─ 家 ─
ママ「二人とも、起きなさい! ほら起きて! 遅刻しちゃうわよ!」
子「学校めんどくさ~い」
パパ「会社行きたくなぁ~い」
ママ「もう……しょうがないわねえ!」
ママ「というわけで、今日はあたしが会社に行くわ」
ママ「あなたは小学校へ」
パパ「うん」
ママ「あんたは家のことをやってちょうだい」
子「分かった!」
その夜──
パパ「うん、実にうまい! プロ級じゃないか!」モグモグ…
ママ「あんたったら! こんなにおいしい夕食を作って!」
ママ「ママのメンツ丸つぶれじゃない!」
子「ごめんなさ~い!」
パパ「なにいってるんだ! 君こそオレのメンツを潰したじゃないか!」
パパ「オレが手こずってた契約を、あっさり取っちゃうなんて!」
パパ「それも、だいぶいい条件で!」
ママ「ごめんなさいね、あなた」
子「そんなこといったら、パパだってひどいや!」
子「先生や友だちにボクよりずっと子供らしい、って褒められたんでしょ?」
子「ボク、悔しいったらないよ! メンツ丸つぶれだ!」
パパ「すまん……」
ママ「明日からは、ちゃんと自分の仕事は自分でやるようにしましょうね」
パパ&子「は~い」
休日──
─ 家 ─
子「ねえ、パパ。どこか遊びに行こうよ! 旅行に連れてってよ!」
パパ「たまの休みなんだ……ゆっくりさせてくれよ」ゴロン…
子「えぇ~ん。パパのいじわる~」
ママ「あなた、家族サービスぐらいしてちょうだいよ」
ママ「普段、家族に対して何もしてくれてないんだから」
パパ「なんだと……!」
パパ「何もしてないって……オレは会社で働いてるんだ! そんないいかたあるか!」
ママ「なによ、あなたこそ! 怒鳴らなくたっていいでしょ!」
パパ「怒鳴りたくもなるだろ!」
パパ「だいたいな、子供と遊んでやるとか、そういう家のことは妻の役目だろ!」
ママ「そんなの、前時代的な考えだわ」
ママ「家族サービスもろくにできない夫に、存在価値なんかないわよ!」
パパ「なにぃ!?」
子「パパ、ママ、やめてよ~!」オロオロ…
パパ「ええ~い、もううんざりだ! もうお前とは離婚だ!」
ママ「こっちこそうんざりよ! やってられないわ!」
パパ「よぉ~し、そうと決まれば裁判で決着をつけてやる!」
ママ「望むところよ! 親権も慰謝料も養育費も全部いただいてやるわ!」
子「うえぇ~~~~ん!」
─ 家庭裁判所 ─
裁判官「ケンカ、ダメ。夫婦、仲良く」
パパ「分かりました!」
ママ「分かったわ!」
パパ「……やり直そう」
ママ「ええ、あなた!」
子「二人とも、やっぱりお互いを愛していたんだね!」ニコニコ…
裁判官「二人、仲直り。ワタシ、嬉しい」
パパ「どうだった? 家庭裁判所旅行は?」
子「うん、とっても面白かった! ボク、一度裁判所に来てみたかったんだよね~」
パパ「喜んでくれて嬉しいよ。夫婦で下手な芝居までしたかいがあった」
ママ「よかったわね~、あなた」
パパ「じゃあ、来週の日曜はどこに行きたい?」
子「んーとね、刑務所の面会室!」
パパ「よぉ~し、明日あたり課長でもブン殴るか!」
ママ「さすがあなた! 暴行罪をチョイスするなんてワイルドだこと!」
ママ「だけど逮捕されたら、色々と大変よね」
パパ「なぁに、警察と刑務所には裏から手を回してすぐ釈放されるようにするし」
パパ「会社にも手を回して、また同じ部署に再就職できるようにしとくから」
パパ「ついでに前科もつかないようにしとこう」
ママ「あなたったら……ホントこういうことになると頼もしいんだから!」
パパ「アッハッハッハッハ……」
ママ「オホホホホ……」
子「わぁ~い、わぁ~い!」
また、ある日のこと──
─ 家 ─
子「ボク、ピーマン嫌い~」ウエッ…
子「ニンジンも嫌い~」
ママ「好き嫌いいっちゃダメ! 全部食べなさい!」
子「やだ~!」
ママ「もう……好き嫌いばかりするんだから!」
ママ「どうしたらいいかしら?」
パパ「う~ん、ムリに食べさせるのもよくないっていうしなぁ」
ママ「でも、あまり偏食だと……発育にもよくないし……」
パパ「だったら……細かく刻んだ野菜をあの子の好きな料理に混ぜたらどうだ?」
パパ「そしたら、気づかず食べるかもしれない」
ママ「そうね、やってみる!」
次の日──
ママ「ニンジンとピーマンを丸ごと一個ずつ用意したわ」
パパ「ほう」
ママ「これをこの包丁で──」
パパ「切り刻むんだね?」
ママ「──と見せかけて、あえて切り刻まない!」
パパ「おおっ!?」
ママ「あえて切り刻まず、そのまんまニンジンとピーマンを出すことで」
ママ「あの子にまんまとニンジンとピーマンを食べさせてしまうという戦法よ」
ママ「ドリブル突破と見せかけパス、と見せかけドリブル突破ってわけね」
パパ「なるほどぉ~、すばらしいフェイントだ!」
パパ「ママは子育て界のエースストライカーだね!」
子「うわぁ、生のニンジンとピーマンが丸ごと出てきた!」
子「てっきり次は切り刻んでオムライスあたりに混ぜてくると予想してたのに!」
子「いっただっきまぁ~す!」モグッ
子「おいし~!」バリボリ…
ママ「ほらね!」
パパ「こりゃすごい! ママのおかげで好き嫌いが治っちゃった!」
子「ママ、ニンジンとピーマンおかわり!」サッ
また、家族で買い物中に──
─ ペットショップ ─
子「パパ~、ママ~、ボク犬を飼いたいよ~!」
ママ「ダ~メ! 見るだけっていったでしょ!」
子「飼いたい、飼いたい、飼いたい~!」
ママ「ダメ! どうせ自分で世話しなくなるんだから!」
子「するよ! 絶対する!」
パパ「いいじゃないか。飼わせてやろうよ」
ママ「でもあなた……前にもハムスターと猫を飼わせてあげたことがあるけど」
ママ「この子、自分で世話をしなくなったじゃない!」
パパ「今度は大丈夫だよ。な?」
子「うん!」
ママ「んもう、しょうがないわねぇ……」
─ 家 ─
子「お前の名前はポチだ!」
ポチ「ワン、ワン!」
子「よ~し、散歩に行こう!」タタタッ
ポチ「ワン!」タタタッ
パパ「ハハハ、もうあんなに仲良くなってるよ」
ママ「車に気をつけるのよ~!」
一ヶ月後──
ポチ「あなたがたの教育のおかげで、このたび私、会社を立ち上げまして……」
ポチ「自分の食い扶持は自分で稼ぎますので、独立させていただきます」
ポチ「なお、会社の利益の一部はこの家に提供させていただきます」
ポチ「今後とも、私ポチをよろしくお願い致します」
子「うえぇ~~~~ん! ポチが独立しちゃったよ~う!」
パパ「またか……」
ママ「だからいったのに……。世話をしなくなるって……」
ある日の夜──
─ 家 ─
パパ「なぁ……いいだろ?」モゾ…
ママ「ダメよ……。あの子、まだ起きてるかも」
パパ「大丈夫だよ。もう寝てるって」モゾッ…
ママ「あっ……やだ……」ピクン
子「パパー、ママー、なにやってんの!?」
パパ「お、起きてたのか……!?」
ママ「ちがう……これはちがうのよ!?」
子「ちがうってなにがー? ねえねえ、二人ともなにやってたのー?」
パパ「ほら……コウノトリさんの手助け、をだな……」
ママ「そ、そうね……。オブラートに包んだ言葉で表現すると──」
パパ&ママ「子作り」
子「ふーん」
子「じゃあ……ボクは孫作りをしよっかな」
パパ「え?」
少女「こんばんは」
ママ「この女の子、だれ?」
子「えへへ~、ボクの同級生!」
子「かわいいでしょ?」
パパ「オレがロリコンだったら、危ないところだったよ」
パパ「やれやれ、まいったなぁ。驚いちゃったよ」
ママ「ホント、近頃の子供は進んでるのねえ」
パパ「じゃあ……パパとママは二人で楽しむから」
ママ「あなたたちはあなたたちで楽しみなさい」
子「はぁ~い!」
子「さ、ボクの部屋行こっか。今夜は寝かさないよ」スッ…
少女「うん……」
おわり
以上です
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