社蓄「え!? うちがホワイトに!?」(11)

新上司「何ですかこのひどい労働環境は!」

不正取引によって上司が退職を強いられ、僕の部署は本社からのエリートが一時的に指揮を執ることになった。

デスクの下に散乱する寝袋やカップラーメン、なのに皆定時で帰っているタイムカードなどを見て、気づくものが有ったのだろう。さすがエリートだ。

新上司「労働と引き換えにお金を貰うのがあなたたちのした契約でしょう!? どうして誰も改善しようとしなかったんですか!?」

簡単に言わないで欲しい。 逆らっていいほど頭の良い上司じゃなかったんだ。君のはそうだったのかもしれないけどさ。

新上司「とにかく! 私が来たからには、もっとクリーンな会社にしていきますからね!」

そのご、僕たちは、残業をしないことで効率的になる、欧米はもう残業を減らす動きが大きくなっている、などの話を聞かされた。

部下「新しく来た人、やってくれそうですね」

社蓄「そうだね、仕事も元上司よりは大分できそうだ。話通じるし」

部下は以前からブラックな上司を嫌っていたため、嬉しそうだ。

社蓄「うちの社長が邪魔しなきゃいいんだけどね。 このままホワイトになってくれれば」

部下「あー。 でも、本社の人のほうが立場は上なんじゃないですかね? 今回指揮してるのも、監査目的が大きいでしょうし」

社蓄「本社の人ナイス」

部下「ナイス」

実際、それから数ヶ月で、僕の部署の環境は激変していた。 タイムカード通りの賃金が支払われるし、新しくエアコンや空気清浄機が設置され、物理的にも良い環境となった。

新上司「社畜さん、もう帰りましょう」

社蓄「もう少しで今組んでるのが完成するんです、30分ほど待ってくれませんか」

新上司「あなたはもう多数の部下をお持ちでしょう、上がそうだと部下も帰りにくい、早く帰ってください」

新上司の言うことは正しい。 仕方ない、持ち帰って家でやるのもいやだし、また明日に回そう。

帰りの電車の中で、いつもより大分人が多いな、とはもう思わなくなった。この時間に帰るのが普通なのだ。

社内で寝やすいスポットを探したり、ウィダーを箱買いして引き出しにつめこんでおく必要もなくなった。

毎日家に帰って、あまり使ってこなかった炊飯器を使ってやることができるようになった。 

炊いたばかりの白米はそれだけで美味しいんだな。

休日になった。 今まで仕事ばかりしていたせいで、特に趣味も持ってないし、学生時代の友達とも疎遠になってしまい、することがない。

社蓄「掃除はもう先週したしな・・・・・・」

家でプログラム組んでるとたぶんあの人怒るだろうしなぁ・・・ 

もうちょっとって時に止めるんだもんな。 まぁ、定時でも間に合うようにできない僕が悪いのだろうけど。

テレビもあまり楽しくないし、もう寝よう。 夜八時に眠れるなんて、なんて生活だ。

新上司「それでは、私は本社に戻ります。社畜さんが新しく部長になります! 皆拍手!」

部下's「おめでとうございます!」

新部長「・・・・・・」

新部長「僕が、部長か・・・・・・」

候補は他にも居たが、僕が選ばれたと言うことは、新上司さんが人事を通じて僕を選んだのだろう。

期待に応えなければ!

それから三年、僕の居る部署には再び寝袋が持ち込まれることになった。

残業代は出せないし、エナジードリンクのビンがゴミ箱にいっぱいだ。

生産を上げるためにはこうするしかなかったんだ。 

だいたい、無茶な注文をしてくるのは本社だし、こんな環境が必要だったんだ。

僕は取り戻したぞ! 眠らずに働き続けられる環境を! 働いてさえ居ればいい環境を!

終わりです。 見てくれた人が居れば幸いです。

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