平清盛「異国で平家物語」 (27)
清盛の性格は平家物語版で
国王「かような呪術に頼るなど……」
宰相「しかし、今はそのようなことは言ってられませぬ」
巫女「そうです。異世界の勇者を召喚し、再び陛下の御宇を取り戻すことこそが重要なのです」
国王「成功するのかね?」
神官「五分五分と言った所でございます。しかし、我々宮中司祭総員、全力を以て当らせていただきます」
国王「そうか、では頼むぞ」
神官「はい。では巫女と神人ども、行くぞ」
巫女&神人「かしこみかしこみ……」
国王「おお、魔法陣に光が」
カァァァァァァ
巫女「……うしはける……かみがみよ」
シュウウウウウ
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神官「おお! 成功だ! 異界の救世主がお目見えになったぞ!」
国王「本当に成功したのであるか……?」
神官「あの魔法陣の中央にお立ちの方々、あの方こそが神によってえらばれた、我が王国の救世主であります!」
国王「おお!」
平清盛「私は熱病にかかって……?」
国王「その者、名を名乗れ」
清盛「貴様は誰だ。ここはどこだ」
衛兵「国王陛下になんたる無礼を!」
アツマレー!
清盛「控えよ。畏くも桓武帝より十一代の後胤、平忠盛が長男であり、太政大臣まで務めた平清盛ぞ。名こそ知れよう」
国王「下がれ衛兵! よく来てくれた、礼を言おう。私はこの国の国王だ」
清盛「国王? ここは高翌麗の国か?」
国王「ここは王国だ。汝は何処の國から来たのだ?」
清盛「我は震旦よりはるか東方、日本国より来た」
国王「いかなる国だ?」
清盛「建国から千と数百年が経つ、由緒正しき国だ」
国王「よかろう。汝はその国で何を務めていたのだ?」
清盛「我は数十万の兵を率いる武士の総大将であり、日本国の太政大臣だ」
国王「よいぞよいぞ。まさしく救世主の器であるな」
神官「神に選ばれた者でありますから」
清盛「質問に応えよ。ここはどこで、私はなにをしているのだ? 貴様たちは私を呼び出したと言ったが、なぜ私を呼び出したのだ」
国王「それについてはこっちで話そう」
清盛「……つまり、戦国大名と貴族たちの所為で王権が緩み、王国の危機に瀕している」
宰相「帝国も侵攻しかねない状況なのだ」
清盛「そこで神々におすがり申したところ、私がここへ呼ばれたと」
宰相「そういうことだ。十万の兵を率いたという清盛殿、どうか我が王国を助けてはくださらぬか」
清盛「とは申されても……」
国王「朕も心よりお願い申し上げる。どうか我が国を救ってくれ」
清盛(これも厳島大明神の御導きなのだろう……)
清盛(日本は知盛や宗盛に任せ、私はこの国を救えと)
清盛(そういうことなのですな?)
清盛「……うけたまわろう」
清盛「私に当てられた兵は二百か……」
清盛「北面武士(近衛騎士団)を全て私に預けてくれたとはいえ、かなり少ないな」
清盛「いや、ここでくじけては父上と法皇様に顔向けできん」
清盛「兵力は士気と作戦で補うのが武士の鉄則ではないか」
清盛「保元と平治の時を思い出そう。うむ」
副団長(女)「キヨモリ様!」
清盛「なんだ?」
清盛(なんとも優美な恰好だが……私はこの文官装束の方が好きだな)
清盛(髪が黄金色だ。衣通姫のようだ)
副団長「新団長閣下のお目見えがあります。どうぞこちらへ」
清盛「うむ。太政大臣の私の演説、しかと聞くがよい」
騎士団詰所
騎士団員A「おい、新しい団長って誰なんだ?」
騎士団員B「なんでも、異国の政治家らしいぜ」
騎士団員C「政治の中枢に異国人とは、国王陛下もヤキがまわったか?」
ザワザワ……
副団長「静まれ! 只今より新騎士団長のお披露目を行う!」
副団長「キヨモリ様、どうぞ」
清盛「うむ」
ザワザワ……アレダレダヨ……ヘンナカッコウ……
清盛「……」
ドコノクニダ……キゾクカナ……ミタコトナイ……
清盛「静まれ」
団員「!?」ビシッ
副団長(すごい気迫! ただの貴族じゃない……?)
清盛「我こそが」
清盛「昔は国で十万の兵を率い」
清盛「国中の朝敵を討ち滅ぼし」
清盛「畏くも院より国政を預かり奉った」
清盛「日本国太政大臣、平清盛である」
清盛「貴様らは只今より私の兵である」
清盛「私が総大将になったからには」
清盛「無勢なれども国に蔓延る数々の逆賊共を討ち果たし」
清盛「諸君らを武勲と誇りで満たすことを約束しよう」
清盛「乱れるこの国を平らかにするのは諸君らの使命である」
清盛「ついてこい」
団員B「十万……? 嘘だろ? 帝国レベルじゃん」
団員A「異国のトップじゃねえか。なんでこんなところに来たんだよ」
団員C「政治家っていうより軍人だな」
清盛「問いのある者はおるか?」
団員F「よろしいですか」
清盛「いかようにも」
団員F「キヨモリ団長は貴族なのですか?」
清盛「いかにも。私は貴族である」
オオー!
団員G「貴族なのに軍人なのですか?」
清盛「話せば長いが……軍人から貴族になったのだ」
副団長「そのようなことが?」
清盛「私の家は代々歴代の帝に命がけで奉仕してきた。そのおかげだ」
清盛「私は日本の半分を治め」
清盛「洛中には禿を配備し」
清盛「造反する寺院は焼き討ちした」
ザワッ……
清盛「たとえ、摂関家の氏寺であろうともだ」
清盛「私に逆らえるものなどいない」
清盛「この私の能力をいかして、この国を救うのだ」
副団長(この人なら……)
宮殿内 清盛の部屋
清盛「少し日本が懐かしくなってきたな」
清盛「よし、ここを新六波羅殿と名付けるか」
副団長「……」
清盛(しかし……さっきから私の傍にいるこの女武者、佳人だ)
清盛(いやいや浄海、煩悩は捨てよう)
清盛(しかしなにか言いたそうだな)
副団長「あの……」
清盛「なんぞ?」
副団長「先程の演説、素晴らしかったです!」
清盛「おお、そうか」
副団長「普通騎士団長は貴族から選ばれるのですが」
副団長「どいつもこいつもヘタレで……」
清盛(藤原とか藤原とか藤原とかな? 成親のアホを思い出す)
副団長「しかし、キヨモリ様は違います」
副団長「貴族でありながら軍人で、覇気もある」
副団長「あなたのような御方をお待ちしておりました」
副団長「私女副団長、命をかけて貴方に忠誠をお誓い申し上げます」
清盛「そうであるか」
副団長「どこまで付き従います」
数日後
宰相「キヨモリ殿!」
清盛「なんであるか」
宰相「北国の僧兵が王都へと攻めてきている!」
清盛(何処の国でも僧兵は悩みの種か……)
宰相「北国の教会は首都を乗っ取る気だ」
宰相「もし王都が陥落にすれば……」
清盛「高倉の宮の一件の様だな」
副団長「宰相閣下、敵兵力は」
宰相「五百だ」
副団長「団長! 我々には二百しかおりません」
清盛「よい、全ての兵を集めよ」
副団長「しかし……」
清盛「どうした?」
副団長「兵達は僧侶に矢を向けることができないのです」
清盛「我が国ではよくある事件だ。任せなされ」
清盛「只今より賊軍の討伐へと向かう!」
清盛「敵は北国の僧兵団、兵力は五百である」
ザワザワ……バチガアタルゾ……ソウリョヲコロスナド……
清盛「しかし! 王の兵である諸君が負けるはずがない」
清盛「貴様らの国王は天神地祇に選ばれた聖なる王である」
清盛「その兵が、権力という煩悩に取りつかれた生臭坊主などに敗けることは」
清盛「厳島大明神も、八幡大菩薩も、天照大御神もお許しにはならない!」
清盛「我々は王の御旗を掲げて敵に進む」
清盛「朝敵になったと敵は大慌てだろう」
清盛「私が来たからには負けなど許されない」
団員「「おおー!」」
副団長(すごい、士気が回復した!)
敵本陣
見張りA「……ん?」
見張りB「どうした?」
見張りA「敵襲だ!」
ワァァァァァ
敵将軍「連中、陛下の旗を持っているぞ!」
敵参謀「くそっ朝敵にされたんだ!」
「国王陛下に矢を向けるなんてできない」「俺もだ」「逆賊なんてごめんだ」「僧が王に背くと地獄に落ちるという……」
敵将軍「旗のせいでこちらの士気があがらない……」
清盛「正面突破! ゆけ王の兵達よ」
清盛(しかし、私の想像していた僧兵とは全く違う……)
騎士団「「陛下に背く者に断罪を!」」
敵兵「「逃げろお!」」
宮殿
国王「この度のご活躍、まことに立派であった」
清盛「武人としての役目を果たしたまで」
国王「朕の旗で相手の士気を下げるとは、策士とはこのことだな」
清盛(日本ではよくやっていたのだが)
国王「なにはともあれ、よくやってくれた。褒美をとらせよう。何が良い?」
清盛「ならば兵達に酒を配りたまえ」
国王「汝はよいのか?」
清盛「兵がいてこその総大将である。兵を重く用いないことがあろうか」
国王「それもそうだ」
新六波羅殿
副団長「キヨモリ様の武人魂、素晴らしいものでした」
副団長「閣下の国には、あなたのような勇猛果敢な兵がたくさんおるのですか?」
清盛「いるとも。平家一門の兵はみな勇猛果敢。憎き義仲や頼朝、厄介な僧兵たちもみな勇ましく困っている」
副団長「そのような兵達と手合せ願いたいです」
清盛「私の兵達を全員連れてきたならば」
清盛「四海全てを天下へ治め」
清盛「平らげた国全てを院と正八幡宮と厳島へと奉納するのだが」
清盛「生き別れた今、そのような事はできぬ」
清盛「今、国では源氏討伐の最中だろう」
清盛「仏のなせる業かな……」
半年後
清盛「国では政治家としての面が強かったが、この国で私は武者もした」
清盛「各地の武将を平らげて臣下となし、儒教を広げ国王崇拝を強化することに成功した」
清盛「貿易港を知行し、国庫を満たして軍資金に応用」
清盛「敵たる帝国も迂闊に攻めることはできなくなった」
清盛「そんなある日……」
宮殿 摂政の間
右大臣「宰相の呼び出した異国人が、私の仕事を乗っ取ろうとしている」
左大臣「ヤツには困ったものだ」
摂政「我が国の風土に合わない服など来ている。所詮奴は異国人よ」
将軍「ヤツを殺しましょう! ……ん?」
コン
左大臣「瓶子が倒れました」
左大臣「忌々しい。首を落としてしまえ」
将軍「はっ」
ズバッ
………
従者(これは閣下へお伝えせねば……)
新六波羅殿
従者「閣下ー!」
清盛「どうした従者よ」
従者「摂政殿が挙兵の準備をなさっていることをお聞き及びですか?」
清盛「なんでも、国境沿いの無法地帯を平らげるとか」
従者「そうではありませぬ、閣下を攻めるつもりなのでございます」
清盛(またこのパターンか。私は全力で国に奉仕しているというのに)
清盛「首謀者は?」
従者「摂政殿下、右左両大臣、将軍の三人です。その他にも多数いるようでございます」
清盛「すぐにその三人と他の首謀者を全て逮捕するよう、副団長に知らせろ」
従者「はっ」
清盛(国王に報告する必要があるな……)
謁見の間
国王「なに摂政が謀反!?」
清盛「私に対してだ。新参者の私が気に入らないらしい」
清盛「前に国でも同じような目に合った。今度もいち早く捕まえる」
国王「じゃが……摂政は政務の全権を握って居る」
国王「朕は捕まえることは可能だ。しかし、その後の政務に支障をきたす恐れが……」
清盛「その心配はありませぬ」
国王「なんじゃと?」
清盛「私が政務を司る」
国王「し、しかし摂政は摂関家からしか……」
清盛「重々承知しておる。摂関家からならばよいのだろう?」
清盛「形だけの摂政を立てて置いて、実務は私が全て行う」
清盛「心配なさるな。国でもそうだったのだから」
国王「そなた一人でできるのかな?」
清盛「さすがに一人では不可能だ。宰相の強力も仰ぐ。それに……」
清盛は数万に膨れ上がり、今や正規軍を超した騎士団を率いて首謀者逮捕へとむけて挙兵した。
副団長「団長閣下に謀反を企てるものは、たとえ摂政殿下でも許すな!」
団員「「おー!」」
首謀者三人は捕えられ斬首、他の加担者は降格処分か流罪となった。
鹿ケ谷の陰謀の一件の際、既に政治は平家の手中にあった。
しかし今回は敵の手中にある。この状況で為政者を根こそぎ逮捕した場合、政務に滞りが発生する可能性があった。
そこで清盛はある手に出た。
知盛「父上! もう会えないかと思っておりました!」
宗盛&維盛「私もです」
源氏に滅ぼされる直前の平家一門を全て呼び集めたのである。
重盛は不可能だったが、死ぬ直前であった維盛以下全ての子と孫、
兄弟たちを招き、この国の施政を任せようとした。
日本で不可能だった末代までの平家興隆を、この国で成し遂げようとしたのだ。
それから平家一門は王国を繁栄させ、その後摂関家と並ぶ地位を手に入れましたとさ。
副団長が維盛と恋したのはまた別のお話
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続き書いたらまたのっけます
乙!すげー楽しみ
>>22-24
ちゃんとした長編に書き直してまた投稿しようと思ってる。
期待せずに待っていてくれ
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