男、女「「特製野菜みそラーメン1つ」」(19)

男「ん?」

女「ん?」

男「…………」

女「…………」

男、女「「大盛りで」」

男「被りましたね」

女「そうですね」

男「こんな夜更けに女性がラーメン大盛りとは」

女「言わないでください。仕事忙しくてお昼抜きだったのです」

男「む、俺も同じです」

女「また被りましたね」

男「はい」

男「ここまで被るのも何かの縁ですね」

女「ありがとうございます、奢ってくれるんですね」

男「なぜそんな話に」

女「運命を感じたなら『マスター、隣の女性に酒を』というのが常識でしょう」

男「ここはラーメン屋ですよ」

女「では餃子を」

男「奢りません」

女「むう、では自腹で餃子を」

男「俺もそうしましょう」

女「早く来るといいですね」

男「まったくです」

店員「お待たせしましたー」

女「おお」

男「来ましたね」

女「やっぱり餃子と一緒に食べるのが最高です」

男「意見が合いますね」

女「私、餃子はタレと酢派なのです」

男「こっちは醤油とラー油派です」

女「む、辛いのがお好きですか」

男「そっちは苦手ですか?」

女「程度によります」

男「はふはふ」ズルル

女「なんだかそっちのラーメンのほうが美味しそうに見えるのです」

男「同じラーメンですよ」

女「チャーシューもちょっと大きく見えるのです」

男「錯覚です」モグモグ

女「ああ、ここは交換してくれるところでは……」

男、女「「ごちそうさまでした」」

男「まさか本当に全部食べきるとは」

女「職場では宇宙の胃袋を持つ女として知られています」

男「それはすごい」

女「『やっぱりちょっと多かった……代わりに食べて?』というような恋人っぽいイベントを期待していましたか?」

男「いいえまったく」

女「これは屈辱です」

男「さて、会計も済ませたので帰ります」

女「このまま大人の世界に行っちゃったりはしないのですか?」

男「会って一時間ちょっとの人とそんな事はしません」

女「同じ店のラーメンを食べた仲ではないですか」

男「同じ釜の飯とはかなり差がありますよそれ」

男「ではさようなら、ラーメンの君」

女「その呼び方はちょっとどうかと思います」

男「では女さん、さようなら」

女「さようなら」

翌日

男「またお会いしましたね」

女「きゃー、ストーカー」

男「おふざけはやめてください、捕まりたくないです」

女「今日もラーメンですか?」

男「いいえ、今日はお昼が遅かったので軽く一杯やるだけにしようかと」

女「それならあそこで飲みましょう」

男「あの店ですか?」

女「友人が働いているので、融通きかせてもらえるのです」

男「予約入れなくて大丈夫ですか?」

女「そこを融通きかせてもらうのです」

男「なるほど」

女友「こちらサラダになりまーす」

男「お野菜ですね」

女「一人暮らしだとついつい疎かにしてしまいます、野菜の摂取」

男「トマトとキュウリが美味しいです」

女「なんと、私の好きな野菜をピンポイントで」

男「あなたにはこのレタスを授けましょう」

女「むう、そのお皿に乗ってる赤いのがいいのです」

女友「こちらチヂミになりまーす」

男「おお、キムチチヂミですね」

女「チヂミって初めて食べます私」

男「ではどうぞ」

女「あーんしてます。食べさせてください」

男「え」

女「ふふふ、美味しかったです」

男「恥ずかしかったです」

女「あまじょっぱいタレが絶品でした」

男「こっちは甘酸っぱかったです」

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