映画『艦これ』 -平和を守るために (175)

映画『艦これ』 -平和を守るために
製作:○鎮守府

●この映画はフィクションであり、実在の団体、事件とは無関係です。

――


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1426824530

提督「コンコン 失礼します」

元帥「よく来た。まあ座りなさい」

提督「失礼します」

元帥は、提督に背を向けたまま、話す。

元帥「話は聞いているか?」

提督「はい! ○鎮守府にて、海軍の生物兵器、『艦娘』の指揮を取らせていただけると」

元帥「その通り……何か、私に直接聞きたいことはあるか?」

提督「いえ!」

元帥「では、明日からよろしく頼む」

提督「はい!」

提督は元帥に向かって敬礼をする。そして、元帥の部屋から出た。

――

深海棲艦との戦争に作られた艦娘は、計135人。全員が、鎮守府の講堂に集まった。

提督「私が、君らの指揮を取る。よろしく頼む」

シーンとした講堂に、大きな拍手。誰一人として、話そうとするものはいない。全員、直立している。

提督「戦争に大切なのは、味方を信頼することだ。私のことも、信頼して欲しい。では、解散!」

艦娘たちは、小走りで、自分たちの部屋へ戻っていく。

中には、小学生かと思えるくらい幼い子もいるが、そんな子も、きちんと、軍人らしい行動をしているのだ。

――

今まで大きな出撃もなく、艦娘の訓練も、問題なく出来ている。

艦娘たちは、徐々に私に心を開き始めた。

提督「そこでバランスを上手く。耐えろ! よし! そこで砲撃だ!」

今、私が指導しているのは、『潮』、という駆逐艦の少女だ。

バランス感覚が弱く、艤装をつけた状態での海上移動も、未だ不安定だ。

提督「よしっ! ……その砲撃で最後にしよう」

潮は訓練の最後、見事、的に命中させた。他の子に比べれば遅いが、着実に、上達している。

潮「ハァ、ハァ」

提督「疲れたか?」

潮「いえ……大丈夫です」

提督「そうか、私はこれから出撃だ。先輩とかに練習は見てもらってくれ。この調子なら、近いうちに、お前も出撃できるぞ」

潮「ほ、本当ですか! ……嬉しいです」

――

出撃は、基本は、戦場の様子を艤装のトランシーバを通して、執務室で聞いているだけである。

作戦中断を伝えることもあるが。

ドガン
夕立「提督! 夕立の魚雷が入りました。全敵艦が轟沈しました!」

提督「よくやった! 周りに敵はいないか? 何度も言うが、潜水艦にも気をつけろよ。存在は確定していないが」

夕立「えー……周りに敵はいないっぽ、いないです!」

提督「よし、帰投してくれ」

夕立「了解です!」

プツ。トランシーバのサイドスイッチから指を離す。何かあったら、連絡が入るはずだ。

――

夕立「提督さん、帰投しました」

提督「ご苦労。無事でなによりだ」

満潮「……あんたは何もしていないじゃない」ボソッ

提督「はは、すまないな……」

夕立「提督さんは悪くないっぽい! 満潮ちゃんは酷いっぽい!」

必死に私を弁護してくれる夕立を見て、私は、平和というものを、強く望む。

早くこの戦争を終わらせ、この子達を、クローン生物とは言っても、産みの親の元へ返してあげたいと、しみじみ思うのだ。


このときの私には、この後の残酷な未来など、想像も出来なかった……

――

曙「いっけぇー! ……やった! 轟沈よ!」

提督「よくやった、曙!」

曙「ふんっ、こんなもんよ。私に感謝しなさい!」

提督「ああ、本当にありがたいよ。よくやった、曙」

曙「そ、そんなに褒めても……ありがとう」

提督「よしっ、周りに敵はいないか?」

曙「確認済みよ」

漣「ん? ……曙、あれって」

曙「んん? ……うぁっ!」

提督「っ! どうした!」

曙「う、海から攻撃が……」

提督「それは潜水艦だ! 海上の、潜望鏡を探せ!」

曙「せ、潜水艦って……ああっ! さ、漣、大丈夫?」

漣の声は、私には聞こえない。

提督「全員、帰投せよ! 繰り返す、全員、帰投せよ!」

曙「……皆! 帰投してって、クソ提督が……」

ドガン

提督「曙!」

曙「ああ……ねぇ、海の底って……」

プツ。

それから曙は応答しなかった。

潮「司令官! 潮です! ご命令を」

提督「あ、ああ! 全員、ただちに帰投せよ!」

――

潮「失礼します……」

提督「潮……戦況は? 曙は無事なのか? 漣も……」

潮「……轟沈です。二人とも、沈みました……」

提督「……」

潮は、うつむき、震えながら言った。

潮「大破4艦、……轟沈……2艦です」

提督「……了解した、ドッグに入りなさい……」

潮「……はい……うっ…うっ……」

潮は、泣きながら、執務室から、出て行った。

提督「……曙、漣」

私の脳裏には、今まで沈めた深海棲艦のことが、浮かんできた。その後すぐに、艦娘との日常が。


曙『……あんま、見ないでくれますか?』

曙『この、クソ提督!』

曙『こんだけ? 対したことないわね』


漣『よろしくおねがいします、ご主人様』

漣『ふざけてるように思われがちですが、本気だせば、こんなもんですよ♪』

漣『キタコレ!』

提督「……」

私の目からは、不思議と、涙は出なかった。
理由はよく分からないが、涙が出なかった。

――

今まで優勢だった私の軍隊は、日に日に、深海棲艦に負かされていった。

とにかく、時間がなかった。鎮守府に派遣されてから、一秒たりとも無駄な時間は使わなかったが、私の胸には、まだ、余裕があった頃の鎮守府への後悔が、渦巻いていた。

――

提督「もう少しで遠征組の援助が来る! 耐えてくれ!」

飛龍「了解! ……痛っ」

大潮「わぁっ!」

飛龍「大潮ちゃん! 大丈夫!?」

大潮「うう……大潮はまだ、だいじょうぶ!」ドン

ドガン
大潮の砲撃が、敵艦に命中。轟沈させる

大潮「やった」
ドガン

飛龍「大潮ちゃん! ……このー!」

飛龍の砲撃は敵艦に当たらず、敵艦の砲撃は、飛龍に当たる。

提督「飛龍!」

飛龍「ま、まだ、大丈夫だよ……それに、このまま帰投するわけにもいかないじゃない……」

飛龍の言う通り、この場で帰投させては、深海棲艦と本土決戦に持ち込まれる可能性があった。

荒潮「皆さ~ん! 援助に来ました!」

龍驤「飛龍! しっかりせい!」

飛龍「……ああ、助けが来たね……よかっ」
ドガン

提督「っ……荒潮を旗艦とし、攻撃を再開せよ!」

――

荒潮「……提督、報告よ……」

提督「ああ、すまない」

荒潮「提督は悪くないわ……ただ、」

提督「報告を頼む……」

荒潮「……轟沈3名、大破5名、中破2名です。轟沈は飛龍、大潮、龍驤です……」

提督「……龍驤もか……」

荒潮「飛龍さんに近づいたとき、敵艦の砲撃が飛龍に命中、不幸にも誘爆を起こして、龍驤さんも……」

提督「……そうか、わかった」

荒潮「提督……ただ、敵艦隊は全滅できたじゃない!」

提督「……そう、だな、ありがとう」

荒潮が執務室から出て行った後、提督はしばらく、外を眺めていた。
日差しを反射して、海は綺麗に輝いている。

提督「……皆、すまない」

提督は海に向かって、脱帽した。

――

離脱します。
閲覧してくれた方、ありがとうございました。

>>21
最後、提督→私 に訂正です。ごめんなさい

艦娘の間には、『出撃したら、生きては帰れない』という、不安な空気が強くなる。
そして、轟沈は毎日のように出る。

今朝見かけた子が、夜にはもういない。
そんなことは、当たり前だった。

――

艦娘の人数が、最初の3分の1ほどになった。
しかし、深海棲艦も、相対的に、弱体化していく。

駆逐艦でも、戦艦に止めを刺すことが出来るまで、艦娘たちの錬度は上がっていた。

しかし、それと、艦娘の轟沈は別だった

――

霞「沈みなさい!」

ドガン
霞「きゃっ! う、嘘でしょ」

ドガン
霞「」

提督「霞! 応答せよ!」

朝潮「司令官、ここは朝潮が旗艦を代理します!」

提督「朝潮! 頼む!」

ドガン
朝潮「っ…… これで勝ったつもり? 突撃!」

ドガン

深海棲艦の砲撃が、加賀に当たる。

朝潮「あ、加賀さん」

加賀「頭に来ました」ブーン

ドガン
朝潮「」

加賀「朝潮!」
ドガン


これが、深海棲艦との最後の戦いだった。最後まで生き残った艦は、加賀のみだった。

加賀「ヒュー……ヒュー……」

提督「加賀……ありがとう。帰投してくれ」

加賀「ヒュー……提督、ちょっと、休んでもいいかしら」

提督「ああ、……かまわんが」

加賀「ヒュー・・・」

プツ。

加賀との連絡が、途絶えた。その後、声が枯れるくらい、繰り返し、トランシーバに向かって叫んだが、加賀の声は、二度と聞こえなかった。

――
――

深海棲艦との戦いが終わり、鎮守府は解体されることとなった。
にぎやかだった鎮守府には、もう、提督しかいない。

聞こえるのは、海の小波のみだ。

荷物をまとめ終わった提督は、艦娘たちの部屋の片づけを始める。女の子の部屋に入るのは抵抗があるが、執務の一環だ。

コンコン
中に入ると、彼女たちの私物。しわくちゃになったベッド。全てが、あの時の状態で保存されている。

かつての、彼女たちの姿が浮かんでくる。

龍田『さあ、死にたい艦はどこかしら♪』

雪風『ゆきかぜは、沈みません!』

大鯨『無事に帰ってこれて、よかった♪』

満潮『はぁ、なんでこんな部隊に配属されたのかしら』

吹雪『いやっ、沈むのは、嫌だよぉ!』

赤城『……ごめんなさい、雷撃処分、してください』

電『次に生まれてくるときは、平和な世界だと、いいなぁ……』

提督「……」ツー

ああ、涙が出てきた。胸が痛い。嗚咽を抑えることができない。

私は部屋の窓から海に向かい、敬礼をした。目の前はぼやけているが、海は、平和だった。
それは、彼女たち、艦娘たちが守った平和と言っても良いかもしれない。

――

今日、鎮守府が破壊される。艦娘たちの遺物は、ちゃんと、産みの親の元へ送った。

私は、鎮守府から少し離れた、砂浜に来た。鎮守府でやったように、再度、海に向かって敬礼をした。今度は泣かなかった。

平和を守ってくれて、ありがとう。
私は心の中でそう唱え、数秒、目を閉じた後、本部へ向かった。












潮「オーケーです!」

提督「よっしゃあああああああああああああ!!!!!!!」

監督:長門、提督
監督補佐:睦月、吹雪
脚本:提督、睦月、山城
元帥の声:天龍
その他制作:(省略、○鎮守府の艦娘の皆さん)

加賀「……なんでこんなに暗い脚本なのかしら」

赤城「提督が、『どうせなら事実と逆を行こう』って言っていました」

加賀「捻くれ者ね」

カメラの裏側からぞろぞろと出てくる艦娘たち。

夕立「提督さん! 迫真の演技だったっぽい!」

青葉「お疲れ様です! 今の心情、一言お願いします!」

陸奥「お疲れ様! 提督」

鎮守府主催の映画の撮影が、全て終わったのだ。

提督「ああ、ありがとう。お前らの演技もすごかったぞ!」

満潮「・・・ありがとう」

電「そういわれると、嬉しいのです」

青葉「あっ、提督! 編集は、青葉におまかせ!」

提督「ああ、頼もしいよ」

撮影セットを片付け、鎮守府に戻っていく。

――

提督「えーでは、映画の撮影終了、そしてなんといっても、深海棲艦の撲滅、おめでとう! 一足早いが、宴会だ! 一人として欠けることなく、戦い抜いてくれたことには、私からも、感謝を申し上げたい。ありがとう。では、堅苦しいことは抜きにして、乾杯!」

艦娘「乾杯!」

深海棲艦の撲滅に成功したのは3日前の話だ。その後、即席で小さな宴会を開いたとき、

・・・
・・

睦月「提督、私、映画作りたいです!」

提督「映画? って睦月お前、なんで酒飲んでんだよ!」

北上「いーじゃんいーじゃん、一口くらいさ!」

提督「お前もギリでアウトだぞ! ……で映画とは?」

北上「え、何気にスルー?」

睦月「うん、鎮守府のみんなで簡単な映画を作るの!」

北上「いーじゃん楽しそーじゃん」

提督「随分酔ってるな……しかし、135人もこの鎮守府にいるわけだが……」

夕張「カメラとマイクは工廠に結構な数あったよ~」

睦月「ね、提督、どう?」

提督「……反対するやつは?」

誰も、手を上げない。

提督「なら、いいんじゃないか?」


・・
・・・

と、こんな感じで始まった映画撮影。3日で全撮影が終わり、後は編集作業のみとなった。

始め興味なさげにしていた霞や初雪、満潮のような面子も、なんだかんだで楽しそうに動いていた。

陸奥『あれ…島風ちゃーん』

島風『おうっ?』

陸奥『ごめん、レンズ拭くやつ、霧島から借りてきて』

島風『おうっ!』ヒュン

北上「いやー撮影おわったねぇ大井っち……私の場面はなかったけど」

大井「大丈夫ですよ北上さん。スタッフロールには全員載りますから……にしても、やっと終わったって、感じですよね」

北上「うん、なんか、生まれた頃からずっとって感じがするから、なんか終わったのが不思議……」

大井「……これで、平和になったんですよ」

北上「そうだね、大井っち……」

大潮「どっかーん!」

朝潮「きゃっ! お、大潮、びっくりした、って何やってるの!?」

大潮「う~ん、やっぱり朝潮が一番大きいよ」ナデナデ

朝潮「ちょ、ちょっとやめて」///

霞「…くだらない」

大潮「霞は一番小さいもんねぇ」ニヤニヤ

霞「むっ……そ、そんなことないわよ」

霰「…チラッ…チラッ」

霞「な、なに見てんのよ!」///

古鷹「……ねえ青葉」

青葉「はい、何ですか?」

古鷹「青葉は、鎮守府を出た後、どうするの?」

青葉「う~ん、とりあえずは親のところに行ってみます。全く記憶にないのですが……」

衣笠「だよね~、顔とか全く覚えていないし、会わないっていうのもなんかね~」

青葉「ですよね、いっそのこと、この鎮守府でこれからも生活したほうが、なんかしっくりきます」

北上「暁ちゃ~ん、レディっていうならこれ飲めるよねぇ」アハアハ

電「北上さんが大変なのです!」

暁「も、も、もちろんよ! 大人のレディなんだから!」

北上「ほらほら~、コップに注いであげるよ~」トクトク

大井「き、北上さん、それはちょっと……」

暁「うっ……」

雷「暁、無理しなくていいのよ」

響「というよりも、飲んじゃだめ」

暁「あ、暁の本気をみるのよぉー!」ガバア

電「暁ちゃん!」

響「暁、大丈夫かい?」

暁「うぷっ……ちょ、ちょっと、おトイレに行ってくる……」

北上「ごめん、さすがに反省してる」

提督「北上コラァー!」

北上「ヒェー!」

鎮守府は、非常時のために残され、艦娘たちは、産みの親の元へと帰る。その後は、その親の元で、生活する。これが、本来の予定であった。


……事実は小説よりも奇なり、とは言うが。さて……

――
――

ここで、艦娘について、まとめておく。

艦娘は、戦争のための存在である。
突如、日本近海に現れた謎の生物『深海棲艦』を倒すため、クローン技術によって作られた生物兵器である。
普通の人間よりも、生命力、筋力を強くされ、また、目的の大きさまでの成長は非常に早い。言語能力の取得も早い。

――

提督「……どういうことですか?」

元帥「君の気持ちはよく分かる、一番近くで、あの娘たちを見てきたんだからな……」

提督「だから! どういう意味なんですか!」

提督は思わず、声を上げてしまった。元帥に対して。

提督「…私の無礼、申し訳ありません」

元帥「良い、気にするな。……しかし、これが世間の現実なんだ」

提督「詳しく、話を聞かせてください」

元帥「…君は『クローン』と聞いたとき、何を思い浮かべるか?」

提督「…人工的に作られた、生き物と」

元帥「それは君が、艦娘に接してきた、クローンに接してきたから言えることだ。世間の民間人は違う。クローンである艦娘を、人造人間やターミネーターのように見ている」

提督「! それは大きな誤解です。艦娘は、クローンであっても生物です。もちろん、人間との相違点はいくつか上げられますが、彼女たちはそれを自覚し、己の意志でコントロールすることができる。これは、人間と同様の心を持っている証拠です!」

元帥「君の言い分はよく分かる。しかし、世間は違う。……事実、製造の際に協力してもらった、『産みの親』135名は全員、艦娘の受け取り、扶養を拒否している」

提督「……腹を痛くして産んだ、自分の子どもにも関わらず……」

元帥「特別手当が数百万出るからな……これが世論というものだ。どれだけ、艦娘に対する偏見が強いかが分かるだろう。」

元帥「軍部はこれまで、艦娘たちの将来を考え、艦娘の顔は公開してこなかった」

元帥「しかし、戦争が終結し、艦娘を産みの親に返すと軍部が発表してからは、それの反対運動があらゆるところで起きている」

元帥「そこで軍部は、……」

元帥「殺処分という選択肢を、取らざるを得なかった」

元帥「……全て、仕方のないことなんだ……」

提督「……」

元帥「……来週の今日、艦娘たちの殺処分が予定されている。君から、艦娘に伝えて欲しい」

元帥「ただ、もしそれで艦娘たちが暴動を起こした場合、軍部は、海外にも応援を要請して、艦娘を相手に戦争を起こす」

元帥「生命力や筋力がいくらか強いといっても、所詮、『生物』なんだ」

提督「……分かりました。失礼します……」

元帥「本当に、すまない……」

提督は元帥の部屋を出て、鎮守府の帰路についた。途中、電車の中で泣いた。

大の大人が涙を流す姿は、同じ車両の女子高生に笑われたが、提督には、どうでも良いことだった。

――

時雨「提督から、緊急召集だって」

夕立「なんだか、不自然っぽい」

綾波「何か、あったのかしら……」

初雪「また戦争とかだったら、やだなぁ……」

提督「集まってくれて、ありがとう。非常に大事な話だ。不在の者はいないか?」

ザワザワ、アッ、アノコハ? ソコニイルヨ

提督「…いないようだな。非常に、諸君にとって、ショッキングな話となるかも知れないが、最後まで、落ち着いて、聞いて欲しい」

龍田「まあ、ショッキングな話って」

天龍「まさか、また深海棲艦と戦争か? ったく、やめてくれよ」

提督「……まず、結論から伝える」

提督「君たちの産みの親は、全員、君たちの引取りを拒否した」

シーン… デモ、ソレデモヨクナ~イ? アンマキニシナイ デモ、ソレジャワタシタチハドウナルノ

提督は、自分の感情を消すことで、艦娘たちに、残酷すぎる現実を伝えようとした。

提督「さらに、君たちは一週間後、殺処分をされることとなった。この経緯を、全て話す」

天龍「っ! はあ!? ふ、ふざけんなよ! なんで、国のために戦った俺たちが、……殺されなきゃなんねぇんだ!」

龍田「天龍ちゃん、今は落ち着きましょう。……一番辛いのは、提督よ」

天龍「……ちくしょう!」

他の艦娘は、皆、ポカンとしている。

提督はその後、元帥に伝えられたことを全て話した。艦娘を世に出すことへの反対運動のこと、艦娘への激しい偏見のこと、そして最後に、艦娘が暴動を起こせば、世界が鎮圧しようとすること。もちろん、そうなれば、提督の命も助からないだろう。

提督「……つまり、君たちはターミネーターのような、殺人生物としてのレッテルを世間に貼られてしまい、それらを世間に出すことに対しての非難が……うぐっ……うっ……」

提督は、耐えることができなかった。

あまりにも理不尽な世間の目への怒りと、目の前の艦娘が、来週には死んでしまうということへの悲しみ、不憫さが、提督を襲う。

押さえようとしても押さえきれず、どんどん膨らんでいく。

怒りで赤くなっていた天龍も、その提督の姿を見て、静かに泣き出した。

天龍だけではない、他の艦娘たちも、静かに泣き始める。深海棲艦との戦争が始まって2年。当時は小さかった駆逐艦の子も、大きく、頼もしく成長した。

本当に、色々なことがあった、2年間だった。

その経緯を間近で見てきた提督、艦娘にとって、一週間後の理不尽な殺処分は、あまりにもショックが大きかった。自分たちにとって、何のための、2年間だったのか……

提督「…………すまない、よって、一週間後の今日、君たちの殺処分が行われる。失踪を図ったとしても、軍部は君たちの顔写真を持っている……以上、報告は終わった。何か、質問のあるものは」

誰も、口を開かない。

提督「……解散してくれ。私の力不足で、申し訳ない」

しばらく、たたずんでいた艦娘も、パラパラと部屋に戻り始める。

泣き出す駆逐艦の子をあやめる重巡洋艦や戦艦の子。

提督はずっとうつむき、静かに泣いていた。

最後まで残ったのは、青葉だけだった。

提督「……お前は、帰らないのか?」

青葉「……ちょっと、考え事をしていまして」

提督「そうか……」

提督はゆっくり、部屋に戻ろうとする。

青葉「司令官」

提督「……どうした」

青葉「……映画、楽しみにしててくださいね」ニコッ

提督「……ああ、別に、お前の好きなように過ごしてもいいんだぞ」

青葉「いえ、やり残して死ぬのは、気持ち悪いですから」

提督「お前はすごいよ……じゃあ」

提督は、青葉の方を振り返らず、講堂を出た。
青葉はずっと、何かを考えていた。

――

カタカタ、カチッ、カタカタ

加古「青葉~、何やってるの?」

青葉「あっ、すみません、起こしてしまって……映画の編集です」

加古「……よくやるね。あたし、あの話聞いたら、なんか眠れないよ」

青葉「加古さんまで眠れないとは……」カタ、カチッ

加古「体壊さないようにね、青葉」

青葉「はい、おやすみなさい」

カタ、カチッ、カタカタカタ、カチカチッ

青葉「カタカチカチ……カチッ……これで、完成かな」

古鷹「……あおば~」

青葉「うわっ! ……って古鷹さん、おはようございます」

古鷹「……映画の編集? そうか、青葉編集だったもんね……」

青葉「はい……もうちょっとで終わりそうですよ」

古鷹「……青葉」

古鷹はベッドから起き、青葉に後ろから抱きついた

古鷹「……死ぬのは、怖いよ……」

青葉「……」

青葉「もう、古鷹さんはお姉ちゃんなんですから、しっかりしましょうよ!」

古鷹「……青葉は強いね、羨ましい……」

青葉「……死ぬときは、みんな一緒ですよ」

古鷹「……うん、そうだね。おやすみ、青葉。早く寝てね」

青葉「もう少し、がんばります」

古鷹はベッドに入ってゆく。そして青葉は、カメラとパソコンを接続して、作業を開始する。

――

チュンチュン

青葉「あ、外が明るくなってる……でもこれで、完成しました。皆にばれないようにですが、通しで見て確認もしましたし、大丈夫でしょう」

衣笠「んん~……あ、青葉おはよう」

青葉「おはようございます」ゴソゴソ

衣笠「なんかやってた?」

青葉「ちょっと、映画の編集をしていまして」

衣笠「さすが! 期待してるね!」

青葉「ありがとうございます」ニコッ

――

青葉「司令官、映画が完成しましたよ!」

提督「ん? ……ああ、そうか……いつ、放映できる?」

青葉「プロジェクターとかの準備があるので、余裕を持って、明日からでお願いします」

提督「そうか、俺もこの後本部に行かなきゃならないから、明日放映しよう。ありがとな」

青葉「いえいえ!」

提督「……やけに元気だな」

青葉「最後の一週間を笑って過ごして、最後の日に、思い切り泣くんです……」

青葉「もし、最後の日が来ればですけどね」ボソッ

提督「ん?」

青葉「司令官、行ってらっしゃい!」

提督「ああ、……行ってくるよ」

――

提督「失礼します」

元帥「・・・わざわざ済まない。艦娘諸君には、伝えてくれたか?」

提督「はい……皆、泣いていました。今日の鎮守府は、全体的に静かだったように思えます」

元帥「……そうか、本当にすまない」

提督「いえ……仕方のないこととは、理解しています」

提督「……私、艦娘を本当の娘みたいに、思ったことがあるんです」

提督「若造の私でも慕ってくれて、失敗したときも、励ましてくれて……」

提督「そんな子が、戦争が終わった後で死ぬなんて……」

元帥「もう良い、帰ってよい」

提督「……失礼します」

バタン
元帥「本当に、済まない……」

――

青葉「んー……時間かかるなぁ」

卯月「青葉さ~ん! なにやってるぴょん?」

青葉「あっ、うーちゃん、こ、これは見ちゃダメです!」アセアセ

卯月「いけないものぴょん?」

青葉「いえ、そんなものでは、映画のビデオです。明日、放映ですよ!」

卯月「映画みれるぴょん!」

青葉「はい! 楽しみにしててくださいね!」

卯月「ぴょんぴょん! うれしいぴょん!」

青葉「……ふう、見られなくてよかった。サプライズですから……」

――

青葉「はーい! 明日の11時から講堂にて、[映画『艦これ』 -平和を守るため]が放映されます! ぜひぜひ、全員見てください!」

天龍「映画かぁ……忘れかけてたぜ」

龍田「鎮守府最後の、思い出でしょうね……」

雪風「ねぼうしないで、絶対見にいきます!」

瑞鳳「……なんだか、もう懐かしく感じる」

祥鳳「…短かったわね……」

提督「鎮守府最後の、思い出だな……色々、あったよ」

――

青葉「プロジェクター、よし。パソコン、ムービー、よし」

青葉「それでパブリックにして……」

青葉「皆さん! お待たせしました。これより、[映画『艦これ』 -平和を守るため]を放送いたします! 拍手!」

パチパチパチ

さすがに、大拍手とまではいかないが、艦娘たちは、少しずつ、予定された死に、向き合いつつあった。

青葉「では、放映します!」

映画は、オープニングテーマなしで、いきなり始まった。冒頭、いきなり天龍むき出しの元帥の声に、笑いがこぼれた。

そして、戦闘のシーン。稚拙なカメラワークながらも、雰囲気はなかなか出ている。もちろん、深海棲艦は出てこない。

ドガン。曙の轟沈。艦娘たちの涙を誘った。そして、肝心の曙は……号泣していた。

曙「ううっ……この、クソ提督、クソ……クソッ……うっ」ボロボロ

ルルルルルルルル

提督の電話が鳴り響く。元帥からだった。

提督「・・・すまん」

提督は講堂から出て行き、電話に出た。

提督「もしもし、提督ですが」

元帥「おい! 貴様は何のつもりだ?」

提督「はい?」

元帥「軍部で大変な騒ぎになっているぞ!」

提督「・・・すいません、なんのことだか」

元帥「とぼけるな! 動画共有サイトOURTUBEで、艦娘たちの映像を2本流出したんだろうが!」

提督「はっ!?」

講堂の中にいた艦娘たちは、映画よりも、外から聞こえてくる提督の電話のほうに、意識が移っていた。

提督「鎮守府の内部を撮影した覚えはありません。マスコミの仕業では」

元帥「違う! 艦娘が、向けられるカメラに向かって手をかざしたり、ピースしたりする様子まで取られているらしい。どう考えても、貴様の仕業だ!」

提督「しかし……私はカメラを所持していません。まして撮影なんて」

元帥「言い訳はいい! そっちにヘリが向かっている。今すぐ、本部まで来い!」

提督「げ、元帥殿!」

プツ。ツー、ツー、

何人かの艦娘は、講堂から出ていた。

夕立「……提督さん、何かあったっぽい?」

提督「……お前らの移った映像が、流出したらしい」

エッ、ソレッテ… ナンカモンダイナノ? ダッテ…ネエ

提督「……ちょっと、本部に行ってくる」バラバラバラバラ

外には既に、ヘリがきていた。

青葉「……えー、どうせなら司令官と一緒に観たいと思うので、映画は繰上げましょう」

映画の放映は中止となった。

――

元帥「貴様! …まさかここまでするとは」

提督「ですから、私には何を言っているのか」

元帥「とぼけるな! これを見ろ!」

OURTUBE上で流れる、一本の動画。確かに、戦中の鎮守府の日常を撮っている。
ユーザー名 wareaoba

提督「……これは」

元帥「やっと認めたか…この責任、どう取る」

提督「うちの重巡、青葉が撮ったものです。間違いありません」

元帥「……」

提督「彼女が変な感じはしていました……私の管理不足です。申し訳ありません」

元帥「…これは、艦娘のやったことなのか」

スイマセーン、オハナシヲ アノドウガノジッタイヲオタズネシタク

元帥「……外では、マスコミどもが騒いでいる。この動画は、今も世界中から、閲覧されている」

提督「……申し訳、ありません」

元帥「良い、疑ってすまなかった。そうか、艦娘か……君は早く、鎮守府に戻りなさい。仕事が入るかもしれない」

提督「……元帥殿?」

元帥「記者会見をする! あとこいつを、鎮守府にもどしてくれ!」

軍人「はい!」

――

男1「……これが、艦娘なのか」

男2「可愛い子ばっかじゃねえか」

男3「提督って、この子たちの指揮をとるんだろ……いいなぁ」


女1「どっかの女子高みたいwww」

女2「でも……なんか可愛いよね」

女1「……うん」

動画の流出により、世論は一変した。

ターミネーターや人造人間のような、危険生物と思われていた艦娘は、実際には、可愛らしく、人間らしい少女だった。

艦娘を世間に出すことへの反対運動の代わりに、艦娘の殺処分の反対運動が、各地で、しかも、前者よりも大規模で、行われた。

デモ隊1「艦娘も人間として、基本的人権の保障をするべきである」

デモ隊2「クローンといえども、生命を持つことに変わりはない」

デモ隊3「殺処分の判断は、理不尽この上ない」

この運動に対して、軍部は、殺処分に至った経緯を丁寧に公開した上、即行で殺処分を取り消した。

ただ、問題なのは、艦娘のこれからである。

――

講堂にて、提督が、軍部からの情報を艦娘に伝える。

提督「皆、喜んで欲しい。君たちの殺処分は中止になった!」

…ン? モウヨクワカンナイッポイ ドッチナノ?

提督「昨日、鎮守府の内部映像が流出した。それにより、君たちの本当の姿が明らかとなり、世論が変わった…今まではただの偏見だったからな」

提督「よって、君たちは後日、一般人として、生活することが可能となる。まだ詳細は決まっていないが、おめでとう」

…トリアエズ、オメデトウ ヨカッタネ ヨカッタヨカッタ…

提督「ゴホン、この件にあたり、一人の英雄を称えたい。青葉! 来い!」

青葉「えっ、え~?」

提督「いいからいいから」

青葉はとぼとぼと、提督の隣に来る。

提督「今回流出した映像は、青葉が製作し、故意に流したものと判明した。無断でやったのは感心しないが、彼女のおかげで、君たちは殺処分を免れたと言えるだろう」

…パチパチパチ…パチパチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチパチパチ

電「青葉さん、ありがとうなのです!」

多摩「青葉ちゃんすごいにゃ~」

古鷹「あおば~、すごいよ!」

パチパチパチパチ

青葉「う~、青葉のキャラじゃないのに」

提督「ハハッ、それなりことをしたんだ。素直に喜べ!」

その後、艦娘に、最低1年間の義務教育を受けた後に、日本人と同様の全権利が与えられることが、正式に決まった。

義務教育を修了した後は、艦娘たちは、それぞれの未来へと歩んでいった。

提督は、深海棲艦撲滅の実績から、海軍にて、それなりの地位を得た。

映像流出によって顔が知られている艦娘たちにとって、最初の社会生活は特に過ごしにくかっただろう。

そんなとき、鎮守府の仲間を頼っただろう。

生を共にした、仲間なのだから。

-FIN

これにて完結です。
レスをくださった方、ありがとうございます。

質問があれば、どうぞ。

本当に流出したのは青葉だったのか?


扶養を拒否した親たちはこの動画見てどう思ったのだろうな
あと殺処分の方向は日本だけでなく世界的なものだったのかな?

>>86
青葉です。伏線はいくつか張ったので、紹介を

>>61
青葉「カタカチカチ……カチッ……これで、完成かな」
>>62
カメラとパソコンを接続して、作業を開始する。
↑61は映画の編集の完成、62は流出用動画の作成の開始。


>>66
青葉「んー……時間かかるなぁ」
青葉「……ふう、見られなくてよかった。サプライズですから……」
>>68
青葉「それでパブリックにして……」
↑OURTUBE(もちろんYOUTUBE)への動画のアップ。その後、非公開を公開に設定変更。


閲覧、感謝です!

>>87
扶養を拒否した親たちの反応は、想像にお任せします。
ただ、艦娘は皆、自立しました。

殺処分の方向は、運動までおこったのは、日本国内が中心ですが、海外の軍部も、生物兵器である以上はと、反対でした。

レス感謝です。


面白かったです

最後の最後だけ駆け足過ぎた感あんね

>>90
うれしいです、ありがとう!

>>91
ダラダラ長くするのもなと思ったのですが、裏目に出ましたね。
助言、ありがとうございます。


後日談とか見てみたいな

>>93
まとまったら書こうとは思っています。
気長にお待ちください

後日談を落とそうと思います。

*注意
艦娘の終戦後を描くため、私の独自設定、妄想が非常に濃くなっています。

深海棲艦の撲滅から、早2年目の3月。全ての艦娘が、義務教育を修了した。そして社会に出た艦娘には、普通の日本人と同様に、苗字が与えられた。

提督は艦娘に対してお祝いをしたいと願ったが、艦娘は、今では普通の日本人。プライバシー保護の観点で、艦娘の個人情報が、提督に教えられることはなかった。

提督は国民栄誉賞を受賞し、軽く有名人となった。しかし、提督は、艦娘のその後を未だに知らない。

――

【後日談1】

春の半ば、3月。
提督は飲み会の帰り。

提督(二二〇〇か……二次会に行かなくてよかった)

提督(……眠い、帰ったら風呂入らずに即行で寝よう)ウツラウツラ

??「…スッ」

提督(隣に誰か? 席はガラ空きなのに……)

??「…司令官?」

提督「っ、んん?」

提督(あっ、もう司令官じゃないのに)

朝潮「やっぱり、司令官ですね! お久しぶりです!」

提督「お、おお。えーと、大海、朝潮か」

朝潮「はい! 『大海朝潮』です」

艦娘の苗字は、どれも、海にちなんだものだった。
朝潮型には、大海(ヒロミ)という苗字が与えられた。そして姉妹艦は、戸籍上は姉妹となった。

提督「ああ、俺も会えて嬉しいよ。今は、何をしているんだ?」

朝潮「はい、朝潮型みんなで一緒にアパート暮らしです。高卒認定試験を目指して、勉強するんです」

提督「高認かあ、ってことは大学に行くのか?」

朝潮「はい、やっぱり学歴は必要なので」

提督「そうだよなぁ……」

朝潮の持つ袋の中には、生物基礎、化学基礎、数学I、世界史A、日本史A、現代社会、コミュニケーション英語の教科書と高認試験の過去問。

教科書は限られた書店でしか、定価で手に入らない。
また、6人姉妹にも関わらず、全教科、一冊ずつしか、入っていない。

提督「……生活の方はどうだ?」

朝潮「はい…やっぱり進学となると、結構厳しいです。しかも私たち、まだ17歳の扱いなので、アルバイトもできなくて……」

艦娘の給金は、たったの1千万前後。戦争に勝ったとはいっても、人間でない相手との戦争のために、賠償金は発生しなかった。

この金額では、駆逐艦のような若い子には、生活は厳しかった。

ツギハ~テテテテス、テテテテス
朝潮「あっ、私、次なんです。…司令官、会えてよかったです」

提督「…俺もこの辺りなんだ。もう少し話したいし、見送るよ」

実際は、もう一つ先の駅が、提督の家の最寄りだったが、やっと会えた艦娘だ。これで別れるのは、心残りだった。

朝潮「あ、は、はい! あの…ありがとうございます」

提督「あと、せっかくだし、電話番号を交換しよう。次会えるかなんて、分からないしな」

それから、歩きながら、提督と朝潮たちの色々なことを話し合った。

朝潮姉妹は、義務教育を2年受けて、修了したてだということ。暮らしは始まったばかりで、ようやく、引越しの片付け、買出しが終わったということ。

提督は、国民栄誉賞を受賞したこと(朝潮は知らなかった)。プライバシー保護のために、艦娘と連絡が取れなかったこと。

そしてとうとう、朝潮たちの家まで来た。

朝潮「ご同行、ありがとうございます。あの……よければ、お茶でも飲みませんか?」

提督「良いのか? ならお邪魔するよ」

提督(事案とか……起きないよな)

チャリーン
朝潮「ただいまー!」

朝潮型「おかえりー(なさい)!」

満潮「ヒョイッ おつかれさま、って//////////!!!」

満潮は提督を見るなり、顔を赤くして部屋に戻る。

他の子たちも玄関まで来て、霞以外は、手を取って歓迎してくれた。
霞は満潮と同様に、部屋に戻ってしまった。

大潮「司令官! お久しぶりです!」

霰「……会えて、うれしい……」

荒潮「あら~。朝潮が提督を逆ナンパする日がくるなんて、うふふふふふ♪」

朝潮「ち、違うよ荒潮! たまたま電車で会って!」///

提督(ああ、成長したんだなぁ……)

提督(朝潮型も、もう高校生。かつての幼かった朝潮型では、もうない)

提督(そういえば、朝潮もやわらかくなったなぁ)

朝潮「ささっ、司令官。どうぞ!」///

朝潮は顔を真っ赤にしながら、提督を部屋に入れる。

満潮・霞「……」///

朝潮「今、お茶出します。麦茶ですが」

朝潮「あっ、これ、教科書だよ」

霞「スッ ガサガサ、ズラーッ」

大潮「うわぁー、厚い……」

霰「高認、一発じゃ厳しいよね……」

満潮「……こんな英文、読めないわ」

提督(チラッ……英文法がないのか、それは厳しいな)

満潮「……プイッ」///

提督「ああ、すまない、満潮」

満潮「……」

その後、朝潮の注いでくれたお茶を飲みながら談笑した。提督は、久々の艦娘との会話を、朝潮たちは、提督との会話を、懐かしく感じた。

朝潮「私と大潮、荒潮、霞は看護の専門学校に行こうと思っているんです」

提督「看護か、お前ららしいな。他の二人は?」

満潮「……私は、短大に行って語学を……奨学金を受けながら……」

霰「プログラムの専門学校に……」

提督「そうか、頑張れよ……(霰がプログラマとは意外だった)」

提督「おっ、もう二三〇〇か。じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。久しぶりに話せて楽しかった。ありがとな」

提督「あっ、それと満潮。英語をやるんだったら、文法書はもっといた方がいいぞ。英語の読み方だからな」

満潮「あ、ありがとう……」

朝潮「では、司令官、さようなら。またいつか、会いましょうね」

朝潮に見送られて、提督は再び帰路についた。

満潮「……はぁ~疲れた……」

大潮「なんでそんなに緊張してたの?」

満潮「だって……嫌味とか、色々言っちゃったし」

大潮「…司令官は多分気にしてないと思うけど」

満潮「でも……チラッ」

霞「チラッ」

満潮・霞「……」/////フルフル

大潮(震えてる……)

朝潮(これってもしかして……こ、恋!?)///

荒潮(あらあら、みんな可愛いわね~♪)

ルルルルルルルルル

朝潮「あっ、私が出るわ」

-FIN

【後日談2】

休日。提督はネットで、朝潮型の言っていた進路について、検索をかけていた。

提督(看護の短大って少ないんだな……情報もよく分からんし……)

提督(おっ、外語大にも短大が存在するのか)

提督(プログラムの専門学校って、パソコンが必要だよな。俺でよければ買ってあげたいが、インターネット環境とかになれば、家の問題だし……)

ピンポーン
提督「はいはーい」
ガチャ

赤城「提督! お久しぶりです!」

加賀「お久しぶりです」

提督「お、え、えーと……波中(ハナカ)赤城と波中加賀か」

赤城「はい。姉妹ではありませんが、同じ一航船として、同じ苗字をもらいました」

提督「そうかそうか。……まあ、よければ入れ」

赤城「失礼します♪」

加賀「お邪魔します」

――

赤城「引っ越し祝いで朝潮ちゃん家に電話したら、『司令官に会いました!』って嬉しそうに言ってきたんですよ」

提督「それで俺の住所が分かったのか」

加賀「それより、どうして私たちに連絡くれなかったのでしょうか? 気付いた時には貴方はいませんでした」

提督「あ、ああ…艦娘の個人情報はプライバシーの侵害と言われてな、俺でも教えてもらえなかったんだよ。直後は上官として、寝れないくらい慌ただしかったしな」

加賀「……そうだったんですか」

加賀(この人が見捨てるわけない。そう信じて、良かった)

提督「…それより、お前らは今、何してんだ?」

赤城「はい! 日弓連の弓道講師として、活動しています」

提督「おお! すごいじゃないか」

加賀「道のりは、相応に大変でしたが」

赤城「そうなんです。武器の矢と重さがまるで違って。普通の矢で練習をしようにも、級位を持っていないので初心者向けセミナーみたいのに通うしかなかったんです」

加賀「矢に慣れるのには多少苦労はしましたが、慣れたらすぐに段位を受け取れました」

加賀「しかし、段位を受けたからといって、すぐに講師になれるわけではありません」

赤城「はい。審査とか、登録とか色々あって……でも、薄給ですが、弓道の指導員として、今は活動しています。少々不安ですが、唯一の取り柄なので……」

提督「う~ん…皆、苦労してるんだなぁ……ん? 矢を買って、鎮守府の道場で練習とかは無理だったのか?」

赤城「それが……」

加賀「鎮守府は一般公開していないと、軍部の人に言われました。私たちはもう民間人ですから」

提督「……そうか」

提督(軍部も、もう少し柔軟な対応はなかったのか?)

加賀「ただ、さすがに講師の給料では生活できないので、アルバイトを複数やっています」

赤城「コンビニで面接を受けると、最初は雰囲気が良かったのに、履歴書を見た瞬間、店長が顔色を変えて不採用とかもありました。…ちょっと…悲しかったです」

加賀「…赤城さん、そろそろ」

赤城「あっ、もうそんな時間ですか。提督、色々話せて楽しかったです」

提督「おう、俺も楽しかったよ、じゃあな」

加賀「また、いつか、お会いしましょう」

二人は小走りで、玄関まで行く。

赤城「あっ、提督。国民栄誉賞の受賞、おめでとうございます!」
バタン

提督(ああ、そんなこともあったなぁ……)

提督にとって、国民として栄誉を称えられたことよりも、かつても艦娘と再会を果たせた喜びの方が、今は、大きくなっていた。

-FIN

今日の投下はここまでです。閲覧、ありがとうございます。

執筆完了・予定の艦娘
第六駆逐隊、瑞鳳、鳳翔、青葉、夕張

もし、希望の艦娘がいれば、書きこんでください。書けそうなら書いてみます。
安価ではないので、お気楽に


ドイツ艦は登場しないか……?

レス、ありがとうございます。

ぼのさん含め第7も、川内型も、設定はできています。
川内型は、脇役のみでの登場です。期待はずれでしたら、ごめんなさい

>>117
ドイツ艦よくわからないんです

【後日談3】
二一〇〇。提督はビールを飲みながら、テレビを見て、寛いでいる。

司会「本日の、マンデースペシャルは、ある、居酒屋さんのお話です。VTR、どうぞ」

**VTR**
「帰り道にい~い匂い。ふらっと寄ってみたくなるこの居酒屋さん『海守(ミモリ)』。中を覗くと、ちらほら、お客さんがいます。みなさん楽しそうです」

「女将さんの名前は『海守鳳翔』さん」

提督「!」

提督「鳳翔……よく、お店を持ちたいと言っていたが、夢、叶えたのか」

提督「おめでとう、鳳翔」

「朝の仕入れから、店構え、掃除、料理、片付けまで、全部鳳翔さん一人でやっています。すっご~い」

「そんな鳳翔さんに、色々と尋ねてみました」

鳳翔「えー、最初は中々お客さんが来てくれませんでした。一日のお客さんが0人なんてことも、よくありました」

鳳翔「最初の半年は、ずっと赤字でしたね。お店を構えるときにもいくらか借金をしてしまったので、本当に、苦しかったです」

鳳翔「でも……あるお客さんが会社の宴会に使ってくれて、それから、なんとか営むことができました。私のお店を利用してくださる、全てのお客さんに、感謝しています」

「――ありがとうございます。いや~素晴らしい。お話の最中に、私も煮物をひとくち。うん、これはおいしい。居酒屋『海守』の未来が、明るいとよいですね」
***

提督「カリカリ 住所はここか、ちょっと遠いな」

提督「近いうちに、行ってみたいものだ」ゴクゴク

-FIN

【後日談4】
提督は仕事の用事で、隣の県まで新幹線で行くこととなった。若い軍人対象の講演会だ。
講演会自体はそこまで長いものではなく、昼休みを2時間ほどもらった。

休憩時間中、見知らぬ街をぶらぶらと観光している。

??「しれいかーん!」

提督「!」

雷「やっぱり司令官ね! 久しぶり!」

提督「おおっ! 偶然だな! …お前らも」

電「司令官さん、お久しぶりなのです」

暁「司令官♪ ちょっとは大人っぽくなったでしょ」

響「久しぶり。急にいなくなるから、心配したよ」

提督「ああ、すまない。……これから、用事とかあるか? 無ければ話したいのだが」

暁「あー……ちょっと」

電「学校があります」

提督「学校? (もう昼だが)」

響「私たちは、定時制の高校に昼夜で通っているんだよ」

雷「義務教育中に受験したのよ」

提督「ああ、そうかそうか…学費とか、大丈夫か?」



*定時制の昼夜とは、昼と夜の両方に学校に通うことです。

暁「今は17歳だけど、もう少しで18歳になるわ。そしたら、学校を夜だけにして、昼はアルバイトをするの!」

提督「ああ、なるほど……賢いな」

提督(朝潮型もこうすればよかったのに……)

提督「……高校を卒業した後とかは、決まっているのか?」

電「電は……獣医さんに……一回受けてだめだったら、フリーターをやりますが」

雷「私は保母さんを目指して、専門学校に通うつもりよ」

響「まだ、明確に決まっていないんだ」

暁「私は、公務員の高卒枠ってのを狙うわ! 勉強しながらそっちの勉強も、ちょっとだけど始めているの」

提督「……お前らは立派だな」ナデナデ

暁「ひゃあ! ……ありがとう」

提督(皆、夢を持って、前に進んでいる)

雷「し、司令官。ちょっと学校があるから……」

提督「おおっ! 悪かった。そうだ、電話番号だけ交換しよう サラサラ ほい!」

雷「ありがとう、電話するわ。じゃあ、さよなら司令官!」スタスタスタ

電「あっ、みんな置いてかないで」タッタッタ

提督(……立派になったなぁ)

――

二二〇〇。提督は新幹線で自宅に帰ってきたばかりで、ソファーでボーっとしていた。

ルルルルルルルルル
ガチャ
提督「もしもし提督です」

雷「司令官? 広海(ヒロミ)雷です」

提督「おお、雷か。どうした?」

雷「いや、特に用事は……勉強でしばらく会えないけど、全部片付いたら、みんなで、どこかに行きましょう……ってね」

提督「うん……約束する。だから今は、学業に専念してくれ。……お前らの人生だからな」

雷「うん、ありがとう。……じゃあね」
ガチャ

-FIN

【後日談5】
まだ、隣の県にいた頃。
講演が終わり、その後の作業も終わり、一六〇〇。
せっかくだからここで早めの夕食をとってから、自宅に帰ろうと思っていた。

サイゼリヤに入り、ピザとドリアを頼む。

提督(久々に入ったな……中々うまい)

??「では、お先に失礼しまーす」

提督(ん、もしや)

提督「…海風さん!」

瑞鳳「はいっ!? ……あっ……」トコトコトコ

瑞鳳「提督、すっごい久しぶり。元気だった?」

提督「おう、元気だったよ。まさかこんなところで会えるなんてな……時間、大丈夫か? 少し話したい」

瑞鳳「うん♪ バイトも終わったから、大丈夫よ」

提督「そうか…ところで、お前たちは今、どうなんだ?」

瑞鳳「私は、バイト3つ掛け持ちして、フリーターをやっているの。祥鳳は思い切って、料理学校に通って……いつか二人で、料理店を開ければなと、姉妹で思っているんです」

提督「そうか……店ができたら、俺も通うよ」

瑞鳳「ふふ、ありがとう……そうだ、よければ、アドレス交換しませんか?」

提督「ああ、良いぞ」

二人はメアドを交換した。瑞鳳は、今時は珍しいPHSを使っていた。

提督「そうだ、鳳翔さんがお店を開いたらしい。テレビでインタビューを受けていたんだ」

瑞鳳「本当!? ……すごいなぁ、ちょっと、羨ましい」

提督「お前たちもいつか、そうなるよ。俺でよければ、相談にも乗る」

瑞鳳「……もしよければ、近いうちに、一緒に鳳翔さんのお店に、行かない?」

提督「え? ……結構離れているが、大丈夫か?」

瑞鳳「多少は、お休みもありますから」

提督「……なら、いつか行こう」

瑞鳳「約束ですよ♪」

二人は別れた。会話した時間は30分ほどだったが、提督は、色々な現実を、瑞鳳から感じた。

-FIN

今日はここまでです。次は長いです。

>>134
おつありです!

【後日談6】

鳳翔「……」

鳳翔「電気代、もったいないわね」

鳳翔「でも消しちゃうと、お店がやっているかわからないし……」

鳳翔「ふふ……お客さんなんて、もう、来ないわよ……」

チャリーン
鳳翔「! い、いらっしゃいませ……あっ……」アセアセ

提督「……今、やってますか?」

提督が、鳳翔さんの店『海守』にやってきた。

鳳翔「……提督。お久しぶりです」

提督「ああ、久しぶり」

鳳翔「あっ、どうぞおかけになってください」

赤城「鳳翔さん!」

加賀「お久しぶりです」

鳳翔「赤城に加賀……」

瑞鳳「こんばんは♪」

鳳翔「づほちゃんまで……」

瑞鳳「あっ、祥鳳は忙しいみたいなので来てません」

提督「急に押しかけて、申し訳ない。住所しか知らなかったので」

鳳翔「いえいえ……むしろ……うれしいです」

提督「まずは熱燗4本で。ほら、お前らも食え。俺のおごりだ」

赤城「はい、いただきます♪」

提督「……多少は遠慮してくれな」

鳳翔(ああ、なんだか懐かしい、この空気)

鳳翔(……あのころに、戻れたらいいのに……)

ピッ 
テレビの音が流れる。

提督「煮物を頼む」

瑞鳳「あっ、私もお願いします」

鳳翔「はい、煮物二つですね」

テレビ「ヒ素殺人事件について、加害者と被害者の関係が明らかになってきました」

鳳翔「」ピクッ

テレビ「加害者の女性は、男について、あの人にとっての私の存在価値は、私がしょブツ」

鳳翔「……別の番組にしましょう……」

赤城「殺人事件なんて」チビチビ

加賀「生命の尊さを、知らないのでしょう……」チビチビ

瑞鳳「こわ~い……」

提督「ここの近所だよな、鳳翔は、大丈夫だったのか?」

鳳翔「は、はい……特には」

提督「おっ、そうだ。この店がテレビで紹介されているのを、偶然見たんだよ」

鳳翔「ああ、はい。ありがとうございます」

赤城「えっ! テレビにも出たんですか?」

加賀「さすがに驚きました」

鳳翔「はい、一応……」

提督「……なんか、気分が悪そうだが、大丈夫か?」

鳳翔「はい、大丈夫です……」

瑞鳳「鳳翔さん! 煮物が!」

鳳翔「えっ? あっ! ……あー……」

煮物は焦げてしまった。元々量も、多く作っていなかった。

鳳翔「……ごめんなさい、煮物、失敗しちゃいました……」

鳳翔(もう、消えてしまいたい……)

提督「……少し、疲れているみたいだな」

赤城「トントン 加賀さん」ヒソヒソ

加賀「はい?」

赤城「料理がほとんどありません。流しもきれいですし」

加賀「……確かに、不自然ですね」

赤城「もしかして、お客さん、入っていないのでは?」

鳳翔「ビクッ……」

赤城「あっ……ごめんなさい、変なこと言ってしまって」

鳳翔「いえ…………本当のことです」

鳳翔「ここのところ、お客さんは全く来ていません」

提督「……」

瑞鳳「……」

加賀「……」

赤城「……」

鳳翔「さっきのヒ素事件の犯人。あれ、私の、お母さんみたいなんです」

・・・
・・

ガラッ
顔のこわばったオバサンが、店に入ってくる。

鳳翔「いらっしゃいませ~」

客1「鳳翔さん、熱燗追加で」

鳳翔「はい。少々お待ちください」

オバサン「鳳翔……お前」

鳳翔「はい? ……私でしょうか?」

オバサン「お前……ニヤァ」

オバサン「みなさ~ん! この女はあの艦娘ですよ!」

鳳翔「!」

オバサン「よく分かんない生き物を殺しまくった、血で汚れたあの艦娘なんですよ~!」

鳳翔「ちょ、ちょっと……」

客1「鳳翔さん、本当なんですか?」

鳳翔「え、ええ、はい。隠していたわけでは、ないのですが……」

オバサン「はあ!? 隠していたにきまってるでしょう! だって艦娘だってばらしたら、毒盛れないじゃあ~ん!」

客たち「ザワッ 毒?」

鳳翔「ちょ、ちょっと! 私は毒なんて盛りません! なんでそんな嘘を……」

オバサン「アハハハハハハ!! ……私はねぇ、」

オバサン「あんたの母親なんだよぉ~だ!」

鳳翔「!」

オバサン「あんたがあの時何をしたのか、どんな娘だったか、覚えているんだよ~!」

鳳翔「……すみません、私は覚えていません」

オバサン「キャハハハハハハ!! ぱぱぱぱぱぴぷぺぽぉ~レロレロレロレロ」プルプル

オバサン「いやっほぉ~う」ダダダダダダ

オバサンは店から走って出て行った。店内は、しんとしていた。

客1「……鳳翔さん、あなた、元艦娘だったのか……」

鳳翔「……はい、隠していたわけでは、ありません……」フルフル

鳳翔「言うタイミングを、計っていたんです」フル…ポロポロ

鳳翔「ごめんなさい……信じてくれたのに……ごめんなさい」ポロポロポロ

常連の客たちはその後、鳳翔さんを元気づけた。

翌日、近所で殺人事件が起きたと報道された。殺された男性は、ヒ素による中毒死。殺人犯と思われる女性は、その男性の夫だった。

そしてその女性は鳳翔さんの店に来た女性であり、あとで軍部に確かめに行ったところ、確かに、鳳翔さんの『産みの親』だった。

ただ、あのオバサンがなぜ、鳳翔さんを自分のクローンの子どもと見破れたのかは、謎だった。


・・
・・・

鳳翔「あの日から、私の店に、お客さんは来なくなった」

鳳翔「常連のお客さんも、来なくなっちゃった」

鳳翔「皆が私を避けようとする」

鳳翔「はあ、もう、疲れちゃた……」

鳳翔さんの手元には、艦娘の時の給金の残り、500万円が残っている。
店の借金は約1千万円。

一年間で義務教育をして、同時に料理も独学でやり。
経営なども勉強して、色んなことを考えて、程よい建物を探して。
そうして、店を構えた。
それが、あの数分で、壊されたのだ。

提督「鳳翔……俺でよければ、相談に乗ったのに」

鳳翔「もう、おわりなんです。こういうお店は信用が第一。それを、失ってしまったんです。……それに、嘘は、私もつきましたから」

加賀「……ちょっと、電話かけますね」

加賀「ルルルルル あ、もしもし隼鷹。急ですが、今から会いませんか? …はい、では、住所をメールで送ります。では後ほど。 プッ 川内型の皆さんを呼びました。……小さな、宴会でも開きませんか?」

赤城「それは良いですね! お金は、提督が出してくれますし」

提督「……おう、いくらでも食え!」

赤城「ありがとうございます♪」

鳳翔「皆さん……」

提督「鳳翔、煮物、作ってくれないか?」

赤城「私は焼き魚3尾で」

加賀「私もそれでお願いします」

鳳翔「……はい、承りました。ありがとう、ございます」

提督「ところで加賀、川内型は今どうしてんだ?」

加賀「このあたりに住んでいると聞いています」

加賀「川内は定時制高校と夜勤のパート」

加賀「那珂はアイドル事務所に応募したら書類審査で落とされ、今は立ち直り、通信制の高校に通いながらアルバイト」

加賀「神通も同じく、通信制高校に通いながらアルバイトをしているようです」

提督「那珂……まあ、元気そうで何よりだ」

鳳翔(……辛いのは、みんな同じなのでしょうか……)トントントン

――

川内「よー! って提督!! ひっさしぶりじゃん!」

那珂「提督! ……お久しぶりです、成海(ナリミ)那珂です」ペコリ

神通「お久しぶりです。お元気でしたか?」

その後、提督のおごりで、小さな宴会をした。『姦し』というように、酒の入った若い女の宴会は、非常ににぎやかだった(6割は川内の大声、夜テンション+酒)

〇〇〇〇。宴会は終了し、全員、帰宅した。
居酒屋『海守』が、ここまでにぎやかになったのは、初めてだった。

鳳翔は、静かになった店内を、感傷に浸りながら、ボーっとしていた。

鳳翔(皆さん、ありがとう……おかげでもう少し、がんばれそうです)

ガラッ
客1「……まだ、やっていますか?」

鳳翔「ええ、大丈夫です」

客1「最近ずっと来れなくて、ごめんなさい」

鳳翔「いえいえ、ご贔屓、ありがとうございます」

客1「……急なのですが、4日後、会社の飲み会がありまして、貸し切りで使わせていただきたいのですが……」

鳳翔「えっ! も、もちろん、大歓迎です。ありがとうございます!」

客1「それと……」

その客、ポケットの中から、小箱を取り出した。

客1「私と、結婚を前提に、付き合ってください!」

鳳翔「えっ…………えーと、その、えー……/////」

海守鳳翔、現在25歳。和服と落ち着いた性格から上に見られがちだが、まだ、華の20代である。

鳳翔「……私、艦娘ですよ……」

客1「関係ありません。私は、鳳翔さんの人柄に惚れました」

鳳翔「でも…………すみません、少し、考えさせてください」

客1「…ありがとうございます。良いお返事を期待して、待っています」

その客は酒を何杯か飲みながら鳳翔にアピールし、帰って行った。

鳳翔「まだ、初恋の人は……諦めていません」

-FIN

【後日談7】

一一〇〇。
提督は買い物に出かけ、アパートに戻ってきた。

漣「あ! ご主人様、おかえりなさい!」

隣人「ジー……」

提督「おわっ、漣、っバ、バカッ、少しは周りを見ろ!」

隣人「こんにちは」ニコッ

提督「あっ、こんにちは(笑顔が……)」

漣「それより、早く私たちを部屋に入れてください!」

提督「……ガチャッ ……いいぞ」

漣「さすがご主人様♪ 話が早い」スタスタ

潮「お、お邪魔しまーす」

曙「……」キョロキョロ

朧「お邪魔します」

提督「麦茶でいいな」

漣「キタコレ!」

曙「ちょ、ちょっと、……少しは静かに……」

漣「あっ、もしかしてぼの、照れてる?」

曙「て、照れてなんて……」

提督「ほい ゴトッ お前らは今、どうしてる?」

漣「全員、通信制の高校に通ってます。バイトもしています」

提督「ほう、卒業後は、何か考えているのか?」

漣「私は、プログラマになりたいのでそっちの専門学校に」

朧「あたしは看護の方に、興味があるな」

潮「わ、私も看護師に……」

朧「あ、そうだったの?」

潮「はい……」

漣「ぼのは?」

曙「……アニマルトレーナー」ボソッ

漣「ん? もっかい」

曙「あ、アニマルトレーナー」ボソッ

漣「もっと大きい声で」

曙「アニマルトレーナー!」

漣(キタコレ!)

提督「動物が好きなのか?」

曙「割と……」

提督「そうか……頑張れよ。俺にはこんなことしか言えないが……」

曙「……ありがとう」

漣「では、私たちはもう帰りますね」

提督「おおそうか、早いな」

漣「じつは、これから学校の登校日なんです。学校がご主人様の家の近くだったので、ちょっと寄ってみたんですよ」

提督「それは、わざわざ済まないな……なんで俺の住所がバレてんだ?」

朧「艦娘なら、みんな知っていますよ」

漣「艦娘のアナログネットワーク、甘く見ないでください♪」

提督(マジか……)

漣「では、私たちはこれにて、さようなら!」

朧「お邪魔しました」

潮「あっ、国民栄誉賞、おめでとうございます」

漣「ぼのー、行くよー!」

曙「……また会いましょう……提督」

提督(初めてまともに呼んでくれた)

潮「お、お邪魔しましたー!」

曙「ちょ、ちょっと、待ちなさいよ!」ダダダダダ

-FIN

閲覧してくれた方、ありがとうございます。

そろそろ新しい娘の執筆をやめ、今まで出てきた駆逐艦娘の未来を書こうと思っています。

レス、ありがとうございます。

考えていた設定を落とします。
非常に妄想が濃いので、閲覧にはご注意を。

【朝潮型のその後】

一年で全科目を終わらせ、40点ギリギリで、高卒認定を取る。勉強していた一年間、アルバイトはしなかった。

・朝潮、大潮、荒潮、霞
無事、全員同じ、3年制看護専門学校に入学。
別の職に行こうかと迷った時期もあったが、看護師として、就職。休みが中々取れないが、それなりにやりがいを感じている。

・満潮
偏差値としては低いが、外語短大に入学。卒業。
中学英語の塾講師として就活をした際、元艦娘、高認、レベルの低い外語短大、のため、相当苦労したが、なんとか就職できた。

・霰
プログラムの専門学校に入学。入学祝いに、提督にパソコン(ネットブック)を買ってもらう。アプリ開発のコースに進む。
グレーな企業に就職。3時間までは残業代なし、交通費支給なし。しかし、そこそこ楽しんでいる。


【暁型のその後】

定時制高校卒業後、それぞれの道へ

・電
獣医の道は、早めに諦めた。勉強、仕事に加えて国立理IIIの勉強は無理がありすぎた。
お金の流れに興味を持ち、商学部に進学し、企業に就職。

・暁
希望通り、公務員として採用される。

・響
図書館司書を目指したが、挫折。
書店の契約社員として、働く。

・雷
高校卒業後に、ホームヘルパーの資格を取得。介護の仕事に就く。

高校を卒業した時、約束通り、提督に水族館に連れて行ってもらった。


【綾波型 第七駆逐隊のその後】

・漣
プログラマになったが、社畜。しかし、それなりに仕事は楽しんでいる。

・朧
ホームヘルパー

・潮
看護師

・曙
アニマル専門学校に入ったが、動物の心、気持ちがわからない。
自分は親身に接しているつもりでも、動物には伝わらない。それが悔しくて、先輩や先生とのトラブルもあり、アニマルトレーナーの道を挫折した。
色々あった後、企業の事務職に就く。

【おまけ】

居酒屋『海守』にて

鳳翔「わざわざごめんなさい」

瑞鳳「いえいえ、それより、お話って何ですか?」

鳳翔「うん、づほちゃんは確か、お姉さんと一緒に、お店を持ちたいのよね」

瑞鳳「はい ……持てるかどうか、先が全く見えませんが」

鳳翔「……もしよければ、私のこのお店、づほちゃんに、あげようと思うの」

瑞鳳「えっ! ……でも、鳳翔さんは?」

鳳翔「ふふふ……」

鳳翔は、隠していた左手を見せる。
薬指には、銀色の指輪。

鳳翔「私、結婚することになったの」

瑞鳳「! おめでとうございます! それで、私たちにお店を?」

鳳翔「ええ、どうかしら?」

瑞鳳「もちろん、もらいます! ありがとうございます、鳳翔さん!」

鳳翔「ありがとう。小さいお店だけど、よろしくね」

瑞鳳「はい!」

-FIN

今まで閲覧してくださった方、心の底から、感謝申し上げます。ありがとうございます。

他にも、長門が会社を興したり、青葉が探偵をやっていたり、隼鷹がバーで働いていたり、という設定があったのですが、書くのはやめました。
アマチュア二次創作は、やめたいときにやめるのが一番だと思います。


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提督「艦むすの感情」
提督「艦むすの感情」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425806585/)

むやみに安価を取ったのが失敗だったかなと、今でも後悔している作品ですが、設定はこの話とつながるところもあります。

機会ができたら、艦娘がクローンという設定で、よりちゃんとした作品を書きたいなと思っています。また会えたら、再度よろしくお願いします。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月31日 (火) 21:54:19   ID: tCRecQtN

青葉はどうなったのかな?
提督と結婚したのかな?

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