結衣「ペルソナ!」(346)




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前作のSS

京子「ペルソナ!」


~保健室~


ブブブッ


京子「……!」ビクッ

京子「あ、あれ……ここは、保健室?」

京子「なんで私、保健室で寝てたんだろ」


『ずっと京子を守り続けて……独り占めしたかったの……』

『お前は、私じゃない…!』



『私が臆病だったから、否定しちゃって……ごめんね……』

『私を受け入れてくれて、ありがとう……』


京子「そ、そっか……私、あのまま疲れて寝ちゃってたんだ……」

京子(なんだか、夢見たいな話だけど……現実、なんだよね)

京子(心の中に、確かに歳納さんを感じられるし……)

京子「今何時頃だろ……」ムクリ

京子「げ、もう放課後だ、午後の授業、完全にスルーしちゃった」

京子「ま、いいか……こんな時だし」

京子「結衣と千鶴は……」

京子「うーん、まだ起きてないか」

京子「あんな事があったんだから、仕方ないかも」

京子「特に結衣は、色んな意味でショックだっただろうし」

京子「千鶴も、ごめんね、巻き込んじゃって……」

京子「……」

京子「そだ、二人の荷物、保健室まで運んであげよっと」

京子「それに、千鶴の事を千歳に伝えておいてあげないといけないしね」

~廊下~

京子「うーん、流石にこの時間になると誰もいないなあ……」テクテク

京子「あかり達はまだ娯楽部に残ってるかもしれないけど……」

京子「千歳って、まだ残ってるのかな?」


ガシャッ


京子「おわ、何でこんな所にガラスが落ちてんの、あっぶないなあ……」

京子「って、あれ……」

京子「廊下の窓ガラスが、殆ど割れてる」

京子「というか、壁にも、何かでっかい斬り跡が……」

京子「何だろこれ、鋭利な刃物で切り裂いたみたいな跡だ……」

京子「……」

京子「え、お昼休みまでは、こんなんじゃなかったよね?」

京子「な、なにがあったんだろ」


ブブブッ


京子「……あーもー、なに?真冬なのに羽虫?」ブンブン

京子「そだ、綾乃と千歳に電話して聞いてみよう……」


ツーツーツー


京子「……だめ、繋がらない」

京子「あ、あかりも、ちなつちゃんも、繋がらない……な、なんで?」

京子「他の生徒や先生も全然見かけないし……」


『多分、合わせ鏡のおまじないをしたのは、結衣だけじゃないと思う』

『シャドウは、願い事に準じて、勝手に動き出す』

『とても、危険な存在だわ』


ブブブブッ


京子「も、もしかして、これって、シャドウがやった事なのかも……」ゾクッ

京子「……ど、どうしよう……私、私どうしたら……」

京子「こ、怖いよ、ひ、一人じゃ、怖いよぉ……」ウルッ



『娯楽部の皆や、生徒会の皆が、ずっと幸せでいられますように』


京子「……!」

京子「そ、そうだ、落ち着け、私……」ゴシゴシ

京子「あの夜の私の願いは、嘘じゃないんだから……叶えるための努力をしないと……」

京子「そ、それに、私には、歳納さんが居てくれるんだから……!」

京子「い、今だけは、存分に怖がろう……」

京子「けど、4秒後には、立ち直れる……大丈夫……」

京子「……わん」

京子「……つー」

京子「……さん」

京子「……しー」

京子「……」

京子「あ、あははは、怖さがどっか行っちゃった」

京子「もう、怖くないよ、多分」カクカク

京子「生徒会は……綾乃達2年生や会長がいるから、多分大丈夫だと思う」

京子「けど、娯楽部にはあかりやちなつちゃんしか居ない……」

京子「なら、まずあかりとちなつちゃんの安全を確認した方が、いいよね」

京子「この時間なら、あかりやちなつちゃんは、娯楽部にいる可能性が高いと思うし……」

京子「よし、娯楽部へ行こう!」


ブブブブッ



~校舎玄関~

京子「げた箱にも、何かで斬ったような跡が……」

京子「いったい、何で斬ったらこんなにバッサリ斬れるんだろ」

京子「幸い、私の靴は無事だったけど……」ハキハキ

京子「……あかり達、大丈夫かな……」


ブブブッ


京子「……」ゾクッ

京子「な、なんだろ、また寒気が……ま、まあ、冬だからね」

京子「……娯楽部へ続く小道、こんなに暗かったっけ」

京子「そ、それに、何か、変な音が……さっきから……」


ブブブブブブッ


京子「……」ゾクゾクッ

京子「い、いやいやいや、大丈夫」グッ

京子「こ、怖くない、怖く……」

京子(な、なんで、どうして、こ、こんな)

京子(さっき、結衣のシャドウと向かい合った時は、こんなに怖くなかったのに)

京子(や、やっぱり、私は、結衣が居ないと、駄目なのかな……)

京子(い、今から、保健室に戻って、結衣に助けを……)

京子「……」

京子「だ、だめ、結衣には頼れない」

京子「まだ起きる事も出来ない結衣に、頼って、どうするの……」

京子「わ、わたしひとりで、頑張らないと……」

京子「ちなつちゃん、あかり、待ってて!」タッタッタッ

~娯楽部~

京子「うあ、なにこれ、部室の扉が、真っ二つに斬られてる……」

京子「ち、ちなつちゃん!あかり!居る!?」

ちなつ『京子先輩、こんにちわ』

京子「ち、ちなつちゃん!無事だったんだ!よ、よかったぁ……」

ちなつ『無事って、当たり前じゃないですか、変な京子先輩』

京子「あ、あかりは!?」

ちなつ『……知りません』

京子(あかり、もう帰ったのかな?それならいいんだけど……)

ちなつ『京子先輩、結衣先輩は一緒じゃないんですよね』

京子「え、あ、うん、結衣はちょっと具合が悪くて、保健室で寝てるよ」

ちなつ『そうですか……』

京子「……ちなつちゃん、あの、校舎の窓が沢山割れてるの、知ってる?」

京子「そ、それに、部室の扉が真っ二つになってるし……いったい何が……」

ちなつ『きょおこせんぱい』

京子「え、な、なに?」

ちなつ『お茶でも、飲みませんか?美味しい……』クスッ

ちなつ『うふふふふふふふふふふふふふ』クスクスクス

京子「ち、ちなつちゃん?」

ちなつ『美味しいお茶葉が、入ったんですよ?』ニコ

ちなつ『さっき、杉浦先輩が来たから、このお茶勧めてあげたんですけど』

ちなつ『杉浦先輩、無視して校舎に戻っちゃって』クスクス

京子「あ、綾乃が?」


ブブブブブブッ

京子「……」ゾクゾクッ

京子(え、ど、どうして、こんなに)

京子(どうしてこんなに、寒気が……)

京子(何時もの可愛らしいちなつちゃんが笑ってくれてるだけなのに、どうして)

京子(ど、どうしてこんなに怖いんだろ……)

ちなつ『きょおこせんぱい』ニコ

京子「は、はい!」

ちなつ『おちゃ、はいりましたよ、うふふふふふふふふ』

ちなつ『あはははははははははははははははははははは』

ちなつ『あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは』

京子「ち、ちなつちゃん……?」ゾクゾクゾクッ

京子(ち、ちなつちゃん、瞳の色が、赤い……)

京子(そっか、これは、ちなつちゃんのシャドウ……)

京子(ちなつちゃんも、合わせ鏡のおまじない、してたんだ……)

京子(な、なら、早く私も歳納さんを呼ばないと……)

京子「 」

京子(あ、あれ、私……身動きが取れない……声も……)


『本物の私は、私を否定した……自分の本心なのにね……』


『だから、私はもう、別の存在……』


『我は影、真なる我』


『蝿の王チーナ……』


『私は、私自身の願いを叶える……』


ブブブブブブブブブブッ

京子(そっか、本物のちなつちゃん、もう、何処かでシャドウを拒絶しちゃってたんだ……)

京子(だから、このシャドウは……ユイの時みたいに、人間以上の力を発揮してるんだ……)

京子(だ、だめ、わ、わたし、こ、怖くて、これ以上考え事が、できない、そ、そう……)

京子(そうだよ、お茶でも飲んで落ち着けば、怖さがなくなるよね……)

京子(ちなつちゃんが淹れてくれたお茶を……)

京子(それにしても、このお茶、中身がまっくろだ……)

京子(まるで地獄の穴みたいに……)


≪京子≫
ブブブブッ

≪ちなつちゃんの笑い声を聴いちゃだめ≫
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブッ


≪蠅達に近づくのも危険よ、恐慌を付与される≫
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブッ


京子(なんだろう、これ、羽音……?あ、そうか)

京子(これ、蠅の羽の音だ……)

京子(真冬に蠅なんて、おかしいなあ……)

京子(煩くて、何も聞こえないや……)


≪京子……≫
ブブブブブブッ

~保健室~


≪起きて≫


結衣「ん……」

結衣「あれ、私……寝てたの?」

結衣「た、確か、私、京子と話してる最中に、倒れて……」

結衣「……京子?何処?」


≪京子が危ない≫


結衣「……!」ビクッ

結衣「こ、この声は……私?」


≪部室に≫


結衣(そ、そうか、これは、もう一人の私の声……)

結衣「思い出した……京子は、私を守るために、身を呈してくれた……」

結衣「京子が危ないなら、今度は、私が、私が京子を守らないと……」


≪私は貴女、貴女は私≫

≪貴女の望みは、私の望み≫


結衣「うん、そうだね……一緒に京子を助けよう……!」

~廊下~

結衣「うわっ、どうしたんだろ、これ、窓ガラス沢山割れてる……」

結衣「壁も、何か大きな剣で斬られたみたいになってる……」

結衣「いったい何が……」


ブブブブブッ


結衣「……?」

結衣「何、この音、虫の羽音?」

結衣「こんな真冬に虫なんて……」

綾乃『船見さん』

結衣「ひゃっ!?」ビクッ

結衣「あ、綾乃、びっくりさせないでよ……」

綾乃『歳納京子は、どこかしら』

結衣「え、あ、ああ、私も、今探してる所なんだ」

結衣「多分、娯楽部の部室に居るんじゃないかなって思うんだけど……」

綾乃『……さっき、様子を見に行ったけど、吉川さんは知らないって言ってたわ』

結衣「え、じゃあ、すれ違いになったのかな……」

綾乃『……』



ブブブブッ


結衣「……」ゾクッ

結衣(な、なんだろ、突然寒気が……)

綾乃『歳納京子と、約束があるのよ』

綾乃『放課後、生徒会室に行くって言う、約束が』

結衣「そ、そうなんだ」

結衣「……じゃ、あの、一緒に娯楽部に行ってみる?」

結衣「京子、今度はいるかもよ?」

綾乃『……いかないわ、やっぱり、生徒会室で待つ事にする』

綾乃『害虫退治もしないといけないしね』

結衣「が、害虫?」

結衣(な、なんだろ、綾乃、様子が変だ……)

結衣(それに、綾乃、瞳が赤い……)

結衣(これじゃ、まるで、さっきまでのユイみたいだ……)

結衣(も、もしかして、綾乃も……)

綾乃『船見さん』

結衣「え、な、なに?」

綾乃『もし、娯楽部に歳納京子がいたら、待ってるって、伝えておいて』

結衣「綾乃……」

綾乃『私、待ってるから、何時までも』

綾乃『歳納京子との約束だから』

結衣「……」

綾乃『……』

結衣(私を騙そうとしてる目じゃ、無いよね……)

結衣「うん……判った、京子に会ったら、伝えておくよ」

綾乃『ありがとう』

結衣「じゃ、私は娯楽部に行くから」タッ

綾乃『……ええ』


ブブブッ


綾乃『……』


ブブブブブブッ


綾乃『デスバウンド……』ブンッ


バッキンッ!


ブブ…ブ……ブッ


綾乃『……蠅、耳触りよ』スッ


プチッ


………

……

~娯楽部前~


アハハハハハハハハハハハハハハハハハ


結衣「こ、これ、ちなつちゃんの笑い声?」

結衣「なんだろ、これ聞いてると、凄く、凄く怖くなってくる……」ガクガク

結衣「……これは、もしかして、シャドウの能力?」

結衣「ちなつちゃんも、合わせ鏡のおまじない、してたんだ……」

結衣「……ど、どうしよう、私、私……こわくて、前に進めない……」

結衣「私、京子の王子様なのに、守らなきゃならないのに……」

結衣「私は……」



『私は王子様じゃなくて』


『結衣のことが好きだもん』


結衣「……!」

結衣「そ、そうだ、私は、船見結衣……」

結衣「王子様だからじゃない、船見結衣だから、京子を守りたいんだ!」

結衣「……なら、王子様じゃなくて、船見結衣のやり方で……!」

結衣「ち」

結衣「ちなつちゃーん」ボソッ

結衣「一緒にデートに行かない~?」ボソッ

結衣「……」

結衣「///」

結衣(うわあ、私、格好悪い、あんなに大見得切って色仕掛けとか///)

結衣(しかも、これ、無視されたら恥の上塗りなんだけど///)

結衣(け、けど、笑い声は止んだし……反応してくれてるって事だよね?)

結衣「ち、ちなつちゃー……」

チーナ『お待たせしました、結衣先輩』

結衣「ひぃ!?」ビクッ

チーナ『今、京子先輩に結衣先輩を諦めさせようとしてたんですけど』

チーナ『結衣先輩から誘ってもらえるなんて、感激です』

結衣「そ、そう、それは良かった」

チーナ『結衣先輩、えっちな事、いっぱいしましょう……』

結衣「え///」

チーナ『もう、照れてる結衣先輩も素敵です、結婚したいです、そして子供を作りたいです』

結衣「あ、ありがとう、ちなつちゃん……あの、京子は、どうしたのかなー?」

チーナ『京子先輩なら、私の笑顔でメロメロになっちゃってますよ』

結衣「……は?」

チーナ『……見ますか?私の魅力でメロメロになった京子先輩を……』

チーナ『あのだらしない顔を見れば、きっと、結衣先輩も諦めがつくと思いますよ……』

結衣「……ちなつちゃん、京子に、何をしたの?」

チーナ『ふふふ……見れば判りますよ』

チーナ『ほら、結衣先輩、中に入りましょう……?』

結衣「……酷い事してないよね?」

チーナ『酷い事なんて、してませんよ、寧ろ、良い事をしてあげたんです……』

チーナ『ほら……』

京子「恐い、恐いよ……」ガクガク

結衣「きょ、きょうこ……?」

京子「ちなつちゃんの笑い声が……声が……ちなつちゃんが……」ガクガク

チーナ『ほら、京子先輩、私の魅力でメロメロになっちゃってるでしょう……?』

チーナ『もう私の名前しか口にしてない……京子先輩は私の恋の奴隷……』

結衣「え、い、いや、恋の奴隷っていうか……」

結衣(さっきの私みたいに、恐慌して動けなくなってる……?)

チーナ『いっぱい、笑いかけてあげたら、ああなったんですよ、可愛いものですよね……』

京子「……」ガクガク

ちなつ「京子……しっかりして!」

チーナ『無駄ですよ、もう結衣先輩の声も届かない、快楽の向こうに居るんです……』

チーナ『ですから、結衣先輩、もう京子先輩の事は諦めて……』

結衣「……ちなつちゃん」

チーナ『何ですか、私の結衣先輩……』

結衣「京子を、解放してあげて」

チーナ『……嫌です』

結衣「ちなつちゃん、お願い……私、乱暴なことは、したくないよ」

チーナ『どうして、ですか、何時も』

チーナ『何時も何時も何時も何時も京子先輩ばっかり』

チーナ『ずるいですよ、幼馴染だからって』

チーナ『もっと、もっと私を見てください……』

チーナ『私だけを見てください!結衣先輩!』


ブブブブブッ


結衣「これは……校舎でも聞こえた虫の羽音?」

チーナ『……それとも、やっぱり、そうなんですか?』

結衣「ちなつちゃん?」

チーナ『結衣先輩は……本当は、本当は私のことを……!』

チーナ『私のことなんて……!』

チーナ『なら、いいです、結衣先輩も、京子先輩みたいに……』

チーナ『メロメロにして……何も考えられないようにしてあげますから……!』ブワッ


ブブブブブブブブブブブブブブブブブブフッ


結衣「こ、これは、蠅……!?部屋の四方から沢山の蠅が……」ゾクッ

結衣(何だ、また、さっきみたいに恐くなってきた……)

結衣(そ、そうか、ちなつちゃん、笑い声だけじゃなく、この蠅達を使って恐慌を付与するんだ……)

結衣(な、なら、蠅に纏わりつかれる前に……何とかしないと!)

結衣(お願い、力を貸して……!)

結衣「ペ………」

チーナ『……結衣先輩、好きです、愛してます……』

結衣「…ル……」

チーナ『これで、私を見てくれますよね……』

結衣「……ソ…」

チーナ『私だけを……』

結衣「………ナ」

チーナ『結衣先輩……?』




結衣「……キングフロスト!」


パリーン





マハブフーラッ

カキーン


チーナ『こ、これは、部屋が、全部凍りついた……!?』

結衣「蠅も、全部凍結させた」

結衣「ちなつちゃん……もう止めようよ、私はちなつちゃんの事を……」

チーナ『……まだですよ、結衣先輩』

チーナ『私の眷属は、校舎にも一杯いるんですから……それを呼べば』


サバトマッ

シーン


チーナ『ど、どうして?どうして私の招き寄せに眷属達が反応しないの……!?』

チーナ『……校舎で何かあったって言うの!?』

~校舎~


ブブブッ


綾乃『歳納京子が何処にいるかは判らないけど……』

綾乃『蠅の耳障りな羽音のせいで、歳納京子が生徒会室に辿り着けないかもしれない……』


ブブッ


綾乃『これで、最後』ザシュッ


………


綾乃『さあ、これで静かになったわ』

綾乃『歳納京子……待ってるわよ』

綾乃『約束どおり、生徒会室で……』

~娯楽部~

チーナ「ど、どうして……」

結衣(ちなつちゃんが戸惑ってる……)

結衣(今なら、ちなつちゃんを倒すことが出来そうだけど……)

結衣(私の望みは、ちなつちゃんを倒すことじゃない)

結衣(京子が私にしてくれたみたいに……私もちなつちゃんを、助けてあげたいんだ)

結衣(本物のちなつちゃんが、シャドウを受け入れてあげれば、あのシャドウも大人しくなるはず)

結衣(けど、けど、本物のちなつちゃんは、いったい何処に……)


≪結衣≫


結衣「え、この声は、もう1人の私?」


≪この部屋に、温度が下がりきっていない存在が4つある≫

≪ひとつは貴女、ひとつは京子、ひとつはシャドウ≫


結衣「そ、そうか、だったら残るひとつは……もしかしたら……!」

結衣「ちなつちゃん」

ちなつ『……ゆ、結衣先輩、私は、私は諦めませんよ……』

結衣「……ありがとう、ちなつちゃん」

ちなつ『……え?』

結衣「何時も、私に好意を向けてくれて、ありがとう」

結衣「私に笑いかけてくれて、ありがとう」

結衣「私なんかを気にしてくれて、ありがとう」

チーナ『結衣、先輩?』

結衣「けどね、私……知ってるんだ」

チーナ『な、なにをです?』

結衣「ちなつちゃんが、ちょっと腹黒な所」


ガタンッ


結衣「自分の本音を抑え込んで、無理して私に合わせてた事も、知ってる」

結衣「私と親しくなる為に、色々と工作してたって言う事も、実は知ってる」


ガタンガタンッ


結衣「けど、けどね、私」

結衣「そういう、ちなつちゃんも、嫌いじゃないよ?」

結衣「私に対して、一生懸命努力してくれてる子を、嫌いになんてなれるわけないじゃないか」

チーナ『ゆ、ゆいせんぱい……』

結衣「本物のちなつちゃん、押し入れの中に、閉じ込められてるんだよね?」

チーナ『……ど、どうしてそれを……』

結衣「私のペルソナは対象の温度を下げる能力があるから……」

結衣「例え、壁越しにでもちなつちゃんの体温を察知する事ができる……」

結衣「だから、ちなつちゃんが何処にいるか、判るよ」

結衣「姿は見えなくても、声は届いてるよね、ちなつちゃん」

結衣「私は、ちなつちゃんが腹黒くても、平気だから」

結衣「だから、お願い、自分の影を、否定しないであげて」

結衣「私、もっと知りたいよ、ちなつちゃんの可愛いところ以外も」

結衣「嫌な所も、怒る所も、悲しむ所も……もっと、もっと……」

結衣「ちなつちゃん……お願い、心を開いて……」

結衣「ちなつちゃんがどんな子でも、私は大切に想うから………」

結衣「ちなつちゃん……」

チーナ『……ゆいせんぱい』

結衣「ちなつちゃん?」

チーナ『ありがとう、ございました、私なんかを、大切に想ってくれて』

チーナ『私、やっと、やっと受け入れてもらえました……本物の私に……』

結衣「ちなつちゃん……」

チーナ『ゆいせんぱい……本物の私、泣いてるみたいです……』サラサラ

チーナ『今だけでいいですから、優しく、慰めてあげてください……』サラサラ

チーナ『けど、甘やかし過ぎちゃ、だめですよ、私って、すぐに調子に乗りますから……』サラサラサラ

結衣「うん、判った……」

チーナ『じゃあ、ゆいせんぱい、またね……』サラサラサラサラ

結衣「またね、ちなつちゃん……」

結衣「……」


ガラッ


結衣「ちなつちゃん、大丈夫?」

ちなつ「……はい」グスン

結衣「ちなつちゃん……」

ちなつ「わ、わたし、ずっと、ずっと怖かったんです……」ヒック

ちなつ「本当は、本当は結衣先輩に嫌われてるんじゃないかって」グスン

ちなつ「だって、だって、わたし、わたし、いけない事考えちゃう子だから……」ヒック

ちなつ「あかりちゃんや、京子先輩にも、いっぱい、いっぱい迷惑かけてますから……」

ちなつ「だ、だから、私、あの晩、結衣先輩に嫌われませんようにって、お願いを……」ヒックヒック

結衣「……そっか」ナデナデ

ちなつ「ごめんなさい、結衣先輩、京子先輩、迷惑かけてごめんなさい……」グスン

結衣「ん、いいよ、私達はね、ちなつちゃんに迷惑かけるのも、かけさせられるのも、嫌じゃないから」ニコ

結衣「そうだろう?京子」

京子「こ、こわい、こわいよ、蠅こええええ……」ガクガク

結衣「……」

結衣「キングフロスト」パリーン

結衣「いい加減、目を覚ませ」ホホピタ

京子「ひやっこい!」ビクーン

ちなつ「ふ、ふふふ…結衣先輩、京子先輩、おっかしい」クスクスクス

ちなつ「あ…あれ、タロットカードが……」

結衣「これは……悪魔のカード?」

ちなつ「悪魔……」

ちなつ「そっか、もう一人の私、このカードの中に……」

ちなつ「ふふふ……、私、悪魔でもいいです……」

ちなつ「結衣先輩に、嫌われないって判ったから、例え世界を敵に回す存在になったって、平気です」ニコ

結衣「ちなつちゃん……」

ちなつ「結衣先輩、ありがと……う、ござ……います」

ちなつ「あと、デートの約束……わすれな…いで…」カクン

結衣「おっと……」

結衣「……流石ちなつちゃん、あの状況でも、約束が聞こえてたんだ……」

結衣「……デートはまた今度ね……今は、ゆっくり休んで……」ナデナデ

≪ペルソナ補足≫

●京子のペルソナ
歳納さん(女教皇)
原型:スカアハ
スキル:アムリタ・他
特徴:氷結攻撃に強い


●結衣のペルソナ
キングフロスト(皇帝)
スキル:マハブフーラ・他
特徴:火炎攻撃に弱い


≪スキル補足≫

アムリタ:味方全体の状態異常を治療

マハブフーラ:敵全体に中威力氷結を放つ魔法攻撃

デスバウンド:敵全体に高威力斬撃を放つ物理攻撃

サバトマ:仲魔を召喚する魔法

~保健室~

結衣「はい、ちなつちゃん、私が使ってたベッドで申し訳ないけど」フサッ

ちなつ「ゆいせんぱい、むにゃむにゃ……」zzz

京子「良かったね、ちなつちゃんに笑顔が戻って……」

結衣「うん、色んなちなつちゃんを知りたいって言ったけど……」

結衣「やっぱり、笑っていてほしいからね、ちなつちゃんには」

京子「うー……それにしても、まだ頭ががんがんするよぉ」

結衣「もう一回、キングフロスト呼ぶ?」

京子「ひゃっこいのはもういいです!」

京子「結局、私が妙に怖がりになってたのは、蠅が飛びまわってたせいなんだよね」

結衣「うん、あの蠅達には恐慌を付与する効果があって、ちなつちゃんのシャドウがそれを操ってたみたい」

結衣「あとは、ちなつちやんの笑い声にも、同じような効果があったらしいよ」

結衣「ちなつちゃん自身は、恐慌じゃなくて魅了の効果だって思ってたみたいだけど……」

京子「ちなつちゃんらしいね」クスクス

京子「……それじゃ、あの、廊下や娯楽部の扉にあった切断跡は、なんなんだろ」

京子「蠅では、あんな跡は残らないよね?」

結衣「もう一人、シャドウが居るんだと思う」

結衣「多分、それは……」


≪京子≫


京子「ん?歳納さん?」パリーン


フワッ

歳納「……京子」ウルッ

京子「ど、どうしたの歳納さん?」

歳納「ごめんなさい、さっきは、助けられなくて、ごめんなさい……」ギュッ

京子「ちょ、歳納さん///」

歳納「わたし、わたし、京子が苦しんでるのに、何も出来なくて……悔しくて……」ヒック

京子「歳納さん……」ナデ

京子「仕方ないよ、歳納さんは、私が呼ばないと出て来れないんだし……」

京子「だから、泣かないで?私、歳納さんが泣いてたら、悲しいよ……」ナデナデ

歳納「ごめんなさい、そうよね……京子の涙を拭く存在である私が泣いてるのは、おかしいものね」ゴシゴシ

京子「うーん、そりゃ、私が泣いてる時に慰めてくれるのはありがたいけど……」

京子「それよりも、私は歳納さんの事が好きだから泣いてほしくないのっ」

歳納「きょ、京子///」ギューッ

京子「と、歳納さん、そんなに強く抱き知られると、あの///」

結衣「おい」

京子「あ、ご、ごめん結衣///」

歳納「結衣、邪魔しないで」

結衣「と、歳納さんこそ、今大切な話してるんだから邪魔しないでよ!」

歳納「……もう1人の、シャドウの事でしょう?」

結衣「……う、うん」

歳納「私にも、心当たりがあるわ……生徒会室に……」

歳納「ああ、もう戻らないと京子に負担が……結衣」

歳納「あとは頼んだわよ……」スッ

京子「ああん、歳納さん、私の中に戻っちゃった……」

結衣「……京子、取り合えず生徒会室へ行こう」

京子「え、あ、うん、綾乃達も心配だからね」

結衣「……」

京子「結衣?」

~廊下~


結衣「……京子、朝に綾乃と会った?」

京子「う、うん、会ったけど……そういえば、あの時、綾乃に……」

京子「……」

京子「///」

結衣「……え、なんで赤面してるの京子」

京子「い、いや、なんでもないよ///」

結衣「きょうこ?あやのとなにかあったの?」

京子「ちょ、結衣、顔が近いって……」

結衣「……あとで、詳細聞くからな」

京子「う、うう、結衣にゃんが恐い……」

結衣「実は私もさっき綾乃と会ったんだ」

京子「え?」

結衣「その時、京子に伝えてくれって言われてた事がある」

結衣「約束だから、ずっと生徒会室で待ってる……だって」

京子「約束……」


『……放課後、生徒会室に行きましょう』

『約束よ』


京子「そっか、綾乃、あの約束を……」

京子「あんな些細な約束を、大切に思ってくれてたんだ……」

結衣「京子」

京子「ん?」

結衣「多分、京子が会った綾乃も、私が会った綾乃も、シャドウなんだと思う」

京子「……うん、今から考えると、綾乃と朝会った時、瞳が赤かったからね……」

結衣「……京子は、綾乃も助けたいんだよね?」

京子「うん」

結衣「それは、あの、綾乃が好きだから?」

京子「うん、好きだよ」ニコ

京子「それが恋愛感情かどうかは判んないけどね」

結衣「……」

結衣「はぁ……」

京子「え、なんでため息?」

結衣「いや、京子はお子様だなぁって……」

京子「……」

京子「……私ね」

結衣「?」

京子「合わせ鏡に、願ったんだ」

京子「娯楽部の皆や、生徒会の皆が、ずっと幸せで居られますようにって」

結衣「……うん、京子なら、本当にそう願うと思ってた」

京子「けど、これって、多分、幸せになった皆から代償を貰いたいって事でもあるんだと思う」

京子「実際、結衣にはさっき守ってもらっちゃったしね」

結衣「あれは、当然の事だろ……」

京子「どうして?」

結衣「だって、私は京子の事が、その、好きだし///」

結衣「そ、それに、京子には命懸けで助けてもらったから……あ」

京子「助けてあげた代償に、助けてもらいたい」

京子「それが私の願い」

京子「それが本当の私」

京子「勿論、それだけじゃないんだけどね」

京子「結衣の事を助けたのだって、好きだからって理由が一番強いんだし」

結衣「京子……」

京子「けどね、私は否定したくないんだ」

京子「馬鹿みたいに子供っぽい、我侭な結論で申し訳ないけど……」

京子「私は、皆を助けたい」

京子「だから、皆には私を支えて欲しい、優しくしてほしい」

京子「そういう願いを、子供っぽい私を、否定したくない」

結衣「京子……」

京子「幻滅、しちゃった?」

結衣「……ううん、そんな事無いよ」

京子「そっか……良かった」ホッ

結衣「……京子、私が、いっぱい優しくしてあげる」

結衣「守り続けてあげるから」

京子「ありがとう、結衣……」ニコ

結衣(京子との絆を感じる……もう、さっきみたいな目には、合わせない……!)

~生徒会室~


京子「あ、綾乃?居る?」ソーッ


『いらっしゃい、歳納京子』


京子「綾乃……!」


『約束、守ってくれるのね……嬉しいわ』


京子「ううん、私こそ、遅くなってごめんね……」

綾乃「……」zzz

結衣「京子、やっぱり、綾乃が2人居るよ」

京子「うん、奥で寝てる方の綾乃が、本物の綾乃なのかな……」

京子「綾乃、他の生徒会役員は……?」


『関係ない人は、生徒会の権限で全員帰宅させたわ』

『千歳は、渋っていたけど』


京子「そ、そう、良かった……」ホッ



『名乗らないのは騎士の礼に反するから名乗っておくわね』


『我は影、真なる我』


『妖精騎士アヤノ』


『本物の私は、私を受け入れる事が出来なかったから……』


『私は、独自の存在として、私自身の願いを、正々堂々と叶える事にする』


アヤノ『歳納京子……』スタッ

結衣「……!」

結衣「……キングフロスト!」パリーン

京子「結衣!?」

結衣「アヤノ、それ以上、近づかないで」

京子「結衣、そんな脅すような事は……」

結衣「壁や下駄箱、それに窓に残った切断跡がアヤノの仕業なら」

結衣「無闇に近づけるのは危険だよ、京子」

京子「け、けど、アヤノは、私たちにまだ何もして無いのに……」

結衣「アヤノはちなつちゃんと違って、物理的な破壊力を見せてる」

結衣「私、もう京子を嫌な目にあわせたくないよ……!」

京子「結衣……」

結衣「さっきだって、京子が恐慌してて、本当に、恐かったんだから……」


アヤノ『船見さん』スタ

結衣「……!」

アヤノ『まだ約束は果たせてないの……邪魔するなら、生徒会室から出て行って……』ザワッ

京子「あ、あれ、アヤノの、髪が……動いて」


アヤノ『デス』

結衣「ブフ」



アヤノ『バウンド』ブンッ

結衣「ダイン!」ピキピキ


バッキンッ
カキンッ


京子「アヤノの髪と結衣の氷結が激突した……!?」

結衣「そう、廊下や窓の斬跡は、髪による攻撃で出来たもの、なんだ……」

結衣「けど、私の氷結の方が、威力は上みたいだね?」

アヤノ『……』カキンッ

結衣「京子!アヤノが凍りついてる今のうちに!」

京子「う、うん……!」タッ

京子「あ、綾乃!起きて!」ユサユサ

綾乃「……むにゃ、としのーきょーこ……」zzz


アヤノ『……』バッキンッ

結衣「流石に長時間凍らせるのは無理か……けど、何度でも凍らせてあげる」

結衣「ブフダインっ!」ピキピキッ

アヤノ『白の壁……』キンッ

結衣「凍り……つかない!?」

アヤノ『この壁は、氷結への耐性があるのよ』

アヤノ『氷結さえ防げれば、貴女のペルソナで私を抑える事は出来ない……』

京子「あやの、起きてってば!」ユサユサユサ

綾乃「……だめよ、としのーきょーこ、そのプリンは私のなんだから……」zzz

京子「だ、だめだ、全然目が覚めない」


≪魔法による眠りのようね≫


京子「そ、それなら……」カッ

京子「お願い!魔法の眠りを打ち消して!」

京子「歳納さん!」パリーン

歳納「任せてちょうだい、京子」


アムリタッ




デスバウンドッ


結衣「くっ……」ガクッ

アヤノ『これ以上は、危険よ、船見さん、もう生徒会室から出て行った方がいいわ』

結衣「京子を置いて、出ていけるはずないだろ……!」

アヤノ『どうして、邪魔をするの、私は約束の続きをしようとしてるだけよ』

アヤノ『教室では、歳納京子が嫌がったから……だから、生徒会室で』

結衣「……ああ、やっぱり、朝、京子と何かあったんだ」フラッ

結衣「京子が、嫌がるような事、したんだ……」

結衣「……京子を……誰にも渡したくない……」

結衣「例え無理やりにでも、京子と愛し合いたい……」

結衣「それが私の想い……だった」



結衣「けど、今は!」ブワッ


結衣「京子が嫌がる事を、したくない、誰にも、されたくないんだ!」


結衣「京子には笑っていてほしい!」


結衣「それが新しい私の、願い!」


結衣「それが新しい私!」


≪そう、それが新しい私≫


≪私は貴女、貴女は私≫


≪貴女が変われば、私も変わる≫


≪さあ、呼んで、新しい私を≫





結衣「ペルソナ……!」カッ





結衣「オーディン!」


パリーン



アヤノ『ペルソナが変わった……?』

結衣「これが、新しい私のペルソナ……」

アヤノ『例え誰が相手でも、約束の続きを邪魔するなら、生徒会室から出て行ってもらうわ』


アヤノ『デス』

結衣「万物」



アヤノ『バウンド!」ブンッ

結衣「流転!」ヒュルッ


バッキンッ
ゴゥッ

京子「綾乃!起きて!」ユサユサ

綾乃「ん……と、としのうきょうこ……?」

京子「よ、よかった、綾乃……!」ホッ

綾乃「わ、私は……」

綾乃「そ、そうよ、私は、鏡の中から出てきたもう一人の私を追いかけて……」

京子「うん、綾乃……自分の影を、否定しちゃったんだよね……?」

綾乃「あ……」

綾乃「あ、あああっ///」

綾乃「あんなの、私じゃ///」

歳納「綾乃」ガシッ

綾乃「え、え、と、歳納京子が二人?」

歳納「それは、後で説明するから……教えて、貴女は、鏡に何と願ったの?」

綾乃「わ、私は、私は……」

アヤノ『……』ガクッ

アヤノ『……まるで、嵐のような魔法ね』ボロッ

結衣「アヤノ……」

アヤノ『結局、私は、船見さんには、勝てないのかしら』

アヤノ『悔しい、なぁ……』

アヤノ『けど、諦めたくない……私だって……』

アヤノ『私だって、歳納京子を……』

京子「待って!」

結衣「……京子?」

アヤノ『としのう、きょうこ……それに、もう一人の、私も……』

綾乃「……」

綾乃「もう一人の私、こ、こんなに、こんなに傷ついて……」

綾乃「……そうまでして、あの願いを、叶えたかったの?」

アヤノ『あたりまえよ……』

アヤノ『ずっと、ずっと、願ってきたじゃない……』

アヤノ『それは、貴女だって、同じでしょう』

綾乃「けど、けど、私は、傷つくのが嫌で、出来なかった……」

綾乃「と、歳納京子に、否定されるのが、嫌で……貴女を認める事が出来なかった……」

綾乃「そ、それなのに、貴女は……貴女は……」

アヤノ『傷つくのなんて怖くないわよ、だって、私は、歳納京子の事が……』

綾乃「ええ、私も、私も歳納京子の事が……」


綾乃アヤノ「「大好きだもの」」



アヤノ『そう、私を、認めてくれるのね……』サラサラ

綾乃「ええ、ごめんなさい、貴女を否定して、ごめんなさい……」ウルッ

アヤノ『私こそ、ごめんね……結局、願いを叶える事は、出来なかったし……』サラサラ

綾乃「ううん、貴女の勇気は、私が受け取るから……」ゴシゴシ

綾乃「私、頑張るから……消える前に、見て行って……」

アヤノ『うん、頑張れ、わたし……』

綾乃「としのーきょーこ!!!」

京子「は、はい!」

綾乃「……」ギュッ

京子「!?」

結衣「ちょ!綾乃!?」

歳納「……結衣、ちょっとだけ、二人に時間をあげて」

結衣「と、歳納さん……」

京子「あ、あやの、どうしたの抱きついて来て///」

綾乃「……きょ、きょ」

京子「綾乃?」

綾乃「京子っ!」

京子「はいっ」

綾乃「京子も、私の事、呼んでっ///」

京子「う、うん……」

京子「あ、綾乃っ///」

綾乃「京子っ」ギュッ

京子「あやのあやのっ///」

綾乃「きょ、きょ、京子っ」

京子「あやのあやのあやのあやのあやのあやのっ///」

綾乃「きょ、京子っ、京子京子京子っ!」ギューッ

結衣「……何してんの、あの二人」

歳納「あれが、綾乃の望みだったみたいね」

結衣「え?」

歳納「京子に抱きついて、ちゃんと名前で呼び合いたい……それが綾乃の望み」

歳納「それが、アヤノの望み」

結衣「そ、そんな、願いの為に……あれだけの苦労を?」

歳納「……貴女には、判らないかもしれないわね」

結衣「歳納さん……?」

歳納「私も、ずっと、そうしたかった」

歳納「京子の心の中に居たけど、京子とは触れ合う事ができなくて」

歳納「名前で呼ばれる事もなくて……ずっと、ずっとそうして過ごしてきたんだから」

歳納「だから、私も、綾乃の気持ちが少しわかるわ」

結衣「……」

アヤノ『おめでとう……わたし……』サラサラ

綾乃「ありがとう、わたし……勇気をくれて、ありがとう……」

アヤノ『これからも……勇気を忘れないで……』サラサラサラッ

綾乃「うん……忘れないわ、だって、貴女は私なんだもの……」

アヤノ『うん……』サラサラサラサッ


綾乃「もう一人の私、消えちゃった……」

京子「///」プシュー

綾乃「あ、ご、ごめんなさい、歳納京子っ///」パッ

京子「う、うん、気にしないで///」

綾乃「あ、タロットカードが……」

京子「これは、塔のカード?」

綾乃「カードの中に、アヤノが感じられるわ……」

綾乃「……ありがとう、私」

綾乃「たとえどんな困難が待ち受けていても……私は貴女と一緒に立ち向かっていくわ……」

綾乃「これからも……」

≪ペルソナ補足≫

●京子のペルソナ
歳納さん(女教皇)
原型:スカアハ
スキル:アムリタ・他
特徴:氷結攻撃に強い


●結衣のペルソナ
オーディン(皇帝)
スキル:万物流転・他
特徴:火炎攻撃に弱い


●綾乃のペルソナ
???(塔)
スキル:デスバウンド・白の壁
特徴:氷結攻撃に弱い


≪スキル補足≫

アムリタ:味方全体の状態異常を治療

万物流転:単体に超威力疾風を放つ魔法攻撃

デスバウンド:敵全体に高威力斬撃を放つ物理攻撃

白の壁:氷結攻撃への耐性を得る

京子「綾乃?大丈夫?」

綾乃「え、ええ、ちょっとフラッとするけど、平気よ」

京子「綾乃、頑丈だなあ……結衣やちなつちゃんは、シャドウを受け入れた後は倒れちゃったのに」

綾乃「……さっき誓ったばかりだもの、困難に立ち向かうって」

京子「そっか……」

結衣「……まあ、色々あったけど、これで、解決かな?」

京子「うん、そうだね……」

京子「けど、どうしよ、窓ガラスとか、廊下とか、色々壊れちゃってるけど」

綾乃「……それは、あの、私の攻撃の余波で壊れちゃったんだから……生徒会の予算で何とかしておくわ」

京子「流石!副生徒会長!」ダキッ

綾乃「と、歳納京子///」

京子「あれ、名前で呼んでくれるんじゃ……?」

綾乃「あ、あれは、その……慣れるまで、待って///」

京子「うん!待ってやろう!」

結衣「じゃ、保健室に寄って、ちなつちゃんや千鶴と合流して、帰ろうか?」

京子「千鶴に、何て説明しよう……」

結衣「……私が、やった事だし、私が謝るよ」

結衣「千鶴に一発殴って貰うくらいしないと、私の気が済まないし」

京子「結衣……わ、私も一緒に謝るからっ!」

結衣「ありがと、京子」ニコ

歳納「……」

京子「歳納さん?どうしたの?」

歳納「え、ええ……あの、何か忘れてないかしら」

結衣「ん?」

綾乃「別に何も忘れてないと思うけど……」

京子「そうだよ、変な歳納さん!」

歳納「……」

歳納「綾乃」

綾乃「な、なによ?」

歳納「貴女は、誰から合わせ鏡の事を聴いたの?」

綾乃「え、赤座さんからだけど……」

京子「……そういえば、私達も」

結衣「あかりから、聞いたんだよね」

歳納「……あかりは、何処?」

京子「娯楽部には居なかったから、もう帰宅したんだと思ってたけど……」

京子「というか、私、途中から、あかりの事がスッポり頭から抜けて……」

結衣「私もだ……」

歳納「……あかりを、探しましょう」

歳納「あかりも、合わせ鏡のおまじない、やった可能性があるから」

京子「……!」

結衣「……!」

綾乃「……!」

~30分後~

京子「あかり、何処にもいないね……」

綾乃「ええ、下駄箱にはまだ赤座さんの靴が残ってたから……まだ校内に居るはずなんだけど」

結衣「あと、残ってるのは……屋上だな」

京子「あかり……無事だといいんだけど」


~屋上~


キィー


京子「あ、あかりー?」


『京子ちゃんっ!』ガバッ


京子「あかり!?」

結衣「良かった、無事だったんだな……」

綾乃「ま、まって!向こうにも、赤座さんが……!」

あかり「……あ、京子ちゃん、結衣ちゃん、杉浦先輩まで」



『きょ、京子ちゃん、たすけて、あの子、あの子が……』

『あかりなんて、居ないって、言うのっ』

『あかり、あかり、ちゃんとここに居るよっ』

『ここに居るのにっ』


京子「あ、あかり……」


『京子ちゃん、もっと、もっとあかりを見て……京子ちゃん、お願いっ……』

『あかり、消えたくなんて、ないよ、もっと、もっと目立ちたいよぉ……』



京子「こ、この子、あかりの、シャドウ?」

結衣「凄く、弱々しいけど……」

あかり「ごめんね、京子ちゃん」

京子「あかり?」

あかり「もう一人の私が、迷惑かけちゃってるよね……ごめん」

あかり「大丈夫、もう消しちゃうから、安心して?」

京子「あかり……!だめ!この子を否定したら……!」


『京子ちゃん、たすけて!あかり、まだ、まだ消えたく……』





あかり「ペルソナチェンジ」





あかり「オルフェウス」

パリーン


京子「……え、あれ、あかりのシャドウが……」

綾乃「消えた……?」

結衣「京子、あかりの傍に、別にシャドウが!」


≪京子≫


京子「と、歳納さん?」


≪シャドウじゃないわ≫


京子「え?」


≪あれは、あれは……≫

あかり「さっきのは、あかりのペルソナ」

あかり「刑死者のアルカナを持つ、目立ちたがり屋なあかり」

あかり「今呼んだのは、愚者のアルカナ、オルフェウス……」

あかり「あかりが、一番最初に呼んだペルソナなんだよ?」

京子「あかり、ペルソナ使いだったの!?」

あかり「うん、そうだよ、あかり」

あかり「ずっと、ずっと、ずっと、ずっと」

あかり「仮面をかぶってきたの」

京子「あ、あかり?」

あかり「京子ちゃんの為に」

京子「え、わ、わたしの?」

あかり「うん」ニコ

あかり「京子ちゃん、覚えてる?子供の頃のあかりを」

京子「う、うん、覚えてるよ」

あかり「京子ちゃん、凄く泣き虫だったよね」

あかり「だからね、あかり、京子ちゃんを、支えようと思ったの」

あかり「京子ちゃんが、泣かなくて、済むように」

京子「あかり……?」

あかり「その瞬間から、あかりは仮面をかぶり始めた」

あかり「合わせ鏡が教えてくれた仮面が、京子ちゃんに笑顔を与えてくれるって、信じて……」

あかり「京子ちゃんを苛める子達がいたから、その子達を裁く為に審判の仮面をかぶった……」

あかり「京子ちゃんが怪我して泣いてたから、涙を拭いて立ち上がれるよう導く為に法王の仮面をかぶった……」

あかり「他にも、いっぱい、いっぱい、仮面をかぶったの」

あかり「数えきれないくらい……」

あかり「けど、京子ちゃんは、一度は立ちあがれても、またすぐ泣いちゃって……」

あかり「だから、あかり、思ったの」

あかり「結衣ちゃんみたいに、強いだけでは京子ちゃんの涙は止められない」

あかり「なら、なら……」

あかり「なら、京子ちゃんより、弱くなったら……?」

あかり「あかり自身が、京子ちゃんより、弱くなったら……京子ちゃん、強くなってくれるんじゃないかなって」

あかり「あかりを守る為に、強くなってくれるんじゃないかなって」

あかり「だから、あかりは、京子ちゃんより弱くなる為に、月の仮面をかぶった」

あかり「蝉や蚊にすら怯える、弱い弱い私になる為に……」

あかり「そうしたらね、予想通り、京子ちゃん、強くなってくれた」クスクス

京子「……そうだ」

京子「私、あかりを助ける為に……強くなろうと思ったんだ……」

あかり「ありがとう、京子ちゃん……何時も助けてくれて……」ニコ

あかり「……もう、大丈夫だって、思った」

あかり「京子ちゃんが強くなって、更に結衣ちゃんがそれを支えてあげれば」

あかり「何も心配する事は、ないもんね……」

結衣「あかり……」

あかり「けど、中学に入って、あかり驚いたよ」

結衣「え……?」

あかり「だって、てっきり、結衣ちゃんは京子ちゃんの恋人になってくれてると思ってたから」

結衣「な///」

京子「あかり///」

あかり「けど、結衣ちゃんは、京子ちゃんの王子様のくせに、臆病で」

あかり「ちなつちゃんとも、仲良くして……」

結衣「あ、あかり?」

あかり「臆病な結衣ちゃんでは、京子ちゃんを守れないって思った」

あかり「杉浦先輩に京子ちゃんの恋人になって貰おうかなって思ったけど……杉浦先輩も、臆病だったから……」

あかり「それなら、いっそ、皆の本心を暴いちゃおうかなって……」

あかり「だから、皆に、合わせ鏡のおまじないを、教えてあげたの」

あかり「そうすれば、皆が本心と向かい合ってくれるだろうから」

結衣「あ、あかり……あかりが、黒幕だったの?」

あかり「うん、そうだよ、全部、全部京子ちゃんの為にやったの」ニコ

京子「あかり……私は、そんな事、望んでなんか……」

あかり「うん、知ってる……京子ちゃんなら、そう言うだろうなって、思ってた」

あかり「ごめんね……京子ちゃん」

あかり「結衣ちゃんと杉浦先輩も、ごめんなさい……」ペコ

結衣「え、あ……うん」

綾乃「……確かに、色々とあったけど、あの、最終的には、丸く収まったから、別にいいわよ」

結衣「……私達が、最初から自分の本心とちゃんと向かい合ってたら、こんな事にはなってなかったんだしね」

綾乃「そうね……」

あかり「うん、あかり、皆を信じてた」

あかり「ちゃんと本心を受け入れられるって、信じてたよ」ニコ

結衣「じゃ、あの、これで解決、かな?」

綾乃「そうね、赤座さんに、敵意とかは無かったわけだし……」

あかり「うん、私は、京子ちゃんが幸せになるなら、それでいいよ」ニコ

結衣「あかりは、本当に優しいなあ……」ナデナデ

あかり「えへへ///」


京子「……違う」


あかり「どうしたの?京子ちゃん」

京子「私が望んでなかったのは、あかりが、あかりがそんなに沢山の仮面をかぶってる事」

あかり「京子ちゃん?」

京子「私を助ける為に、あかりが仮面を被り続けたのなら、本当のあかりは、何処に居るの?」

あかり「……」

京子「私が見てきたの、全部、あかりの仮面だったの?」

京子「確かに、仮面もあかりの一部だけど……けど」

京子「私、仮面を被ってないあかりも、知りたいよ」

京子「仮面を被ってないあかりとも、会いたいよ!」

あかり「……ごめんね、京子ちゃん」

京子「あかり……?」

あかり「あかりは、もう……本当の自分を想いだせないの」

あかり「今まで被ってきた仮面が多すぎて、重すぎて、あかりは、もう」

あかり「けど、大丈夫、あかりが用意した仮面は、全部京子ちゃんの為の物だから」

あかり「自由に選んでくれて、いいよ?あかり、京子ちゃんの好きなあかりに……」

京子「嘘」

あかり「京子……ちゃん」

京子「あかりだって、本当の自分を思いだしたい、はずだよ」

あかり「そんな事ないよ、だって、だってあかりは……」

京子「なら、どうして……」

京子「どうして、泣いてるのさ」

あかり「あかり、泣いてなんか……あ、あれ?ど、どうして……」

京子「それが、きっと、あかりの願いが叶ってないからだと思う……」

京子「思いだして、あかり、子供のころ、鏡に、何て願ったの?」

あかり「あかりは……あかりは……」

あかり「だめ、だめだよ、思い、だせない……」ポロ

あかり「大切な、事だったのに、どうして……」ポロポロ

あかり「京子ちゃん……私、私、やだよ、本当の自分を想いだせないなんて、やだ……」グスン

あかり「あかり、もう、仮面なんて、かぶりたくない……もう、もう……」ヒック

京子「大丈夫、あかりが持ってる仮面、全部はがしてあげるから……」

京子「だから、もう泣かないで……あかり」

京子「結衣、綾乃、手伝って、くれる?」

結衣「まったく……しょうがないなあ、京子は」

綾乃「仕方ないわよ、歳納京子なんだもん」

京子「ありがとう、二人とも」ニコリ


あかり「ぺ、ぺるそなちぇんじ」ヒック


京子「ペルソナ……」カッ


結衣「ペルソナッ」カッ


綾乃「ペルソナ!」カッ



あかり「イジメイケナインジャー!」パリーン


京子「歳納さん!」パリーン


結衣「オーディン!」パリーン


綾乃「クーフーリン!」パリーン




あかり「京子ちゃんを苛めた子達を裁くために、あかりは審判の仮面を被った……」


結衣「万物流転!」ヒュルッ

あかり「マカラカーン!」キンッ


パキーンッ



結衣「は、反射された!?」

綾乃「魔法が反射されるならっ!」


デスバウンドッ


あかり「ペルソナチェンジ……」カッ


あかり「はっぱ仮面!」パリーン


あかり「泣いてる京子ちゃんが立ち上がれるよう、導くために、あかりは法王の仮面を被った……」


ディアラマッ


綾乃「そ、そんな、傷がふさがる!?」



あかり「ペルソナチェンジ……」カッ


あかり「京子ちゃん!」パリーン


歳納「ど、どうして京子があかりのペルソナに!?」


あかり「京子ちゃんを深く理解するために、あかりは京子ちゃんの仮面を被った……」


あかり「京子ちゃんを幸せにできない子達は、全部、全部燃えちゃえ……」


マハラギオンッ




結衣「あ、あついっ……」バタバタ

綾乃「ど、どうして私達だけっ」パンパンッ


あかり「ふふふ、結衣ちゃん杉浦先輩、あっちっちだね……」


歳納「二人とも、伏せてっ!」


マハブフーラ



結衣「歳納さん、消火するにしてももう少しやり方が……」

綾乃「つ、つめたい……」

歳納「そんな事より、子供の頃からペルソナ使いやってただけあって、あかりの方がペルソナの扱いに長けてるわ」

京子「こ、こんな時、ちなつちゃんが居てくれれば……」

結衣「そ、そうか、ちなつちゃんなら……!」


ちなつ「呼びました?」


京子「ちなつちゃん!?」


ちなつ「目が覚めたら、何か屋上から凄い音が聞こえてきたんで急いで駆け付けてきたんですけど……」

結衣「ちなつちゃん、ペルソナ、使えるよね!?」

ちなつ「へ、あ、ああ、使えると思いますよ、多分」

結衣「じゃあ……ちなつちゃんのペルソナで、あかりを魅了してあげて!」

ちなつ「はい!結衣先輩の望みであれば!」




ちなつ「……ペルソナ」カッ






ちなつ「ペルゼブブ!」

パリーン


ちなつ「さあ、あかりちゃん、私の芸術的笑顔の虜になって!」

ちなつ「デビルスマイルっ!」ニコ


あかり「……!」ビクッ


京子「よし、あかりのペルソナが止まった……みんな!一斉攻撃のチャンス!」


一同「「「うん!!」」」


ブフダインッ

マハブフーラッ

デスバウンドッ

デビルスマイルッ


結衣「こ、これでどう!?」

あかり「……」フラッ

あかり「……ぺ、ぺるそな、ちぇんじ……」カッ

京子「あ、あかり、まだ駄目なの……!?」


あかり「おんねん!」


パリーン


あかり「幽霊が怖かった京子ちゃんを守る為に、私は隠者の仮面を被った……」

ちなつ「どんなペルソナが来たって、私の笑顔の前には……!」

あかり「愚者のささやきっ……」ボソッ


オンネンガオンネンッ


ちなつ「……」ニコ

ちなつ「あれ、力が発揮されない?」

歳納「駄目、私達ペルソナのスキルを封じられてるっ」

綾乃「こ、ここまで来て……!」


あかり「京子ちゃん、もう、もう無理だよぉ、早く、早く逃げて……」グスン

京子「あかりを放ってなんて、いけないよ!」

あかり「だめ、だめなの、もう、あかりじゃ、止められない……」ヒック

あかり「噴き出してくるペメソナ達を止められない……」ヒックヒック

あかり「で、出てくる、もう……もうだめ、きょうこちゃん……」

あかり「おねがい、にげて……」


あかり「ぺるそな」


あかり「ちぇんじ」




あかり「おねえちゃん」


パリーーーーーーンッ


あかね「私はあかり、あかりの中の私」


あかね「あかりに害する者は、全て滅ぼす」


あかね「  メ  」


あかね「  ギ  」


あかね「  ド  」


あかね「  ラ  」


あかね「  オ  」


あかね「  ン  」

京子(だ、だめだ、あかりを、助けられない)

京子(結衣や、綾乃や、ちなつちゃんまで……巻き込んで……)

京子(やっぱり、やっぱり、私は、弱いままなんだ……)

京子(子供の時と、同じままなんだ……)


「う、うう、ヒック」

「うぇぇぇ…」

「だから、だから言ったのに……」

「この世界は、辛いことや悲しいことでいっぱいだって……」

「絶望で一杯だって……」


京子(うん、そうだね、もう一人の私……)

「それでも、貴女は、前に進むの?」

「辛いのは、判ってるのに、怖いのは、判ってるのに」


京子(うん、私は、それでも前に進む……)

京子(だって、あかりは、私の大切な友達だもん)


「……ひっく」


京子(だから、お願い、もう一人の私)

京子(怖いだろうけど、少しだけ、力を貸して……)


「……うん」




京子「ペルソナ、チェンジ」





京子「アリス!」

パキーーーンッ


       ____
     /      \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  / o゚((●)) ((●))゚o \  ほんとはVIPでやりたいんだお…
  |     (__人__)    |  http://anago.2ch.net/heaven4vip/
  \     ` ⌒´     /


       ____
     /      \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  /  o゚⌒   ⌒゚o  \  でもVIPはステマアフィの餌場だお…
  |     (__人__)    |  http://anago.2ch.net/heaven4vip/
  \     ` ⌒´     /


       ____
     /⌒  ⌒\
   /( ●)  (●)\

  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \   だから天国でやるお!
  |     |r┬-|     |   http://anago.2ch.net/heaven4vip/
  \      `ー'´     /


結衣「きょ、京子の新しいペルソナ……?け、けど……」

綾乃「そんな、子供に、戦えるの……?」

京子「み、みんな、耳ふさいで!」


アリス「ううぅ、ひっく…うぇ……」

あかね「どうしたのかしら?どうして泣いてるの?」

アリス「わたし、わたし、欲しい物があるの」ヒック

あかね「あら、何かしら?飴ちゃん?」

アリス「飴ちゃんも欲しいけど、友達が欲しいの……」グスン

あかね「そう、じゃあ、私が友達になってあげるわ、だから泣かないで……」

アリス「本当?じゃあ、じゃあ、あのね~」



アリス「死んでくれる?」



あかね「 」

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      ヽ  ( ノ ( ヽノ   ) ) )
      (_)し'  し(_)  (_)_)


アリス「うふ、うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

アリス「ありがとう、友達になってくれて、死体になってくれて」

アリス「ずっと、欲しかったんだ、お友達」

アリス「もっと、もっとお友達欲しいな、私を守ってくれて、優しくしてくれるお友達……」


京子「ぺ、ペルソナチェンジ」カッ


アリス「あれ、もう終わり?もっと遊ぼうよ……」


京子「歳納さん!」パリーン


フワッ


歳納「……京子、死神のペルソナ使うなんて、無茶し過ぎよ……」

京子「う、うん、もう、使わない……あの子、ちなつちゃんより、怖かった……」


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あかり「……ぜんぶ、全部なくなっちゃった、あかりのペルソナ」

京子「あかり……」

あかり「あかり、どうしたら、いいのかな」

あかり「これから、どうしたら……」

京子「あかりは、思い出せた?あかりのお願い事」

あかり「……」

あかり「あかり、京子ちゃんと、一緒に、ちゃんと遊びたかったの」

あかり「何時もお家の中で泣いてる京子ちゃんと一緒に、遊びたかったの」

あかり「それが、あかりの願い」

京子「そっか……じゃあ」

京子「今から、遊びに行こう?」

あかり「きょうこちゃん……」

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          ザッ            ;;''';;';'';';';;;'';;'';;;
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                        vymyvwymyvymyvy     ザッ
               ザッ     MVvvMvyvMVvvMvyvMVvv、
                   Λ_ヘ^-^Λ_ヘ^-^Λ_ヘ^Λ_ヘ
     ザッ            ヘ__Λ ヘ__Λ ヘ__Λ ヘ__Λ
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京子「ずっと、仮面の中で泣いていて、窮屈だったでしょ?」

京子「だから、泣くのはもうやめて、外に出て、一緒に遊ぼう?」

京子「私も、結衣も、綾乃も、ちなつちゃんも、本当のあかりと遊びたいと思ってるから」

京子「みんな一緒に遊べば、きっと楽しいよ?」

あかり「……うん」ゴシゴシ

あかり「ありがとう、京子ちゃん」

あかり「あかりを、迎えに来てくれて」

あかり「ありがとう……」ニコ

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その日、私は久々に笑った気がした。

仮面の笑いじゃなくて、本当の私の笑い。


ありがとう、京子ちゃん。

ありがとう、結衣ちゃん。

ありがとう、ちなつちゃん。

ありがとう、綾乃ちゃん。


本当の私を見つけてくれて、ありがとう……。


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~公園~


あかり「京子ちゃーん!早く早く―!」

京子「ちょっと待ってよ、あかり、元気すぎ……」ハァハァ

結衣「ずっと仮面を被ってきたんだから、普通に遊ぶのは久しぶりなんだろうな」

綾乃「ええ、本当に楽しそうな顔だわ」

ちなつ「あかりちゃーん!ちょっと休もうよー!」

あかり「やーだよー!」ピューッ

ちなつ「もう!私ちょっとあかりちゃん捕まえてきます」タッ

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ちなつ「待て―!」

あかり「追いついてみろ―!」

京子「あはは、本当、あかりが楽しそうで良かった……」

結衣「うん、これで、一件落着……かな?」

綾乃「……歳納京子」

京子「ん?」

綾乃「あの、私、ちゃんと言ってなかったから、今、言わせてもらうけど///」

結衣「……だったら、私も、前に言ったけど、改めてもう一度言うよ」

京子「え?え?」

綾乃「私は……」

結衣「京子の事が……」

歳納「大好き!」

京子「歳納さん!?」

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歳納「もう、京子、大好き」ギュッ

京子「え、と、歳納さん、私呼んだっけ///」

歳納「ううん、やっと京子の呼び出しなしで出てこられるようになったのよ、これも、私と京子の絆のおかげね///」チュッ

京子「も、もう、歳納さん、いきなりキスしないで、恥ずかしいよ///」

歳納「恥ずかしくなんてないわよ、貴女は私、私は貴女なんだから」

歳納「言ってみれば、これは自慰みたいなもの、みんな、みんなやってるのよ……」チュッ

京子「あふん///」

結衣「……」

綾乃「……」

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                / ありがとうございました ./

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結衣「私達は、ライバルだと思ってたけど……」

綾乃「ええ、それ以前に、倒さなければならない相手がいたようね」

結衣「そうだね、何時までも、自分が一番好きとか言ってられると、困るし」

綾乃「これは、歳納京子の為でもあるわ」

結衣「私は、もう幼馴染の仮面は捨てる……」

綾乃「私も、照れ屋な仮面は捨てる……」


結綾「「そして」」

結綾「「歳納さんより、魅力的な女の子になってやる!」」



これは仮面を巡る、少女たちの成長の物語。


彼女たちの未来に、幸があらん事を。



終盤書き溜めが尽きて申し訳ないです。
支援ありがとうでした。

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【補足】

≪京子のペルソナ≫
アリス(死神)
スキル:死んでくれる?(敵全体に高確率呪詛)・ムドブースト(呪詛成功率上昇)

歳納さん(女教皇)
元ネタ:スカアハ
スキル:アムリタ(味方全体異常回復)・マハブフダイン(大威力の氷結攻撃)
特徴:氷結攻撃に強い


≪結衣のペルソナ≫
オーディン(皇帝)
スキル:万物流転(単体に超威力疾風を放つ魔法攻撃)
特徴:火炎攻撃に弱い


≪綾乃のペルソナ≫
クーフーリン(塔)
スキル;デスバウンド(敵全体に大威力斬撃)・白の壁(氷結攻撃への耐性)
特徴:氷結攻撃に弱い


≪ちなつのペルソナ≫
ベルゼブブ(悪魔)
スキル:デビルスマイル(敵全体に恐慌付与)

≪あかりのペルソナ≫
オルフェウス(愚者)
スキル:無

目立ちたがり屋(刑死者)
スキル:無

泣き虫あかり(月)
スキル:無

イジメイケナインジャー(審判)
元ネタ:アヌビス
スキル:マカラカーン(魔法攻撃反射)

はっぱ仮面(法王)
元ネタ:だいそうじょう
スキル:ディアラマ(ダメージ全回復)

京子ちゃん(正義)
元ネタ:ウリエル
スキル:マハラギオン(敵全体に大威力火炎攻撃)

おんねん(隠者)
元ネタ:オンギョウキ
スキル:愚者のささやき(敵全体のスキル封印)

おねえちゃん(節制)
元ネタ:ヴィシュヌ
スキル:メギドラオン

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               ザッ     MVvvMvyvMVvvMvyvMVvv、
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     ザッ            ヘ__Λ ヘ__Λ ヘ__Λ ヘ__Λ
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