理樹「多分ルート間違えた」 (81)

インタビューより一部抜粋

____「Refrain」の終盤に、病室で理樹と鈴が2人だけで終わるエンディングが挿入されていますよね?もしかしたら、あそこでストーリーが終わる予定だったとか?

麻枝:世間では、俺があの寂しいエンドで終わらそうとしたのを、都乃河君が止めたってことになってるんです(笑)
都乃河:違いますよね。以前のインタビューで「麻枝さんの初期案ではもっとひどい結末だった」みたいな話をしたら、ユーザーさんが病室エンドと結びつけちゃったみたいで。そもそも本当の初期案はあんな生易しいものじゃなかった(笑)
麻枝:時期でいえば青春とかテーマを考える以前の、もっともっと初期の案だよね。しかもメインルートというよらサブルートの話で。誰か1人がみんなを皆殺しにして回るとか(笑)そういうひどいネタもあったというだけの話です。




誰か1人がみんなを皆殺しにして回るとか(笑)




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夕方

理樹部屋

理樹(今日、僕はまた例の病の発作で倒れてしまった。たまたま近くに来ヶ谷さんが居てくれたのは良かったんだけど……)

恭介「理樹………理樹?」

理樹「……はっ!え、えっと……なに?」

真人「次、理樹の番だぜ」

理樹「え?あっ……」

理樹(真人が中心に置かれたトランプの山を指差した。そうだ、今は大富豪の真っ最中だったのだ)

謙吾「どうした理樹?来ヶ谷に看病してもらってきてからずっとぼうっとしてるじゃないか」

理樹「あっ、えっと……」

理樹(謙吾の言う通り僕は来ヶ谷さんと別れてからずっと放心状態になっていた。それは多分来ヶ谷さんの看病が原因だったのだろう。誰だって目覚めに美人が薄いシャツ姿でこちらを見ていたらドキッとするはずだ。それがスタイルもバツグンだというんだ。頭がパンクしてもおかしくない)

恭介「フッ…とうとう理樹もそういう時期になっちまったか」

理樹「そ、そういう時期って?」

恭介「恋さ。理樹、お前は来ヶ谷に恋をしているんだ」

理樹「えっ?」

理樹部屋前

『どうした理樹?来ヶ谷に看病してもらってきてからずっとぼうっとしてるじゃないか』

『あっ、えっと……』

来ヶ谷「…………………」

来ヶ谷(看病した後、少年が去った部屋を見ると、彼の携帯が床に落ちていた。せっかくなので届けようとここまで来たが……どうやら面白い話が聞けそうだな。少し傍聴してみようか)

『フッ…とうとう理樹もそういう時期になっちまったか』

『そ、そういう時期って?』

『恋さ。理樹、お前は来ヶ谷に恋をしているんだ』

『えっ?』

来ヶ谷「!」

来ヶ谷(恋……恋だと?あの少年が私に?……馬鹿な……いや、しかし……)

『なにィ!?り、理樹が来ヶ谷にときめきを感じているのか!!』

『ち、ちょっと待ってよ!』

『ってことはまさか理樹はあの来ヶ谷に惚れちまったってことなのかぁぁあ!?』

来ヶ谷「…………っ」

来ヶ谷(いやいや、いやいやいや……慌てるな来ヶ谷唯子。お前が取り乱すなどあり得ないことだ。これくらいのことで動じるんじゃない。……だけど、もしも理樹君が本当に私に好意を抱いているならば……わ、私は……)

訂正

理樹部屋前

『どうした理樹?来ヶ谷に看病してもらってきてからずっとぼうっとしてるじゃないか』

『あっ、えっと……』

来ヶ谷「…………………」

来ヶ谷(看病した後、少年が去った部屋を見ると、彼の携帯が床に落ちていた。せっかくなので届けようとここまで来たが……どうやら面白い話が聞けそうだな。少し傍聴してみようか)

『フッ…とうとう理樹もそういう時期になっちまったか』

『そ、そういう時期って?』

『恋さ。理樹、お前は来ヶ谷に恋をしているんだ』

『えっ?』

来ヶ谷「!」

来ヶ谷(恋……恋だと?あの少年が私に?……馬鹿な……いや、しかし……)

『なにィ!?り、理樹が来ヶ谷にときめきを感じているのか!!』

『ち、ちょっと待ってよ!』

『ってことはまさか理樹はあの来ヶ谷に惚れちまったってことなのかぁぁあ!?』

来ヶ谷「…………っ」

来ヶ谷(いやいや、いやいやいや……慌てるな来ヶ谷唯湖。お前が取り乱すなどあり得ないことだ。これくらいのことで動じるんじゃない。……だけど、もしも理樹君が本当に私に好意を抱いているならば……わ、私は……)

理樹部屋

恭介「そうか理樹……俺は前々から思っていたんだ。理樹は恋をするべきだと!恋に苦しみ、恋に傷つくことで人は成長する……恋愛が理樹を大人の男にするんだよ!」

理樹(恭介達の暴走はなおも続いた)

謙吾「となると、これから俺たちは全力で理樹の恋を応援することになるな。ふっ、任せろ。こう見えても巷ではロマンティック大統領と呼ばれている」

真人「クッ……納得いかねえが理樹が幸せになることが俺の幸せだ。ここはおとなしく来ヶ谷にゆずってやるとするか……」


来ヶ谷(……も、もしも少年が告白するとしたらいつになるのだろうか?いや、こういう時は私から言った方がいいのか?理樹君はこういうのは苦手だろうからな。だが私からいくとしてなんと声をかければいい?やっぱりシチュエーションが大事だな。例えば放課後の空き教室で待たせたり……ううむ、悩みどころだ)


恭介「よぅし!そうとなると早速作戦を立てよう!作戦名はオペレーションラブラブ……」

理樹「だから待ってってば!」

恭介「……理樹、いい加減水臭いぞ。こういう時は黙って俺たちの協力を……」

理樹「そうじゃなくてさ……」

理樹「僕は別に来ヶ谷さんのこと好きって訳じゃないから」

恭介「えっ?」

謙吾「うん?」

真人「はっ?」

来ヶ谷「……………え」

理樹「確かに来ヶ谷さん、とっても美人だしスタイルもいいし中身だってとてもクールだよ。……でもなんというか合う気がしないんだよね。いつも心の奥まで見透かされてるようで怖いし……。それよりどっちかっていうとまだ他の女の子の方が……」

来ヶ谷「あっ………え……?」

真人「は、ははは……なんだよ!やっぱり理樹にそんな気なんかねえんじゃねえか!」

来ヶ谷(…………………)

恭介「そ、そうだったのか……い、いや悪い。勝手に盛り上がっちまったな!」

謙吾「勘違いしてしまったようだ……そうか。理樹は来ヶ谷がそこまで好きだという訳でないのか…」

理樹「いや、嫌いって訳じゃないんだけどさ……僕なんかとは釣り合わなさそうっていうか……」

真人「まあまあ、いいじゃねえか!ほーら!早く続きやろうぜ!」

理樹「う、うん……」






来ヶ谷「………………………」

次の日



チュンチュン……

理樹「ふぁああ……」

「…………」

理樹(いつもの朝の静けさ、いつもの鳥の鳴き声、いつものベッド。今日もいつも通り変化のない朝……のはずだった)

理樹「ん……?」

理樹(目を開けるとベッドの横からパラパラとなにか粉のような物が降ってきていた。よく目を凝らしてみるとそれは木の破片のようだった)

理樹「………………」

理樹(何故こんな部屋の真ん中から木屑が落ちてきたんだろう。気になったので起き上がって落ちてきた先の天井を見ようとすると、それより先に驚きの光景を目撃してしまった)

真人「……………」

理樹「……………っっ!?」

理樹(真人が天井に刺さっていたのだ。文字通り物凄いパワーで上の壁に直接ぶっささったかのようだった。頭が見えず、首から下が垂れて吊られている)

理樹「あ……あ……」




「うわぁぁあああああああああ!!」

続く(∵)



理樹部屋前

警部「ゆっくり降ろせよー!」

警部A「はい!せぇのっと!」

ドスンッ

警察B「ええと……朝起きたらこうなっていたって事でいいんだね?」

理樹「はい……」

警察「そうか……それじゃまた後で詳しく聞くけどそれまで学校の中で待機しててくれるかな」

理樹「はい……」

理樹(……ここまで警察の人に何を聞かれて何を言ったかまったく覚えていない。ありえない所からありえない死に方をした友人を前に頭の中が真っ白になってしまったのだ)

恭介「……………理樹」

理樹「あっ、恭介……」

理樹(後ろから恭介が歩いてきた。沈んだ顔を見るに恭介も既に事情を把握しているんだろう)

恭介「理樹……突然こんなことになって驚いただろう……」

理樹「…………」

恭介「食堂に集まろう。みんな待ってる」

理樹「分かった………」

理樹(食堂に着くとみんな暗い顔をしていた。だが、なんとなく僕より余裕がありそうなのは気のせいだろうか?)

恭介「もう、改めて言う必要もなさそうだがあえて言わせてもらおう……真人が死んだ」

「「「…………………」」」

恭介「聞く所によると他殺……明らかに誰かが真人を死に追いやった形跡があるという」

理樹(この話も警察の人から聞いたことだ)

恭介「ここからは俺の推理だが……赤の他人が夜の学校に忍び込むことは難しい。つまりこの学校の中に真人を殺した犯人がいる」

理樹「なっ!!」

クド「わ、わふー!?そ、そ、それは……」

恭介「取り越し苦労ならそれでもいい。だけど、もしも本当にいるとするなら!俺はその犯人を確実に探し出す!!」

謙吾「俺も恭介に全力で協力するつもりだ」

理樹(謙吾も腹を決めたように言った。どうやら僕の元に来るのが遅れた理由はその事について話し合っていたからだったようだ)

鈴「真人………」

西園「充分注意しましょう。鍵はかけ忘れないようにしなくてはなりませんね」

小毬「う、うん……」

クド「わふー……非常にデンジャラスなのです……!」

葉留佳「だ、誰か事態が収まるまで泊まらせてくれない?」

来ヶ谷「…………葉留佳君は私の部屋に来るといい」

葉留佳「あ、ありがとうございやす姉御!」

理樹(このみんなの会話に少し違和感があった。何故みんな真人の死についてあまり触れようとしないのだろうか?現実から目を離しているようにも見えないし……あまり悲しんでいないみたいだ)

恭介「とにかく。今はお互いの安全が第一だ。なにか不審なことがあればすぐに俺に電話してくれ。いいな?」

謙吾「それと理樹、お前は俺の部屋に来い。あの部屋はしばらく使えないはずだ」

理樹「う、うん……」

理樹(色々あったがとにかく今日は学校に行けそうもない謙吾の部屋で休ませてもらおう……)



謙吾部屋

謙吾「理樹、いつまでもそうしている訳にもいかないだろう。これでも食え」

理樹「あ……ありがとう謙吾」

理樹(ベッドに倒れながら考え事をしているとあっという間に時間が過ぎていった。頭が興奮してなかなか気づかなかったが、いつの間にかもう夜になっていた。そして謙吾の差し出すおにぎりを見ると急に腹が減ってきた。ああ、真人。あんな生命力の塊のような君は本当にいなくなってしまったのか)

謙吾「理樹……実際俺もあいつが死んでひどく動揺している……恭介の話によるとまだ犯人はこの学校の中にいるかもしれない。今日だって何食わぬ顔をして生活していたかもな。……だが、お前が俺の隣にいる限り、必ず死なせはせん。そして必ずやこれをやった犯人を見つけ出してやる」

理樹「謙吾………」

謙吾「だから今は休め理樹……大丈夫だ」

理樹(本当は謙吾も悲しいんだろうけど彼は心と僕より強い人間だ。そんな謙吾と恭介が力を合わせればきっと犯人は見つかるだろう。そして、僕はその犯人にどんな感情を抱くだろうか?……そんなことを考えながら今日も夜は更けていく)


………………………………………………



……………………………


深夜

謙吾「~~~」

理樹「………………」

理樹(夜。話し声がして目が覚めた。外はまだ真っ暗だ。声が謙吾1人のものしか聞こえないということは携帯で誰かと話しているんだろう。こんな時間にいったい何を……?)

謙吾「……NPCの暴走だと?馬鹿な……確かに自我を持っている奴らの中で真人にあんなことをする奴はいないが……ああ……いや確かにその通りだが……」

理樹(真人のことについて何か話をしているらしい。だが専門用語ばかりで何を言っているのかいまいち掴みづらい)

謙吾「ああ。世界をやり直すにはまだ早い……原因を解明出来なければまた同じことが起こるかもしれん。やり直して真人に真相を聞こうも記憶がなければ今あるかもしれない証拠を消すことになるからな」

理樹「……………」

理樹(どうやら聞き続けたところで意味が分かることもなさそうだ。とりあえず今はとても眠い……何を考えるにしても明日になってからでないと……)



食堂

理樹「あっ、謙吾!」

謙吾「あ、ああ……理樹か……すまん、1人で先に出てしまったな」

理樹「まったく、もう心配させないでよ!真人の次に謙吾までいなくなってしまったら……!」

理樹(今日、朝起きると謙吾がいなくなっていた。部屋のどこにも見当たらなくて、また真人のように殺されていたらと思うといてもたってもいられずすぐさま恭介に電話した。そして既に謙吾は食堂にいると受けて走ってきたのだ)

恭介「……まあそう責めないでやってくれ。謙吾も悪気があった訳じゃないんだ」

理樹「そ、それならいいんだけど………うん?」

理樹(とりあえず落ち着こうと席に座ると、若干集まっている人が少ないことに気づいた)

理樹「あれ……小毬さんとクドは?」

鈴「…………………」

葉留佳「り、理樹君……」

謙吾「それが……とても言いにくいんだが……」

恭介「……殺された。昨日の夜、毒を盛られたようだ」

理樹「な……なんだって……?」

今日再開じゃオラァァァアア!!!!

恭介「昨日の深夜のことだった。二木が夜のパトロールから自分の部屋に帰ってきたら2人がテーブルで倒れていたという。最初は寝ているのかと思ったが、何度声を掛けても、何度肩を揺さぶっても、何度揉みしだいても応答がなかったのでとうとう脈を触ると……動いていなかったらしい」

鈴「ううっ……小毬ちゃん……クド……!」

理樹(鈴がその言葉をきっかけに静かに泣いた。他のメンバーも項垂れている……誰も慰める元気すらないのだ)

恭介「まだ完全に決まった訳ではないが2人が倒れたのは恐らくハッピーターンに含まれた青酸カリが原因だ。可哀想に……ハッピーターンの粉と見分けが付きにくかったんだろう」

理樹(なんと残虐な犯人なのだろうか。敢えてあの2人が大好きなお菓子で暗殺するとは。しかし、ここで一つ疑問が浮かんだ)

理樹「で、でも犯人はどうやって2人に青酸カリを盛ったの?ハッピーターンに細工するタイミングなんてどこにあるのさ」

謙吾「あるんだ……充分すぎるほどにそのタイミングはあった……」

理樹「け、謙吾?」

謙吾「……その部屋のテーブルにはカップが『三つ』あったんだ!」

理樹「!!」

理樹(カップが三つ……これが意味することは2つ。一つは犯人はクドに招かれるほど仲がいいということ。そしてその人物は小毬さんとクドの共通の知り合い……つまり犯人は……)

恭介「犯人はこの中にいるかもしれない」

鈴「!?」

葉留佳「えっ……!」

謙吾「……………」

来ヶ谷「うむ………」

美魚「………っ」

理樹「………………ゴクリ」



謙吾部屋

謙吾「落ち込むな……とは言えないが、こういう時こそ気をしっかり持たねばならない」

理樹(解散してまた謙吾の部屋に戻った。たとえ今日も授業があったとして、それを受けている余裕なんてない)

理樹「謙吾……陳腐なことを言うようだけどこれは夢か何かじゃないのかな?」

謙吾「………悪夢だ……それ以外の何者でもない」

理樹「それが醒めるなら何を捧げてもいい……うう、くそ……」

理樹(現実離れしている癖に五感はとても正常だった。ハッキリとした意識があった)

謙吾「………俺はこれから剣を振る。1人でも大丈夫か?」

理樹「うん……行ってらっしゃい。気をつけてね」

謙吾「ああ……気をつけて……」

食堂

理樹(とりあえず腹に何か入れなければならない。いつまでも絶望していられない。頭を活性化させて現実と向かい合わなくては)

佳奈多「………直枝ね」

理樹「えっ!」

理樹(後ろから急に声をかけられた。二木さんだ)

理樹「ふ、二木さんも今から食事?」

佳奈多「ええ……一緒に食べる…?」

理樹「……そうだね」

理樹(二木さんも見るからに元気をなくしていた。無理もない。2人の姿を直接目の当たりにしたんだから)




佳奈多「私が帰ってきた時、まだカップのココアが暖かかったのを覚えているわ。もう遅い時間だったから2人は寝てしまったのかと思ってたんだけどね……」

理樹「なんで犯人は2人を狙ったんだろう」

佳奈多「さあね。ロクでもないことは確かだわ。あの2人が誰かに怨みを買う理由なんてあるはずないじゃない」

理樹「……二木さんは犯人を……」

理樹(僕がこう言いかけた時、二木さんはサンドウィッチを静かに置いてこう言った)

佳奈多「捜すわ。徹底的に捜し出して理由を問い詰める」

理樹「そうだよね……」

佳奈多「風紀委員長として、2人の友人として、なんとしてでもこのままでは終わらせない。そしてそれはあなたも同じ気持ちのはずよ」

理樹「………そうだね」

理樹(真人の死も、もしかしたらこの事件と関わりがあるかもしれない。だとしたら犯人は三人の仇だ)

佳奈多「あの時の女子寮で事件が起きたということは犯人は恐らく女性ね。この時点でかなりの数を絞り込めているわ。……お手上げになったら生徒全員を拷問してでも見つけだす!必ず……必ず……必ず……!」

理樹(二木さんの覚悟は相当なものだった)



謙吾部屋

謙吾「そろそろ寝るか…」

理樹「うん……」

謙吾「明日の朝、恭介の部屋で鈴と俺たちの4人で話し合うことになった」

理樹「分かった……」

理樹(何をするつもりかは知らないけど、もし真人がまだ生きていたらそのメンバーに入っていたんだろう)

理樹(本当なら寝る間も惜しんで今すぐ犯人のことについて2人で語り合いたいところだが、そんなの出来るわけがなかった。……恭介の言う通りなら身内を疑えと言うものだからだ。二木さんが言った犯人の大前提を考えれば容疑者は数人に絞り込まれるのだ。そんな単純なことでさえ今は考えたくなかった。そして、そんな時こそ人は深い眠気に襲われるのだ。まるでそこから逃げ出すように)

理樹「おやすみなさい」

謙吾「ああ、おやすみ……」

急に予定が入ってあまり更新出来なかった
次回最終回のつもり

次の日



恭介部屋

理樹(日曜日。いつもなら何をして過ごそうかと嬉しい悩みを抱える日だが、今回の悩みは最悪だった。それはテーブルを囲うように座る他の三人も同じ気持ちであることはその顔から伺える)

理樹「話ってなに恭介?なんで僕らを集めたの?」

恭介「それはお前らが犯人ではないと分かるからだ。その上で集めた理由はな……犯人の目星がついたんだ」

鈴「な、なにぃ!?」

恭介「あくまで推測だがな……」

理樹「そ、それは誰?」

理樹(気は進まないが聴くしかない。だってあの恭介の事だ。余程の確信がない限り滅多なことは言わないんだぞ)

謙吾「……………」

恭介「小毬とクドが気を許し、夜の女子寮にいてもおかしくない。この条件に当てはまるのは……三枝、西園、来ヶ谷の3人だ」

鈴「なっ……バ、バカ言うな!なんであいつらが!」

理樹(鈴の言う通りだ。たとえ3人にそれが可能であったとしてどうして2人を殺さなくちゃならないんだ)

恭介「動機か……動機は分からない。だが他に考えられるか?」

恭介「恐らく小毬達の事件の犯人はリトルバスターズの中にいる。俺も理樹も謙吾も女子寮なんて忍び込むなんて不可能だ。仮に入ったところで2人と茶を飲むなんて違和感しかない。となると女子メンバーしかいない。鈴はそんなことが出来る奴じゃない。それは俺が一番よく分かっている」

謙吾「…………本当にそうだとしてこれからどう動くつもりだ」

恭介「尋問する。本当ならこんなことしたくもない事だが、こればっかりは警察に任せられない……放っておいたらまた次の犯行が起きるかもしれない」

理樹「つ、次の犯行?」

恭介「ああ。だっておかしいだろ?真人があんな死に方をしてまだ数日も経たないうちに次は小毬とクドがやられた。偶然にも被害者と容疑者はどちらもリトルバスターズだ。俺が推測するに、近いうちにまた新たな殺人が行われる……それも被害者はリトルバスターズのうちの誰かだ」

理樹「か、考えすぎだ!」

恭介「だったらいいんだ……犯人も俺の疑っている3人のうちの誰かでなく、全く知らない赤の他人ならどれだけいいことか……!」

恭介「だけどこんなの疑うなって言う方がおかしい!よく連続殺人が起きる小説では登場人物は皆、第三の犯行が起こるまで自分達のすぐそこで異常な事態が起きていることに気付いていない。だが、そんなの不自然だと思っていたんだ……1回目で驚き、2回目に更に恐れ、3回目でやっと規則性に気付く。普通なら少し考えれば2回目で気づけるはずだ。そう謎の殺人が周りでポンポン起こってたまるか!」

理樹「つ……つまり真人の死と2人の事件は偶然じゃないと……」

恭介「ああ……どうやったかはまだ分からないが同一人物であることは確実だ」

理樹(僕もその事については少なからず考えていたが、確かによくよく考えてみればその方が十分確率は高いだろう)

恭介「尋問は今日の夜に決行する。3人に考える余地を与えたくないので俺が直接行うとしても他の2人は誰かが引き止めなくてはならない」

謙吾「今日の夜というと、恭介が女子寮の部屋に行くのか?」

恭介「ああ。二木に犯人追求の為だと頼んだらあっさり許可してくれたよ。それも3人分な」

理樹「3人……てことは僕らも!?」

恭介「ああ。最初に向かう奴は俺が、もう1人は謙吾、更にもう片方は理樹と鈴が足止めをしておいてほしい」

謙吾「確かにもしその中に犯人がいたとしてもそれなら殺される心配はないかもしれないが……」

恭介「言っておくが俺はマジだぜ。大丈夫、あくまでまだ推測なんだ。全員違う可能性だってある」

鈴「みんなは疑いたくない……だからこそ早く犯人じゃないと証明したい!」

恭介「ああ、分かっているとも……だから次の犯行が起こる前に行動を起こそう」

理樹(その時の恭介は優しい目をしていた。だが、具体的な尋問がどんなものなのかは聴けなかった)



女子寮廊下

理樹(廊下は静かだった。誰1人横切らない。まあ、それはそれで誰にも驚かれずに済むという事だが……人気がないというのもそれはそれで不気味だった)

鈴「なあ理樹……」

理樹「どうしたの?」

理樹(横で歩く鈴が顔をまっすぐ向けたまま話しかけてきた)

鈴「恭介は私達に3人を部屋に縛りつけろと言ったが、具体的にどうすればいいんだ?」

理樹「そう深く考えなくていいよ。ただその人が他のところに行こうとするのを止めるだけでいいんだから」

鈴「たとえば?」

理樹「そうだな……楽しい話や、愉快なことをして気を引くとかかな。それなら強引じゃないし怪しまれないでしょ?」

鈴「そうか……じゃあ理樹」

理樹「ん?」

鈴「来ヶ谷の場合はどんな話がいいんだ?」

理樹「……ううん……それが問題だね」

理樹(僕らは2人で不安になりつつも来ヶ谷さんの部屋のドアにノックをした)

来ヶ谷『開いてるよ』

理樹・鈴「「!」」

理樹(アポはとってあるので当たり前だがドアの向こうには確かに来ヶ谷さんがいた)

理樹「……行こう鈴」

鈴「…………っ」

理樹(返事の代わりに頭の鈴がチリンと鳴った)






ガチャ

来ヶ谷「や……ようこそ我が家へ」

理樹「……お、お邪魔します……」

鈴「邪魔するぞ……」

葉留佳部屋

葉留佳「き、恭介さん……なんですカ?話って……」

恭介「なに、緊張することはない。ただ三枝が大丈夫か様子を見に来ただけだ」

葉留佳「……はるちんは大丈夫っスよ……大丈夫っス……」

恭介「どうした、なにを震えている?」

葉留佳「いや、何でもない……ですヨ」

ガタッ

恭介「………様子がおかしいぞ。おい、なんだ。どこへ行く?」

葉留佳「……お茶を用意してきます……いえ、恭介さんは座ってて下さい……やはは……」





西園部屋前

コンコンッ

謙吾「…………」

コンコンッ

謙吾「おーい、西園。いないのか?」

謙吾「………おかしいな。連絡はしたはずなんだが……」

『……んん……』

謙吾「なんだいるのか?入るぞ」

ガチャリ





佳奈多部屋

佳奈多「すぅ……すぅ……」

パチッ………

パチッパチッ…………

来ヶ谷「やあやあ、2人ともよく来たな。さあそこのベッドに腰掛けたまえ」

理樹「う、うん……」

理樹(たとえ事件がなかったとしても来ヶ谷さんを前にすると緊張する。何から何まで考えが見通されているようで、少しでも隙を見せると僕が心の中で秘めているものを一個ずつファイルに分けて読まれている気持ちになるのだ)

鈴「く、くるがや……あのだな……」

来ヶ谷「おっと、話し合いをする前にクッキーはいかがかな?ちょうどこの間、親が送ってくれたんだ。外国の珍しい物だからな。誰かと分かち合いたい所だったんだ」

理樹(そう言って来ヶ谷さんは机の引き出しからお菓子が入った缶を取り出した)

来ヶ谷「さ、どうぞ」

鈴「あ、ありがとう……」

理樹「じゃあ僕も一つもらうね…」

理樹(今日の来ヶ谷さんはとても機嫌が良さそうだった)

来ヶ谷「それで話とは?」

理樹「ああ、それは……その……」

鈴「………」

理樹(いざという時に限って頭が上手く回転してくれない。横の鈴に助けを求めようと思ったが、鈴もだんまりを決め込んでいる)

来ヶ谷「……どうした」

理樹「いや、その!ほら……犯人を探そうかと思って、来ヶ谷さんに……意見を聞きたいんだ」

鈴「!?」

理樹(鈴が驚いた表情で僕を見る。しかし、この案は咄嗟に出て来たにしては悪くないと思う。むしろこれくらいしかわざわざ出向いて話し合う話題もないだろう。それに来ヶ谷さんならちゃんと真剣に僕らと向き合ってくれるはずだ)

来ヶ谷「ふむ……いや、なるほどな。そういうことか。なら少し私の持論を展開しようじゃないか」

理樹(案の定、食いついた)

来ヶ谷「そうだな。私はまず今あるだけの判断材料で容疑がかかる人物をパッと考えてみた。まずは私を含むリトルバスターズの女性だな。恭介氏はああ言ったが犯人のセオリーとして第一発見者の二木女史を見落としている。彼女も一番疑うべきなのに……おそらく気が動転していたんだろう。そして笹瀬川佐々美。2人に近づけるのはこのくらいだな」

理樹「そ、それで?」

来ヶ谷「そうだな。次に消去法で可能性が低い者を容疑から消していこうか。まず二木君。彼女は第一発見者だ」

来ヶ谷「だが彼女は明らかに違う。夜間のパトロールで寮母さんや他の出歩いていた生徒からのアリバイがある」

来ヶ谷「よって排除だ」





……………………………………………………………………





佳奈多部屋

パチパチ………

佳奈多「……う、ううん……?」

佳奈多(明日の一斉検挙に向けて準備を終えて早めに寝ておこうと思ったが、なにやら異様な臭いが鼻を刺激した。この臭い……とても身に覚えがある……確かとても危険な……)

パチパチパチッ!

佳奈多「…………ハッ!」

佳奈多(それを理解してからベッドから飛び起きるのに時間はかからなかった)

佳奈多「も、燃えている!ああ!そんな!」

佳奈多(よく見ると既に辺り一面が炎に包まれている。なぜここまで気づけなかったのだろうか?いや……まさか!)

佳奈多「ま、まさか……ここまで読んで私の元に訪れたの!?」

佳奈多(だが、確かにあの人から渡された糖分を補うためのアメを舐めてから急に眠たくなった。それは全て私を手遅れにさせるためだったのだろうか?もうベランダの方は火が強すぎて近寄れそうにない。ならば……!)

ガチャガチャ!!

佳奈多「!?」

佳奈多(バカな。ドアが開かない。外側から細工をされているのかどうしても外に出れない)

佳奈多「ああ、まさか……!!」

佳奈多(だとすると2人を殺したのは………私もあの人の標的だったというのか)

佳奈多(燃え盛る炎の中、私は犯人が分かっても混乱した。何故あの人がみんなを殺す必要があったのか!しかしこの答えは出る時間はなさそうだった。部屋に充満する煙が私の思考力をだんだん奪っていくのだ……ああ、何故あなたは……何故……)

佳奈多「…………………………」

バタッ

来ヶ谷「次に葉留佳君だ。葉留佳君に直接のアリバイはないが、運のいいことに無実を証明することが一つあった。それは事件が起きる10分ほど前に風呂から上がるところを寮長が見ていたということだ。二木女史が言うところによれば2人の飲んでいたココアはまだ温かかった……つまり犯人は事件が発覚する直前に逃げたのだ」

来ヶ谷「だから葉留佳君も排除しよう」




……………………………………………………………………


恭介(三枝はふらふらと電気ポットの方に歩いて行き、そして何かを思い出したかのように今度はすぐ横の食器棚に視線を落とした)

葉留佳「そうだったそうだった……カップカップ……」

ガラッ

クィンッ

ドスッ

葉留佳「………………」

恭介(妙な音がした。三枝が食器棚の扉を開けた後に何か針金が勢いよく伸びた音と、何かが何かに突き刺さる音が聞こえた)

恭介「おい三枝、今のはなんだ?」

三枝「………………」

恭介「おい、三枝……っ」

バタンッ

三枝「あ……あ……」

恭介「なっ!?」

恭介(三枝が仰向けに倒れた。受け身を全く取らずに俺の前へ。そしてその理由は胸に突き刺さった金属の棒のせいだろう)

恭介「さ、三枝ーーっっ!!」

来ヶ谷「最後に美魚君だ。美魚君は簡単だな。何故なら彼女はココアが苦手なんだ。と言っても私しか知らない話だがね」

来ヶ谷「とりあえず彼女も排除して構わんだろう」



………………………………………………………………………



美魚「んん…………!」

謙吾「………!!」

謙吾(驚きを言葉に発するより早く俺はハメられたのだと悟った)

謙吾「くそっ………」

謙吾(西園はベッドに括り付けられ、その頭の横には目覚まし時計の代わりにダイナマイトが添えてあった。そのダイナマイトにはご丁寧にデジタル式のタイマーが設置されており、そのカウントダウンは減り方からして残り3秒に迫っていた。何より最悪なのは、タイマーから伸びるワイヤーを目で伝っていくと俺が捻ったドアノブにたどり着くということだ。引き金を引いたのは俺だった)

謙吾「すまない西園。恭介達を信じるしかない」

西園「…………………」

謙吾(西園は静かに頷いた。それから後の表情は不自然なほど眩ゆい光に掻き消されて見えなかった)

ガタッ

理樹「ん……」

理樹(たった今、地面が大きく揺れた気がした)

鈴「地震か?」

来ヶ谷「さあね……」

理樹(その時、なんとなく来ヶ谷さんの口角が上がった気がした)

来ヶ谷「とにかく、私の持論からすればみんな怪しくない訳だ。鈴君はそもそも毒を用意出来るようには見えないしね」

理樹「つ、つまりリトルバスターズから犯人はいないってことだよね!」

鈴「一安心だ」

来ヶ谷「む?何を言っている。1人いるじゃないか」

理樹「えっ?」

来ヶ谷「クドリャフカ君と小毬君に信用されていて、アリバイもなく、女子寮にいる人間が……リトルバスターズの一員であり、葉留佳君でも鈴君でも、美魚君でもない者が1人残ってるじゃあないか」

理樹「な……なに言ってるの……?」

鈴「く、くるがや?」

来ヶ谷「はっはっはっ……察しが悪いフリか?やれやれだな」

理樹(そう言って来ヶ谷さんはゆっくりと椅子から立ち上がり、スカートに手を伸ばした)

来ヶ谷「こんな事もあろうかと『菓子』を用意しておいてよかったよ」

理樹(そしてその手はナイフを掴んで出てきた)

理樹「くっ、来ヶ谷さ……うっ!?」

理樹(その時、突然足が痺れた。血流が止まっていたからではない。一歩も自分の意思で動かせなくなってしまった)

鈴「……ッ!」

理樹(隣の鈴も同じ風に足を痙攣させている。先程のクッキーに仕掛けがあったのか!)

理樹「くそう!なんで来ヶ谷さんが!」

来ヶ谷「すまないな理樹君……鈴君を始末するのに邪魔があっては困るんでね」

鈴「まさかくるがやが……みんなを……?」

理樹(来ヶ谷さんは鈴に答える代わりにニヤリと笑いかけてみせた)

まだ完結してないけれど次回作は理樹×恭介の理樹誘い受けがいいと思います

来ヶ谷「もう全員退場してる頃だろうな。いや、どうしてこうなったのか……私にも分からんよ」

理樹「ど、動機は!?」

来ヶ谷「動機?ああ、そうだな……確かに君らには分からないな。よし、せっかくだし話してやろう」

理樹「グッ……」

理樹(そうこうしている間に痺れは全身へ達していた。バランスを崩してベッドからずるずると滑るも受け身を取る姿勢さえ出来ず、そのまま地面へ激突するしかなかった。来ヶ谷さんは気にしていないのかそのまま話を続けた)

来ヶ谷「あれは理樹君の部屋に……いや、正確には部屋の前に訪れた時のことだった」

来ヶ谷「君が看病された晩、部屋に忘れ物をしていたので渡してやろうとドアに手をかけると話が聞こえた」


『恋さ。理樹、お前は来ヶ谷に恋をしているんだ』

『えっ?』

理樹「…………!」

来ヶ谷「私は恥ずかしながらもときめきを感じたよ。ああ、そうか、理樹君と私が恋愛沙汰に陥るのかと」

来ヶ谷「正直、あそこまで動揺したのは初めてだ。一瞬で色んな考えが頭を巡った」

来ヶ谷「………だが、その後、君はなんと言った?」

理樹「そ、それは……」


理樹『僕は別に来ヶ谷さんのこと好きって訳じゃないから』


来ヶ谷「君は他の女の子の方がいいと言った。このままではせっかく芽生え始めた恋が栄養を与えられず枯れてしまう……だからそこで私は名案を思い浮かんだんだ」

来ヶ谷「だったら殺せばいいじゃないか!」

鈴「!」

来ヶ谷「そうさ!理樹君が振り向かないなら理樹君に私しか見れなくすればいい!他の娘をみんなみんな消してしまえばもう私と君しかいないんだ!」

理樹「狂ってる……」

来ヶ谷「狂気に触れねば見えぬ到達点がある」

来ヶ谷「安心したまえ、君にこんな姿を見られたところで記憶を消せば元通りだ。もちろん私以外の女性の記憶もないがね」

理樹「な、何を……!?」

理樹(記憶を消すだと?そんな芸当すら出来るのかこの人は!)

ダダダッ

来ヶ谷「む……?」

バンッ

理樹(突然後ろから扉を乱暴に開ける音が聞こえた)

恭介「理樹!鈴!大丈夫か!?」

鈴「恭介!ダメだ!」

来ヶ谷「ははははっ!」

恭介「し、しまっ……!」

理樹「や、やめろーーっっ!!」

ドスッ

理樹(止められなかった。来ヶ谷さんは持っているナイフを恭介に勢いよく投げ飛ばした。その刃先は無慈悲な程、正確で恭介の腹部に深く食い込んだ)

恭介「ガッ……ち、血迷ったか……!!」

来ヶ谷「慌てるな恭介氏。私が心から満たされたと感じたら”主導権”などすぐにくれてやる。だから今はそこで大人しくしておいてくれ。用が済んだら『やり直し』をかける」

恭介「ま、待て……!」

来ヶ谷「さて……」

理樹(そして来ヶ谷さんは後ろにあるタンスの引き出しを漁った。普通タンスは服を仕舞うはずなのに、来ヶ谷さんのそれは不気味な金属のぶつかる音を響かせた)

来ヶ谷「んー……」

来ヶ谷「……鈴君、プラスとマイナスならどちらがお好みかね?」

理樹(来ヶ谷さんは二本のドライバーを手にし、引き出しを閉めた)

鈴「くっ……殺せ!」

理樹(鈴の手が細かく揺れるのは筋肉の痙攣か、はたまた不安の表れか。とにかくこのままでは最悪の結末が起こる。ええい、これがもしもゲームだとしたら!どこかで未来が決まる選択肢があったとすれば!僕はどこでルートを間違えたというのだろうか!)

来ヶ谷「君で最後だ」

恭介「ぐっ……もはやここまでか……!」

理樹「…………っっ!」

理樹(いいや、まだ終えない!)

理樹「来ヶ谷さん!」

来ヶ谷「…………なんだ?」

理樹(来ヶ谷さんはいい加減疲れたといった感じで僕に聞き返した。どういう訳か直感でもう来ヶ谷さんは今の僕に興味を失っていることが分かった。先の言う通り僕の記憶を消すということは、来ヶ谷さんは新しい僕に心を注ぐ訳で、つまり、過去のものである僕などその辺の石ころ程度にしか思っていない)

理樹(ということはもう来ヶ谷さんは僕のとの会話はこれ切りにしたいと思っていてもおかしくない。逆に考えれば僕が来ヶ谷さんの行動を変えられるチャンスは今しかないという事だ)

理樹(考えろ直枝理樹……この一言ですべてが決まる。来ヶ谷さんの心を100%動かせなければあのドライバーのどちらか、もしくは両方が鈴に襲いかかる。そして最後に息している者は1人しかいなくなるだろう。一言……これまでの来ヶ谷さんの言動から推理しろ!脳が擦り切れるまで回転させろ!!)

来ヶ谷「……………」

恭介「……………っ!」

鈴「理樹………っ!」

『どうした理樹?来ヶ谷に看病してもらってきてからずっとぼうっとしてるじゃないか』


『なにィ!?り、理樹が来ヶ谷にときめきを感じているのか!!』


『私は恥ずかしながらもときめきを感じたよ。ああ、そうか、理樹君と私が恋愛沙汰に陥るのかと』


『そうさ!理樹君が振り向かないなら理樹君に私しか見れなくすればいい!他の娘をみんなみんな消してしまえばもう私と君しかいないんだ!』


理樹(……………これしかない!)



理樹「来ヶ谷さん……」

来ヶ谷「………」

理樹「好きだーーーーっっ!!!」

恭介「ハッ!」

鈴「!?」

来ヶ谷「…………えっ……」

理樹「ごめん来ヶ谷さん!実はあの時、否定しちゃったのは恭介達が冷やかすから慌てて誤魔化しただけなんだよ!実際、看病された時は僕もドキドキしたし、今までの来ヶ谷さんとは考えられなくなったのは確かだ!普段はクールでいて恋に関しては疎い所とかも可愛げがあってもっと魅力的だよ!!だから来ヶ谷さん、僕は君が好きだ!他の誰でもない来ヶ谷唯湖さんが大好きだ!!」

理樹「…….ハァッ……ハァッ……」

来ヶ谷「………………」

来ヶ谷「……………グスッ…」

カランカランッ

理樹(来ヶ谷さんがドライバーを落として僕の元に駆け込んだ)

理樹「ち、ちょっ……!?」

来ヶ谷「…………………」

理樹(だが、来ヶ谷さんは僕を絞め殺そうとも目玉をえぐり出そうともせず、ただ両腕で抱擁した)

鈴「な、なにィ!?」

恭介「マジかよ………」

来ヶ谷「ずっとこんな日を待っていた……私だって本当は君と喫茶店に行ったり、水族館を回りたかった。他のみんなは自分の番が終わると次の願いを叶えたい人の為に身を引いていったが、私にはそれが出来る自信がなかったのだ……だから私の番など迎えなくてもよかった。だが、君がああ言ったので私の中の脆い防波堤が崩れたのだ。ああ、許してくれ……許してくれ、みんな。私は暴走しすぎた」

来ヶ谷「だけどせめて……もうこれっきり、みんなの前には現れない。だからもう少しだけこうさせてくれ……」

理樹「………………」

理樹(やはり来ヶ谷さんの抱える事情はよく分からないが、言わんとしていることは分かる。もう少ししたら来ヶ谷さんは永遠に僕の元を去るつもりなのだ)

恭介「いや……その心配はないぜ」

鈴「恭介!大丈夫なのか!?」

恭介「こんな痛みはもう慣れてる……それより来ヶ谷、お前が消える必要はない」

来ヶ谷「なんだと……?」

恭介「そう言う事ならいいんだ……きっとみんなもお前の行動を許してくれるはずだ。お前が我慢してどうする……この世界は全員が救われてやっと意味を持つんだ。確かにお前の願いは暴走するかもしれない……だったらその時は俺と謙吾と真人が止めてやるから……だから安心してやらかせ!」

来ヶ谷「恭介氏……」

理樹「………あ、あれ?」

理樹(気づくと部屋のあちこちに白い靄のようなものが浮いてきた。霧か?)

来ヶ谷「分かった……それじゃあやってくれ」

恭介「おう」

鈴「な、なんだ!?なにも見えない!」

理樹「えっ、なんだこれ!」

理樹(次第にそれは大きな雲となって部屋を包み、僕の視界がすべて白くなり、意識も並行して薄らいでいくような…………)

理樹(……………………………………………)

理樹(……………………………)

理樹(…………)







夕方

理樹部屋

理樹(今日、僕はまた例の病の発作で倒れてしまった。たまたま近くに来ヶ谷さんが居てくれたのは良かったんだけど……)

恭介「理樹………理樹?」

理樹「……はっ!え、えっと……なに?」

真人「次、理樹の番だぜ」

理樹「え?あっ……」

理樹(真人が中心に置かれたトランプの山を指差した。そうだ、今は大富豪の真っ最中だったのだ)

謙吾「どうした理樹?来ヶ谷に看病してもらってきてからずっとぼうっとしてるじゃないか」

理樹「あっ、えっと……」

理樹(謙吾の言う通り僕は来ヶ谷さんと別れてからずっと放心状態になっていた。それは多分来ヶ谷さんの看病が原因だったのだろう。誰だって目覚めに美人が薄いシャツ姿でこちらを見ていたらドキッとするはずだ。それがスタイルもバツグンだというんだ。頭がパンクしてもおかしくない)

恭介「フッ…とうとう理樹もそういう時期になっちまったか」

理樹「そ、そういう時期って?」

恭介「恋さ。理樹、お前は来ヶ谷に恋をしているんだ」

理樹「えっ?」

理樹部屋前

『どうした理樹?来ヶ谷に看病してもらってきてからずっとぼうっとしてるじゃないか』

『あっ、えっと……』

来ヶ谷「…………………」

来ヶ谷(看病した後、少年が去った部屋を見ると、彼の携帯が床に落ちていた。せっかくなので届けようとここまで来たが……どうやら面白い話が聞けそうだな。少し傍聴してみようか)

『フッ…とうとう理樹もそういう時期になっちまったか』

『そ、そういう時期って?』

『恋さ。理樹、お前は来ヶ谷に恋をしているんだ』

『えっ?』

来ヶ谷「!」

来ヶ谷(恋……恋だと?あの少年が私に?……馬鹿な……いや、しかし……)

『なにィ!?り、理樹が来ヶ谷にときめきを感じているのか!!』

『ち、ちょっと待ってよ!』

『ってことはまさか理樹はあの来ヶ谷に惚れちまったってことなのかぁぁあ!?』

来ヶ谷「…………っ」

来ヶ谷(いやいや、いやいやいや……慌てるな来ヶ谷唯湖。お前が取り乱すなどあり得ないことだ。これくらいのことで動じるんじゃない。……だけど、もしも理樹君が本当に私に好意を抱いているならば……わ、私は……)

理樹部屋

恭介「そうか理樹……俺は前々から思っていたんだ。理樹は恋をするべきだと!恋に苦しみ、恋に傷つくことで人は成長する……恋愛が理樹を大人の男にするんだよ!」

理樹(恭介達の暴走はなおも続いた)

謙吾「となると、これから俺たちは全力で理樹の恋を応援することになるな。ふっ、任せろ。こう見えても巷ではロマンティック大統領と呼ばれている」

真人「クッ……納得いかねえが理樹が幸せになることが俺の幸せだ。ここはおとなしく来ヶ谷にゆずってやるとするか……」


来ヶ谷(……も、もしも少年が告白するとしたらいつになるのだろうか?いや、こういう時は私から言った方がいいのか?理樹君はこういうのは苦手だろうからな。だが私からいくとしてなんと声をかければいい?やっぱりシチュエーションが大事だな。例えば放課後の空き教室で待たせたり……ううむ、悩みどころだ)


恭介「よぅし!そうとなると早速作戦を立てよう!作戦名はオペレーションラブラブ……」

理樹「だから待ってってば!」

恭介「……理樹、いい加減水臭いぞ。こういう時は黙って俺たちの協力を……」

理樹「そうじゃなくてさ……」





理樹「もうちょっとこういうのは静かにやろうよっ……は、恥ずかしいよ……」

来ヶ谷「……………!」

来ヶ谷(絶対結婚しよう)










終わりんこ

>>51
やめてくれ西園さん!俺をそっち系に引きずり込もうとするんじゃない!

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