灰原「死が2人を結ぶまで」 (44)

コナン(俺の名前は工藤新一、探偵だ)

コナン(元々高校生探偵として活躍していた俺が、とある事件に関わったばかりに妙な薬を飲まされ身体が幼児化すると言う非現実的な事が起きてから随分経つ)

コナン(あれから俺は仲間達と共に俺の身体を小さくした組織と闘い続けてきた。長い間)

コナン(好きな女を待たせたまま......)

コナン(だが、遂にその時が来た。俺達は遂に黒の組織との決着を迎える事が出来た)

コナン(組織のメンバーはほぼ捕まり、ジンは運命に裁かれた)

コナン(黒幕があの人だったのは、ショックだったが......)

コナン(とにかく、俺達は当初の目的である黒の組織の壊滅を果たしもう1つの大きな目的......。元の身体へ戻る為に組織の本部を調べた)

コナン(建物は闘いの最中爆発により壊滅状態にあったが、奇跡的に元へ戻る手掛かりとなる薬......。APTX4869のデータが発見された)

コナン(断片的で完全なモノでは無かったが、そのデータを開発者である灰原に渡し、解析を待つ事となった)

コナン(そして、その解析が進み完全な解毒剤が間も無く完成しそうだと灰原に告げられた)

コナン(これで漸く全てが終わる。そう思っていた。しかし......)

コナン(運命は、新たな試練を俺達に課す事になる......)

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コナン(それは、解毒剤が完成しそうだと告げられて1週間程たったある日の事だった)





キーンコーン......

小林先生「はい、じゃあ今日はここまで!皆さん気を付けて帰ってね!」

「先生、さようなら」

小林先生「はい、また明日ね!」

元太「あー、やっと終わったぜ!腹ペコだ!」

光彦「もう元太君はいつもそれですね」

歩美「あんまり食べ過ぎたらまた太っちゃうよ?」

元太「っせーな、ほっとけよ!」

コナン「相変わらずだな、コイツらは」

灰原「まあ良いじゃない。元気があって」

コナン「ま、そうだな」

元太「おい、早く帰ろうぜ!ランドセル置いて遊びにいこーぜ!」

コナン「わーってるよ、後でな」

光彦「じゃあ、また後で!」

歩美「後でね、コナン君!哀ちゃん!」

灰原「ええ、また後で」

コナン「......何だかな」

灰原「どうかした?」

コナン「いや、こんな生活ももうすぐ終わるかと思うとな」

灰原「そうね。私次第、だけどね」

コナン「あ、いや。急かした訳じゃねーぜ?」

灰原「分かってるわ。後少しだから、待ってて」

コナン「ああ、頼む。やっぱり元の身体に戻ってこそ、この事件にケリが着いたと言えるからな」

灰原「......そうね」

コナン「何だよ?浮かねー顔だな?」

灰原「別に......。ただ、私にはあなたと違って急いで元の身体に戻る理由も無いから」

コナン「え?」

灰原「あなたには帰る場所があるし、待つ人もいる。でも、私にはどちらも無いもの」

コナン「灰原......」

灰原「......なーんてね、冗談よ。彼女の元に帰りたいラブコメ探偵さんの為に頑張ってあげるわ」

コナン「バッ、バーロ!んな事は......」

灰原「はいはい。もう飽きたわそのリアクション」クスッ

コナン「ったく。オメーのそのリアクションも飽きたっての」

灰原「あら、そうかしら?ワンパターンなリアクションを取っている積もりは無いのだけれど。まあ、とにかく帰りましょう?」

コナン「ま、そうだな。アイツら待たせるのもな」

灰原「ええ。あ、そうそう。工藤君、明日空いてるかしら?」

コナン「あ?明日はまあ予定はねーけど、何だよ?」

灰原「ちょっと話したい事があるの。薬の関係とかね」

コナン「ああ、そう言う事か。分かった。じゃあ明日顔出すわ」

灰原「宜しくね」

コナン「ああ。とりあえず後でな。俺来週の当番の件で小林先生に呼ばれてっからさ。先帰っててくれ」

灰原「分かったわ。それじゃ」

コナン「おう、もし遅れたらアイツらに言っといてくれ。じゃ!」タタタッ......

灰原「......」

灰原「何故私は、あんな事を口走ってしまったのかしらね」

灰原「......未練、よね。許されるハズも届くハズも無い事、なのに」

灰原「......バカね、私」

灰原「とにかく、薬の件だけはキチンと片を着けなくてはね」

灰原「......後の事は、ともかくね」

灰原「それ位しか、彼にしてあげられる事は無いものね。それが済めばもう......」

灰原「......もう私は、必要無いのだから」

翌日。阿笠宅。

コナン「ふう。着いたぜ。ちょっと早かったかな?」

コナン「アイツの事だから、まだ寝てるかもな」ピンポーン......

灰原「はい」ガチャッ

コナン「よう、来たぜ」

灰原「随分早かったわね」

コナン「ワリーな、ちょっと早すぎたか?」

灰原「いえ。別に。ちょうど起きてたし問題ないわ」

コナン「そっか。でも珍しいな?こんな時間に起きてるなんでさ」

灰原「別に......。たまたまよ。あなたの方こそいつもと違うわね」

コナン「俺が?」

灰原「元に戻る事が絡むと、随分早起きだと思って。私が別の用事で呼んだならそんなに早く来たのかしら、と思って」

コナン「べ、別にそんなんじゃねーよ。たまたま早く起きたってだけだよ」

灰原「......ま、とにかく入って」

コナン「お、おう」

コナン(何でぇ、朝からツンツンしやがって。やっぱり寝てたの起こしたか?)

灰原(......バカね。言う必要も無い嫌味を言って)

灰原(......あなたが来るから早く起きてしまったとも言えないけど)

灰原(......こんな一時を慰みにするしか無いものね。私は)

コナン「なんだよ?暗い顔して」

灰原「別に。お茶を出すから掛けて待ってて」

コナン「あ、ああ」

コナン(ったく。まずまず訳が分からねーな)

コナン「......それにしても、広く感じるな。この家」

灰原「そうね。こんな広い家に小学生が1人で住んでたら広くも感じるわね」

コナン「そう、だよな......」

灰原「まだ整理が出来てない?博士が......」

コナン「止そう、その話は」

灰原「......そうね」

コナン「で、話って何だよ?」




灰原「ええ。実はあなたの身体を検査させて欲しいの」

コナン「検査?」

灰原「ええ。今後薬を作るに当たって、あなたの健康状態を調べたいの。何か大病があれば命の危険があるし。身体への負担を減らす為にも、データを取ってそれに合わせた調合をしたいの」

コナン「なるほど。分かった。いや、こちらから逆にお願いする。宜しく頼むよ」

灰原「そんな畏まる必要は無いわ。これは私の義務なんだから」

コナン「義務って、まだ俺を小さくした事を気にしてんのか?それは別に......」

灰原「いえ、これは私の罪だもの。自分の造り出した物に責任を持たなければね」

コナン「灰原......」

灰原「それに、今はFBIの尽力もあるから1人で暮らせてるけど......。流石に子供が1人でいたら不審がられるし。私も一刻も早く元に戻らなくちゃね」

コナン「何だよ、結局俺はモルモットかよ?」フッ

灰原「ま、そうは言わないけど。いつまでも18の女性が子供の姿のままと言うのも酷な話だと思わない?」クスッ

コナン「確かにな。オメーならきっとキレイだからモテそうだもんな」

灰原「......そうね」

コナン「ん?どうした?」

灰原「何でも無いわ。とにかく、検査着がバスルームにあるから着替えて来て」

コナン「あ、ああ」

コナン(明るくなったり暗くなったり、変なヤツだな......。何かマズイ事言ったか?俺?)

灰原(......嫌になるわね。彼を気負わせない様に元に戻りたいなんて言ったけど。本当は元に戻りたい理由も無いのに)

灰原(それに、異性からモテても嬉しくないわ。だって......)

灰原(......本当に鈍いのね。あなたは)

灰原(きっと、あなたは私が元に戻りたいと言ったり......。逆に戻りたくないと言ったりして訝しがってるのでしょうね)

灰原(でも、仕方無いじゃない)

灰原(そうして気を引かなければ、あなたは私を見てくれないのだから......)

灰原(そんな時間も、薬が完成すれば終わってしまうのだから......)

そして、検査後。

コナン「ふう、時間かかったな」

灰原「お疲れ様。精密検査だからしょうがないわ。これでも精一杯のスピードよ」

コナン「ああ、ワリー。やってもらって愚痴っちまって。結果はいつ分かる?」

灰原「そうね。大まかな物は2、3日で分かると思うわ。まあ、あくまでも薬のデータ用だから特段あなたに告知する事は無いと思うけど。もしおかしな点が見つかれば教えるわ」

コナン「分かった。頼むぜ......。っと、こんな時間か。帰んなくちゃ」

灰原「急いで帰らなくちゃならない理由でも?」

コナン「ああ、蘭達と飯にな。この身体で蘭といるのも後少しだし、行けるとこにはコナンとして付き合わないとな」

灰原「そう......」

コナン「何かあったか?」

灰原「別に。また殺人事件が起きない事を祈るわ」

コナン「俺は死神じゃねーっての......。じゃ、またな。今日はありがとな」

灰原「ええ、気を付けてね」

コナン「おう」

灰原「......」

灰原(ご飯位どう?何て聞こうとした私が愚か、だったわね......)

灰原「......さぁ、検査結果を出さなくてはね」

灰原「何も異状が無ければ良いのだけれど......」




しばし後。とあるレストラン。

蘭「どう?コナン君。美味しい?」

コナン「うん、蘭姉ちゃん!」

蘭「良かった!ここ評判のレストランだからみんなで来たかったの!」

小五郎「ったく。だからって俺まで無理矢理連れ出すこたぁねーだろーよ?」

蘭「文句言わないの!たまたま私が商店街の福引きで商品券当てたから来れたんだから。いやなら今から帰れば?その代わり、今晩はご飯もお酒も無しよ?」

小五郎「わ、わーったよ......」

コナン(ハハ、相変わらずのやり取りだな......)

コナン(相変わらず、か。こんなやり取りも灰原が薬を作ってくれたら終わるんだよな)

コナン(江戸川コナンでは無くなる日が来て、探偵事務所から俺がいなくなる......。何だか変な気分だぜ)

コナン(俺が......。コナンがいなくなったら、みんなどんな反応すんだろな)

コナン(蘭は何て言うかな。コナンが消えたら......)

蘭「どうしたの?コナン君?」

コナン「な、何でも無いよ!」

コナン(......でも、いつまでもコナンじゃいられねーからな。俺は新一に戻って、蘭に......)

キャーッ!!

小五郎「な、何だ?」

「ト、トイレに死体が!!」

蘭「死体?!」

小五郎「蘭!警察に電話しろ!」

蘭「う、うん!」

小五郎「やれやれ。こうも行く先事件に巻き込まれるとは。名探偵も辛いぜ」

コナン(......灰原のヤツ、変な事云うから当たっちまったじゃねーか)

コナン(考えたら、俺が戻ってたら眠りの小五郎も廃業か。ワリーな、おっちゃん......)

コナン(とにかく、事件を解決しなくちゃな!)



同じ頃。阿笠宅。

灰原「......これは!?」

灰原「そんな、まさか......」

灰原「......でも、間違いない」

灰原「......この事実を、どうしたら良いのかしら」

灰原「彼に、何と伝えたら......」

灰原「......いずれにせよ、選択のしどころね。彼も私も」

灰原「......これが禁忌を犯した私への、罰なのかしら」

灰原「或いは、その逆......」



数日後。

「先生、さようなら」

小林先生「はい、さようなら!みんな気を付けてね!また明日!」

元太「あー、今日も疲れたぜ」

光彦「元太君は今日も腹へったの間違いじゃないですか?」

歩美「ふふ、そうだね!」

元太「何だよ、バカにしやがって」

コナン「まあまあ、ケンカすんなよ。帰ろうぜ」

歩美「うん!」

光彦「しかし、今日も灰原さん来ませんでしたね」

元太「ここん所ずっとだよな。具合悪いのか?」

歩美「歩美、心配だよ......」

コナン「大丈夫だよ、心配無いさ」

コナン(とは言え俺もあの日から会ってないからな。薬を作るのにしばらく休むと言ってたから、先生には適当に伝えといたが)

コナン(疲れて倒れてたりしねーだろうな......。根詰めやすいからな。アイツ)

prrrr......

光彦「コナン君。電話みたいですよ?」

コナン「っと、誰からだ?」

コナン(ん?灰原?)ピッ

コナン「もしもし?」

灰原「工藤君?ちょっと良いかしら」

コナン「ああ。大丈夫だ。身体は?ずっと来てねーから気になってよ」

灰原「大丈夫よ。それより、大事な話よ。薬が完成したわ」

コナン「......!!本当か?!」

灰原「ええ。本当よ」

コナン「そ、そうか。ありがとう!!何て言って良いか」

灰原「お礼はいらないわ。それで、その事で大事な話があるの。今夜、家に来れないかしら?」

コナン「今夜?今からじゃダメなのか?」

灰原「ええ、まあ......」

コナン「分かった。何とか行くよ」

灰原「宜しくね」

コナン「ああ。灰原、本当にありがとな!後でな!」

灰原「......ええ、後で」ピッ

歩美「哀ちゃんから?」

コナン「ん?ああ。大丈夫だってよ」

光彦「そうですか!良かった!」

元太「でも、ありがとうって何だよ?」

コナン「え?あ、ああ。頼んでたモノをネットで買ってくれたってよ」

光彦「へぇ、何ですか?」

コナン「ま、まあ良いじゃねーか。帰ろうぜ」

光彦「え、ええ」

歩美「......」

歩美(何か、変な気分......。何だかやな事が起きそうな......)




しばし後。毛利探偵事務所。

コナン「......今夜、今夜か!」ニヤニヤ

コナン「やっと戻れる、コナンから!」

コナン「やったぜ......。長かった!このガキの身体からもオサラバだ!やっぱり嬉しいぜ!」

コナン「......しっかし、何故夜なんだ?」

コナン「まあ、良いか。とにかく。元に戻れるんだから!」

コナン「......蘭に伝えて置くかな?気が早いか?」

コナン「......いや、良いよな!元に戻るんだから!!新一として帰れると伝えなきゃな!!」

コナン「そして、元の身体でアイツに......」

コナン「んん。とにかく電話だ!後変声機を......」

コナン「良し、準備OK。何か緊張するな......」

コナン「ビビっても仕方無い。良し!」ピッ

prrrrr......

蘭「もしもし?」ピッ

コナン(新一声)「よう!蘭!元気か?」

蘭「新一!どうしたの?今時間あるの?」

コナン(新一声)「ああ、大丈夫だ。ちょっと話したくてさ」

蘭「そっか!嬉しい。新一の声聴きたかったし。元気かなって気になってたの」

コナン(新一声)「そっか。まあ元気さ。それよりさ。大事な話があってさ」

蘭「え?なになに?」

コナン(新一声)「もうすぐ帰れそうなんだ。やっと事件にケリが着いたからな」

蘭「......!!本当?!本当に帰って来るの?!」

コナン(新一声)「ああ、本当だ」

蘭「そっか......」グスッ

コナ(新一声)「お、おい!?泣いてんのか?」

蘭「だって、嬉しくて......」グスッ

コナン(新一声)「ったく。大袈裟だな。で、あのさ」

蘭「うん」

コナン(新一声)「帰ったらオメーに伝えなきゃいけねー事があるんだ。その、大事な事を」

蘭「......!私に?」

コナン(新一声)「ああ、だから後ホンの少し待っててくれ。必ず帰って会いに行くから」

蘭「......うん。分かった。楽しみにしてる!」

蘭「ねぇ新一?私もね、新一に伝えたい事があるの」

コナン(新一声)「俺に?」

蘭「うん。だから早く帰って来てね」

コナン(新一声)「ああ。分かった。俺も楽しみにしてるよ」

蘭「うん!」

コナン(新一声)「じゃあ、とりあえず今日は。またな」

蘭「うん、またね!早く帰って来てね!」

コナン(新一声)「ああ、またな!」ピッ

コナン「......良し!これで後は夜を待って薬を貰うだけだ!」

コナン「あ、でもすぐは戻れねーか。コナンとしてお別れをしなくちゃ」

コナン「何にせよ、夜が待ち遠しいぜ!」

コナン(この時、俺は気付くべきだったんだ)

コナン(あの電話の灰原の声が、あまりにも暗く重いトーンだった事を)

コナン(元に戻れるって言う、おめでたい事を伝える態度では無かった事を......)

その夜。

コナン「ふう。ガキの身体で夜道は警察に見付かるとマズイから気を遣うぜ」

コナン「蘭にはまあテキトーに理由言って抜けて来たが......。まあ、アイツ浮かれてて大して気に留めて無かったな。何だか複雑だぜ」

コナン「まあ、付いて来るって言われなくて助かったけどな。博士の事は内緒だし、聞かれてもうやむやにしてるからな」

コナン「......いけね、感傷に浸っても仕方無い。さ、入るか。アイツが待ってるしな」

ピンポーン......

灰原「はい」ガチャッ

コナン「よう、来たぜ!」

灰原「お疲れ様。こんな時間に呼び立てしてごめんなさい。大丈夫だった?」

コナン「ああ、大丈夫」

灰原「そう。まあ、入って。中でゆっくり話したいの」

コナン「分かった。お邪魔するぜ」

灰原「どうぞ」

コナン(何か様子が変だな?気のせいかな......?)

しばし後。

灰原「どうぞ。大したモノは無いけど。軽食でもつまんで」カチャッ

コナン「ああ、ワリーな。気を遣わなくても良かったのに」

灰原「いえ。長い話になりそうだから」

コナン「え......?」

灰原「まあ、とにかく。私もちょっと忙しかったからご飯まだなの。付き合って」

コナン「あ、ああ」

コナン(変だな、話の前に用事を残す様なヤツじゃねーのに)

灰原「......」

コナン「あ、そうだ。この間飯に行った時オメーに言われた通りに事件に巻き込まれちまったよ。全く、災難だったぜ」

灰原「......そう。解決した?」

コナン「ああ。いつもの如く眠りの小五郎がな」

灰原「そう。良かったわね」

コナン「ああ......」

コナン「......」ヒョイッ

コナン(......何だか重苦しいな)モグモグ

灰原「......」

コナン「......なあ、灰原?どうしたんだよ?何かあったのか?薬の件で話があんだろ?」

灰原「......」

コナン「......何かあったのか?」

灰原「......」

コナン「なあ、何とか言ってくr」

灰原「ごめんなさい」

コナン「え?」

灰原「ごめんなさい......」


コナン「ど、どうしたんだよ?」

灰原「......こんな事、あなたに伝えたく無いのに」

コナン「......え?」

灰原「......」

コナン「どういう、事だよ?灰原?」

灰原「......あなたの身体を検査した事を覚えてる?」

コナン「も、勿論。覚えてるさ」

灰原「薬を完成させる為に、あなたの身体に最適な調合をする為に。検査をした。でも、まさかこんな事になるなんて」

コナン「な、何なんだよさっきから?何があったんだよ灰原!?言ってくれよ、その為に呼んだんだろ?なあ!!」ガシッ

灰原「!!」

コナン「言ってくれよ!じゃなきゃ分からない!!」

灰原「......ごめんなさい」

コナン「だから、内容を......」

灰原「ごめんなさい、あなたは......」

「元の身体には戻れない」

コナン「......は?」

灰原「......」

コナン「な、に?何言ってんだよ?灰原......?だって、薬は完成したって......」

灰原「......ええ。薬は完成した。でもあなたは元の身体には戻れない」

コナン「......!?」

灰原「......あなたが帰ってから、私はあなたの検査結果を出した」

灰原「そこで、ある事が分かった」

コナン「ある事......??」

灰原「あなたの身体は、度重なる急激な幼児退行と元の身体に戻る急成長を繰り返した結果......。同年齢の人間と比べて凄まじいダメージを抱えている」

灰原「直接体調の不良を感じなくても、細胞のひとつひとつは痛み、傷付いている」

コナン「それが、何だってんだよ......?完成した薬があれば、もうそれで退行も成長もする事は無くなるだろ?多少のダメージのリスクは......」

灰原「ダメなのよ!!」

コナン「?!」

灰原「ダメージを負う、と言う話では済まないわ。もしもう1度薬による身体的変化を起こせば」

灰原「あなたの命は限り無くゼロに近づく......。3ヶ月。長くても余命半年。そのレベルまでね!!」

コナン「......!!」

灰原「......その事実を知って、悩んだわ。あなたにそれを告げるべきか。そして、薬を作るべきか」

灰原「でも、前に言った様に私には忌まわしい薬を作った責任がある。そして、あなたと約束した以上は解毒剤を作り上げる義務がある」

灰原「そして、作り上げる以上はどんな因果を含んでいてもあなたに伝える義務がある。でも、その決心をするのに時間がかかった。だから、今日までかかってしまった」

灰原「ごめんなさい......。いくら謝っても済む話では無いけれど。私のせいで......」

灰原「ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい......」

コナン「......」

コナン「......もし、薬を飲まずコナンのままでいたら俺は後どの位生きられる?普通に生きられるのか?」

灰原「......もし、薬を飲まずにいるなら当然飲む場合よりは長く生きられる。でも、今までのダメージは身体に蓄積されている」

灰原「どれ程保ったとしても、10年程......。誤差はあるけど、その位だと推測されるわ......」

コナン「......つまり、飲んで工藤新一に戻ってもすぐ死んでしまう。飲まずにいても、大人の身体に成長する頃には寿命が来ちまう。いずれにせよ、俺は工藤新一でいる事が出来る時間はゼロに近い。そう言う事、か」

灰原「......ええ」

コナン「そっか。そうかよ......」

灰原「工藤君......」

コナン「......っけんな」

コナン「ふざけんな!!」

灰原「!!」

コナン「何で、俺が!!何で何だよ、何でこんな目に遭うんだ!?」

コナン「死ぬって......。何だよ、それ?!何でだよ?!こんなに元気なのに?!」

コナン「薬出来たのに、飲んだら死ぬって」

コナン「あんまりだろ、それは!!」

灰原「......」

コナン「何でだよ?!俺、約束したのに!!帰るって、帰って伝えるって約束したのに!今日約束したばかりなのに!!」

コナン「何で、何でこんな......」

コナン「何で、だよ......」ガクッ

灰原「工藤君......」

コナン「......」

灰原「......ごめんなさい。あなたをここまで苦しめたのは、全て私のせいよ」

コナン「......」

灰原「......私に出来る事なら、何でもするわ。だから、自暴自棄にならないで」

コナン「何が出来んだよ?オメーに!!」

灰原「......!!」

コナン「じゃあ、寿命が縮まない薬作ってくれよ!!」

灰原「......出来ないわ」

コナン「じゃあ、時間を過去に戻してくれよ!!」

灰原「......出来ないわ」

コナン「何も出来ねーんじゃねーかよ!!出来る事って何だよ?俺と一緒に死ぬとでも言う気か?出来ねーだろ、それも?!」

灰原「出来るわ」

コナン「えっ?」

灰原「あなたが望むなら、私はあなたと共に死ぬわ」

コナン「あ、あ......。ご、ごめん。そんなつもりじゃ......。つい、取り乱して......」

灰原「いえ。良いの。これは私自身が望む事だから」

コナン「......?!灰原......?」

灰原「あなたの為に、私は出来る限りの事をしたい。この身を捧げろと言うなら、私を如何様にしても構わない。共に死ねと言うのなら、私はあなたに付いていく。今すぐ死んで償えと言うのなら、私はその通りにする」

灰原「あなたの、望む通りに」

コナン「バ、バーロー!!何言ってんだよ?そんな、責任を感じてるなら気にする必要なんかねーんだよ!!勝手に俺が巻き込まれたんだ、オメーのせいじゃ」

灰原「責任感、じゃないわ。したいからするのよ」

コナン「?!な、何故?何で、俺にそこまで」

灰原「......好きだから」

コナン「え......」

灰原「あなたを、愛して......。いるから」

コナン「......!!」

灰原「......最低よね、私。こんな時にこんな事言うの」

灰原「でも、却って......。お互いに時間が無いのが分かったら、覚悟が決まっちゃって」

コナン「お互い、に?」

灰原「あなたの検査結果が出てから、自分のも調べたの。私自身も何度か解毒剤を飲んでいるし、あなたの知らない所で自分を被験体にした事もあるしね。あなたと大体同じ結果になったわ」

灰原「つまり、どの道私もあなたと同じ時に死んでしまう。と言う事よ」

コナン「あ......」

灰原「どうせ死んでしまうなら、あなたに気持ち位伝えたいと思った。そう言う事」

コナン「灰原......」

灰原「......ねぇ、工藤君」ギュッ

コナン「な、お、おい」

灰原「あなたがどういう決断を下すか、それはあなたの自由よ。でも、あなたが許してくれるなら。私はあなたの側にいたい」

灰原「あなたが彼女の元に帰るなら、それで構わない。でも、決してあなたを1人で死なせはしない。決して......」

コナン「何で、だよ?灰原。オメーは何故、そこまで俺なんかの為に......」

灰原「忘れたわ。理由なんて。人を好きになるのに、理由なんていちいち覚えて無いわ」

コナン「灰原......」

灰原「呆れた?こんな私に」

コナン「いや......。その、何て言うか」

コナン「オメーの気持ちは嬉しい。凄く」

コナン「ただ、その。色々ありすぎて.....」

灰原「ええ。分かってる。ねぇ、工藤君」

コナン「何だ?」

灰原「あなたがどういう決断をするにしろ、1つだけ見逃して欲しい事があるの」

コナン「1つ?」

灰原「......ええ」

コナン「な、何だよ?」

灰原「目を閉じて」

コナン「は?」

灰原「良いから」

コナン「あ、ああ」パチッ

コナン「閉じたぞ、一体......」

灰原「......」

チュッ......

コナン「!!!」

灰原「......」

コナン(......な、何やってんだよ)

コナン(何、やって......)

コナン(......)

灰原「......ふぅ」

コナン「......」

灰原「......怒った?」

コナン「い、いや。その......。怒ったりなんかしないけど」

コナン「な、何て言って良いか」

灰原「良いのよ。何も言わなくて」

灰原「......ありがとう。工藤君。私は、今のこの数秒で十分よ。後は、あなたの望む通りに従うわ。全てね」

コナン「俺の、望む通りに......」

灰原「ええ」

コナン「俺の、望み」

コナン「俺は、俺は......」

それから、しばらく後。

蘭「......はぁ。何だか気分が上がらないなあ」

蘭「コナン君はご両親の所に帰る事になって家からいなくなっちゃったし」

蘭「新一も、帰って来ないし」

蘭「......寂しい、なあ」

新一「......しけた面してんな」

蘭「......!」クルッ

新一「よ、久し振りだな」

蘭「新一?ホンとに、新一なの?」

新一「他に何に見える?」

蘭「......新一にしか、見えない」

新一「だろ?」

蘭「......バカ!どこ行ってたのよ!ずっと心配かけて!!」

新一「ワリーワリー。勘弁しろって」

蘭「もう、バカ!!」

新一「ワリーってば。もう怒るなよ」

蘭「......うん」

新一「......で、前に言った事。覚えてるか?」

蘭「うん!勿論!」

新一「そっか。なら今言うよ。俺さ」

蘭「うん......」ドキドキ

新一「......外国に行く事になったんだ」

蘭「......え?」

新一「日本を離れる。もう帰って来られないだろう」

蘭「何言ってるの?新一」

新一「......今日はお別れに来たんだ。きちんと会って言いたかったから」

蘭「ウソ、ウソ、よね?新一」

新一「本当だ」

蘭「だって、帰るって言ったじゃない」

新一「済まない」

蘭「そんな......。だって、言ったじゃない。新一、私の事」

蘭「好きだって言ったじゃない!!私だって、新一の事が大好きなのに!!」

蘭「どうして?どうして行かなきゃいけないの?」

新一「......済まない」

蘭「理由を教えてよ!!」

新一「......済まない。どうしても行かなきゃ行けないんだ」

蘭「そんな......」

新一「ありがとう、蘭。俺を好きと言ってくれて。俺もオメーが好きだ。でも、行かなくちゃ行けないんだ。どうしても......」

蘭「......私を置いてでも?」

新一「......ああ」

蘭「......そっか。じゃあ行っちゃえ!」グスッ

新一「蘭......」

蘭「別に、怒ってる訳じゃないよ。私は何かを頑張ってる新一が好きだから。だから、行っちゃえ!頑張って来て!」

新一「蘭......」

蘭「その代わり、待って無いからね!!いつまでもフリーでなんかいないからね!」

新一「ああ、分かってる」

蘭「全く。いつも勝手なんだから」

新一「......ワリー」

蘭「良いよ、もう。バカ」

蘭「......ねぇ、新一」

新一「ん?」

蘭「私、忘れないから。新一の事。だから、新一も、忘れないでね。私の事」

新一「勿論。ずっと忘れないさ」

蘭「ありがとう」

蘭「ね、最後に握手して」

新一「......ああ」スッ

蘭「......」スッ

ギュッ

蘭「暖かい。新一」

新一「蘭もな」

蘭「......」スッ

チュッ......

新一「......!!!」

蘭「......ふふ。しちゃった」

新一「......」

蘭「じゃあ、ね。新一。行って。私が我慢出来る内に。本気で泣くの......」

新一「分かった......。じゃあ」

蘭「うん、さよなら」

新一「......」スタスタ......

蘭「......」

新一「......蘭!」

蘭「!」

新一「......幸せにな」

蘭「!!!」

新一「......さようなら」

蘭「......うっ、うっ」グスッ

蘭「うわぁぁぁああん!!」

蘭(新一、新一、新一......)

蘭「新一の......」

蘭「バッカヤローッ!!」

新一「......」

灰原「......本当にあれで良かったの?」

新一「ああ。すぐ死んじまう人間。あるいは、待たせておいていざ現れたらすぐ死んじまう人間。どっちにしろそんなヤツが側にいるのは残酷過ぎる」

新一「それなら、キチンと別れを告げる方が良い。新しい道を開いた方がな......」

灰原「あなた自身は?それで良いの?」

新一「良か無いさ。でも、決めた事だからな」

灰原「そう。なら何も言わないわ。で?これからどうするの?」

新一「さあ、な。ウソにする訳にも行かないから、外国にでも行くかな」

灰原「そう。寂しくなるわね」

新一「何言ってんだよ。オメーも一緒にだろ?」

灰原「え?」

新一「俺は蘭に別れを告げる為に薬を飲む事を選んだ。でも、他の事は何も言って無いぜ」

灰原「......でも、良いの?」

新一「......ああ」

新一「......あの時、オメーが言ってくれた言葉。嬉しかったぜ」

新一「......こんな、他の女に未練のある男だが。もし良ければ、一緒に居てくれないか?」

新一「イヤなら、構わない。でも、オメーがイヤじゃ無いなら」

新一「......最期まで、付き合ってくれないか」

灰原「......イヤ」

新一「え?!」

灰原「な、訳無いじゃない。こちらこそお願いします。私はあなたに付いていくわ。命が尽きてもね」

新一「......ありがとう、灰原」

灰原「それで?どこに連れてってくれるのかしら?」

新一「そうだな、お互いに行った事の無いところにでも行ってみるか」

灰原「分かったわ。じゃあ」スッ

新一「......ああ」スッ

ギュッ

灰原「......事件には巻き込まれないように頼むわよ?」

新一「ハッ、俺もごめんだよ」

新一「時間が無いのに、一緒の時間を邪魔されたくはねーからな」

灰原「......ふふ、そうね」

新一「じゃ、行くぜ!」ダッ

灰原「ちょ、ちょっと!引っ張らないで!」

新一「時間がねーんだよ!走ろうぜ!」

灰原「......もう」クスッ

灰原(......こう言う結末になるとは、ね)

灰原(あの時......。あなたの検査結果を見た時、私は思ってしまったの。これはあなたに気持ちを伝えるチャンスかも知れないと)

灰原(そして、私は望み通りに気持ちを伝える事が出来た。まさかこうなるとは思わなかったけどね)

灰原(......いえ、責任感の強いあなただからこうする事を私は無意識に分かっていたのかも知れない)

灰原(いずれにせよ、もう残された時間は少ない。その時まで、束の間の生を謳歌しましょう)

灰原(私は、残された時間で精一杯あなたに心から愛して貰えるように頑張るわ)

灰原(真に2人が1つになるまで。そう)

灰原(死が2人を、結ぶまで......)



マジキチでないコナンSSでちゃんと終わったSSとは珍しい
死が2人を――で分かつではなく結ぶってのは面白い

灰原は宮野志保に戻らなかったの?
それがちょっと気になった

>>41
灰原は宮野志保に戻りました。
コ哀を書くときは、コナンに出会った時の名前が灰原=コナンの前では宮野では無く灰原

と言うクセがあるので、灰原のまま書いてます。

続編、書きます。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月29日 (日) 21:11:30   ID: T1Cx1zOv

( ;ω;)o彡 イイハナシダッタナー
お二人の幸せをお祈りします。

2 :  SS好きの774さん   2015年03月29日 (日) 23:02:35   ID: v0y6YmfM

いいね。蘭ざまぁぁぁぁ

3 :  SS好きの774さん   2015年12月07日 (月) 19:25:05   ID: KDsjDXL-

(*^▽^)/★*☆♪

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