男「あ、消しゴム落とした」(32)

男「・・・この公式を書いてから拾おっと」



真面目(―――チャンスよ、私。落ちた消しゴムを拾ってあげて、男君の好感度を上げる絶好の機会)

真面目(・・・焦ってはいけない。皆は先生が黒板に書いた公式をノートに写している。勿論私も)

真面目(でも私は真面目な女。あらかじめ予習しておいたおかげで、素早く公式をまとめ終える事ができたわ)

真面目(まずは消しゴムの位置を割り出さなきゃ。ここから見える位置には・・・なさそうね)

真面目(おそらく3回はバウンドしている。そして落下音の大きさからすると・・・くっ、遠いわ。なんとかしなきゃ・・・)

活発「―――ふう」

真面目(ッ活発さんがため息をついた!?公式を写し終えたというの・・・!?何故・・・早すぎるッ!)

活発(・・・公式なんか写してる場合じゃない。男の消しゴムを拾ってあげなきゃ)

活発(ええと・・・場所はどこだろう?探さなきゃ)

真面目(・・・あの素振り、消しゴムを探している・・・!まずい、もし見つけられたら男君にアピールできない!)

活発(・・・んー、見つからないなぁ・・・昔のあたしなら『おおっと男、消しゴムを落としたね!どこかなー?』って感じで探せるけど)

活発(それじゃ他の人に拾われちゃう。あたしが拾って男に渡してあげなきゃ・・・!)

真面目(・・・ふふ、見つけられないようね!それに焦りすぎているわ。前の席であんなにキョロキョロしていたら絶対に注意される)

真面目(さあ、先生!注意して!彼女はおそらく・・・いえ、確実に公式を写し終えていないわ!!)

先生「・・・」

真面目(・・・どうしたの?珍しく皆のノートを見て回るなんて。・・・ッ!まさか!!)

先生(男君の消しゴムはどこかな・・・っと)

真面目(・・・先生も消しゴムを探している!?しかもあれじゃ簡単に見つけられるじゃない!職権の乱用に値するわ!!)

活発(まずい、先生も消しゴムを探してる。早く見つけなきゃ!・・・よし、今だ)

真面目(ッ・・・あの子、先生からの死角になった瞬間を利用して大胆に探し始めた)

真面目(私もその手で・・・いえ、駄目よ。私の性格上、授業中にキョロキョロするなんて考えられない)

真面目(それは男君の私へ対する印象に関わるわ。・・・どうすれば・・・!!)

先生「皆ちゃんと書いてるかなー?後でチェックするからなーっと♪」

活発(そんなの関係ないもん!公式は後でも写せるけど、男の消しゴムは今しか拾えない・・・!!)

真面目(くっ・・・私だけ出遅れている!何か・・・何か手はないの・・・?)

活発(ない・・・ないよ!どこにあるの・・・?)

先生(・・・おかしい。見つからない)

先生(茶色のタイルに白い消しゴム。かなり目立つ色の組み合わせだ。何故見つからない)

先生(・・・一度教卓に戻って体勢を立て直すか)

先生「さて・・・っと。次のページは・・・」

真面目(・・・先生が教卓に戻った。あの方法で見つけられなかったというの・・・?)

真面目(そんなの有り得ない。あれだけ高い目線から見渡して探したのに・・・)

真面目(・・・待って。『高い目線から探せない場所』・・・?)

真面目(・・・そうだ!!机や椅子の真下なら先生からは見えない!消しゴムはきっとそこにある!)

真面目「・・・ふふっ」

先生・活発(ッ!?見つけられた!?)

真面目(ッいけない、思わず声に出てしまったわ・・・。落ち着くのよ、私。まだ見つけた訳じゃない)

活発(・・・席を立たない?まだ見つけてないって事なのかな・・・でもなんで笑ったんだろう)

先生(私より優位な立場にいるという事か?馬鹿な・・・そんなはずがない)

真面目(・・・場所は限定できた。そしておそらく二人は気付いていない。このまま私が・・・!)

活発(うー・・・こうなったら!)

活発「わわっ!消しゴム落としちゃった!どこかなー・・・」

真面目・先生(ッッ!!この女狐・・・!!)

活発「うーんと・・・どこだろ?」

真面目(まずい、まずい、まずいわ!あの目線なら皆の足元をほぼ見渡せる!)

先生(くっ・・・やむを得ん)

先生「こら活発君!授業中に立つんじゃない!君はまだ公式を写し終えていないだろ!」

活発「えー?でも消しゴムがなきゃ・・・」

先生「んーっと・・・お、あったぞ。ほら、皆が写し終わらないと次に進めないぞー」

活発「・・・はーい」

真面目(上手い!よくやったわ、先生!)

先生(・・・活発君の消しゴムを拾うのに手間取り、男君の消しゴムも探すべきだったか?)

先生(いや、探す事に手間取れば他の生徒も探し出すだろう。男君の消しゴムも拾われかねない)

活発(うう・・・注意されちゃった・・・。でも―――)

真面目(・・・振り出しに戻ったわね。いいわ・・・この際だから状況を整理しましょう)

真面目(まず落下音からして、おそらく私の席から遠い位置。尚且つ先生の目線からは見えない・・・つまり机や椅子の下)

真面目(場所はかなり特定できたけど・・・くっ、私からも死角になっている場所が多すぎる!)

真面目(・・・落ち着いて、時間はあるわ。さっき先生は『公式を写し終えないと次に進めない』と言った)

真面目(このクラスには不真面目な子が何人かいる。おそらく先生に釘を刺された『今』から渋々写し始めるわ)

真面目(・・・待って。私や先生から死角になっていて、活発さんの方法でも見つけられない場所)

真面目(そしてこのクラスにいる『不真面目な子』)

真面目(・・・活発さんは見つけられなかったんじゃなく、『拾えなかった』としたら?)

活発(うう・・・見つけたのはいいものの)

活発(よりにもよって不良さんの椅子の下にあるなんて・・・)

活発(どうしよう!拾いに行きたいけど・・・怖いよ!!)

活発(・・・素手で熊を倒したって噂、本当なのかな・・・)

先生(・・・活発君が不良君を意識している。消しゴムはあそこにあるのか?しかし何故私が見つけられなかった)

先生(『あの時』の活発君に見えて私に見えない場所・・・そうか、椅子の下か)

先生(・・・しかし、あの不良君の椅子の下とは・・・不良君は私が受け持つ生徒とはいえ、さすがに少し怖い)

先生(考えるんだ。・・・『彼女』をどう対処するか)

不良(―――どどどどうしよう!男の消しゴムがこっちに転がってきちまった!)

不良(男に渡してあげるか・・・?・・・ッ無理!無理に決まってる!)

不良(だっ、第一そんなキャラじゃねえし!なっ、なんでオレが拾ってあげなきゃならねえんだよッ!)

不良(そうだ!男が拾いに来い!その・・・足くらいはど、どけてやるから!)

不良(早く・・・早く拾いに来やがれッ!!)

活発(わわっ、不良さんが男をすっごい睨んでる・・・自分の席に転がってきたから怒ってるのかな)

活発(だったら早く消しゴムを拾わなきゃ・・・ううっ、でも怖い!怖いよー!!)

真面目(・・・もしや不良さんは男君に拾わせる事で接点を持つつもりなの?・・・なんて卑劣な・・・!)

先生(・・・男君は中央の席に対し、不良君の席は一番後ろだ。普通なら不良君が睨んでも気付かれないが、あの存在感ならあるいは・・・)

男「―――よし、書き終わった。えーと、消しゴムは・・・」

真面目(ッ!!・・・もう、諦めるしかないというの・・・?)

活発(・・・そんなの嫌だ!あたしが・・・あたしが拾うんだ!!)

活発「あっ、男!消しゴム落としたの?あたしが拾ってあげる!」

先生(何ッ!?不良君に挑む気か・・・!?無謀すぎる!)

活発「えーと、あった!不良さん、ちょっとごめ

ダァンッ!!

―――活発が勇気を振り絞り、消しゴムを取ろうとした刹那。活発の目の前にあった消しゴムが不良の脚で遮られる。
黒いニーソックスを履いた細く長い脚。いつもは美しいとされるその漆黒の脚が、活発の目には悪魔の足元のように見えた。
そして、『悪魔』は威嚇する。まるで地獄に入らんとする善人を叱咤するかのように、禍々しく、凛々しく、猛々しく言い放つッ!!


「オレの縄張りを荒らすんじゃねえ―――」

活発(・・・熊みたいな事言われた。やっぱりあの噂は本当だったんだ)

活発(・・・無理、だよ・・・こんなの)

活発「・・・ごめん、なさい」



真面目(―――活発さんは脱落、したようね。・・・少し、気の毒ね)

先生(・・・不良君は強すぎる。私では勝てないのだろうか・・・)



不良(―――なぁに言ってんだオレはァァァ!!いくらなんでもあれじゃ活発が可哀想だろッ!!)

不良(それに『縄張り』ってなんだよ!!そんなもんある訳ねえだろッ!!)

不良(・・・消しゴムどうしよう。活発も欲しがってたし、渡してやろうかな・・・)

真面目「・・・ねえ、不良さん。今の言い方はあんまりだと思うわ」

活発・先生「・・・ッ!?」

不良(えっ?あ、いや、あの・・・)

不良「・・・ンだよ」

真面目「そうでしょう?今は授業中なの。不用意に周りを怖がらせて、場の空気を悪くしてもらっては困るわ」

活発(真面目・・・さん・・・?)

先生(真面目君が仕掛けた?これを好機と考えたか・・・?)

不良「・・・チッ」

不良(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)

先生「・・・そうだね。不良君が活発君に謝って、それで解決としようかなっと」

真面目(先生・・・ありがたいわ)

先生(真面目君の意図がどうあれ、ここは先生としての威厳を保たなくては。男君が見ている前でオロオロする訳にはいかない)

活発「い、いいよ。あたしが悪いんだし・・・」

不良「・・・悪かった。これでいいだろ」

活発「えっ、あ、うん・・・こちらこそ」

不良「・・・帰る」

先生「あ、ちょっ!不良君!まだ授業が・・・っと。全く・・・」

不良(うおおお!謝れた!!すっげー嬉しい・・・けど恥ずかしい!!オレのこんな顔・・・男に見せられるかよォォォ!!)

不良(・・・活発。消しゴムは机に置いといてやる。渡してやれよ)

真面目(―――不良さんは消しゴムを机に置いて行った。活発さんへのお詫びのつもりかしら)

真面目(だけど私達の闘いは非情よ。二人には悪いけど・・・決着をつける!)

先生(―――不良君。君は活発君に詫びを入れたかったのだろうが、私達には関係ない)

先生(君達は強かったよ。だが・・・消しゴムは取らせてもらう!)



真面目・先生(音を発すれば活発に気付かれる。静かに・・・そして確実に消しゴムを手に入れる!)

真面目(私の・・・勝ちよ!)

先生(君達の・・・負けだ!)



男友「―――ほいっと。男、消しゴム落としてたんだって?」

男「あ、男友。拾ってくれてありがとう」

短いけど終わります
駄ssで申し訳ない

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