律「なかのーっ、だよ。なー、かー、のーっ」 (45)

けいおんSSです。

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   朝 3年生教室

唯「ふー」 ぐったり

澪「こら、唯。しゃきっとしろ」

唯「朝は眠いんだよ。私としては、まだ布団にくるまって眠ってる気分なんだよ」

律「それはどうかと思うが、眠いのは確かだな」

紬「寝る子は育つと言うし、このままだと唯ちゃんはどこまで大きくなるのかしら」

和「昔からずっとこんな感じだし、逆に寝たからこそ今の大きさになったかも知れないわね」

紬「それならやっぱり、唯ちゃんには寝ていてもらわないと」

澪「全く、二人とも甘いんだから」 ぱさっ

律「さりげなく上着を掛ける澪も、相当だと思うけどな」

唯「……どしたの、みんな」 むくり

澪「駄目だ、唯。まだ起きるな」

唯「いや。もうすぐHR始まるし。さすがに私も起きないと」

紬「まあまあ、お客さん。帰りのHRまでゆっくりしていって下さいよ」

唯「ど、どういう事?」

和「みんな唯が小さくならないか心配してるのよ」

律「誰も、小さくなるとは言ってないけどな」

   放課後、軽音部部室

澪「子守歌、子守歌歌うか?」

紬「私、背中ぽんぽんしてあげるわね」

律「それはもう良いんだ。そもそもみんな、甘い。甘すぎる」

唯「本当、甘やかしすぎると人間駄目になるよ」

律「お前が言うなと突っ込みたいが、その通りだ。これからの軽音部は、びしばし厳しく行くぞ」

澪「でも私達、そういうノリじゃないだろ」

紬「ええ。根本的に、そういう資質に欠けてると思うのよね」

律「その考え自体が甘っちょろいんだよ。まずは梓の教育からだな」

唯「私は、あずにゃんに教えられてばかりなんだけど」

紬「梓ちゃんは、本当に良い子よね」

澪「うん、うん」

律「まあ、それは否定しないけどな」

律「……いや。そうじゃない。厳しく、厳しく指導するんだ」

澪「で、具体的には?」

律「まずは呼び方だな。梓じゃない。中野だ、中野」

紬「中野ちゃん?」

律「なかのーっ、だよ。なー、かー、のーっ」

唯「でも、今更呼び方を変えるのって難しくない?」

澪「大体本当に、梓に厳しく出来るのか?」

律「呼び方くらい、別になんて事は……」

   カチャ

梓「……済みません、遅れました」

律「ひっ」

梓「な、なんですか?」

澪「いや、大した事じゃない。ちょっと怪談話で盛り上がってただけだ」

梓「澪先輩もですか?」

澪「ああ。階段、段々、盛り上がるだ」

梓(1から100まで意味不明だな。いつもの事だけど)

唯「今日のデザートはケーキだけど、あずにゃんはどれが良い?」

梓「私は余った物で良いですよ」

唯「だったら私、ショートケーキね」

律「チョコトルテー」

澪「私はモンブランで」

紬「私はチーズケーキだから、梓ちゃんはバナナパイね」

梓「はいです」

紬「今、梓ちゃんのお茶入れるわね」 

梓(結局、私の好きな物を残してくれるんだよね)


律「ふー、食った食った。それにしても、やる事なくて暇だなー」

澪「おい」

律「冗談だよ、冗談。エネルギーも充填されたし、練習するか」

唯「あずにゃん、このパートちょっと難しいんだけど。このコードがへんてこりんで、指が付いていかないんだよね」

梓「そういう場合は簡素なコードで弾いても良いんですよ。……こんな感じですね」 じゃじゃーん

唯「わ、さすが。やっぱり、一家に一人あずにゃんが必要だね」

紬「ぐふふ♪」

梓(ぐふふ?)

   10分後

唯「嬉しいねっ」 じゃーん

律「結構良かったな」

澪「上手くなる近道なんてない。結局日々の練習こそが、上達への近道なんだ」

律「真面目な奴め。よし、調子も良いところでもう一曲行くか」

梓「ふぁーっ」

紬「梓ちゃん、眠いの?」

梓「す、済みません。6時間目が体育だったので、少し」

律「なるほどな。私もお腹が一杯になったせいか、少し眠くなってきたよ」

澪「仕方ない奴だな。一旦、練習中止だ」

唯「はーい」

紬「りっちゃん、梓ちゃん。タオルあるから、良かったら下に敷いて寝てね」

唯「床に? ちょっと小さくない?」

律「あのな。テーブルに敷いて、それを枕代わりにするって意味だよ」

唯「そう言いつつ、りっちゃんはやれば出来る子だよ」

律「さりげなく追い込むんじゃない」 ぽふ

澪、紬「あはは」

   5分後

梓「くー」

紬「やっぱり、疲れてたのね」

律「仕方のない奴だ」

唯「でもあずにゃんは小さいから、寝ると大きくなるかもね」

澪「梓が大きくなったら、可愛いと言うより綺麗になりそうだな」

唯「あずにゃんが大きかったら、それあずにゃんちゃう。あずやっ」

律「一体どこの、まんが王なんだよ」

唯「起きてるあずにゃんも可愛いけど、寝てるあずにゃんも可愛いなー♪」

紬「唯ちゃんは、本当に梓ちゃんが大好きなのね」

唯「だって見てよ、この寝顔。天使だよ、天使。天使オブ天使が、今私達の目の前に降臨してるんだよ」

澪「それは否定しないけどな」

律「いや、しろよ。とはいえ梓を起こすのも悪いし、どうするよ」

唯「りっちゃん、そこはエア演奏の出番だよ」

澪「……ちょっと苦しくないか?」

唯「確かに、エアがないと苦しいかもね」

紬「本当、エアって大切ね。AIR最高ね」

唯、紬「国崎最高だよねー♪」

律「幸せな記憶ばかり紡いでるな、お前らは」

   さらに5分後

梓「……済みません、完全に寝てました」

澪「眠い時は遠慮せずに言うんだぞ。無理して体調を崩したら、元も子もないからな」

梓「はいです」

唯「澪ちゃんは、なんか先輩っぽいよね。威厳もあるし」

律「生真面目だしな」

唯「ムギちゃんも包容力があるから、先輩って感じだよね」

律「世話焼きタイプって感じだしな」

唯「私達はどうだろうね」

律「先輩、ちょりーっす。みたいな感じかもな」

梓「何の話ですか?」

唯「何でも無い、何でも無いよ。今からバリバリ練習するから、あずにゃんも振り落とされないように付いてきてよ」

梓(相変わらず意味分かんないけど、やる気を出してくれるのは嬉しいな♪)

 10分後

じゃじゃーん

梓「唯先輩、2フレーズくらいずれてましたよ」

唯「私は時代の先を行く女だからね」

律「演奏が先に行っちゃ駄目だろ」

梓「律先輩もそれにつられて、リズムが走り過ぎな気がします」

律「私は時代を、常にリードしていくんだよ」

梓「2人とも、今の所を意識してもう一度お願いします」

唯、律「あ、はいです」

澪「もう、誰が先輩で誰が後輩なんだよ」

紬「でも、こうして張り切る梓ちゃんも可愛いわよね」

澪「そういう部分を引き出すために、敢えて失敗してるのなら良い先輩なんだが」

紬「良いわよね、そういうプレイも」

澪(プレイ?)

紬「ぐふふ♪」

 1時間後

唯「あー、疲れた。これ以上やると、指紋がなくなっちゃうよ」

梓「それは無いともいますが、今日は結構頑張りましたね」

唯「えへへ、褒められちゃった」

律「いや、後輩に言われる事じゃないから」

唯「でもあずにゃんの方が演奏上手いし、何でも知ってるし。ギターに関しては、あずにゃんが私の先輩なんだよね」

梓「はぁ。澪先輩達は、先輩とかいないんですか?」

澪「私達は、基本独学だよ。他のバンドをやってる子と練習もしたけど、やっぱり律と一緒にやる事が多かったな」

律「澪先輩、いつも厳しかったっす」

澪「上手くなるために、一生懸命練習するのは当たり前だろ」

律「泊まり込みの練習は、もう勘弁っす」

澪「そういう事を言う奴は、今日からまた泊まり込みで特訓だ」

梓(さりげなく仲が良いな、この2人)

紬「ぐふふ♪」

   夕方・商店街

唯「揚げたてコロッケ売ってるよ。あずにゃん、食べる?」

梓「食事前に食べるのは、あまり良くないですよ」

律「本当に梓は真面目だな。まるで澪を見ているようだ」

梓「それはむしろ褒め言葉です」

澪「うん、良く言った。そんな梓には、コロッケを買ってやろう」

律「いや、話がループしてるから」

紬「でも本当に美味しそうね。やっぱり、食べていかない?」

律「しゃーないな。済みませーん、コロッケ5つ下さーい」

唯「揚げたてのコロッケは、どんな食べ物に勝ってるからね」

紬「キャビアやフォアグラよりも?」

唯「言うまでも無いですな」

紬「こんな良い匂いだし、確かにそうかも知れないわね」

梓(ムギ先輩の匂い程では無いですけどね♪) くんかくんか

唯「やっぱり揚げたては最高だね」

紬「本当、これはフォアグラより上かも知れないわ」

律「マジかよ、おい」

澪「コロッケころころ夢が転がる、って感じの味だよな」

律(本気っぽいから、突っ込まないでおこう)

梓「でもお肉屋さんのコロッケは、特に美味しく感じますよね」

律「良い肉使ってるし、ラードだっけ。豚の脂で揚げてるのかもな。それに作ってるのはプロだし」

澪「それはバンドにも言える事だぞ。良い歌に良い楽器、そして何よりたゆまぬ努力が良い演奏を生み出すんだ」

律「コロッケ食いながら言われてもな」

唯「私、憂へのお土産に少し買っていこうっと」

澪「私もそうするか」

律「じゃ、私も」

紬「梓ちゃんはどうする?」

梓「私は良いです。勿論美味しいですけど、こうして先輩達と一緒に食べるから余計に美味しく感じられるんだと思いますし」

紬「うふふ♪」

澪「なるほどm確かにその通りだ。次の歌は、先輩とコロッケと私だな」

紬「私もホクホクの歌を、サクサクッと作るわね」

唯「まさに、アゲアゲの曲って事?」

律「大喜利じゃないんだよ、おい」

   夜   平沢家

憂「コロッケ、美味しかったね」

唯「憂が作ってくれたカレーも美味しかったよ」

憂「ありがとう、お姉ちゃん」

唯「ハンバーグカレーも良いけど、コロッケカレーも侮れないね」

憂「色々な物が重なり合って良くなっていくって事かな」

唯「そうそう。軽音部が、まさにそんな感じだよ」

憂「みんなそれぞれ個性的だけど、軽音部としてはすごくまとまってるよね」

唯「でも高校に入るまでは全然知らない人ばかりだと考えたら、結構不思議な気もするんだ」

憂「ふふ♪」

唯「やっぱりあずにゃんが入部してきた時が、一番運命的って気がしたよ」

憂「梓ちゃんだけ、後輩だもんね」

唯「だけど何をやってもあずにゃんの方が上手だし、むしろ先輩って気もするんだ」

憂「私はいつでもお姉ちゃんの事を、お姉ちゃんって思ってるよ」

唯「そかな」

憂「優しいし、頑張ってるし、温かいし。私にとって、自慢のお姉ちゃんだよ」

唯「憂ー♪」

憂「お姉ちゃん♪」

   翌朝   3年生教室

唯「という訳で、憂に褒められました」

和「憂も、たまに見る目が無いわね」

唯「しどいよ、和ちゃん」

和「それに知らない人が見たら、憂の方がお姉ちゃんって思うんじゃ無いかしら」

唯「それはそれで、私は嬉しいよ」

和「本当に、この姉妹はもう仕方ないわね♪」

律「うーっす。昨日のコロッケ、美味しかったな」

澪「でも買い食いは、色々と良くないぞ」

唯「あずにゃんが言ってたみたいに、ご飯前だから?」

紬「まあ、そういう理由もあるだろうけれど」

和「揚げ物だから、太りやすいわね」

澪、紬「うっ」

和「でも我慢するとストレス太りになるって言うし、どんどん食べれば良いんじゃ無くて?」

律「地味に追い込むな、おい」

和「そう? 私朝食を食べ忘れたから、卵サンド食べるわね」

律(鬼じゃないだろうな、この女)

   2年生教室

憂「お姉ちゃん、梓ちゃんの事褒めてたよ。私よりも先輩みたいだって」

純「唯先輩って、さらっとそういう事言えるよね」

梓「でも結局、怖がられてるって気もするんだけど」

純「たまに角生えてるからな、梓は」

梓「そ、それは唯先輩とか律先輩が、羽目を外すから」

憂「ふふ♪ 純ちゃんはジャズ研の先輩と、どんな感じ?」

純「普通に怒られるし、指導されるし、でも頼りになるし。世間一般の先輩って感じかな」

梓「そういう先輩もいるんだね」

純「普通、そういう先輩しかいないと思うけどね」

梓「私、角が生えてるように見える程怖いかな」

憂「それは冗談だよ。ね、純ちゃん」

純「まあね。結局梓は真面目だから、ちょっとした事でも許せないんじゃないの」

梓「そうかな」

純「余裕っていうかさ、もっと遊び心があっても良いと思うよ」

憂「リラックスだよね、リラックス」

純「そうそう。まずは笑顔笑顔」

梓「こ、こう?」 にこっ

純「牙が見えてるよ」

梓「なっ」

憂「ふふ♪」

   放課後 軽音部部室

律「思ったんだが、私達が先輩っぽく振る舞うのは無理があった」

唯「そうそう」

澪「分かってはいたが、随分早く結論が出たな。でもって、私とムギを含めるな」

紬「まあまあ。それでりっちゃんは、何考えてる訳ね」

律「ああ。つまりだ、梓に怒られないためにはどうすべきかを考えよう」

澪「いや、そこは先輩として頑張れよ」

唯「出来ない事は出来ないとはっきり言う。私はそんな人間になりたいんです」

紬「唯ちゃん、立派ね」

律「私が言うのも何だが、絶対違うぞ」

澪「梓を怒らせない方法はただ一つ、軽音部として練習をする事だ」

律「まあ、結局それしか無いか」

唯「でも失敗したら、また怒られない?」

紬「一生懸命頑張っていれば、梓ちゃんは分かってくれるわよ」

澪「ムギの言う通りだ。良い演奏をする事も大切だけど、頑張る姿勢はもっと大切だぞ」

律「真面目な奴め。じゃ、取りあえず練習すっか」

唯「おー」

澪「梓がいないから、唯は昔のアレンジでギターを頼む」

紬「4人だけで練習するのも、ちょっと久し振りね」

澪「そう言われてみればそうか。ずっと梓と一緒にやってきた気もするんだけど」

紬「うふふ♪」

   10分後

カチャ

梓「済みません、遅れ……」

律、ムギ「たーぃむ♪」 じゃじゃーん

唯「途中、ちょっと失敗しちゃったね」

澪「でも良いグルーヴ感だったぞ」

唯「グローブ?」

律「言うと思ったよ」

紬「私はちゃんと受け止めたわよ、唯ちゃん」

唯「もう、ムギちゃんまでー」

律、澪「あはは♪」

梓(なんか先輩達だけで盛り上がってて、輪に入りづらいな)

律「……梓、来てたのか」

梓「あ、はいです。今日は早くから練習してたんですね」

唯「私達は、軽音部だからね」

梓「はぁ」

唯「軽音部、だからね」

澪「二度言わなくて良いんだ」 ぽふ

梓「私もすぐ準備しますから」

紬「慌てなくて良いのよ。お茶の用意はしてあるから、梓ちゃんはのんびりしてて」

梓「はぁ」

律「よし、次はホチキスいくか」

唯、澪、紬「おー」

梓(先輩達の着ぐるみを着た誰かってオチなのかな)

唯「あしたー」 ♪

律「今度は結構良かったな」

澪「ああ。……なんか梓が、すごい目付きで見てるんだが」

紬「おやつのプリンが気にくわない、なんて訳はないわよね」

唯「き、牙。牙生えてない?」

律「大げさ、とは言えない形相だな」

澪「やっぱり、演奏が気にくわなかったのか?」

唯「りっちゃん。部長として、あずにゃんにお伺いを立ててきてよ」

律「こういう時だけ、部長扱いしやがって」

澪「私達は、それだけ律を頼りにしてるって事だ」

律「そう言って、私が怒られるのを見て笑うってオチだろ」

澪「当然だ」

唯、ムギ「あはは」

梓(なんか先輩達だけで楽しんでるよね)

律「何気なく獣の殺気を感じるんですが、気のせいですか?」

紬「なにか小話でもして、気持ちを和らげてみたら? 澪ちゃん、そういうの得意そうよね」

澪「得意という訳でも無いんだが。……ピックをくすぐると、どんな反応をするか知ってるか?」

律「ベタすぎだし、そもそも小話でも何でも無いだろ」

唯「で、どんな反応をするの?」

澪「ピックだけに、ピクりとも動かないんだ」

唯「あー、なるほどね」

律「私はピクピクッとすると思うけどな」

唯「じゃあ、実際くすぐってみる?」

澪「私をくすぐろうとするな」 ぽふ

梓(本当、さっきからなにやってるんだろうな)

紬「ぐふふ♪」

梓(特に、ムギ先輩は)

唯「澪ちゃんの小話でも、あずにゃんの機嫌は直らないみたいだよ。りっちゃん、やっぱり話を聞いてきて」

律「えー、どうして私が」

唯「なー、かー、のー。なんでしょ」

律「この野郎。……仕方ない、行ってくるか」

澪「目を合わせるなよ。目を合わせるとケンカになるぞ」

紬「顎、顎を撫でたら良いと思うわ」

律「猫じゃ無いんだよ」

唯「あーず、キャットッ」

律、澪、紬「あはは」

梓(なんだろう、この疎外感)

律「あのー、中野さん。本日のお茶はいかがだったでしょうか」

梓「なんですか、急に。普段通り、普通に美味しいですよ」

律「何やらご機嫌を損ねるような事がありましたら、仰って頂けいただけますでしょうか」

梓「私は普段通りで、普通にしてますよ。ただ皆さんが楽しそうにしてるから、私はそれを観てただけです」

律「ああ、そういう事。拗ねてただけっすか」

梓「べ、別にそういう訳では」

律「もう、梓は本当にお子ちゃまだなー」 なでなで

梓「ちょっと、止めて下さいよ」

唯「……なんか、二人で楽しそうなんだけど」

澪「これはゆゆしき自体だな」

紬「でも梓ちゃんは怒ってないみたいだし、良かったじゃない」

唯「まあね」

律「よしよし。本当に梓は可愛いなー」

梓「もう良いですって♪」 くんかくんか

唯「もう。りっちゃんばっかりずるいよ」 なでなで

梓「いや、そういう問題では無いですから」

澪「そうだぞ唯、梓が嫌がってるじゃないか。ほら、こっちに来い」

梓「はいです」

澪「全く、仕方の無い」 なでなで

梓「いや、あの」

律「誰が仕方ないんだよ。なあ、ムギ」

紬「ぐふふ♪」

律(ぐふふ?)

さわ子「あー、疲れた。ムギちゃん、炭酸っぽいのをちょうだい」

紬「ただいまー♪」

さわ子「で、あなた達は何をやってる訳」

唯「先輩として、あずにゃんをかわいがってるんだよ」

さわ子「あなた達こそ、本当に猫っ可愛がりよね」

澪「さわ子先生は、先輩後輩の関係ってどうだったんですか?」

さわ子「世間一般のそれと変わらないと思うわよ。ただ学園祭やライブで演奏出来る人数は限られてるから、そこはライバルって意味合いもあったわね」

唯「私とあずにゃんなら、勝負にならないんだけど」

律「いや、そこは先輩としての威厳を見せつけてくれよ」

紬「そうするとさわ子先生は、昔の軽音部でも演奏が上手だったって事なんですよね」

さわ子「まあ、私もやる時はやる女だから」

唯「やる時にやった結果が、あのオシシ仮面って訳?」

さわ子「そこは触れないでもらえるかしら」

さわ子「とはいえ一応は先輩なんだから、りっちゃんが言ったように威厳は見せないとね」

唯「でも私、あずにゃんより下手だし」

さわ子「だからこそ、1に練習2に練習よ」

律「なんか、顧問っぽい台詞だな」

さわ子「いや、私は顧問だから」

澪「先生の言う通りです。練習をする事で演奏が上手くなりますし、一生懸命な姿も見せられますからね」

紬「梓ちゃんは、そんな澪ちゃんを見てるから立派に育ってるわよ」

梓「はいです。澪先輩もムギ先輩も、立派な先輩ですから」

さわ子「全く、良い後輩が育ってるじゃない」

律「よく考えたら、さわちゃんも私達の先輩なんだよな。先輩っていうか、ご隠居って感じだけどな。だははー」

さわ子「だったらお前は、ご隠居自ら懲らしめてやろうか。このデコッパチ」

律「あー、ひどい目に遭った」

澪「自業自得だ。梓も来た事だし、改めて練習するか」

梓「はいです」

律「唯は、先輩らしいところを見せてやれよ」

紬「頑張って、唯ちゃん」

唯「よーし。あずにゃん、ちょっと私を足元を見てみて」

梓「足元、ですか。……別に、何も無いですが」

唯「良く見てよ。ほら、上履きの色」

梓「青ですね」

唯「そう。でもって、あずにゃんの上履きは赤。ほら、私の方が先輩だよ」

律「そういう事じゃ無い」 ぽふ

唯「たはは。冗談冗談。頼りない先輩だけど、これからもよろしくね」

律「とうとう、開き直りやがった」

紬「そういう素直な所が、唯ちゃんの良い所よ」

澪「全く、ムギは甘いんだから」

唯「てへへ。じゃ、練習しようか」

梓「はいです」

澪「イチゴパフェか、ときめきシュガーか。Honey sweet tea timeも悪くないな」

律「で、誰の何が甘いって?」

梓「この部分はリードギターのコード進行が少し複雑ですから、気を付けて下さいね。それと、特に裏拍を意識して下さい」

唯「了解です、あず先輩」

律「分かってるんだか、分かってないんだか」

紬「まあまあ。梓ちゃん、何かあったら唯ちゃんの事お願いね」

澪「頼むぞ、梓」

律「ギターは、梓だけが頼りだからな」

梓「はいです」

唯「そこは嘘でも否定してよー」

律、澪、紬「あはは♪」

梓「あの、前から言おうと思ってたんですけど」

唯「どうしたの、あずにゃん」

梓「自分で言うのもなんですが。後輩は先輩の言う事を聞くように、くらいの態度でも私は構わないので」

律「いや、そう言われてもな」

唯「正直、自信ないね」

澪「私も、そういう柄じゃ無いんだよな」

紬「ですよねー」

梓「そういう事では困ると言ってるんです」

唯、律、澪、紬「は、はいっ」

梓(やっぱり私、角が生えてるように見えるのかな)

唯「梓様がお怒りじゃー。皆の者、演奏に励むのだー」

律、澪、紬「へへー」

梓(やっぱり、思い過ごしか♪)

   5分後

唯「うぉー、難しいー」 じゃかじゃーん

梓(唯先輩、いつになく頑張ってるな)

唯「まだまだー」 じゃかじゃーん

梓(私も負けてられない……。あっ、しまった) びがががが

唯「あー、もう駄目だー」 じゃーん

梓(え?)

唯「やっぱり失敗しちゃったよ」

律「失敗? なんか、妙にわざとらしいな」

澪「唯、お前もしかして」

紬「うふふ♪」

梓「……済みません。唯先輩より先に、私がミスしたんです」

唯「え、そなの?」

紬「やっぱり唯ちゃんは、梓ちゃんの先輩ね」

律「演技は下手だけどな」

澪「梓、ちゃんと唯にお礼を言えよ」

梓「は、はいです。唯先輩、その。気を遣って頂いてありがとうございます」

唯「私こそごめんね。本当は演奏でフォローすれば良いんだけど、私は全然駄目だね」

律「全くもってその通りだ」

澪「唯がふがいないから、梓に余計な負担が掛かるんだぞ」

紬「梓ちゃん、ごめんなさいね」

唯「そんなー。今、結構良い流れだと思ってたのにー」

律、澪、紬、梓「あはは♪」

唯「でも本当に、頼りない先輩でごめんね」

律「やっぱり私達は、そういう柄じゃないからな-」

梓「べ、別にそんな事無いですよ。澪先輩もムギ先輩も立派な先輩ですし、唯先輩と律先輩も一応は良い先輩でしょうし」

澪「梓は気が利いて、本当に良い後輩だな」 なでなで

紬「もう、澪ちゃんずるいー」 なでなで

唯「あずにゃんを撫でて良いのは、私だけなんだよ-」 なでなで

律「誰がそんな事決めたんだよ」 なでなで

梓「いや、そういう事は先輩方に求めてませんから」

唯、律、澪、紬「後輩は、先輩の言う事を聞くように♪」

梓「はいですっ♪」



終わり

あとがき

ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
社会人になると2、3才違っても意識しないんですが、学生時代の1才。1学年の違いは絶対なんでしょう。
テーマとしては「みんな、梓の事が可愛くて仕方ない」ですね。

過去作教えてもらっていい?
唯「トンちゃん、今日も元気良さそうだね」
澪「それか、バンド探偵だな」
唯「やっぱり曲は、イメージしやすい歌詞が良くない?」
この3つは知ってる

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