うちの提督はタバコがお好き (33)
うちの提督は、タバコが好きだ
演習の合間にちらりと執務室の窓を見た時も、食堂へ向かう廊下ですれ違う時も、必ずと言っていいほどタバコを咥えている
流石に寝る時までタバコを咥えている、という事は無いようだが、いつも寝ているソファーの傍にまで灰皿が備え付けてあることを考えると、寝る寸前まで手放したくない事が見て取れる
個人的にはそれほどタバコの煙が苦ではなく、というかそれが理由で秘書艦に選ばれた気もするのだが、健康によくないと聞くタバコはやはり謹んでもらいたいわけだ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1430216837
「あ、提督。お帰りなさい」
「あーあ。せっかく掃除したのに、またやり直さなきゃ」
「……それ、そんなにおいしい?」
「吸ってみれば分かるって……ボクは吸わないよ、ふりょー提督」
「……じー」
「へ?うぅん、顔にはなんにもついてないよ」
「うん、なんにも」
実は喫煙を謹んでもらいたいというのは建前だったりして、タバコを吸う提督を傍で眺める時間が大好きだったりする
普段は規律の為にシャキッと決めている提督が、髪を崩し机に踵を乗せている姿も、ボクだけのものだ
ボクに気を許してくれているのか、それともただ単に人目を気にしない性質なだけなのか
前者であると嬉しいけれど、きっと後者な気がする
「夜食?軽いのなら、用意できるかも」
「朝から何も食べてないって、そんな状態でタバコ吸って平気なの?」
「これは別腹って……」
「……バカ」
「リクエストはある?答えられるかは分からないけど」
「食べれるなら何でも?」
「……」
「……すぐ持ってくる」
「べーっ」
即席麺から上がる湯気を、指先でくるりと回してから、ボクはふぅと溜息を吐いた
無駄に恰好はいいもんだから、他の艦娘達からも人気のある提督
「羨ましいっぽい」だの「羨ましいのです」なんてことをよく言われるのだけれど、秘書艦と提督という近いようで近くない微妙な距離は、心地よくもあり辛くもある
せっかく練習して覚えた料理も、まともに振る舞えたためしがない
そんな提督の態度が、敢えて距離を置こうとしているようにも感じられて、ボクもそれ以上踏み込まない、踏み込めない
しまった、結構時間が経ってしまっている
ボクは間延びを始めた即席麺を持って、急いで執務室へと戻った
「お待たせ、提督」
「即席麺しかなかったけど、いいかな……提督?」
「自分から夜食頼んどいて寝るって、どういう神経してるのさ」
「……起こしちゃ悪い、かな」
『提督、ていとく』
「完全に、寝てる」
「……」
「ていとく……」
「……っ」
「お、起きてたの?」
「食べ物の匂いで起きた……ふーん」
「はい、夜食。麺が伸びてる?提督が寝てるのが悪いのさ」
「それじゃ、ボクは明日の朝も早いから」
「おやすみ、提督」
なんか重い
今日はここまで
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません