飛鳥と晶葉が喋ってるだけ
14歳同士なせいか中二臭キツめ
短め
※二宮飛鳥
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※池袋晶葉
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●01
ラララ僕が大人になる頃には
さらに科学は 理想の世界を創る
ララ呼吸をしない犬はもういるから
僕自身も まもなくロボットになれる
ハートも 鉄になるのさ
傷ついたら取りかえよう あの子のことも忘れれる
(『空想科学少年』)
●02
「……はぁ……」
「……飛鳥? どうした、溜息なんかついて……おーい、飛鳥。おーい」
「なぁ、飛鳥っ!」
「っ……どうしたんだい? 晶葉」
「さっきから、私のロボをじーっと見つめて溜息なんかついているが、ロボットがどうかしたのか?」
「まぁ、ね。最近、ロボットについて考えることがあってさ」
「差し支えなければでいいんだが、飛鳥が何を考えてるか、教えてくれないか?」
「そうだね……」
「晶葉は、ロボットが僕らアイドルに取って代わる日が、来ると思うかい?」
「……んん?」
●03
「飛鳥の言う『取って代わる日』ってのが、
もう少し具体化されてると、私も考えやすいのだが……」
「……そんな真剣な顔で考えることじゃないよ。軽い気持ちで言ってみただけさ」
「いやいや。そんな思わせぶりな顔と言葉だけ残していくなよ。
ほら、レッスンまでまだ時間がある。少し話を聞かせてくれよ」
「ボクらのプロデューサーはさ、僕らのことを気遣ってか、表に出さないようにしてるけど……
ボクらのお仕事――アイドルってのは、ボクらの人格を切り売りすることだろう?」
「飛鳥の比喩は、一段とブンガク的だな。もうちょっとだけ噛み砕いてくれ」
「アイドルのお仕事は、自分を売ることだよね。それも、本来この一つしかない自分の身を、
メディアって近代文明の利器を使って増幅加工して、大衆に売り込むんだ」
「それを『人格を切り売り』って言うのか? そこまで言うのか、って気はするが。
私たちがファンに提供するのは、あくまでパフォーマンスだから」
「……『芸は売っても心は売ってない』って言いたいのかな?」
「またきわどい言い方をするな、飛鳥って」
「いやいや、晶葉。どうせ聞くなら、最後までボクの話を聞いてから判断して欲しい」
●04
「……ボクらアイドルは、商品として消費される。ファンが消費者だ。
どんな商品か……願望の投影対象、とでも言えばいいかな」
「ふむ。idolという単語は、もともと神様の偶像って意味だった、と私は聞いてる」
「うん、その投影の仕方は、崇拝だったり愛玩だったりして……
つまりファンはアイドルに対し、自分たちの願望へ従うよう求めてるんだ。
言行はもちろん……内心でさえも、ね」
「だから飛鳥は、アイドルが『人格を切り売りしている』と言うのか? んーん……」
「やっぱり飛鳥のたとえは、少し言いすぎじゃないかい。
そのぐらいの『切り売り』なんて、ビジネスならみんな大なり小なりやってるものだろう。
ほかの職業で言えば、バスの運転手さんが十分気をつけて運転しているとか、その程度だと思う」
●05
「……なぁ、晶葉。ボクは、学校ではこのエクステとか着けていないんだよ」
いま晶葉に話しているような話題とか、話し方とかも、学校ではしないんだ」
「ボクのなかの、こういうイタいところは、前々からボクの人格にあった一面だ。
でもこれは、プロデューサーにスカウトされて、このプロダクションでアイドルを始めて、
ようやく表に出せるようになってきた……そういう部分なんだ」
「そうだったのか」
「でもね、アイドル・二宮飛鳥が少し知名度を得てきたかと思うと、
クラスメイトでさえも、遊び半分でボクにアイドルとしての顔を見せるよう要求してくるわけだ」
「……ふむ」
「お仕事で登校してるわけじゃないのにね……ボクは、そういうことがあってさ。それが……それが」
「とにかく……こういうのとか、行き過ぎだと思う」
「アイドルとして売れてくるとついてくる、有名税か。
飛鳥は、そういう『行き過ぎ』な部分を指して『切り売り』と言いたいのか」
「そうだろう? アイドルは、そのペルソナに、ほかの人よりきつい束縛を受ける存在なんだ。
独立した人格を持つ人間とは認められていないんじゃないかってぐらい、その束縛はきつい。
恋愛禁止令とか、バカバカしいお約束が何十年もまかり通ってるのがその証拠だよ」
「……まぁ、私も覚えはあるさ。同じアイドルだしな」
「だから……独立した人格を持たないロボットのほうが、
人間よりもアイドルに向いてるのかもしれないな、なんてふと考えたんだよ」
「そうだな。飛鳥の疑問は、もっともだと思う」
「こんなこと、真面目に話せるのは晶葉ぐらいだよ」
「じゃあ私も真面目に考えようか……」
「私は、ロボットがアイドル界で人間を駆逐する日が、来るかも知れないと思ってるよ」
「……えっ、晶葉?」
●06
「飛鳥は、自分の疑問を否定してもらいたかったのか?」
「……自分のお仕事が、ロボットに取って代わられるかも知れないと聞けば、いい気はしないよ」
「まぁ、飛鳥の『アイドルは人格を切り売りするもの』という理屈なら、
ロボットは切り売りする人格を持たない――だから、アイドルなんてできない、という帰結になる」
「ボク、それでいいと思うんだけど。晶葉は……ロボットが人格を、心を持ち得る、と?」
「まさか。心を搭載するなんて現実味が無いし、仮にできたとしても載せる開発者はいないよ。
心なんて載せたら、ロボットは人間のマネをするただのオモチャになってしまう」
「……じゃあ、ロボットはどうやってアイドルのお仕事をするんだい?」
「飛鳥。さっき、『idol』が『もともと神様の偶像って意味だった』話をしたが、
飛鳥は神様について詳しいか? ちなみに、私はクラリスの説法を斜め聞きした程度だ」
「ボクも晶葉と同じだよ。あまり馴染みはないね」
「聖書には、神の愛とか、神の慈悲とか、神の怒りとか。
神が感情を持つことが、しばしば表現されるらしい」
「実際に感情を持っているかどうかはともかく、持っていると考えたほうが親しみやすいからだろうね」
「それだよ、飛鳥」
「えっ?」
●07
「実体があるかどうかもデータとしての存在も曖昧な神でさえ、感情を持っている――
と、人々は信じていられる。それなら、ロボットに感情があると信じても無理はない」
「……それをアイドルと一緒にしていいのかい。付喪神みたいなお伽話に聞こえるけど」
「へぇ。飛鳥が、お仕事を離れた学校でアイドルとしてのキャラを押し買いされるのと、
神やロボットが、本来持ち合わせていない感情を御仕着せされること。
私は、それらが本質的に同じだと思ったんだがな」
「機械の発達によって、手作業でお仕事する職人はほとんど駆逐された。
ロボットアイドルが台頭したら、私たち生身のアイドルは駆逐されて、
ロボットの動かし方を決めるプロデューサーが残るんだろうか」
「……そう単純なものかな、晶葉」
「確かに、これだけじゃ飛鳥への答えには足らないな」
「ロボットのほうが効率的にこなせるお仕事でも、人間が頑として場所を譲らない分野があるだろう。
……具体的には、晶葉のが詳しいと思うけど」
「それと関係することなんだが、飛鳥はロボットという単語の語源を知ってるか?」
「……ごめん、知らない」
「私も詳しくは知らないが……ロボットの語源は『強制労働』らしい」
「……『強制労働』か……」
「人間に代わって作業をさせるもの、という意味合いから発展したんだよ」
「つまりな……人間にとってのアイドル活動が、
強制されなければ誰もやらないほどの苦役と成り下がったとき、
ロボットが私たち人間のアイドルを食うことになる」
●08
「つまり、晶葉の言わんとするところは……ボクらは楽しんでアイドルをやれればいい、ってことかな」
「そうだな! たったこれだけを言うのに、穴だらけの回りくどい理屈をこねてしまった」
「アハハ、ボクの悪癖が晶葉に伝染っちゃったのかな」
「さぁ飛鳥、そろそろレッスンの時間だ。
歌を唄おう、ダンスを踊ろう、カメラで撮ってもらおう。
そうすれば、私たちがロボットに駆逐されるかどうか、わかるぞ?」
「……うん。ボクは望むところだよ、晶葉」
「そう言ってくれれば、私も安心だ。黙ってロボを見てた飛鳥は、元気無さそうな顔で心配だった。
飛鳥と一緒にアイドルができなくなると、私はさびしいからなー」
「……っ! 晶葉っ」
「おおっ、そっちの顔のがいいぞ。人間のアイドルには、感情がとっても大切みたいだな!」
(おしまい)
読んでくれた人どうも
飛鳥のSSが最近とみに豊作な気がするので、読んだら飛鳥の可愛さに気づいてしまった
飛鳥Pおそるべし
晶葉の可愛さは自明
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