大井「…馬鹿じゃないの」 (25)

二○○○ 食堂
提督「…」

大井「…」



カレー「」



提督「…」

大井「…あの」

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提督「何だ」

大井「何だじゃないですよ、何やってるんですか。夕食には遅すぎますよ?」

提督「見ての通りだ。カレー食ってる」

大井「の割には…」



カレー「」ホトンドテツカズ



大井「完全に冷めてますよね、これ」

提督「…聞け。これには訳がある」

大井「何ですか」

提督「まず、俺は今日一日、機嫌が悪かった」

大井「見るからにイライラしてましたね。駆逐の子が怖がってましたよ」

提督「横須賀から視察に来やがったジジイのせいだ。あの野郎、大将だからって調子に乗りやがって要らぬことをうだうだ…」アーダコーダ

大井「…あの、長引くならもう下がってもいいですか? さっさとお風呂に入って休みたいので」

提督「まあ待て」

大井「チッ …で?」

提督「腐っても上官だし殴り倒すわけにはいかん。ましてや部下に八つ当たりするわけにもいかない。結果、こいつに手が出た」コト

大井「ガムですか」

提督「ガムです」フンスッ

大井「」イラッ

提督「今日一日で1ケース空にした」

大井「そのまま腹下せば良かったのに」(食べ過ぎは体に毒ですよ)

提督「本音と建前がひっくり返ってるぞ。まあ、そんな訳で一日ガムを噛みまくった結果……」

大井「何ですか」

提督「…猛烈に顎が痛い」

大井「知りませんよそんなこと!」

提督「マジで痛いんだって。モノも食えないレベルで」

大井「我慢しなさいよそのくらい! 大体、スルメじゃあるまいしカレーに苦戦する要素なんて無いでしょう!?」

提督「現代っ子は顎が弱いんだよ!!」ダンッ

大井「開き直った…!?」

提督「…おほん。で、ここからが本題だ。お前に頼みがある。このカレーを…」

大井「…」



提督「俺の代わりに、噛んでくれ」


大井「」

提督「どうだ」

大井「」

提督「おい」

大井「…はっ、いけない。北上さんがお風呂で待ってるわ」

提督「気でも狂ったか大井。北上は今佐世保だ。そしてここはリンガだ」

大井「トチ狂ってるのはそっちでしょう! 何なんですか代わりに噛めって!?」

提督「何ですかも何も、文字通り咀嚼しろって意味だが」

大井「あぁ、もう……じゃあ百歩譲って私が提督のカレーを咀嚼したとして、それからどうするんですか。代わりに食べればいいんですか。私、もう夕飯は食べましたよ」

提督「馬鹿言え、そんなことしたら俺の飯が無くなるだろ」

大井「チッ……馬鹿が馬鹿とか言うんじゃないわよ」

提督「そうじゃなくて、ここまできたら後はもう決まってるだろ」ニタァ

大井「」ゾクッ

提督「Mouth to moutまてまて早まるな大井」

大井「提督の死体は夜、秘密裏に泊地近くへ投棄します。表向きには深海棲艦による奇襲で命を失ったことにしますので、名誉は守られます。良かったですね」カチャリ

提督「落ち着け。話し合おう。まずはその物騒なモノを下ろせ」

大井「十四年式です。酸素魚雷ほどじゃないけど、素敵でしょう?」

提督「だがそいつで俺を殺してみろ。余計に陸軍との仲がややこしくなるぞ。今の時代、銃弾を調べれば一発で…」

提督「……ハァ 仕方ない、無理にとは言わんさ」

大井「分かれば良いんです、分かれば」スッ…

提督「仕方ないから、利根にでも頼むか」

大井「っ」ビク

提督「ああ、筑摩でも良いかもな。あいつなら利根を人質にすればすんなり…」

大井「そ、それは…駄目です」アセアセ

提督「ほう、何故だ?」ニヤニヤ

大井「ほ、他の娘を巻き込むわけにはいきませんっ!」

提督「でもなー大井が嫌って言うなら、心ある者として無理強いはできないしなーやっぱり」チラッチラッ

大井「…」

大井「…すか」ボソッ

提督「ん?」

大井「本当に、自力で食べられないんですか。どうしても、無理ですか」

提督「うん」b

大井「…」

大井「…ふぅ」

 ガラッ ストン

提督「大井?」

大井「…」カチャカチャ パク モグモグ

大井「…ん!」

提督「」

大井「ん!」プルプル

提督(こ、これは……)ジー

大井「んー! んー…」ング

提督「あ」

大井「っ…もう! 食べるんですか、食べないんですか?!」

提督「す、すまん」

大井「もう…次はありませんからね?」

大井「…」ハム モグモグ

大井「ん!」

提督「では…いただきます」ズイ

大井「」ドキドキ

 ちゅ

大井「ッ」ビク

 ぢゅるっ ぢゅっ

 ごくん

大井「あ…」

提督「…ふぅ。まずは一口」

大井(そう…まだ…)ポー

提督「どうした、大丈夫か? 無理はしなくても」

大井「だ、大丈夫ですっ!」パクッ

大井「ん」

提督(全然噛んでないけど、まあ良いか)

 ちゅ ちゅる

大井(あ、舌が…)

 ちゅるっ ちゅるっ ちゅっ

「「…ぷはあ」」

提督「こ、これは中々…」

大井「…」

提督「大井?」

大井「…おいしい?」トローン

提督「っ!!」ドキューン

提督「そ、そうだな…よく分からなかったから、もう一回」

大井「仕方ないわね…」パク モグモグモグ…

提督(今度はめっちゃ噛んでる)

大井「ふぁい」ズイ

提督「おっと」ダキッ

大井「んー…」ジー

提督(これは…)

大井「…」キラキラ

提督(完全にスイッチ入ったか…のか?)

 ちゅっ ぢゅ~…

大井「ん…んっ」

提督(見たことない顔…)

提督「…」ギュッ

大井「ふ、はっ、…提督?」

提督「…」

大井「あの、離していただかないと、まだカレーが」

提督「ラップ掛けて、明日の朝食う」

大井「金曜日が終わっちゃいますよ」

提督「構わんさ。その頃にはもう顎も治ってるだろ」

大井「…」

提督「…なあ。何で今日、俺がムカついてたか分かるか」

大井「横須賀から来た奴、のせいでしょ?」

提督「奴の案内を押し付けられたんだよ。そしたら、見回りの最中にこいつを見られてさ」スッ



指輪「」キラキラ

一○○○ 泊地廊下
スタスタ
大将「前線でさぞかし荒れているだろうと心配していたが、案外平和なものじゃないか」

提督「出張っていない連中はこんなもんですよ。四六時中片意地張ってちゃ、息が詰まっちまいます」

大将「それもそうか。ただ、緊張感だけは欠かしてはならん。分かるな」

提督(殿上人が知った口利きやがって…)「ええ、そうですね」

大将「時に、その指輪だが」

提督「あ、これですか」スッ

提督「お察しの通りですよ」

大将「そうかそうか。それはめでたい。で、相手は? 君の所なら、扶桑か?」

提督「いやあ扶桑なんて私には勿体無い」

大将「そんなことはあるまい。大局が見えているのならば、戦艦や空母を選んで然るべきだ。第一、駆逐艦や巡洋艦などに貴重な指輪を渡しても…」

提督「」イラッ

提督「ははは。じゃあ、雷巡を選んだ私はまだまだ未熟ですな」

大将「雷巡…この泊地に雷巡は…」

提督「だいぶ前にそっちから寄越したじゃないですか」

大将「…ああ、そう言えば。何、それを選んだだと?」

提督「何か問題でも?」

大将「…余計なことを」

提督「あ?」

大将「元々こっちで評判が悪かったからそっちに遣ったと言うのに。そんなことをして、またつけ上がったらどうするのだ。第一、あんな金ばかり掛かる船に目を掛ける必要など」

提督「…」ガサゴソ

大将「ない…何をしている」

提督「お気になさらず」ヒョイパク ヒョイパク

提督「」クッチャクッチャ…

大将「き、君、それを止めないか」

提督「」クッチャクッチャ

提督「…何でしょうか、将軍どの?」ギロッ

大将「ひっ…ふ、不愉快だ! もういい、私は帰る!」


大井「……馬鹿じゃないの」

提督「お前もそう思うだろ? 大体あの」

大井「アンタのことよ!」ゴッ

提督「痛」

大井「自分の立場くらい、自分で分かってるわよ! 北上さんと離されて、ここに飛ばされた理由も、上官達にどんな目で見られてるかも、陰で他の娘達に何て言われてるかも。今更言い訳なんてする気は無い。それなのに、どうして私なんかのために、上に楯突いたりするの? 危ない橋を渡るの? どうして…」

大井「どうして、私なんかに、こんなものまで……」スッ

指輪「」



提督「そんなに大したことか? 命懸けで戦ってるお前達に比べたら、なんてことは無い」

大井「でも」

提督「聞け。俺は、褒められた人間じゃない。すぐにカッとなってしまうし、無茶苦茶言ってお前達を何度三途の畔に立たせたか知れん。だが…本当に取り返しの付かないところまで行きかけると、決まってお前が横っ面張って止めてくれた」

大井「馬鹿な作戦で死にたくないだけ」

提督「自分が無傷でも?」

大井「そんなの」

提督「人の本心なんて、誰も分からんさ。ただ、俺はお前を信じて指輪を渡した」

大井「…」

提督「それで、十分だろ? そして信じたとおり、お前は応えてくれた」

大井「…」

大井「…で、その『信じた相手』に、食べ物を口移しさせるの」フフッ

提督「だってこうでもしないと、お前手出したら撃とうとするだろ」

大井「執務中にセクハラしてくるのが悪いのよ。まあ執務後に、誰も居ない所ならちょっとは…」

大井「! しまっ」

提督「ほう」ニヤニヤ

大井「ち、違いますこれは言葉の綾で」

提督「ちなみに俺はいつでもウェルカムだ」

大井「そんなこと聞いてないわよ! …でも、じゃあ、その」

提督「どうした?」

大井「このカレー、明日の朝食べるんでしょう?」

提督「ああ」

大井「じゃあ、その時…また、私を呼んで」

提督「!」

提督「…喜んで」ニッ


おしまい

何か言われる前に全弾投下

大井っちはレズじゃないよ。ただちょっと、信頼した相手に色々依存しちゃうだけだよ

ちなみに嫁は川内です

ここまでご覧頂き、ありがとうございました

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