提督「艦娘たちが心配だなぁ」 (20)
≪執務室≫
提督「うーむ……」
大井「何を一人でうんうん唸っているんですか? 提督?」
大井「お手洗いはこの部屋を出て右ですよ?」
提督「いや、別に腹が緩いとかじゃないから」
大井「あら、そうでしたか」
提督「いつものことながら、お前は心配なさそうだな」
大井「さっきからずっと見るに堪えないお顔を見せていた件と何か関連でも?」
提督「本当に心配なさそうだよ」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1425461158
大井「はっきり仰っていただかないと相談にも乗れませんよ?」
提督「乗ってくれるつもりなのか」
大井「ええ、今日の私は一応、本日の秘書艦ですし」
提督「なるほど、真面目だな……まあ、心配なのはそういうところなんだが」
大井「はい?」
提督「大井はともかく、うちの艦娘たちはみんな真面目だろう」
大井「ともかくって……酸素魚雷の餌食がご所望?」ジャキッ
提督「あ、ごめんなさい、言葉の綾です……」
大井「まったく……それで?」
提督「ああ。日常生活から職務について、真面目なのは大変いいことだと思う」
大井「そうですね、基本的に皆真面目な娘たちですから」
提督「俺はこの鎮守府に着任してから胃が痛くなったことなんて一日もないし……」
提督「……いや、それは言い過ぎた。週にいっぺんは胃が痛いかも」
大井「どうして私の目をじっくり見つめてらっしゃるのかしら?」
提督「ジョークだジョーク。まあとにかく、みんな全く手がかからない」
提督「始末書受け取ったこともないし」
提督「でもな……逆にそれが心配でな」
大井「はぁ?」
提督「同期の提督たちと話すとよく耳にするんだが」
提督「他の鎮守府は毎日てんやわんやで大騒ぎらしい」
提督「同期のひとりは艦娘と毎日飲み会して肝臓破壊されたとか」
提督「他の奴は罵倒されたりきつく当たられたりで若干髪の毛が薄くなってたりとか」
提督「姉妹艦同士のインモラルな恋の嵐が吹き乱れて男の居場所がないとか」
大井「あら、それは素敵ですね。……北上さんはいつ着任するのかしら?」
提督「あ、すいません……」
提督「……で、だ。とにかく、聞けば聞くだけウチの鎮守府は他の鎮守府と違う!」
大井「うちはうち、よそはよそって文言、ご存知ですか?」
提督「大井。俺はな、心配なんだ」
提督「真面目な彼女たちにもこう、息抜きが必要なんじゃないだろうか?」
提督「あいつらは真面目すぎるが故に自分を出せず、心の内にずっと溜め込んでいるんじゃないか」
大井「提督……」
提督「部下のメンタルケアも上官の務めだろう」
提督「もしあの娘たちに不自由させていることがあるなら、それはすぐにでも改善したいから」
提督「だからさ、何かそういう話……情報の断片でも持っていないか?」
提督「……というか、大井はなにか俺に言いたいことないか?」
大井「北上さんの着任はまだでしょうか」
提督「それはその、大本営との折衝等々がありまして……」
大井「毎度毎度聞き飽きましたね、その言い訳」
提督「すいません……」
大井「まあ、必ず北上さんが来てくれるのであれば、今は構いませんけれど」
提督「助かる」
大井「…………私だけ真面目に心配されていない気がするのは業腹ですけどね」ボソッ
提督「大井?」
大井「はい? なんですか?」ニッコリ
提督「……いや、なんでもない」
大井「そうですか」
提督「それでだ、話を戻すんだが、やっぱり面談とか開くべきだろうか?」
大井「そんな大げさな……。少なくとも現状問題は起こっていないじゃないですか」
提督「今はそうかもしれんが、心のバランスってのはふとした時に一気に崩れるもんだ」
提督「……ということを学生時代に聞いた」
大井「ああ、そうですか……」
提督「うーむ……心配だなあ……。……ていうか実は嫌われてたりしたらどうしたもんかな」
大井(無駄な悩みですこと)
コンコン
榛名『失礼いたします』
大井「あら、艦隊が帰ってきたようですよ」
提督「のようだな。榛名、入ってくれ」
榛名「はい。……提督、第一艦隊はただいま帰投いたしました」
提督「お疲れ様」
榛名「成果としましては、深海棲艦方の補給艦を4隻撃沈。当方に損害はゼロです」
提督「流石だな。榛名が旗艦だと皆も引き締まるんだろう」
榛名「そ、そんな……榛名なんて、まだまだです……」
提督「何はともあれお疲れ様。明日の出撃に備えてゆっくり休んでくれ」
榛名「は、はい。失礼いたします……」チラッ
提督「どうした?」
榛名「い、いえ……失礼します」
大井「提督、今こそ訊いてみるべきでは?」
提督「あ、そうか。榛名、待ってくれ」
榛名「は、はい! なんでしょうか?」
提督「最近なにか悩みとかはないか? なんでもいいぞ。飯の量が足りないとかでも」
榛名「な、悩みですか?」
提督「他の鎮守府の話を耳にしていると、真面目過ぎるお前たちが心配になってな」
提督「思いつかないなら、今は無理には聞かない。ただ、何かあったらいつでも言ってほしい。いいな?」
榛名「は、はい。お心遣い、感謝します、提督!」
大井(心配ないって言ったのに、真面目すぎるのはどっちなのやら……)
提督「榛名は行ったか……」
提督「どうだ大井、上手くやれただろうか?」クルッ
大井「正直なところ」
提督「ああ」
大井「違和感が大きすぎます」
提督「あ、そうですか……」
大井「大体、提督は色々と難しく考えすぎなんですよ」
提督「そうかなあ……でもなー……」
大井「はぁ……だったらこの目で見に行きましょうか?」
提督「え?」
大井「出撃後のこの時間なら、皆食堂にいるはずですから。何気ない雑談から糸口が見つかるんじゃないですか?」
提督「えっ? 盗み聞き? いやー、大井さんそれはちょっとまずいんじゃない?」
大井「つべこべ言わずに来なさい」ニッコリ
提督「はい」
≪食堂前≫
榛名「……♪」スタスタ
提督「榛名が鼻唄を歌いながら食堂に入っていった……上機嫌だ……」
大井「どうしてかわかりますか?」
提督「……やっぱり上官の前だと素になれないか」
大井「……」
提督「おい、なんであきれ顔なんだ」
大井「いえ、別に。ほら、行きますよ」
提督「あ、ちょ、見つからないように、見つからないようにな」
大井「わかってますよ」
≪食堂≫
榛名「お待たせしました、みなさん」
朝潮「榛名さん、報告お疲れ様でした」
翔鶴「お疲れ様です」
榛名「いえ、そんな。当然のことをしたまでですから。むしろお待たせしてすみません」
矢矧「そんなことはないわ。……さて、それじゃ、毎出撃後恒例のおやつタイムね」
鳳翔「今日のおやつはお団子ですよ」
翔鶴「おいしそうですね」
朝潮「楽しみです!」
提督「へー……あーいう集まりやってたんだ」
大井「ええ、出撃後は必ず全員で」
提督「……あの、大井さん。呼ばれてないのはもしかして……」
大井「秘書艦は抜きでやってるんです。一応職務中ですから。提督が想像しているようなことは断じてありません」
提督「で、ですよね……」
矢矧「食堂に来た時やけに機嫌よかったけれど、何かあったの?」
榛名「あ、私ですか? いえ……あ、ううん、ありました、いいこと」
朝潮「いったいどんなことが?」
榛名「その……提督が、悩みがあるならいつでも遠慮せずに相談してほしいと」
鳳翔「あら……それは羨ましいです」
翔鶴「いいなぁ。旗艦になっても、まだ私はそんなこと言ってもらえてないです……」
榛名「あ、その……」
翔鶴「あ、榛名さん、ごめんなさい。困らせるつもりじゃなかったの」
大井「……だ、そうですけど?」
提督「……あれで嬉しいものなのか?」
大井「提督がずけずけ物を言うのって私相手くらいなものですよ。少なくともみんなはそう思ってると思います」
提督「え? そうか?」
大井「塩を送るようであれですけどね」ボソッ
このSSまとめへのコメント
提督love(ヤンデレっぽい)の大井っちが見れそうだな(´∀`)
これ凄く期待
メンツ的に真面目だわな、と