「どうした？」

「ああごめん、考え事してた」

「変な顔してたぜ」

「どんな顔だった？」

「なんかこう、面白い顔だった」

「全然笑ってないじゃん」

「ツボに入らなかっただけさ」

「ああね」

「写真撮りたかったな」

「何を」

「さっきの顔」

「絶対そんな変じゃなかったろ」

「いやいや、ヤバかった」

「真顔だったのに」

「その真顔がヤバいんだって」

「失礼すぎるだろお前」

「すまんすまん」

「じゃあお前も真顔してみ」

「やだよ」

「してみろって、笑わないから」

「そんな問題じゃねえよ」

「じゃあ何だよ」

「単純にしたくない」

「ノリ悪いな」

「いつもだろ」

「前は違ったじゃん」

「マジで？」

「もっとノリ良かったもん」

「ないない」

「お前も変わったんだって」

「絶対ない」

「変に頑固だな」

「自分が一番よく知ってるから」

「そりゃそうだけどさ」

「前と変わっちゃダメな理由あんの」

「無い」

「じゃあ否定しなくていいじゃん」

「なんとなく、嫌なんだよ」

「何が」

「変わったって認める事が」

「こうやって第三者が認めてるのに？」

「自分が認めなきゃ、第三者はいい」

「ふーん」

「何だよ」

「やっぱ変わったな」

「うっせえよ」

「それそれ」

「は？」

「今の感じ、昔のお前に似てた」

「うっせえよ、の感じが？」

「うん」

「てことはあれか」

「ん？」

「昔はぶっきらぼうだったのか俺」

「今も愛想ないだろ」

「あるだろ」

「冷血じゃん」

「それだけは絶対ない」

「全然自分のこと見えてねえなお前」

「ぶっきらぼうだからな」

「認めてるじゃん」

「今だけな」

「進歩だな」

「進んでないけどな」

「十分進んでるよ」

「どこへ」

「分からん」

「ゴール無しか」

「いいじゃん無しで」

「ゴールは欲しいだろ」

「俺はどっちでもいい」

「なんで」

「意識したくないし」

「ゴールを？」

「そう」

「意識するからこそ努力できるじゃん」

「俺は逆なんだよ」

「逆って？」

「ゴールが無いから努力できるんだよ」

「ふーん」

「先が見えないから良い」

「よく分からんな」

「お前もそのうち分かるだろ」

「いつだよ」

「近いうち」

「アバウトだな」

「俺らしいだろ」

「確かに」

「早いな」

「もう来たのか」

「たぶん」

「あれか」

「分からん」

「でもそれっぽいな」

「ほぼ間違いないだろ」

「だな」

「嫌になってきたわ」

「仕方ないだろ」

「そうだけどさ」

「今からどうにも出来ないし」

「まあな」

「出来たらとっくにやってるよ」

「どうにか出来たら良いな」

「やってみなきゃ分からんけどな」

「やるか？」

「パス」

「俺もパス」

「やらないならそろそろ行くわ」

「急いでんのか？」

「違うけど」

「もっとゆっくりで良いだろ」

「ゆっくりは嫌いなんだよ」

「そっか」

「おう」

「じゃあな」

「ああ」

「また会えたらよろしく」

「ああ」