宮森「私は矢野さんになら抱かれてもいいんですよ!」矢野「えっ」(43)

宮森「あー頭いた……」

佐藤「宮森さん、具合悪そうですけど大丈夫ですか?」

宮森「昨日ちょっと飲み過ぎちゃってね」

佐藤「宮森さんでも飲み過ぎることあるんですね」

宮森「普段はそんなに飲まないんだけどね」

佐藤「それがまた何故? 何か嫌なことでも……」

宮森「違う違う。昨日は久々に矢野さんと飲んだからさ。ついテンション上がっちゃって」

佐藤「はあ、それでですか」

佐藤「でもいいですねー先輩と二人で飲むなんて」

宮森「佐藤さんは前の仕事ではそう言うのなかったの?」

佐藤「全然なかったです。飲み会はありましたけど、付き合いで出席させられるのばっかりで」

宮森「あー」

佐藤「私も宮森さんとお酒飲みに行きたいです」

宮森「ああ、じゃあ今度行っちゃう? 安藤さんも誘って」

佐藤「え、いいんですか?」

宮森「もちろんだよ。そういえば二人の歓迎会的なことまだやってなかったしね」

佐藤「ありがとうございます、楽しみです」

矢野「おはよー……」

宮森「あっ、矢野さんおはようございます」

矢野「あっ……みゃーもり」

宮森「いま佐藤さんと今度飲みに行こうって話してたんですけど……」

矢野「…………」プイッ

宮森「あ、あれ、矢野さん?」

佐藤「どうしたんでしょうか」

宮森「わかんない……なにか怒ってるのかな」

佐藤「……もしかして、昨日飲んだときに何か」

宮森「怒らせるようなことしちゃったのかな」

佐藤「覚えてないんですか? 昨日のこと」

宮森「なんにも覚えてないんだよね」

佐藤「相当飲んでたんですね……」

宮森「2杯め飲んだとこまでは記憶あるんだけど」

佐藤「相当弱いですね!」

宮森「どうしよう」

佐藤「とりあえず謝ったほうがいいんじゃないですか」

宮森「そうだね……」

宮森「あ、あの矢野さん」

矢野「ん?」

宮森「ゆ、昨夜はすみませんでした……つい飲み過ぎてしまって……」

矢野「い、いや、いいよ、別に……」ドギマギ

宮森「あの、酔っ払ってのことなので、ゆうべ言ったりやったりしたことは本心じゃないですから!
   なにか矢野さんに対して変なことしてたら申し訳なく……」

矢野「本心じゃない?」

宮森「え、はい」

矢野「……ああ、そうなんだ、そう、ふうん」

宮森「や、矢野さん?」

矢野「ゴメン、今日は」

宮森「え?」

矢野「みゃーもりとは話す気になれないよ」ガタッ

宮森「や、矢野さん!」

佐藤「完全に怒ってますね」

宮森「ど、どうしよう……」

佐藤「今日は、って言ってましたから……明日になったら許してくれてると思います」

宮森「だといいけど」

佐藤「こういう日こそ飲んで忘れましょう」

宮森「そうだね……」



佐藤「すみません遅れました」

宮森「安藤さんは?」

佐藤「今日は残らないと間に合わないからって」

宮森「そっか。安藤さんだけで大丈夫かな」

佐藤「矢野さんも残られてましたから大丈夫でしょう」

宮森「ウッ……矢野さん……」

佐藤「心の傷は深そうですね」

宮森「なんで怒らせたのか解らないから怖い……」

佐藤「その傷を忘れるためにも飲みましょうか」

宮森「佐藤さんの歓迎会のつもりだったのに私の慰め会みたいになってごめんね」

佐藤「いえ、上司を支えるのも部下の役目ですから。ところでどこのお店に」

宮森「松亭ってとこだよ。私の友達がバイトしててね」

佐藤「へえ、宮森さんのお友達ですか。お会いするの楽しみです」

松亭

しずか「いらっしゃいませ……あっ、おいちゃん」

宮森「や、ずかちゃん」

佐藤「はじめまして、武蔵野アニメーションで制作進行を務めさせて頂いております佐藤と申します」

宮森「こちらこないだ新しく入った佐藤さん」

しずか「おいちゃん……や、宮森さんの高校の時の同級生だった坂木しずかです」

宮森「おいちゃんでいいよ。ずかちゃんは声優もやってるんだよ」

佐藤「へえ、そうなんですか。私リアルの声優さんって初めてお会いしました」

しずか「いやそんな声優ってほどじゃ」

佐藤「坂木さんはどんなアニメに出られてるんですか?」

しずか「カウンター席でいい?」

宮森「うんいいよ」

佐藤「あの」

しずか「はい生ふたつ」

佐藤「ありがとうございます」

宮森「よーし今日も飲むぞー」グビグビ

しずか「あんまり飲み過ぎちゃダメだよ、おいちゃん。弱いんだから」

宮森「わたしゃあよわくなんからいっ」

佐藤「もう呂律が怪しい!」

しずか「はあ、おいちゃんったらこれだから」

佐藤「いつもこうなんですか」

しずか「そうなんです。すぐ酔っ払って、いろいろと変なことを口走って」

佐藤「あー……」

しずか「それでいて本人は何も覚えてないっていう」

佐藤「なるほど」

しずか「すみません、おいちゃんがご迷惑おかけするかも」

佐藤「いえいえ、いつも私が宮森さんにご迷惑かけっぱなしなので、今日くらいは」

宮森「ぷはー」

佐藤「宮森さんもう4杯目ですよ」

宮森「まだまだらよ! 佐藤さんものんでのんで」

佐藤「はあ」

宮森「チューハイなんかじゃなくて焼酎ぐいっと行っちゃお、ほらずかちゃんも」

しずか「私は仕事中だから」

宮森「たのしく飲んれるのに仕事の話なんかしないれよ」ダンッ

しずか「ごめん……」

宮森「仕事……あああー……」クタァ

佐藤「どうしました宮森さん」

宮森「ああー私はもうだめだよお……もうやってけないよお」グスッ

佐藤「泣き上戸だったんですか」

しずか「こうなると長いですよ」

宮森「もう無理だよ……デスクなんて私には荷が重いよ」ベソベソ

佐藤「そんなことないですよ、みんな宮森さんのこと頼りにしてますよ」

宮森「頼られるのがプレッシャーなんだよ」グスグス

佐藤「でもそれに応えられるだけの能力はあるじゃないですか」

宮森「ないよぉー全然ないよぉー」フルフル

佐藤「宮森さんの今までの仕事ぶりが評価されて、デスクを任されたんだと思いますよ」

宮森「そうかなあ……」

佐藤「そうですよ。宮森さんなら出来るって、みなさん思ってるんですよ」

宮森「うう……ありがとう佐藤さん、わたしのことそんなに褒めてくれるの佐藤さんだけだよ」

佐藤「いやそんな」

宮森「実はね」

佐藤「はい」

宮森「私は佐藤さんになら抱かれてもいいと思ってたんだよ」

佐藤「えっ!?」

宮森「ほんとだよお、私佐藤さんのことずっとそういう目で見てたんだよ」

佐藤「え、ちょ、ちょっと……」

しずか「はあ……またこれかあ」

佐藤「え?」

しずか「おいちゃん、酔うとこうなっちゃうんです。誰かれ構わず抱いて抱いてって」

佐藤「そ、そうだったんですか」

しずか「まあ女の子相手にしか言わないのが唯一の救いなんですけどね」

佐藤「なるほど、じゃあ矢野さんはこれを真に受けて」

しずか「まさか何かトラブルが?」

佐藤「いえ、大丈夫です。今日はもう飲ませないほうがいいですね」

しずか「そうですね……おいちゃん、しっかりして。もう帰ったほうがいいよ」

宮森「私のこと心配してくれるんだね。私ずかちゃんになら抱かれても」

しずか「はいはい」

宮森「枕営業ってやつやってみない?」

しずか「おいちゃんがもっと偉くなったらね!」

翌日

宮森「あー頭いた……」

佐藤「宮森さん、具合悪そうですけど大丈夫ですか?」

宮森「昨日ちょっと飲み過ぎちゃった。ごめんね佐藤さん」

佐藤「4杯しか飲んでなかったですけどね」

宮森「今朝ずかちゃんからメール来てたよ。ゆうべ送ってくれたんだね」

佐藤「いえ、お気になさらず。近かったので大丈夫ですよ」

宮森「もしかしてゆうべ、佐藤さんに変なこと言ったりしなかった?」

佐藤「いえ……………………それはないですけど」

宮森「何今の長い間は」

佐藤「でもお酒は控えたほうがいいと思いますよ。また矢野さんの時みたいになったらアレですから」

宮森「そうだね……解った、もうお酒は飲まない。禁酒するよ」

佐藤「それが一番いいと思います」

矢野「おはようみゃーもり」

宮森「お、おはようございます矢野さん」

矢野「みゃーもり、○話の××のことなんだけどさ」

宮森「は、はいっ!」

佐藤(矢野さん、ちゃんと切り替えられてる……)

矢野「あ、佐藤さん」

佐藤「はい?」

矢野「昨日みゃーもりと二人で飲んだんだって?」

佐藤「は、はい」

矢野「何もなかった?」

佐藤「…………」

矢野「…………」

佐藤「……なかったですよ」

矢野「そう、ならいいんだけど」

安藤「佐藤さんいいなー、私も宮森さんと飲み行きたいです」

佐藤「宮森さん禁酒されるそうですから、しばらく無理でしょうね」

安藤「えー、そんな~」

――
――――

佐藤「宮森さん、あれからお酒飲みました?」

宮森「いや、一滴も飲んでないよ。代わりにドーナツ食べてる」

佐藤「どういうことですか?」

宮森「仕事でも飲み会とかないし、正直飲む機会もないんだよね」

佐藤「一人で飲んだりもされないんですね」

宮森「前はよくやってたけど。今は代わりにドーナツで」

佐藤「だからどういうことなんですか」

タロー「おーい、宮森」

宮森「どしたんですかタロさん」

タロー「三女の打ち上げ、今日やるってさ。大丈夫だよなー」

宮森「今日ですか、急ですね」

タロー「みんなの都合つくのが今日だけって。よっし、今日は飲むぞー」

宮森「打ち上げか~」

佐藤「…………」

佐藤「あの宮森さん、飲まない……ですよね」

宮森「いやあでも最初の一杯くらいは付き合わないと」

佐藤「一杯だけですよ、本当に一杯だけにしてくださいね」

宮森「? うん……」


佐藤(打ち上げの席……重役やよそのスタッフも大勢やってくる)

佐藤(そんな場で宮森さんを酔わせてしまったら取り返しの付かないことに)

佐藤(ここは私が……私が宮森さんを守りぬかないと!)

翌日

宮森「あー頭いた……」

安藤「…………」

タロー「…………」

平岡「…………」

宮森「ん?」

宮森「あの、どうかしましたか?」

平岡「いや……」

タロー「あっそうだー、自転車にカギかけるの忘れてたわー」

安藤「…………」

宮森「あれ? 佐藤さんと矢野さんは?」

平岡「…………」

安藤「あっ、ちょ、朝礼始まりますよ」

宮森「え、あ、うん……」

興津「おはようございます」

一同「おはようございます」

興津「まずお知らせがあります。
   ご存じの方もいらっしゃると思いますが、矢野さんと佐藤さんが辞められました」

宮森「えっ!?」

平岡「…………」

タロー「あー……やっぱり?」

安藤「…………」

興津「制作スタッフの調整については後ほど。それから宮森さん」

宮森「は、はいっ!?」

興津「朝礼が終わったら会議室の方に」

宮森「は、はい……」

会議室

興津「なぜ呼び出されたかは解りますね」

宮森「……もしかして、昨日の打ち上げのことでしょうか」

興津「そのとおりです」

宮森「やっぱり……」

興津「やっぱり、とは何です。あなたのせいで矢野さんと佐藤さんは……」

宮森「あの、実は私……何も覚えていないんです」

興津「宮森さん。あんなことをしでかしておいて覚えていないで済ませるつもりですか?」

宮森「ち、違うんです、私お酒飲むと記憶がなくなるみたいで……
   だから昨夜何があったのか私何も知らないんです、本当です」

興津「……わかりました。では説明します。昨夜の打ち上げのことを」

宮森「すみません……」

――
―――

三女打ち上げ

木下「えーでは、三女の最終話が無事に納品されましたことを祝しましてえ、乾杯!」

一同「かんぱーい!」

宮森「かんぱーい」グビグビ

佐藤(宮森さんが飲み過ぎないように私が見張ってないと……)

宮森「あー、仕事が終わった後のビールは格別だねっ」

佐藤「宮森さん、あんまり飲んじゃダメですよ。またこないだみたいに……」

宮森「いやいやちょっとくらいなら大丈夫だから」

佐藤「いやそのちょっとが危ないんですって」

渡辺「やあ宮森、おつかれさん」

宮森「あっ、渡辺さん」

渡辺「初デスクだったけどよくやってくれた。三女の完成は宮森の力あってこそだ」

宮森「いやあそんな、私なんてご迷惑おかけしてばかりで」

渡辺「確かに至らない部分がなかったといえば嘘になる。
   でも今日はそんなこと関係なしに労をねぎらわせてくれ。ほらまあ一杯」

宮森「はい、ありがとうございます」ゴク

佐藤「あっ」

渡辺「次のプロジェクトでも期待してるからな」

宮森「はいい、ありやとやす」

佐藤「もうヤバい!」

木下「やー宮森さん、デスクお疲れ様!」

宮森「あー監督ゥ」

木下「いろいろとありがとうね。ほらグラス貸して」

宮森「いやあ監督についでいただくなんて」

木下「せめてもの感謝だよ」トクトク

宮森「ありやとやす、じゃあいただきまぁす」ゴクゴク

佐藤「あああ……」

木下「おっ、いい飲みっぷり。じゃあもう一杯」

宮森「はいい」

佐藤「あー喉乾いたなー! あっこんなところにお酒がっ」バッ

木下「佐藤さん!?」

佐藤「グビグビ! うまい!」

宮森「佐藤さぁん、私のお酒ですよぉ」

佐藤「すみません、我慢できなくて!」

井口「うぇーい飲んでるー?」

宮森「あっ井口しゃん」

井口「なにー、宮森さんグラスからじゃん。どんどん飲まなきゃー」

宮森「あーわざわざ注いでいただいてありがとうございやす」

佐藤「あービールだー!」バッ ゴクゴク

井口「うおっ!?」

佐藤「ぶはあ!」

宮森「あっ、また佐藤さんに取られたぁ」

井口「こらこらー、人のお酒とっちゃダメっしょー」

佐藤「今日はもうとにかく飲みたいんです! もう瓶ごとください!」バッ

井口「うわっ」

佐藤「ゴクゴクゴクゴク!」

井口「すごい! 瓶ごとラッパ飲みしてる!」

木下「すさまじい飲みっぷりだなあ、佐藤さん意外と酒呑み?」

佐藤「ぶは! はい、実はそうなんです!!」

宮森「へえー、私もこう見えてお酒ちゅよいんですよお」


佐藤(正直きつい……けどこうして宮森さんに渡されるお酒は全部私が処理すれば)

佐藤(宮森さんがこれ以上酔っ払うことはなくなる……)

佐藤(私が頑張らないと!)

店員「芋焼酎のお湯割りお待たせしました~」

宮森「あっ、きたきた」

佐藤「それ私です!!」

宮森「えっ」

佐藤「ゴクゴクゴク!」

宮森「あーまた佐藤さんに……すみましぇん、同じのもう一つお願いします」

店員「はいかしこまりましたー」

佐藤(うう、これで何杯目だっけ……頭クラクラしてきた)

安藤「佐藤さん、顔色悪いですよ? 大丈夫ですか?」

佐藤「だ、だいじょうぶ……」

店員「芋焼酎のお湯割り……」

佐藤「私です!」ゴクゴク

宮森「あっまた……そうか、二つ頼めばいいんだ」

佐藤「えっ」

宮森「すみません同じの二つ」

店員「芋焼酎のお湯割り2つお待たせしましたー」

佐藤「2つとももらいます!」

宮森「ええ!?」

佐藤「グビグビ! ゴクゴク! ブハ!」

安藤「おお、すっごい飲みますねえ。よかったらこれも」

佐藤「え?」

安藤「美味しそうだなって思って注文したんですけど口に合わなかったんであげますチョコバナナサワー」

佐藤「う、もうこれ以上は……」

宮森「あっ、じゃあ私がもらうね!」

佐藤「なら私が飲みます!!」ゴクゴク

安藤「おおー」

佐藤「はあ、はあ……」フラフラ

佐藤「も、もうダメ……」ガクリ

安藤「あっ、佐藤さん酔い潰れちゃった」

宮森「これでやっと落ち着いて飲めるよー。お姉さん、生ビール」

安藤「いえーい、どんどこ飲みましょう宮森さん!」

宮森「どんどこ飲もう! どんどこどーなつどーんと飲もう!」

安藤「なんすかそれ! あっはっは!」

店員「お待たせしました~ビールです~」

宮森「はいこっちですー!」

安藤「じゃあ改めて乾杯ー!」

宮森「かんぱーい!」グビグビ

安藤「あっはっは!」グビグビ

――
――――

佐藤「う……」

佐藤「いけない、寝ちゃってた」

佐藤「ここは……はっ、打ち上げの席」

佐藤「宮森さん!」


宮森「ああー私はもうだめだよお……もうやってけないよお」グスッ

宮森「もう無理だよ……デスクなんて私には荷が重いよ」ベソベソ

宮森「頼られるのもプレッシャーなんだよ」グスグス

宮森「わかる? 安藤さん!」

安藤「さっぱりわかりません! あっはっは!」


佐藤「ああっもうすっかり出来上がってる!」

佐藤「安藤さんもだいぶアレな感じに!」

安藤「デスクなんて結局は制作進行と同じじゃないですかあ!」

安藤「今までと同じノリでやってればいいんですよお!」

安藤「適当にやってりゃ何とかなりますってえ、人生そういうもんなんですよお!」

安藤「私も今までだいぶ適当に生きてきたから分かるんですっ!」

安藤「あっはっは!」

宮森「うう、安藤さんすごいね、強いねえ! なんだか今日は眩しく見えるよ!」

安藤「どんどこ眩しがっちゃってください!」

宮森「安藤さん、私は、私は……!」

佐藤「あっ、み、宮森さ……」

宮森「私は安藤さんになら抱かれてもいいと思ってたんですよおお!!」

佐藤「あああ!」

一同「えっ? 何?」
一同「今の宮森か?」
一同「抱かれたいって聞こえたけど……」ザワザワ

佐藤「あ、ああ……取り返しの付かないことに」

宮森「そうれす、私は安藤さんに抱かれたいんれす!」

佐藤「宮森さん!」

一同「安藤に抱かれたいって」
一同「え? レズ? そっちの趣味?」
一同「男っ気がないと思ったら……」

宮森「ねえ安藤さん! 私を! 私を女にしてくりゃさい!」

安藤「えっ無理です……」

宮森「え」

安藤「私そういうのほんっと無理です……すみません……」

宮森「えええっ!」

宮森「なんでれすか! 私ずっと安藤さんに抱かれたいって思ってきたのに!」

安藤「いやマジ無理なんです」

宮森「安藤さん! 私のこと好きじゃないんですかあ!」

安藤「女同士とかマジないですよ男同士なら大歓迎ですけど」

宮森「安藤さん! 一回だけ! 一回だから!」

安藤「一回も二回もないですよ」

宮森「一回やらしてくれたらもーそれ以上しつこくしないからあ!」

矢野「みゃーもりぃ!」

佐藤「矢野さん!?」

矢野「あんた安藤さんに乗り換えるなんて絶対許さないからね!」

矢野「私の初めてあんたに捧げたの忘れたなんて言わせないよ!!」

佐藤「ヤっちゃってたんですか!?」

一同「えっ、レズの三角関係!?」
一同「矢野と宮森に肉体関係!?」
一同「まさかこんなカミングアウトが」ザワザワ

佐藤「あああ、もう……もう……」

興津「宮森さん!」

佐藤「はっ、興津さん!」

興津「お酒の席だからって言って良いことと悪いことがあります!」

宮森「安藤さん! 思い出に一回だけ!」

安藤「いやムリっす」

矢野「みゃーもりぃ! 私の純潔を返せ!」

興津「3人共、いいかげんに!」

佐藤「ち、違うんです興津さん」

興津「何がです」

佐藤「宮森さんは酔っ払ってるだけで、宮森さんは酔うと……」

興津「酔うと?」

佐藤「…………」

興津「?」

佐藤「うっ」

佐藤「おっおうっぷうっげえええええろげろげろげろげろ」

タロー「うわあ佐藤さんが吐いた!」

遠藤「興津女史にぶっかけ!?」

みどり「マジでゲロまみれっすね!」

絵麻「おいちゃんやっぱりレズだったんだ……」

円「うっ、もらいゲロ……」

山田「ひいい、こっちくんな!」

木下「みんな謝ろ? 興津さんに謝ろ? ね?」

矢野「みゃーもりぃ!」

宮森「安藤さん!」

安藤「ムリっす」

興津「…………」

佐藤「万策、尽きました……」バタリ

――
――――

興津「以上が昨夜の顛末です」

宮森「…………」

興津「本当に全く覚えていないんですか」

宮森「まったく記憶にありません……」

興津「矢野さんと肉体関係を持ったことも?」

宮森「はい、覚えていません……けど」

興津「けど?」

宮森「矢野さんと飲んだ日の次の朝、なぜか朝ごはんが用意してありました」

興津「間違いなく矢野さんですね」

宮森「あの……」

興津「なんですか」

宮森「矢野さんと佐藤さんが辞めたって本当ですか」

興津「本当です。二人とも今朝早くに退職届を持ってきました」

宮森「矢野さんは何で」

興津「人間関係に耐えられないからと」

宮森「佐藤さんは……」

興津「上司に大変な失礼を働いてしまったことと、そして」

宮森「そして?」

興津「上司を救えなかったことの責任を取ると」

宮森「…………」

興津「そう言っていました」

宮森「責任、なんて」

宮森「全部、全部私の酒癖の悪さが原因なのに」

宮森「どうして佐藤さんがそこまで……」

興津「それは、佐藤さんがあなたを大切に思っていたこと言うことです」

興津「上司として以上に、一人の人として」

興津「宮森あおいという人間を、尊敬していたということです」

宮森「…………」

興津「おそらくあの場で宮森さんの酒癖を知っていたのは彼女だけ」

興津「みなの前で宮森さんに恥をかかせてはいけない」

興津「宮森さんを、これからもムサニのエースでいつづけさせるために」

興津「宮森さんを守らなければならない」

興津「彼女はそのために体を張って……」

宮森「佐藤さん……」

宮森「興津さん、私……」

興津「なんですか」

宮森「私は佐藤さんになら抱かれてもいいです」グスッ

興津「待って」








      お       わ           り

おしまいです
宮森とのカップリングは誰がベストか寝ずに考えた結果葛城さんに落ち着きました

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