佐倉「え? レンタルDVD?」
ある日の放課後。いつものように野崎くんの家で漫画のお手伝いをしていたら急に野崎くんがそんなことを言いました。
野崎「ああ。そういう映像資料を見ることでインスピレーションを受けることだってあるからな。まあ、いつもはしないんだけど」
佐倉「どうして?」
野崎「そういう他作品を資料として参考にしようとすると、どうしても似たり寄ったりな感じになってしまって……」
佐倉「あー……」
言われてみれば確かにそれはありそうかな。王道展開っていう言葉はあるけど、それでも他作品とは違う何かは欲しいところかも。
佐倉「そういうことならさっそく行こうよ!」
野崎「すまないな。それじゃあ近場にレンタル店があるからそこに行こうか」
そうして私たちは作業を一時中断して野崎くんを先頭にレンタル店へと向かうのであった……。
☆彡
~レンタル店~
店員『いらっしゃいませー』
野崎「おお……やっぱり数が多いなぁ」
佐倉「そうだねー。邦画に洋画、あとはアニメもあるよ!」
野崎「アニメと言えば、少女漫画でもアニメ化される可能性があるんだよな」
ぼんやりとアニメコーナーを見ながら野崎くんがそんなことを言います。
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佐倉「恋しよっ♡ はそういうアニメ化の話はないの?」
野崎「うーん……今はまだないな。でも、そういう話が来たときのためにアニメ化されるとどういう感じになるのか知っておく必要がありそうだ」
佐倉「あははっ。気が早いんだから野崎くんは」
野崎「そうは言うけどな。アニメ化されたら必ず良い事があるってわけでもないみたいだぞ」
えっ? それってどういうことだろう?
野崎「まずアニメ化されるとどうしても原作のシーンがカットされることがあるらしいんだ。それと、作品によってはアニメオリジナルの話が出てくることもあるらしい」
佐倉「ふんふん」
野崎「つまりだ。鈴木がマミコ以外の女子に告白してしまうことが有り得るかもしれないということに……」
佐倉「いやいや! そんな話の大事な部分を壊すようなことは制作会社の人もしないんじゃないのかな!?」
野崎「それにカットされるシーンだって、そのシーンによっては視聴者からの反感を買う可能性だってある。例えば鈴木とマミコの恋が進展するにあたっての大事なシーンがカットされ、いきなり次の話で一気に親しくなっていたら……」
佐倉「それはちょっと嫌かなぁ……」
やっぱり何事も過程が大事だよね、うん。
野崎「そういうことだ。というわけで一つ選んでみよう」
ストンとしゃがんで少女漫画のDVDが並んでいる棚を物色する野崎くん。
……野崎くんみたいな背の高い男の子が少女漫画のDVDを物色している光景は結構シュールかもしれない。
野崎「ふむふむ……会○はメイド様! か。これアニメ化してたんだな」
佐倉「あっ、それの単行本全巻持ってるよ!」
男子校から共学に変わった高校の会長をしている主人公の女の子がメイド喫茶でアルバイトしてる話だったっけ。
それで完全無欠の男の子が現れて、その子との恋愛が進んでいって……。いやあ面白かったなぁ。
野崎「こっちは○物語……」
佐倉「それも面白いみたいだね。私は持ってないんだけど」
そういえば今度貸そうかみたいなことをクラスの子に言われてたっけ。いい機会だし、借りてみようかなぁ。
野崎「……都先生の漫画はアニメ化されてないんだな」
佐倉「そうだねぇ。都先生の漫画も面白いし、そのうちアニメ化されるかも――」
前野『次のタイトルはたぬきの森、なんてどうですか? 可愛いでしょ?』
佐倉「――いや、しばらくは無いかもしれないね」
野崎「俺も同じこと考えていた」
本当、たぬきをどうにかしないといけないかもしれないね……。
佐倉「って、あれってもしかしてみこりん?」
野崎「ん? ……あれ、本当だ」
あそこは深夜アニメのコーナーかな? 何を探してるんだろ……?
佐倉「おーい、みこ――」
野崎「待て佐倉。御子柴が何かパッケージを持ってるぞ」
本当だ。どうしたんだろ?
佐倉「カウンターに行ったね」
野崎「パッケージを見せて何か話してるな」
御子柴『すいません。これの返却日って何日になりますか?』
店員『えーっと……あ、すいません。どうやら延滞してるみたいで何日に返却されるかがわからないみたいです』
御子柴『うげっ、マジかよ……』
佐倉「返却日の確認かな?」
野崎「みたいだな。……あ、こっち見た」
御子柴「げえっ! 野崎に佐倉、どうしてここに!?」
私たちの姿を見て大げさにそんな反応をするみこりん。
野崎「どうしてって……別に俺たちがいてもおかしくはないだろ」
御子柴「そうかもしれないけどよ……」
佐倉「みこりんは何を借りようとしてたの?」
御子柴「わっ! 馬鹿、見るなっ!」
後ろに隠していたパッケージのタイトルを素早く確認。えーっと……?
『魔法少女 リリカ○なのは』
佐倉「…………」
御子柴「なんだよそんな目で見るなよ! 別に俺が何を借りようとしても俺の勝手だろ!?」
野崎「ああ、それか。面白いよなそれ」
佐倉「まさかの同感!?」
御子柴「野崎……お前もしかして……?」
共感者がいたのがそんなにも嬉しいんだねみこりん……。
野崎「ああ。主人公たちが魔法少女となって戦うんだよな」
御子柴「うんうん」
野崎「で、三話目で黄色担当の女の子が死んじゃうんだ」
御子柴「うん……?」
野崎「それで終盤では主人公の親友だった女の子が魔女となって……」
御子柴「それ別の作品だ!」
☆彡
御子柴「なるほどね。漫画を描くための資料か」
野崎「ああ。たまにはこういうのを見るのも悪くないかと思ってな。何かオススメは無いか?」
御子柴「って言ってもファンタジー系はさすがに路線が外れてるし、学園物が良いんだよな?」
野崎「何を言う。少しくらいならファンタジー要素を入れたって問題はない!」
佐倉「ないの!?」
曲がりなりにも現実世界が舞台なんだからそういうのはダメなんじゃないかな……?
御子柴「そんなら~……これとかどうだ?」
『あの日見た○の名前を僕たちはまだ知らない』
野崎「なるほど、感動系か。確かにそういうのは疎いから参考になるかもしれないな」
佐倉「あ、そういう路線は珍しいかもしれないね」
御子柴「ちょっとファンタジー要素あるけど、こういうのもあるぞ」
『未来日○』
野崎「ヒロインがヤンデレとかいうのなんだっけ? そういうのも需要あるなら、考えてみてもいいかもな……」
佐倉「マミコが包丁持って鈴木くんを追いかけるの!? 怖いよそれ!」
御子柴「あとはこんなのとか」
『変態王子と笑わない○』
野崎「どんなタイトルだよそれ。でもちょっと気になるかもしれない」
佐倉「気になっちゃうの!? これ絶対主人公が変態だよ!? 鈴木くんとは正反対なんじゃないかな!?」
ああ、どんどん野崎くんのカゴの中にDVDが入って……。
野崎「ていうか、本当御子柴ってこういうの詳しいよな」
御子柴「わ、悪いかよ?」
野崎「いや、正直助かってる。だからまた今度違うやつをオススメしてくれ」
頼ってる!?
御子柴「わーったよ。少女漫画の参考になりそうなのだな? 考えとく」
野崎「ありがとう!」
御子柴「そんな笑顔で握手してくるくらい助かってんのか……?」
ああ、どうなるんだろう……心配だなぁ。
☆彡
~ロマンス編集部~
宮前「おっ、夢乃先生から次のが届いたな。どれどれ……?」
鈴木『よし、それじゃあかくれんぼしようか』
マミコ『わかった。それじゃあ鈴木くんが鬼ね!』
マミコ『ふふふ……ここに隠れれば見つかることはないわね』
鈴木『マミコ、みーつけた!!』
マミコ『鈴木くん!? どうしてここが!?』
鈴木『実は僕、マミコの未来が予知できる能力に目覚めてね! これも愛がなせる技、かな』
マミコ『そ、そんな……』
鈴木『マミコ?』
マミコ『愛なら私だって負けてるわけないのに、どうして私にはその能力が目覚めないの!? 納得いかない!!』
鈴木『マミコが包丁を持って追いかけてくる!? 助けて誰かぁー!!』
マミコ『きゃあっ!?』
鈴木『と思ったらいきなりマミコが転んだみたいだ! だ、大丈夫かい?』
マミコ『……何か用事ですか?』
鈴木『どうしてそんな無表情でさっきとは正反対のことを言うんだい!? 頭でも打ったのかいマミコ!?』
宮前「…………」ピッポッパッ
野崎『もしもし剣さん? もしかして俺が送ったやつさっそく見てくれましたか?』
宮前「もうちょっと真剣に考えてくださいよ夢乃先生」
~完~
終わり。
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