【艦これSS】提督「壊れた艦娘と過ごす日々」09【安価】 (948)

※艦これのssです。安価とコンマを使っています。

※轟沈やその他明るくないお話も混じっています。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1425478370


150 睦月(YP1)
78 榛名
62 浜風(YP1)
57 加賀
50 夕立
43 鈴谷
30 伊58
30 雪風
23 大淀
15 清霜
02 金剛

※攻略は出来ないけど絶対に病まない癒し的な存在
曙・阿武隈・阿賀野

・好感度30 トラウマオープン

・好感度60 トラウマ解消
ここから恋愛対象&好感度上昇のコンマ判定でぞろ目が出たらヤンデレポイント(面倒なのでYP) +1

・好感度99 ケッコンカッコカリ

・好感度は150まで。150になったらYPの増加はなし

・YPは5がMAX、5になったら素敵なパーティ(意味深)

沈んだ艦娘24人

一回目の襲撃事件で沈んだ艦娘
大和・朝雲・那珂・武蔵・弥生
(雪風は生還)

二回目の襲撃事件で沈んだ艦娘
深雪・大鳳・如月・雲龍・龍驤
(雪風は生還)

三回目の襲撃事件で沈んだ艦娘
白露・時雨・村雨・五月雨・涼風・皐月・文月・長月
伊19・伊168・伊8・北上・神通

魔女裁判
春雨


現在の資源とか建造とか
燃料425 弾薬457 鋼材487 ボーキ397


A【燃料30 弾薬30 鋼材30 ボーキ30】
いわゆる最低限レシピ。駆逐艦・軽巡洋艦が対象です。

B【燃料250 弾薬30 鋼材200 ボーキ30】
軽巡洋艦・重巡洋艦・潜水艦が対象です。

C【燃料400 弾薬30 鋼材600 ボーキ30】
重巡洋艦・戦艦が対象です。

D【燃料300 弾薬30 鋼材400 ボーキ300】
軽空母・正規空母が対象です。

E【燃料500 弾薬500 鋼材500 ボーキ500】
駆逐艦・軽巡洋艦・重巡洋艦・潜水艦・戦艦・軽空母・正規空母「以外」が対象です。


・装備
今いるヒロイン候補の新しい装備を作ります。
と言っても錬度とか戦力数値も無いスレですので、要は資源と引き換えに好感度を上げるだけです。
まず【燃料100 弾薬100 鋼材100 ボーキ100】を支払います。
次に誰の装備を作るか選択し、その後はコンマ次第で好感度が上がります。
ただし実際のゲームと同じで失敗する場合もあります。勿論その場合資源は帰ってきません。
具体的には3割の確率で失敗します。

戦闘システム


【戦闘判定】
コンマ+好感度+艦種

【艦種】
軽巡洋艦=20
重巡洋艦=30
軽空母・戦艦=45
空母=65

潜水艦=相手の艦種が重巡洋艦・戦艦・空母・潜水艦の場合、引き分け以上が確定。
コンマで相手より上ならば勝利、下なら引き分け。

すみません、今日は更新出来そうにありません

今仕事終わりました、更新は日付が変わる頃になります。

どんな風な最後になるのかは正直安価とコンマと好感度次第ですが、一応この先の展開は大体出来てます。
作中の日付で今年中には終わらせるつもりです。まぁその前に夏の山場を越えないといけませんけれども。
ヒロインは増やしすぎても大変なのでそろそろ上限ですが、現状の鎮守府の人数と好感度だと詰む可能性もありますので頑張ってください。

しつもーん
ヒロイン打ち切りと鎮守府の人手不足が両立するってことは、
どっかで非ヒロインの艦娘が増えるってことでいいの?
もしそうなら、新しく登場する艦娘がヒロインか否かはどうやって決まるの?

>>59
建造で来た子は非ヒロインAAAになる事もって過去スレで言ってた
建造で数増やして夕立加賀のトラウマ解消したら
解消した5人で遠征して次の建造資源貯めながら他キャラトラウマ解消ってところ?

>>59
先の内容なのであまり詳しくはいえませんが、来るべき時に人数が足りない場合、勝手に補完したりします。
とはいえその場合当然好感度も何もありませんので色々と不利になりますよというお話です。
後は加えて>>62のような形もですね。

雪風さん激おこなのを覚悟して金剛さん大淀さんに声かけても良いんですよ(ゲス顔)


伊58「……う」

 身を硬く捩じらせて、やや下を向く伊58。

 彼女にとっては、この鎮守府は終の棲家のようなものだ。

 この居場所を失ったら、いよいよ居場所はなくなる。

 しかしここは最果ての鎮守府。不幸の行き着く掃き溜めだ。

 睦月や榛名のように、何の問題もなく海に出られるのだとしても、この鎮守府の艦娘をわざわざ迎えたがる提督は居ないだろう。

 或いは中央鎮守府の優しき司令官や、頭は良くないが情に厚い東鎮守府の同期
ならば引き受けてくれそうではあるが、その場合本部がそれを許さないだろう。

 この鎮守府の艦娘は皆壊れていて、触れてはならないガラスの破片だ。

 彼女たちがそう言う風に傷つき、どういう思いでいるのかなど興味がないだろうし、睦月や榛名などのように、自分の心を取り戻した者の存在など知る由もない。

 彼らにとっては、立ち直ろうがそうでなかろうが、皆一律に見捨てた存在だ。

 ゴミ箱に再度手を伸ばす事を良しとはしない。

 ましてや伊58──彼女は、現状、海に出る事さえままならない。

伊58「他の所、は行きたく、ない、よ」

提督「そうだな」

 一日の殆んどを自室で毛布に包まって過ごす彼女の、心の傷は未だに深い。

 たどたどしく、細かく刻むように言葉を零す。

伊58「捨てられ、る、のはいや、です」

提督「……ああ」

 椅子の上で、膝を抱える。顔の下半分を埋める様に隠した。

 彼女の場合は、浜風とは逆に、この居場所にしがみつくように縋っている。

 とはいえそれに前向きな要素は一つもない。

 ここで艦娘として生きていく、というものというよりは、単にこれ以上の波乱を望んでいない風だった。

 かつて道具のように扱われ、海で死に掛けた伊58。

 信じるべき指揮官は自分を捨てた。信じるべき艦娘は深海棲艦で、自分を殺そうとした。

 裏切られ、投げ捨てられ、打ち捨てられた彼女のたどり着いた場所がこの鎮守府だ。

 だからきっと彼女は、ここが最後の居場所なのだ。

 何かがしたいからこの場所にしがみついているのではなく。

 何もしなくていいからこの場所にしがみついているのだろう。

 あの部屋が、伊58にとってのサナトリウムだ。


提督「今、そうならないように、鈴谷が調べている」

伊58「鈴谷、さん」

 彼女と鈴谷の面識がどれほどかは分からない。少なくとも今の反応を見る限りは、差し入れを良くする加賀よりは接点はなさそうだ。

 同じ様に辛い思いをしてこの場所に流れ着いた伊58に対して、鈴谷が冷たい態度を取るはずはなかったが、かといって無条件で抱きしめるほどの余裕だって鈴谷にもない。

 或いは、単純に、かつてこの鎮守府で陽の当たる暮らしをしていた鈴谷からすれば、壊れた艦娘が容易く捨てられるという現実を受け入れたくなかったのかもしれない。

 ここは仲間と過ごした大事な場所で、仲間が生きていた大切な場所。

 決していらない何かを捨てるような場所ではない、と。

 そんな声にならない声を叫びたくて、だけれどそれを伊58にぶつけるわけにもいかなくて。

 それ故に、あまり深くは接しなかったのかもしれない。

 伊58と接する事で、自分の心が揺り動かされて、互いに傷つくくらいなら。

 最初から距離をとっていた方がいい。

 きっと、そう思ったのだろう。

 理知的で冷静なようで、どこか彼女は感情が強い。

 今だって誰よりも必死で街の工事を調べている。

 艦娘として暮らす気はないと言い切りながら、他の誰よりも街の工事に執着している。

 それが鎮守府のためだとは決して彼女は認めないだろうし、確かに墓を取り壊されたくないと言うれっきとした理由はある。

 だけれどそれが、本当に彼女の真意の全てなのかと考えると、決してそうは思えない自分がいた。

 亡くなった仲間を今でも弔い、伊58に対しての距離感も一定に保っている鈴谷。

 それはやはり、彼女の中でこの鎮守府での思い出が色褪せない物だからではないだろうか。

 墓が取り壊されたら、ここでの思い出も消えてしまいそうで。

 伊58を見ていたら、ここでの出来事を思い出してしまいそうで。

 だから鈴谷は、伊58を遠ざけ、それでいて街の工事に心をざわつかせている。

 楽しかった思い出と、辛かった出来事。忘れたくない思い出と、忘れたい出来事。

 それらが両方あって、相反するけれど混ざってしまっているそれらがあって、それに鈴谷は足を取られている。

 本当は誰よりも、もしかしたら俺よりきっと。

 過去に囚われて生きているのは、鈴谷なのかもしれない。

 どうしたいかと彼女に問われ、やり直したいと俺は答えた。

 今思えば、それは鈴谷自身が一番、自分に聞きたい言葉だった様な気がする。

提督「伊58、と夕立。二人も、少し鈴谷に力を貸してやってくれないか?」

 伊58は考え込むように悩み、夕立は考えた様子もなくあっさりと了承した。


【三月二週後半 鈴谷視点】


鈴谷「……」

夕立「人でごった返してるっぽい」

鈴谷「……、……」

夕立「あ、ねぇ見て鈴谷さん。この花綺麗っぽい」

鈴谷「……。……」

夕立「あ、ねぇ鈴谷さん。あの屋台初めて見るっぽい」

鈴谷「あのさ……」

夕立「すいませーん、この納豆パンプキンイカスミ苺パフェDXくださいな」

鈴谷「ちょっと!」

 業を煮やしたのか、そこでようやく鈴谷が声を挙げた。

 ふらふらとあちこちを闊歩する夕立。観光目的ならばこの上なく正しい行動ではあるが、勿論そんな理由で二人がここに来たわけではない。

夕立「鈴谷さんも食べるっぽい? 二つにしてくださいな」

鈴谷「いや要らないけど! そうじゃないし!」

 大きく溜息を吐きながら、苛立ち紛れに腕を組んだ。

 鈴谷からすればそうなるのも当然で、もうこうして夕立の自由奔放な言動に何度息を吐いたかも分からない。

 いっそ夕立を捨てて一人で行動しようかとも思ったが、さすがにそこまで非情にもなれず、また、提督との約束もあるのでそれも出来ずにいた。

 それは折りしも提督の思ったとおり、言葉上ではいくら皮肉を吐いたり理論を混ぜたりする鈴谷ではあるが、根本的な部分でどうにも彼女は面倒見が良いほうなのだ。

 伊58に対して距離を保っているのは、あの場所が鎮守府であり、かつ彼女があまり部屋から出ない性格というのがある。

 つまり、放っておいても彼女が居場所を失ったり何かされたりする心配がないと言う判断だ。

 しかし今ここで夕立を放っておいたら、彼女がどこにふらつくのか全く予想も着かない。

 どこかで迷子になって鎮守府に送り届けられれば良いほうで、下手をしたら本部に連行される可能性だって否定は出来ない。それどころか自分から本部に突入しそうである。

 そうなったら鈴谷に夕立を救う方法はない。本部が解放するのを待つか、気まぐれや虫の居所次第で処刑されるのを黙って見過ごすくらいしか出来ない。

 それはさすがに鈴谷としても本望ではなかった。

 何を考えているのか分からないし、手のかかる面倒な相手とはいえ、一応は同じ鎮守府の一人である。居なくなったら居なくなったで良い思いにはならない。

 なので、出来る事ならば大人しく自分の後ろをついてきてほしいのだが……。

夕立「はい鈴谷さん」

鈴谷「要らないって言ったよね」

夕立「2,000円」

鈴谷「高いしあたしが払うの!?」

夕立「夕立お金持ってない」

 ちっとも悪びれる様子もなく、そう答える彼女に再度鈴谷は溜息を吐いた。


鈴谷「あんたほんと自由だよね……」

夕立「うん?」

 スプーンでパフェグラスをかき混ぜながら首を捻る夕立。

鈴谷「あっちへ行ったりこっちへ行ったり、要らないっていってるのにこんなまずそうなの頼むし、そもそも出発の時間に来ないし」

 夕立が鈴谷と鎮守府を出たのは、予定より一時間遅れてのことだった。

 三十分すぎても玄関に来なかった夕立に苛立ち、彼女の部屋に行った鈴谷だったが、未だに熟睡している彼女を見て唖然とした。

 熟睡というより、もはや爆睡の域に達していたとも思う。

鈴谷「寝言でもぽいぽい言ってるとは思わなかった」

夕立「覚えてないっぽい」

 寝ているんだからそうだろう。

 そう言いたくなった鈴谷だったが、それを堪える。

鈴谷「せめて目覚ましくらいかけておいてよね」

夕立「覚えてないっぽい」

 そもそも夕立は、鈴谷と出かける事自体覚えていなかった。それでは来るはずもない。

 そこに彼女達の抱える問題がそれぞれちょうど浮き彫りになる。

 記憶力の散漫している夕立については分かりやすくそのままなので言うまでもない。

 そして鈴谷もまた、自分では気付いていない見えない縄に縛られている。

 早い話が、突き詰めて言ってしまえば、鈴谷が夕立を待つ理由がないのだ。

 提督と約束をしたからと言って、同行する事自体を忘れていた夕立を一時間以上も待つのであれば、反故にする事だって出来る。

 その場合、当然提督に何故一人で出かけたのかを問われるだろうが、その際は堂々と“夕立が一時間経っても来なかったから”と言えば良い。

 それが正しいかどうかはさておき、少なくとも彼女に一つ言い分が用意できるのは確かだ。

 あるいは提督に対して、感情がないと冷たく切りつけたのは他ならぬ鈴谷だ。

 彼女に対して提督が強く出たり、叱り付けたりする事は万に一つもないと鈴谷も思っている。

 何か言われた所で心配するような言葉が関の山であるし、その程度の内容ならば聞き流す事だって出来なくはない。

 だけれど鈴谷はそうしなかった。

 というより、出来なかった。

 それは鈴谷がかつて受けた、前の提督からの仕打ちのせいである。

 虐げられ、蔑まれ、嬲られた彼女の心の傷。

 それにより、彼女は男性に対して強い恐怖心を抱いている。

 と同時に、傷を塞ぐようにかさぶたが出来上がる。

 殆んど瀕死状態の友人の前で身を汚された鈴谷に、あの時できたのはとにかく大人しくする事だけだった。

 友人の死をちらつかされ、その友人に自分の辱めを受ける姿を見られたくなかったのだから、そうなるのも必然といえば必然だ。

 そしてその時の行動が、かさぶたとして彼女の傷を覆っている。

 それはつまり、恐怖の対象である男性に対して、逆らってはいけないと言う刷り込み。

 それがあるからこそ彼女は、待ちたくもない夕立を一時間以上も待った。

 提督に、“一人で出かけないで欲しい”と言われたから。

 逆らいたいけれど、逆らえない。

 過去が今でも彼女を縛り付けている。


夕立「鈴谷さん、食べないの?」

 ロングスプーンでパフェを混ぜ合わせ、口に運ぶ夕立。

 もともとどこから手をつけて良いのか分からない物ではあったが、それを見て尚更鈴谷の食欲は衰退した。

鈴谷「……食べて良いよ」

夕立「ほんと?」

 嬉しそうに頬を緩める夕立であったが、鈴谷からするとどうしてこんな物を美味しく食べられるのかが分からなかった。

 はっきり言って冷蔵庫の残り物をそのままぶちまけたような代物だ。

 苺パフェか、せいぜい譲ってパンプキンまででよかっただろうに。

 どうして納豆とイカスミなんてものを混ぜてしまったのだろう。

 納豆とパフェなんて接点が何一つありはしないじゃないか。ティッシュと目覚まし時計くらい違う。

 ましてやイカスミなんて、良く考えたら冷蔵庫の残り物というジャンルとしては不審者すぎる。

鈴谷「……美味しいの?」

夕立「んー。わかんないっぽい」

 わかんないのかよ。

 せめて美味しいって言ってくれよ。

 これじゃ単に二千円を失ってあんたの腹を満たしただけで、あたしに何の得もないじゃん。

 そう言い掛けて、ツッコミを入れたくなって、やはりすんでの所でそれを抑えた。

夕立「おなかいっぱいっぽい」

鈴谷「そりゃ良かったね……」

 満足そうに食べきった夕立を見ながら、そう返すしかなかった鈴谷である。

 隣のテーブルに、同じく甘味を買った男性が座るのを見て、思わず鈴谷が席を立った。

鈴谷「……さっさと行くよ。ただでさえ時間が押してるんだから」

夕立「はーい」
 
 一時間以上鎮守府を出るのが遅れ、しかもこうして寄り道をしているのだから鈴谷の言葉は嘘ではない。

 そういう意味では夕立が朝起きてこなかったことにもようやく良い意味が出たとも思ったが、良く良く思えばそもそも彼女が遅れてこなかったらこの男性と隣になる事もなかったので、やはり鈴谷としては溜息を吐くしかない。

 コーヒーを啜る男性には何の罪もないが、逃げるようにして夕立の手を引いてその場を立ち去るのだった。


 少しだけ早足で歩きながら一つ唾を飲み込み、そのままコンクリートの地面を踏みしめる。

夕立「鈴谷さん、ちょっと速いっぽい」

 その言葉に夕立の手を引いたままだった事を思い出し、ようやく手を放した。

夕立「鈴谷さん、大丈夫」

鈴谷「大丈夫」

 少し乱れた息を整えながら、往来を避けて一本路地に折れる。

 普段も人ごみが好きなわけではないが、今日はいつにも増して敏感になっていると鈴谷自身も感じていた。

 往来で人とすれ違う時、自分の進行方向から向かってくる人が居た時。

 そういう時、人は大抵その方向や人物を見る。

 そうしないとぶつかるから。

 そしてその何でもない目線も、鈴谷にとっては心を冷たい手で鷲掴みにされる思いになる。

 なんでもない、一瞬ですれ違う赤の他人を見るときの目。

 そこに感情はない。炉端の石を見るような、何となく写真全体をぼやけさせてみるような、無味な瞳。

 それが怖い。

 あの前の提督も、そんな目をしていたから。

 楽しげに話し、嬉しそうに話すくせに、全く感情が感じられないような、あの人形のような男。

鈴谷「……っ」

 どす黒く、どこまでも歪んだ男の汚らしい感情のない瞳。

 それと道行く人の目線が、どこか重なって見える。

 それはどちらも、自分に対して興味がないと言う点で一致していたからだろう。

 あの男は恐らく、何に対しても等しく平等に価値を見出さない。

 それが物であろうが人であろうが、艦娘であろうが形のない感情や心であっても、どれも同じ道具でしかないのだ。

 あの男の前では、全てが皆、あいつの考える世界の舞台装置。

 都合よく使い、都合よく壊し、都合悪くなったら捨てる。

 それがあの男。

夕立「鈴谷さん? 大丈夫?」

 そう鈴谷が憎悪し、考えを張り巡らせて。

 そんな鈴谷を見て、夕立が首を捻る。

 いつもの様に……無意識に。身を守るように腕を組んだ鈴谷。

鈴谷「大丈夫」

 同じ言葉を繰り返す。

 あまり下手に心配をかけたくなかったし、大丈夫だといわないと自分がつぶれそうだった。

 現実としてあの男に屈服させられた鈴谷。

 ならばせめて、自分の想像や考えの中でくらい、あの男に逆らいたかった。

 そう思い、何とか平常心を保ちながらそう答える。

夕立「それなら良いんですけど。じゃあ行くっぽい?」

鈴谷「……そうだね」


「たまにはこういう、外で飲むコーヒーも悪くないね」

「……そうですか」

「ああ、いや。勿論一番は君の淹れてくれたコーヒーだよ?」

「別に私は何も言っていません」

「拗ねないで欲しいな。君に嫌われると俺は悲しくなる」

「……」

「ただでさえ今俺は傷心中なんだ。君まで俺を虐めないでくれよ。はは」

「……良いんですか、追わなくて」

「ん? ああ、まぁね。次にどこにいくかは予想がつくからね」

「予想、ですか」

「あぁ、だから今は君とのデートを楽しもうかな。ほら君も、何か頼むと良い。さっき彼女たちが頼んだ、この納豆パンプキンイカスミ苺パフェDX、なんてどうだい?」

「結構です」

「ふむ、そうか。残念だ。じゃあ俺だけでも頼もうかな」

「……」

「うん、美味しい。傷ついた心が癒されるよ」

「傷ついた、ですか」

「ああ。久々に会ったと思ったら築気付いてくれなかったからね」

「隣のテーブルと言っても、席は背中同士でしたし、無理はないかと」

「それでも気付いてくれると思ったよ。彼女は優しいからね」

「……」

「もう片方は知らない顔だったね。君は知ってる?」

「いえ。分かりません」

「そうか、そうか。もしかしたら、あの時産んでくれたのかもね、俺の子を」

「……思ってもいない事を」

「だったら良いなぁと思っただけだよ。はは、くく」

「……」

「冗談だって。君は真面目だなぁ」


選択安価&コンマ判定

↓1

1.本部
2.建設現場
3.路地裏

↓2 夕立の好感度(57)+鈴谷の好感度(43)の平均(50)分

00-49 成功
50-99 失敗

短いですが今日は一旦ここで終わりです。

5-3の夜戦地獄きついですね、どうやったらええねんこれ……。
あと、うちのゴーヤがようやくレベル50になりました。出撃せずに演習と数回の遠征だけでひたすら過保護にしてた箱入り娘です

肝心な事を書き忘れました、21時に始めます。


夕立「工事の事を調べるなら、工事の人に聞くのが一番っぽい」

鈴谷「……それくらいあたしだって分かってるよ」

 夕立の言葉はもっともだが、しかしそれくらいは鈴谷とてとうに聞き取り済みである。

 殺人事件で例えるならば─例えが物騒すぎると思わないでもないが─、遺体のすぐ傍に立つ血だらけの男に対して事情聴取するようなものだ。

夕立「つまり?」

鈴谷「最重要参考人ってこと」

 裏で誰が糸を引いているのはともかく、直接工事を担当する彼らに何も聞かないのは論外である。

 男性が苦手な鈴谷といえど、多少の無理をしてでも探りを入れるくらいの事は既にしてあった。

 そしてそれが故に手がかりのなさに苛立ちを隠せないでいるわけだ。

夕立「ふうん……」

 区役所は空振りに終わっており、まさか本部に単身で突入できるわけもなく。

 手の届く範囲で出来る聞き取りでの成果は芳しくない。

 それを知ってか知らずか、夕立が一つ頷いた。

夕立「じゃああそこは?」

 そういって夕立が指差したのは、街の一角から隠れるように金網のフェンスとビニールシートで覆われたプレハブ小屋である。

 言ってみれば工事に携わる者達の拠点で、つまりは最も情報の期待できる場所といえなくもない。

 当然工事について調べるのであれば、立ち入りの許可をもらえるかどうかは別として、足を運ぶくらいはしていてもおかしくはないのだが。

 しかし鈴谷は苦い顔をしながら首を横に振った。

鈴谷「……」

 それもそのはずである。何せ彼女は男性が苦手なのだから。

 相手の伸ばした腕が届かない程度の距離を置いて、一対一でようやく話せるかどうかという彼女に、工事に携わる男性の拠点に突入する事など、出来るはずもない。

夕立「まだなら行ってみる?」

鈴谷「……」

 答えに迷うが、行かないわけにもいかない。

 むしろ、自分一人では踏み入れることのできなかった場所だ。

 そういう意味では、今夕立についていかなければ次に訪れるのがいつになるのかも分からない。

 渋々ではあるが、ここは夕立の背中を追うのが得策だと鈴谷は判断し、後を追うことにしたのだった。


夕立「頼もうーっぽい」

 何の躊躇もなく金網フェンスの区切りをどけ、何の躊躇もなく敷地内を歩き、そして何の躊躇もなくプレハブ小屋の扉を開ける。

 鎮守府にいるかのごとく自然な行動をとる夕立にいっそ頼もしささえ覚えそうになりながら、それ以上に不安が鈴谷に押し寄せた。

 てっきり中は着替えるだけの粗末なものかと思ったが、存外物が多く、事務所としても使われているようだった。

 まぁ、これだけの大規模な工事なのだから、当然といえば当然ではある。

 むしろ街一つという工事範囲に対しての事務所の規模、という風に考えると、やや物足りなささえ覚えるくらいだ。

 それが急遽こしらえたものだからなのか、或いは他の場所にも事務所があるのかは分からなかったが、いずれにしても何かしらの手がかりはありそうだ。

 事務所の中にはあまり人はおらず、何人かの作業着を着た男性と、スーツを着てパソコンに向かっている男性がいるくらいだった。

 突然の艦娘の訪問に一瞬ぽかんと口を開けていた、その事務員らしきスーツの男性が少し遅れて立ち上がった。

 こんなプレハブ小屋にスーツとは一見似つかわしくないが、しかし中身が狭いだけで事務所としての光景としては不思議ではない。

 というより、黄色いヘルメットに灰色のツナギを着て、工事で汚れた状態の人間がパソコンや書類をどうこうしているほうがよっぽど不自然である。

「何の御用でしょうか」

夕立「工事って誰に頼まれたんですか?」

 清々しいまでに直球勝負だった。

 横開きのドアの傍の壁に背を預けようとして思わずずっこけそうになりながら、鈴谷が夕立を止める。

鈴谷「ちょっと……ちょっと!」

夕立「うん?」

 腕を引かれてきょとんとする夕立に、先ほど僅かに抱こうとした頼もしさを返せと言わんばかりに彼女のこめかみに拳を押し付けた。

 ぐりぐり。

夕立「痛いっぽいー」

鈴谷「あのねぇ、どこの世界に黒幕を教えろって言われて教える馬鹿がいるのよ!」

夕立「聞いてみないと分からない」

鈴谷「それで分かるなら苦労しないっての……!」

 突然押しかけて突然意味の分からない質問をし、突然二人で押し問答を始めるという光景に、事務員が困惑するのは酷く当然であった。


「質問の意図は分かりかねますが、役場から区画整理を依頼されただけです」

 鈴谷にとってはもはや聞きなれた言葉である。やはりここでもそういう質問に対しての回答が予め用意されているのだろう。

 気の利いた手回しに軽く舌打ちをしそうになりながら、一度ぐるりと事務所を見回した。

 作業着姿の男性達と目が合って、思わず腕を組む。

 十メートル以上離れているし、机などがあるので襲われる事はないのだと分かってはいるものの、どうしても身体は防御体制をとってしまう。

 その事に余計苛立ちを募らせる鈴谷だった。

「失礼ですが、一体どちら様でしょうか?」

 困惑していた様子の事務員も、ようやく平静を取り戻したのか、やや視線が鋭くなった。

 向こうからすれば、こういう質問をする相手は一律に面倒だろう。

 ましてや今回は“何故工事をするのか”ではなく、“誰に工事を依頼されたか”という問いかけをしたのだ。

 正直に答えようものなら、依頼元にまで噛みつかれるのは目に見えて明らかだった。 

 その為、彼らが鈴谷と夕立を警戒するのは当たり前である。

 それを理解し、そういう視線を察知し、一つ唾を飲む込む鈴谷。

 状況は芳しくない。

 聞きたい情報は得られず、却って警戒を招いただけというのもそうだし、鈴谷にとっては彼らの目線という恐怖だってあった。

 ぎゅうと自分の腕を強く握り、何度か瞬きを繰り返しながらも、それを悟られないような目線を保つ。

 相手を見返すことは出来ず、目線の先は夕立の背中ではあるが。

 そしてそんな鈴谷の視線など当然気付かない夕立が、さも当然と言った風に、あっさりと答えた。

夕立「夕立? 夕立は、白露型四番艦の、夕立よ?」

 合っているような合っていないような、極めて微妙ではあるがこれ以上なくシンプルな解答だ。

 そしてそれは間違いなく名乗るべき名前でもない事だけは確かだった。


「……、それは、つまり、艦娘、と言う事ですか」

夕立「っぽい」

 事務所の空気がやや重く、冷たくなる。

 元より夕立にしても鈴谷にしても、制服を着ているのでいずれは気付かれただろうが、それでも今は艤装をつけていないのでこの場だけなら誤魔化しきる事も出来たかもしれない。

 しかし今の夕立の言葉でそれも露と消えた。

「こんなところに艦娘がわざわざ来るとはなぁ」

 先ほどから事務所の奥でこちらを見ていた作業員らしき男が数人、やってくる。

鈴谷「どうすんのよ……!」

夕立「どうする?」

 明らかに尋常ではない空気だ。まさか監禁はされないだろうが、しかし軟禁ならされるかもしれない。

 ここに来ないように、或いは今後この件に首を突っ込まないように、と脅されるであろうことは明白だった。

 勿論そんな事をされれば、ますます鈴谷の心の傷は深まるばかりである。

 情けなく微かに足が震えるのを自分でも感じるが、さりとて鈴谷にはそれを止める術もなかった。

 せいぜい自分がいるすぐ近くのドアを開け、夕立と共に逃げるくらいしか思いつかない。

 むしろ多勢に無勢なこの状況では、それが一番の正解な様な気がした。

 相手はそれなりに強そうな男性数人。対してこちらは、こう言っては何だが、鈴谷は戦力にならない。

 偽装のないこの場所で、夕立が勝てる確率など、半分を更に半分に割っても贔屓目だ。

 加えてここで彼らと争い、仮に組み伏せた所でどうにもならない。

 争いに勝ったところで情報を開示してくれるなど、今日びゲームのRPGでももう少し回りくどくヒントを隠すくらいだ。

 だからここは逃げるのが得策。戦う理由はない。

 一度引き返し、作戦を練り直し、体勢を立て直すのが吉。

 そう思い、夕立の腕を引いて、事務所のドアを開けたところで──

「おっと、行かせないぞ嬢ちゃん」

 作業着を着た男性に肩をつかまれる。

鈴谷「……っ!」

 びくりと大きく鈴谷の肩が跳ね、その場に崩れかけて、夕立に支えられてようやくすんでの所でそれを堪えた。

 頭の中であの黒い軍服の男の声がこだまする。

 声だけでなく、虚ろな瞳で灯火を消そうとする友人の姿も。

 逃げるようにぎゅっと強く目をつぶり、やはりその場にしゃがみ込んだ。

 思わず泣き叫びたくなる衝動を、何とか胸の内だけで留めながら、それでも片方の腕で耳を覆った。

鈴谷「ひ、う……っ!」


夕立「と、お、と」

 鈴谷に腕をつかまれたままの夕立も、同じくそれにつられて身を低くせざるを得なかった。

夕立「……ほいっ」

 そしてついでと言わんばかりに、しゃがんだ拍子に隙間に挟まった硬貨でも見つけたように、鈴谷の肩を掴む男性に向かって、思い切り足を滑らせた。

「ど、ぐあっ」

 踵から水平に、突然足払いをされた男性は、当然そのままの勢いで後頭部から転倒した。

 冗談かと思うくらいの転倒の仕方をした男性に見向きもせずに、鈴谷の腕を取って立ち上がらせる夕立。

夕立「とりあえず帰るっぽい?」

鈴谷「え、と」

 夕立に手を引かれ、中腰のまま言い淀む鈴谷ではあるが、そんな二人を逃すわけもなく、他の作業員が詰め寄る。

「おい、随分手荒なま、げっ……!」

夕立「ていっ」

 一切の躊躇なく、背後に向かって垂直に蹴りを飛ばす。

 突然の攻撃に回避も防御も出来ず、ただ腹部に蹴りを受けた男が、悶絶しながら膝を折った。

夕立「はい立って鈴谷さん、それと、もう一発!」

「うげっ」

 先ほどと同じ角度に、今度は振り向きながら蹴りを飛ばす。

 しかし男は膝を折り、やや中腰だったので、今度はそれを腹部ではなく胸部のやや上辺りに貰った。

 結果男は勢いのまま後ろに吹っ飛び、ついでに棚にぶつかり幾つかのファイルを更に頭部に落下させた。

夕立「どれどれ……」

 余裕そうな表情と声でそれを拾い上げる夕立だったが、そんな暇も与えず別の男と、そしてさらには事務員まで立ち上がりこちらに向かってくる。

 今度こそ鈴谷は内股に震え、空いた片方の手だけを自分の胸の前に寄せて恐怖から逃げようとするが、それよりも早く夕立が動いた。

夕立「やっちゃいますかー!?」

 もう既にやらかしてはいるものの、そんな掛け声と共に持っていたファイルをフリスビーのように事務員に投げつけ、ものの見事にそれが命中する。

 残った男がこちらに来るより早く、手前のロングテーブルを引き寄せ、通せんぼをするように手で壁にした。

「ぬっ!?」

 男と夕立の前に割って入ったそれをすんでの所でかわし、それに足を乗せて踏み越えようとしたその瞬間、今度は夕立がそのテーブルを蹴りつける。

「う、うおっ!」

 当然男はつんのめり、バランスを崩して顔から地面に倒れそうになるが、何とかそれを堪えて着地した。

 ……が、着地するのに精一杯で、続く夕立の蹴りに反応できず。

「がふっ」

 強かに顔面を蹴り上げられ、あっけなく男は伸びた。

夕立「終わったっぽい」

鈴谷「……」

 一つ息を吐き、夕立がそう答えた。

 未だにぺたんと床に座ったままの鈴谷だったが、心配そうに自分を見る夕立の視線に気付き、今更ながら平静を装って立ち上がった。

夕立「帰りましょ」

鈴谷「そうだね……」


 あのまま事務所で情報を漁る事も出来たが、ファイルを投げつけた事務員は気絶したわけでもないし、またいつ他の作業員が帰ってくるかも分からなかったので、その場を立ち去る事にした二人である。

夕立「んー。良い汗かいた」

 そんな目的の為に出かけたわけではないのだが、しかし夕立が居なければあの危機を乗り越えられなかった事を考えるとあまり強く言えず、今回ばかりは黙る事にした。

 いや、というより、それを言うのであればそもそも彼女が無策に工事現場に向かいなどしなければ、ああはならなかったわけなのだけれど。

 しかも名乗りを挙げた上で事務所で暴れたとなると、後々大変な事になりそうな気がしてならないのだが、とはいえ全く何も情報が得られなかったわけでもなかったので、やはり結局言葉に詰まる鈴谷なのだった。

 そんなこと露とも知らない夕立は、いつの間にか事務所を訪れる前の気の抜けた状態になっており、ふらふらとした足取りで街中を歩いている。

 ……無論、事務所を出た時の、鈴谷の手を掴んだままで。

鈴谷「……っていうか、もう良い加減放して欲しいんだけど」

夕立「そーお?」

鈴谷「そーおなの」

夕立「ふうん」

 街中を、見た目綺麗な制服姿の女子二人が手を繋いで歩いている。

 仲微笑ましいと言うか仲睦まじいというか、ともかくも三月の夕方前という暖かい季節に丁度良いような光景に、否応なく視線は集まる。

 男性の目線は怖いが、この暖かい目線もそれはそれで恥ずかしい。

 半ば千切るように夕立の手を振りきり、息を吐く。

 別段残念そうな表情を見せるでもなく、夕立が欠伸をしながら空を見上げた。

夕立「なんか凄かったっぽい」

 間違いなく渦中の中心は彼女なのだが、本人にその認識がないので仕方がない。

 代わりに軽い頭痛を覚えながら鈴谷も頷いた。

鈴谷「……、まぁ、そうだね」

 元より工事の背景についての情報がすんなり聞けるとは思っていなかったわけだが、しかしあの大立ち回りのおかげで一つだけ分かった事があった。

 それは、夕立が艦娘であると言う質問に頷いた時からの彼らの対応である。

 それまでは、区役所の時と同様に判を押したような機械的な対応だったのにも拘らず、いざ自分たちが艦娘だと分かった瞬間、逃がすまいとしてきたのだ。

 それは、明らかに一般市民に対する態度と艦娘に対する態度に差がある事を示唆していた。

 その理由までは正確には分からない。

 艦娘を人間だと思っていないからああいう態度になったのか、それとも自分たちには尚更強く工事の内容を言えない何かがあるのか。

 前者ならまだしも、もしそれが後者であれば、それがどういう理由なのか。

鈴谷(清霜の言うとおり、秘密裏に鎮守府の取り壊しも計画されている……?)

 初めに彼女にそう言われた時はよもやとも思ったが、あれから時間が経ち、そして今日の出来事を踏まえて考えると、一概に思考の外においておくべき事柄でもない様な気がしてきた。


夕立「喉乾いたっぽい」

鈴谷「……あ、そ」

 緊張感の欠片もない夕立に呆れながら、そういえば最近紅茶を飲んでいないな、なんて事を考える。

 熊野が生きていたときは殆んど毎日飲んでいたし、彼女が亡くなってからも喫茶店や墓前で一人口にしていた。

 だけれど、ここ最近の工事の騒動で、それどころではなかった。

 変わらず墓参りはしているけれど、喫茶店でゆっくり紅茶を啜る時間さえとるのが惜しくて、闇雲に足を動かしていたのを思い出す。

 何とかして墓は守りたい。

 でも、それにかまけて思い出を最近、ないがしろにしていたかもしれない。

 そしてそうまでして探していた情報を、飄々とした態度で摘んだ夕立が目の前に居た。

鈴谷「……紅茶」

夕立「うん?」

鈴谷「紅茶で良いなら、すぐそこに店があるよ」

 別に紅茶専門店、と言うわけではない。どこにでもある普通の喫茶店だ。

 ただ、いつもその店では自分は紅茶を飲んでいたし、今回もそうするつもりだったので、何となくそう言った。

 自分を疎かにされて、ふんと拗ねる熊野の姿が、少しだけ心に浮かぶ。

 きっとそれに謝るつもりも、もしかしたらあったかもしれない。

 あるいは。ちょっとだけ。

 ちょっとだけ、夕立に感謝している気持ちが、あったかも……だなんて。

 そんな事。

 絶対に、本人には言ってはやらないけれど。

夕立「紅茶かー。あんまり飲んだ事ないっぽい」

鈴谷「別に紅茶じゃなくたって良いよ、他にもあるし」

夕立「ラムネにしようかなー」

鈴谷「はいはい、なんだって良いよ」

夕立「あ」

鈴谷「何」

夕立「夕立、お金持ってないっぽい」

鈴谷「……良いよ。あたしが出すから」

夕立「ほんと! わーい」

 はしゃぐ夕立を見て、思わず溜息を吐きながら。

 何故だか少し苦笑している自分が、そこにいた。


「……あれ。遅かったか」

「居ませんね」

「こんなに荒らして、全く。おてんば娘だ」

「のんびりと食べているからです」

「そう言うなよ。まあこう言う事もあるさ」

「それより、彼らはどうするんですか」

「そうだねぇ。どうしようか。折角俺がこうして彼女に会いにきたのに、帰してしまうなんて。全く酷い人たちだ」

「……」

「彼女は繊細だから、丁寧に扱ってあげないといけないのに。大方乱雑に扱ったんだろう」

「……先ほどは、おてんば娘だと言いませんでしたか?」

「そうだっけ?」

「……都合のいい記憶力ですね」

「手厳しいなぁ。妬いてくれているのかい?」

「……」

「冗談だよ。おお怖い」

「冗談でも、そんな事を言われたくありません」

「じゃあ本気で言おうかな」

「尚更嫌です」

「ワガママだなぁ、君は」

「……」

「まぁ、良いか。それより、彼らだけど」

「はい」

「誰の右腕が欲しい?」

「……」

「冗談だよ。ふふ」

艦載機ですが、そのまま「渡す」という安価をとるか、出撃・演習の時に加賀さんを選ぶ、または好感度が60になれば自動で渡ります。


【三月三週 前半】


提督「夕立、できたか?」

夕立「ううー、全然……」

 執務室。

 鈴谷と工事について調べていた際に、工事現場で暴れまわったと聞いたときにはさすがに眩暈がしそうになった。

 そして次の日にその事について責任者らしき男性が出向いてきた(この鎮守府にはまだ電話がないので、直接くるしかなかったのだろう)時には、眩暈で卒倒しそうになったが、一応被害届や訴訟はしないでくれるそうだ。

 だからと言って無罪放免というわけにも行かず、反省の意味で夕立には朝から反省文を書かせているのだが……。

夕立「もう書けないっぽい……」

提督「まだ十六文字しか書いてないじゃないか」

 三時間で原稿用紙たったの一行という有様である。

夕立「こういうのは苦手」

 反省文を書くのが得意なものなど普通は居ない。

 反省文と建設現場への立ち入り禁止だけで済んだのが不思議なくらいなのだから、せめてこれくらいはこなして欲しい。

夕立「もう無理、これぞソロモンの悪夢ね……」

提督「意味の分からない事を……」



↓2

1.出撃

2.演習

3.遠征

4.工廠

5.その他(自由安価。お好きにどうぞ)

憲兵の「け」の字もないなこの世界は!
これほど「憲兵仕事しろ」と思った事はねぇ。


 朝の七時に書き始めた反省文は、結局昼の一時になっても三十文字程度にしかならずに、一旦そこで区切る事にした。

 既に頭から湯気を出しそうなほどに疲弊している夕立のこの状態では、これ以上粘っても意味がないだろう。

 それに、夕立一人に接し続けるわけにもいかない。

 これから出撃もしなければいけないし、街の工事についてだって調べたい。

夕立「出撃よー!」

 先ほどまでとは打って変わって、明るくなる夕立。

 その興味や集中力を、もう少しそれ以外の部分にも向けて欲しいものなのだが……。

提督「ああ、ええと。その前に、加賀」

加賀「はい」

提督「今更ではあるが……工廠室に、艦載機を用意してある」

加賀「……」

 確か約束をしたのは、年が変わる前だったか。

 それから早三ヶ月、ようやく彼女との約束を果たせた。

 遅すぎて、遅すぎるくらいではあるが、それでも彼女の信頼を一かけらでも掬えたのであればそれで良い。

提督「遅くなってすまなかった」

加賀「……遅いわ、本当に」

 特別表情を変えるわけでもなく、普段どおり淡々とした表情で答える。

 俺としても、彼女に喜んで欲しいとかそんなつもりは全くなく、少しでも役に立てればそれで良いので何も言わない。

 工廠室に向かい、踵を返して歩く加賀。

 その足が、一度止まる。

加賀「……」

提督「?」

 振り返ることなく、ぽつりと加賀がつぶやいた。

加賀「一応、感謝はしているわ」

提督「……、……。ああ」

 たったそれだけの言葉ではあるが、それでも再度歩き出した加賀の足取りは、どこか少しだけ軽やかなものに見えた。

 そして俺もまた、そんな言葉に少しだけ心を洗われた気がした。


榛名「榛名、いざ出撃します!」

夕立「憂さ晴らしするっぽい!」

睦月「憂さ晴らしも何も、自業自得なのです」

浜風「私もその場面に居たかったかな」

清霜「いやいや……」

加賀「……」

榛名「加賀さん? どうかしました?」

加賀「いえ。なんでもないわ。私は後ろに下がります」

榛名「え? ……、ああ、ええ。はい、そうですね」

睦月「艦載機ありの加賀さんかー。今までよりパワーがみなぎっちゃうのかにゃあ」

清霜(あの人空母だったんだ……)

夕立「加賀さんが下がるってことは、夕立の爆弾……? 独占?」

浜風「独壇場、ね」

睦月「無理して難しい言葉使わなくて良いのです、ぽいぽい言ってれば良いのですよ」

清霜「容赦ないわね……」

榛名「戦闘時の陣形は単縦陣、先頭は榛名、次いで夕立さん、睦月さん、浜風さん、清霜さん。後尾が加賀さん、ですね」

加賀「ええ」

夕立「はーい」

睦月「いい? 先頭は榛名さんだからね? 夕立ちゃんじゃないからね?」

夕立「睦月ちゃんしつこいっぽい」

睦月「どの口がそれを言うか」

浜風「犬と猫の喧嘩みたい」

清霜「そういう浜風は狐ね……」


浜風「……榛名さん」

榛名「はい、なんでしょう」

浜風「何となく、この先に敵が居る気がします。勘ですけど」

睦月「浜風ちゃんの勘は良く当たるから」

清霜「一応視界には敵は見えないけど」

夕立「匂いもしないっぽい」

清霜「匂いって」

浜風「唯の勘です。聞き流してもらっても構いません」

加賀「……敵が見えてから索敵機を飛ばしても意味がないわ」

榛名「そう、ですね。お願いします」

加賀「ええ」

加賀「……」

加賀(零式艦戦五二型。九七式艦攻。九九式艦爆。どれほど久し振りかしら)

加賀(この重み。この感覚)

加賀(……ええ。一応、だなんて言ったけれど)

加賀(余計な言葉だったわ)

榛名「加賀さん?」

浜風「……」

加賀「鎧袖、一触よ。心配要らないわ」

加賀(これで、やっとちゃんと戦える)

加賀「……、発射!」

睦月「おおー」

夕立「ぽいー」

加賀「……」


加賀「……ありがとう」

途中ですが今日はここで終わりです。

加賀さんの好感度上昇ですが、以前どこかで言った(どこだったか全く思い出せない)、「好感度60になる前に特定の行動をすると良い事があるよ」的な奴です。
加賀さんの場合は艦載機プレゼントがそれでした。
なのでちょっと後々ちょっと良い事があります。

乙乙
良いことあるのかやったー!

ちなみに睦月榛名浜風にも影響ある特定行動はあったの?

>>279
全員特定のそういうのはあります。
睦月の場合は「浜風が大破する」
榛名の場合は「秘書艦から外す」
浜風の場合は「右目を確かめる」でした。
選んでたらまぁヒントに繋がる内容のお話が入ったり好感度が上がったり真っ当なルートに入りやすくなったりする感じですね。

前提督と会話してたのって大和なの?


加賀「敵艦発見、相手は四隻」

榛名「良かった、数的優位ではありますね」

 それを聞いて、皆が戦闘陣形を整える。

加賀「重巡一隻、軽巡一隻、駆逐二隻」

夕立「余裕っぽい!」

 にっと口角を上げ、いつもの如く海面を強く踏みしめた夕立。

浜風「駆逐艦の比率で言えばこっちの方が上ではあるんだけど」

清霜「位置はどんな感じですか?」

加賀「十一時の方向ね」

榛名「進撃しましょう!」

夕立「っぽい!」

睦月「榛名さんロープないんですか?」

榛名「ええっ……。すみません、不評だったので持ってきませんでした……」

 睦月の問いかけに榛名が振り返り、その隙を縫うように夕立が飛び出した。

清霜「あっ」

夕立「倒すっぽい!」

 最初に気づいたのは清霜で、その声に思い出して榛名が慌てて前を見る。

睦月「夕立ちゃん!」

 次いで睦月が声を挙げ、それと共に榛名が目を見張るが、既に止める間もなく夕立は榛名よりも数メートル前を行っていた。

 前傾姿勢のまま海を走る。

 加速と共に髪が靡き、遅れて光を反射させて毛先が仄かに赤みがかって見える。

 興奮を隠す様子もなく、迸る熱を発するように、瞳も彩を紅くした。

 そして連装砲を高く掲げ上げ、咆哮の様に犬歯を見せながら目を細め、

夕立「素敵なパーテイー、し、……」

夕立「……、……お、おお?」

 宣言をすべく駆けたその夕立の疾走よりも早く。

 彼女の視界で、深海棲艦が爆ぜて煙を上げた。

夕立「ぽ? い?」

 振り返る夕立。

 視線の先の先、陣形の一番最後尾。

加賀「……ふっ」

 空から降る爆撃。

 弓を弾いた姿勢のまま、微かに右指を擦り合わせ、艦載機の行く末を見届けた加賀が息を吐いた。

 一航戦、空母加賀。彼女の先制攻撃が、深海棲艦を貫いたのだ。


 四隻居た深海棲艦のうち、駆逐艦一隻を完全に沈め、更に軽巡洋艦も中破に追いやった事で、形勢は完全にこちらに傾いた。

 気を取り直したように夕立が再度前方に体を向ける。半円と半円と描いたので、これで綺麗な月を海に刻んだ事になる。

夕立「今度こそ……!」

榛名「夕立さん! ……加賀さん!」

 その言葉と同時にぱっと加賀が空に艦載機を飛ばした。

 空を切るように爆撃機が夕立を追い越し、深海棲艦へと向かっていく。

 夕立とてその俊敏性とスタートダッシュは目を見張るものだったが、それよりも早く再度加賀の攻撃が滑降と共に海面へと突き刺さる。

睦月「おおー……」

榛名「陣形そのまま、夕立さんのところを詰めて追います!」

 感嘆しながらそれに見入る睦月だったが、榛名の言葉にようやく意識を前に向けた。

 既に清霜は自身に一番近い加賀のフォローに回っており、浜風は元よりあまり見入っていなかった。

 自分だけぼうっとしていたようでやや恥ずかしさを覚えながら、それを誤魔化すように足を動かし、榛名の背中を追う。

 加賀の二度目の攻撃で軽巡洋艦は沈み、残った二隻のうち駆逐艦ははぐれるように右へ右へと揺れていった。

夕立「むむぅ……!」

 少しだけどちらを狙うか迷いながら、結局逃げていく駆逐艦よりも重巡洋艦に狙いを定めた夕立が、砲撃をかわしながら迫っていく。

夕立「これで、どーお!?」

 夕立の砲撃が重巡棲艦を捕らえるが、しかし仕留めるにはいたらず、やや舌打ちを零しながら揺れる海面を蹴飛ばす。

 その表情は、いつもの不敵な揺らめきではなく、どこか苛立ちが目立って見えた。

 それは恐らく、二度とも加賀に後塵を拝し、思うように敵をしとめられていないことに対するものだろう。

 そして再度砲撃をするべく構えた所で、後続が追いついた。

榛名「勝手は、榛名が許しません!」

 肩を並べるように夕立に近づき、そして連装砲を迷いなく撃ち放つ。

 その言葉は深海棲艦に向けたものと言うより、むしろ夕立に対する言葉のようにも感じられた。

夕立「……むぅ」

 それから逃れるように、残った駆逐棲艦を目で追う夕立だったが、しかしそれも既に睦月が追撃済みだった。

夕立「……、……。うー、もー! これじゃ戦えないっぽいー!」

 癇癪を起こすように夕立が叫び、翠色の瞳を瞬かせながら憎らしげに空を見上げる。

 そこには既に艦載機もなく、青い空が広がっているだけだった。

完全に寝落ちです、すいません許してくださいオナシャス!

ちゃんと読んでればあれは簡単だったぞ

すみませんが更新は明日になります、ご了承ください。

>>338-339
終わった後なら何とでも言えるわな
あの時も正解者は五人中一人しかいなかったんだぜ?

>>342
少なくとも2は完璧に地雷だったのは分かったでしょ

>>344
そうか?俺はどっちもあり得そうで分からなかったわ
マジで相談タイムが欲しい……

>>342
もしかして3が外れだったと思ってるの?
2の理解の放棄以外は理解するための行動で当たりだぞ

>>349
3は結論先延ばし(現状維持)で△って感じだから正解に含めなかっただけや

建造はいらんから今いるのを上げよう
正直今から好感度1が来て新しい問題持ち込みますとかやっとれんわ

いやいや>>1>>57って言われてるんだから建造はしなきゃ駄目でしょ

>>361
>>70で「時期過ぎて足りなきゃこっちで艦娘は補完するよ、好感度無いから戦力的に不利になるけど 」
って言ってるから決して詰むって訳では無いでしょ、やっといた方がいいのは確かだけど

>>360、建造は非ヒロイン化(トラウマ無し)にも出来るから問題は無いかと

本当申し訳ないです、明日は更新します。

場所が場所なので先に言っておいた方がいいかなと思ったので言いますね。
加賀睦月と一緒に本部突入からやりますが、その際に安価をとる予定です。
内容は「正面入り口から堂々と入るか」「裏口から入るか」「全員で行動するか」「二手に別れるか」です。
大体お察しの通りローリスクローリターンをとるかハイリスクハイリターンをとるかですね。
ただし裏口を知っているのは加賀さんだけですので、彼女をおいて裏口にいくことはできません。

(よし、事前に言ったし選択肢次第で壊れても大丈夫だな)


加賀「……」

提督「……」

睦月「ちょっとちょっと、二人とも……」

 車の行き交う大通りを挟んで向こう側に、本部がある。

 黒い門は口を閉じて、重い雰囲気を醸し出している。恐らくは車両が来た時にしか開かないのだろう。防犯の面で言えば、確かに当然だった。

 門の両端には二人の警備員が控えており、鋭い目つきを見せている。

 車両用の大きな門のほかにはもう一箇所、すぐ傍にそれより狭い出入り口があり、こちらは門もなく人二人分ほどの横幅を見せたままだ。こちらは歩行者用なのだろう。

 ただし、こちらは脇の受付を通る事になるので、いずれにしても警備員を避けて通る事はできないだろう。

 そんな警戒された本部を見るのが俺と加賀。

 そしてそんな俺たちを見て袖を引くのは睦月である。

提督「どうした、睦月」

睦月「どうしたもこうしたもないのですよ」

 睦月が引っ張っているのは、俺の服の裾。

 この距離での話し声が、道路の向こう側にまで聞こえるとは思えないのだが、それでもやはり話し声は気持ち控え目になる。

 背伸びをしながら話す睦月に、少しだけ屈んで彼女に耳を近づける。

睦月「そんなしかめっ面して睨んでたら、いくらぼそぼそ話してても気付かれるのです」

提督「……そんなつもりはなかったんだが」

 自分としては、全くそんなつもりはなかったのだけれど。

 どうしても本部を前にすると、穏やかではいられないのだ。

睦月「……、気持ちは、分かりますけど」

 春雨をこの本部で失ってから半年が経つ。

 半年。

 たった半年前の出来事だ。

 いつだってあの日のことは脳裏に焼きついたまま離れない。

 あの日の言葉、彼女の表情、響く銃声。

 床に崩れる彼女の身体。

 床に飛散した血痕の形。

 何一つどれをとっても、色のついた風景のまま心を縛り付けている。

 その本部を前に、どうしても冷静を保っていられる余裕がなかった。

 そしてそれは加賀も同じだった。


睦月「提督もですけど、加賀さんもです」

加賀「……私は別に、いつも通りだけれど」

 加賀もまた、本部に対して苦い思いを強く持つ。

 かつてこの本部に籍を置き、その過程であの鎮守府に調査に向かい、そしてそこで地獄に巻き込まれた。

 身を削り、心を殺す思いで過ごした日々の先に待っていたのは、本部の無情な突き放しだった。

 任務を果たせず、絶望と責任を押し付けられた加賀が、今度は逆に本部に潜入しようとしている。

 それを因果というべきか、それとも皮肉と言うべきなのかは、俺には分からない。

 けれど、きっと、加賀の本部に対する感情は、過ごした時間で考えるのであれば俺よりも深く重いのかもしれない。

 その加賀も表情を曇らせるのは、仕方のない事といえた。

 ……そしてそんな二人が揃って似たような表情をしているのだから、睦月が気苦労を覚えるのもまた、当然である。

睦月「二人ともそんな顔で本部に行くんですか? 二秒で追い返されるのですよ?」

提督「そうは言ってもな」

加賀「別にいつも通りだから、どうしようもないわ」

 別段アイコンタクトをしたわけでもないのだが、自然俺と加賀とで返答が重なる。

 俺の袖を引く一方で、もう片方の手で一度こめかみに手をやり、睦月が息を吐いた。

睦月「そんな仏頂面で本部に乗り込んだら、テロリストと思われるのが関の山です。もう少し普通にしてください、普通に」

提督「普通……」

加賀「……」

 二人して一度、互いの表情を見やる。

 睦月のおかげで少しだけ笑えるようになったかもしれないが、それでもまだ、どうしようもないほどに感情を浮かばせるのが難しい。

 そしてそれはどうやら加賀も同様で、思えば彼女の穏やかな表情や笑ったところは見た事がなかった。

 多分俺も加賀も、元々あまり感情を大きく表現する性格ではないのだと思う。

 重なってそういう性格で、重なって辛い経験をしたということもあり、どうしても今この場所で無表情になるのは避けられそうになかった。

 そういう意味では、感情表現が豊かな睦月が居てくれて助かったとも言える。

 もし俺と加賀だけで本部に行けば、睦月の言うとおりただただ警戒されるだけだったかもしれない。

睦月「似たもの夫婦みたいな反応やめるのです」

 文字通り俺と加賀の間に立ち、そして二人の手を引いた。

 袖でなく手なのは、加賀が半袖だからである。同時に俺に対しても、袖から指を絡めるように握りなおしたのは……、まぁ、今は置いておく。


加賀「ところで」

 道端で手を繋ぐ三人組、と表現すると、いかにも怪しい組み合わせではあるが、振りほどく様子もなく加賀が口を開いた。

加賀「あの正面の門からではなく、裏口から入る方法もあるのだけれど」

提督「裏口、か」

 本部に勤めていた加賀ならば、確かに知っていても不思議ではない。

 まさか出入り口があの一箇所と言う事もないだろうし、それを知っていれば、警戒を掻い潜って忍び込む事も可能だ。

睦月「でも、それって却って危険なのでは」

 対して睦月の言葉も同様で、裏口には裏口の危険もある。

 何しろ正規の訪問方法ではないのだから、忍び込むところを見つかったら即座に追い出されるだろう。

 追い出されるだけならまだましで、ある程度の処罰も覚悟しなければならない。

 ましてや俺と加賀は、あの本部からすればすでに“前科”がある厄介者だ。普通の侵入よりも重く罪を見られても文句は言えない。

 その場で拘束されれば間違いなく拘留され、下手をしたらそのまま処罰される可能性も低くはない。

提督「……」

 もしそうなったら、それはあの夏の時と同じ事の繰り返しだ。

 大和達を失って、本部に取調べを受けたあの時。

 俺はそのまま本部に拘束され、その間に金剛や春雨が傷つき、そして彼女達と一緒に帰ることは出来ずに、鎮守府を去った。

 残った雪風たちに何も言い残せないまま、ただ一方的に鎮守府を追い出されたあの出来事を、また繰り返す事になるかもしれない。

 それは避けたかった。

 睦月や榛名、或いは浜風のように、俺に信頼を向けてくれている彼女たちから、また何も言えずに去るのは苦しいし、あってはならない。

 だけれど、もしここで貴重な情報をつかめれば。それで、鎮守府や鈴谷を守れれば。

 それができるのなら、前者に一瞬で心傾けるのに戸惑いを残す程の価値はあるようにも思えた。

 つまりその分、潜入出来れば実りは大きいはずだ。

 正規の方法で、正面から向かっても、得られる情報や向かえる場所は恐らく限られる。

 反面加賀の案内の下、普通の方法では通してもらえない場所に忍び込めれば、得られる情報の量や密度は言うまでもなく破格のものになる。

 リスクを考慮するか、リターンを求めるか。

 今この場ではどちらが正解とは分からないし、きっとそれは今日が終わらないと判別できないだろう。

加賀「……私は一人でも行くつもりよ」

 そんな俺の思考に答えるように、加賀が呟く。

 俺と同じ様に、一方的に自分の居場所を追い出された加賀。

加賀「忘れ物を取りに行きたいの」

 その加賀が、表情を殺したまま、抑揚を抑えたまま。

 それでも確かに分かるほどの強い決意と共にそう続けた。

睦月「加賀さん……」


 加賀の言う忘れ物というのは、俺には分からない。

 加賀があの鎮守府で、鈴谷の親友を看取ったのは一昨年の夏の終わり。

 それから程なくして加賀は本部を追い出され、賠償と言う形で今の鎮守府に正式に籍を置くことになった。

 つまりは加賀があの本部を離れてから、一年半ほど時が経つ。

 果たして彼女の所持品が、今も本部に残っているのかといわれれば、首を捻らざるを得ない。

 本部としては加賀の出来事は失態とも言える部類で、出来る事ならば早く忘れたいだろう。

 そんな彼女の所持品を、今も大事に保管しているとは、到底思えない。

加賀「……」

 あるいは。

 加賀の言う忘れ物は、物品を指すのではないのかもしれない。

 それは似たような経験をした俺からこそ思った直感だった。

 会議室で、いくら叫んでも訴えても俺の言葉は聞き入れてもらえず、最終的に春雨は射殺された。

 それと同じで加賀だって、自分やあの鎮守府を支配していた悪魔の存在をいかに訴えようとしても、それは封殺された。

 日記に記す事以外に加賀が取れた行動は殆んどなかったし、その日記も陽の光を浴びる事はなく今日に及んでいる。

 そんな加賀にとっての忘れ物とは、文字通りの意味ではないようにも思えた。

 もしかしたら、あの時を取り戻すような、自分の中の暗い幻影を取り払うような。

 そんな心残りや後悔を振り払うための、彼女なりの訴えなのかもしれない。

 それは言い換えれば危険な賭けで、失敗は許されない綱渡りでもある。

睦月「提督、どうするのです……?」

 きゅっと握る指先に力を込めて、睦月が尋ねる。


22時から始めます、安価も22:00以後に一番早く2つ言われた選択肢ということで。この中から選んでください。


1.三人で正面玄関から堂々と入る

2.三人で裏口から侵入する

3.表に提督、裏に睦月と加賀

4.表に睦月、裏に提督と加賀

5.表に提督と睦月、裏に加賀


 握られた手の温度が、行き交う車の音に溶ける。

睦月「睦月は、出来れば無茶はして欲しくないのです。勿論加賀さんもです」

提督「……」

加賀「……」

 互いに目を合わせる事もなく、しかし言葉に詰まるのも同じだった。

 加賀は、本部に失った自分を取り戻しに行こうとしている。

 俺だって、例えばもし侵入した先にあの会議室があったとしたら、きっと冷静さを完全に失うだろう。

 もう跡形もないと分かっていても、半年前の幻影を求めて、あるはずもない亡骸を求めて、そこに足を向けるだろう。

 それだって原理としては加賀と同じなのだ。

 失くしたものを探しに、或いは取り戻しに行くために俺と加賀は前を見据え。

 そしてそれを止めようとして、睦月が手を握る。

 形のない過去を探す二人を、現実の睦月が繋ぎとめていた。

睦月「睦月は、やですよ。二人が捕まったりして、居なくなったりするのは」

 ほんの少しだけ震えた声で、睦月がそう紡ぐ。

 仲間を失った俺と、仲間を看取った加賀。

 だけれど睦月だって、大切な仲間を失った過去がある。

 それを乗り越えようと必死になっている睦月の手を振りほどいて、足を踏み出すことは──

睦月「居なくならないでください」

 ──出来なかった。

提督「……」

加賀「……」

提督「……加賀」

加賀「……」

提督「すまない」

加賀「そう」

 あの会議室に春雨が今も居るのなら、俺はそれでも悩んだかもしれない。

 彼女を救う事ができて、あの秋のことが上書きできるのであれば、きっとそうする理由を探しただろう。

 けれど、もう春雨はそこには居ない。

 嘘と別れの言葉を置いて、彼女は殺された。

 追い求めても、塗り替えられない現実しかそこにはない。

 果たしてそれは、睦月を悲しませてまで確かめるべきものかと自分に問いただすように、彼女の手を握り返す。

 鈴谷に答えた、やり直すと言う言葉。

 しかしそれは今をやり直すと言う事で、過去を求める事ではなかったはずだ。

 今確かにここにある、彼女の体温を失ってでも模索することではきっとない。

提督「俺は、やはり正面から行く事にする。睦月と、」

提督「……、それから、加賀も。君も合わせて、三人でだ」


加賀「……私は一人でも構わない」

睦月「睦月が構うのです!」

 くいくいと加賀の手を引く。

 加賀が眉を顰め、怪訝な表情を浮かべた。

睦月「今の加賀さんの顔、凄く怖いのですよ。そんなんじゃすぐ職務質問されるのです」

 加賀の表情は確かに暗い。無表情と言うよりは影の刺した、陰鬱としたもので、その中から仄かに苛立ちや憎しみに似たものを感じる。

 その濃度をより濃くすれば、恐らく以前俺が向けられたあの殺気に満ちた憎悪の視線になるのだろう。

 しかしあの時に比べると、他人を圧倒するほどの強い目線ではない。

 それは恐らく、加賀の中に余裕や冷静さがないせいだ。

 今の加賀は、目の前に自分を地獄に叩き落した本部があるせいでそれらを失っている。

 だからどこか不安定で、ともすれば危うさにも似たものを感じるのだ。

 自分がそうだったから、殊更にそれを肌で感じる。

提督「加賀。今回は、睦月の言葉が正しい。俺も君も、冷静ではない」

加賀「……」

 加賀は答えない。

 それでも、睦月の手や俺の言葉を振り払わずに、この場に居続けている事が、それに対する何よりの答えだ。

 きっと加賀自身も、自分の内面に気付いている。

 とはいえそれを素直に認めるのは難しい。

 自分は焦っていて、見失っていて、間違っていると。そう認めるのは、難しい。

 あの地獄の中、他人に裏切られ、他人に傷つけられ、そして他人を看取った加賀。

 その彼女が、せめて自分だけは自分を認めて、正しいと思いたいのは、無理もないことだ。

 間違っているのは本部で、少なくとも自分はそれに抗おうとしたと。

 そう思わないと、自分が看取った仲間の命さえも間違っていると言われそうな気がして。

 せめて自分ひとりだけでも自分を認めないと、正気を保ってはいられないのだろう。

 そう思い、そこでようやくあることに気がつく。

 それは、加賀がどうしてモルヒネを投与してまで深海棲艦を討とうとしているかだ。


 加賀が痛み止めを打っているのに気づいたときは、まだ加賀がかつて経験した事を知らなかったけれど、今なら分かる。

 あの日記で、加賀はかつての仲間──鈴谷の親友である、熊野という少女にモルヒネを投与した。

 結果としてそれでもその子は絶命し、それから加賀は同じ様に壊れた艦娘の最期を看取ってきた。

 全ての少女が皆同じ最期を迎えたわけではないだろうが、それでもやはり加賀に看取られて死んでいったことには変わりない。

 そして最初の少女の時を鑑みるに、モルヒネの投与は途中でどうしても切り上げられることになったはずだ。

 打ちすぎても効果は薄れるし、あくまで鎮痛剤は痛みを和らげるもので、それそのものに絶命を回避するだけの効果はない。

 ましてやあの提督は、艦娘を駒のようにしか考えていない男である。

 鎮痛剤を打っても治る見込みのない艦娘に対しては、きっとそれ以上のことはさせなかっただろう。

 延命が利益で、投薬が投資ならば、返ってこない利益の為に投資はしない、と。そういいそうな男である。

 きっと加賀はそんな男に食い下がったかもしれないし、それでも追い返されたのかもしれない。

 それを知らない少女たちからは、迫る死の絶望から罵られた事もあっただろう。恨み辛みを吐かれ続けただろう。

 それを全て心に封じ込めながら加賀が少女達に投薬をしていたのだとしたら、それがそのまま彼女の今の行動原理に繋がることになる。

 少女達を救えなかった。少女達を守れなかった。

 道具のように扱われ、駒のように吐き捨てられた少女達。

 だけれど、少女達は駒でも道具でもなく、艦娘だ。

 命がある。心がある。感情がある。痛覚がある。そして、使命がある。

 深海棲艦を討ち滅ぼす事。

 深海棲艦を倒し続ける事。

 それが艦娘の使命で、それが出来なかった少女達は殺された。

 艦娘として生きられなかった少女達の想い。艦娘として扱われなかった少女達の想い。

 それを背負って、それを晴らすべく、少女達の分まで、加賀は深海棲艦を倒そうとしている。

 加賀の中で、今でも少女達は生き続けている。

 俺がそうであるように、加賀もまた、忘れられない思い出がある。


 いくら恨み言を吐かれようと、嫉み言を吐かれようと。

 手を噛まれようと、指を噛まれようと。

 それでも一緒に過ごした大切な仲間だった。

 痛みに悶え苦しむ少女を前に、加賀が何を出来たのかは分からない。

 だけれど少なくとも、加賀の心だって少女達が苦しむのと同じくらい、毎回傷ついたはずだ。

 その少女達の思いを背負って、少女達を艦娘だと認めさせるために。

 今はもう戦えない彼女たちの代わりに、自分が深海棲艦を倒す為に。

 あの時打てなかった薬を今、打っているのかも、しれない。

 あるいは。

 あるいは、そうする事で、少しでも自分が彼女たちに近づければ、なんて。

 そんな事を加賀が想っているのかどうかまでは、分からないけれど。

 けれど、一つだけ確かなのは、加賀の心はいつだって誰かの為に向けられたもので、きっと彼女は優しい。

 彼女の私室。一度だけ入ったあの場所は、死んでいった仲間の物で一杯だった。

 女性物の小物や観葉植物。

 カラフルな置時計や麦藁帽子。

 菓子や大きめな熊のぬいぐるみ。

 それらが全部亡くなった少女達の形見だとしたら。

 彼女たちとの思い出を、一つだって捨てられないほど、加賀の心だって甘い。

加賀「……」

 それは昔だけではなく、今だってそうだ。

 伊58に何度も差し入れに向かう加賀。

 暴走する夕立の足元を撃ち抜いた加賀。

 そして、睦月の手を振りほどけない加賀。

 表情では分かりづらいけれど、きっと彼女のそういう部分は、昔も今も同じなのだろう。

睦月「……加賀さん」

 そんな加賀が、睦月の言葉に息を吐いて。

加賀「……好きにしたらいいわ」

 それでも頷くのは、当然なのかもしれない。


「ご用件は」

 横断歩道を渡り、歩行者用の入り口を通る。

 当然詰め所のような受付に止められて、そう聞かれるわけだが……

提督「ああ、ええと」

加賀「……」

 ちらりと睦月を見る。

 当然こう聞かれることは想定済みで、建前とはいえ理由を用意しておく必要があると思っていた。

 真っ先に睦月が“睦月にいい考えがあるのです”とだけいったものの、肝心の内容を聞かせてくれなかったのが不安ではあるが、まさか正直にそのまま答えはしないだろう。

 街の工事を、裏で糸を引いている者を探している。

 ……どう考えても、追い返されるのは目に見えていた。

睦月「こほん」

 俺を押しのけるようにして前に出た睦月が、一つ咳払いをした。

 先ほど俺と加賀を諭した睦月だ。恐らく相応のきちんとした理由があるに違いない。

 ここは睦月に任せよう。


睦月「ケッコンカッコカリの書類をください!」

提督「えっ」

加賀「えっ」

「えっ」

睦月「あと指輪もください! 一番良いのを!」

提督「えっ」

「えっ」

加賀「……そう」

 えっ。






 えっ?


睦月「ここなら貰えますよね?」

「はぁ、まぁ」

睦月「良かったです。案内してほしいのですよ」

「その前にまず所属している鎮守府と名前をここに」

睦月「おりょ、そうですか。はい」

「……はい、分かりました。じゃあこの正面の棟に入って、この紙を担当に見せてください」

睦月「はい」


加賀「……ちょっと。何がどうなっているのかしら」

提督「何も聞かないで欲しい」

加賀「無理に決まってるでしょう」

提督「……」

 仰るとおりである。

提督「……、きっとあれが睦月の言う“良い考え”なんだろう」

 実際疑われずに中に入れたのだから、間違いではない。

 多分。

睦月「およ? どうかしたのです?」

加賀「……いえ、別に」

 きょとんと睦月が首を傾げた。

睦月「中に入れたんですから問題ないのですよ」

提督「……あの台帳に鎮守府の場所を書いたが、大丈夫なのか?」

睦月「ああ、はい。南西って書いておきました」

 嘘じゃないか。

睦月「ばれたら間違えて前の鎮守府書いちゃいましたって言うから平気なのです」

加賀「ずる賢いのね……」

 いや、これは賢いといえるのだろうか。

睦月「……もー! 折角中に入れたんですから、もっと喜んでください! それか褒めるとか!」

 ぷんすか。

 睦月が地団太を踏むように踵をコンクリートの路面に打ち、次いで頭を揺らした。

提督「ああ、うん」

加賀「そう、ね……」


睦月「それじゃあ、調査しましょうか」

提督「ああ、その気はあったのか」

睦月「失敬な」

 まさかそんな事はないと思ったが、万一の事を考えていたので、ついそう言ってしまった。

 何しろ相手は睦月である。

 建前というにはあまりにもなんと言うか、生々しい。

 生々しいと言うか、以前一度全く同じ理由でここにきて引き返したこともある。

睦月「何か言われたら、道に迷いましたって言えば多分何とかなるのですよ」

提督「そうか……?」

 どこまでそれで押し切れるかは疑問ではあったが、実際に睦月の提案で中に入れた以上俺と加賀も強くは言い返せない。

 何はともあれ最初の目的である本部への訪問はクリアできたので、後はいかに安全に情報を手に入れるかだ。

提督「ええと、加賀。案内頼めるか?」

加賀「そう、ね」

 ようやく加賀も思考を切り替えたのか、視線だけで辺りを見回した。

 すぐ正面の棟に入ればケッコンカッコカリ、の手続きが出来るらしいので、事務的な内容はそこでするのだろう。

 ここからでは他にも二、三ほど棟が見えるが、俺と睦月にはどれがどの棟なのかは分からない上に、すぐ後ろに先ほどの受付がある。

 彼がこちらを見ているのだとしたら、下手な動きは出来ない。 

加賀「工事を調べるのね」

提督「ああ」

 街の工事が鎮守府にまで及ぶのか。

 本当に工事の理由は区画整理だけなのか。

 もしそうでないのなら本当の目的は何か。

 その工事を計画したのは誰、或いは何か。

 おおよそ気になる点は、この辺りだ。

加賀「そうね……。警備員の目もあるし、今はそのまま、正面の棟に行きましょう」

睦月「おおー」

提督「……」

加賀「……」

睦月「あ、いや。こほん。やだにゃあ、分かってますよ?」

 最近気付いた事なのだが、睦月が猫の様に話すときは、恥ずかしがっている時か誤魔化そうとしている時だ。

 ……何の発見になるのだろうか。いや、ならない。


 さすがに本部の正面棟はある程度人が多い。

 事務作業をこなす職員や、どこかの鎮守府から着たであろう同職の者、あるいは彼らより偉い立場の人間もちらほら見受けられる。

 この時間帯は特に込み入っているのか、清掃員や弁当配達といった外部の人間も確認できた。

 もっと閑散としていれば動きやすかったが、こうなると機密情報を盗み見る、というのも難しそうだ。

 尤も、それを逆手にとって関係者のふりをして堂々と動けば、案外ばれない可能性もあるので、一概に難易度が上がったと言い切る必要もないのだが。

加賀「とはいえ、そういう部屋は大抵鍵がかかっているわね」

 それは当然だ。

 鍵のかかっていない部屋を掻い摘んで行くか、虱潰しに周りに話を聞くか、あるいは何か別の策を考えるか。

 俺と加賀の素性が割れる前に、出来れば素早く行動をとりたいが、さてどうするか。


提督「……そうだな」


↓2

1.部屋を調べる

2.周りに話を聞く

3.ケッコンカッコカリの手続きをする


今日はここで終わりです。

加賀さんと睦月の好感度がそれぞれ57と150な(割っても100超える)ので、コンマ判定せずにまぁなんとかなります。

>>490でそれぞれ

2.三人で裏口から侵入する
ケッコンカッコカリのワードが消えて、加賀さんよりのお話になっていました

3.表に提督、裏に睦月と加賀
問答無用で提督が会議室に行きます。春雨と金剛のお話が挟まったりしてました

4.表に睦月、裏に提督と加賀
コンマ次第で一番ハイリスクハイリターンでした

5.表に提督と睦月、裏に加賀
加賀さんご乱心で大怪我不可避でした

バレンタインにチョコをくれたのにホワイトデーでもクッキーくれる睦月とかいう聖人

すみませんが今日は更新できません

すみませんが更新は明日になります。

お料理のお仕事してるをですが、今日親指を切ったんです
昼に切って、今現時点で凄く痺れて痛いです、動かしたくないくらい痛い、あとまだ血が乾いてない
明日病院行きますが、もしかしたら更新分からないです。本当すみません

神経を少しあれしたみたいです
包帯とったりするまでの間少し更新が出来ないと思います、すみません

ゆっくり養生してください
http://i.imgur.com/I5byWdA.jpg?1

長く留守(?)にしてしまいすみませんでした。今週中には再開します、よろしくお願いいたします。

>>671
二度も素晴らしい絵を描いてくださり本当にありがとうございます、二人の出番もまだあるのでこうなると良いですね......

情報を収集する事が最優先である事は自分でも承知はしている。                                                                事務員から手渡された書類に記載されている文字列は、工事の調査とは全く無関係のものだ。                                                  しかし顔が割れていない今、多少の時間を費やして睦月の気持ちを受け入れられるのなら現状は利用するべきなのかもしれない。                            受付の視線は俺ではなく別の訪問者へと向けられている、書類に再び目を通すと既に書き記した俺の本名と……睦月の文字。                              思えばずっと睦月の気持ちから目を背け続けてきた、彼女が俺の言動に対してどんな感情を胸に秘めていたのかは流石に鈍感な自分にでもわかる。                提督「ケッコン……か」                                                                                                他の方法で睦月の想いと向き合うべきだ。                                                                                   ほんの少しの間違いで彼女を失うかもしれない。                                                                               睦月だけじゃない。加賀や榛名や鈴谷、かけがえのない大切な存在をこれ以上失うのは絶対に嫌だ。                                              大勢失った、癒えない傷を負わせてしまった、二度と引き返せない道にも足を踏み入れてしまった。                                                だからこそ睦月や皆には笑っていてほしい。                                                                                  失わない保証なんて何一つない、我侭であるのも承知の上だ。                                                                      春雨や金剛はきっと俺を恨むだろう……だが後悔の念は無い。                                                                      提督「いい加減だな、本当に」                                                                                           嘆息と共に思わず言葉が漏れた、自分でも馬鹿らしく思える。                                                                       でも……その一言で心なしか体が少し軽くなった。
                                                                              睦月と加賀の動向も気になったが、何かが体から剥がれ落ちた感覚で僅かに思考が麻痺する。
説明し難い感覚だ、この体を包み込むような仄かな暖かさは一体……。     提督「加賀の方は上手くやってるのか……」

修正
情報を収集する事が最優先である事は自分でも承知はしている。
事務員から手渡された書類に記載されている文字列は、工事の調査とは全く無関係のものだ。
しかし顔が割れていない今、多少の時間を費やして睦月の気持ちを受け入れられるのなら現状は利用するべきなのかもしれない。
受付の視線は俺ではなく別の訪問者へと向けられている、書類に再び目を通すと既に書き記した俺の本名と……睦月の文字。
提督「ケッコン……か」
思えばずっと睦月の気持ちから目を背け続けてきた、彼女が俺の言動に対してどんな感情を胸に秘めていたのかは流石に鈍感な自分にでもわかる。
他の方法で睦月の想いと向き合うべきだ。
ほんの少しの間違いで彼女を失うかもしれない。
睦月だけじゃない。加賀や榛名や鈴谷、かけがえのない大切な存在をこれ以上失うのは絶対に嫌だ。
大勢失った、癒えない傷を負わせてしまった、二度と引き返せない道にも足を踏み入れてしまった。
だからこそ睦月や皆には笑っていてほしい。
失わない保証なんて何一つない、我侭であるのも承知の上だ。
春雨や金剛はきっと俺を恨むだろう……だが後悔の念は無い。
提督「いい加減だな、本当に」
嘆息と共に思わず言葉が漏れた。
自分でも馬鹿馬鹿しく思える。
でも、その一言で心なしか体が少し軽くなった。
睦月と加賀の動向も気になったが、何かが体から剥がれ落ちた感覚で僅かに思考が麻痺する。
説明し難い感覚だ、一体この気持ちはなんなのだろうか……。
提督「加賀の方は上手くやってるだろうか……」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月19日 (木) 09:24:01   ID: _e5lsOeI

いつも楽しみにしています
怪我の方お大事に…

2 :  SS好きの774さん   2015年04月13日 (月) 13:17:03   ID: fsgAfcjP

再開やったぜ 
ゆっくり長く待ちますので、無理せず頑張ってください

3 :  SS好きの774さん   2015年04月21日 (火) 01:52:17   ID: gOLP35ho

さて次の更新は7月かな?(ゲス顔)

4 :  SS好きの774さん   2015年05月20日 (水) 10:38:14   ID: 2n1fU--5

金剛さんに救いを!!

5 :  SS好きの774さん   2015年05月30日 (土) 16:43:14   ID: KY1eGiTV

再開ktkr
気長に頑張ってくだしあ

6 :  SS好きの774さん   2015年06月11日 (木) 21:30:27   ID: SlFW47WH

がんびゃ

7 :  SS好きの774さん   2015年07月18日 (土) 11:57:11   ID: CH9X0KeB

再開待ってる
怪我の方お大事に

8 :  SS好きの774さん   2017年07月24日 (月) 04:39:24   ID: 2bnvC1Nj

休日使って一気に読んでしまった
惹き込まれる文章で面白かっただけに残念

9 :  SS好きの774さん   2018年03月13日 (火) 21:46:26   ID: gt2WTh4v

面白くて9まで一気に読んじゃいました。早く次があってほしいなぁと思います。

10 :  SS好きの774さん   2018年03月29日 (木) 17:25:05   ID: pLO9B-tc

ああ、もう更新ないのかな?ずっと待ってますんで、頑張ってください!

11 :  SS好きの774さん   2018年07月04日 (水) 09:56:14   ID: UsHlIF4_

今更やけど更新おねげぇしまっせ

12 :  SS好きの774さん   2018年08月10日 (金) 11:00:49   ID: aR3w2os0

お疲れ様。今までありがとう。

13 :  SS好きの774さん   2018年10月27日 (土) 10:04:42   ID: 8W-esd1t

まだ待ってるよ~

14 :  SS好きの774さん   2018年11月18日 (日) 15:04:38   ID: KQ45o7i1

いつまでも待ってやるぅー❗

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