直進した。
男(あ。あいつなんか今投げたぞ?)
男(ん? あれは鎖? なーんかゆっくり飛んでくるな)
男(んんん!? 鎖!? 結構大きいサイズの鎖の破片だぞアレ!?)
男(ちょっと待て!! あんなもん当たったら怪我じゃすまねーぞ!? 当たり所悪かったら骨折しちゃうぞ!? あの尖ってるところに当たったら刺さっちゃうよ!?)
男(つーか、俺の頭に向かって来てね!? 来てるよね!? 来てるよ!! ゆっくり向かってきてるよ!!)
男(や、やっべぇ!! 避けないと……ってなんで身体うごかねーの!? あんなにゆっくり動いてるんだから避けることなんて簡単でしょ!?)
男(アカンって!! あんなもん頭に当たったらアカンって!! マジで!! 避けれねーなら受け止めるくらい……腕もうごかねーよっ!! どうなってんのよ!?)
男(…………あ、もしかしてコレって)
男(走馬灯?)
男(い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 間違いないよコレ!! 走馬灯だよ!!)
男(何で俺走馬灯見てんの!? ……あいつが俺を殺そうとしてるからでしょ!!)
男(何で俺殺されるのよ!? 俺悪いこと何もしてないよ!?)
男(ちくしょおおおおおお!! あのモヤシ野郎絶対に呪ってやる!! 俺が死んだらあのモヤシ野郎に呪いをかけてやる!!)
男(毎日絶対にタンスの角で足の小指を強打する呪いをかけて……いや、しゃっくりが毎日絶対1000回続く呪いを……いやいや……)
男(って、馬鹿なことを考えていたらもう目の前に鎖が……)
男(ああ……、父さん、母さん、先立つ不幸をお許しください……)
男(…………ん?)
コマ送りのように自分に迫ってくる鎖を見ていた男だったが、自分に衝突する寸前の鎖の横から何か迫って来ている事に気が付く。
それは丸い弾。模様が入った丸い弾。
そして、その丸い弾が、男に衝突する寸前の鎖の欠片を弾き飛ばし、男の視界から鎖と丸い弾は消え去っていた。
男(!? く、鎖、消えた!?)
一方通行「……あのさァ、邪魔しないでくれませンかねェ~~~? 俺、今コイツと遊ンでンの。オマエは後って言っただろ?」
マミ「……私の前で人を殺させはしないわ……」
男(も、もしかして、マミさんが?)
一方通行「何? オマエ正義の味方ってヤツ? ギャハハハハハハハ!! マジ? マジで言ってンの?」
マミ「……あなたみたいな自分勝手な人がいるから……」
男(う、うおおおおおおお!! マミさんが助けてくれたんや!! マミさんマジ天使!!)
一方通行「……ンだよ。なにマジになってンの? そういうの白けるンですけど?」
マミ「……これ以上私たちの世界で好き勝手させないわ……」
一方通行「ン? なンだこりゃ?」
男(マミさん! マミさん!! マミさ…………な、なんだあれ?)
一方通行を包み込むように光の障壁が現れる。
マミ「アッソルータメンテ・ゾーナ」
一方通行「あン? なンだって?」
男(???)
マミ「その障壁はどんなことが合っても破れない絶対の領域」
一方通行「……はン。俺に破れない障壁だァ? 面白れェ、ブチ破ってテメェの顔を絶望に染め上げてやンぜ」
一方通行がマミの作り出した光の障壁に手を向ける寸前にマミは口を開く。
マミ「あなたの能力はベクトル操作ということは分かっている」
男(!? や、やっぱりコイツ、アクセラレータなの? 確かにこのモヤシ具合……真っ白な髪にウサギみたいな目……)
一方通行の動きが止まる。
一方通行「ほォ、まァ、有名ちゃァ有名だからな。で? 俺の能力を知った上でどうすンの?」
マミ「でも、あなたの能力は所謂オリジナルとは違うもの。この世界ではその能力も魔力を使わないと発動できない」
男(??? 魔力……?)
一方通行「……だったらなンだ?」
マミ「我慢比べよ」
一方通行「!?」
男(!?)
光の障壁の内部に一方通行を取り囲むように巨大な大砲が無数に現れた。
マミ「その障壁の内側は私の砲撃を反射する反射膜。あなたが私の砲撃の向きを変えたとしても再びあなたに向かい私の砲撃は障壁内部を駆け巡る」
マミ「さらに今からあなたに撃ち込む砲撃はすべて魔力の波長をずらした砲撃……一発一発を反射できても、千、万、億……いえ、無限の砲撃をあなたに反射しきる魔力はあるのかしら?」
一方通行「…………」
マミ「喰らいなさい!! ボンバルダメント・エドゥ・インフィニータ!!」
マミが叫ぶと共に、光の障壁内で閃光が走った。
男(う、うおおおお!? なんだありゃあああああ!?)
男(あのモヤシ野郎に光の砲撃が……当たらない!? 向きが変わった!? で、でもまた次の砲撃が……また向きが変わった!?)
男(3発、4発、5発……あ、あたらねぇぞ……? ……でも、なんだあれ? 光の壁の中で光の砲撃がぶつかり合って……またモヤシ野郎に襲い掛かった!?)
男(それも当たらねぇのかよ!? でも、まだ襲い掛かって…………って、どれだけ撃ち込まれてるんだアレ? 光の壁の中が砲撃で一杯になってきたぞ……?)
男(……ま、マジかよ? 光の壁の中が光に満たされて……光がどんどん強くなって……た、太陽みたくなってきたぞ!?)
男(ま、まぶし……)
男の目にマミの作り出した光の障壁が内部から発せられる光によって太陽と見まごうばかりの光源となり、男が目を瞑ったときにそれはおきた。
マミ「きゃああああああああああああ!!」
男「!? ま、マミさん!?」
マミの叫び声に再び目を開けた男の視界に映ったのは、先ほどまでマミがいた空中にマミの変わりに一方通行の姿が現れ、マミは自分のすぐ傍を通過し、屋上に叩きつけられていた光景だった。
一方通行「つァ~~~~~……今のも防ぐのかよ。テメェ、やればできンじゃねェか」
一方通行「あの連続砲撃の反射といい、結界をこじ開けるのといい、結構しんどかったぜ? これがなかったらやられてたかもなァ」
マミは身体を起こしながら一方通行を見て目を見開いている。
男もそれに釣られ、一方通行を見る。
マミ「けほっ……ぐ、グリーフ……シード……?」
一方通行「今のはチトやばかったなァ、MP回復アイテムを10個も使用しちまったぜェ」
マミ「……そういうこと、ね……」
一方通行「そういうことだ。褒めてやンぜ。ここまでヒヤッとしたのはあの筋肉ダルマと戦ったときくらいしか記憶にねェよ」
マミ「……くっ」
マミは上半身を起こし、手にマスケット銃を作り出し一方通行に向けて発砲する。
だが、その砲撃は一方通行に当たる直前であらぬ方向に飛んで行ってしまう。
一方通行「まだ足掻くか……イイね、オマエいけてンじゃン……」
一方通行「楽しませてくれた礼に苦しませること無く殺してやるよ」
空中から屋上に降り立ち、ゆっくりとマミに歩み寄る一方通行。
男(ちょ、ちょちょちょ、ちょっとまて)
男(も、もう理解が追いつかないとかそんなレベルじゃねえよ!!)
男(一体なんなんだよコレ!? 何が起きてんのよコレはよおおおおお!?)
男の頭の混乱は最高潮に達していた。
何がなんだか分からない。
何故、マミと一方通行が戦っているのかが理解できない。
分からないことしかない状況だったが、ひとつだけ男には分かったことがあった。
このままだと、マミが殺されるということだけが。
男(ど、どうすればいいんだよ? このままじゃ、マミさんがこいつに殺されちゃうぞ!?)
男の目の前を一方通行が通る。一方通行は既に男への興味は失っているようだ。
男(で、でもよ、俺に何が出来るの? だってさ、こんな化け物みたいなヤツになにができるのさ!?)
一方通行がマミに近づいていく、その距離は既に10メートルもない。
男(そうだよ……こんなヤツ、どうにもできるわけないだろ……そ、それにマミさんがやられたら次は俺が……)
男が心の内側から来る恐怖に、一歩足を後退させたその時、マミと目が合った。
男(あ……)
そして、男の頭の中にマミの声が聞こえた。
マミ『あなたはそのまま逃げなさい!!』
男(!!!!)
男の後退した足がピタリと止まる。
そして、男は思い出す。
男(……お、俺さっきマミさんに助けられて……)
マミ『早く逃げなさい!! あなたも狙われているのよ!?』
男(……そ、それなのにマミさんはまだ俺を助けようと……)
マミ『この男が私に気を取られているうちに早く逃げなさい!!』
男(……なんだよ、なんだよコレ)
マミ『早くっ!!』
男(…………)
マミの強い目線と、必死な声を聞き、男は足を一歩踏み出す。
男(そんな事言われてもよ……)
さらに一歩踏み出す。
男(助けてもらいっぱなしでよぉ……)
男の足が速く動く。
男(女が殺されようとしてんのによぉ!)
一方通行に向かって駆け始める。
男「逃げてなんかいられっかよおおおお!!!!」
男はそのまま一方通行の後頭部を殴りつけた。
だが、男は一方通行を殴りつけた瞬間に全身に強い衝撃が襲い掛かり、背後に吹き飛ばされることとなった。
マミ「!?」
一方通行「あン?」
男「いってぇぇぇぇぇ!?」
マミ「な、何をやっているの!?」
男「うるっせぇ!! 助けられっぱなしで逃げるなんてできるわけねーだろ!?」
再び一方通行に向かい飛び掛り、一方通行に触れる間際吹き飛ばされる。
男「ぐはっ!?」
一方通行「何? 一体なンなンですかァ?」
二度男が吹き飛ばされて漸く一方通行は男に視線を向ける。
視線を向けた先にあったのは男の拳。
だが、一方通行はそれに顔色を変えることも無くただ見続け、男の拳が届く寸前で男は再び吹き飛ばされて背中を打ちつけた。
男「げほっ!!」
一方通行「あー、オマエ、それもしかして俺を攻撃してンの?」
男「そう……に、決まってんだろ……」
一方通行「イヤイヤイヤ……攻撃すンなら真面目にしてくれませンかねェ?」
ふらふらと立ち上がり再び一方通行に殴りかかる男。
だが先ほどと同じように吹き飛ばされて地面を転がる。
一方通行「……あのさァ、意味わかンねェぞ? 何したいのオマエ」
男「……俺が、したいこと?」
男「……それはなぁ」
男「マミさんを逃がすことだってーのぉ!! ぐはぁっ!?」
叫びと共に一方通行を殴りつけるが男の拳は届かない。
マミ「な、何を?」
男「さっさと逃げろぉっ!! 俺がコイツを止めてる間にぃっ!!」
一方通行「…………」
マミ「馬鹿なことをしていないであなたが逃げなさい!」
男「うるせぇっ!! 女に助けられて、ケツまくって逃げられる訳ねーだろ!?」
マミ「なっ……」
一方通行「…………」
男「俺がコイツを抑えている間に早く逃げろって……」
一方通行「オイ」
男「!?」
一方通行「俺がオマエに止められてるって……そう見えンの? オマエ、今この状況がそういう状況に見えてンの?」
男の首を掴み持ち上げながら一方通行は語る。
男「うぐっ……ぐえぇっ……」
一方通行「オマエの目ン玉に何が見えてンの? オマエの目ン玉はビー玉かなンかじゃねェの?」
男の首を掴んだまま、冷めた顔をした一方通行が男の顔を覗き込み話し続ける。
男「…………ごぽっ、うげ……」
一方通行「あァ~~~~~、冷めちまったぜ。最悪だ、テメェのせいで最悪の気分になっちまったぜ。俺はこのモヤモヤした気分をどこにぶつければいいンだ?」
何も話せない状態の男に一方的に話し続けていた一方通行は、男が何かに気付き目を見開いたことに気がついた。
一方通行「ン?」
一方通行が男の目線の先、マミのいる場所を振り向いたときに一方通行も男と同じように目を見開く。
先ほどまでマミがいた場所に、マミの姿がなかったからだ。
一方通行「はァ? どういうこった……」
一方通行が怪訝な顔をする。
男(……く、苦しい……)
男(……い、意識が朦朧としてきた……)
男(……だけど、さっき確かにマミさんは、一瞬で現れた誰かと共に消えてしまった……)
男(…………多分、誰かが、マミさんを、連れて逃げて、くれたんだ)
男(…………へへっ、ザマーみろだ、このモヤシ野郎に、一泡拭かせて、やったぜ)
男(………………あとは、どうなるんだ、俺)
男(……………………死ぬのかな、俺)
男(………………)
男(…………どうせ、死ぬなら)
男(……コイツを、一回でも、ぶん殴ってから)
男の腕が動く。
一方通行「ン? なンだ? まだ生きてンのか?」
ゆっくりと上がり、男の拳が一方通行に向かって動きだす。
一方通行「さっさと殺してリボン女を捜すか。隠れたにしてもそう遠くには……」
男の腕が一方通行に届くその瞬間、男の腕がブレて何かが、何かのヴィジョンが男から生み出された。
そのヴィジョンはスタンド・ヘブンズ・ドアー、男は無意識にヘブンズ・ドアーを発現させ、ヘブンズ・ドアーの拳を一方通行に叩き込んだ。
一方通行「ぐへァッ!?」
一方通行はヘブンズ・ドアーに殴られた衝撃で吹き飛び、もんどりうって倒れた。
一方通行「い、たい? なに、が起きた? 反射の、膜をすり抜けてきた、だと?」
男「げほっ!! ごほぉっ!! うげほっ!!」
一方通行「テ、メェ、一体、何を、しやがった……」
足元もおぼつかない様子の一方通行は男に問いかける。
だが、男は酸欠状態に陥り、視界は既に真っ白に染まっていた。
一方通行「ク、クカカカカカ、なンか隠してやがったンだなテメェ!! イイぜ、面白ェ!!
今のをもう一回やってきやがれ!!」
一方通行は悪魔のように笑いながら男に向かって手を伸ばす。
既に意識が飛ぶ寸前の男は一方通行の声が聞こえる方向にヘブンズ・ドアーを動かした。
そして、先ほどと同じようにヘブンズ・ドアーの拳は一方通行の腹部に叩き込まれ一方通行は腹を押さえ蹲った。
一方通行「げほぁぁぁっ!!」
男「」
一方通行「わ、わかった、ぜ……何も、見えねェが、何か、いる……それが、テメェの能力か……だ・け・ど、それも、もう、覚えたぜ……」
男「」
一方通行「く、くく、くかかかか……イイねェ……今日はなンて、いい日だ……こンなに愉快な、気分に、2回も、なれるなンてなァ……」
男「」
???「いい気分の所、失礼しますわね」
一方通行「!?」
途切れかけた意識、男は聴いたことのない若い少女の声をその耳に捕らえた。
それと同時に、先ほど聞いた声、クラピカの声を聞き、男の意識は完全に闇に落ちた。
クラピカ「オセロ、その男を連れて離脱しろ。私が時間を稼ぐ」
男「…………」
男「……」
男「……んん」
男「……んあー、よく寝た」
男「…………? どこだここ?」
男が目を覚ました場所は、どこかの病室ととれる一室。
窓は開け放たれ、風が室内に入り込みカーテンがなびいていた。
???「目を覚まされましたのね」
男「!?」
男が声をかけられ振り向いた先にいたのは、中学生くらいの少女。
顔立ちは整っており、ツインテールにしたその髪型がその少女を少し幼く見させているが、十分美少女といえる風貌。
だが、少女とは思えない特徴的な声が印象的であったが、何故かしっくり来ると男は思った。
男「だ、誰?」
オセロ「私の事はオセロとでも呼んでくださいまし」
男「お、オセロ……?」
男(な、何かこの子も見たことあるよーな、ないよーな……)
オセロ「身体のほうに何か異常はありませんこと? 検査の結果は特に問題は無かったのですが」
男「え? だ、大丈夫! ほら! 元気イッパイだぜ!」
オセロ「それならよかったですの。それでは私は人を呼んできますので」
そう言うと同時に立ち上がり部屋を出て行くオセロ。
男「……えーっと、なんだこれ? 何があったんだっけ……?」
男「俺は、確か……」
男「!! そ、そうだよ、俺なんか殺されそうになって……」
男「どこかも分からない屋上で、変なモヤシ野郎に……」
男「確かその時、俺は……マミさんに助けられて……」
男「!! そ、そうだよ!! マミさんにクラピカ!! それにあのモヤシ野郎はアクセラレータ!! 俺は二次元に来ちまったんだよな!?」
???「二次元ではない。この世界は確かにここにある現実の世界だ」
男「え?」
男の振り向いた先には金髪の青年が立っていた。
男「あ、ああーーー!! クラピカ!!」
クラピカ「目が覚めたようだな。オセロからも聞いたが体調は問題無い様で何よりだ」
男「う、うん。ありがと」
男「……って、そうじゃねぇ!! 今何て言った!? ここは二次元じゃないの!? まどマギの世界でしょここ!? つーかなんでまどマギなのにクラピカがいるの!? というかとあるも……って、さっきの女の子は黒子じゃねーーか!! なんなんだよこれ、おい!?」
クラピカ「落ち着け」
男「落ち着けねーーーよ!!」
クラピカ「ふぅ……、ならば落ち着くまで喚き散らすがいい、騒いでも問題はないからな」
男「…………そんな事言われると騒ぎにくいじゃないのよ」
クラピカ「そうか? それならば君の知りたいと思っている情報を説明しようと思うが」
男「へ?」
クラピカ「この世界のことだ。知りたいのではないのか?」
男「そ、そりゃ、知りたいけど。知ってるの?」
クラピカ「少なくとも君よりは知っている」
男「……そりゃ、そうだよね。明らかに何か知ってますよって感じするもん」
クラピカ「少なくとも君よりは、だ。私も全てを理解しているわけではない」
男「もったいぶらないで教えてくれよ! 俺もう頭おかしくなりそうなわけよ、明らかに夢じゃないしさ、QBと契約したからてっきり俺はまどマギ世界だと思い込んでたんだけど、まどマギのキャラじゃないやつ等がいっぱいいるしさー」
クラピカ「……QB。インキュベーターと契約した? 君にはヤツ等が自分たちのことを名乗ったというのか?」
男「?? 名乗ったも何もあいつの姿見れば一発でわかるっしょ? あれ? クラピカがQBのことも知ってるの? なんでだ?」
クラピカ「…………」
クラピカ「まずはすべての情報を君に話そう、それからお互いの疑問点を話し合おうと思うのだがどうだ?」
男「どうだって言われても、俺にはうんってしか言えないってーの……」
クラピカ「少し長くなる。飲むか?」
男「お、サンキュー」
男はクラピカから飲み物を受け取り、クラピカの話を聞き始めた。
そういやヘブンズドアーが直接打撃で攻撃する描写あったっけ?
射程距離もだけど、忘れちまったな
面白いです
クラピカ「それでは、まずこの世界についてだが、君も予想しているように所謂アニメの魔法少女まどかマギカの世界がベースになっている」
男「アニメって……」
クラピカ「君の言いたいことは、私もアニメ、いや漫画のキャラ。二次元のキャラだと言いたいのだろう? 質問や疑問など今は飲み込んでくれ。すべて語った後、最後に君の問いに答えよう」
男「わ、わかったよ」
クラピカ「すまないな。話を戻すが、基本的なベースがまどかマギカの世界となっているこの世界は、何もおきなければ恐らくこの世界の歴史は、日本の歴史をなぞる様に形成されやがてはまどかマギカ本編が始まっていたのだろう」
男「……」
クラピカ「だが、この世界に異物が入り込んでしまった為に、通常の歴史は捻じ曲げられて、この世界は既にまどかマギカの世界とは別物となっている」
男「???」
クラピカ「異物、君や私のような別の世界からやってきた異邦人。我々のような者は転生者と呼ばれている」
男「転生……」
クラピカ「転生といった言葉で引っかかると思うが、恐らく我々は元の世界では既に死んでいる」
男「なっ!?」
クラピカ「何故死んでしまった我々がこの世界に来てしまったのかは謎だが、我々がこの世界に来た時、全員魂だけの存在だったという。その我々の魂に目をつけたのがインキュベーターだ」
男「……QB?」
クラピカ「インキュベーターは突如この世界に現れた謎のエネルギー体を観測する為に行動し、そのエネルギー体……最初の転生者の魂に接触した」
男「……」
クラピカ「それがすべての始まりだ。今から1000年も前のこととなる」
男「1000年って……」
クラピカ「その転生者はインキュベーターと接触し会話をする上で、インキュベーターの目的、正体なども感づき。そしてその転生者はインキュベーターを滅ぼすと仄めかしたという」
男「…………」
クラピカ「だが、その転生者は結局何をすることもなく、インキュベーターと契約を行い、この転生者で初の契約者となってしまった」
男「……」
クラピカ「そして、我々転生者がインキュベーターと契約した場合、多大なエネルギーを得られるということを感づかれてしまったのだ」
男「……」
クラピカ「インキュベーターはその最初の転生者のようなエネルギー体が宇宙のいたるところにあることを知っていた。そして、インキュベーターは次々とエネルギー体……我々と同じく転生者の魂と接触し、契約を行い始めたのだ」
男「……」
クラピカ「最初の接触以降、インキュベーターは姿を隠し、名前を隠し、自分たちのことを神と呼称し我々と接触を続けた。これは最初の転生者の言動が引き金となっているのだろう……そして、姿形を偽ったインキュベーターは次々に転生者と契約を行い、この地球へと転生者を送り込み続け、今でもそれは続いている」
男「……」
クラピカ「……私もインキュベーターと契約をしてしまった転生者の一人。君とは同郷ということだ」
男「……!? マジで!?」
クラピカ「ああ」
男「だ、だって……お前はクラピカだし……」
クラピカ「質問は後だ。……転生者たちは様々な願いを叶え、この世界に降り立った」
クラピカ「転生者が願いを叶える上で、多くの転生者は自分の欲求をかなえるような願いを祈ったという。億万長者になりたい、世界で最も美しい男や女がほしい、いつまでも美しいままでいたい……不老不死になりたいなどとな」
男「……そうなんだ」
クラピカ「突如、気が付けば神と名乗る存在が願いを叶えてくれるという。夢か現実かも分からない状態。大抵の転生者はそういった無難な願いを願ったという」
男「そんなもんかねぇ……」
クラピカ「これらの願いを願ったもの達は大抵のものは魔力を失った。不老不死であろうともソウルジェムが濁りきった場合は……」
男「……魔女化」
クラピカ「そうだ。我々転生者には男も含まれているから魔獣化と我々は呼んでいる」
男「…………」
クラピカ「インキュベーターは我々を地球に送り込んだ後は説明を一切しない。恐らく神と自称している時点で、我々と再び接触をするつもりはないのだろう。こちらから奴等を捕まえない限りは……」
男「……あの野郎」
クラピカ「初期の転生者は何も情報が無く、成すすべもなく死んでいった転生者達が殆どだったという。中にはこの世界の魔法少女に助けられた転生者もいるらしいが、戦う力が無くやがて死んでいったのだろう」
男「……」
クラピカ「ここまでは無難な願いを叶えた者達の例だ」
男「?」
クラピカ「転生者たちの願いで、次に多かったものは、願いに力を望んだもの達だ」
クラピカ「ある特定の分野のスペシャリストになりたい。誰よりも頭のいい人間になりたい。誰よりも強い男になりたい。超常的な力がほしい。魔法を使いたい。様々だ」
男「……俺にはそっちのほうがわかるかな」
クラピカ「この転生者たちは前者の無難な願いを叶えたもの達よりも生き残る数が多かったという。ソウルジェムの秘密を知り魔獣を狩りグリーフシードを手に入れソウルジェムを浄化する……殆どはこの世界の魔法少女から聞きだしたみたいだがな」
男「……」
クラピカ「そして、生き残った一握りの転生者は、この世界で、超人・天才・仙人と、呼び方は様々であるが持て囃されこの世界での人生を謳歌していたのだ」
男「…………ふーん」
クラピカ「その中には歴史に名を残す人物もいたという。事実、700年前当たりに聞いたことも無いような人物の名前が急に上がり歴史の一ページに記されているからな」
男「……それがさっき言ってた歴史が捻じ曲がったってやつ?」
クラピカ「いや、違う。歴史を捻じ曲げたのは前者の願いを願ったものでも、後者の願いを願ったものでもない。ある願いを願ったものがこの世界の歴史を滅茶苦茶に捻じ曲げてしまった……」
男「??」
クラピカ「この世界の歴史上、一番最初にこの世界を滅茶苦茶にしたのはこの男達だ」
男「教科書?」
クラピカは歴史と書かれた本を男に見せ、パラパラとページをめくりあるページを開き男に見せた。
男「ん? 日本の歴史??」
クラピカ「読めば分かる」
男「なんだよ……、奈良時代、平安時代、鎌倉時代……」
男「室町時代、ジオン公国………………んんん!?!?!?!?」
男が本を持ち上げ、書かれた文字を凝視した。
男「ジオン公国……西暦1553年~1560年、日本の歴史において初めて異文化に支配された時代である。また、最初の大破壊であるファースト・インパクトが起きた時代でもある…………ナニコレ?」
クラピカ「転生者が残した歴史の1ページだ」
男「いやいやいや、わけわからんだろ!?!?」
クラピカ「総帥としてギレン・ザビ、首相兼当時最高の科学者のビアン・ゾルダークが日本に仕掛けたクーデター、その際に使用された1機の機動兵器により1日にして室町幕府は崩壊。同日ジオン公国が設立された」
男「いやいやいや」
クラピカ「当時のオーバーテクノロジーの極みとも言える、機動兵器・通称ザクを止める事は当時の日本人には不可能だったといえるだろう」
男「いやいやいや」
クラピカ「1日で支配された京に即日、ジオン公国首相のビアン・ゾルダークが機動兵器量産工場を作成指示。7年の歳月をかけザクの量産体勢が整った所で、ジオンの野望を打ち砕く希望が現れた」
男「いやいやいや」
クラピカ「それがファーストチルドレン・碇シンジ。彼はたった一人でザクをすべて破壊し、ギレン・ザビ及びビアン・ゾルダークの世界征服という野望を止める事に成功したのだ」
男「だから、わけわかんねーよ!?!?」
クラピカ「全て転生者の仕業だ」
男「……馬鹿な俺でもわかるよ? 嘘付いてるでしょ?」
クラピカ「嘘ではない。これが『二次元のキャラクターになりたい』と願った転生者達が引き起こしたこの世界での最初の事件なのだよ」
クラピカが一息つきながら飲み物を飲んでいる間、男は口を開けながらただ呆然としていた。
乙
やっとわけわかる展開になってきたね
ここまで長かった・・・
なるほどそういうことか。
するとこの男は・・・
スタンドで殴れるかは知らんがスタンドが像を確立して以降は絵を見せるって条件が外れてたはず
妖怪六壁坂では死んで取り付こうとしてる目を閉じてる妖怪を本にしてる
乙
クラピカ「話を続けるか。この事件以降、大小さまざまな形で二次元のキャラクターになった転生者たちによる内輪揉めが発生し、その度に世界の歴史は捻じ曲がっていった」
男「」
クラピカ「特に大きな事件……ファースト・インパクト、セカンド・インパクトと呼ばれる世界滅亡クラスの大事件も発生している。この事件の際に、当時の世界の人口は実に2割まで減少したという」
男「」
クラピカ「分かったか? この世界は、我々転生者…………いや、自分勝手な馬鹿共のせいで滅茶苦茶になってしまった世界ということだ」
男「」
クラピカ「この世界についての説明は以上だ。何か質問はあるか?」
男「」
いまだに口をあけて呆けている男を見たクラピカは肩をすくめて男の意識が戻ってくるまで待つことにしたらしく、男から視線を外し飲み物を飲みながら椅子に深く腰掛けた。
男「えっと……、それマジ?」
クラピカ「ああ」
男「その、二次元のキャラクターって、願い事でなれるの?」
クラピカ「君も何人も見ただろう?」
男「あ……そだね。目の前にいるよね」
クラピカ「…………」
男「えーっと……何て言えばいいか……」
クラピカ「混乱するのも無理はないだろう。大抵の転生者……この世界のことを知っている転生者は皆同じ反応をする」
男「混乱しすぎて逆に冷静になってんぞ、俺……」
クラピカ「それはいい傾向だ。話がしやすくて私も助かる」
男「はぁ……」
クラピカ「それでどうだ? 質問はないか? 無い様ならば私から君に何点か質問をしたいのだが」
男「あぁー、うん。いいよ、今、俺、何聞いたらいいかわかんない」
クラピカ「そうか、それでは質問させてもらおうか」
男「うん」
クラピカ「君はインキュベーターとの邂逅時、奴等の姿を見たと言っていたが、それ以外には何か気になる点は無かったか? 奴等が名乗りを上げたなどは無かったか?」
男「へ? あー……、うーん……、そういえば、僕キュゥべえですって名乗ったっけ?」
クラピカ「…………そうか」
男「アニメそのまんまだったから名乗らなくても分かったけどなー」
クラピカ「…………なるほどな」
クラピカ「……次の質問だ、君はマミの事をすぐに理解できた、そして私の事もすぐにハンターハンターのクラピカだと理解できた。そして、オセロのことを黒子と呼んだ。とある科学の超電磁砲を知っていると言う事だな?」
男「うん。そうだよ」
クラピカ「ふむ……君はどこまで元の世界の漫画やアニメ、所謂二次元の情報を理解している?」
男「え? 二次元の情報? まあ、そこそこは知ってると思うよ。アニメも漫画も好きだし。ゲームも結構やるからね」
クラピカ「そうか……」
クラピカ「少し待ってもらえるかな」
男「ん? いいよ?」
クラピカはそういい席を立つ。
数分たった後に、手に資料を持って戻ってきた。
クラピカ「今から名乗る名前に心当たりがあれば教えてくれ」
男「?」
クラピカ「『英雄殺し』バルバトス・ゲーティア」
男「あ、アナゴさんのやつだっけ? 確かティルズ」
クラピカ「『初代火影』千住柱間」
男「柱間ァ!! NARUTOでしょ?」
クラピカ「『鬼』範馬勇次郎」
男「バキじゃん」
クラピカ「『一方通行』アクセラレータ」
男「あのモヤシ野郎だよな!?」
クラピカ「『英雄王』ギルガメッシュ」
男「慢心王だよね? Fateの」
クラピカ「『奇跡の拳』アミバ」
男「うわらばっ!! 北斗でしょ?」
クラピカ「『竜戦士』マリオ」
男「? マリオ? 赤い帽子の配管工?」
クラピカ「『海賊王』モンキー・D・ルフィ」
男「海賊王に俺はなるっ!! 誰でも知ってるでしょ?」
クラピカ「『大泥棒』ルパン三世」
男「と~っつぁ~ん。知ってるよ?」
クラピカ「…………全員知っているか」
男「そりゃまあ。知らないほうがおかしくね?」
クラピカ「…………」
クラピカ「少し話を変えるが、この世界の転生者には大きく分けて2種類いる」
男「?」
クラピカ「1つは、この世界に迷惑をかけない転生者。先ほどまでの君のように転生した事を自覚していなかったり夢だと思っている者。この世界の人間と協力し生きて行こうと思ったもの達。様々だがとりあえずは自分から面倒ごとを起こさない転生者と考えてくれ」
男「うん」
クラピカ「2つ目、この世界に迷惑をかける転生者。この世界を滅茶苦茶にしてしまったもの達。自分の意思でこの世界の人間に危害を加えたり、自分勝手に破壊行為を繰り広げるもの、世界を征服しようと目論むもの。つまりは積極的に面倒ごとを起こす馬鹿共のことだ」
男「ふむふむ」
クラピカ「先ほど名を上げた連中は、この2つ目に該当する馬鹿共の名前だ」
男「へ?」
クラピカ「全員が国家の力をもってしても止められない力を持っており、それでいて全員が最低一回は国家転覆クラスの犯罪を犯した馬鹿共。転生者たちが束になっても敵わないほどの力を持っている。そしてその力の強大さからそれぞれにコードネームが割り振られ、我々は奴等を『アンタッチャブル』と呼んでいる」
男「は、はぁ」
クラピカ「何人かは能力が判明しているが、判明していない方が多い。君はこの馬鹿共……いや、基になったキャラクターを知っていた。つまり、能力も知っているということだな?」
男「まあ、ある程度は……」
クラピカ「……そうか」
男「?」
クラピカ「…………」
クラピカ「……頼みがある。我々に協力してくれないか?」
男「へ? 協力?」
クラピカ「ああ。今現在、この世界では今上げた馬鹿共に対抗できる転生者は一握りしかいない状況だ。我々は戦力と、そして何よりも情報を欲している。君には我々と協力して『アンタッチャブル』と戦ってほしいのだ」
男「え? ……うええ? た、戦うって、さっきの名前の奴等と?」
クラピカ「ああ」
男「………………無理じゃね?」
クラピカ「無理ではない。事実君はコードネーム・一方通行……アクセラレータに手傷を負わせている」
男「は? 俺、あいつになんかしたの? 殺されかけた事しか覚えてないんだけど?」
クラピカ「君は奴を殴り飛ばし、奴に多大なダメージを与えている。君がいなければマミはやられていただろう」
男「マジ!? あの野郎をぶん殴れてたの!? よっしゃああああ!! あのモヤシ野郎、散々人のことを雑魚扱いしてその雑魚に殴られてやんの!! だははははははは!!」
クラピカ「奴は『アンタッチャブル』の中でも上位の戦闘力を持っている。その奴に手傷を負わせ、さらには奴等の能力を知っている君にしか頼めないのだ。頼む、我々と共にこの世界を守ってはくれないか?」
男「ん~…………」
男(なんだかんだ言ってあの野郎をぶん殴ることも出来たし、俺ってもしかして強いのかな?)
男(あっ! そういえばヘブンズ・ドアーも出せるし、能力を使えればどんな奴が来ても問題なく勝てるんじゃね?)
男(そーだよ!! 俺に攻撃できないって書き込んでしまえばどんな奴も俺に攻撃できなくなるし、いざと言う時は死ねって書き込めば…………いやいや、そりゃ流石にかわいそうだから再起不能って書き込めばいいか)
男(よっしゃ!! 見えたぞ!! 俺TUEEEの未来が!! そうと決まれば絵の練習をしないといかんな!! そして、俺がヘブンズ・ドアーを使いこなせるようになって、俺TUEEEをしてそのなんたらの奴等をカッコよくぶっ飛ばせば……)
男(そのときにはこいつ等の仲間であろうマミさんが俺の勇姿に心をときめかせ、俺に……むふふ)
男「決定だな!!」
クラピカ「? 決定とは……?」
男「俺はお前達の仲間になるぜ!!」
クラピカ「!! 本当か?」
男「おう!!」
クラピカ「……君の決断に感謝する。これからは我々は同士だ」
クラピカから差し出された手を見て、合点がいったのか男はクラピカの手を力強く握り返す。
その脳裏に栄光の未来を思い浮かべながら。
だが、男は後々後悔することになる。
何故、あの時によく考えて答えなかったのかと。
こうして男はまどマギ世界……いや、既に滅茶苦茶となったカオス世界の一歩を踏み出した。
クラピカちゃんの性別も頼んだ
乙。そりゃ人間なんだし私利私欲のために能力を使う転生者がいても不思議じゃないわな
むしろ良心的な奴の方が少ないかもしれん
乙乙
同じタイプのスタンドでも射程が長くて能力を保存できて格闘戦も出来るホワイトスネイクにすればよかったな
>>20で能力使用不能って書いてあるしどうなるんだ
しかしあのキャラの能力欲しい!はわかるが、キャラそのものになりたい人ってそんなにいるか?
男だってスタンド欲しいとは言っても露伴になりたいとは言ってないし
>>98
ある程度身体能力も伴わないと意味無い能力だったり、性別も変わりたかったりとかで自分の肉体ごとの変化を望んだりとか、能力だけ願うよりそのものになった方が早いと考えたとか、自分以外のなにかになりたかったとか
理由はそれなりにできるんじゃね?
チート能力の使い手は、スキルそのものより人間性の方が厄介だったりするしね
男「おーっし!! そんじゃ、早速紙とペンを用意してくれよ!!」
クラピカ「何を言っているのだ?」
男「絵の練習をするんだよ!!」
クラピカ「……すまない。君が何を言っているのか分からないのだが」
男「だからさー。俺のスタンドを使うために絵がうまくならないと駄目なんだって。ヘブンズ・ドアーは相手に自分が描いた絵とかマンガを見せないと能力発動しないんだよ」
クラピカ「……ふむ。確か人を本にして、その人間の記憶を読み、操ることも可能な能力だったか?」
男「そうそう。その発動条件が絵かマンガを見せるってやつなんだよねー。あっ、それ以外にも露伴センセーは空中に絵を描いて能力発動してたなー」
クラピカ「…………」
男「だからさ、早く絵をうまくならないといけないわけよ、俺。わかった? わかったなら紙とペン持ってきてほしいんだけど」
クラピカ「その能力を使うに当たって、他の発動方法はあるのか?」
男「え? んー、無いんじゃない? 確か絶対に絵を見せていたと思うし」
クラピカ「絵を描くに当たって、描かなければならない特殊な絵はあるのか? 絵はどの範囲まで見えていればいいのだ? 一部か? それとも全体像か? 絵を見せる場合、相手の姿が把握できないほど距離が離れていても発動可能なのか? その絵を……」
男「ちょ、待てよ! そんなに一気に聞かれてもわかんねーよ!!」
クラピカ「ならば、君はどこまで自分の能力を理解しているのだ?」
男「俺の能力? ん~~~…………、スタンドを願い事で使えるようになったくらいしか…………あっ!! そうだ!!」
男「何か変な本を出せたぞ!! ヘブンズ・ドアー出したとき一緒に出たよ!!」
クラピカ「…………」
男「……あのさ、さっきから何で質問するたびに手元見てんの? つーか、ずーっと手から鎖零れ落ちてるよ? 重くないの?」
クラピカ「……気付かないのか?」
男「何が?」
クラピカ「いや、気にしないでくれ。それでその本というものは一体どういったものなのだ?」
男「ん~~~……何かよくわかんないけど、俺の情報が書いてあったよ?」
クラピカ「情報とは?」
男「えーっと……、確か俺の名前とか、能力とか、なんかあと色々」
クラピカ「…………」
男「だからそれ止めてっ! 何でいちいち手元見てんの!? 何か気になっちゃうよ! 俺気になり始めたら、こう、背中がムズムズするっていうか、身体中がかゆくなんのよ!!」
クラピカ「……すまない、これでいいか?」
男「そうそう。って、その鎖伸び縮み自由なの? 手元にシャーって戻ったけど」
クラピカ「ああ、ある程度は自由に操作を出来る」
男「おー、すげーな。そーいや、それって念能力だったよな。そりゃ、それくらい出来るわな」
クラピカ「模倣に過ぎないがな」
男「?」
クラピカ「気にしないでくれ。それで、君の情報が載った本とやらは今どこにあるのだ?」
男「え? そーいやどこにやったっけ……? あの屋上に落としちゃったかな?」
クラピカ「……因みにその本はどのような状況で発見したか覚えているか?」
男「あー……、最初にヘブンズ・ドアー出したときに持ってたな」
クラピカ「ならばその時と同じようにヘブンズ・ドアーを出してくれないか?」
男「ん? わかったよ。えーっと……」
男は何かを呟きながら、目を瞑り集中し『ヘブンズ・ドアー』と叫ぶと、男の隣に先ほどと同じようにスタンドが出現した。
それと共に、右手に古びた本も出現していた。
男「おおっ! 出た出た! ヘブンズ・ドアーと本! さっきと同じだ!」
クラピカ「……本は出ているが、ヘブンズ・ドアーは出ていないようだが……」
男「? ここにいるじゃん」
クラピカ「……本当か?」
クラピカは再び、右手薬指の鎖を垂らしながら男に問いかける。
男「本当だって。って、またそれ!! やめてよ、もうっ!!」
クラピカ「……見えない、見えない魔法ということか? それとも……」
男「おーい。聞いてる?」
クラピカ「……確か君の願いは『スタンドのヘブンズ・ドアーを手に入れる』だったな?」
男「え? そうだけど」
クラピカ「……スタンドというものは、何か他者には見えないといった特殊効果などはあるのか?」
男「スタンドはスタンド使いと引かれ合うし、スタンドを見ることが出来るのはスタンド使いだけだぜ? 常識だろ?」
クラピカ「……そうか。そういうことか……」
男「? あっ、そーだよな! お前スタンド使いじゃないしスタンド見えるわけないよな! ゴメンゴメン、すっかり忘れてたわ!」
男「よっと! ほら、花瓶持ち上がっただろ? あれ、ヘブンズ・ドアーで持ち上げたわけよ。これで信じてくれた?」
クラピカ「…………」
男「おーい? ほんとだよ? ここにヘブンズ・ドアーいるよ?」
男がヘブンズ・ドアーで花瓶をクラピカの周りにふわふわと浮かせながら話していると、クラピカは手の鎖を縮め、ため息をつきながら額に手をやる。
クラピカ「……君は無用心すぎる」
男「へ?」
クラピカ「何故自分の能力を全て話すのだ?」
男「だって教えてって言ったじゃん」
クラピカ「……私が敵ならば君は敵に自分の情報を全てさらけ出しているのだぞ?」
男「敵? 俺らって仲間でしょ?」
クラピカ「…………君は馬鹿正直すぎる」
男「なっ!? 誰が馬鹿だ!?」
クラピカ「……ふっ、馬鹿馬鹿しくなってきたな」
男「んだと!? 俺を馬鹿にしてんのかてめぇ!?」
クラピカ「いや、馬鹿にはしていない」
男「どっちだよ!?」
クラピカ「ふっ、はははははは……」
男「何笑ってんだよ!? やっぱり俺を馬鹿にしてんだろ!?」
クラピカは掴みかかる男を尻目に笑い続けていた。
一しきり笑いきると、次は真剣な顔をして男に語りかける。
クラピカ「すまない。先ほどは同士といったが、私は君を見極めていた。同士と言ったにもかかわらず、君の言葉の真意を伺っていた」
男「はぁ?」
クラピカ「私の薬指の鎖。ダウジングチェーンを使い、君の言葉に偽りがないかを試し続けていたのだ」
男「どゆこと?」
クラピカ「……分かりやすく言うと、この薬指の鎖は嘘発見器にもなるのだ。それを君に使い続けていたということだ」
男「ああー、そんな力あったね。クラピカってエンペラータイムとチェーンジェイルが印象強すぎて忘れてたわ!! ……って、なんで俺に嘘発見器を使ってたの?」
クラピカ「そうだな……例えば君は頭のおかしい殺人鬼と一般人が何人もいる部屋にいきなり放り込まれて、その部屋で誰かと友達になったとする。殺人鬼か一般人かも分からない人間をすぐ信じることが出来るか?」
男「いや、無理っしょ? つーか、友達になろうとも思わねーよ」
クラピカ「模範解答だな。だが君はその部屋に放り込まれてしまったのだ。部屋から出ることも出来ない。そうなれば誰かとは接触しなければならないだろう? 君は殺人鬼と一般人どちらと接触する?」
男「一般人にきまってんだろ」
クラピカ「うむ、私もそうするだろう。しかし、殺人鬼は一般人のフリをしているかもしれない。一般人と接触したいのにもしかしたら殺人鬼かもしれない。その場合、君は一般人のフリをしている殺人鬼を探る為に色々な方法を試すだろう?」
男「……そりゃ、そうするわな」
クラピカ「次は逆に考えてみてもらえるか? 何人も共同で生活している部屋に、急に殺人鬼か一般人かもわからない人間が放り込まれたと…………」
男「あーーーもう!! わかったって!! 俺もそこまで馬鹿じゃねーよ!! お前の言いたい事大体わかったっつーの!!」
クラピカ「本当か?」
男「お前やっぱり俺を馬鹿にしてんだろ?」
クラピカ「いや、馬鹿にはしていないぞ?」
男「……てめぇ」
クラピカ「話を戻すか。私は君を試していた。本来ならば注意深く、君にも気付かれないように探るつもりだったのだが、君は私の問いに全て真実で答え、私が薬指の鎖をわざと見せても私の事を疑いもせずにペラペラと真実を話し続けた。はっきり言って毒気を抜かれてしまった」
男「……お前なぁ、そんな事やって俺がお前のやってることに気が付いてさぁ、俺が怒ってお前にケンカ吹っかけてたかも知んないよ? そうなったらお前困ってたんじゃないの? 敵が増えるし、情報も得られなくなっちゃうし」
クラピカ「そうだな。その場合は非常に困っていただろうな」
男「他人事みたいに言うなよ……」
クラピカ「まあ、あの『一方通行』にマミを助ける為に立ち向かったという時点である程度は信用をしていた。後は本当に信用に足る人物かを、私が監視する予定だったがそれも必要ないと判断した」
男「さいですか……そんで、何よ? そんな事今更話されて何のつもりさ? 結構俺、ムカついちゃってますよ?」
クラピカ「まずは私の非礼を詫びる意味で全てを打ち明けた。そしてこれが本当の謝罪だ」
と、クラピカは男に土下座をする。
男「お、おい! 何やってんのさ!?」
クラピカ「本当にすまない。許してくれ」
男「ゆ、許してくれって言われてもさ……」
クラピカ「君が怒る気持ちは分かる。私も同じ事をされれば憤慨するだろう。だからこその謝罪だ。……これは一つのけじめでしかない。本当の侘びは私が出来る範囲で君に何かを行う。この世界での生活基盤、君の知りたい情報、様々な物を君に提供する」
男「ま、待てって」
クラピカ「信じられないようならば君の能力で私を操ってもらってもいい……」
男「だから待てって!! もーいいって!! そんなに怒ってないし!! だから頭上げろって!!」
クラピカ「……感謝する」
男の言葉に、スッと立ち上がりもとの位置に戻るクラピカ。
男「はぁ……もうやめてくれよ……俺、そーいうの慣れてないの。人に土下座されんの初めてなの。どーいう反応すればいいのかわかんなくなるのよ」
クラピカ「それはすまなかった」
男「んで? 俺のこと信用してくれたってお前は俺をどーするつもりなの?」
クラピカ「我々はどうもしない。君が判断してほしい」
男「はぁ?」
クラピカ「我々を信用して、本当の意味での仲間となってほしい」
男「……」
クラピカ「虫のいい話というかもしれないが、我々は本当に信頼できる仲間を欲している。先ほど言った戦力や情報は二の次だ。裏切らない信頼できる仲間。これが本当に我々が欲している人間なのだ」
男「……」
クラピカ「我々がそうしたように君が我々を試してもらっても構わない。……君が力を使って探ってもらっても構わないが、君の力を使う場合は使う対象を私だけにして貰いたい……」
男「あー、もういいって」
クラピカ「……」
男「そんな事しねーよ、俺はお前に力を使うつもりなんてねーから」
クラピカ「だが……」
男「だって俺らは仲間だろ?」
クラピカ「!」
男「つまんねー事ぐたぐた言ってないでさっきの話の続きしよーぜ? なんだっけ? あー、そうだ! 本だったよな! 俺の本!!」
クラピカ「……ありがとう」
男「あ? なんだって? 聞こえねーな」
クラピカ「……そうだな。それでは話の続きだ」
この話はここまでと、その気持ちが伝わったのかクラピカも頭を切り替える。
クラピカ「君の本、君の情報が載っていると言う事だが、少し見せてくれないか?」
男「ああ、ほらこのページだ」
クラピカ「…………これは」
名前:男
種族:転生者・魔法使い・スタンド使い
SP:67/100
状態:なし
弱点:なし
装備:男のソウルジェム
転生記録書
能力:スタンド『ヘブンズ・ドアー』……発現可能、能力使用不能。
固有魔法『ライブラ』……対象の能力をみやぶる。SP5消費。
固有魔法『自動書記』……ライブラを使用した対象の情報を転生記録書に登録する。
男「なっ、俺の情報なんだよ。なんなんだろなこれ?」
クラピカ「……一つ確認するが、これに記載された内容は真実なのか?」
男「真実も何も……どうなんだろな? 名前は間違ってないけど、種族ってなんだ? SPとか状態とか弱点とか……なんかよくわからんな。能力のヘブンズ・ドアーはあってんのか?」
クラピカ「……この固有魔法と記載された魔法、これを君は使えるのか?」
男「? いや、使ったこと無いけど」
クラピカ「使ってみてくれ。この『ライブラ』という魔法を私に」
男「へ? いや、使い方わかんねーよ」
クラピカ「そうか……、ならばイメージしてみてくれ。私に対して私の情報を抜き出すイメージ、それか私の事を知りたいと思うか、なんでもいい。とにかく強く、それを魔力を込めて行ってみてくれ」
男「や、ややこしいな……、ちょっと待ってくれよ。えーっと」
男はクラピカの顔を凝視し始める。
男(……えっと、クラピカのことが知りたい、知りたい、知りたい、知りたい……)
男(……知りたい、しりたい、しりたい、しーりたい、しーりーたーい)
男(……しり、あーもう!! なんも起きねーじゃん!!)
男(……ったく、なんだよもう、こいつ変なこと言いやがって)
男(……この野郎、って野郎って言うほど野郎じゃないよなこいつ)
男(……線細いし、本当に男か? もうちょっと顔見てみるか……)
男(……まつ毛長っ! それに肌めっちゃキレーだなこいつ。マジで女に見えてきたぞ?)
男(で、でもこいつ男だよな? 確か……あれ? どっちだっけ? こいつって女だっけ?)
男(や、やべぇ、意識したらマジで気になってきた。こいつって男なの? それとも女なの? というか男でも女装したら間違いなく女に見えるって……って、クラピカって女装してたことあったよね? あれ? でもあれが本当の姿だったら、クラピカって女? いやいや、男のはずだろ? でも男って言ってたっけ? あれ? わかんなくなってきた……マジでどっちだ? こいつのことって言うか性別が知りたいんだけど!? うおおおおああああ!! 気になるうううううう!!)
テレレレレレッ!!
男「うおおおっ!?」
クラピカ「どうした?」
男「な、何か、文字が見える……」
クラピカ「何?」
男の視界に映り込んだ文字。
それはクラピカの情報であった。
名前:クラピカ
種族:転生者・魔法使い
SP:653/700
状態:容姿変化・クラピカ……常時発動。24時間毎にSP1消費。
思考制御・冷静……常時発動。24時間毎にSP1消費。
弱点:なし
装備:クラピカのソウルジェム
クラピカの鎖
能力:固有魔法『癒す右親指の鎖』……ホーリーチェーン。自己治癒力の強化し傷を癒す。SP消費10。
固有魔法『導く右薬指の鎖』……ダウジングチェーン。自己集中力を高めダウジング効果を発揮する。SP消費6。
固有魔法『律する右小指の鎖』……ジャッジメントチェーン。対象の心臓に撃ちこみ、掟を宣告し、対象が掟を破った場合は心臓を破壊する。SP消費50。
固有魔法『絶対時間』……エンペラータイム。緋の眼になった時に発動。発動時SP2倍、身体能力2倍、全魔法効果2倍。発動中1分毎にSP2消費。
固有魔法『思考制御・冷静』……常時発動型。常に冷静な思考を得る。24時間毎にSP1消費。
固有魔法『容姿変化・クラピカ』……常時発動型。クラピカの容姿を得る。24時間毎にSP1消費。
覚醒魔法『奪う右人差し指の鎖』……ドレインチェーン。束縛した対象の魔力を奪う。拘束10分毎にSP5回復。SP消費10。
覚醒魔法『欺く右中指の鎖』……ダミーチェーン。頑強な鎖。SP消費2。
覚醒魔法『束縛する見えざる左手の鎖』……インビシブルチェーンジェイル。透明な鎖。束縛した対象を強制的に魔法使用不能状態にする。SP消費300。
男「クラピカの……情報か、これ?」
クラピカ「……」
クラピカは無言で男の本を1ページめくり、そのページに新たに浮かび上がった情報をしばらく見続けていた。
その横で男は目に浮かび上がっている文字が徐々に消えていく現象を見ながら目を白黒させながら喚いていた。
男「き、消えるぞ!? なんなんだ!? どうなってんだこれ!?」
クラピカ「男よ。これを見てみろ」
男「え? おわっ!? なんだこりゃ?」
クラピカ「私の情報が登録された」
男「へ?」
クラピカ「君の魔法だ。間違いない、私の情報が君のこの本に登録されたのだ」
男は首をかしげながらクラピカから渡された本を手に取った。
今日はこのへんで。
>>94 どっちなんすかね?
>>95 ですよねー
>>96 最近見たアニメにヘブンズ・ドアーでてたんでこれにしました。
>>97 どうなるんでしょ。
>>98 どうですかね?
>>100 いろいろ考えてみます。
>>102 ですよねー
男は露伴先生の姿じゃなくて元の姿のままなんだよな
ますます他の転生者のことが分からん
能力はともかく容姿まで似せたいと思うもんなのか?
乙
俺がクラピカでも不安になる
男「マジ?」
クラピカ「ああ、間違いない。私の魔法の詳細が記されている。しかし、なるほど……そういうことか」
男「へー、どれどれ? ……なんだこりゃ? 容姿変化に思考制御? お前固有魔法ってのが多いね。あれっ? なんだこの覚醒魔法って?」
クラピカ「…………」
クラピカが本を見ながら考え込んでいる。
しばらくすると考えが纏まったのか男に言葉を投げかけた。
クラピカ「……君のこのライブラという魔法。君の情報欄にも記載されているように対象の能力鑑定。しかも君が知りえない情報まで解析してしまう魔法のようだ」
男「へー、そうなの?」
クラピカ「ああ。君はこの覚醒魔法という欄に記載された私の能力を知っているか?」
男「ドレインにダミー……インビシブル? なんだこりゃ? クラピカにこんな鎖あったっけ?」
クラピカ「私の知っているクラピカには無い能力だな。これらの能力はこの世界に来てから、転生者の私が作り出した能力だ」
男「へー」
クラピカ「私が作り出した特殊な能力はこの3つのみ。そしてこの能力は君が知る由も無い能力のはずだが君のこの本に登録されている。おそらくはこの記載された項目、名前・種族・SP・弱点・装備・能力を全て解析する魔法だろうな」
男「ほー」
クラピカ「……因みに無機物などには効果があるか試してもらってもいいか?」
男「ん? いいよ。そんじゃ、この花瓶で」
だが、どれだけやっても花瓶に対しては魔法が発動することは無かった。
クラピカ「……無機物には効果を発揮しない、か。人間のみ……いや、他の生物にも使用できる線もあるな……」
男「よくわからんけど、この魔法がどうかしたんだ?」
クラピカ「……わからんのか? この魔法は使い方によっては一方的なアドバンテージを得られる魔法だ。敵の能力を赤裸々にすることが出来るのだぞ? 知ることが出来れば対策を立てることが出来る。対策を立てつつ作戦を作ることも出来る」
男「あ、そっか。お前に使えたってことは、他の奴にも使えそうだもんね」
クラピカ「ああ。この能力はかなりのレアだな……オセロの能力とコンボさせれば一方的に敵の能力を知ることも出来るが……いや、それを考えるにはまだ早計か……」
男「なにブツブツ言ってんの?」
クラピカ「いや、気にしないでくれ。何にせよ、この魔法は恐ろしく貴重で有用な魔法ということだ。君もそれを認識してくれ」
男「へいへい、わかりましたよ」
クラピカ「しかし……、容姿変化に思考制御か…………」
男「どしたの?」
クラピカ「いや、この私の能力で解せないものがあるのだ。この容姿変化と思考制御の固有魔法。私はこのような魔法を作り出した記憶がない。むしろ作り出したとすると、この覚醒魔法という欄に載っていると思うのだが」
男「どゆこと?」
クラピカ「原典のクラピカが持っている能力は固有魔法、そうでない能力が覚醒魔法と分類されている。そうなるとこの容姿変化と思考制御が覚醒魔法に該当するはずだが、そうではない。そこがどうも引っかかるのだ」
男「固有魔法って言うんだからお前がもともと持ってた魔法なんじゃねーの?」
クラピカ「元々持っていた……前世ということか? いや、この世界に来た際に手に入れたと考えれば…………そうか。願いか……」
男「何かわかったの?」
クラピカ「ああ。推測でしかないが、私の願いによって得られた魔法と考えるのが自然だろう」
男「お前の願い? クラピカになりたいって言うやつ?」
クラピカ「正確には『カッコよくってクールなクラピカに私はなりたい』だ」
男「…………は?」
クラピカ「前世の私は所謂腐女子というカテゴリーに属する女だった。私が好むカップリングには基本的にハンターハンターのクラピカが登場し、私はクラ×○○、○○×クラを日々追求していたのだ」
男「え? え?」
クラピカ「いつも色々なカップリングを妄想しては悦に浸る毎日を過ごしていた。だが、いつしか私は妄想だけでは満足できなくなっていたのだ。実際のクラピカが誰かとくんずほぐれつな状態になっている、そんな光景を見たいと思うようになっていた」
男「何言ってんの、お前?」
クラピカ「そんな私の前に、奴は現れた。私はインキュベーターのどんな願いでもかなえてやるという言葉に『本物のクラピカを出して!』と答えようとした。だが、私は踏みとどまった」
男「いや、ほんとに何言ってんだ?」
クラピカ「私は本物のクラピカが私の妄想の通りに、私の望むシチュをやってくれないのでは? と考えてしまったのだ。私は悩んだ。悩みに悩みぬいた結果、私はふと思いついたのだ。私自身がクラピカになればいいのだと」
男「いやいや、マジで、どうしちゃったの?」
クラピカ「私自身がクラピカになれば、望むシチュ、望むCPをいつでも自分の好きなときに生み出すことが出来る。そして、それを自撮りすることによって、後からでも動画で見て楽しめるそう思ったのだよ。まさに天啓だと私は思った」
男「いやいやいや、何トチ狂ったこと言い出してんだよ、お前」
クラピカ「そして私は契約してしまったのだ。『カッコよくってクールなクラピカになりたい』と。しかし、それがまさかこんな世界に来てしまい、こうやってこの世界を守る為に行動しているのだから人生とは分からぬものだ」
男「俺はお前が分からなくなっちまったぞ」
クラピカ「人にわかってもらおうなどとは思っていない。理解できないのも当然だと思っている。この思いは私だけのものだ」
男「ほむほむみてーなこと言ってんじゃねーよ!」
クラピカ「話を戻すか。この容姿変化は私のクラピカになりたいという願いから来ていると推測できる。そして、思考制御は私のクラピカ像が反映されていると推測される。私の中でクラピカはいつでも冷静沈着で知的なイメージだったからな」
男「もう、なんかどうでもいいよ……」
クラピカ「どうでもいいなどと、思考を停止させることは愚かな行いだ」
男「うるせーよ!! オメーがいきなりトチ狂ったこと言い出すからこうなってんだろーがよ!!」
クラピカ「む……それは、すまないな」
男が頭を抱えながらうなだれていると、クラピカが何かに反応するように指を耳に持っていく。
クラピカ「……」
男「ん?」
クラピカ「……まさか、一日に2度も『アンタッチャブル』が現れるとは……」
男「どーしたんだよ?」
クラピカ「今、仲間の一人からテレパシーが届いた。『アンタッチャブル』の一人、コードネーム・奇跡の拳、アミバが現れたと」
男「……アミバかよ。アミバくらいならお前でも何とかできんじゃねーの?」
クラピカ「不可能だ。私一人では太刀打ちすることすら出来ない。奴の動きを捉えることすら私には出来ないのだよ……」
男「んなわけねーだろ? お前さっきあのモヤシ野郎と戦ってたときすげー動きしてたじゃん」
クラピカ「……随分とアミバの評価が低いようだが、奴は恐ろしい敵だぞ?」
男「恐ろしいっつっても……」
男(北斗だとケンシロウにやられた雑魚って記憶しかないし、何でそんなにびびってんだ?)
男(俺もスタンドを使えるし、クラピカの力がありゃ心臓に鎖打ち込んででお終いだと思うんだけどなー)
男「何なら一緒に行ってやろうか?」
クラピカ「……いいのか?」
男「いいよ。だって俺ら仲間じゃん? それにアミバくらいならウォーミングアップに丁度いいと思うし」
クラピカ「…………」
男「大丈夫大丈夫、いざとなったらあのモヤシ野郎みたいに俺のヘブンズ・ドアーでぶん殴ってやっからよ! スタンドはスタンド使いにしか見えないんだぜ? アミバに見えるわけ無いし、どーとでもなるって」
クラピカ「……わかった。だが君の魔法で奴の能力を解析することをメインとして、戦うことは極力避ける事とする。奴が近づいてきた場合は逃げの一手を取る」
男「ビビリだなぁ……ま、いいや。そんじゃ、そーすっか」
既に日は沈みかけ、空に北斗七星が輝き、北斗七星の傍らに寄り添うように星が光っていた。
もう来てた乙
クラピカも変な人だったのか
そして北斗の拳のスペックはハンターのスペックより上か
なら明確にジョジョより上だよなあ……
乙
腐女子ならやりかねないと嫌な意味で納得してしまった…
あとは元の世界で容姿が残念なヤツが多そう。自分が好きなら顔まで変える必要ないし
「◯◯になりたい」って願いをする奴は、自分にコンプレックスを持っている奴が多そうだもんね
しかし覚醒魔法から察するに、彼女がクラピカでどういうことをしたかったのかは、簡単に想像できるな
特に一方通行とギルになったヤツは絶対キモオタだよなw人生上手く行かなすぎて世間を逆恨みしてそう
マリオとアミバだけは真剣によくわからない。もっとカッコいいヤツ他にいるのに
マリオはまだ主人公だから納得できなくもないが、アミバはなあ
アミバになるくらいなら完全上位互換のトキ(健康体)でいいよな
見た目同じで本物と信じて動揺したケンシロウでは解けない程度の北斗神拳を使い新秘孔を発見できるアミバは実際天才だと思うんだけど、それ以上に北斗三兄弟がヤバイからな
なぜアミバチョイスなのか
マリオはピーチ姫(金髪碧眼美女の彼女)、ヨッシー(空飛べて火も吐けるペット)、
ルイージ(何でもこなせて賢い便利弟)がセットならわからなくもない
男とクラピカは元いた病室を後にして、別の部屋に移動していた。
クラピカに続き男が部屋に入ると、そこには先ほど男が見たオセロと名乗った少女が、肩にフェレットを乗せて椅子に座っていた。
クラピカ「状況は?」
オセロ「見滝原跡地に姿を確認。発見後すぐにフェレットさんの封時結界を使用し、結界内に閉じ込めましたが、その後は何をするのでもなく結界内で座ってますの」
クラピカ「……待っている、ということか。フェレット、魔力は持ちそうか?」
フェレット「うん。まだ予備のグリーフシードもあるし、何とかいけそうだよ」
男「!? ね、ネズミが喋った!?」
オセロの肩に乗っていたフェレットが喋ったのを見て、男は驚愕し、フェレットに向かって指を刺した。
その男を見て、オセロとフェレットはそれぞれクラピカに問いかけていた。
オセロ「……クラピカさん。この方を連れてきていかがなされるのですか?」
フェレット「そ、そうだよ。その人ってさっき連れて来た人だよね? そんな人を何でこの場所に……」
クラピカ「彼は我々の新たな仲間で男と言う。そしてこれからの戦闘に彼も参加して貰う事となった」
オセロ「……何を言っているのですの? その方は先ほど保護された転生者ですわね。そんな方と共に戦闘とは……クラピカさんらしくないのでは?」
クラピカ「彼は信用できる。私が保証する。そして、これからの戦いに彼の能力は必須といえるのだ」
フェレット「この人の能力? 一体どんな……」
クラピカ「男よ、この二人に君の能力を語ってもいいか?」
男「え? 別にいいけど……ネズミが……」
クラピカ「すまないな。彼の能力は敵の能力鑑定だ。敵の名前や、能力の詳細、敵の弱点に、装備している道具、恐らくは敵の魔力量も解析してしまうといった能力を持っている」
オセロ「!!」
フェレット「ほ、本当に!?」
クラピカ「ああ、彼の能力次第では今後の戦いを一方的なものとすることも可能といえる」
オセロ「そういうことですのね……わかりました。クラピカさんが信用している以上、私から何かを言うつもりはありませんの」
フェレット「そうだね。それにしてもすごいね。解析能力か、確かにそんな力があればこれからの戦いはぐっと楽になるだろうね」
男「……ネズミが喋って……」
クラピカ「ああ。これまで謎だった敵の能力は多い、彼の加入により敵の能力を解析することで今後の戦略は大きく変わる。……オセロ、マミは出れそうに無いのか?」
オセロ「ええ、巴さんは先の戦闘でのダメージが大きすぎますの。魔力は回復できても、とてもあの野蛮人と戦闘などできそうにないですわ」
クラピカ「そうか……ならば、我々4人で出るしかないか……」
クラピカは少し考え、オセロとフェレットに指示を出す。
クラピカ「今回は敵の能力解析を主とし、戦闘は極力避ける事とする。フェレット、封時結界を維持しながら我々3人を転送できるか?」
フェレット「……無理だよ。他の魔法ならまだしも転送をしかも3人同時にはできないよ……」
クラピカ「わかった。それでは、フェレットはそのまま結界を維持してくれ。オセロ、私と男を連れて転送は可能か?」
オセロ「ええ、ギリギリですけどね」
クラピカ「よし。では対象から数百メートル離れた場所に転移をしてもらいたい。対象からはこちらの姿が見えない様な、そんな場所だ。できるか?」
オセロ「難しい注文ですわね……。問題ないですの、あのあたりの地形は全て頭に入れてますので」
クラピカ「頼む。男は奴の姿を視認でき次第、ライブラを使用し奴の能力解析を頼む。奴が動いた場合は即撤退。わかったか?」
オセロ「ええ」
男「……ネズミ……」
クラピカ「男よ、聞いているのか?」
男「え? あ、ああ。聞いてるよ。俺がアミバにさっきの魔法を使えばいいんだよな?」
クラピカ「そうだ、君はそれだけに集中してくれ。サポートは我々が行う」
クラピカ「あまり時間をかけすぎると奴が痺れを切らし行動を開始するかもしれん。疑問があるようだが今は飲み込んで作戦に集中を頼む。これが終わったらオセロやフェレット、私の仲間を紹介する」
男「う、うん。わかったよ」
クラピカ「よし。では、オセロ、頼む」
オセロ「ええ。それでは、失礼しますの」
オセロはクラピカと男に触れて、能力を発動させる。
次の瞬間には部屋から3人の姿は掻き消え、小さなフェレットだけがその部屋に残っていた。
フェレット「気をつけて……」
ボロボロになったビルの一室
オセロが何度か空間転移を行い、ボロボロになったビルの一室に転移し、男は窓の外に見える風景に絶句していた。
目に見える範囲の全ての建物は、ガラスが割れ外観もボロボロになっていた。
男「お、おい。なんだよこの世紀末な街並みは……」
クラピカ「元は見滝原という街だ。1年前に大きな事件があった、その時に街は崩壊し、建物などはそのまま放置されている」
男「み、見滝原!? それって……」
クラピカが男の口を指で塞ぎ、小声で会話を始めた。
クラピカ「静かにしてくれ。ここはもう対象と数百メートルという位置なんだ。あまり大きな声を出すと気付かれる可能性がある」
男「」
クラピカ「少しだけ顔をだして見てくれ、奴の姿が見えるか?」
クラピカが窓を目線で指し、男は少しだけ顔を出し辺りを見渡した。
すると、数百メートル先に黒髪の白い服を着た筋骨隆々の男が座っているのを目にする。
黒い髪の男は座禅を組んでいるようだった。
姿を確認して一度男は顔を戻しクラピカに話しかける。
男「いた」
クラピカ「確認できたようだな。それでは奴にライブラを使ってみてくれ」
男「うん」
男はクラピカに言われるがままに魔法を使おうと再び窓から顔を出し、黒い髪の男を見る。
男「え?」
その時だった。
何故か、今まで小さく、黒い髪の男の輪郭も見えていなかったはずなのに、男は黒い髪の男の姿を至近距離で見ているような錯覚を覚える。
黒い髪の男は、目を瞑っていた。
その黒い髪の男の目が徐々に開き、その目を完全に開いた。
その顔は凛々しく、精悍な顔立ちで、その口元がゆっくりと動くのを男は見る。
それと同時に、黒い髪の男は座した姿勢のまま、ゆっくりと左腕を上げ、右腕を上げきったときに男は黒い髪の男の声を聞いたような気がした。
そしてそれと同時に男はクラピカとオセロを無意識に突き飛ばし、自身も横っ飛びをしていた。
???「北斗有情破顔拳」
男「うおおおおおおおあああああああああああ!!!!????」
クラピカ「ぐっ!?」
オセロ「なっ?」
クラピカとオセロが男の突然の行動に文句を言おうとすると、自分たちが今までいた部屋に違和感を感じる。
部屋に一本の線が入っていたのだ。
その線はいったい何なのかという疑問もつかの間、線は太くなり、その線の隙間から外の景色が見え始め、ビルは半分に割れ崩壊を始めた。
男「なぁーーーー!? なななななな、なんじゃぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
クラピカ「オセロ!」
オセロ「っ!!」
クラピカがオセロに指示を出すよりも早く、オセロは男とクラピカの身体に触れ、空間転移を行い、別のビルの屋上へと転移していた。
別のビルにたどり着いた3人は背後で元いたビルが完全に崩壊する音を聞く。
男「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇ!!」
クラピカ「落ち着け、奴の能力は解析できたか?」
男「できるわけねーーーーだろ!? あんな一瞬でよぉーーーー!! つーかちょっと待て!!!!」
クラピカ「叫ばないでくれ。奴にこちらの位置が…………もう意味も無い様だな」
クラピカが見た先、3人がいるビルより一段高いビルの上から黒い髪の男が跳躍してくる姿を男は目の端に捉える。
だが、それと同時に視界は一瞬で変化し、別の建物内に移動したことに気が付いた。
クラピカ「オセロ、すまない。大丈夫か?」
オセロ「え、ええ。ですが、連続の能力使用で魔力が……」
クラピカ「使ってくれ。残りのグリーフシードだ。」
クラピカはオセロに5個グリーフシードを渡し、オセロは受け取ったと同時にソウルジェムを取り出しグリーフシードを使い穢れを取り除く。
オセロ「……これでもう少しは鬼ごっこを続けることが出来ますわね」
クラピカ「ああ、次は視界が開ける場所に転移してくれ。既に奴に我々の存在は気が付かれてしまった。もう隠れていても意味が無い。男が奴の能力を解析できるように奴の姿が視認できる場所への移動が必要だ」
オセロ「わかりましたの」
三度男の視界は切り替わり、今度は周囲を見渡せるような塔の天辺。
地上から100メートル近い場所に3人は転移してきた。
クラピカ「よし、ここなら奴の姿を見ることも可能だ。塔を破壊されても落下中に奴の姿を見て能力を解析し転移を……」
男「だからちょっと待てっていってんだろーーーーが!!」
クラピカ「……なんだ。今は一刻を争う。君も自分の仕事に集中をして……」
男「誰なんだよあいつは!! あれ明らかにアミバじゃねーじゃねーかよ!!」
クラピカ「何を言っている? 奴は間違いなくアミバ。コードネーム・奇跡の拳。奴の拳を受けたものは痛みを感じることも無く死に至る。死に至る瞬間は恍惚な表情をして死に行くものを私もこの目で見ている」
男「ちょ、ちょっと待て……何かその特徴聞いたことあるようなない様な……」
クラピカ「!! 来たぞ。男よ、解析を頼む」
クラピカが男に言うと共に、塔が激しく揺れ、3人は空中に投げ出された。
男は空中に舞いながら、黒い髪の男を目の端に捕らえていた。
男(うぎゃああああああああああ!! し、死ぬ!! 死んじまうううううう!!)
男(うおっ!? あの筋肉モリモリのマッチョ野郎が近づいてきてんぞ!?)
男(や、やっぱ違うよ!? あいつアミバじゃねーぞ!? 何か眼力がすげーもん!!)
男(真っ黒な長髪で、マッチョマンだけど、何かイケメンで、だ、誰なんだよこいつはぁぁぁぁぁぁ!!)
テレレレレッ!! 『ライブラ』発動!!
名前:トキ
種族:転生者・魔法使い
SP:3635/4000
状態:容姿変化・トキ……常時発動。24時間毎にSP1消費。
思考制御・戦闘狂……常時発動。24時間毎にSP1消費。
闘勁呼法……発動中は1分毎にSP1消費。
弱点:なし
装備:トキのソウルジェム
能力:固有魔法『闘勁呼法』……発動任意。発動時、身体能力5倍。発動中1分毎にSP消費1。
固有魔法『北斗有情破顔拳』……範囲攻撃。直線状に魔力攻撃を行う。SP20消費。
固有魔法『北斗有情断迅拳』……範囲攻撃。複数対象に魔力攻撃を行う。SP30消費。
固有魔法『天翔百裂拳』……単体攻撃。空中にて対象に100連撃。SP100消費。
固有魔法『容姿変化・トキ』……常時発動型。トキの容姿を得る。24時間毎にSP1消費。
固有魔法『思考制御・戦闘狂』……常時発動型。常に強者との戦いを求める。24時間毎にSP1消費。
覚醒魔法『二指真空把』……カウンター技。飛び道具、遠距離魔法を全て放った対象に投げ返す。SP20消費。
覚醒魔法『天破活殺』……遠距離攻撃。魔力を飛ばし攻撃。SP200消費。
覚醒魔法『北斗剛掌波』……遠距離攻撃。圧縮した魔力を飛ばし攻撃。SP200消費。
覚醒魔法『七星点心』……単体攻撃。通常回避不能技。7連撃。SP300消費。
覚醒魔法『無想転生』……任意発動。発動時、近距離物理・魔法攻撃完全無効化及びカウンター。自身の全攻撃に通常回避不能効果付与。発動時1分毎にSP10消費。
男(と、と、と…………)
男(トキじゃねーーーーーーーーーーーか!!!!!!)
男の内心の叫びと共に、視界は暗転し別の建物の屋上に3人は降り立った。
クラピカ「どうだ? 奴の能力は解析できたか?」
男「と、とととと、とと……」
クラピカ「何を言っている? 解析は出来たのか?」
男「トキ!! あいつアミバじゃないよ!!!! トキだよあいつ!!!!」
クラピカ「解析が出来たようだな」
男「でき…………うおああああああああああ!?!?」
男が目にしたもの。
黒い髪の男、トキが男の正面で構えを取り、何かを放った瞬間を目にした。
そして、男は本日二度目の走馬灯を体験する。
男(あっ、これ、分かっちゃったよ。さっきもなったもん)
男(走馬灯また見ちゃってるよ俺。めっちゃゆっくり動いてるもん)
男(つーか、あのマッチョマン、かめはめ波撃ってきたぞ!? めっちゃごんぶとビーム撃ってきたぞ!?)
男(あんなもん喰らったら俺よくて黒こげ。悪くて身体貫通すんぞ? って、どっちにしろ死ぬじゃねーーーーかよ!!)
男(あっ、だから走馬灯見てるのね。あははは、納得納得…………)
男(…………)
男(い、嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!)
トキが放った魔力波。
北斗剛掌波が男に到達する寸前で、3人の姿は掻き消え、魔力波はそのままビルを数棟破壊した。
ビルが崩壊し、轟音と土煙が嵐となってその場に吹き荒れていたが、その嵐の中からトキが現れポツリと呟く。
トキ「……逃げたか」
トキは崩壊するビルを背に歩き始める。
しばらくするとフェレットの封時結界も解除され、トキはそれを見て姿を消した。
男達はフェレットのいる元の部屋に戻ってきていた。
オセロは肩で息をしながらへたり込んでおり、クラピカはその様子を見て安否を気遣っていた。
フェレット「みんな大丈夫!?」
オセロ「はぁっ……はぁっ……」
クラピカ「大丈夫か?」
オセロ「え、ええ。でも少し休ませていただけると助かりますの……」
クラピカ「ああ、フェレット、オセロを運んでもらえるか?」
フェレット「う、うん。大丈夫?」
そういいながらフェレットは、光と共に姿を変え、金髪の少年と変化してオセロを抱きかかえ部屋を出て行った。
クラピカ「……無事、成功したか」
クラピカは深く息を吐き、首元を緩め緊張を解いた。
そして、男に声をかけようとして、男のほうを振り向いたときに自分の胸倉を掴まれた。
クラピカ「むっ……何をする?」
男「何をするじゃねーーーーだろ!!!! どーいう事だよありゃあよおおおお!?!?」
クラピカ「何を興奮しているのだ?」
男「テメー俺を騙しやがって!! 何がアミバだ!! ありゃ、トキじゃねーーーーか!!」
クラピカ「? 何を言っている? トキ?」
男「しかもなんだよあのスキル構成!! 二指真空把は分かるけど、天破活殺とか北斗剛掌波ってケンシロウとラオウの技じゃねーか!! しかも無想転生も何で覚えてんだよ!?!?」
クラピカ「落ち着け。どうしたというのだ?」
男「どーしたも、こーしたもねーだろ!? あれ、アミバじゃなくてトキ!! しかもどー見ても病んでないトキ!!!! ついでに究極奥義も覚えちゃってるトキ!!!! どないせーっちゅーんじゃ!!!!」
クラピカ「……奴はアミバではないのか?」
男「そー言ってんだろ!! あいつはトキ!! 見たらわかんだろ!? 顔つきとか雑魚じゃねーじゃん!! あんなのアミバなわけねーじゃん!!!!」
クラピカ「……そうか。情報が違っていたと言う事か……」
男「違ってたって、俺死にかけたのよ!? 違ってたですまねーよ!! そんなデマ流したバカは誰だよ!? ここに連れてこいよ!! 俺がぶっ飛ばしてやるよ!!」
クラピカ「連れてくる事は出来ない。その転生者は、奴に殺されて既にこの世にいないのだから」
男「あーそうかい!! ……って、その人殺されちゃったの?」
クラピカ「ああ、奴と相対し、その身に奴の拳を受け、死に至った。その今際の言葉が『あんな奴トキじゃないだろ……髪黒いし、病んでないし、俺、アミバに殺されちゃったの?』という言葉を残し奇怪な声をあげ死に至ったのだ」
男「そ、そうなんだ」
クラピカ「ああ、その為、奴の名はずっとアミバだと認識していたが……そうか、奴の本当の名はトキと言うのだな。……早速君の力の有用性が証明されたな。それで奴の能力はどのような能力なんだ?」
男「の、能力って言っても、どう考えてもどうしようもない奴だと思うよ? ケンシロウかラオウ連れて来て二人同時に戦ってもぶっ殺されちゃうんじゃないの?」
クラピカ「ケンシロウ? ラオウ? 誰なのだそれは?」
男「胸に七つの傷を持ったマッチョマンと馬鹿でかい黒い馬に乗ったゴリラみたいな奴だけど」
クラピカ「…………その、胸に傷がある男、髪は少し尖った短髪で、眉が太い濃い顔をした男ではないのか?」
男「!! 知ってんの!?」
クラピカ「ああ」
男「ならそいつ連れて来てよ!! そいつならもしかしたら何とかできるかも知んないよ!!」
クラピカ「無理だ」
男「なんでよ!?」
クラピカ「先ほど話した、奴の拳を受けて死んだ男、それが今言った特徴の男なのだからだ」
男「はぁっ!? 死んだの!? ケンシロウやられちゃったの!?」
クラピカ「名前までは知らんが、その男は死んだな」
男「ど、どーすんのそれ? 究極奥義使える病んでないトキなんか誰が止める事できるの?」
クラピカ「大丈夫だ。能力を解析し、罠にはめ、相手に行動させずに封殺する。我々と何人かの協力者がいれば可能だ」
男「我々って……も、もしかしてさ。それ、俺もやらなきゃ駄目?」
クラピカ「我々は仲間だろう?」
男(い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………)
男はそれから数日部屋に閉じこもり、トキ再戦の恐怖に怯えていたが、最初の日以降トキは現れることはなく、しばしの平和が訪れたという。
今日はこのへんで。
>>126 病んでないトキだからこそのハンターより上です。
>>127 おつあり~。
>>128 ですかね?
>>129 >>130 >>131 >>132 情報は大事ということなのです。
>>133 マリオはすごいと思います!
乙
これは平行世界のアミバがトキになりたいと願った可能性が・・・?
やっぱりトキだったか。だよなー
アミバになりたいやつなんているわけないし
マリオは999回復活するから敵に回すとやばいぞ
今のところまどマギ要素がQBとマミさんしかないんですがそれは……
乙
世界を核の炎で包めば……
ライブラが敵にばれたら、というか仲間が敵に割らされたらこの男は敵から集中砲火だな
転生者によってほとんど作り変えられてるからもうまどマギの世界じゃなくなってるんだよ
薄暗い部屋
薄暗い部屋で一人の男がうなされていた。
酷い悪夢を見ているのか、顔は歪み、玉のような汗を流しながらうめき声を上げていた。
そしてその男は跳ねるように起き上がり奇怪な声を上げた。
男「うわっ!! うわあああ!! うわああああああああああ!! ……うわらばっ!!!!」ガバァッ
男「はぁーっ!! はぁーっ!! ゆ、夢か……」
クラピカ「目が覚めたようだな」
男「うわあっ!? お、お前か……驚かせんなよ……」
クラピカ「驚かせるつもりなどなかったのだがな。……そろそろ部屋を出て来ないか? 既に君が部屋に閉じこもってから1週間は経つぞ?」
男「い、嫌だ!! 俺はこの部屋から出ないぞ!! 出るときはこのヘブンズ・ドアーの能力が使えるようになってからだ!!」
そう、男はこの数日間部屋に閉じこもり、様々なことを試した結果、今の自分はヘブンズ・ドアーの能力を使うことは出来ないと知ってしまったのだ。
クラピカ「ふむ、精神操作能力か……その力も非常に貴重だが、君の解析能力を遊ばせていくことは我々にとって大きなマイナスとなるのだよ」
男「うるせーーーー!! 何と言われようが絶対に嫌だ!! お前また俺をあいつの前に連れてくつもりだろ!? 俺はこの数日間夢の中であいつに何度も頭をパーンされてんだぞ!? 完全にトラウマになっちゃってんだぞ!?」
クラピカ「それならば安心してもらっていい。アミ……いや、トキはあれ以降姿を消した。この数日間は至って平和な日々が続いている。奴が再び現れるまではこちらから奴を追う事もしない。罠をはり奴がその罠にかかるまでは待ち続けることにしたのでな」
男「……本当に? 今度は嘘じゃねーだろうな……」
クラピカ「ああ。本当だ」
男「…………」
男「……でも、俺はヘブンズ・ドアーの能力を使えるようになるまではこの部屋で絵の練習をするんだ……」
クラピカ「絵とは、この落書きのことか?」
クラピカは机においてある紙を持ち上げ広げてみせる。
そこには幼稚園児でももっといい絵を書けるのではないかと思えるくらいの酷い落書きが描いてあった。
男「ああっ!! さ、さわんなよぉっ!!」
クラピカ「ヘブンズ・ドアーの能力がどれくらいの画力で発動するかは不明だが、こんな絵ではどうしようもないのではないのか? そもそもこれは絵か?」
男「う、うるせーー!! 絵だよ!! 頑張って描いた絵だよ!! 文句あんのかよ!?」
クラピカ「いいや、文句などない。自分の力を研鑽することは良き事だ。だが、君が閉じこもっているせいで、君の事を仲間に紹介できないのだよ。それに関しては文句を言わせて貰おう」
男「あ……そ、それはごめんね」
クラピカ「謝るくらいなら部屋を出て皆に顔を見せてもらいたい。君は既に我々の仲間で、君にとっても皆は仲間なのだからな」
男「うっ……わかったよ」
クラピカ「よし。それでは、皆を呼んでおこう。……だがまだ夜も明けきっていない時間だな。夜が明けるまでは待つとして、君はどうする? もう一度眠るなら私は出て行くが」
男「んー……、眠ってもまた悪夢を見そうだしな……すこし起きてることにするよ」
クラピカ「そうか」
男「あっ、そういえば色々聞きたいこと出来たんだけど聞いてもいいかな?」
クラピカ「ああ、構わないぞ。何を聞きたいのだ?」
男「お前さ、あの時、トキがいた場所のことを見滝原って言ってたよね? 何か世紀末って感じの街並みのあそこをさ。あれってマジ?」
クラピカ「ああ。間違いない、1年前におきた転生者同士の抗争の舞台となってしまった街だ。君も見たとおり今は放棄され滅んだ街となっている」
男「ちょ、ちょっとまってくれよ……まどマギってあの街が舞台だったと思うんだけど……」
クラピカ「言っただろう。この世界は既に滅茶苦茶な歴史を辿って、もはや本来の歴史とは完全に別物となっている。この世界ではもうまどかマギカのストーリーは始まらないと言ってもいいだろう」
男「マジかよ……」
クラピカ「本来の歴史と違う点で言えば、この世界でインキュベーターは積極的に魔法少女を勧誘していない点も上げられるな」
男「え? でも、マミさんは魔法少女だったじゃん」
クラピカ「あくまで積極的にはという事だよ。才能がある少女には勧誘をするみたいだが、その頻度が少ないということだ。インキュベーターは我々のような転生者の魂を探すためにその個体の殆どを使っているということだ」
男「そうなんだ…………って、ずっと思ってたんだけどさ」
クラピカ「どうした?」
男「なんでそんなに詳しいの? この前聞いたときもなんかやたらQBのこととかこの世界の事情とかも詳しいじゃん。なんかすげー昔のこととかも知ってるしさ」
クラピカ「ああ、それは私も聞いたのだよ。とある転生者が、転生する際にインキュベーターからかなりの情報を聞き出したのだ。奴は聞かれたことに関しては回答をするらしい。そしてその転生者が、この世界に来た転生者やこの世界の魔法少女に全ての情報を語ったのだ」
男「……そんな事言っちゃって大丈夫だったの? アニメだと魔法少女の真実を知っちゃったマミさんは絶望しちゃってたけど……真実知っちゃったら結構な人絶望しちゃったんじゃないの?」
クラピカ「……アニメとこの世界は別物と言ったはずだ。その転生者が情報を開示する以前からも既に魔法少女の情報や転生者の情報はある程度は知られていた。特にインキュベーターの契約やソウルジェムの秘密に関しては古い時代からの周知の事実だったという。契約時にはインキュベーターは姿を隠しているが、契約し、転生をしてこの世界に降り立ったとき、自分の手にはソウルジェムがあるのだ。まどかマギカを知っている転生者で感のいいもの達はすぐにこの世界はまどかマギカの世界では? と当たりをつけていたようだ」
男「そうなんだ……」
クラピカ「その為、その転生者が情報を開示してもそこまでの混乱はなかった、それ以上の騒動が起きつづけていたせいでもあるがな」
男「? 騒動?」
クラピカ「転生者たちが起こす事件だ。先の見滝原の事件や、都市崩壊クラスの事件は十数年に一度は発生している。因みにその転生者が情報を開示した時代にはセカンド・インパクトが発生したのだよ。当時は世界が滅ぶ寸前だったのだから、他の事など考えている暇すらなかったのだろうな」
男「ほんと滅茶苦茶なんだな、この世界……」
クラピカ「うむ。この世界では魔法や転生者は一般人にも知られてしまっているのだからな」
男「……どこまで滅茶苦茶なんだよ」
クラピカ「仕方あるまい。転生者は歴史の表舞台に出すぎてしまっている。さらには転生者が起こす事件などはもう普通の人間が起こせる事件ではないのだ。それを隠すなどどうやっても不可能なのだよ」
男「……俺、とんでもない世界に来ちゃったんだな」
クラピカ「我々はこの世界に転生してしまった。その事実は変えられないのだ」
男「んなことわかってるっつーの……」
クラピカ「この世界に転生した以上、この世界で生きて行くしかない。だが、この世界では現状我が物顔で暴れまわっている馬鹿者共が多すぎる。我々がこの世界で生きていくためにはそんな馬鹿共を止めるか排除するしかないのだよ」
男「……まあ、あんな人間兵器みたいなのがウヨウヨしてたら夜も眠れないわな……」
クラピカ「ああ、その通りだ。いつの間にか我々の行動指針を話してしまっていたな。我々はこの世界で生きていくためにも『アンタッチャブル』のような馬鹿共を何とかせねばらなんのだよ」
男「そーなのね……」
クラピカ「そうだ。……夜も明け始めたか。一度私も戻ろう。また君を呼びに来るのでそれまで待っていてもらえるか?」
男「おっけー」
男の返事に頷きクラピカは部屋から出て行く。
そして、男は部屋の外から差し込む光を見ながら空を見ていた。
男「なーんでこんな事になってんだろーな」
そして、男は再び机に向かう。
この世界で生き残るために、自分の絵でスタンド能力を発現できるようになる為に。
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