真姫「音楽室の音泥棒」 (17)

夕日が差し込む放課後の音楽室
一人ピアノを弾いていると、そいつは突然現れた


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真姫「う~ん…ここのメロディーはちょっと違うかしら…」

真姫「少し変えて…って、もうこんな時間か…」

真姫「…これで最後にしましょう」

そう思い、鍵盤に乗せた指にぐっと力を入れた
はて、音が出ない
もう一度…やっぱり出ない!
故障かしら? そう思い少し調べて見るけれど、おかしいところは見つからない

いみわかんない

そう独り言をつぶやいた
はずだったのだが、それは声にならなかった
そして気が付いた
真姫は耳が聞こえなくなっていたのだ
そのあまりの衝撃に膝から崩れ落ち、思考は停止した

期待

どれくらい時間が経ったのだろうか
すっかり暗くなった音楽室にぜえぜえと自分の息遣いだけが聞こえた
なにがなんだかわからなくなって真姫は荷物も持たずに音楽室を飛び出した

~♪~♪~

海未「それはオトカクシの仕業かもしれないですね」

真姫「オトカクシ?何それ」イミワカンナイ

音楽室での出来事はその後も度々続き、困り果てた真姫は先輩の海未に相談したのだった

海未「ええ。真姫はご存じではないのですか?」

真姫「そんなの聞いたこともないわ」

海未「真姫が知らないなんて意外ですね。真姫はなんでも知っていると思ったので」

真姫「別に私にだって知らないことくらいあるわよ。…それで、そのオトカクシってなんなのよ?」

海未「実は私もあまり詳しくはないのですが…オトカクシという生き物が近くにいると音が聞こえなくなってしまうそうです」

真姫「へえ、変わった生き物がいたものね。…でも、本当にそいつのせいなのかしら?そう言い切るには証拠が少なすぎるわ」

海未「それがオトカクシは美しい音色に誘われて現れるそうなのであながち間違いではないかもしれないです。真姫のピアノは特に上手ですし」

真姫「…別に褒めても何もでないわよ?でも確かにオトカクシの可能性はあるかもしれないわね。病気かと思って診てもらったけど特に異常がなくて…でもこれで手がかりがひとつ手に入ったわ」

海未「病気じゃなくてよかったですね。それで、これからどうするのですか?」

真姫「そうね…とりあえず音楽室から追い出してくれない?」

海未「わ…わたしがですか?」

真姫「他にだれがいるのよ。いいでしょ?あなたの方が詳しいんだし」

海未「ですから、わたしもあまり詳しいわけではなくて…そういったことはちょっと…」

真姫「海未…お願いよ。あなたしか頼れる人がいないの」

海未「うぅ…そう言われてしまうと断ることはできませんね。乗り掛かった舟です。最後までお付き合いしましょう」

真姫「ありがとう」

海未「いえ、後輩の頼みですし。それでは、早速図書室でオトカクシについて情報収集しましょう」

~♪~♪~

海未「相変わらず広いですね」

真姫「まあまあね。図書室なんて久しぶりに来たけど、確かにここの本はまだ全然読んだことないわね」

海未「学生が閲覧可能なもので1000万冊あると聞いたことがあります」

真姫「学生の間に全部読めるかしら…」

海未「真姫ならやってのけそうなのが怖いですね…」

真姫「あら、あそこにいるの凛じゃないかしら?」

凛「…zzz」

真姫「…寝ているだけみたいね」

海未「またですか…。いつものことなんでほっといて、本を探しましょう」

真姫「そうね。生物学系でいいのかしら?」

海未「ええ。それならあっちのほうですね」

真姫「なるほどね。一通りは目は通したわ」

海未「流石ですね。それで、どうでしたか?」

真姫「簡単に要約すると、オトカクシは音の波の中に生息する虫である。彼らの奇怪なところは「音」を餌とする特殊な食性である」

海未「音を食べる…つまり真姫は耳が聞こえなくなったわけではなく、音そのものがオトカクシによって食べれてしまったことで何も聞こえなくなったと」

真姫「そのとおり。彼らが好む音は地域や個体によって違いがみられるが、楽器の音を好むものが多い。基本的に夜行性、夕方~明け方に活動する…だって」

海未「すべて条件に当てはまりますね」

真姫「ほぼ確信に近いわね。それで退治の仕方なんだけど…」

ちょっと用事できました
夜に戻ります

~♪~♪~

海未「真姫…本当にやるのですか?」

真姫「最後まで手伝ってくれるんでしょ?それにこれが一番手っ取り早いし」

海未「うう…どうして私が…」

真姫「うじうじしてないで武士の潔さと意地を見せなさい」

海未「わ…わかりましたよぅ!」

真姫「それじゃあまずは私がオトカクシをおびき寄せるから、そっちのタイミングでお願いね」

海未「…はい」

真姫はゆっくりとピアノを弾き始めた
1曲、2曲、そして3曲目の途中で音は消えた

海未「……ぁあああああああああああああああああああ!!!!」

びりびりと音楽室の窓ガラスが揺れるほどの大声で海未が叫んだ
すると、真っ白にぼんやりと光る小さな虫がピアノの脇から転げ落ちた
音の波に生息するオトカクシが大きな振幅波から弾き出されたのだ

真姫「! 出たわよ、海未!」

海未「は、はい!」

持っていた虫網を構えてそれを捕まえようとした時、虫は勢いよく海未の方に向かって飛んでいった

海未「ひぃっ!?」

真姫「ちょっと! 何やってんのよ、海未! ほら、今度はそっ

海未(また音が…!真姫が口をパクパクしてます…。なんだかちょっと可愛らしいですね。ってこんな時にふざけている場合じゃ…)

海未「……あああああああああああああ!!!」

真姫「海未ッ!!後ろよ、後ろ!」

海未「くっ!ちょこまかと…」

真姫「今度はそっちよ!!」

海未「ああ!もう!」バサッ

真姫「そこの楽器の後ろに入ったわ!」

海未「ぐぬぬ…ちょっと真姫も手伝っ

真姫「」パクパク

海未(なっ!またですか…。やれやれ…)

真姫「……未ッ!!!出てきたわよ!!!」

海未「!? は、はい!…よしっ…捕まえました!」

真姫「ふぅ…お疲れ様。なんとか捕獲できたみたいね」

海未「はい。これがオトカクシ…」

真姫「まったく、こいつには随分してやられたわね」

海未「私はもうこりごりです」

真姫「…私もよ」

海未「これ、どうしましょう…」

真姫「さ、さあ…?私は…虫とか苦手だしなんとかしてよ」

海未「わ、わたしだって好きではありませんよ!それに言い出したのは真

真姫「」パクパク

海未「………ぁあああああああああああ!!!」

海未「目の前がふらふらします…」ゼエゼエ

真姫「…ご苦労様。とりあえず生物室に持っていきましょう?先生がいるかもしれないし」

海未「はい…」ゼエゼエ

~♪~♪~

夕日が差し込む放課後の音楽室
一人ピアノを弾いていると、そいつは突然現れた

真姫「…いつからそこにいたのよ」

海未「1曲目からずっといましたよ」

真姫「1曲目って…1時間以上も前じゃない…。外で聞いてないで入ってくればよかったのに」

海未「ふふ、真姫が一人で弾いているピアノの音が好きなんです」

真姫「何それ…」イミワカンナイ

海未「別に理由なんてないですよ?好きなものは好きなんです」

真姫「そう……それより新しい曲作ってみたんだけど、聞いてくれない?」

海未「ええ、喜んで!」

真姫「ふふ♪」

夕暮れ時の空には2つの月がうっすらと肩を並べて光り輝き始めていた

あ、終わりです
ファンタジー系増えると嬉しいな!


この二人好き

おつ

すき

雰囲気もよく長さもお手軽なSSだった

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