穂乃果「嘘吐き」 (84)

「真姫ちゃん、私と付き合ってください!」
私も穂乃果のことが好き。大好きよ。でも心の中ではそう思えても答えられないことだってあるのよ?

「ごめんなさい、私…。付き合ってる人がいるのよ。」

「そっか…。」
目に涙を浮かべながら穂乃果はそう言った。
その瞳は私の心を一層曇らせた。
もう少し、もう少し早くあなたがわたしに想いを告げてくれれば…。
なんて、考えるだけ無駄ね。

「穂乃果、あなたならきっといい相手を見つけられるわよ。私なんかよりも…」「真姫ちゃんよりいい相手なんて穂乃果には分からないよ…。」
その言葉に少し心が痛む。


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「ねぇ、真姫ちゃん」

「何かしら?」

「穂乃果じゃダメなの?」

「…。」
その質問に私は答えない。


「真姫ちゃんよく穂乃果の家に泊まりに来てたよね」

「そうね。」

「それって穂乃果のことが好きだからじゃなかったの?」

「それはお友達としてで…。」

「嘘だ!」

「嘘なんか…」「じゃあなんで…」
最後まで言い終える前に穂乃果が私の言葉を遮る。
「なんであの時穂乃果にキスしたの?」

「そんなことしてないわよ」

また嘘をついてしまった。。確かにあの時私は穂乃果にキスをしたのだ。でもそれはお別れのキスのつもりだった。
「穂乃果知ってるよ!」

「真姫ちゃんが穂乃果のお家以外にお泊まりしたことがないこと。
穂乃果と同じシャンプーを使っていること。真姫ちゃんが穂乃果と寝るときに穂乃果を撫でていたこと。
穂乃果の写真を海未ちゃんから貰っていること」

「だから、そんなことしてないってば。」

「穂乃果知ってるよ!」

「真姫ちゃんは嘘をつくときにいつも髪を弄ること!」

…。迂闊だったわね。そんなことに気づかれていたなんて。でも今更髪から手を離したら認めたようなもんじゃない。
「穂乃果、いい加減にして」
そう、冷たく言い放つ。

「…。」
穂乃果は何も答えなかった。
「もう、私のことは忘れなさ」

「うぐっ…えっぐ…。うわぁぁぁん」
「真姫ちゃんのばかああああ」
そう言って穂乃果は走り去ってしまった。
「ごめんなさい、穂乃果。」
不思議と涙は出てこなかった。

今日はここまで。

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