苗木「マインクラフト?」 (148)

注意!このSSには、以下の注意点が含まれております。

・ダンガンロンパ×マイクラ

>>1は初SS

・進行遅くなるかも

・著作権やばくなったら消すかも

おk?

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1427861375

ピンポーン・・・ガチャッ

苗木「はーい……あれ?不二咲クン?どうしたの?」

不二咲「あ、苗木くん。見て。えへへぇ、これ、拾っちゃったんだ~」

苗木「……これ……SDカード?」

不二咲「うん。中を確かめてみたらねぇ、なんと!マインクラフトが入ってたんだよぉ~!」

苗木「……マイン……なんだって?」

不二咲「あれ?知らないのぉ?それじゃ、僕の部屋のパソコンでやってみる?」

苗木「うん。良いケド……」

――不二咲の部屋

スチャッ・・・ウィーンウィーンウィーン・・・

苗木「ところで不二咲クン?このSDカード、どこで拾ったの?」

不二咲「え?……あぁ、うん……実はね……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

――1時間前、教室

センセー「あ、不二咲くん!ちょっと良いかな?」

不二咲「……はい?えっとぉ……何ですか?」

センセー「ちょっと倉庫にチョークの予備があったと思うから、取ってきてくれないかな?」

不二咲「はぁい。分かりました。」

――倉庫

不二咲「えぇーっとぉ……あ、このダンボール箱かな?」

不二咲「うぅーんっ……よいしょっ……とぉ……」コロンッ・・・カツッ

不二咲「あれ?ダンボール箱から何か……SDカード?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

不二咲「――と、いうワケなんだよぉ」

苗木「ふぅーん、なんでそんな所にあったのかな?」

不二咲「さ、さぁ?……あ、パソコン立ち上がったよ」

苗木「どんなのかな?マインは……地雷で……クラフトは……工作……軍事ゲームかな?」

不二咲「細かいことはやりながら説明するよぉ。それじゃ、ワールド生成!」

苗木「………お、おぉぉぉっ!すごーい!全部ブロックだー!」

不二咲「えへへぇ……どう?面白そうかなぁ?」

苗木「ウン!不二咲クン!これ、どういうゲームなの!?」

不二咲「うん。えっと、このゲームは…………んっ!?」

苗木「ん?どうしたの………?」

不二咲「えっと………何だか………画面が……!?う、うわああああぁぁぁぁぁ………」

苗木「ッ!?あっ……うわあああああああぁぁぁぁっ………!」

シュゥゥゥゥゥウウウウウウウッ・・・・・・スポン!

パソコンの画面は、苗木と不二咲をのみこんで暗くなり、沈黙した。

そして、同時刻、苗木のクラスメート全員も、消えた。

――??

苗木「…………ぅ……ぅうぁぅぁ……吸い込まれるぅぅぅっ……ハッ!?」

苗木が目覚めた所は、どこまでも青空が広がる平原。

すこし遠くには、森林があり、後ろを振り返れば川もある。

だが、その景色全てが異様だ。

全ての物が正方形のブロックで構成されている。草も木も水も全てだ。

そして、苗木は自分の足元を見て気付く。

苗木「ぁ……ぁああああっ!?なんだよ……なんなんだよこれぇぇぇぇぇっ!?」

自身の体さえも、正方形のブロックで構成されていたのだ。

そう……ここはマインクラフトの世界だ。

苗木「ぁあ………ぁぁあああ………」

近くには誰もいない。現実世界では一緒にいた不二咲もいない。

一体全体何がどうなっているのだろうか………?

苗木は立ち上がって、川の方へ向かう。

そして、水に自分の顔面をつける。

苗木(冷たい。息もできない。髪の毛も濡れる。やっぱり、これは夢なんかじゃないんだ……)

頭を上げると、空を見上げる。

苗木(どうすりゃ良いっていうんだよ……ボクはまだこの世界がどんな物かも知らないのに……)

深く溜息をつくと、横になった。

そして、耳を澄ます。葉が風に揺られる音。川の流れ。そして誰かが言い争っている声…………

…………!?

苗木は飛び起きると、川の向こう側を見る。そこには……

>>7
2人指定。
男子キャラ限定。

石丸 大和田

大和田「兄弟ッ!だからこんな所でウダウダしてても仕方ないだろうがッ!今すぐ周りを探索すべきだ!!」

石丸「何を言うのだ!こういった危機的状況に陥ってこそ冷静に行動すべきなのだ!そんな安易な考えで行動していたら埒があかない!!」

大和田「このまま飢え死にしたらどうするんだぁーっ!?」

石丸「遭難したときの事も考えたまえぇーっ!!」

苗木「お、おーい!石丸クン!大和田クン!ボクだよ!苗木誠!」

石大和「「うん……?……あぁっ!苗木(クン)!!」」

石丸と大和田に出会った。2人は突然こんな場所に来てしまったため、混乱しているようだ。

しかし、ゲームをプレイしていないハズの、この2人が何故いるのだろうか?

苗木は石丸と大和田に、この世界がマインクラフトというゲームの世界だということ、事の発端、行方知れずの不二咲の事を話した。

大和田「ふ、不二咲が……?マジ……かよ……」

石丸「ぬぅ~……ぐぐぐぅ……そんなことが……」

苗木「でも、どうして2人が?2人はゲームをプレイしていたワケじゃ……いや、もしかして……」

大和田「もしかして………何だよ?」

苗木「……ボクたちだけじゃなく、もしかしたら他の皆もこのゲームの中にいるかもしれない………」

大和田「アァ……?おい……なんでったってそんなことが……」

石丸「いや、あり得ないことではない。現に僕らもゲームの世界に入っているのだからな……」

大和田「……じ、じゃあ、どうやったら元の世界に戻れんだよ!?」

苗木「ゴメン……ボクもこのゲームについてはまだ疎いんだ。せめて不二咲クンがいれば……」

結局、殆ど進展は無い。苗木は改めて周りを見回す。

苗木(…………ん?……あれは……塔?)

遠くに薄らだが、石の塔が見えた気がした。

再び言い争いを始めた2人に、苗木は伝える。

苗木「ねぇ、2人とも!見て!あそこに塔が――」

石丸「兄弟ッ!またそんなことを言い出すのか!?」

大和田「頼むから兄弟!苗木も来たことだし……なぁ!?」

まともに取り合えそうにない。そう判断した苗木は、2人の気の済むまで待つことにした。

しかし、丁度その時……

ポツ・・・ポツポツポツッ・・・ザザッ・・・ザァザァザァッ!

苗木「うわぁあっ!?」

石丸「な、なんだ!?」

大和田「急に雨が降り出してきやがった!」

苗木「……2人とも、こっち!」

雨が降り出して、ぐしょぐしょに濡れてしまったが、これは好都合。2人の会話が収まり、苗木たちは塔の見える方角へ走り出した。

1分ほど走って見えたのは、一面が白い砂漠。石の塔は、砂漠の中にある村にあったのだ。

大和田「む、村だ!」

石丸「やったぞ!泊まらせて頂けるか、聞いてみることにしよう!」

苗木「ウン!」

3人は砂漠へ足を踏み入れる。すると、突然雨が止んだ。

石丸「む?急に雨が止んだぞ!」

大和田「いや、止んだんじゃねぇみたいだ。砂漠には雨が降らないみてぇだな」

苗木「なるほど……このゲームのギミックは結構あるみたいだね……」

3人は歩き、遂に村に辿り着いた。

村は、家が5軒と、石の塔があるくらいの、小さなものだった。

村人たちは農作をしたり、本を読んだりしていた。小さくても、貧しい村ではなさそうだ。

砂利の道を歩いていると、頭が寂しい中年の村人が声をかけてきた。

??「あなた方、旅のお方ですか?」

石丸「はい!僕は石丸清多夏!こちらは大和田紋土クン!そしてこちらは、苗木誠クンです!」

大和田「……よろしくな」

苗木「あ、は、初めまして……」

??「そうですか……私はこの村の村長を務めています、ラザレフと申します。旅のお方、今晩の泊まり先にお困りのようで。あちらの家は空き家となっております。どうぞご自由にお使い下さい。」

苗木「え、良いんですか?」

村長「えぇ、構いません」

石丸「誠にありがとうございます!このご恩は決して忘れません!」

村長「ホホッ……それでは、私はこれで……あぁ、そうそう。夜になったら、用心してくださいね?ホホホホッ……」

大和田「……?おい、ちょっと待てや!お前!用心しろって……どうゆうこった!?」

村長「……フフッ……さぁ?夜になれば、分かるのではないですか?ホホホホホッ……!」

村長は不気味に笑うと、自宅であろう民家に入ってしまった。

空を見上げると、もうすっかり日が暮れていた。もうすぐ、夜だ。

今日はこれで終えます。

最近は夜更かし耐性が弱ってます(´・ω・`)

3人は指定された民家に入る。

民家は狭いことはなく、3人で泊まるのなら広いくらいだった。

大和田「山田とか桑田なら、こういう状況を"ムサ苦しい"って言うんだろうな」

苗木「ははは……言いそうだね、確かに」

石丸「……いくらあの2人でも、こんな状況でそんなことを言うだろうか……?」

大和田「甘いな兄弟。言うんだよ、それが」

石丸「ぐ……そうなのか……」

苗木「……それじゃあ、今日はもう寝ようか。おやすみなさい」

石丸「うむ!明日に備えてここで体力を回復しておくとしよう!それでは2人とも、おやすみなさい!」

大和田「あぁ、おやすみ……」

…………

…………

…………変だ。おかしい。眠れない。

眠くないのではなく、どれだけ力を抜いても眠ることが出来ないのだ。

こっそり目を開けて、2人の様子を見る。

石丸も、大和田も、寝ようとはしているが、やはり眠れていないようだ。

いや、きっと頭が無意識の内に混乱して、眠りにくくなっているだけだ。

そう思い、無理矢理にでも自分を寝させようとする。

――5分後

…………ダメだ。眠れない。

もう一度目を開けてみると、石丸は顔をしかめ、大和田は目を開けている。どちらも眠れていないようだ。

そして、ついに大和田が起き上がる。眠ることを諦めたようだ。

大和田「兄弟、苗木、起きてんだろ?……ったく!このゲームでは睡眠の概念がねぇのかよ」

石丸「……やはり、兄弟も起きていたか……」

苗木「あぁ、不二咲クンにあらかじめ聞いておくんだった……」

石丸、苗木も起き上がる。

大和田「……俺、ちょっと周り歩いてるわ」

石丸「!?待て兄弟!1人で出歩いたら危険だ!」

苗木「そ、そうだよ!それに村長のラザレフさんも、夜は用心しろ、って言ってたし……」

大和田「何言ってやがる。あんなハゲオヤジの言うことにビビッてちゃあ、超高校級の暴走族の名が廃るぜ!!」

そうとだけ言うと、大和田は外へ出て行ってしまった。

――砂漠

夜の砂漠は、昼間とは違い、かなり寒い。

暗くなれば一面の白色が、銀色に早変わりするのだ。

大和田(クッソ……なんだよあんな脅し文句如きで………)

『夜になったら、用心してくださいね?ホホホホッ……』

ラザレフ村長の言葉が脳裏を過る。

大和田(だいたい、夜になったら、っつっても、ホラ、全然大した事ねぇじゃんか)

だが、大和田は気付いていなかった。サボテンの後ろから見つめる緑色の影に……

大和田(……さぁてと……そろそろ戻るとするか)

後ろを振り返り、村の方へ歩き出す大和田。

だが、ほんの数歩だけ進んだだけで、足が止まった。

さっきまでいなかったハズの、緑色の人型の化け物。弓を持った白骨。長身の黒い化け物。人と同じくらいの大きさの蜘蛛……

それらが、砂漠に我が物顔で存在していたからだ。

大和田(な……なんだよ……アレ……)

思わず後ずさりして、ハッと振り返ると、後ろにも同じような光景が広がっていた。

……そして、気のせいか、それらが少しづつ自分の方へ近づいているような気がした。

『夜になれば、分かるのではないですか?』



大和田「ぎ……ぎやぁぁぁぁぁっ!?」

全速力で、大和田は村へと戻る。白骨から放たれる矢を避け、襲ってくる緑色の化け物を退け、先へ進む。

そして、近くにあったサボテンの後ろに潜り、身を隠そうとする。

ヴァー?コツ・・・コツカツッ・・・ウバァァァァァァァッ・・・キシャー!

化け物たちは、大和田を見失ったようだ。

大和田(……なんだよ……見かけだけの単細胞かよ……あ~、ビビッて損した~……)

ホッっと胸を撫で下ろす大和田。

だが、その耳が、謎の音を聞き取る。

プシューーーッ・・・

大和田「ん……?何だ…………!?」

大和田が後ろを振り返ると、緑色の異形の生物がいた。

その生物は、白く発光し、今にも爆発しそうな勢いで…………

――砂漠の村の家

ボムンッ!

苗木「……?……ねぇ、石丸クン、今何か音が聞こえた気がするんだけど……」

石丸「あぁ、僕も聞こえたぞ……爆発音のような何かの音が……」

謎の爆発音に気付いた2人。

苗木「大和田クン、大丈夫かなぁ……?」

苗木が家のドアを開け、外の様子を見ようとすると…………

タ、タスケテクレェェェェェッ!!!

誰かの助けを求める声がする。

苗木「ん?誰だ?」

苗木が目を凝らすと……それは……

大和田「な、苗木ィッ!兄弟ィッ!助けてくれぇぇぇぇぇっ!」

苗木「お、大和田クン!?」

後ろから化け物の大群に追われている大和田だった。

石丸「なにッ!?兄弟ッ!?」

苗木「大和田クン!!早く家に入って!!早く!!」

大和田「う、うぉおおおおおおおおっ!!」スゥッバタン!!

大和田は滑り込むように家の中に入ると、慌ててドアを閉める。

苗木「ふ……ふぅ……」

石丸「兄弟ッ!!無事だったか!?怪我はないか!?」

大和田「あぁ……すこし手首を擦っちまった……でもこれであいつらは入れな…………い…………?」

バキッ!ベシッヴァー!・・・バキッバキッ!!ヴァァァァー!ベキシッ!バキィッ!

緑色の化け物がドアを破壊しようと突きや蹴りを入れている。

3人は家の奥の方へ下がり、ギリギリまで耐えようとする。

苗木「ど、どうしよう……?」

大和田「どうしよう……ったって……もう時間の問題じゃねーか……」

石丸「……いや、まだ望みはあるぞ!大声を出して壁を叩き、助けを呼ぶのだっ!!」

大和田「よ、良し……」ドンドンドンッ! 

大和田「誰かいないか~っ!?助けてくれぇーっ!!」

石丸の提案を、大和田が実行する。

大和田「ぬおおおおおぉぉぉぉぉっ!!」ガスガスガスガスッ!

苗木「お、大和田クン!?手、痛くないの!?」

大和田「そういや全然痛くねぇぇぇぇっ!!でもそんなの関係ねぇぇぇぇっ!」ガスガスガスガスッ!

石丸「兄弟!頑張れ!頑張るのだぁぁっ!!」

大和田「ぐおおおおおおおおっ!!!」ガスガスッポコッ・・・

大和田「あ………?」

苗木「え………?」

石丸「穴が………開いたぞ………」

大和田が殴り続けた壁に、縦横1メートル程の穴が開いた。

目の前には、手の平サイズの木のブロックが転がっていた。

向こう側には、敵の気配はない。

それを見て、苗木が閃く。

苗木「大和田クン!この穴を広げることって出来ない!?」

大和田「…!そうか……分かった!やってみるぞ!」

大和田は、穴の少し下の壁を叩き、崩した。

すると、人が通れるくらいの大きさの穴になった。

それとほぼ同時に、ドアが化け物によって蹴破られた。

石丸「急いでここから出るのだ!」

3人は開けた穴から飛び出し、家から逃げることが出来た。

外はまだ夜で、星がチラチラ光っている。

家から十分に離れたとき、大和田が後ろを振り返って言った。

大和田「なんとか………逃げれたっぽい……な……」

苗木「…………」

石丸「…………」

大和田「ん?どうしたんだよ2人とも………」

苗木と石丸は、大和田の方を向いて硬直している。

戸惑っている大和田に、石丸が無表情で後ろを指さした。

大和田「後ろ……?俺の後ろがなんだって………」

大和田「…………」

自分の後ろにいた者を確認すると、大和田も硬直した。

??「ゴゴゴゴゴ・・・」

石大和苗「…………う、うわぁぁぁあああああああっ!?」

大和田の後ろにいたのは、自分たちの背丈よりも大きい、鉄の人形だった。

苗木「に、逃げなくちゃっ……!」

人形から3人は逃げようとするが…………

ヴァー・・・ヴァー! コツ、カツコツ・・・プシュ・・ピシュァー・・・ウバァァァァァァァッ・・・キシャー!

石丸「か、囲まれた!?」

大和田「嘘だろぉ!?おいっ!?」

先ほど家に侵入してきた化け物たちが、追いついてきたのだ。

鉄の人形と、化け物に挟み撃ちをされる。

苗木「もうダメだっ!!」

石丸「うぐっ……!」

大和田「……クソォッ!!」

3人が死を確認したその時…………

??「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!」

ボゴォッ!ガスッ、ゲシッ、プシュッ、ドゴォン!・・・キシャァーッ!ウバババババッ!!ガスッ・・・

苗木「え………?」

石丸「な……何が起こっているというのだ……?」

大和田「あいつ……化け物達と戦ってやがる!」

鉄の人形が、苗木たちを襲おうとしていた化け物を蹴散らしているのだ。

矢も、爆発にも動じずに、無双をしている。

ものの数十秒で、化け物は全て片づけられた。

??「ギ、ゴゴゴゴ・・・」

苗木「た、助けてくれて……ありがとう……」

石丸「君は、一体何なのだ?どうして僕らを助けてくれたのだ?」

??「ゴゴゴゴゴ・・・?」

大和田「こいつ、喋れないのか……ま、助けてくれてサンキュな!」

大和田はそう言って人形の腹をポンポンと叩く。

本人にとっては、ただのスキンシップだったのだろう。

だが、そのスキンシップで、人形の様子が変わった。

??「ゴゴゴゴゴゴゴォッ・・・」

石丸「な、なんだ……?どうしたというのだ……?」

苗木「ッ!?危ない!!大和田クン!下がって!!」

大和田「あ?……う、うわぁっ!?」

人形が3人の方へ向かってきた。

驚き、逃げる3人。開いた穴から家へ逃げ込む。

体格が大きい人形は、穴から家へ入ることができない。

穴に手を突っ込み、振り回して暴れる。

??「ゴゴッゴォーーーンッ!!」

苗木「うわぁっ!」

大和田「大丈夫だ苗木、このサイズの穴ならこいつは入れねー。ヘヘッ!この間抜け人形め!!」

その一言で、人形の頭からブツンッという大きな音が聞こえた。

人形は、体の向きを変えて、器用に穴から家へ入ってきた。

石丸「入ってきたではないかっ!?」

大和田「……余計な事言っちまったな……」

苗木「そ、それより……逃げ、うわっ!!」

入り口から逃げようとすると、人形が回り込んできた。

そのまま壁に追い詰められる。絶体絶命だ。

人形の手が伸びてきて、3人は、今度こそ死を覚悟する。

3人は目を瞑り、沈黙する。

…………

…………?

いつまで経っても殺さない人形に疑問を感じ、苗木はゆっくり目を開ける。

苗木「……あっ!!石丸クン!大和田クン!目を開けてみてよ!」

石丸「う……何だ……?……!!」

大和田「兄弟?苗木……?……あっ!!」

??「…………」つ薔薇

人形は苗木たちに薔薇を差し出していた。

ただ友好的な関係を築きたかっただけなのだ。

苗木「……ありがとう!」

??「ゴゴゴ・・・(≧∇≦)」

石丸「ハハハッ……仲良くなりたかっただけなら、そうと言えば良かったのにな……」

大和田「兄弟、こいつは喋れないんだっつの」

??「ゴゴ・・・///(〃▽〃)」

人形は赤面したようになり、顔を伏せてしまった。

いつの間にか夜は明けて、朝日が穴から射していた。

苗木たちが人形と共に家から出ると、自宅から村長が声をかけてきた。

村長「旅のお方ー!ご無事でしたかー!?」

大和田「あっ!!このクズ村長めが!!何が無事だぁ?俺たちは夜、死にかけたんだぞ!?必死こいて逃げた先はでっかい鉄の人形!寿命が縮んだっての!!」

石丸「兄弟、そこまでにしておいた方が良い。……村長、この人形は何なのですか?僕らを襲ってきた怪物は何なのですか?」

村長「……ハァ?……あなた方、このマインクラフト界を旅しているのでございましょう?ならば、説明は不要のハズですが」

苗木「……村長……信じてもらえないでしょうが、ボクたちは本当は現実世界の人間で、このゲームを起動したら、なぜかこの世界に吸い込まれてしまったのです」

石丸「僕らはこの世界については全然詳しくありません。それに、元の世界に戻るための手がかりを探さなくてはいけないのです。何か、情報をお持ちでしたら、教えて下さいませんでしょうか、ラザレフ村長?」

村長「…………詳しくはこちらの本に載っております」

大和田「ん?なんだ?"アンテナでもモロコシでも丸石でも分かるマインクラフト"ォ?ざけんじゃねぇっ!!何だよこのふざけた題名の本は!?」

村長「まぁまぁ落ち着いて下され。初心者にも分かりやすいような解説がきちんと書かれております。必ず、役に立ちますよ」

苗木「あ、ありがとうございます!」

大和田「お前は素直に礼を言うんじゃねぇっ!!」

石丸「それと……村長……実は、僕らは同じようにこのゲームに入ってしまった仲間達を探しているのです。何か、情報をお持ちでしょうか……?」

村長「……ふぅむ……残念ながら、私は存じません。しかし、少し遠くに、ここよりもはるかに大きな村があります。
そこへ行けば何か手がかりがあるやもしれませぬ。ここからまっすぐ南へ進み、砂漠を抜けたらすぐです」

石丸「うぅっ……何から何まで……本当にありがとうございます!!」

??「ゴゴゴゴゴ・・・」

村長「おや、アイアンゴーレム……この方たちが気に入ったのかい?」

アイアン「ゴゴゴゴゴ・・・」コクリ

村長「ホホッ……そうかいそうかい……この方たちになら、アレを託しても良いかもしれんなぁ……」

アイアン「ゴゴゴゴゴッ!」ガクガク

苗木「どうしたのですか?」

村長「いえ、この村には、昔、地獄の君主から授かったと伝えられる秘宝がありましてな……ホホッ……付いてきて下され」

大和田「な、何だよ……」

――村長自宅

村長「……こちらにございます」

大和田「なんだよ……悪趣味な頭蓋骨じゃねぇか……」

秘宝、というのは、黒い頭蓋骨だったのだ。

怪しく光る四角形の頭蓋。とてつもなく不気味だ。

村長「村の言い伝えでは、何かの儀式に使うものとされています。御守りとして、お持ちいただけたらどうかと……」

大和田「いやイラネーよ……かなりホラーチックだぞ?これ……」

石丸「兄弟、そんな事を言っては失礼だぞ。こういうときは、ありがたく頂戴した方が良い!」

大和田「あ……あぁ……」

苗木「ありがとうございます!村長!」

村長「いえいえ……そろそろ、行かなくてはならないのでは?」

苗木「あ…はい……」

アイアン「ゴゴゴゴゴ・・・」

石丸「……大丈夫だ!!別れは永遠ではない!きっとまた会えるさ!!」

大和田「あぁ、ここでの出来事、ぜってぇ忘れねぇ。だから寂しがんな」

アイアン「ゴゴゴゴゴォ・・・!」

大和田「村長も、なんだかんだあったけど色々とサンキュな」

村長「ホホホッ……いえいえ、あなた方もお気を付けて」

石丸「はい!!それでは、またいつか会いましょう!!さようなら!!」

大和田「あぁ、じゃあな!!村長!!ゴーレム!!」

苗木「本当に、本当にありがとうございました!!さようなら!!」

3人は家から出ていく。

その後ろ姿を見守りながら、村長は呟く。

村長「あの方々、本当に大丈夫であろうか……?」

アイアン「ゴゴゴゴゴォッ・・・」

村長「そうだな、アイアンゴーレム……彼らの素質は素晴らしい。問題なのは、それを活かせるか、だ……」

微笑を浮かべると、村長は農作業を手伝いに、外へ出て行った。

取り敢えずこれで一段落。
ここまでのあらすじを3文でまとめると……

苗木と不二咲がマイクラやってたらマイクラに吸い込まれた。
マイクラの世界で大和田と石丸に出会う。
村で本と謎の頭蓋骨をげと。

こんな感じ。



マイクラって建物とか作るだけのゲームかと思ったら敵とか村とかあるんだな
凄く面白い。先が気になる

いきなり匠かよ……そらなぁきついわ

ドアぶち破られるってことは、ハードモードかぁ。
そんな装備で大丈夫カナー?

>>39
初見さんがいるとなると、自分がマイクラを誤解させてしまいそうで怖い……
これから自分のマイクラに対するオリジナル設定とかちょくちょく挿んでいきますので、ちょっとややこしくなるかもです。

>>41
苗木の逆主人公補正がなんとかしてくれると思う……

>>42
大丈夫!これから強くなるハズ……

村を離れてから数分後……苗木たちは南の村を目指して砂漠を歩いていた。

石丸は、村長から貰った本を、早速音読している。

石丸「――はじめに……マインクラフトにおける基本の5大要素は、採掘、工作、戦闘、建築、そして生存である。
経験が活きる採掘、知識が重要な工作、技量が物を言う戦闘、個性が発揮される建築、マインクラフトにおける最低条件の生存……
本書では、この5大要素を中心に、マインクラフトの常識からトリビアまでを、章を重ねて初心者にも分かるように徹底的に解説していこうと思う。
1ページ1ページに書かれていることを頭に叩き込み、実践することができれば、今日からあなたはマインクラフタ―だ!――
ふむ、読んでみれば、なかなか興味深いではないか!!」

大和田「…………」

苗木「…………なんだか……難しそうだね……」

石丸「む?そんなことはないぞ?ここにも、"初心者にも分かるように"と書いてあるではないか!」

大和田「いや……兄弟が今読んだところ、俺の耳から入って口から抜けていったぞ……」

石丸「ぐぐぐ……どこか落ち着いて読むことができる場所があれば良いのだが……」

苗木「そうだね……こんなに暑くちゃ……」

足を前に出すと少しだけ沈む砂丘。熱風を帯びた風。追い打ちをかけるような太陽の光…………

苗木「どこかにオアシスでもあれば良いのにな……」

石大和「「…………」」

ただ指定された方向へ向かって、苗木たちは歩き続ける。

さらに数分が経ったその時……

苗木「……あっ!?……石丸クン!大和田クン!見て!アレ!」

石丸「あ、あれは……」

大和田「み、水だぁーーーー!」

苗木たちの思いを察したのか、そこにはオアシスがあった。

苗木「やった!あそこで水分補給すれば、今の状況を少しでも回復できるハズ!」

石丸「それに、村長から貰った本も読むことができるな!!」

大和田「お、おう……それはちょっと勘弁かもしれねー……」

逸る気持ちを抑えつつ、苗木たちはオアシスへ辿り着いた。

だが、そこには既に先客がいた。

苗木「……ねぇ、あそこに小屋があるよ……」

石丸「いや、もしかしたら、クラスメートの誰かかもしれないぞ!!」

大和田「なるほど……あっ?小屋から誰か出てきたぞ!?」

>>46
誰?
1人指定

舞園

舞園「あっ!?苗木君!?石丸君に大和田君も!!」

苗木「舞園さん!やっぱり舞園さんもこの世界に……」

舞園「は……はい……あの……これはどういうことなんでしょうか……?気が付いたらこのオアシスで倒れていて……」

大和田「……舞園……信じられねーと思うが、ここはマインクラフトっていうゲームの世界だ……苗木がマインクラフトをパソコンでやってたら、何故かゲームの中に吸い込まれたらしい。苗木だけじゃなく、ゲームをやっていないハズのクラスメートも全員だ」

舞園「あ……そうですか……やっぱりここはマインクラフトの……」

石丸「む?舞園くんはこのゲームを知っているのかね?」

舞園「はい。以前、ラジオ番組に出演したときに、少しかじった程度ですけれど……」

苗木「舞園さん!ボクたちは他のクラスメートと、元の世界に戻るための方法を探しているんだ。何か知っていることがあれば……」

舞園「えっと……ごめんなさい……何も知りません……」

大和田「謝るこたぁねーよ。……俺たち、今から南の方にあるっていう村を目指してるんだ。そこなら何か手がかりがあるかもしれないしな」

石丸「舞園くんも僕らと一緒に村を目指そうではないか!仲間は多い方が心強い!」

苗木「どう?舞園さん……?」

舞園「……分かりました。私も苗木くんたちと一緒に行きます!」

苗木「……ありがとう!舞園さん!」

舞園「はい!でも、今日はこの小屋で泊まったらどうですか?もう日が暮れているみたいですし……」

大和田「そうだな……昨日みたいなことになるのはゴメンだぜ」

舞園「……?昨日、何かあったのですか?」

石丸「いや!なんでもない!なんでもないのだ!」

苗木「ハハハ……ハァ……」

オアシスで、舞園さやかと会った苗木たち。

どうやら、今夜は小屋で一泊するようだ。

――小屋

舞園「……どうぞ入ってください」

石大和苗「「「お邪魔します!!」」」

苗木「うわぁ……すごいや……舞園さん、すごい建築センスあるんだね……」

小屋は木造で、柱には原木が使われていたり、壁には額縁が飾っていたりと、かなりおしゃれだ。

舞園「ふふっ……建築については、ラジオですごく勉強したんですよ。でも、材料を入手するのに結構手間がかかりましたね。ここは砂漠ですから、木を刈りに遠くまで行ったんです」

石丸「ふぅむ……初心者の僕らには今一つ分からないが、これから生き抜くために頑張るとするか……」

石丸はそう言って、本を広げる。

舞園「あれ……?それは……」

大和田「ん?この本がどうかしたのか?」

舞園「…いえ……本じゃなくて、その本の著作者……」

石丸「…?著作者は……スティーブ?」

苗木「この人がどうかしたの?」

舞園「いや……どこかで聞いたことがあると思うんですけど……」

大和田「気のせいだろ。スティーブなんて結構外国人にはありそうな名前だし。」

舞園「……そうかもしれませんね……」

石丸「ふむ……第1章は、最初にも述べていた生存の解説から……」

苗木「ん~?どれどれ?
――生存するにあたっての3つの忘れてはならない物は……拠点、道具、食料である。拠点を中心に、道具で暮らしを発展させ、食料を手に入れる……これが基本の流れである。――
アレ?そういえば僕たち、昨日とかは何も食べてないよ……?」

舞園「えぇっ!?それは大変です!今すぐこれを食べてください!早く!」

舞園は3人に、焼き魚を差し出す。

香ばしさが食欲をそそる。

石丸「い、いただきます!」

苗木「いただきます……!?」

大和田「……いただきます」

3人は貪るように魚を平らげた。

舞園「もうっ!気を付けてください!何も食べないと空腹で餓死しちゃうんですよ!!」

苗木「ご……ごめん……舞園さん……」

石丸「うむ……しかし、この本に書いてある拠点と食料は分かるのだが、道具、というのは何だろうか?」

舞園「多分、道具というのはこれを指しているのだと思います」

そう言うと、舞園はチェストからスコップやツルハシ、クワ、オノ……なんと剣まで出してきた。

舞園「スコップは土を掘りやすくして、ツルハシは採掘を、クワは農業、オノは木の伐採……剣は戦闘に使えます」

苗木「戦闘っていうと……あの怪物たちと戦うこともできるのか……」

舞園「怪物……?あぁ、ゾンビとかのことですね?」

大和田「あ、あぁ……あいつら顔色悪いなぁって思ったら、ゾンビだったのか……」

舞園「はい。多分この本にも載ってますよ」

舞園は本のページをパラパラ捲って、"モンスター図鑑"というページを指差した。

大和田「――プレイヤーや、村人を襲うゾンビ、弓を構えて矢を放つスケルトン、バグから発生したクリーパー、ブロックを取り、瞬間移動するエンダーマン、トリッキーな攻撃を仕掛けるスパイダーなど、数多のモンスターがマインクラフトには生息する。――
……なるほど……」

苗木「こいつらと戦って、何かメリットとかは……?」

舞園「基本的に、こういった生物……MOBって言うんですけれど、MOBは倒すと、アイテムを落とすんです」

石丸「アイテム……?」

舞園「はい。携帯食料になる腐った肉、武器になる弓、爆弾に作り替えることができる火薬、瞬間移動することができるエンダーパール、素材として重要な糸……こういった物を落とすんです。だから、自分の身を守るだけじゃなくて、素材を手に入れるためにモンスターを狩ることもあるんです」

苗木「……聞けば聞くほど奥が深いゲームなんだなぁ……」

石丸「うむ!なるほど!村長も言っていた通り、確かに分かりやすくまとめられていた!これで基本的なことはバッチリだ!」

舞園「そうですね……あっ!そうだ!忘れていました!」

苗木「ん?どうしたの?舞園さん?」

舞園「苗木くんたちの分のベッドを作り忘れてました!この世界では、ベッドがないと眠ることができないんです」

大和田「なぁるほど……だから昨日は全然眠れなかったのか……」

舞園「ちょっと待っててください。今すぐ作りますから!」

舞園はチェストから羊毛ブロックと、木材ブロックを取り出すと、作業台の上に置いて、何やら工作を始めた。

と、思えば、もう既にベッドが3つ出来上がっていた。

舞園「すみません……小屋が狭いから、窮屈になると思いますけど……」

石丸「いやいや!泊めてくれるだけでも十分ありがたいぞ!!」

大和田「そうだぜ。……昨日みたいなことには本当になりたくないし、今日はもう寝るか。おやすみー」

石丸「あぁ、そうだな!!おやすみなさい!」

苗木「皆、おやすみー」

舞園「皆さん、おやすみなさいです…」

明日に備え、皆は寝た。

そした、昨日のようなハプニングもなく、朝を迎えた……

朝になると、舞園は必要な物をチェストから出して、支度をした。

もう少し南に歩けば、砂漠を抜けることができる。

そうすれば、村まではもう目と鼻の先だ。

舞園「それじゃあ、行きましょうか!」

苗木「うん!」

大和田「うっしゃぁっ!!気合入れてくぞぉっ!!」

石丸「うおおおおおぉっ!!僕も兄弟に負けないように、気持ちを奮い立たせなくてはなっ!!」

全員、とても気合が入っているようだ。

村に向かって歩く4人。

その後ろに、謎の男がいた。

??「…………」

光の失われた瞳がじっと4人を見つめる。

??「……持ってやがるな……アイツら……」

納得したように頷くと、男は音を立てずに、ターゲットの尾行を始める。

苗木たち御一行は、砂漠を抜けるまであと少し、というところまで辿り着く。

途中で手に入れたサトウキビや、サボテンを整理しながら苗木は言う。

苗木「ねぇ、舞園さん……思ったんだけどさ、マインクラフトには、クリア条件って言えるものはあるの?」

舞園「え……?どうしてそんなことを?」

苗木「いや、もしかしたら、クリア条件を達すればこのゲームから出られるかもしれない、って思ってさ」

石丸「そうか!!あながちない話ではないな!!」

大和田「で、どうなんだ?舞園?」

舞園「いや……ないことはないんですけど……マインクラフトは箱庭ゲームですし……それがクリア条件と言えるのかは……」

苗木「何でも良いよ!手がかりになりそうな情報なら!」

舞園「…分かりました。……このゲームには、実はボスモンスターがいるんです。モンスターの名前は、エンダードラゴン。
昨日説明した、エンダーマンの親玉みたいな存在です。……でも、私が知っているのはこれだけなんです……そこまではラジオでやりませんでしたから……」

大和田「……そうか……お!良いこと思いついたぞ!?兄弟!あの本の"モンスター図鑑"になら、何か情報が書いてあるかもしれねー!」

石丸「……!!なるほど……!では早速調べてみるぞ!!」

石丸はモンスター図鑑のページを捲り、エンダードラゴンの情報を探し始めた。

だが、どのページにもエンダードラゴンについては記述されていない。

苗木「どう?石丸クン?見つからない?」

石丸「ぐぐぐ……すまない……モンスター図鑑には載っていないようだ……」

舞園「あの……目次には何かそれらしきページは書いてありませんでしたか……?」

石丸「……目次……!!そうか、その手があったか!!」

石丸は一番最初の目次のページを捲る。

すると、1つだけ異質な項目が最後にあった。

石丸「…………」

大和田「…?……兄弟?どうしたんだ?」

石丸「……"禁忌"」

苗木「……え?」

石丸「最後に、赤い文字で"禁忌"と書いてあるのだ!!」

禁忌……マインクラフト界におけるタブー。

石丸は興味本位で、最後のページを捲った。

――ここに記述されている内容は、決して口外してはならない。どれもこれも、世界を180度回転させてしまうような内容のものばかりだ。
読むというのなら止めない。だが、これだけは書いておこう。
立ち向かえ。恐れるな。――

石丸「…………」

石丸は"禁忌"のページに書かれていることを読んだ。

そして、戦慄した。

黒いブロックで構成された門。

対象的に、白いブロックで構成された門。

輝くブロックで構成された門。

花で囲まれた、地面に空いた穴。


石丸の目に、様々な文章や絵が飛び込んでくる。


半身半獣。ミュータント。3つ首の竜。

宇宙要塞。火山帝国。無限に続く地下通路。

異世界の本。核爆弾。奴隷。

ネクロマンサー。海賊船。錬金術。


そして、極め付けは最後。


12の目。

バタンッ!

大和田「き……兄弟ィッ!?」

苗木「い、石丸クン!どうしたの!?」

舞園「石丸くん!!声聞こえますか!?返事はできますか!?」

石丸が倒れた。返事はない。

大和田「クッソッ!!俺が背中に担ぐ!!村に行けば医者がいるかもしれないだろ!!」

大和田が石丸を背負い、苗木と舞園は少しでも早く村に着くことができるように、石丸の足を持つ。

砂漠を抜け、平原に到達。

そして、一面に広がる巨大な村が見えた。

黄昏しかわかんねーや

ネザー、雪の世界、(分からない)、黄昏の森……かな

あとモンスターの方はヒドラとかエンダードラゴンとか?

エーテルじゃねーの?世界は

基本バニラだから知らんかった

>>60 >>61 >>62 >>63

>>58で書いた物の解説をば。

黒いブロックで構成された門……ネザーポータル

白いブロックで構成された門……アストロクラフト(宇宙MOD)のスペースポータル

輝くブロックで構成された門……エーテルMODのエーテルポータル

地面に空いた穴……トワイライトフォレストのトワイライトポータル

半身半獣……黄昏の森のボス、ミノッシュルーム

ミュータント……ミュータントクリーチャー

3つ首の竜……黄昏の森のボス、ヒドラ

宇宙要塞……ギャラクティクラフトのダンジョン

火山帝国……ベターダンジョンズのダンジョン

無限に続く地下通路……ベターダンジョンズのダンジョン

異世界の本……ミストクラフトの本

核爆弾……核MOD

奴隷……メイドMOD(ただの数合わせ。強引だけど、間違ってはいない)

ネクロマンサー……ベターダンジョンズのボス

海賊船……ベターダンジョンズ、その他のダンジョン

錬金術……等価交換MOD、その他のシステム

12の目……エンドポータル

大和田「見えてきたッ!!兄弟!もう少しだか――」

??「あ~、ちょっと良いカナ!?お兄さんたち?」

苗木「ッ!?誰だ!?」

先ほどから4人の後ろを付いてきた男が、4人に声をかける。

??「そこの真面目そうなお兄さん、どうやらその本の禁忌のページを見て気絶したみたいだね……?」

男は、苗木の質問に答えない。

舞園「そ、それがどうしたんですか……?」

??「いんや?まぁこれは特に意味はないケド……放っておいても大丈夫よ?自然と回復するから。
ところで、俺が本当に言いたかったのは……えーっとぉ……君じゃない……あ~、君でもない……そうだな、君だ君!!」

男は、舞園を指差した後、大和田を指差し、苗木を指差して、ウンウンと頷く。

苗木「ぼ、ボクが何だって言うんだよ……?」

??「ふふん……惚けてもムダだね。君、真っ黒い頭蓋骨を持っているハズ。それさえ渡してくれちゃえば、事は穏便に済む。
だぁけぇどぉ?もし、渡してくれない、って言うんだったらぁ……そうだなぁ……」

男は、少し考える素振りを見せてからこう言った。

??「全治一生だね。さぁ?どうする?」

大和田「苗木!!こんな怪しい奴の言うことなんかにビビるな!!どうせ宝を強奪しようと脅しをかけてるだけに決まってる!!」

舞園「そうですよ!!頭蓋骨が何なのか、私は良く分かりませんけれど、こんな見え見えの脅しに乗せられちゃいけません!!」

苗木「……もちろんだよ。2人とも。この頭蓋骨には、ラザレフ村長とゴーレムとの出会いの証なんだ!!渡すもんかっ!!」

??「あれ?あれあれ?そういう選択をしちゃう?いやぁ~、参ったなぁ~、BAD ENDまっしぐらだなァ~……ハッハッハッ!!」

ケラケラ笑って、男は言う。

??「じゃ、そっちが選択したのだから、俺は遠慮なくやるぜ?少しでも楽な運命にしたいなら……」

次の瞬間、男の背中から、弁慶の七つ道具宜しく、スコップ、ツルハシ、オノ、弓、剣が現れた。

??「今すぐ息を止めて死んだ方がマシだぜぇっ!?」

今日は早いですがこの辺で。

こういう悪役系のキャラは書いてて楽しい。

男は手を後ろに回し、無造作にスコップを取った。

そして、地面に突き立て、掘るような動作をした。

すると、男が掘った部分だけでなく、周りの土も抉り取られたのだ。

??「ホイッ!」

大和田「ッ!?」

舞園「きゃっ……!!」

苗木「うわっ!?」

抉られた地面の範囲は、苗木たちの足元にも届き、そのまま足を払われる形で、現れた岩肌に尻もちをついてしまった。

身動きの取れない苗木に、男はスコップをツルハシに持ち替え、追い打ちをかける。

下の岩肌ごと、苗木をツルハシで打ち付けようとしているのだ。

同じように尻もちをついた舞園と大和田は、苗木を助けることができない。

ボゴッボゴッ!ギャンッ!ボゴォッ!!

苗木「ぬ、くぁっ!ふんっ……ぅうっ!!」

ツルハシによる攻撃を、苗木は身を翻して避ける。

ツルハシに当たった岩肌は、豆腐をスプーンで削るように崩れていく。

??「うらっ!!うらっ!!うらっ!!何?避けるダケ?」

完全に勝利を確信し、油断している男の表情。

だが、その油断を苗木は見逃さない。

苗木「避けるだけな……ワケ……ないだろぉっ!!」

隙を突いて、苗木は頭蓋骨を大和田の方へ投げる。

??「なっ!?クソッ!!」

大和田「ナイスだ!苗木!……舞園!ちょっと剣借りてくぞ!」

頭蓋骨を手に入れた大和田は、石丸を担いだまま、剣を持って、遠くに離れた。

??「クッソ……うらぁっ!」ガスッ!!

苗木「ぐぅっ……」

男はツルハシの持ち手の部分で苗木の頭を殴り、気絶させた。

舞園「な、苗木くん!?」

??「テメェら2人は……」

男はツルハシを指で撫でると……

??「これで勘弁してやる!!」ガギャァン!

岩肌に思い切りツルハシを打ち付け、縦横10メートル程の穴を作り出した。

男は跳んで避けたが、舞園と苗木はそのまま穴に落下。

そして、さらに深くに現れた岩肌に叩きつけられた。

舞園「い……痛っ……」

苗木「…………」

??「ヘッ……ブロックでも積んで出てくるんだな!」

男はそう言うと、丸石ブロックを相当数、穴に投げ入れた。

大和田「…………オメェは何が目的なんだよ……?」

??「ほえ?質問?テメェらみたいなケッチィな人には答える義理は無いぜぇ~?」

男は、背中にツルハシを仕舞う。

??「最後のチャンスだぜ。渡すか?渡さないか?どっちを選んでも構わないけど、選択によっては……分かってるね?」

大和田「……渡すワケねぇだろ!!」

??「はいBAD END~!!」

大和田の言葉が終るか終らないかの内に、男はそう言った。

そして、おもむろに背中から弓を取り出して、構えた。

弓による連続射撃。最早人間離れしている弓裁きだ。

大和田「クッソ……!!」

大和田は、石丸を背負いながら、森の方へ逃げる。

飛んでくる矢を避け、全力疾走。

??「ふふん?ムダだね?」

男は弓をオノに持ち替える。

――森

大和田「ハァ、ハァ、ハァ……まだ追ってきやがる……」

石丸「…………」

大和田は、木という木の間を縫って、男を撒こうとしていた。

だが……

??「ムダだぁ~!俺のこの能力さえありゃあ、森の1つや2つ丸裸にできるんだぜ~!?」

後ろから、男がオノを振り回しながら迫って来る。

男が前に進む度に、木々が次々とブロック化しているのが分かる。

大和田「…………ハァ、ハァ、ハァ……あっ!?」

大和田が逃げた先は湖。

1人でなら泳いで逃げることも可能であろうが、今は石丸を背負っている。

その内、木がブロック化する音が近づいてきた。大和田は後ろを振り返る。

大和田(クソッ……万事休すかよ……)

目の前にあった木がブロック化し、男が現れた。

??「見ィつけた」

無表情の男は、オノを仕舞い、代わりに剣を取り出した。

水色の、神々しい光を放つ剣。

大和田は湖の畔に石丸を寝かせると、舞園から借りた石の剣を持つ。

??「ありゃ?戦う気?こりゃぁ勇敢な兄さんだ……でも……」

大和田「……でも……何だよ……」

??「いやぁ?別に、タダ……」

男が飛びかかる。

??「無意味なのにな、って思ってサ!!」

男の剣を、石の剣でガードする大和田。

だが、力量も武器の質も違う2者。押し勝つのは確実に……

ギャン!

火花が散り、石の剣がどこかへ飛んでいった。

大和田「なっ!?……ぐぅっ……!?」

男は大和田の首元を掴み、剣を大和田の目の前に突き付ける。

??「安心しろ、殺しはしない。顔をぐっちゃぐちゃにするダケだ」

大和田「…………ぐっ……」

??「嫌だって言うんなら、10秒待ってやる。それまでに自分で息止めて死ね」

剣をチャキチャキ鳴らしながら、男は言う。

??「じゅ~、きゅ~、はぁ~ち、なぁ~な」

大和田(悪ィ……兄弟……)

??「ろぉ~く、ごぉ~、よぉ~ん、さぁ~ん」

大和田(俺……もう……)

??「にぃ~」

大和田(兄弟に)

??「いぃ~ち?」

大和田(合わせる顔が)

??「ぜぇ~ろぉ!!」

大和田(無ぇよ………)

ギャインッ!!

大和田の顔を切りつけようとしていた剣が、何者かによって弾かれた。

??「うぅん?誰だい?俺の邪魔をしてくれちゃってんのは?」

男は、周りを見回して言う。

??「あれぇ?気絶してた生真面目そうな兄さんじゃないか?意外に回復が早かったみたいだけど……あれ?どしたの?その目?
あ、怒ってる?もしかして、もしかしなくても怒ってるの?キミ?笑えるねェ?ハハハッ!!」

大和田「き、兄弟……?」

石丸?「待たせたな……兄弟……」

男の剣を弾いたのは、気絶していた石丸であった。手には、どこかへ飛んでいってしまったハズの石の剣が握られている。

だが、石丸にしては、様子がおかしい。オーラのようなものを纏い、男を睨みつけている。

??「おやおや?真面目そうに見えてたケド、本当は不良だったりするのかな?雰囲気がどす黒いよ?」

石丸?「人を見た目で判断するな、って、幼稚園で教えてもらわなかったのか?お前」

大和田「……お前、本当に兄弟なのか……?」

石丸?「あぁ、正真正銘、オレだ。だが、兄弟が知ってる方じゃねぇ……」

大和田「ど、どういうことだよ……!?」

??「ウンウン。俺も気になるなぁ~、教えてくれないかなぁ~?」

石丸?「……良いだろう。教えてやる。耳の穴掻っ穿って良く聞け……」

大きく息を吸い、そして吐く。

次の瞬間、爆発するようなオーラ。

石丸?「オレの名前は石田だぁっ!!兄弟の想いの強さを受けて生まれた、石田だぁああっ!!!」

石田、爆誕。

??「へ~、石田さんですか~、そうですか~。……で、それがどうしたの?まさかこの俺に戦うって言うんじゃないだろうな?その屑石の剣で?
笑えないぜ?俺の剣はダイヤモンド製だぞ?どっちが強いかなんて、流石に分かるよなぁ?」

石田「フン、武器の質なんかに頼って勝つ奴なんか、本来の意味での勝利なんて1回もできてないんだ」

??「ん~?どういうことかな~?それ?」

石田「さっきも言っただろうが。人を見た目で判断するな、って。勝負の結果なんて、神の気まぐれなんだッ!!」

石田が剣で切り付けようとする。男はダイヤの剣で防御したが……

??「……!?こんのやろっ!!」

力が圧倒的に強いのは、石田の方だ。石の剣で、ダイヤモンドの剣と、同等以上に渡り合っている。

石田「おい?どうした?戸惑ってんのか?さっきまで笑えないとか言ってたクセにな!!」

熱伝導性の高いダイヤモンドが火花を散らす。その内、熱で赤くなり、溶け始めた。

大和田「兄弟……すげぇっ!!」

石田「残念だったな……お前……」

??「……何がだっ!?」

石田「この状況を見てもまだ分からねぇのかよ?」

不適に石田は笑う。

バゴンッ!!

音を立てて、男の持っていた剣が壊れた。

石田「BAD ENDだ」

??「う、嘘だ!!こんな情報……プログラミングされて……」

石田「何ゴチャゴチャ言ってやがる。お前は負けたんだ。とっとと失せろ」

??「ぬん……ぐぐぐぅっ……」

石田「……うっ……」バタンッ!

大和田「!?……兄弟!!」

石田が倒れた。慌てて駆け寄る大和田。

大和田「お、おい!大丈夫かよ……兄弟……無理したんじゃねぇか!?」

石田「いや……大丈夫だ……兄弟……ちょっと、アイツと変わるわ……」

大和田「ハァッ!?何言ってんだよ!?変わるって……オイ!!」

オオワダクーン!?ブジデスカー!?オーイ!!オオワダクーン!!

向こうから舞園と苗木の声が聞こえる。穴から脱出したようだ。

苗木「あ、大和田クン!!大丈夫?ケガは?」

舞園「石丸くんにも、ケガはありませんか!?……あっ……」

舞園の表情が、男を見て強張る。

??「……フンッ……今日はこれで終えよう。だが、次にお前らと戦うときは……全治3世紀にしてやる」

男は逃げようとするが、それを苗木は止める。

苗木「ちょっと待ってよ!!お前は一体何なんだよ!?名前くらい教えろよ!!」

??「名前ェ?……そうだなァ、Mr.Minecraft とでも名乗っておこう。マイン、と呼んでくれて良いぞ」

男はそう言うと、苗木たちに背を向け、風のように去ってしまった。

苗木「大和田クン!大丈夫なの!?」

大和田「あ、あぁ……兄弟にも、ケガは無ぇ……」

石丸「う……うぅ……」

舞園「石丸くん!?大丈夫ですか……?気絶していましたけど……」

石丸「……舞園くん……苗木くん……兄弟……?僕は何かしたかな?」

大和田「あ?何のことだよ……?」

石丸「いや……なんだか手に……思い切り暴れたような感覚があるのだよ……」

大和田「(石田のことは……黙ってた方が良いな……)いや?ずっと気絶してたままだったが?」

石丸「そ、そうか……兄弟……何かあったのかね?汗をかいているぞ……」

苗木「あ、もしかして……さっきの男、大和田クンが倒したの!?」

大和田「え?あ?う……ま、まぁな!!ホレ!頭蓋骨も無事だ!!」

舞園「凄いです!大和田くん!あんな強い男の人をやっつけちゃうなんて!!」

石丸「……すまない、兄弟……どういうことなのか、僕にも説明してくれないか……?」

大和田「…………」

結局、適当に作った武勇伝で、皆が納得するまで、ゲーム内時間で小一時間を費やした大和田だった。

一方その頃、どこかへ去った男、マインはと言うと……

――??

マイン「……全く、あれだけの力を持つ奴がいるなんて聞いてないぞ!!」

??「…………」

マイン「おいこら!ブレイン!!聞いてんのか!?」

ブレイン「…………聞こえているさ。今回は、私の情報不足が原因で、計画に支障をきたしてしまった」

マイン「だろ?だろ?俺は悪くないよな!?な!?」

ブレイン「だが、そういった不足の事態にも対応できなかったお前もお前だ。人の事は言えんハズだが?」

マイン「ンだとこのヤロッ!?俺に責任転嫁かよ!?」

ブレイン「現にそうであろう?……"生存の暴君"如きが"戦闘の暴君"に刃向うなど言語道断……
頭蓋骨を手に入れられなかったのは、お前が原因だということで処理させてもらう」

マイン「……オイ、良い気になりやがって……ざけんじゃねぇっ!!俺がもう一度あいつらと戦えば、今度こそ――」

ブレイン「いや、お前は作戦から外す」

マイン「あ……?おい……冗談も休み休み言えよ……おい……!!」

ブレイン「冗談ではない。奴らの頭蓋骨については、"建築の暴君"に一任させることにする」

マイン「い、いやいやいや!!あんな木偶の坊に何ができるって言うんだ!?」

ブレイン「あいつが木偶の坊だと言うならお前は産業廃棄物だ!ウジウジ言っとらんでさっさとここから去れ!!」

マイン「……覚えてやがれ……このクズめ……」

そして、視点は戻り、苗木たちは南の村に入る。

――南の村

苗木「外から見てもかなりの大きさだったけど、中に入るとさらに大きく見えるね……」

舞園「はい……それにしても、気付きましたか?苗木くん?」

苗木「え……?」

大和田「舞園?何かあるのか?」

舞園「……この村、誰か人の手が加わってます……」

石丸「何っ!?どうして分かるのかね!?」

舞園「あの、普通、村には決まった施設しか存在しないハズなんですよ。それなのに、この村には……色んな施設があります。
ほら、あの交番みたいな建物とか……あの薬局みたいな物も……」

舞園は次々と建物を指差して言う。

大和田「ん?待てよ?誰かがこの村に手を加えたんなら、もしかしたらクラスメートがこの村にいるかもしんねーじゃんか!?」

苗木「そうか!!それじゃあ、手分けして探そうよ!これだけ広い村だと、探すのは苦労すると思うし……」

石丸「そうだな……!良し、皆!これから日が暮れるまで、手分けしてこの村を探索するぞ!集合場所は……そうだな……あの宿屋らしき建物で良いのではないか!?」

石丸は、奥にあるベッドの看板が取り付けられた建物を指差す。

誰か、クラスメートを見つけることができるだろうか……?

すみません……睡魔が襲ってきましたので寝ます……

夜更かし耐性ェ……

――鍛冶屋

石丸「――と、いうワケなのです!何か、情報をお持ちではないでしょうか!?」

親方「ハァン?知らないなぁ……ハァン……お前、何か知ってるか?」

弟子「ハァン……知りませんです。ハァン……あ、親方、空から女の子が……」

石丸「…………」

――漫画喫茶

大和田「おい!頼むよ!何でも良いんだ!!知ってることがあれば教えてくれ!!」

店長「ハァン……?そう言われても知りませんモノは知りません……ハァン……」

大和田「クソッ……ここもダメか……」

――交番

舞園「誰か、保護していたりとかは……?」

巡査「ハァン。誰も保護なんてしてないよ……ハァン……」

舞園「じゃあ、何か怪しい人とかは……」

巡査「ハァン、今のところ怪しいのは君なんだよね……ハァン……」

舞園「……ここはもう引き下がった方が良いですね……」

――役場

役員「ハァン……君もしつこいねぇ……知らない、って言ってるでしょうが……ハァン……」

苗木「お願いします!!何でもいいんです!だからお願いします!!」

役員「……ハァン……警備員ー!こいつ摘み出してー!ハァン……」

警備員「了解です……ハァン……」

苗木「え、ちょ、ちょっと!待ってください!!ま、待ってぇ~……」

――宿屋

石丸「情報はなし……か……」

大和田「ったく……何なんだよあの村人ども!!」

舞園「でも、これだけ広い村なんですから、きっと何か手がかりがあるハズですよ!!建物だって、こんなに増えてるのに……」

苗木「…………」

石丸「…?苗木くん、どうかしたのかね?」

苗木「……いや、ボクが役場に聞き込みに行ったとき、役員の人が何か隠そうとしてたような気がするんだ……」

舞園「と言うと……?」

苗木「何だか、ボクに奥の方を見られたくなかったみたいで……強引に外に出されちゃったんだ……」

大和田「……うっし!そうと決まりゃあ、やることは1つ!明日、役場に全員で押しかけるんだ!!」

石丸「うむ!!名案だな、兄弟!」

舞園「それでは、今日はもう寝ましょうか?」

苗木「そうだね……もう大分、日が暮れてきたし……」

石丸「うむ、この宿屋は個室制なので、部屋に戻るとしよう!おやすみなさい!!」

大和田「あぁ、おやすみ」

苗木「おやすみ!」

舞園「……おやすみなさい」

――舞園の部屋

舞園「…………」

舞園は、個室の窓から月を眺めていた。

舞園(綺麗な月……ブロックなんですけどね……)

正方形のブロックでも、輝く月は美しい。

舞園は、今度は下の方を向いた。

地面は、松明で湧き潰しがされており、モンスターはいない。

舞園(ここまで念入りに湧き潰しがされているんですから、絶対に誰かプレイヤーがいるハズですよね……)

誰かがいるハズ…そうとしか考えられない。

舞園(ちょっと諄いけど、皆を気にかけてくれている桑田くん。話題が豊富で、場を和ませてくれる山田くん。
誰よりも優しい、大切な存在の不二咲くん。やり過ぎるときもあるけれど、どこか憎めない葉隠くん。
プライドが高いけど、本当は皆が大好きな十神くん……)

まだ見つかっていないメンバーを考える舞園。

舞園(いつもはネガティブでも、頼れる腐川さん。話していて楽しい、朝日奈さん。
心も体も、とっても強くて、皆を守ろうとしている大神さん。ギャンブルをしているとき、とっても楽しそうなセレスさん。
性格が全然違うのに、どこか凹凸が噛みあっている戦刃さんと、江ノ島さん……)

絶対見つけてやる……そう考える、舞園であった。

舞園(さて、明日に備えて、今日はもう寝ちゃいましょう!)

ベッドに潜りこもうとする舞園。だが……

??「勝手にお邪魔します……」

誰かが部屋に入ってきた。この宿屋には、鍵がついていないのだ。

舞園「……!?……だ、誰ですか!?」

??「え?何だよ……昼、名前くらい教えろ、って言うから教えてあげたのに……覚えてない?」

謎の男が舞園に近寄る。良く見ると、それは……

舞園「えっと……マイン……さん?」

マイン「ウンウン。覚えててくれてありがとう!」

今朝、苗木たちを襲撃した、マインだった。

舞園「頭蓋骨なら、私は持っていませんよ……残念でしたね……」

マイン「いや、今回の目的は頭蓋骨なんかではない」

舞園「じゃあ、何が目的なんですか……?」

マイン「要件はただ1つ……俺をお前らのパーティに入れることだ。」

舞園「パーティ……って……私たちと行動を共にする気ですか……?」

マイン「あぁ、そうだ。……代わりに、お前らが捜している仲間の情報を教えよう」

舞園「ど、どうして私たちが仲間を捜していることを……」

マイン「ヘン!そんなの調査済みさ。で、どうすんだ?」

舞園「そんなの……私たちを内部から攪乱させるための罠かもしれないじゃないですか……」

マイン「……なかなかに商売上手じゃねーか……姉ちゃん……」

舞園「えっ……?」

マイン「なら、俺も引き下がれない。もう1つ、とっておきの情報があるんだ……」

舞園「その情報、とは……?」

マイン「お前らの仲間の情報だけじゃなく、俺の仲間の情報も教えてやる」

舞園「……あなたの……仲間?」

マイン「あぁ……俺以上にヤバい奴なんて沢山いる。どうだ?」

舞園「余計に信じられなくなりましたよ!!どうしてそんな情報を話す必要性があるんですか!?」

マイン「……俺、さっき『全治3世紀にしてやる』とかかっこつけて言ったが、あれから作戦、外されちまってなぁ……
あいつらとは最早、仲間でも何でもねぇんだ。だから、俺を作戦から外した罰として、お前らと組み、共にあいつらを倒そうとしてんだ。
お前らは仲間の情報と、敵の情報を知ることができて、俺は復讐に成功する。どうだ?悪い話ではあるまい?」

舞園「…………嘘ですね」

マイン「あ?」

舞園「そんなの、信用する方がおかしいですよ!残念でしたねマインさん。その手には乗りませんよ」

マイン「……じゃあ、この情報だけ言っておく」

舞園「だから、その手には乗りません、って!どうせ偽の情報を流して、私たちを――」ポンッ

マイン「良いか?落ち着いて聞け」

マインは、舞園の言葉を遮るように、彼女の肩に手を置く。

マイン「明後日の夜、俺の元仲間だった"建築の暴君"がこの村を襲撃する。信じるかどうかはお前次第だ」

舞園「…………」

マイン「……良いな?」

そう言って、マインはまた、風のように去ってしまった。

そしてそのまま夜が明け……

石丸「おはようございます!!皆、今日も張り切って探索しようではないか!!」

大和田「あぁ、今日は役場に行くんだったな……」

舞園「…………」

苗木「……?どうしたの?舞園さん。何だか妙に沈んでるけど……」

舞園「…………あっ!?いや、何でもないんです…」

苗木「…………?」

舞園(昨日のこと、やっぱり皆に言うべきでしょうか?……いや、止めておきましょう。確実に私たちが惑わされるだけです)

石丸「それでは皆、役場へ行こう!!」

――役場

苗木「すみませーん!?役員の方いませんかー!?」

役員「ハァン………はい。何でしょ…………また君か……ハァン……仲間を連れてきたみたいだけど、知らないったら知らないよ……ハァン……」

苗木「そう言わずに、何とか、情報を!!」

役員「だから、どんだけ言われても知らないものは――」

その時、石丸が土下座をした。

石丸「大変、申し訳ございません!!ご迷惑なのは重々承知の上でございます!!ですが、僕たちは捜さなければいけないのです!!大切な仲間を!!」

役員「…………」

大和田「おい、お前は役員なんだろ!?村の住人だけじゃなく、俺たちみたいな余所者だって、きちんと対応しなきゃいけねーんじゃねぇのか!?」

役員「……ハァン…」

舞園「お願いです。役員さん。どうしても情報が必要なんです!少しだけでも良いんです!何か、手掛かりを教えて下さい!!」

役員「…………」

苗木「役員さん……」

役員「…………チッ!」ガタッ

役員は舌打ちをして、苗木たちの前に迫って来た。

役員「オイ!テメェら……こっちが黙って聞いてりゃゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャゴチャ…………るっせぇんだよ!!
ンだよ!?知らない知らない、っつってんだろーが!!!
何だ?テメェらはこういったクレーマーまがいのことを他の村でもしてんのか?
それとも、ただ本当に仲間の情報を知りたいだけなのか!?
どっちにしろ迷惑なんだよ!!分かるよな!?
ホラ、見ろよ!!他の相談者様がこっち見てんだろぉがっ!?
テメェらがぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ言ってるから、他の方々が迷惑してんだよ!!
オラ、さっさと帰れ、今すぐ帰れ、さぁ、帰れ!!
いつまでもここに居座ってくれるようなら察呼ぶぞコンニャロォ!?」

ここまでを一息で叫ぶ。

役員「ここまでイラッときたときは今までになかったぜ!?この点ではテメェらは評価に値する!!
だ・が・なぁ……俺の堪忍袋をオーバーキルしてくれちゃった落とし前はキッチリつけてもらうかんな!?
言っとくがなぁ?俺はこの役場のナンバー3って言われてる男なんだぜ?
俺が上に届を出せば、テメェらなんかすぐに裁判で叩かれまくって豚箱にポイだ!!
分かるか!?わぁーかぁーるぅーよぉーなぁっ!?
ホラ見ろ!テメェらがたらたらたらたらたらたらたらくっ喋ってるせいで、皆出てっちまったじゃねぇか?
こりゃ立派な公務執行妨害だよなぁ!?ホラ、今すぐ察に通報させてもらうからな!?
そこを動くなよ!?…………ハァン……」

石丸「…………」

大和田「…………」

舞園「…………」

苗木「…………」

全員が警察にお世話になることを確信した。

その時――

??「……もう十分ストレスは発散しただろ?警察は別に良いんじゃねーか?」

役員「……ん!?そ、村長!?」

苗木「き、キミは……」

>>95
誰だ!?
1人指定

一二三

山田「ホレ、役員殿。もうストレス発散は十分したでしょう?警察は流石に……」

役員「そ、村長!?」

苗木「き、キミは……山田クン!?」

部屋の奥の方から、山田一二三が現れた。

山田「いやぁ……大丈夫でしたかな?苗木誠殿、石丸清多夏殿、大和田紋土殿に、舞園さやか殿?」

石丸「山田くん!?そ、村長とはどういうことだね!?」

山田「いやはや、話すと長くなるのですが……ともかく役員殿!!」

役員「は、ハイッ!?」

山田「相談者様たちが出て行ってしまわれたのは、他でもないあなたのせいですぞ?」

役員「そ、そうなのですかっ!?」

山田「今回の件は、給料の査定に影響しますからな。覚悟しておいてくだされ」

役員「う、うぅぅぅ………ハァン……」

どうやら、役員が隠そうとしていたのは、山田だったようだ。

舞園「た、助かりました!山田くん!!」

山田「うほあぁっ!?……あ、アイドルの舞園さやか殿に……感謝されるなんて……この山田一二三、幸せでございますぞぉ……」

山田は、そのまま床にへたばった。

大和田「おい!?こら!!ワケ分かんねぇっての!?早く起きて説明しろよ!!」

山田の胸倉を掴み、無理矢理にでも起こそうとする大和田。

山田「ちょ……大和田紋土殿……苦し、あの……おまっ……」

生存報告……
最近は少し忙しいので、これからは絶望的に更新が遅くなると思われます。
それでも見て下さる方がいらっしゃるのであれば、首と鼻の下を伸ばしてお待ちください。

山田は起き上がり、役場の奥にある、自分の部屋へと案内する。

――山田の部屋

山田「ささ、遠慮なくどうぞ」

苗木「し、失礼しま~す……」

石丸「おおぉ……この部屋も全て山田くんが造ったのかね?」

部屋は、洒落たソファーや、壁掛け時計、天井にはシャンデリアのような物が吊る下がっている。

舞園「す、すごいですね……私なんかとは比べものになりませんよ」

大和田「まさか山田にこんな建築センスがあったとはな。俺も見習いたいぜ」

山田「あ、あははは……それでは、どこから説明いたしましょうか?」

苗木「そうだね……まず、どうして山田クンがこの村の村長なのか、説明してよ」

山田「ハイ。少し話は長くなるのですが……」



――まず、僕は自分の部屋で掲示板サイトを覗いていたら、急に目の前がボーッと霞んで、気絶してしまったのです。

目が覚めたら、そこは巨大な村のど真ん中でした。

僕はマインクラフトを以前にもやったことがあるので、すぐにここがマインクラフトの世界だと気付きました。

起き上がって、村の探索をしていると、とある人と出会ったのです――。



大和田「誰だよ?その人って?まさかお前以外にもクラスメートが……」

山田「まぁ、まぁ、落ち着いて下され大和田紋土殿。話はこれからですぞ」

――話を戻しますぞ?その人は、可憐な少女だったのです。

まぁ、そんな彼女を見て、僕は一瞬だけ理性を失いそうになりましたが、なんとか踏みとどまり、その女の子と話をしてみたのです。

少女の名は、エリア。その子は僕と同じように、気が付いたらこの世界で倒れていた、と言うのです。

エリア殿は身長が僕よりも断然低かったので、僕は、希望ヶ峰学園付属小学校の生徒なのか?、と聞いてみました。

ですが、なんと!その子は記憶を失って、自分の名前以外何も覚えていないと言うのです。

そんなエリア殿と共に、僕はこの世界から脱出する決意をしました。何としてもエリア殿だけは元の世界に帰したいと思ったのです――。



舞園「エリアちゃんは今どこに?」

山田「ハイ。今は村の周りを探索している所です。もうそろそろ帰って来ると思いますが……話を続けますぞ」



――まず、僕らは村の発展に協力をしようと、建物の増築を始めたのです。

僕も建築には自信があったので、交番を建てたり、鍛冶場をリニューアルしたりと頑張ったのですが、エリア殿の建築センスには感服させられました!!

そりゃあもう凄かったのですぞ!!彼女が建築をする姿はもう……天使を通りこして、もはや女神級の美しさ!!

……えー、コホン。実は、この役場や宿屋も、全てエリア殿が1人で建築なされたのです。

そういった行動をした僕らに、村人の方々は口々にお礼の言葉を申し上げてくださりました。

それで僕は村長になり、エリア殿は僕の秘書を務めることになり、現在に至ります――。



苗木「なるほど……」

山田「ハイ……まぁ、最初は心細かったのですが、僕以外にもマインクラフトの世界に入ってる方がいたのですなぁ……いやぁ、良かった良かった」

大和田「良かぁねぇよ!?どうすんだよ?これから!?」

大和田が山田の襟を鷲掴みにする。それを、山田は手を翳して抑える。

山田「大丈夫ですぞ。大和田紋土殿。直にエリア殿が帰って来る。作戦会議はそれからにいたしましょう」

石丸「兄弟、焦っていても解決はしないぞ」

大和田「……フン!」

山田の襟から手を離す大和田。苗木たちは、謎の少女、エリアが帰って来るのを待つことにした。

数分後……

トタトタトタ・・・

山田「おや、帰って来ましたかな?」

小さな足音が聞こえ、山田がそれに反応する。

そして、ドアが開く。

ガチャン・・・

エリア「ただいまぁ~……」

山田「おかえりですぞ。エリア殿。何か変わったことは?」

エリア「うんうん。何にも……その人たち、誰?」

緑色の髪の毛に、薄い青を基調にした長袖長ズボンを着た少女、エリアが入って来た。

エリアは、部屋にいた苗木たちを見て、キョトンとした顔を浮かべている。

山田「この方々は、現実世界での僕の友人ですぞ」

苗木「初めまして、エリアちゃん。ボクは、苗木誠だよ」

石丸「初めまして!!僕は石丸清多夏です!!」

大和田「大和田紋土だ。よろしくな」

舞園「舞園さやかです!よろしくお願いします、エリアちゃん!」

エリア「うん、苗木お兄ちゃんに、石丸お兄ちゃん、大和田お兄ちゃんに、舞園お姉ちゃん!あたしは、エリア、っていうんだ~、よろしくー!」

ニッコリ笑うと、エリアは頭を下げた。

山田「さ、エリア殿も来たところですし、早速作戦会議といきましょうか?」

石丸「うむ、そうだな!では、まずここまでの生活で手に入れた物を出し合おう!!」

マインクラフトで手に入れたアイテムを見せ合うことになった。

苗木たちは、頭蓋骨、マインクラフトのガイドブック、そして舞園が作ったツール一式を取り出す。

一方で山田とエリアは、特にこれと言った物を出さない。大した収穫がなかったのだろうか?

大和田「山田、お前が現実世界でマインクラフトをプレイしていたことがあるんなら、この頭蓋骨について何か知っていることはねーか?」

舞園「この頭蓋骨を狙っている人もいるみたいで……一体どんな物なのか気になるんです……」

山田「うぅむ……そうですなぁ……残念ながら拙者には分かりかねまする!!」

胸を張って山田が答える。

石丸「どうしてだね?山田くんならマインクラフトを詳しく知っていると思ったのだが……」

山田「いやはや、僕はマインクラフトでは殆ど建築しかやりませんでしたからなぁ……あと、配布ワールド制作とか、PVPサーバーに入ったりとか……」

苗木「ははは……それじゃ仕方ないか……。エリアちゃんは何か知ってるかな?」

先ほどから黙っていたエリアに、苗木が質問する。

エリアは「う~ん」と唸り、しばらく考え込む仕草をする。そして、

エリア「ごめん、何も分からないや」

と困り顔で答えた。

大和田「クッソ……進展なしかよ……」

それぞれが様々な動作を行う。

頭を抱え込む大和田。「心配ない!」と励ます石丸。下を向いて、何かを考えている舞園。腕を組んで唸っている山田。





エリアをじっと見つめている苗木。





唇が頬の辺りまでくる程、微笑んでいるエリア。




「無駄なのに」




苗木は、エリアがそう言っているように聞こえた。

ふと気が付くと、時計がもう夜に差し掛かっていることを告げている。

石丸「今日はこれで解散だ!!皆、明日も気合を入れることができるよう、今日は宿屋で寝るとしよう!!」

大和田「あぁ。んじゃ、宿屋に戻るぞー」

舞園「何だか、今日は時間が経つのが早い気がしますね」

山田「ですな。拙者の話が少し長すぎたのですかな……?フフフ……」

苗木「…………」

舞園「苗木くん、宿屋へ行きますよ?」

苗木「…………」

エリア「苗木お兄ちゃん?どうしたの?」

苗木「え?あ、ご、ゴメン!宿屋ね。宿屋」

エリアに話をかけられ、ようやく反応した苗木。彼は、エリアのことをあからさまに怪しがっている。

苗木(何だ?この、首の後ろがモゾモゾして、肩が自然と上がってしまうような感じ……)

胸騒ぎ。苗木が感じているのは、強いて言うならこれだ。

謎の感覚を残しながら、苗木は役場を出て、宿屋に向かった。

やばい……久々に書いてるから、何だか変な感じがする……
今日はこのへんで……

宿屋に着くと、皆は昨日のように別々の個室へ向かう。

――舞園の部屋

舞園「…………」

舞園(昨日、マインさんが言っていたこと……あれは本当なのでしょうか?)

昨夜、舞園の部屋を訪問したマイン。

彼は、建築の暴君がこの村を襲撃すると伝え、去って行った。

建築の暴君……どんな人物なのだろうか?

彼が言っていたこと、「俺以上にヤバい奴なんて沢山いる」

この発言が妙に突っかかる。彼よりも強い者が?

昨日、彼に襲撃された際、敵がどれだけの戦闘能力を持っているのかは痛い程分かった。

彼が殺そうと思えば殺されていた……

あんな異常者よりも異常……考えられない。

舞園(襲撃されるのは明日の夜。それまでに、何とか準備を整えなくては……)

そのまま、舞園はベッドに潜り込んだ。

朝が来て、苗木たちはラウンジに集まる。

――ホテル内、ラウンジ

ラウンジは広い。山田の言う通り、エリアが造ったのだ。

巨大な絵画の下、テーブルに向かい合わせになっているソファー。

そこで作戦会議を執り行っている。

苗木「山田クンも見つかった所だし、もう少しだけ周りを探索して、この村を離れようか」

大和田「そうだな。エリアも一緒に連れてくか?」

石丸「ああ、そうしよう!!困っている者同士だ、助け合おう!!」

舞園「そ、そうですね……」

苗木「……どうしたの、舞園さん?」

気のせいか、舞園に元気がないように見える。

舞園「……あ、いや、何でもないん……です……」

石丸「大丈夫かね?気分が悪ければ無理をすることは……」

舞園「いえ、本当に大丈夫ですから……」

とは言うものの、やはり元気がない。

だが、皆もそれ以上は気にせず、会議は終了した。



と思いきや、舞園が思わず声を上げた。



舞園「あれ?エリアちゃん?どうしてこんな所に?」

宿屋に、エリアが入って来たのだ。

エリア「あ、お兄ちゃんたち、いたの?てっきり、もう探索に向かってたと思ったんだけど……」

石丸「これから行く所だったのだ。何か用かな?エリアちゃん?」

エリア「……いや、良いの。お兄ちゃんたちも、早く行った方が良いんじゃないかな?」

大和田「ヘヘッ……言われなくてもそうするよ。山田も誘わないといけないしな」

舞園「はい!いってきます、エリアちゃん」

苗木「…………」

エリア「……いってらっしゃい」

苗木は無言だったが、それ以外は全員、エリアに声を掛け、宿屋を出た。

エリア「……ふぅ……」

皆が出て行き、ほっと胸を撫で下ろすエリア。

そして、苗木たちが座っていたソファーの方へと近付く。

――役場

苗木「山田クン?いるー?」

役員「ん?うわっ!?君たちは昨日、僕に恥をかかせた迷惑クレーマー!?ひ、ひえーーー!!」

石丸「や、役員さん!!も、申し訳ありませんが、村長が今どこにいるか存じないでしょうか!?」

役員「そそそ、村長?村長なら、奥の部屋にいますが……」

大和田「おう、あんがとな。あんまりキレると血圧上がるから、体に気を付けろよ」

役員「ハ、ハァン……」

――山田の部屋

石丸「失礼します!!山田くん、いるかね!?」

山田「おお、皆さんお早いですな。よいしょ、っと。ちょいとお待ちを」

奥の方からひょっこり顔を出す山田。

何やら準備を済ませると、苗木たちのもとへ走って来る。

苗木「おはよう。山田クン。ボクたちは今日限りでこの村の探索を終えて、また他の仲間を捜しに行こうとおもうんだけど……山田クンはどう思う?」

山田「……そうですなぁ……覚悟はできていたのに、いざこの村を離れるとなると、流石に辛いものがありますなぁ……」

大和田「だろうな。何かお前、妙に馴染んでる感じがあったしな……」

山田「……いや、大丈夫ですぞ!!僕には、この世界から帰還するという重大な使命があるのです!!絶対に……絶対に成し遂げて見せますぞぉぉおおお!!」

両拳を上げ、叫ぶ山田。決意が固まったようだ。

それでは、と舞園が本題を話す。

舞園「今日はどこを探索しましょうか?」

山田「そうですなぁ……おっ!!では、洞窟探検などはどうでしょうか?」

苗木「ど、洞窟?」

石丸「何!?洞窟まであるのかね!?」

山田「おや?皆さんご存知ない?」

大和田「ああ、俺たちはまだあんまりこの世界に慣れてないからな」

舞園「私は一応知っていますけれど、詳しいことはあんまり……」

山田「ふっふっふぅ……それでは、拙者が洞窟について解説して進ぜよう!!」

唐突に始まった山田一二三によるマインクラフト講座。

【~熊でも分かる、楽しいマインクラフト講座~ "洞窟"】

何故か画面が紙芝居調になり、下からニョキっと3つの人形が現れる。

山田と、石丸。そして苗木を模したパペットだ。

色の付いた木製のようで、表情が可愛らしげに描かれている。

ナレーション『熊でも分かる、楽しいマインクラフト講座~!』イエエエエエエエエエエ!!

何者かの声が上の方から響くと、3つの人形が反応して跳ねる。

一頻り跳ねた後、山田人形が挨拶をする。

山田「皆さんこ~んにちは~!」コーンニーチハー!!

山田「今日は、この山田一二三がマインクラフトの洞窟について、徹底解説していきたいと思いますぞ!!生徒は、石丸清多夏殿と、苗木誠殿でございま~す!」

石丸「皆さん!!よろしくお願いします!!」

苗木「よ、よろしくお願いします……!?」

ぺこりと頭を下げる石丸人形と苗木人形。山田人形が会を進める。

山田「それでは、まず皆に知って頂きたいのは、マインクラフトにおける洞窟についてですな!洞窟は、ワールドを生成した際に、自動で生成される地形の一種で、ほんの数十歩歩いただけで終わる物もあれば、マインクラフトの最下層まで続いている物もあるのですぞ!!」

石丸「先生!!質問があります!!」

山田「何ですかな?石丸清多夏殿?」

石丸人形が威勢良く手を上げて質問をする。隣で山田人形の話を聞いていた苗木人形は石丸人形の迫力にビクッ、と震える。

石丸「洞窟に入ると、何かメリットがあるのですか!?」

山田「ふふふ……良い質問ですな……答えて進ぜよう!!」

山田人形が眼鏡を押さえる素振りをすると、画面に向かって指を突き出した。

山田「マインクラフトには、様々な鉱石があります」

そう山田人形が言うと、上から鉱石ブロックがいくつか描かれた木の板が、紐につるされて下りてくる。

山田人形は腕でその板を指すと、言う。

山田「この鉱石ブロック。探すとなると、相当な手間がかかります。良く考えて下され。地面を掘って掘って掘りまくって、やっと手に入れられる鉱石の数は、ほんの僅か。
いつの間にか手に入れることができた鉱石の量よりも、道具を作るために消費する鉱石の量の方が多くなる、という悪循環が生まれてしまうのです」

上へ戻る木の板。

山田「ですが!?洞窟を探検してみると……なななんと!!一部の鉱石が剥き出しになっている所があるのです!!なので、洞窟を探検すれば、必然的に鉱石がウハウハ状態になるのです!!これが、洞窟を探検する際の一番のメリットです」

石丸「そうか、なるほど……!!ありがとうございました!!」

一礼する石丸人形。続いて、苗木人形が質問をする。

苗木「あの、先生。洞窟を探検して、危険なこととかは……あるんですか?」

その質問に、山田人形はウンウンと頷く。

山田「いやぁ~、苗木誠殿は勘が鋭いですなぁ~。その通り!!洞窟には、常に危険が付きまとうのですぞ!」

再び、木の板が下りてくる。今度は、ゾンビやスケルトンなどの絵が描かれた板だ。

山田「これらのモンスターは、主に暗い所にスポーンするのです。……お気づきでしょうか?勿論、洞窟内では、日光が遮断されているため、モンスターが湧き放題です。」

苗木「なんとか防ぐ方法は……?」

山田「木の棒と、石炭。もしくは木炭を組み合わせると、松明が出来ます。これを使い、洞窟内を明るく照らせば、モンスターにビビりながら先へ進むこともなくなるのです!!この作業は用語で、"湧き潰し"と言うので、覚えておくように!!」

石丸「ハイ!!」

元気に石丸人形が返事をすると、2枚目の木の板も上へ戻る。

山田「それでは、今回はここまでですぞ!!」エーーーーーーーー!?

山田「皆さん、別れは永遠ではありませんぞ!またいつか、この場所でお目にかかることができれば、共に学び、共に成長し合いましょう!!」

石丸「せ、先生……ありがとうございました!!」

苗木「……ありがとうございました……」

石丸人形と苗木人形が山田人形に礼を言う。最も、苗木人形は最後までこの舞台に慣れなかったようだが……

山田「皆さん、起立!礼!ありがとうございました!!!」

アリガトウゴザイマシター!!!

歓声に包まれながら、幕が降りた。

ナレーション『山田先生、ありがとうございました。それでは、本編へ戻ります』

山田「――と、いう説明で、分かって頂けましたかな?」

大和田「……分かったちゃあ分かったケドよ……」

舞園「何だったんでしょうか?あの茶番みたいなのは……」

苗木「……あんまりツッコまない方が良いと思うよ……」

謎の汗を流す3人。だが、石丸だけは違う。

石丸「山田くんっ!!とても参考になったぞ!!ありがとう!!ありがとう!!」

山田「いやはや……照れますなぁ。ハハハ!!」

山田の手を握り締め、ブンブン振っている。

そんな石丸を見つめながら、3人は苦笑を浮かべるのであった。

今日はこの辺で終えます。

ハイ。茶番はただ書きたかっただけです。



茶番良かったよ。可愛かったしわかりやすい

>>115
ありがとうございます。ちなみに次回の予定は未定です。

洞窟の説明も済んだところで、早速村を出て、探索に出かける苗木たち。

――村の外れ、草原バイオーム

村の周りの地形は、凹凸とした感じだ。

丘がいくつも重なり、草原バイオームなのに山岳バイオームの亜種のような見た目になっている。

だが、こういった地形でこそ、洞窟は見つけやすい。

山田「あ、あそこの洞窟なんてどうでしょうかな?」

山田の指先は、丘の真下にある穴を指していた。

苗木「おお、良さそうだね。舞園さん、松明はどれくらいある?」

舞園「はい。えーと、これくらいの洞窟なら、全然余裕くらいの量があります!」

石丸「うむ、それでは皆、行こうではないか!!」

自身に満ちた顔で、洞窟に足を踏み入れる苗木御一行。

しかし、数十メートル歩いただけで、その顔はだんだん変化していった。

恐怖を感じたのではない。むしろ、疑問を感じたのだ。

その疑問とは…………

大和田「なんだよ?この洞窟。もう湧き潰しされてるじゃねーか?」

そう、入り口では分からなかったが、洞窟内は既に松明で照らされていたのだ。

石丸「山田くん?実は一度探検したことのある洞窟だったりは……」

山田「い、いやいや!僕はこの世界に来てから、まだ洞窟探検はしていないのです!!」

舞園「……ひょっとしたら、私たちの仲間の誰かがこの洞窟を見つけて、もう攻略をしちゃったとか……」

苗木「あっ!!そうだとしたら、急がないと!!」

急に苗木が慌てる。

大和田「どうしてだ?苗木?」

苗木「もしかしたら、この奥に、その誰かが今いるかもしれない。だったら、すぐに行かないと別の出口から出て、見失っちゃうかもしれない!!」

大和田「!!」

事は時間の問題。苗木たちは洞窟の奥へ奥へと走る。

鉱石が採取された跡や、くまなく湧き潰しされた中の様子で、誰かが中に入ったことはもう決定的な物となった。

そして、数分間走り続け、その先で見たものは……

大和田(あっ!?)

石丸(なんだとっ!?)

舞園(えっ!?)

山田(うはっ!?)

苗木(な、何で……?)


奥にいたのは……









エリアだった。





苗木「え、エリアちゃ――!?」

舞園(苗木くん!!静かに!!聞こえたら怪しまれます!!)

石丸(何故だ?何故、ついさっきまで宿屋にいたエリアちゃんが……)

大和田(山田!!お前、エリアがどこに行くか、ちゃんと聞いておいたのか!?)

山田(ほへっ?何のことですかな?)

大和田(……良いか?エリアは今朝、俺らが泊まってた宿屋に来たんだ。そのエリアが今はここにいる。宿屋でずっと待機しているんならまだ分かるが、この短い時間でここまでの距離を移動するなんておかしいだろ!?あいつは何がしたいんだ!?)

山田(はぁ……?拙者はエリア殿からは、宿屋の手直しを入れるとだけしか聞いておりませんが……どうしてここにいるんでしょうなぁ?)

苗木(て、手直し?もう、その手直しが終って、ここに来たって言うのかい?山田クン?)

山田(むぅ、そういえば確かに、おかしい気がしますなぁ……)

宿屋の手直しを入れると告げ、苗木たちの前に姿を現したエリア。

だが、そのエリアが今、この洞窟内にいる。

中規模とはいえ、一介の宿屋の手直しが、そうそう早く終わるだろうか?

エリアは何を目的に宿屋へ来たのか?確実に手直しではないであろう。

そして、今、なぜ、ここにいるのか?湧き潰しの規模から、相当前からここに来ていたことが分かる。

苗木(やっぱり……エリアちゃんは怪しいかもしれない……)

以前から感じていた苗木の疑念が、確実な物へと成りかけていた。

エリアは苗木の声を聴いて、キョロキョロと辺りを見回すが、気のせいだと思ったのか、前を向いて進み出す。

苗木たちも気付かれないように後に続く。

洞窟は深く、奥の方の隅々まで、湧き潰しがされていた。

だが、何分か歩き続けると、明かりが途切れた。

石丸(暗くなったぞ?湧き潰しが不十分なのかね?)

山田(いや、これはむしろ、わざと湧き潰しをしていないのではありませんかなぁ?)

苗木(ど、どういう意味?)

山田(一部のマインクラフタ―には、モンスターがドロップする素材を効率良く手に入れるために、周りの湧き潰しをした後に、一か所だけモンスターが湧く所を作り、そこでアイテムを荒稼ぎする、という荒業を用いる者がいるのです。おそらくエリア殿は、何らかのモンスターの素材が欲しくて、今述べたことを実行しようとしているのではないでしょうか?)

舞園(周りの湧き潰しをするのは何故ですか?)

山田(うーむ、何て言うんでしょうかなぁ?密度、って言ったら良いのか……モンスターは、あんまり湧きすぎないようにゲーム側で調整されているのです。周りにモンスターが湧かなくなれば、一か所だけ作った湧き層に、沢山のモンスターが湧くのですぞ。まぁ所謂、効率を上げるためのテクニックですな)

そのような会話をしている内に、エリアは暗い場所の中心に立つ。

大和田(おい、危なくないのかよ?もし、モンスターが湧いたら、一網打尽じゃねーか)

苗木(今すぐ止めよう!まだ間に合うよ!!)

舞園(ダメです苗木くん!!危険すぎます!!)

止めに行こうとする苗木を、舞園が引き止める。

そして、ついに湧き層にモンスターが湧いた。

苗木(え、エリアちゃ――)










苗木が叫ぶ間もなく、断末魔が洞窟に響いた。




















クリーパーの断末魔が。

ピシュァァァァァ・・・

苗木(っ!?)

石丸(あ、あれは……?)

舞園(そんな…?)

クリーパーを仕留めたのは、他でもない。エリアの一撃だ。

エリア「…………」

普段の彼女からは想像もできない程、その時の彼女の目は、爛々と輝いていた。

暗闇に、妙に明るく、彼女の目が光る。

また、クリーパーがスポーンした。

プシュアアアッ!?ピシュッピシュッピシュァァァァ・・・

瞬殺。

その後も、スケルトンやゾンビなどがスポーンするが、いずれもエリアに捌かれた。

山田(エリア殿……?一体どういうことで……)

エリア「……ふぅ」

一通り片が付くと、エリアは少女らしい声を上げて、伸びをする。

そして、モンスターが落としたアイテムを、一つ残らず回収し始めた。

エリア「こんなモンかな?」

手にしたアイテムを見つめながら、エリアは呟く。

大和田(あいつ、何を持ってるんだ?)

舞園(……暗くて良く見えません……)

苗木(…………)

エリアの身のこなしに、圧倒された苗木たち。

岩陰に隠れながら、成り行きを見守る。

石丸(どうするのだ?このまま見つからないように洞窟から出ることにしようか?)

山田(……その方が安全ですな……)

苗木(……はぁ……じゃ、もど…………ろ?)

舞園(ん?どうしたんですか?苗木く――)

後ろを振り向いた苗木と舞園の表情が強張る。

なぜなら――





目の前に、緑色の、音を発する生物が待ち構えていたからだ。





ドォンッ!!

全員「「「「うぐわぁっ!?」」」」

爆発に吹っ飛ばされ、岩陰から出てくる苗木たち。

そして――




エリア「……苗木お兄ちゃんたち?こんなところに何の用?」

見つかった。

今日はこれで終わります。
次回、戦闘入ります。

ヤバい。

そう思った瞬間には、既に全員は出口へ向かって走っていた。

苗木「うわああああああああ!?」

訳の分からないまま、絶叫する苗木。

その後ろから、エリアが歩いて追いかけてくる。

……そう、あくまでも"歩いて"だ。

エリア「待って……待ってよ~、お兄ちゃん……」

手を伸ばし、無表情で追って来る。

大和田「く、来んじゃねぇっ!!てかお前、足速すぎだろーがっ!!」

確かに、足の動きは普通に歩いているだけなのだが、そのスピードが異常だ。

普段からジョギングなどを欠かさずしている石丸にも追いつきそうな程のスピード。

明らかな異常者。

山田「ひえぇーーーーーーー!!!こんなフラグ、立たせたくないですぞーーーー!!!」ハァハァ・・・

石丸「エリアちゃん・・・君は……一体……?」ハァハァ・・・

息を切らしながら、山田が叫び、石丸が発問する。

エリア「え?あたしはエリアだよ~?自己紹介したの、忘れちゃったの~?」

しかし、エリアは表情を変えぬまま、惚けた答えを返す。

……そんな状況下で、ただ1人、あることを考えている者がいた。





舞園さやかだ。

舞園(……一昨日の夜、マインさんが言っていたこと……"建築の暴君"……)

舞園(エリアちゃんは、山田くんの話を聞く限り、相当な建築の才能を持っていたハズです……)

舞園(そして、さっきのを見て分かりましたが、エリアちゃんは人並みを超す戦闘能力があります……)

舞園(マインさんよりも強く、それでいて建築の才能もある……つまり……建築の暴君は……)





突然、舞園が止まり、エリアの方を向いた。

それを見て、苗木たちも一斉に止まる。

そして、エリアも止まった。



苗木「ど、どうしたの!?舞園さん!?」

大和田「何で急に止まるんだよ!?」

石丸「に、逃げるのだ!!舞園くん!!」

山田「ぶひいいいいいいいいっ!?」



エリア「どうしたの?舞園お姉ちゃん?」

舞園「……分かったんですよ……あなたの正体が……」

エリア「……へ?」







舞園「あなたが、建築の暴君ですね?」

エリアは、突然"建築の暴君"の名を出され、戸惑っているようだ。

それに、戸惑っているのはエリアだけではない。

苗木「舞園さん……?その……暴君って……何?」

そう、マインから話を聞かなかった苗木たちには、何が何の事やらさっぱりなのだ。



エリア「ぼーくん?なぁに?それ?おいしいの?まずそうだね?あははっ……」

口調は笑っているが、表情が全く笑っていない。

舞園「マインさんから聞いたんです……今日の夜に、建築の暴君が村を襲う…って……」

マイン、と舞園が言った瞬間、エリアの表情に変化が現れる。

どこか哀れみのような……どこか悲しみのような……掴みどころのない表情。

エリア「……そっか……やっぱりマインお兄ちゃんは裏切ったんだ……」

その瞬間、エリアの口から音が漏れる。

調子のおかしい笑い声。狂った者の特有の笑い声……

エリア「クッ・・・クククク・・・ッククククククク・・・!!」

だんだんと声は大きくなる。

エリア「クフッ……クカカカ……ッカカカカ!!」

遂に口が完全に開く。

エリア「アハッ!!アハハハッ!!!フッハハハハ……!!アハハ、ハハハハ……ハ……」

そして勢いがなくなり、再び押し黙った。



苗木「舞園さん……マイン、って、一昨日僕らを襲った人じゃないか……どうしてその名前がここで出るの……?」

石丸「すまない……僕にはもう何がなんやら……」

大和田「エリアって……マインの仲間なのかよ?」

山田「あのー……マイン、ってどなたなのですか?建築の暴君、って何ですか?」

状況が理解し切れていない男子陣。舞園が説明をする。

舞園「皆さんには内緒にしていましたけど、実は……」

舞園は、宿屋の部屋にマインが入ってきて、仲間にさせてくれ、と頼まれたことと、断ったら、建築の暴君についての情報を教えてもらったことを話した。

山田「なるほど?つまり、マイン、というのは、一昨日、例の頭蓋骨を奪おうと襲ってきた謎の男、というワケですな?」

舞園「はい……そうなんです……」

苗木「ち、ちょっと待ってよ!!だとしたら、エリアちゃんは……僕らの……敵?」

苗木の質問に、舞園は目を逸らしながらも、頷いて肯定を示した。

石丸「そんな……こんな小さな子供が……」

大和田「マジかよ……」

場が一気に暗い雰囲気になる。

エリアは未だに黙っている。

この沈黙を破ったのは……











山田「ちょっと…………待ったァァアアッ!!!」

山田以外全員「「「「「……!?」」」」」

山田の叫びが、洞窟内に響く。

山田「待って下され、皆さん!!エリア殿が僕らの敵だとしたら、説明できない点が1つありますぞ!!」

つまり、矛盾。これから何が始まるのだろうか?

山田「エリア殿はずっと僕と一緒にいたのです!!どうやってここまでの穴を見つけ、湧き潰しをしたのですかな?」

山田「これ程の規模の湧き潰し……するには相当な時間が必要なハズですぞぉぉぉっ!!」

尋常ではない山田の覇気に、たじたじとする一同。

山田「…………せ、説明できないようですな……ハハハ……ほら、やっぱりでっち上げじゃないか……エリア殿、心配は無用ですぞ……僕が……ッ守って……差し上げます……ぞ……」

エリア「…………」

苗木「……山田クン……」

必死の形相でエリアを弁護する山田。皆は複雑な目で、山田を見ていた。

山田「エリア殿……あなたは悪くないですぞ……あなたは拙者の秘書なんですぞ……辞表も出さずに……無断退職……なんて……この山田一二三が許しません…………ぞ…………」

エリア「…………」









「もう良いよ……山田お兄ちゃん……」



山田「……はい?」

エリア「もう良いよ……大丈夫だから……苦しまないで……山田お兄ちゃん……」

ポツリポツリと、今にも消えそうな声でエリアは言った。

エリア「あたし、山田お兄ちゃんと会えて嬉しかったの……優しくて、建物を造ったら褒めてくれて……今まで楽しかったの……」

山田「何を……言うんですか……?」

エリア「もう良いんだって……」

無表情のまま、エリアが言うと、苗木たちの方へ顔を向けて、言った。






エリア「あたしが……建築の暴君……」



山田「……!!そんなハズはないでしょう!?エリア殿は、ずっとずっと僕の傍にいたはず……!!どうやってこの洞窟を――」

エリア「苗木お兄ちゃん、説明して……」

何の前振りもなく、エリアは苗木にフる。

苗木「……え!?あ、えと……た、多分、探索に出かけていたときだよね……?」

その答えを聞いて、エリアが頷く。

山田「いや、いやいや!!た、確かに……エリア殿は頻繁に辺りの探索に出かけていましたが……それが証拠になんて……そんな……」

エリア「ごめんなさい……山田お兄ちゃん……本当に……あたしが建築の暴君なの……」

言い切った。

山田「…………」

山田も遂に黙る。

だが、すぐにまた喋りだした。

怒りに感情を任せ、吐き出した。


……エリアに向かって。

エリアの胸倉を掴み、怒声を浴びせる。

山田「どうして……どうして騙したんだ!?どうして……どうして……こんな……こんな仕打ちが……き、記憶を失ってた、っていうのも……」

エリア「……嘘」

山田「最初から……最初から騙すつもりだったのか……?」

エリア「……うん」

山田「……なんで……僕はァ……僕はァッ……!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

――3日前、村

エリア「山田お兄ちゃん!!見て見て、今度はぁ、宿屋を造ってみたよ!!」

山田「おほwwww見事な物ですなぁ……やっぱり、エリア殿には建築の才能がありますぞ!!」

エリア「えぇ?そ、そうかなぁ?」

山田「そうですぞ!!僕が言うんだから間違いはないのです!!」

エリア「えへへ……ありがとう!山田お兄ちゃん!!」

山田「フフフ……ん!?そうですぞ!!どうせなら、この村に役場を建てて、僕らが管理できるようにしましょうぞ!!」

エリア「うわぁー!!良いね!!それ!!それじゃあ、役場が建ったら、山田お兄ちゃんが村長ね!」

山田「え?いやいや、村長はエリア殿こそ相応しいですぞ?」

エリア「あたしはぁ、山田お兄ちゃんの秘書になるからいーの!!」ダキッ

山田「ちょ、エリア殿!?む、村人の方々が見てますぞ……?ちょっとぉ~!?」ギュウウウ・・・

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

山田「嘘だったのかよ……?あれも、どれもこれも全部!?」

エリア「違うもん!!」

山田「何がだ!?」

エリア「あたしだって……山田お兄ちゃんとずっと遊んでいたかったもん……でも……」

山田「…………」

エリア「あたし……建築の暴君だから……他の皆に怒られちゃうから……」

エリア「戦闘のお兄ちゃん……怖いから……採掘のお兄ちゃん……虐めるから……」

エリア「あたしが……任務を達成すれば……皆、喜ぶから……だから……」

山田「だからって……あんな演技……」

エリア「演技じゃない!!」

山田「……!?」

エリア「演技なんかじゃ……演技なんかじゃ……あたしは、山田お兄ちゃんと一緒にいたとき、いつでも自分の素になることができた!!」

エリア「あたしだって、暴君じゃなかったら、きっと今、お兄ちゃんと一緒に、また新しい建物を建ててたハズなのに!!」

エリア「あたしは……1人の暴君だから……逆らえないから……だから……だから……!!」







エリア「従うしかなかったの!!この運命に、あの獄卒に!!!」

つ旦

山田「……嘘だ……嘘だぁぁぁぁっ!!!」

苗木「ちょ、山田クン!!」

石丸「待ちたまえ!山田くん!!」

山田は涙を振り撒きながら、洞窟の出口へ駆けた。

その後を追うように、苗木たちも洞窟から出る。



エリア「山田お兄ちゃん……」グスッ


――村内、役場

舞園「山田くん!?」

石丸「どこにいるのかね!?」

苗木「姿を見せてよ!!」

大和田「山田ァッ!!」

洞窟を飛び出し、一気に村の役場まで辿り着く。

そして、いなくなった山田を呼んだ。

すると、山田の代わりに、例の怒りっぽい役員が来た。

役員「あぁっ!クレーマーの方々!!ちょっとこちらへ来て下さい!!村長が、村長がっ!!」

苗木「え!?」

役員は酷く慌て、苗木たちを奥の部屋へと案内した。

――山田の部屋

ソンチョウ!!ハヤマラナイデクダサイ!!

イヤダー!!モウボクハシヌゥッ!!シヌシカナインダァッ!!

チョット!!ハヤクトリオサエテヨ!ア、ホラ!ケンモトリアゲテ!!

ヤメロ!ボクノジャマヲシナイデクレー!!

部屋に入ると、そこはあわや大惨事。

剣を持った山田が自殺をしようとするところを、役員が総出で止めているのだ。

苗木「な、何してるの!?」

山田「見て分かりませんか!?今から僕は死ぬんだぁあああっ!!邪魔をするなぁああっ!」

片手に持った剣を振り回し、取り押さえていた役員を離させ、自分の首に剣を突き付けた。

石丸「や、止めるのだ!!」

山田「さようなら皆さん……僕のことは……忘れないで……」

そう言って、山田は首を切ろうとする。

しかし……






役員「ヤメロォォォォォッ!!!」

山田「ぐうぇっ!?」

役員がブチ切れ、山田にタックルをする。

反動で剣が山田の手から落ち、再び取り押さえられる。

すみません……ちと今日はこれで。
戦闘ェ……

生存報告です。書き溜めてあるので、投下しますです。

役員「何考えてやがんだよ村長!!」

苗木「山田クン……」

相変わらずじたばたしている山田。

山田「う……ううう……」

役員「どうして死のうとしたんだ?理由も話さず勝手に死のうとしやがって!!」

山田「……実は……」

山田は、事の端末を全て役員に話した。

話が終わると、役員は山田に近づいて言う。

役員「お前、そんなに中身が空っぽな人間だったのかよ?」

山田「……え?」

役員「良いか?村長、いや山田!!耳の穴かっぽじって良く聞け!!」

そのまま山田の顔面をつかむと、ギリギリ締める。

山田「い、いででででででっ!?」

舞園「ちょ……役員さん!?」







役員「自分だけが不幸だと思うのは大間違いなんだよ!!!」







空気が固まる。

役員は山田の顔面を握り締めながらも呟く。

役員「エリア秘書がお前の敵だからなんだ!?殺されそうになったからなんだ!?そんなの微塵も関係ねーだろがっ!!」


山田「や、役員……殿……」

役員「お前がエリア秘書のことを本当に想ってるんだとしたら、死ぬのはおかしいハズだろ!?」

一同「…………」



役員「どうして最後の最後まで必死に足掻いて運命を覆そうとしねぇんだよ!!お前は!!」



山田「…………ぐ……うううううううう……」

役員「泣くな。泣く元気があるならエリア秘書の所に行け。そして自分の想いを伝えるでも何でもすりゃいいじゃんかよ。」

山田「……すみませんでした……役員殿……皆さん……」

大和田「……役員、お前結構やるじゃねーか。」

役員「……ハァン。いえいえ、全部あなた方に教えられたことですよ。」

石丸「ぐぐぐぐぐ……こんな状況だというのに、僕たちは何もできなかった……」

舞園「だ、大丈夫ですよ!石丸くん!!現に山田くんは思いとどまったんですから!!」

苗木「そうだね。……さ、立ってよ山田クン。エリアちゃんの所に行かな――」









「山田……おにい……ちゃん……?」








全員が後ろを振り返ると、そこにはエリアの姿があった。

不安げに山田を見つめる純粋な目。

先ほどモンスターを蹂躙したとは思えないあどけなさを感じる。

苗木「え、エリアちゃん!!」

舞園「ッ!? 山田くん!!エリアちゃんですよ!エリアちゃんが来てくれましたよ!!」

山田「……エリア殿?」

山田とエリアの目が合う。

弾けたように飛び出す山田。

山田「エリアど――」




??「おーっとそこまでや。」


突然、エリアの後ろに謎の男が現れた。

灰色に、土の茶色が染みついたTシャツ、薄汚れたヘルメット、よれよれの軍手。

関西弁で喋るその男は、エリアの華奢な肩に手を回す。

??「残念ながら、エリア……いや、建築の暴君は、おどれらと戦う意思をワイに表明した。どらまてっくなえんどでは終わらせられへんなぁ」

豪快に笑い飛ばす。

苗木「……お前は?」

??「ワイ?ワイはな、こいつと同じ暴君や。一応、採掘の暴君ということで名が知れとる。まぁ、今はどうでも良い話や。」

男はエリアから離れると、役場から出ていこうとする。

??「安心せい、痛みを感じる間もなく殺してやる、ってこいつが言ってたでぇ?ほな、ワイはこのへんで。ばいならさ~ん。」

苗木たちに背を向け、立ち去ろうとする男。

エリアは、下を俯き、じっと押し黙っている。






大和田「ちょっと待てや!!」

急に大和田が、男の背中に飛びかかる。

その手には、石の剣があった。

皆が一斉に山田の手を見ると、そこにはやはり剣はなかった。


??「いや、しかしがっかりやよ。」

男は背を向けたまま呟く。

大和田「……クソが……」

自分の手元を見て、茫然とする大和田。

大和田の持っていた剣は、男のツルハシに弾かれていたのだ。

??「力の差くらい、しっかり理解せぇへんとアカンなぁ?大和田はん?」

大和田「何で……俺の名前を……」

??「かぁ~っはっはっはァ……!! それよりもな自分、まずはワイのことよりも、そこのエリアを気にかけた方がええんやないの?」

大和田「あ? ……なッ!?」


気が付けば、先ほどの場所にエリアはいない。

山田の部屋の奥の方、絵画が飾られている場所に、エリアは佇んでいた。

山田「え……エリア殿?」

エリア「…………」




苗木「エリアちゃん!!もうやめるんだ!!」

舞園「あなたがそんな思いをする必要ないんです!!」

石丸「僕らと共に行こうではないか!!エリアちゃん!!」


エリア「…………」












エリア「ごめんなさい。」







何が起こったのかは分からなかった。

ただ、ほんの少し瞬いただけ。

目を開けると、そこにはさっきまでの洒落た部屋はなかった。

絵画が吹っ飛び、壁は崩れ、黒い嫌な煙が立ち上っていた。

目の前にはエリアちゃんと、緑色の巨大な影がある。

それには少しだけ見覚えがあった。

どこで見たのだろうか……?

……ああ、そうか。こいつは……






舞園「く、クリーパー!?」


そう、こいつはクリーパーだ。モンスター図鑑で見たじゃないか。

だけど、面影はあるものの、どこか違う。

図鑑で見たものや、洞窟の中で見たものよりも、明らかに体格が違う。

4つの足は象のように太くなり、皮膚の表面は毒々しい緑色。

首が不自然に伸び、堅そうな骨が浮き出ている。

ぐゅるる……と何かべとべとしたものが潰れ、こすれるような音を発し、そのクリーパーは首をこちらへ向けた。

ダメだ。これ以上はいけない。これ以上は……

ボクはただただ恐怖し、一歩また一歩と後退する。

それを引き留めるかのように、エリアちゃんが喋った。

エリア「……やっぱり、こうするしかないの。」

そう言うなり、彼女はクリーパーの骨だらけの首に跨った。

??「いひひぁっ!!くふっ……ぶふぁはっ!!!あ~、たまらんわ。どや?おっかないやろ~?びびったやろ~?」

大和田「こ、こいつぁ……」

??「きひひぃっ……せやなぁ……教えてやるで?こいつはみゅうたんとくりいぱあ、とか言うモンスターや。こいつは強いでぇ?」

口を押えながら、男は説明する。

??「くひゃはぁっ!!あ゛~面白いなぁ?ほな、エリア。とっとと始末するんやで?頭蓋骨も忘れんようになぁ?」

エリア「…………うん。」

??「ひゃふふぁっ……じゃ、せいぜいがんばるんやな~?」

片手をシュタッ、とあげると、男は颯爽とその場からいなくなった。

苗木「……エリアちゃん。何をするつもり?」

エリア「…………」

山田「エリア殿?」

エリア「…………」





エリア「逃げて。」






エリア「いますぐ逃げてええええええええええええっっ!!!」



ミュータントクリーパーが前脚を上に持ち上げ、そのまま振り下ろす。

衝撃で、床の建材がはじけ飛び、火薬の焦げ臭い匂いが遅れてやってくる。

ウ、ウワー!!タスケテェッ!!!

ニ、ニゲロォォォッ!!

キャーーー!!シニタクナアイ!

それを見た役員たちが、たちまち役場から出ていく。

残ったのは、ボク、舞園さん、石丸クン、大和田クン、山田クン、エリアちゃんとクリーパー、そして怒りっぽい役員だけだ。

役員「な、なんですかぁ?これは……ハァン……」

役員の足は小刻みに震えるが、決して役場から出ようとはしない。

あくまでもここに残るつもりのようだ。

山田「エリア殿……もうやめましょう。あなたが敵だろうともう僕は構いません。だから――」

エリア「だめなのっ!」

山田の言葉を遮り、エリアが悲痛な叫びを上げる。

エリア「あたしはっ!!やっぱり山田お兄ちゃんの敵なのっ!!もう遅いのっ!!戦うしかないのっ!!!」

涙を振りまき、エリアは叫び続ける。

舞園「お願いです……もうこれ以上苦しまないでください……私たちは、エリアちゃんと仲良くできればそれで良いんです……!」

石丸「もう遅いなんてことはないっ!!今からでもまた仲間になれるはずだ!!」

大和田「だから……戻ってこい!俺はお前を守ってやりたいんだ!!戻ってこい!!」

エリア「いや……もうやめて……責めないで……あたしを責めないで……!!」

苗木「エリアちゃん!!」

エリア「やめて……やめてやめてやめて!!」

クリーパーが脚を曲げ、突進の体勢になる。







エリア「逃げてえええええええええェェェッ!!!」


次の瞬間、山田の部屋ごと役場が爆発し、吹っ飛んだ。

爆風に巻き込まれ、苗木たちは外に転がり出される。

苗木「ぐ……あっ!?」

例のクリーパーは、役場の目の前の広場にある、噴水の上にいた。爆風に乗って飛び降りたのだ。

跡となった役場から、怒りっぽい役員がフラフラしながら出てくる。

役員「は、ハァン……ひどい目に遭いました……」

そのままフラフラと歩き、ちょうどクリーパーやエリアから見えないであろう場所で座り込んでしまう。

苗木「役員さん!?大丈夫ですか!?」

役員「く、クレーマー様……私のことなんかよりも、山田村長やエリア秘書のことを……ははっ……まぁ、言うまでもないでしょうがね……」

役員はそう言い、ゆっくり目を閉じた。

苗木「や、役員さん!役員さん!!」

山田「やくい……役員……ど、の……?」

放心状態になる山田。そのまま前のめりに倒れこみ、肩を震わせる。

苗木「くっ……舞園さん!役員さんと山田クンを!!」

舞園「はい!」

舞園は、山田を役員の所へ引っ張り、安静にさせる。

投下分終了です。

これからは投下式になっていくと思われますので、よろしくお願いします。

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