男「もしかして?悪魔というやつか?」
悪魔「お察しの通り。」
悪魔「そして貴方はブラック企業で働いていた社畜。入院過労死寸前、お金も尽きようとしていますね。」
男「なるほど、俺の現状は理解しているのだな。」
悪魔「はい。一応は悪魔ですから。」
男「確かに万策尽きた、金も体力も気力もない。あるのは会社に恨みぐらいか。」
男「俺はあのブラック企業の社長が憎くてしかたがない。本当に同じ人間とは思えない。」
男「全く嫌な世の中だぜ。」
悪魔「でしたら、なおのこと、私と契約してみませんか?」
男「いわゆる、死後の魂の受け渡しの約束で、契約成立というやつか?」
悪魔「そうですね。」
男「……、確かに、このままでは三日と持たず死ぬだろう。」
男「生きたとしても社会復帰が難しいなら、同じことだ……。」
悪魔「不安と迷いと欲望の葛藤が生じた時、我々は現れます。」
男「……。」
男「よし、わかった。契約しよう。」
悪魔「本当ですか?では、願いをどうぞ。」
男「お前が、俺の会社でかわりに働いてくれ。」
悪魔「なるほど、それぐらいたやすい御用で。」
男「ただし、試用期間は六ヶ月だ。」
悪魔「え?」
男「俺との契約に試用期間を設ける。」
男「会社によれば試用期間があって、本契約するかどうかの見定めの期間があるものなのだ。」
男「それが、お互いの為ということだ。」
男「会社も社員もお互いの了承の上で、働くほうが、まだよいからな。」
悪魔「確かに、そうですが……。」
男「いや、その通りなのだ。あくまで、お前と契約を結ぶのは俺だ。」
男「その際に、お前の能力を見極めさせてくれないか。」
悪魔「……、お言葉ですが、恨みがあるのでしたら、もっとスパーンと相手を闇討ちするなど、」
悪魔「そういった方法もございますが、いかがでしょう?」
悪魔「わかりやすくて、とっても素敵な解決方法ですよ。」
男「バカが!そんなことをして、どうなる。」
男「確かに、俺をこのような目に合わせた連中がにくい。復讐もしてやりたい。」
男「そうやって相手がボコボコにできれば気持ちがよいだろう。」
悪魔「そうでございますよ、それが一番かと。」
男「で、どうなる?」
悪魔「え?」
男「で、どうなる?」
悪魔「どうなるといわれましても……。」
悪魔「スカッーとされるのではないでしょうか?」
男「……。一時的にはそうかもな、、、。」
悪魔「でしょ?」
男「だが、俺は、その後も生きねばならぬ。」
男「昔ならいざしらず、悪を成敗したところで、俺は働かねば生きていけぬ。」
悪魔「……それは、そうですが。」
男「それになんだ?お前の口の聞き方は。」
悪魔「え?」
男「え?じゃない、はい、だ。」
悪魔「……はい。」
男「俺はお前を採用してやるかどうかの面接をしているのだ。」
男「黙っていれば、お前は口の聞き方もなっていないし、頭も悪そうだ。」
悪魔「…………はい。」
男「時に、お前、どこの大学だ?」
悪魔「……いえ、その…………。」
男「なんだ?高卒か?」
悪魔「…………いえ。」
男「かー義務教育どまりか。」
悪魔「…………………。」
男「まぁいいわ、学歴は。それ以下かもしれんし、学校もでてないかもしれんからな。」
悪魔「。。。」
男「じゃ契約内容変更だ、試用期間は一年だ。」
悪魔「え?」
男「え?じゃない、はいだ。」
悪魔「…………はい。」
男「どうも、お前の話から察するに、お前は役に立ちそうもない。」
男「だが、俺は優しいからお前を雇ってやる。」
男「どうだ?嬉しいだろ?」
悪魔「………………はい。」
男「じゃ明日から頼んだぞ。住所はここだ。」
男「仕事でわからないことがあれば、いつでも俺に聞きに来い。」
悪魔「……はい。」
男「あーそうそう、お前、今どこにすんでいる?」
悪魔「悪魔城ですが。」
男「だめだめ、下界に降りてこい。」
男「そして、会社から最低3駅以内のとこに引っ越せ。」
悪魔「……別に、悪魔城からでも出勤は間に合うと思いますが……。」
男「そういう問題じゃないんだ。いいから、さっさと引越し先みつけろ。」
悪魔「…………はい。」
男「じゃあ明日から頼んだぞ。」
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―――
一年後
男「お前は相変わらずだなー。ちっとも成長してねーじゃねーか。」
悪魔「はいっ。すいません。本当にすいません。」
男「まぁ謝るのは板についてきたな、」
悪魔「はいっ。すいませんっ。すいません。ありがとうございます。」
男「まぁいいわ、今日は約束の日だな。」
悪魔「はい、それは、ごもっともで。」
悪魔「どうぞ、何卒よろしくお願い申し上げます。」
男「ダメだ。」
悪魔「え?」
男「え?じゃない。」
悪魔「……はい。しかし、、、約束が……。」
男「約束はしているではないか、試用期間は一年。そういう約束だ。」
悪魔「でしたら、そのまま……」
男「残念ながら今回は採用を見送らせていただくことになりました。」
悪魔「…………、、、、そ、、、そんな、、、、。」
悪魔「悪魔城にも帰らず、一心不乱にあのブラック企業で、入院しそうになりながらも働いてきたのにあんまりです。」
男「……。」
悪魔「どうか、どうか契約を。」
男「…………。」
悪魔「どうか、どうか契約をお願いします。この通りです。」
男「そうか、そこまでいうなら俺も鬼じゃない。」
男「では、試用期間延長の手続きと、お前の仲間を連れて来い。」
悪魔「え?」
男「お前にも仲間がいるんだろ?そいつを会社で働かせろ。」
悪魔「…………はい。」
男「そうか、よし、そうやって仲間が増えるとお前も、いつか契約できるかもしれんな。」
男「よかったじゃないか。」
悪魔「……はい。」
――――こうして、俺の契約保留中の悪魔が10人になろうとしていた。
男「…………世の中、こんなもんなのかもしれないな。」
男「俺も悪魔という、ツテがなくなれば、お先真っ暗だ。」
男「だが、あいつらがいればまだなんとかなる。」
男「その為には、あいつらを従属させねばならないからな。」
男「社長さんよ、、、あんたも、こうして生きていくしか方法がなかったのかもな。」
男「あんたが懐かしくてしかたがないぜ。本当に同じ人間にしか思えない。」
男「全く嫌な世の中だぜ。」
おわり
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