幼「何が?」
男「桃の節句は桃太郎とは何にも関係ないと思うんだ」
幼「?」
男「だからその桃太郎コスプレは恥ずかしいやつだと思う訳だ」
幼「えー?これ似合ってない?」
男「呼ばれたから来てみれば……てかその衣装何気に凄いな」
幼「演劇部から借りてきた、本物だよ!」チャキッ
男「何の本物だよ」
幼「だって桃の節句だし……」
男「桃って桃の木の事だろ?花が咲く時期にやるから桃の節句って言うんじゃね?」
幼「最近CMでも活躍してるし」
男「携帯電話会社は関係ないだろ」
幼「私あの『ぱっかーん』ってCM好きなんだよね」
男「それは演じてる役者が好きなんじゃなくて?」
幼「松田翔太格好いいよね」
男「まぁな」
幼「ほら、雛人形にも居るんだよ」
男「桃太郎がか?いやいや……まぁそれは実物を見ればわかるだろ」
男「今年も出したんだろ?あの立派なやつ」
幼「うん!飾り付けもしてあるから見て見て!」
男「それじゃお邪魔しまーす」
幼「お母さーん、男来たよー!」
幼馴染の母「ハーイ」
幼「ごめんね、お母さんちょっと作業中で」
男「まぁあとでちゃんと挨拶するさ」
・
・
幼「ほらほら!ちょっと見てみてよ、この人」
男「あぁ、確かに刀持ってるな……ってこれが桃太郎に見えるのかよ」
幼「こっちが鬼退治した頃の若々しい太郎で、こっちが晩年の太郎」
男「いや、どう見ても別人だろこれ」
男「それにこの2人は男雛と女雛を守る感じのやつじゃないか?」
男「着物はどう見ても戦闘用じゃないし」
幼「鬼を退治した桃太郎は……」
幼「その後国に仕官して、護衛隊の隊長にまで出世し」
幼「安定した収入でおじいさんとおばあさんを安心させましたとさ」
男「桃太郎ってそんな話だったか?」
幼「だって鬼ヶ島から取り返した金銀財宝は皆に返したでしょ?」
男「そうだったか?宝を使って、じいさまばあさまと幸せに暮らしたんじゃなかったか?」
幼「それじゃ太郎が強盗みたいじゃない」
男「あれ?違ったっけな?」
幼「鬼を倒しちゃうような太郎だよ?みんなに返すでしょー」
男「真面目に百姓でもして暮らしたと思うなぁ」
幼「日本一を自ら名乗るモノノフなのに?」
幼母「さぁあぁお待たせー。料理の準備出来たわよー」
男「こんばんは、おばさ……ん?どうしたんですかその格好?」
幼母「うふふ、どう?傾いてるでしょ?」
バッサバッサ
男「それ、どう見ても孔雀ですよね?」
幼母「違うわ!雉よ!」
バサァ
男「……マジですか?」
幼馴染の父「フフフ、雉だけではないのだよ!男君!」
幼父「猿もいるのだ!」
男(おじさんの衣装だけ、ハンズで売ってるパーティーグッズだ……)
幼父「似合うだろう?」
男「は、はぁ……まぁ……」
男(ただの全身タイツですとは口が裂けても言えねー)
幼父「さぁ、男君、君にはこれを」
男「え?」
幼父「桃太郎、雉、猿とくれば……解るだろう?」
男「ええ?」
幼「ほらほら、早く!男が着替えなきゃ、ウチの雛祭りが始まらないよ!」
男「えええ?」
幼母「ごめんね、男君。今年はそういうコンセプトなのよ」
男「ええええ?」
男「幼が思いつきで行動するのは今に始まった事じゃないから平気ですけど」
男「何でおじさん達まで……」
幼母「こんな派手な格好、なかなか出来ないじゃない?楽しくなっちゃって、うふふ」
バッサバッサ
男「何でこうなったんだよ、去年まで普通の雛祭りだったろ?」
幼「フフフ、理由を知りたければ私を倒して行くがいい……」
幼「素直に着替えないと、ない事ない事言っちゃうよ、この場で!」
男「ない事は言うなよ」
幼「じゃああった事は言って良いの?」
男「あった事って……」
幼「お父さんお母さん、私ついに男に告はk」
男「わーわーわーーーーー」
幼「着替える気になった?」ニコッ
男「ちょ……」
幼「はいはい、早く!お父さんの部屋で着付けしてもらって」
・
・
男「おじさん、いいんですか?こんな……」
幼父「いやー、今年はじゃんけんで負けちゃってね」
幼父「あとはまぁ、いつもの閃き思いつきだから」
幼父「……男君、娘の事宜しく頼むよ」
男「な、何のことですか?」
幼父「今更とぼけなくてもええんやで?」ニコッ
男「なんで関西弁なんですか?」
幼父「よ・ろ・し・く・た・の・む・よっ!」ギリギリギリ
男「ちょ!おじさん!苦しいですっ!」
幼父「……ちょっと変かもしれないけど、大事な娘なんだ」
男(ちょっと?)
幼父「君になら任せられる!」キリッ
幼父「あの子を宜しく頼むよ」ギリギリギリギリ
男「ちょ、マジで、げほっ」
・
・
男「ちょっと幼、これ……」
幼「わー、男可愛いー」
幼母「うふふ、男君、似合ってるわよ」
男「桃太郎のお供って、白い犬じゃなかった?」
幼「さぁ?」
男「これ、どう見てもポメラニアンなんですけど」
幼「うんうん、似合ってるよ」
男(武士・孔雀・猿・ポメラニアン……そうだったかなぁ)
幼「何湿気た顔してんのよ」
幼「今日は楽しい雛祭りよ?」
男「楽しんでるな、幼は」
幼「ささ、甘酒を飲むのだー」
男「お?」
幼「あときび団子もあげよう」
男「おいおい、きび団子はともかく……いや、きび団子はおかしいけど、甘酒はマズイだろ」
幼「何で?」
男「未成年の飲酒はダメだろ」
幼父「だーいじょうぶ!この甘酒はアルコール入ってない本物の甘酒だから!」
男「本物?」
幼父「米麹から作った、本物さ!だから大丈夫」
幼父「ささ!一杯!」
男「わ、解りました、頂きま……ぐっ、首の周りがふさふさしてて、飲みにくい……」
幼父「男君……今夜は返さないぞ?」
男「え?」
幼父「日付が変わったら速攻で雛飾りを片付ける作業があるんだ」
幼父「今年も手伝ってくれるよね?」ニコッ
男「はぁ、手伝うのはいいんですが……毎年翌日だったのに何で今年は」
幼父「出しておくと嫁に行くのが遅れるって言うから……」
男・幼父「……」
幼父「宜しく、頼むよ」
男「解りました」
幼「2人で何喋ってるの?早く宴を開始しようよ!」
男「おう!」
こうして、犬の衣装を着た男は
幼馴染一家と共に楽しい雛祭りを過ごしたのでしたー
めでたしめでたs
男「納得いかねーよ!やっぱ雛祭りと桃太郎は関係ないだろ!」
幼「端午の節句にはタンゴを踊ろうね!」
男「踊らねーよ?」
おわり
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