佳奈多「うわぁぁん!直枝ぇーっっ!」理樹「!?」 (29)

寮長室


カリカリカリ…

理樹「……はい、終わったよ二木さん」

佳奈多「ありがと、じゃあ次はこれお願い」

理樹「わかった」




カリカリカリ…

理樹「そういえばさ」

佳奈多「なに」

理樹「昨日聞いたんだけど近いうちに校内カラオケ大会があるんだって?」

佳奈多「……そうね、今年は去年より早めにやるらしいけど…まさかあなた出る気?」

理樹「まさか、言ってみただけだよ」

佳奈多「そう」



カリカリカリ…

理樹「あっ、そういえばさ、クドに伝言を頼まれたんだけど」

佳奈多「なに」

理樹「7時から9時まで葉留佳さんや小毬さん達を呼びたいんだってさ」

佳奈多「つまり部屋で遊ぶってこと?」

理樹「うん」

佳奈多「はあ……分かった、じゃあその間あーちゃん先輩の部屋にでも行ってるわ」

理樹「ありがとう、やっぱり二木さんは優しいね」

佳奈多「そりゃルームメイトのよしみだもの」

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プルルルル

クド・佳奈多部屋

クド「はいっ、もしもし!あっ、直枝さん、それで佳奈多さんはどうでしたか!?……はいっ、はい!わふー!」

葉留佳「おお、この反応はやりましたな!」

小毬「よ、よかったぁ…はるちゃん許可取る前に入っちゃうんだもん」

来ヶ谷「なぁに、クドリャフカ君のためなら大体通るさ」

西園「ちなみに今日は鈴さんを呼ばなくてよかったのでしょうか…」

葉留佳「まー鈴ちゃんはどうせ真人君達の部屋だろうしたまにはこんな日もいいじゃん?」

来ヶ谷「そうだな、つい可愛くていじり倒したくなる…そして気が付けば鈴君が半泣き……はぁん良い」

クド「それでは正式に許可をいただいちゃったことですしれっつ・ぱーてぃー!なのですーっ!」

葉留佳「いえーい!」

理樹・真人部屋

ガチャ


理樹「はぁ…疲れた…ただいま」

鈴「おかえりー」

真人「おー、頑張ったな。ねぎらいのトンカツジュースはどうだ?まだ開けてないぜ」

理樹「いらない」

謙吾「我らが理樹のご登場だ」

恭介「こんな風に帰ってくる理樹を見るとまるで…」

真人「早めに帰ってきたサラリーマンのお父さんを温かく迎える家族のようだな」

理樹「真人がそれ言うと別の作品だよ…」

謙吾「それはそうと、理樹、お前はカラオケ大会が開かれるのを知っているか?」

理樹「ああ、うん。それがどうかしたの?」

寝てたの

再開

謙吾「なんだ分からないのか?」

理樹「わ、分からない」

謙吾「一緒に出よう」

理樹「うわぁ、やっぱり!」

真人「あっ、ズルいぞ謙吾!理樹はずっと俺と組むって約束してたんだよっっ」

理樹「してないしそもそもやらないよ…」

鈴「真人と謙吾が組めばいいんじゃないか?」

謙吾「ふんっ、こんな奴とデュエットなんて俺は嫌だ」

真人「俺だってやだよ!」

恭介「こらこら喧嘩するな。それなら理樹と謙吾と真人のトリオでやりゃいいじゃねえか」

理樹「話聞いてなかったの?僕はやらな…」

恭介「いや待てよ…それなら俺も出てカルテットなんてのはどうだろう?」

真人「いやいや、それやるぐらいなら鈴も入れて……5人はなんて言うんだ?」

恭介「という訳で鈴……鈴?」

理樹「さっき出ていっちゃったよ」

真人「っておい!なんで止めておかねぇんだよ!?」

理樹「無理やりやらせても仕方がないじゃないか…本当は僕も嫌だったけど」

同時刻

クド部屋

来ヶ谷「そうすると乗客が言ったんだ『おい、コーヒーを忘れるんじゃないぞCAさん』ってね」

小毬「ほえ?なんで女の人が欲しいの?」

西園「来ヶ谷さん、やはり小毬さんにジョークを伝えるのは難しいかと」

来ヶ谷「う、うむ…」

クルクル

葉留佳「あははー!今日はいつもより多く回っておりまーす!!」

クド「わ、わふー!」

ガッシャーン!

葉留佳「わっ、ごめんクド公!大丈夫?」

来ヶ谷「どうした?」

クド「わふ…だ、大丈夫です、ちょっと転んだだけで……わふー?なんでしょうこれ」

西園「きっと転んだ衝撃で棚の上から落ちてきたんでしょう」

来ヶ谷「見たところCDのようだが…『マル秘』と、書いてあるな」

小毬「クドちゃんの?」

クド「いえ、知りません」

葉留佳「じ、じゃあこれはお姉ちゃんの…?」

来ヶ谷「よし、再生してみよう」

小毬「だだだダメだよぉ~~!!怒られちゃうっ!」

来ヶ谷「ッチ、仕方がない………明日校内放送で流してやろう」

小毬「えっ?」

来ヶ谷「いや、何も言ってないよ。さあ宴の続きと行こうじゃないか!」サッ

葉留佳「あっ、今CD隠した」

次の日

放送室

来ヶ谷「ふんふふーん」

ガラッ

来ヶ谷「むっ?」

理樹「や、急にごめん」

来ヶ谷「やあ、ここにいると良く分かったね」

理樹「そりゃ後ろ姿を追ってたらねえ。ところで凄く楽しそうだね」

来ヶ谷「当たり前だ。これから佳奈…私の…そう、私の作曲した物を再生するからな。もちろん全員聞いてはいないだろうが」

理樹「へえ!聞きたいなそれ」

来ヶ谷「ふっ、なかなかの出来だよ……ふふっ」

カシャン

理樹「ほら、せっかく放送するならもっと音量を上げようよ」

来ヶ谷「ふむ……最初に断っておくが『理樹君が上げる』と言ったんだぞ?」

理樹「へっ?」

グイッ

来ヶ谷「スタート」

カチッ

https://m.youtube.com/watch?v=0ZoBhYZfL4A

『ピクルスをおいしくするつくりかた』(二木佳奈多)

\テンテテテテンテテンテテン/
\テテテテンテテンテテンテンテテテ♪/

食堂

ザワザワ

恭介「あれ、理樹はどこへ行った?……ん?なんだこの曲…」

真人「いきなり音楽が…」




教室

葉留佳「そんでさー!……おっ?」

西園「……スピーカーから…放送室ということは来ヶ谷さんが掛けているのでしょう」



放送室

理樹「やっぱり、流石来ヶ谷さんだ、凄く上『初めて食べた~♪苦くて~苦いピクルス~♪』

理樹「!?」

来ヶ谷「ほう」

\甘くないから邪魔者~みたい~♪/

食堂

恭介「へえ、よく分からんがなかなかいい曲じゃないか」

謙吾「なっ、なんだとぉおお!?」

真人「こ…こいつはいったい……」

鈴「どうした二人とも?」



教室

葉留佳「や、やはは…はるちんこういう時どんな顔したらいいのか分からないですヨ」

西園「引きつりながら笑っているじゃないですか。……それにしてもなるほど、マル秘とはこういう…」



放送室

理樹「なっ、なんで!?この声はどう考えても二木さん……っ」

来ヶ谷「………理樹君、今すぐ身支度を整えろ、早く脱出しないと私達はどうなるか分かったものではない」

理樹「えっ?」



佳奈多「………」プルプルプル


食堂

\要らないピクルスは~まるで~私のようだね~♪/

ザワザワ

恭介「えっ、これ風紀委員長が歌ってるのか?」

「あれっ、これ二木さんの声じゃない?」

「言われてみればそうかも…」

謙吾「正直まだ疑っているがこの声はどう考えてもそうとしか…」


教室

「これはスクープだ!あの鬼の風紀委員長が歌ってるぞぉ!!」

「「「はっはっはっはっはっ!」」」

葉留佳「………」

西園「………」

放送室

バンッ

佳奈多「いったい誰ですか!!この音楽を今すぐ止めなさいっっ!!」

シーン

佳奈多「……いない…?」

風紀委員「ぷっ…委員長…クスクス……とにかく音楽を止めましょう……ぶふぅっ」

佳奈多「……そうね」

ピッ

佳奈多「いい?これをやった犯人を見つけ次第捕まえなさい。生死は問わないわ」

風紀委員「「了解です!………ぷぷっ」」

佳奈多「くっ」




隣の空き教室

来ヶ谷「なっ?」

理樹「『なっ?』じゃないよっ…これどうするのさ!?僕はともかく来ヶ谷さんだとばれちゃうんじゃないの…っ!?」

来ヶ谷「上手くやっておこう…しかしこれはまぁ……うん、ケアを頼む」

理樹「なにの?」

来ヶ谷「時がくれば分かる」

廊下

トコトコ

佳奈多「……」

「あっ、我らが歌姫のご登場だぞ…」

「シッ…殺される…っ!」

「二木さんって怖いイメージがあったの。けど案外、可愛い人なのかもしれないの…」

「クスッ…でもあの歌詞どれだけピクルスに情熱があるのよ…っ」

ザワザワ

佳奈多「……」

寮長室

理樹「たまげたなぁ…でも二木さん何のためにCDなんか……」

ガラッ

理樹「わっ」

佳奈多「………」

理樹「………ごくり」

佳奈多「ううっ…」

理樹「……?」

佳奈多「うわぁぁん!直枝ぇーっっ!」

理樹「!?」



佳奈多「それで放送室行っても誰もいなかったの…」

理樹「そ、そう…」

佳奈多「もういや!廊下とか歩きたくない!もう学校休みたいっ!」

理樹「いやそれはダメなんじゃないかな…」

佳奈多「……直枝も聞いたんでしょ?」

理樹「う、うん…学校中に流れていたからね」

佳奈多「ぐすっ…」

理樹「ほっ、ほら泣かないで!とても上手だったじゃないかっ!」

佳奈多「そう……でももはや風紀委員としての権威はガタ落ちよ…残り僅かの勤めを笑われながら過ごすんだわ…」

理樹「困ったなぁ…いったいどうしたら……」

謙吾『カラオケ大会が開かれるのを知っているか?』

理樹「そっ、そうだ!ねえ二木さんっ」

佳奈多「にゃによぉ…?」

理樹「カラオケ大会だよ!歌で馬鹿にされるなら歌で見返せばいいんだ」

佳奈多「う、歌で…?」

理樹「そう。ほら自信を持って!せっかく綺麗な声してるんだからっ」

佳奈多「でも…」

理樹「それに可愛いよ!」

佳奈多「………」

佳奈多「………やるだけやってみる…」

理樹「そのいきだ!」

カラオケ店

佳奈多「おはようさえ~♪」

理樹「はいっはいっ!」シャンシャン




理樹部屋

恭介・真人・謙吾・理樹「「「ららら~♪」」」

鈴「ふぁぁ……zzz」







大会当日

体育館

真人「遂にこの時が来たな…」

理樹「うん…っ」

恭介「よっしゃあ!俺たちの練習の成果を見せてやろうぜっ!」

皆「「「いやっほーう!」」」




佳奈多「すぅ…はぁ……うぅ」

理樹「やっ、二木さん」

佳奈多「あ…直枝…私やっぱり怖いわ…」

理樹「なぁに二木さんならきっと出来るさ!」

佳奈多「でも…」

理樹「あんなに練習したんだ、ここで逃げちゃまた笑われるだけだよ!僕がついてるからっ」

佳奈多「でもあなた棗さん達と歌うんでしょう?」

理樹「まあ成り行きでね…でも、二木さんのことを心から応援してるよ」

佳奈多「…ええっ」

あーちゃん先輩「ええ~ではこれからみんなが待望のカラオケ大会を始めまーす!司会は私あーちゃん先輩でお馴染みの…」




恭介「俺たちは3番手だそうだ、一応舞台の横に並んでおこう」

理樹「うっ、うん……」

真人「んだぁ?ビビってんのか理樹」

理樹「あはは…二木さんにはああ言っておいて情けないなぁ」

謙吾「二木だと?あいつも出るのか」

理樹「まあね」




鈴木・田中「「迷えばい~い♪」」

あーちゃん先輩「はいっ!マッド鈴木&バイオ田中さん、どうもありがとうございました!」

パチパチパチ

あーちゃん先輩「さてお次は今話題の4人組!バンド名は『リトルバスターズ!』」

パチパチパチ!

恭介「どうも!ありがとう!」

キャー!

理樹「やっぱり恭介は凄い人気だね」

謙吾「そうでもないぞ?理樹を呼ぶ声も聞こえる。主に男から」

理樹「……はっ?」


あーちゃん先輩「では演奏してもらいましょう!曲名は?」

恭介「sherry!」

ジャンジャジャジャンジャジャジャ

「「「sherry ! sherry baby♪」」」


葉留佳「ヒュー!ヒュー!」

来ヶ谷「美魚君、カメラ」

西園「はい」

小毬「まるでお父さんとお母さんみたいだねぇ」




……
……………



あーちゃん先輩「うんうん、良かったよ!はい拍手~」

パチパチパチ

あーちゃん先輩「え~次は~~えっ、これマジ!?」

ザワザワ

あーちゃん先輩「つ、次は……二木佳奈多さんです…」

「なん……だと…?」






「やだウソォ…」

「ほらムービーで撮ってようぜ!」

クスクス

佳奈多「………」

あーちゃん先輩「き、曲名は…?」

佳奈多「……raison」

https://m.youtube.com/watch?v=viJ3MGkrwtY
『raison』(二木佳奈多)

テンテンテテテンテテン

佳奈多「……すぅ」

佳奈多「目覚めの朝、籠の中で君だけを見ている♪」

「う、上手いぞ!」

佳奈多「おはようさえ君を傷つける道具でしかない~♪」


理樹「二木さーん!頑張れー!」

「いい声だ…」

「い、いいぞー!」




佳奈多「世界は綺麗でとてもやさしい~♪」

「「はいっはいっ!」」

真人「……恭介、こりゃ負けたな俺たち」

恭介「ああ…」




佳奈多「僕たちが手に入れた理由だよぉ…♪」

パチパチパチッ!!

あーちゃん先輩「どうもありがとう!もう一度大きな拍手を!」

佳奈多「……」ニコッ




廊下

トコトコ

佳奈多「………」

「おお!あそこにいるのアイドルの二木じゃね?」

「おっ、俺サイン貰ってくる!」


「あっ、あの!写真お願い出来ますか!?」

佳奈多「わ、私?ええ、いいわよ」

パシャッ



寮長室

理樹「………」カリカリカリ

ガラッ

理樹「わっ」

佳奈多「………」

理樹「やあ二木さん!昨日は凄かったね!みんな二木さんのことで…」

佳奈多「うわぁぁん!直枝ぇーっっ!」

理樹「!?」





理樹「……で、結局人気になったらなったで権威がなくなったと…」

佳奈多「取り締まる人がみんな『歌ってほしい』って…」

理樹「やれやれ…元に戻るのにかなり時間がかかりそうだ……」




終わり

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