瑞希「七彩ボタン」 (50)

 
※自分が書いたDTを手直しした物です。
※モバマスのアイドルも出ます。
 


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―――事務所―――

瑞希「キミが触れたから、七彩ボタン……」

P「おはよう瑞希。早いな」

瑞希「おはようございますプロデューサー。自主練をしていました」

P「そうか。もうすぐ竜宮小町との合同ライブだからな」

瑞希「はい。ですからやはり、何度も練習して失敗しないようにしなければ。がんばるぞ」

P「ここに来た頃のお前は、そんな事しなかったよなぁ。成長したよ」ナデナデ

瑞希「む……確かにあの頃は自主練の重要性を見つけ出せていませんでした」

P「初めて会ってスカウトした時は、事務所でこんな会話をするようになるとは思わなかったな」

瑞希「初めて会った時は……プロデューサーの事をあまり信用していませんでしたから」

P「何気に傷つくなそれ」

瑞希「でも今は信頼していますよ。プロデューサーは、私に色をつけてくれました。七つの色を」

P「もし本当にそうなら、嬉しい限りだよ」

瑞希「まず最初に……貴方は驚きの黄色をつけてくれました」

―――数ヶ月前 喫茶店―――

瑞希「……」

P「いきなり話しかけたりしてごめん。俺、こういう物なんだけど」

瑞希「……765プロダクション」

P「そう。天海春香や如月千早を輩出してきた、アイドルプロダクション。俺はそこでプロデューサーをやってる」

瑞希「なるほど」

P「君、アイドルには興味あるかな?」

瑞希「私が……ですか」

P「ああ。一目見て、何というかな。ピンときたんだ」

瑞希「はぁ」

P「君ならトップアイドルになれる。俺はそう思ってるんだ」

瑞希「そうですか」


P「……」

瑞希「……」

P「え、えっと……それで興味の方はどう、かな?」

瑞希「……なくはないです」

P「そっか!じゃあ―――」

瑞希「ですが、一度考えさせてもらってもいいでしょうか」

P「……そうだね。話が性急すぎた。ごめん」

瑞希「いえ」

P「名前だけ、聞かせてもらってもいいかな」

瑞希「真壁瑞希です」

P「真壁ちゃん、か……いい返事を期待してる」

瑞希「……お尋ねしてもいいですか」

P「なんだ?」

瑞希「他の女の子にも、このように声をかけているのでしょうか?」

P「そうだな。才能を感じた女の子にはみんなに声をかけてる」

瑞希「その過程で不審者と間違えられる事などもありますよね。私も最初はそう思いましたし」

P「……まぁな」

瑞希「それに、せっかく誘ってもいい返事をもらえない事の方が多いと思います」

P「……」

瑞希「なのにどうして、貴方はそんなに一生懸命にスカウトをしているのですか?」

P「……俺はさ、アイドルにはなれない」

瑞希「当たり前ですね」

P「男性のアイドルもいない事もないぞ?だけどな、もっと根本的な違いがある」

P「俺がスカウトする子達はみんな、そんな違いを持っているんだ」

P「どこか近くにいるだけで幸せな雰囲気になれる子。独特のアートセンスを持っている子」

P「そんな子達が、トップアイドルを目指したいと思った時、俺は精一杯支えてやれるプロデューサーになりたいんだ」

P「さっきも言ったけど、俺はアイドルにはなれない。だから、アイドルになれる、いや、アイドルになりたいと思う子達全てを、俺は支えたい」

瑞希「……」

P「そして、もしその中で自分には出来ないと思っている子がいたなら、その子の背中を押してあげたい」

P「現に一度、出会ったんだ。自分に本当にアイドルが出来るのか悩んでいた子に」

P「その子は今、立派なアイドルの一人として活躍してる」

P「だからかな。スカウトをやめないのは」

瑞希「……よくわかりました」

P「ごめんね。長々と話しちゃって」

瑞希「いえ……ですが、少し驚きました」

P「何に?」

瑞希「そこまで真っ直ぐに夢を語れる人を、私は今まで見た事がありませんでしたから」

P「ははは……なんか恥ずかしいな」

瑞希「アイドルの話」

P「うん?」

瑞希「前向きに、検討したいと思います」

P「本当かい!?」ガタッ

瑞希「まずは母と父の了承を取らなければなりませんが」

P「わかった。いつでも事務所で待ってるから」

瑞希「……」

―――事務所―――

P「それでその後、本当に事務所に来てくれたんだよな」

瑞希「はい。母も父も応援すると言ってくれたので」

P「いい両親だな」

瑞希「……そうですね。私もそう思います」

P「そうそう。で、レッスンとかもそつなくこなしてた瑞希に、初めてLIVEバトルの仕事が入ったんだよな」

瑞希「あれは……少し、苦い思い出です」

P「仕方ないさ。最初はみんなそうだよ。特に相手が346プロさんじゃあな……なんて、言ってたっけ、俺」

瑞希「そうですね。そこで私に塗られたのは……悔しさの青でした」

―――LIVE会場―――

瑞希「(ダンスも完璧。歌も音程を外していない。大丈夫。相手は何度かミスをしていた)」

みく「……」

『今回のLIVEバトルの勝者は―――!』

瑞希「(大丈夫……な、はず、なのに)」

『前川みくでーす!!』

瑞希「……え?」

みく「にゃはー!みんな応援、ありがとにゃー!!」

瑞希「……なんで。どうして。完璧だったはずなのに」

みく「ふっふっふー。残念だったね真壁ちゃん。みくの勝ちにゃあ」

瑞希「……」

みく「な、何にゃ。そんな目で見ても、みくはイカサマも何もしてないにゃあ」

瑞希「なら、どうして。何が足りなかった?」トボトボ

みく「ちょ!?真壁ちゃん!?まだステージは終わってないにゃあ!」

瑞希「……そうでした。すみません」ピタッ

みく「わ、わかってくれたんならいいにゃあ」

瑞希「……」

みく「……みく、あんまり回りくどい事言うの好きじゃないからはっきり言うね?」

瑞希「はい」

みく「真壁ちゃんは、ちゃんとファンの事を考えてLIVEしてた?」

瑞希「ファンの事を考えてのLIVE……」

みく「そうにゃ。それが出来ない限りは―――真壁ちゃんは、一生LIVEバトルでは勝てないよ」

瑞希「……そう、ですか」

みく「というかそれが出来ないんなら……あまり、アイドルっていう職業はオススメできないにゃ」

瑞希「っ……」

―――舞台裏―――

P「瑞希ー!」

瑞希「あ、プロデューサー」

P「今日のLIVE、残念だったな」

瑞希「いえ……」

P「でも仕方ないさ。相手はあの346プロダクションなんだから。それに今回の事で、もっと多くの人に瑞希を知ってもらえた―――」

P「……瑞、希?」

瑞希「……なん、ですか」

P「お前……泣いて……」

瑞希「……ごめんなさい。少し楽屋で休みます」

P「瑞希!」

瑞希「……」

P「お前、もしかして、悔しかったのか?」

瑞希「……わかりません。今私を満たしているこの感情が何なのか、全然わからないんです」

瑞希「教えてくださいプロデューサー。この感じた事のない気持ちはなんですか?なんだかイライラして、だけど悲しくて」

P「それは、『悔しさ』っていうんだよ」

瑞希「悔しさ……」

P「何かが出来なかった時。壁にぶち当たったとき、人が当たり前に感じる感情だ」

P「……そうだよな。瑞希も、人間だもんな」

P「悔しかったよなぁ……勝ちたかったよなぁ……初LIVEバトルだもんな……!」ポロポロ

瑞希「なん、で。プロデューサーも、泣いて」

P「俺も悔しいんだよ……もっと、瑞希の事を見てやればよかった。レッスンも歌も完璧だからって、大丈夫だって思ってたんだ」

P「でも、初LIVEバトルがこんな結果になっちまってさ……相手が凄いところだった、なんて言い訳だよなぁ……くそっ……!」

瑞希「……プロ、デューサー」グイッ

P「……なんだ?」

瑞希「私、勝ちます。次は絶対に勝ちます。負けません」

P「……俺も、お前を精一杯支える。だから、約束しよう」

瑞希「はい。約束しましょう。次のLIVEバトルは、絶対に勝つって」

P「ああっ……!」

―――事務所―――

P「その時からだよな。瑞希がこうやって、自主練も始めたのって」

瑞希「そうですね。なにぶん、悔しかったですから。それに」

P「それに?」

瑞希「もうプロデューサーにも、悔しい思いはしてほしくなかったですから」

P「……お前は優しいな」

瑞希「いえ……」

P「そうそう。自主練を始めたのはいいけれど、レッスン場でロコとかと喧嘩したんだよな」

瑞希「口下手というものは、不便ですね」

P「だと思うなら頑張ってロコや杏奈以外の他の子達とも話さないとな」

瑞希「……そうですね」

瑞希「次に貴方がつけてくれた色は、暖かい橙色でした」

―――レッスン場―――

ロコ「今日はロコ達が先にブッキングしていたのです!なのにどうしてミズキがいるんですか!」

瑞希「……自主練を」

ロコ「プラクティスなら今日はここじゃなくて別のプレイスでやってください!」

杏奈「ろ、ロコ……そんな言い方は……」

瑞希「では、こうしましょう」

ロコ「何かウェイがあるんですか?」

瑞希「ここで、LIVEバトルをしましょう。審査役は望月さんで」

杏奈「あ、杏奈が審査役で……?」

瑞希「自主練の成果も試したいので。お願いします」

杏奈「私は……いいけど……ロコは……」

ロコ「望むところです!ロコのアーティスティックなライブを見せてあげますよ!」

瑞希「照明や衣装、ステージもありません。ですからここなら本当の自分の実力がわかるはずです」

ロコ「(ミズキは一度、LIVEバトルで負けています。まだ負けなしのロコなら余裕ですね)」

ロコ「(それに審査役はアンナ。アンナもレッスン場を使いたいでしょうし……これなら)」

瑞希「では、私から―――」

―――数分後―――

P「おーい瑞希ー。いるかー?」コンコン

瑞希「はい。どうしましたか?」

P「すまん。伝えるのを忘れてたんだが、今日レッスン場はロコと杏奈が―――」

ロコ「な、なんでですかアンナ!」

杏奈「だって……何だか……瑞希さん、楽しそうだった……」

ロコ「ろ、ロコは楽しそうじゃなかったって言いたいんですか!」

杏奈「そう、じゃなくて……ええと」

P「待て待て。なんで喧嘩してんだお前ら」

ロコ「あ、プロデューサー!聞いてください!」

杏奈「プロデューサーさん……ほっ……」

P「一体何が……」

ロコ「かくかくしかじかで!」

P「……なるほどねぇ。LIVEバトルで勝った方が、ここを使うと」

ロコ「そ、そうです!……でもアンナが」

P「杏奈」

杏奈「何ですか……?」

P「お前は、自分がレッスン場を使えるって事よりも、瑞希のLIVEの方がよかったって感じたんだな?」

杏奈「……うん。瑞希さん……変わってたから……」

P「……そっか」

瑞希「……がんばりました」

P「まさかそこまで思わせられるようなLIVEを、瑞希ができるようになったとはな。本当に頑張ったな」

瑞希「……はい」

ロコ「ろ、ロコは納得言ってないのですよ!だってロコが負けるなんて」

P「はいはい。というか三人で使うっていう案は出なかったのか」

ロコ「だってロコ達とミズキは練習内容も違いますし……」

P「一緒にしちまえばいいだろうが。ちょっと待ってろ」

杏奈「大丈夫……なの?」

P「当たり前だ。もしもし?トレーナーさんですか。ええ、はい……実はレッスンして欲しい子が一人増えまして……」

P「はい。はい……大丈夫ですか。ありがとうございます。ではよろしくお願いします」

杏奈「どう……?」

P「大丈夫だってよ。だからロコも今日は我慢してくれ」

ロコ「……むぅ」

P「というかお前らなら仲良くやれると俺は思ったんだけどな」

ロコ「どういう事ですか」

P「瑞希。ほらあや取り」サッ

瑞希「……なんで持っているんですか?」

P「瑞希のセールスポイントの一つとして使えるんじゃないかと思ってさ」

瑞希「……なるほど」

P「ロコ、見てろよ。こいつのあや取りはすげぇぞ。アーティスティックだ」

ロコ「ふーんだ。どうせ大したものじゃ―――」

瑞希「……望月さん」ササッ

杏奈「わっ……私そっくり……!?」

ロコ「……い、いやいや。そもそもそのあや取りどうなってるんですか。ストレンジですよ」

瑞希「半田さん」

ロコ「……す、すごっ」

瑞希「……黒井社長」

P「ぶっ」

杏奈「ふふっ」

ロコ「いひっ、ひひひひっ!そ、そっくりですっ、ちょ、笑わせないでください!」

瑞希「ストリングプレイスパイダーベイビー」

ロコ「えっ!?ちょ、ヨーヨーの丸い部分どこから出したんですか!?というかあやとりですよねこれ!?」

瑞希「……どうだ」

ロコ「こ、これはロコも負けてられません!今度ロコのフェイバリットアートをお見せしますよ!」

杏奈「じゃあ杏奈も……お気に入りの小物とか……持ってくるね……?」

瑞希「……うん」

P「瑞希。一応、謝っておけよ」

瑞希「はい……えっと。勝手にレッスン場を使おうとして、ごめんなさい。あと、今日のレッスンはよろしくお願いします」

ロコ「ロコ、ミズキには負けませんよ!」

杏奈「うん……こちらこそ……よろしくね?」

―――事務所―――

瑞希「プロデューサーが来てくれたおかげで、半田さんや望月さんとも仲良くなれました」

P「別に俺のおかげじゃないさ」

瑞希「いえ、プロデューサーが来てくれなければあのままきっと、喧嘩になっていたと思いますから」

P「そしてみんなとレッスンして……次に、リベンジLIVEバトル。相手はまた346プロの前川みくさんだったな」

瑞希「……正直、不安でした」

P「だから俺はお前にあんなアドバイスをしたんだろ」

瑞希「……ああ、そうでしたね。次に貴方がつけてくれたのは、楽しさの緑色でした」

―――舞台裏―――

P「瑞希」

瑞希「……」

P「お、おい。瑞希?」

瑞希「あ……なんですか?」

P「もしかしてお前、緊張してる?」

瑞希「……はい。一度、負けた相手なので」

P「瑞希が緊張するなんてな」

瑞希「私だって人並みに緊張します。……それが顔に出ないだけで」

P「そりゃそうか。そんなお前に助っ人だ」

瑞希「助っ人……?」

ロコ「ミズキ!」

杏奈「瑞希さん……」

瑞希「半田さん。望月さん」

ロコ「瑞希!あの時と同じようにやるんですよ!」

瑞希「あの時……?」

ロコ「……私がルーズした日です!言わせないでください!」

杏奈「あの時の瑞希さんは……凄く……楽しそうにLIVEしてたから……」

瑞希「楽しそう、ですか」

P「お前、自覚してないかもしれないけどな。LIVEの時、凄くいい笑顔するんだよ」

瑞希「私が、笑う……」

P「ああ。だからさ、細かなアドバイスなんて抜きにして言わせてもらうぞ」

P「楽しんでこい!瑞希!」

瑞希「……はいっ!」

―――LIVE会場―――

みく「ふっふーん。また来たのかにゃあ」

瑞希「今度は……負けません」

みく「どうだか。みくだって、あの時のままじゃないにゃ」

瑞希「私だって変わりました。みんなに、色をつけてもらいました」

みく「……色?」

瑞希「いえ、何でもありません。とにかく、昔の私とは一味も三味も違います」

みく「それを言うなら二味って突っ込みたいところだけど……」チラッ

瑞希「……」

みく「……実は、四味くらい変わってるんじゃないかにゃあ?」

瑞希「では、お話はこの辺で。私の先行ですね」

みく「今度はロボットみたいなLIVE、しないでよ?」

瑞希「もちろんです―――!」

―――事務所―――

P「そんで見事、リベンジ成功してさ。みくさんもびっくりしてたよな」

瑞希「はい。『本当に三味しか変わってないのにゃ!?』って」

P「そうそう。あの時のLIVEしてる瑞希は、本当に楽しそうだった」

瑞希「……でも、その後」

P「その後の事は気にすんなよ。相手さんだって、謝ってきただろ」

瑞希「……不本意ですが、赤色をつけてくれたのはあの人ですもんね」

P「あの時の瑞希は見てて怖かったな」

―――楽屋―――

女「いやー!凄かったね!瑞希さんのLIVE」ガチャ

瑞希「貴方は……」

P「すみません。どなたでしょうか」

女「アタシ?この後、ここでLIVEバトルする予定の女っていうんだけどー」

P「その女さんが、何故ここに?」

女「ちょーっと、瑞希さんの事が気になってさ」

瑞希「はぁ」

女「あのみくちゃんをボコボコにしちゃうなんて、凄いね!」

瑞希「ボコボコにはしていません。僅差でした」

女「それでもよ。あーこれですっきりした」

瑞希「すっきり……?」

女「アタシ、あいつの事嫌いなんだよねー」

P「(……?)」

女「なんか猫キャラ?だっけ。男に媚びちゃってる感じがしてさー。見ててすっげぇ痛いしー」

女「おまけにLIVE下手だし?歌も下手なのに、時々、あざといタイミングでダンス間違えたり、転んだりさー」

P「(おいおい……)」

P「すみません、あの―――」

女「ほんっと、あの前川みくってやつは」

瑞希「……取り消せ」

女「……へ?」

瑞希「今の言葉、全て取り消してください」ユラッ

女「な、何よ。だって全部本当の事じゃない。あんただって―――」

瑞希「取り消せって、言ってるんです」ガッ

女「あっ、やっ!?」

P「お、おい瑞希?!」

瑞希「二回戦ってはっきりわかりました。みくさんは努力の天才です」ギリギリ

女「な、何この子!?ちょ、ちょっと!!」

瑞希「自分のキャラを決して曲げず、過酷なレッスンで痛む膝を無理矢理固定してまでLIVEをして、それなのに顔色一つ変えてません」

P「瑞希!」

瑞希「そんなみくさんを馬鹿にしないでください。さっきの言葉、取り消してください」

女「ひっ」






瑞希「取 り 消 せ」

女「わ、わかったわよ!ごめんなさい!取り消すから!ごめんなさい!!」

瑞希「……よし」パッ

女「げほっ、えほっ、な、なんなの。なんなのよこの子っ……そこの貴方!!」

P「は、はい」

女「貴方この子のプロデューサーなんでしょう!?ちゃんと躾けておきなさいな!!」ダッ

P「あ……」

瑞希「……すみません。プロデューサー。つい頭に血が上って」

P「いや……大丈夫だ。瑞希は何も悪くない」

瑞希「でも」

P「瑞希は人として正しい事をした。だから、責任を被るのは俺だけでいい。俺が頭を下げれば済む話だろ」

瑞希「……ごめんなさい」

―――事務所―――

P「そういえばこの事件の後から、瑞希は俺を避けるようになったよな」

瑞希「……それは」

P「なんでだ?」

瑞希「……紫色を、つけられたからです。プロデューサーに」

P「紫色?」

瑞希「……この人は」

―――数週間前 事務所―――

P「よ、瑞希」

瑞希「っ、ぷ、プロデューサー」ガチガチ

P「……お前、どうした。何か変だぞ?」

瑞希「な、何でもありません。では私はこれで」カクカク

P「いやいや明らかにおかしいぞお前。熱でもあんのか?」サッ

瑞希「~っ!?」

P「……熱はないみたいだけど……気をつけろよ?」

瑞希「……はい」

P「さてと、ロコー」

ロコ「何ですかー?」

P「お前が出たがってた番組の仕事取れたぞ」

ロコ「本当ですか!?グッジョブですプロデューサー!」

P「独特なアートセンスを持つ芸能人達が絵を巨匠と呼ばれる人に評価してもらう番組だっけ」

ロコ「はい!こりゃもう、描いてドロウして描きまくりますよー!」

P「いや、描くのは1枚でいいんだからな?」

ロコ「沢山描いて、その中から1枚をチューズするんです!」

P「はいはい、そうかい」

ロコ「むー。なんですかその態度。だいたいプロデューサーは―――」

瑞希「……」ズキ

瑞希「……痛い」

―――LIVE会場―――

杏奈「さーて!お次はビビっと二曲目!」

瑞希「……プロデューサー。あれはなんですか?」

P「そっか。お前、杏奈のLIVEを見るのは初めてか」

瑞希「はい。望月さんはあんな性格なんですか?」

P「まーな。スイッチのオンオフが激しいっつーか」

瑞希「……なるほど」

P「杏奈を見つけられたのが、俺でよかったと思うよ」

瑞希「……そう、ですね」

P「お、そろそろ杏奈の出番は終わりだな。声でもかけに行ってやるか」

瑞希「……」ズキズキ

瑞希「痛い……この前より……?」

―――その日の夜―――

瑞希「……」ズキズキ

瑞希「痛い……眠れない……」

瑞希「なんだこれ……今までこんな事なかったのに……」

プルルルル

瑞希「……もしもし」

みく「もしもし、瑞希ちゃん!?」

瑞希「……前川さん」

みく「ごめんにゃあ。こんな夜遅くに」

瑞希「いえ。何か私に用ですか?」

みく「用というか……というか何でみくが頼まれたのか分からないけど、瑞希ちゃんのプロデューサーからお願いされて」

瑞希「プロデューサーから……何をですか?」

みく「瑞希ちゃんが何かに悩んでるみたいだから、先輩として相談に乗ってやってくれないかって……」

瑞希「……気付かれてたか」

みく「頭まで下げられたら、みくも断りきれなくてにゃあ。本当は明日にしようと思ったんだけど、早い方がいいかなって思ったんだにゃ」

瑞希「……ありがとうございます」

みく「で、さっきの様子だとやっぱり悩んでるのかにゃ?」

瑞希「……はい。この前から、痛いんです」

みく「にゃ?」

瑞希「それで、ドキドキします。動悸と息切れが酷いです」

みく「ちょっと待つにゃ」

瑞希「心拍数の上昇も見られます。やはり病気でしょうか」

みく「瑞希ちゃん。事実を淡々と伝えられてもみくは困るにゃ。ちゃんとお話して?」

瑞希「……プロデューサーを見ていると、胸が痛くなる事があるんです」

みく「それはどんな時?」

瑞希「半田さんや、望月さんがプロデューサーと話してたり、逆にプロデューサーが話しかけたりしてる時ですね」

みく「……」

瑞希「そして、私がプロデューサーに話しかけたり、話しかけられたりするととてもドキドキします。そして心拍数が上昇し、動悸や息切れが―――」

みく「あー。わかったにゃ。ここまでベタな人がいるとは思わなかったにゃ」

瑞希「やはり私は病気なんでしょうか」

みく「そうだね。病気だにゃ。しかも多分、治るまでに凄く時間がかかる」

瑞希「それは困ります。私は普通にプロデューサーと話をしたいのに」

みく「だったら認めるにゃ。そうすれば楽になるにゃ」

瑞希「何をですか」

みく「瑞希ちゃんが、プロデューサーを恋愛感情の意味で好きだって事」

瑞希「……ふむ」

みく「まぁでも、すぐに認めるのは難しい」

瑞希「なるほど理解しました。確かに今の私の状態にピッタリですね」

みく「あれー?」

瑞希「ふむ。私はプロデューサーが好き。私は……」

みく「……瑞希ちゃん?」

瑞希「……うあああああああああ」

みく「ど、どうしたの!?」

瑞希「なんでしょう。猛烈に恥ずかしくなってきました。今ベッドの上なんですけど、凄くゴロゴロ転げまわりたいです」

みく「……そうすればいいんじゃないかにゃ」

瑞希「ああああああああああうああああああああああ」ゴロゴロ

みく「(普段から棒読みに近いせいで緊張感を感じないにゃあ)」

瑞希「とりあえず、お礼を言っておきます。ありがとうございました。お陰で私の気持ちに気づけました」

みく「そ、そう。力になれたのなら何よりだにゃ」

瑞希「では、次に会う時は……またLIVE会場で」

みく「……ふふっ。望むところだにゃ!」ピッ

瑞希「……ふむふむ」

瑞希「私は、プロデューサーが好き」

瑞希「……えへへ」

瑞希「!」

瑞希「うああああああああああ」ゴロゴロ

―――現在―――

P「?」

瑞希「……はぁ。この桃色だけは、どうも自分のものにするのは難しそうですね」

P「さて、じゃあ瑞希。そろそろ合同レッスンの時間だぞ」

瑞希「分かりました。では、行ってきますね。プロデューサー」ニコッ

P「……」

瑞希「どうしました?」

P「あ、いや……お前って、ホント笑った時の破壊力すげぇよなって再確認した」

瑞希「? それでは、また」ガチャ


瑞希「キミが触れたから、七彩ボタン……」

瑞希「全てを恋で、染めたよ―――」


おわり

35台詞だったDTを、ここまで書けるとは思いませんでした。
 
それだけあの作品には色んな思いが詰まっていたのだと再認識。

それではありがとうございました。

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