【艦これ】提督「…さて、と」 (1000)

艦これssです

初投稿になります
至らないところもあるとは思いますが、よろしくお願いします

オリジナル設定多数です
本家様にて明言されてる事も改変します

地の文迷い中…戦闘シーンとか書いてみたいですが…


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1425115147

とある島にて


提督「やっと到着か…ここが俺の新しい家、か。随分と遠くまで来たもんだな。…不知火。」

不知火「はい。」

提督「状況はどうなっている。」

不知火「既に書類、業務等の引き継ぎは完了しております。前任者は既に島を離れているそうです。また、本日午後、新たな艦娘が1名、もう1名が本土からの主計係として渡航、着任予定です。」

提督「そうか。しかし、引き継ぎ時に前任者不在とは…いくらここが防衛線の中とは言え、無責任が過ぎる。急ごう。」

不知火「はい。」


島の基地内


榛名「(今日から新しい提督さんが来るのですね…また、失敗する…もう嫌…)」

足柄「…榛名?探したわ」

榛名「ぁ…足柄、さん…」

足柄「もうすぐ提督の到着予定時刻。倉庫でボーっとしている暇は無いよ。準備準備…」

榛名「私は、行かない方が良いと思います。きっとまた…」

足柄「榛名…いや、でも…」

不知火「お二方。ここにいらしたのですか。」

榛名・足柄「?!」

不知火「提督が執務室にてお待ちです。急ぎ参上して下さい。」

榛名・足柄「は、はい!」

執務室


コンコン
不知火「不知火です。艦娘を2名、連れてまいりました。」

提督「入れ。」

足柄「重巡艦娘、足柄です!本日はお出迎えにあがれず、申し訳御座いません!」

榛名「同じく戦艦艦娘、は、榛名です!申し訳御座いません!」

提督「構わんよ。こちらが予定より早く到着したんだ。楽にしてくれ。」

足柄・榛名「は、はい。」

提督「えっと…もう一名、確か隼鷹だったか、は単艦で警備任務に当たっていると。ああ、あと新顔一名と主計艦娘は後ほど到着する、か。」

不知火「2名の予定到着時刻までおよそ120分です。」

提督「そうか、では…私が提督だ。現在より諸君ら、及び主計艦娘を含む6名の艦娘の指揮を執り行う。よろしく頼む。」

一同「はい!」

提督「ああ、喋り方については各員に任せる。知ってるとは思うが、お前たちには階級が無い。敬語は任意で構わん。ただし、私の下した指令等には従うこと。これは強制である。良いな。」

一同「はい!」

提督「よし。基本的な規則について変更はない。ああ、後、今晩全員が揃った段階でもう一度招集をかける。留意しておけ。以上、榛名と足柄は下がって構わん。」

榛名・足柄「失礼します!」

ガチャ
バタン

提督「…さて、不知火。榛名と足柄をどう見る。」

不知火「先程の倉庫内での会話を聞く限り、足柄さんはともかく、榛名さんは問題を抱えているようですね。」

提督「やはり左遷基地と呼ばれるだけあるか…なんでも、扱いにくい艦娘が各艦隊から集められたって話だったが…しかし、そうか…この榛名…これも因果か。」

不知火「司令…」

提督「…」

艦娘寮内


足柄「いやぁ〜、ビビったわ。なんでこんな来んの早いのよってね。」

榛名「は、はい…」

足柄「まぁ怒られなかったしいっかー。それにしてもちょっと怖そうな人だったわねー。若かったけど。」

榛名「今までで二番目くらいに若かったですね。」

足柄「マジ?あたしは初めてだわー。」

榛名「若い人は…苦手かもしれません…怖いです…自分が…」

足柄「…ま、なんかあってもあたしが居るわよ。気楽にいきましょ。」

榛名「…そうですね。前の人とは、違いますよね。…榛名、頑張ります!」

足柄「そうと決まればまずはメシよメシ。昨晩の残り物でチャーハンでも作りますか!」

榛名「はい!ご一緒します!」


時が経ち、午後


雷「駆逐艦の雷よ!よろしくね!」

鳳翔「鳳翔です。主計艦娘として派遣されました。よろしくお願い致します。」

隼鷹「軽空母のじゅうーんよーうでーす。よろしくねー!」

提督「私が提督だ。よろしく頼む。しかし…隼鷹、お前まさか哨戒中に酒を…」

隼鷹「あぇー…気のせいだよぉアハハ」

不知火「開いた口が塞がりません…」

提督「…」

コンコン

榛名「し、失礼致します。足柄、榛名、共に参上しました。」

提督「ああ、入れ。あとそんなに堅苦しくなくていい。」

榛名「し、しかし…」

足柄「提督がああ言ってんだから良いじゃん榛名。ね、提督?」

提督「構わんよ。」

榛名「は、はい…ありがとう御座います。」

提督「さてと、新しい2人が到着して全員揃ったな…これでこの島の戦力が一堂に会した訳だ。駆逐艦2、重巡1、戦艦1、軽空母2か。悪くない面子だ。ココが左遷基地とは思えん。」

一同「…ッ!」

隼鷹「…ちょっと提督サンさ、いきなり失礼じゃない?そりゃ提督サンは左遷されたかも知んないけど、アタシ達の事もロクに知らずにそういう事言うの、やめてほしいな。」

提督「そう思うなら勤務中に酒を飲むな、隼鷹。いくらここが後方の基地とはいえ物事には限度がある。」

隼鷹「…確かにアタシはクズだけど、他のみんなは違う。」

提督「もういいだろう。今ここでお互いの傷の舐め合いをしても何の意味もない。大事なのは、今我々がドン底にいるということを認識する事だ。」

一同「…」

提督「我々は今、軍のお荷物だ。本土の近くに居ては危険だからと遠ざけられ、前線に居ては邪魔だと遠ざけられる。その結果がココだ。」

提督「…ココは人類が近海から深海棲艦を殲滅して久しい。哨戒する必要性も薄いような場所だ。有っても無くても同じ。そこに居る者もまた然り。だから掃き溜めのような扱いを受けてきた。それは各々感じているだろう。」

一同「…」

提督「しかし、それでは勿体無い。お前たちは磨けば光る。」

足柄「…あらそう?で、左遷されたアンタが磨いてくれんの?それであたしらが光んの?」

提督「磨かず錆びて朽ちるよりはマシだろう?…私の目的は、沈みかけているお前たちを自力で航行できるようにする事だ。それ以下でも以上でもない。」

一同「…」

提督「私の言いたいことは以上だ。明日より本格的な指揮を行う。まずは基地機能の回復だな…不知火、鳳翔、雷は残れ。他は寮に戻り休んで構わん。」

榛名「は、はい。…行きましょう、足柄さん、隼鷹さん。」

足柄・隼鷹「…うい。」

三名「…失礼します。」
ガチャ、バタン

提督「さて、不知火、ここの基地の設備は大体把握したか?」

不知火「はい、午前中に確認致しました。」

提督「では雷を案内してやってくれ。…雷、荷物は後で寮の自室に置いておこう。」

雷「わかったわ。ありがと。」

不知火「では、行ってまいります。」
ガチャ、バタン

提督「…鳳翔、お前はこれらの書類に目を通しておいてくれ。配給される資材のリスト等だ。今すぐ必要な物が有れば今言ってくれ。」

鳳翔「わかりました。」

提督「では、仕事を始めようか…」

艦娘寮内


隼鷹「任務完了早々最悪だったわ。」

足柄「あいつ感じわっるいわねー。」

隼鷹「酒瓶あったら殴ってた。自分も左遷されたくせにエラそーにねぇ!」

足柄「間違いないわぁ。」

榛名「で、でも、ココに着任した今までの提督の中では一番マトモそうでしたよね。」

足柄「え、なに榛名!ああいうのがタイプなの?」

榛名「い、いえ、そういう訳では…」

隼鷹「ダメだよ、ダメダメ!ああいう手合いが一番面倒なの!実力無いくせに声だけ大きくて…また上から睨まれて…あーあ、来年には解体かねぇ。」

足柄「間違いないわぁ。」

榛名「…」

隼鷹「…どうせ消えるなら酒飲むか!」

足柄「賛成ー!」

榛名「ちょ、ちょっと!まだ夕方ですよ!それにさっき…」

隼鷹「いいのいいの!飲みたい時が飲むときだよ!」

足柄「ほら、榛名も行くのよ!」

榛名「ちょ、え、まっ、あー!」

ヒャッハー!

一方、同じ頃、寮内…


雷「人数の割に随分と賑やかね。」

不知火「そのようですね…反省が見られません。」

雷「ま、良いんじゃないかしら。提督を直接攻撃するよりはね。」

不知火「…」

雷「…ところであなたは何故ここに?」

不知火「私は司令が以前指揮していた艦隊に所属していたので。お供ですね。」

雷「…ふーん。で、その艦隊の他の艦娘は?」

不知火「6名中4名は沈みました。1名は今も前線で戦っています。」

雷「そう…悪い事聞いたわね。ごめんなさい。」

不知火「いえ、構いません。…つきましたよ、ここがあなたの部屋です。」

雷「あら、中は…普通ね、思ったより。」

不知火「かつてはここも前線基地でしたから。ある程度の設備は整っている筈です。…荷物の整理が済み次第休んで構わないとの事ですので。私はここで失礼しますね。」

雷「ありがと。またね。」

妄想垂れ流しな感じで進めてきます

地の文は戦闘シーンだけとか入れようかなとか

ツッコミは入れていただけたら嬉しいのですが、設定がわりと見切り発車なので、そういう世界なんだなーとか思って貰えればとも思ってます

あと、主計艦娘=家事とかメインの艦娘って事で一つお願いします

執務室

提督「…」カリカリ…チラ

鳳翔「…」ペラ…

提督「(鳳翔…本土防衛の第3艦隊に所属していたが、その後艦娘学校に教官として転属となり、かなりの期間を教官として過ごしたが…突如ココに転属となった、か。)」

鳳翔「提督、この書類のここはーー」

提督「ああ、そこは問題無い。」

鳳翔「わかりました。」

提督「(慎重で、事故を起こすタイプにも見えんなぁ…性格に問題があるのか…?)」

鳳翔「しかし、少し驚きました。このような場所でもきちんと資材は配給されているのですね。」

提督「そうだな…今現在人類は比較的優勢にあるからだろうが…これから先どうなるかはわからん。」

鳳翔「フフフ。提督はこれから先、私達を光らせて下さるのでしょう?それでしたら心配は不要なのではないでしょうか。」

提督「それもそうか。」

鳳翔「期待していますよ、提督。」

提督「…そうだな。」

提督「(まあ、なんにせよ今更警戒する事でもないか。変に疑って艦娘間に不信感が広がる方が問題だしなぁ。)」

コンコン
不知火「失礼します。」

提督「入れ。」

ガチャ
不知火「司令、お呼びでしょうか。」

提督「休んでいるところをすまんな。…鳳翔、書類の確認は済んだか?」

鳳翔「はい、一通り目を通しました。」

提督「よし、では飯炊きの方をして貰おう。不知火、案内してやってくれ。」

不知火「わかりました。鳳翔さん、行きましょうか。」

鳳翔「はい。それでは提督、失礼いたしますね。」

ガチャ
バタン

執務室

提督「…」カリカリ…チラ

鳳翔「…」ペラ…

提督「(鳳翔…本土防衛の第3艦隊に所属していたが、その後艦娘学校に教官として転属となり、かなりの期間を教官として過ごしたが…突如ココに転属となった、か。)」

鳳翔「提督、この書類のここはーー」

提督「ああ、そこは問題無い。」

鳳翔「わかりました。」

提督「(慎重で、事故を起こすタイプにも見えんなぁ…性格に問題があるのか…?)」

鳳翔「しかし、少し驚きました。このような場所でもきちんと資材は配給されているのですね。」

提督「そうだな…今現在人類は比較的優勢にあるからだろうが…これから先どうなるかはわからん。」

鳳翔「フフフ。提督はこれから先、私達を光らせて下さるのでしょう?それでしたら心配は不要なのではないでしょうか。」

提督「それもそうか。」

鳳翔「期待していますよ、提督。」

提督「…そうだな。」

提督「(まあ、なんにせよ今更警戒する事でもないか。変に疑って艦娘間に不信感が広がる方が問題だしなぁ。)」

コンコン
不知火「失礼します。」

提督「入れ。」

ガチャ
不知火「司令、お呼びでしょうか。」

提督「休んでいるところ、すまんな。…鳳翔、書類の確認は済んだか?」

鳳翔「はい、一通り目を通しました。」

提督「よし、では飯炊きの方をして貰おう。不知火、案内してやってくれ。」

不知火「わかりました。鳳翔さん、行きましょうか。」

鳳翔「はい。それでは提督、失礼いたしますね。」

ガチャ
バタン

間違えて連投しました…ごめんなさい


提督「(あーしんど…やっと1人か…こういう時は風呂に浸かりたいが、あるのか?風呂…)」

提督「(…今のうちに各艦娘の詳細資料でも見返しておくか。)」

ペラペラ…

コンコン
不知火「失礼します。」

提督「入れ。」

不知火「鳳翔の案内、完了しました。」

提督「そうか。…不知火、お前には今から哨戒を1人でしてもらうことになるが…」

不知火「問題ありません。不知火にお任せください。」

提督「すまないな。では、今から一緒に工廠に行こうか。装備など確認しておきたい。」

不知火「はい。」


島の工廠


提督「艤装の取り付け方はわかるな?」

不知火「はい。」

提督「そう、ハンガーに吊り下げられてる艤装を腰部のハードポイントで固定して止める。慎重にな。砲の点検も怠るなよ。あと、無線装備も艤装につけておけ。…艤装を接続した瞬間から、」

ガチャコン
不知火「艦娘としての本来の出力が発揮されるので注意深くなれ、ですよね。」

提督「うむ。今のお前は壁に寄りかかっただけで壁が粉砕されるからな…工廠内で事故を起こさん様にな。…そこに水路がある。艤装を装備し、状態を確認して問題なければそこに降りてくれ。」

不知火「艤装出力等問題ありません。装甲にも破損なし。いつでも行けます。」

提督「よし、不知火、海図は持ったか?」

不知火「はい。」

提督「では、領域内の哨戒を頼む。出撃を許可する。」

不知火「不知火、出撃します!」

確認

執務室


提督「あーあー…聞こえるか、不知火。」

不知火『はい。』

提督「よし、何かあればすぐに連絡をよこせ。良いな。」

不知火『了解。』

提督「異常が無ければ2000に帰投せよ。」

不知火『了解。』

提督「さて、と。次は…」

艦娘寮内


提督「…」

隼鷹「左遷じゃん!オッスオッス!」グビー

足柄「あら、ほんと!左遷も飲みなさいよ!イッキよイッキ!」

榛名「はい、榛名は大丈夫です!」

提督「…」無言で酒を取り上げる

隼鷹「あー!左遷独り占めー!」

足柄「ダメよ左遷!その酒は共有財産よ!」

榛名「榛名は大丈夫です!」

隼鷹「ちょ、左遷提督どこ行くの!…どっか行っちゃったよ〜」

足柄「これだから左遷は!酒もっとないの?」

榛名「はい?榛名は大丈夫です?」

隼鷹「どこに隠してたかな…あ、確かあそk」

バケツザバー!

足柄・隼鷹・榛名「…」ポタポタ

提督「…目は覚めたか。休めとは言ったが勤務時間内だぞ。」

隼鷹「…隼鷹に何か落ち度でも?」

提督「…」

隼鷹「…」

ザバー!

隼鷹「口に!口に修復液が!」オヴェェェェ

足柄「修復液って不味かったのね…」

榛名「榛名、やってしまいました…」

隼鷹「ちゃ、ちゃうねん!聞いてや提督!左遷がアタシに酷いこと言うねん!」

提督「おい、榛名!この酔っ払いを入渠させろ!バケツではどうしようもない!」

榛名「は、はいぃ!隼鷹、早く行きますよ!」

隼鷹「まあ、そうなるな。」

榛名「なに言ってるんですかもう!」

どたどた

提督「…」ハァ…

足柄「頭抱えてどうしたのかしら?頭痛が痛いの?」

提督「…お前まだ…」スッとバケツを構える

足柄「冗談よ冗談!ジョークジョーク!酔いは覚めてる!」

提督「…足柄、お前には誰かと組んで夜間哨戒に当たって貰う。」

足柄「ゲッ…マジ?」

提督「…マジ。」

足柄「…わかったわ。やりましょう。」

提督「わかってると思うが、」

足柄「断ったら襲うって?」

提督「…」

ザバー!

足柄「ギャアアアア!口に!口に修復液が!」オボロロロロ

提督「酒は持って行くな、という事だ。…しかしお前らは本当に馬鹿だな…鳳翔が晩飯の用意をしてくれた。榛名をサルベージして飯を食ってこい。」

足柄「…はい」オエッ

トコトコ

提督「行ったか…ハァ…」

雷「大変そうね。」テクテク

提督「ああ、雷か。まぁ、まだ初日だ。なんとかなるだろう。」

雷「そうね、きっと大丈夫よ!それにわた…し…」

提督「…?どうした」

雷「い、いえ。なんでもないわ。」

提督「…鳳翔が晩飯を用意してくれたそうだ。行ってこい。」

雷「え、ええ。行ってくるわ。ありがと。」

このスレの足柄さんはナウでヤングな感じを演習しようかとw試行錯誤してます
行き遅れというレッテルを剥がしてみたいなーと

ちょっと今晩、不知火と榛名の戦闘シーンを地の文でやってみたいと思ってます。
見易い見にくいなど感想いただけたら嬉しいです。

エ、エタりません(慢心)!!

執務室


コンコン
不知火「失礼します!不知火、任務より帰還しました。」

提督「入れ。近海はどうだった?」

不知火「特に深海棲艦の痕跡や予兆は見られませんでした。」

提督「そうか…それは良かった。他に特筆事項はあるか?」

不知火「いえ、御座いません。」

提督「わかった。今日はもう下がって良い。食堂で鳳翔に晩飯を用意させてある。行ってこい。」

不知火「はい。…ところで司令はお夕飯はお済みですか?」

提督「いや、私は少し忙しくてな…先に済ましてある。すまんな。」

不知火「い、いえ!あの、では、不知火、失礼いたします。」

提督「ああ、ご苦労だった。」

ガチャ、バタン

提督「さて、足柄と雷を呼ぶか…」

数分後


足柄「足柄よ。入るわよ。」ガチャ

雷「え、ちょ、足柄さんノックは…」

提督「…雷も入れ。さて、お前たち2人にはしばらく夜間哨戒を行ってもらう。足柄は雷に夜間、特に注意すべき点などを教える事。良いな。前任者のマニュアル通りにやれよ。それと、翌日は夕方頃の起床でも構わん。」

足柄「は〜い。」

雷「わかったわ!」

提督「よし、では工廠へ向かえ。準備が整ったら無線で連絡。行ってこい」

ガチャ、バタン

提督「あとは榛名か…どれくらいできるのか知っておきたいな…明日、不知火と模擬弾で演習させるか…隼鷹…は、まぁいいや。」

『ビーッビーッ』
足柄『準備が整ったわよ。雷ちゃんも。』

雷『いつでもいけます!』

提督「よし、では出撃を許可する。何かあれば報告する事。良いな。」

翌日


コンコン
不知火「おはようございます、司令…司令、顔色がわるいようですが、御加減が優れませんか?」

提督「いや、問題無い…足柄の10分毎の緊急報告で寝てないだけだ。全部どうでもいいものでしかなかったが…」

不知火「ああ…」

コンコン
榛名「は、榛名です。提督、お呼びでしょうか。」

提督「ああ、入れ。」

榛名「失礼します。」

提督「本日、2人には模擬弾で戦闘演習をしてもらう。」

榛名「ぇ…それは、必ず参加しなければ、いけないものですか…?」

提督「そうだな。戦力の程度はきちんと把握しておきたい。」

榛名「そう、ですか…わかり、ました…」

提督「…心配しなくていい。戦闘は全て模擬弾でーー」

『ビーッビーッ』

足柄『緊急報告よ!朝なのに小さなイカがいたわ!』

提督「…そうか。それは良かったな…」

足柄『以上です!』ブチッ

提督「…戦闘は全て非殺傷性の模擬弾で行う。色が付くあれだ。入渠すれば落ちる。」

榛名「…はい。」

提督「それでは、2人とも準備してくれ。準備出来次第始めよう。」

以下しばらく戦闘シーン練習です
地の文で書いてます
正直これ突っ込むために設定おかしくなったり足柄さんが残念な感じになったりしてしまいましたが…

地の文とセリフだけと、どっちが良いのかわかりません…

島の基地から双眼鏡で十分に見える距離。そこに二人は向かい合って居た。不知火と榛名。演習である。

(哨戒は鳳翔に頼んだし問題無いな…。足柄と雷は寝たようだ。)

そろそろ始めるか。そう提督は考え、無線で開戦を告げた。

『大破の判定は艤装に内蔵されたセンサが行う。その大破判定、もしくは倒れてしばらく動きが無ければその後は攻撃しないように。ご存知の通り、お前たちの艤装は脚部を水に浸けて前進するが、全身が倒れこんでも艤装の出力がある限り沈まんようにはなってるからな。急に止まれる物でも無いんだから必要以上に接近するなよ。では、始めてくれ。』

先に不知火が動いた。
「先手必勝です。」
不知火は、榛名とその右側に模擬魚雷を計3発放ち、12.7cm連装砲を榛名に向けて構えながら、標的の左側に弧を描くように急速接近していく。

「…!」

榛名は思考する。

(右側と正面に広い角度で魚雷3…左から駆逐艦の接近…普通に考えて左を向いて正面から撃ち合いをすれば勝てます…)

しかし、

「…不知火さん、確か魚雷4つ持ってましたね…」

不知火が左手で魚雷を3つ放っている間に、右手は何をしていたのか。何故、主砲を構えるのが遅かったのか。
榛名が知覚している魚雷は3つ。しかし、すべて撃ち切らず、決死の特攻を仕掛けてくるとは考えにくい。だとすると、あと1つは…

「不知火さんの影に魚雷かな?」

そう結論づけた榛名は左側を向き、接近する不知火と正面から向かい合った。そして微速で少しだけ後退した。

「…!」

不知火は心の中で舌打ちをした。

(私が体で隠した魚雷に気付きましたか。榛名さんがこっちに突っ込んでくれたら当たる角度だったのですが…。)

そう考えている間にも不知火は主砲を放ってはいるが、急速旋回中に体を傾斜させている状態ではろくに当たらない。榛名もそれを把握しているようで、その場で静止して主砲を構えようとしていた。

(右側に高速で離脱される事を考えて魚雷の間隔を大きくとったのが裏目に出ましたね…。あの位置は)

「魚雷が当たらない…!」

その言葉の通り、4本の魚雷が榛名の周囲を通過していった。そこに残ったのは主砲を構え、射撃姿勢を取る戦艦。不知火の主砲はいくばかが榛名に命中していたものの、損害は無視できると言わざるを得ない程度だった。

(やはり、私のこの主砲だけでは有効打たり得ませんか…!予定では魚雷被弾後のあと一押しとしての主砲だったのですが…もっと装備があれば…!)

そして榛名の姿勢が安定する。

「いただきました…!」

榛名がよく狙って主砲を放つ。

「くッ!」

不知火はそれを強引な加速によって回避したが、代償にバランスを喪失した。そのふらついた体を立て直したところで2射目が来る。

(頭に直撃コース…!)

不知火は己の頭めがけて飛ぶ砲弾を反射的にしゃがんで避けた。と、

「それは悪手ですよ不知火さん…!」

狙い澄ました3射目が来た。

(二段構えだったと言う訳ですか…!)

しゃがんでいる状態では最早避けようがない。不知火は衝撃に備え、歯をくいしばった。
そして、着弾。

「…命中しました…これでご満足いただけましたか、提督。」

着弾と、水面に倒れこむ不知火を確認し、榛名は通信機へと喋りかけた。が、帰ってきた言葉は。

『榛名、油断するな!』

と同時に。
装甲に衝撃。驚いてその方向を見ると、ペイントに塗れた不知火が榛名に対して、拳による突きを放っていた。装甲がダメージを受け、体制が崩れる。

「…大破判定は無しですか…!」

忌々しそうに呟き、榛名は不知火から離れようと後ろに下がるが、不知火はそれを許さない。体制だけでも立て直そうと距離を置こうとする榛名に向かって追い討ちをかけ、転倒を狙っている。

(迂闊でした…!駆逐艦の砲では戦艦に対してダメージは小さい。よって接近戦は考慮に値しないと考えていましたが…まさか演習で徒手格闘に持ち込まれるとは…!)

ギリリと歯ぎしりをする榛名に対して不知火は不敵な笑みを浮かべていた。

「我々は艦娘…!ただの船ではありません…!」

そして、不知火の拳が、ついに榛名を捉えた。

「不知火…徒手格闘はするなと…負けず嫌いの馬鹿野郎が…」

提督は一度双眼鏡から目を離し、溜息をついた。

(艦娘の徒手格闘…艦娘としてのスペックを用い、己の体を武器とする、か…艦娘は船ではない、人型であるなら人の戦い方も出来るだろうと考案された手法だが…)

渋面を作る。

(確かに艦娘の偽装の出力を用いて格闘すれば、大きなダメージを与えられる…小さな砲しか搭載できない駆逐艦や軽巡は特にそうだ。だが…)

そして、自らを責めるように呟く。

(いくら艦娘とはいえ、精神年齢の若い娘に、敵を殴り殺す事を教えたらどうなるかと、何故考慮しなかったんだ。)

「…艦娘は戦争の道具じゃないんだぞ…」

まるで自分に言い聞かせるような提督の拳は、強く握りしめられていた。

大きな波飛沫と共に榛名は水面に背中から倒れこんだ。

「たてない…あれ?…私、負け、る…?」

そして、その側に不知火が少し自慢気に胸を張って立っていた。その両目は海岸からこちらを見てるであろう提督を探している。

(私、駆逐艦に負けるのですか…また…また?…前も、こんな…)

榛名の記憶。その奥底。忌まわしき言葉が、聞こえる。

(榛名…お前は弱いなぁ…榛名…どうしてあんな近くの大きい的にも当たらないんだ?…どうしてあんな弱い駆逐艦に負けそうになるんだ?…ごめんなさい、じゃないだろう?…解体されたいのかい…榛名…榛名…)

記憶が、語りかけてくる。海面で仰向けに転がっている榛名の瞳はだんだん虚ろになっていく。

(榛名…こいつを殴るんだ…死ぬまで殴るんだよ…出来ない?出来るだろう…榛名、敵は殺さないとダメだよ…榛名…榛名…榛名…)

記憶が榛名を唆す。そうだ。自分は艦娘なんだから。戦わないと。だから、自分を傷つける敵は…敵は…どうする?

「てき、は…死ぬまで…殴らないと…」

榛名はゆっくりと起き上がった。

双眼鏡を覗いていた提督は、そこてま異変を感じ取った。

(やはり、この榛名…いかんな。確認しなければならない事だったとはいえ、負けず嫌いの不知火に相手をさせたのは軽率だったか…!)

そして無線で不知火と榛名両方に向かって叫ぶ。

『演習は終わりだ、双方、さっさと陸へ上がれ!』

不知火は了解です、と反応し、頭だけ背後に向けて、榛名を呼ぼうとした。

「榛名さん、演習、は、おわり…大丈夫ですか?」

俯いたままユラユラと揺れる榛名に対し、怪訝な顔をして不知火は問いかけるが、反応はない。榛名は聞き取れないような小さな呟きを続けていた。

(榛名…敗北…解体…榛名…解体…敗北…殺せ…解体…榛名…殺せ…殺せ…殺せ…)

しかし、そのうち榛名は顔を上げた。その顔に歪んだ笑みを湛えて。
そして一言ハッキリと。

「敵は殺さないと。」

刹那、凄まじい掌打が、不知火の顔が数瞬前まであった空間を背後から襲った。

「…!!」

間一髪のところでそれを避けた不知火は、全身から冷や汗が吹き出すのを感じた。

(今のはヤバい…今のをモロに食らうと…本当にヤバい…ですね…!)

「うふふ、よく避けましたね!でもお互い様ですよ?不意打ち!」

からころと嗤う榛名は、不知火を焦らせていた。

(この榛名は…!)

「私、戦艦ですけど、徒手格闘の方が得意なんです!」

(やはり…!)

通常、大きな砲を搭載している戦艦は徒手格闘をしない、若しくは苦手とする傾向がある。単純に、通常群れているであろう敵に接近しなくても強い砲で敵を始末した方が効率的かつ安全だからだ。しかし、ごく稀に超近接戦闘を得意とする戦艦が居る。その場合、その戦艦の出力や相手によっては拳の一撃で半身が吹き飛んだりする。それくらいの出力が戦艦の艤装にはあるのだ。

『榛名!もうやめろ!演習は終わりだ!』

提督が必死に榛名を止めようと無線で呼びかけるが、

「はい!榛名は大丈夫ですよ、提督!必ずや敵を撃滅して見せましょう!」

榛名には言葉は通じていなかった。

『くそ!榛名はパニック状態に陥っている!不知火!一旦距離を取って、北の港まで榛名を引っ張れ!俺は工廠から強制偽装解離装置を取ってくる!』

「申し訳ございません、提督…私の勝手な、」

『今は目の前のことに集中しろ!くるぞ!』

謝罪する不知火を遮る提督の言葉は、不知火の咄嗟の回避行動を助けた。不知火は頸椎を狙った上段蹴りをすんでのところで躱した。

「よそ見ですか?余裕ですね!」

不知火が体制を立て直した時、既に榛名は体を反転させ、回し蹴りを繰り出している。

「くっ…!」

不知火はその回し蹴りを回避不能と判断し、咄嗟に主砲を盾にした。そして衝撃が来た。

「ガッ…!」

主砲が受けた衝撃は艤装を変形させ、不知火を大きく港側に吹き飛ばした。海面に背中から叩きつけられた不知火は一瞬呼吸困難になり、思考が停止する。その一瞬を榛名が見逃す筈もなく、さらなる追い討ちをかけるべく起き上がろうとする不知火に急速接近した。

(榛名ッ…!戦艦らしい、デタラメな威力ですね…!)

不知火はすぐに呼吸を整え、迎撃に備えた。

「不知火さん、タフですね…!」

その言葉と共に突き出される右手を不知火は視認できなかったが、辛うじて、最早使い物にならないであろうレベルに変形した主砲を壁にすることは出来た。そして腹に力を入れ、衝撃に備える。しかし。
榛名の右手はこの主砲を撃ち抜くこと無く鷲掴みにした。

(これは不味い…!)

死を間近に感じた不知火は咄嗟の判断で主砲を艤装からパージ、その勢いで後退。その時、榛名の左手は不知火の鳩尾あたりを狙って打ち出されていた。後退していなければ確実に食らっていただろう。

(艤装を掴みに来るとは…!力押しだけでは無い…!)

しかし、これで距離が少し開いた。これを好機と見た不知火は急反転し、港に向けて一気に加速。それを榛名が追う。

(演習用の弾を積んでいてよかった…後ろからの射撃は無い!戦艦は遅い筈、流石に追いつかれは…!)

焦る不知火はそう考えるが、実際の距離はジリジリと狭まっている。このままでは陸の手前で追いつかれるだろう。

(…さっきの艤装へのダメージで出力が低下していますか…!かくなる上は…)

不知火は腹を決め、港のある湾内に入った瞬間右方向に鋭い旋回を開始した。榛名もそれに続く。両者の体は急カーブを曲がる時のように右に傾く。

(この状態で軸足を払い、転倒を狙います…!)

不知火の後を追う榛名の視界から突如、不知火が消えた。不知火が己の姿勢を水面に張り付くように低くしたからだ。それと同時に急減速。そして、

「軸足貰いました…!」

右にカーブを描きながら近づく、榛名の右脚に向けて全体重を乗せた蹴りを繰り出した。それは果たして榛名の右脚にクリーンヒットした。しかし、

「はい、いただきました!」

「ごぼっ…」

吹き飛んだのは不知火だった。榛名は左脚で立っていたのだ。その右脚は不知火をボールのように前方の宙に蹴り上げていた。

(馬鹿な…あれだけ右に傾斜して、いて、左脚が軸足…フェイント…だとは…重心、操作ですか…かなりの、手練れ…)

薄れゆく意識の中で不知火は敗北を悟り。戦艦に蹴られたその体は長い距離を飛び、港の防波堤に叩きつけられ、そのまま気絶した。

上層部もとっとと解体しろよこんなゴミどもww

とりあえずここまで…
地の文はもう少し続きますが。

地の文は下手だからやめろ!

地の文の方がマシだよ!
とか
混ぜてけよ…
等のご意見いただきたいです

無ければ戦闘シーンだけ地の文入れて練習させてもらおうかと思ってます。

地の文目障りだと戦闘はカットにしようかと思ってましたが
やっぱり好きなように書きます!
戦闘だけ地の文と言うことで進行していこうかな

>>41
一応そこらへんは解体されない理由とか設定考えてあります!が、まだ書けてなかったり
ゆっくり見て貰って、そういう世界なんだなーとか思ってもらえたら嬉しいです

「止めですよ、ふふふ。」

笑みを浮かべつつ榛名は意識のない不知火へと近づいていく。そして、ついに海から陸へと上がった、その時。

「すまなかった、榛名。もういい。もう、やめろ。」

提督が榛名の前に立ちはだかった。

「提督…?どいてください。敵を殺せません。」

提督が何をしているのか全く理解できない、という表情で榛名は強引に前に出ようとする。が、提督は動かない。

「…提督?…榛名は敵を殺さねばなりません。殴って殴って殴って殴って。だからどいてください。」

それでも動かない。それに対し、榛名は苛立ちを隠そうともせずに、

「〜ッ!!…どかないというのなら!あなたも私の敵ですよ!わかってるんですか!」

怒鳴る。

「…」

しかし、提督は何も言わない。

「榛名は!戦わないと!解体されます!だから!だから!…死んで!!」

そして、ついに痺れを切らした榛名が提督に蹴りを繰り出した。

「…あまり女の子が足を上げるもんじゃないぞ。」

苛立ちから放たれた蹴りは雑で大振りだ。提督は最小の動きでそれを避けると、素早く榛名の背後に回った。そして、蹴りを空振って体制を崩した榛名が反応するより前に、大型のスパナのような工具を、艤装を支える榛名の腰のハードポイントの接続部に差し込む。すると、榛名の艤装は強制解除され、榛名が振り返りながら放った裏拳は提督を捉えたが、ダメージを与えることは無かった。そして、提督は、

「もう良い。榛名、すまなかった。」

榛名を、抱きしめた。

地の文ここまで
これから書くときは戦闘シーンだけ地の文書いてきます
めんどくさければ飛ばしてください
話のつながりはわかるように努めます

では、方針も決まったので、余計なレスは控えてサクサク進めてきます

榛名「…てい、と、く…?…何して、どい、て…解体…」

提督「お前は解体されない。俺が許さん。もう大丈夫だ。大丈夫…」

榛名「嘘、う、うううう…う…」ポロポロ

提督「大丈夫だ…」

榛名「い、いま…私…提督…なぐて…不知火さん…」

提督「…気にするな、ただの演習だ。不知火はあの程度で死ぬ程ヤワじゃない。俺もな。」

榛名「」えぐっえぐっ

提督「お前を脅した上司は、ここにはいない。大丈夫だよ…」

榛名「う、うええええ!」ビエーン

ドタドタドタ

足柄「ちょっと!凄い音がしたけど大丈夫なの?!…なんで不知火がズタボロになってる横でアンタ達抱き合って榛名が泣いてんのよ?!全然意味わかんないわ!」

提督「あ、ああ、すまん、足柄。…お前ナイトキャップ被って寝てんのか…」

足柄「うっさいわね!アンタいつまで抱いてんのよ!榛名、ちょっと大丈夫…うわ鼻水ヤバ…」デローン

榛名「あ…あ゛じがら゛ざん゛!!」ビエーン抱きつき

足柄「おうふ!よ、よーしよーし大丈夫よー榛名。きっとセクハラマンに泣かされたのね可哀想に…」

提督「さりげない私への風評被害はよせ…おい、不知火、大丈夫か?」

不知火「我が人生に…一片の…」ウーン

提督「…大丈夫そうだな…足柄、とりあえずドックに榛名を連れて行ってくれ。私も不知火の艤装を外してすぐに連れて行く。」

足柄「アンタまさか一緒に入るつもり…?」

提督「…セクハラマンとはお前の事だな…」溜息

ドック


足柄「ドックで隼鷹が溺れてたから再び入渠させてきたわ!だから今一つしか枠が空いてないわね。」

提督「隼鷹を見ないと思ったらそんな悲惨な事になってたのか…完全なマッチポンプだな…」

榛名「あの、不知火さんから、入っていただいても良いですか。やっぱり状態とか考えると…」

足柄「提督はそれで良いかしら?」

提督「ああ。足柄、不知火を頼む。放り込んできてくれ。」

足柄「しゃーなしよ、しゃーなし。ほら、不知火さん、しっかり。」

不知火「うう…」グター

ドタドタ

榛名「提督…あの、今なら誰も人が居ません。」

提督「…」

榛名「…私を、榛名を解体して下さい。」

提督「断る。理由がない。」

榛名「…理由ならあります!今だって…」

提督「私は負傷していない。不知火も死んではいない。全ては演習の枠組みの中で行われた事だ。」

榛名「でも!私は今まで癇癪で沢山の人を傷つけてきました!提督だけじゃありません…前任者の方だって!…もう、嫌なんです…」

提督「…榛名、お前のそれは癇癪ではない。それは、心の傷だ。」

榛名「変わりません!傷つけた事に変わりはないんですよ!私は居てはいけないんです!」

提督「それは違う。」

榛名「違いません!本土が私を解体しないのも、艦娘の建造の難度が高いからです。ただそれだけです。今も艦娘の数はカツカツだから!私は要らない子だけど!もしもの時、ちょっとはマシな壁になるから残されてるだけです。意思も何もない。…だって、自分で自分をコントロール出来ない艦娘なんて、要りませんよね。…私だって、役に、立ちたかった…!」

提督「榛名。お前は要らない子などではない。私に必要な艦娘だ。」

榛名「…ありがとうございます。嬉しいです。でも…私はその言葉を頂くには、人を傷付け過ぎました。だから、」

提督「榛名。お前が自分をコントロール出来ないと言うのなら。俺がお前をコントロールしてやる。自分で自分の舵を取れるようになるその時までな。」

榛名「ぇ…それは、どういう…」

提督「今日と一緒だ。やばいと思ったら止めてやる。」

榛名「…今日は偶然うまくいっただけですよ。貴方は艤装を装備した私が肩に手を置くだけで死にかねないんですよ。」

提督「偶然じゃない。偶然でアレが出来てたまるか。」

榛名「でも!」

足柄「…ちょっと、何また榛名泣かしてんのよアンタ。ぶっとばすわよ。」

提督「おっと怖いな。では、私はここらで失礼する。榛名はドックが空き次第入渠しろ。」

榛名「あ!提督!待って…」

提督「…解体するしないを決めるのは私だ。私はお前を解体しない。…もう一度、誰かに任せてみろ。」

榛名「…」

提督「…ああ、そうだ。足柄、後で隼鷹を執務室に連れてこい。奴には話がある…」

足柄「…へいへい。」

執務室、数分後


コンコン
足柄「あたし。」

提督「…相変わらず雑だな。入れ。」

足柄「」テクテクテク

机バン!

足柄「アンタ、なんで榛名に戦わせたの?まさか引き継ぎ時の資料読んでない、なんて事無いわよね。」

提督「…戦力の把握に必要な事だった。」

足柄「あの子のトラウマを抉ることが?」

提督「それに関しては、演習相手の人選を誤ったと思っている。私の責任だ。」

足柄「…あのさぁ、提督。言った事には責任持ってよ。言ってるだけじゃダメだよほんとに。まだ二日目だけどさ。あんな話されて期待してんだから。足の小指の爪くらいには。」

提督「努力する。」

足柄「…そ。榛名に関しては任せるわ。発作的に暴れないかも側でみといてあげる…でもね。」

提督「…」

足柄「あんだけ言って抱きしめて、あの子を見捨てたり解体したりしたら。」

アンタ、殺すわよ。

足柄「…隼鷹はもうすぐ来るわ。じゃ、私はまた寝るから。おやすみー。」

提督「…ああ。」

ガチャ、バタン

提督「(やれやれ、血気盛んで濃いのが多いなぁ。)」

提督「…やり甲斐がある。その方が良い。」

寝ます

1レスごとの量が多くて見づらいでしょうか
次からもう少し考えます

さらに数分後、執務室


コンコン
隼鷹「隼鷹です。」

提督「入れ。」

隼鷹「うっす。」

提督「お前、次鳳翔と入れ替わりで哨戒任務に当たってくれ。」

隼鷹「うっす。」

提督「2200まで頼む。」

隼鷹「うっす。」

提督「今週中には哨戒のシフトを出す。それまで適当に割り振るからしっかり頼む。」

隼鷹「うっす。」

提督「あと酒は無しな。」

隼鷹「うっす…はぁ?!」

提督「何故驚く…当たり前だろう。お前はとりあえず勤務中に酒を飲むな。それが当面のお前の目標だな。」

隼鷹「ぐぬぬ…そんなの無理だよ無理!…無理ー!」

提督「死なないから大丈夫だろ。鳳翔は60分以内に帰投する予定だ。準備だけはしておけ。」

隼鷹「60分で何本隠せるかの勝負か…!」

提督「…お前…これまでとは違い、艦載偵察機の使用を解禁する。」

隼鷹「え、いいの?前の上司はボーキ使うからダメッつってたけど。」

提督「普段から使っておかないと、いざという時操作出来るのか?」

隼鷹「う…まぁ、そりゃそうだが。…てか飛行機使っていいならアタシ外出る必要無くない?」

提督「お前は艤装を陸上で長時間動かし続けると自壊する事も知らんのか…」

隼鷹「ぐ…ほ、ほら!湾内の事よ!」

提督「つべこべ言わずに行ってこい。艤装に比べて艦載機は燃料消費が激しいんだ。お前の艤装もボーキ補充しないといけなくなるし…自分の足で距離を稼いでくれ。」

隼鷹「やっぱボーキの話かよ!アタシは燃費良いんだぞ!ばかにすんなよ!」

提督「してないから行ってこい。…ああ、出撃前に工廠で私がお前の艤装を点検するからな。酒を持ち込むなよ…」

隼鷹「…うっす。」

艦娘寮内


榛名「ハァ…」トボトボ

足柄「あら?榛名じゃない。もうお風呂は良いの?」

榛名「足柄さん…はい、もう済みました。ご迷惑をおかけして…」

足柄「いいわよいいわよ!そんな日もあるわ。悪いのは提督だしね。」

榛名「て、提督に非は…!」

足柄「あるに決まってんじゃない。アレが監督責任者なんだから。全部押し付けときゃいいのよ!…でもね、榛名。アンタも無理な事は無理って言わなきゃダメよ。アンタが一番傷付くんだから…」

榛名「…はい。…でも、私…やっぱりお役に立ちたいんです。だから…演習ならと思って…」

足柄「…そう。なら、今回の提督は?自分に自信あるみたいだし?榛名の事も止めてくれたんでしょ?じゃああんまり思い悩まなくて良いんじゃない?前の粗相しちゃった奴らはもう忘れな。」

榛名「…でも、提督は人間で…」

足柄「責任者がが大丈夫だって言ってんだから大丈夫よ。最初のスピーチで自分でハードル上げまくってたし。…いやでも左遷か…不安ね…」

榛名「…!!」涙目

足柄「あー嘘嘘!あの提督、目からビーム出るから!大丈夫よ!」

榛名「…」

足柄「…ま、気楽にいきましょ。…でも、万が一あの提督が口だけで使い物にならなかったら…あたしがなんとかしてあげるわ。」

榛名「…足柄、さん…」うるっ

足柄「…ほら!もう湿っぽいのはやめて!今鳳翔さん出てるし自分らでご飯作りに行きましょ!」

榛名「…はい!」

雷「…提督、目からビーム出るんだ…」

工廠

提督「…髪の毛の中にも!!お前!一体何本酒を隠し持ってるんだ!!」

隼鷹「ふふふあーははー!絶対に持ち込んでやる…!」

提督「何なんだこの情熱は…!命令違反をしているんだぞ…!」

隼鷹「ぐふふふ。全て見つけられるかなぁ?!」

提督「…こいつ…!」

鳳翔「あら?提督と隼鷹さん。」

提督「あ、鳳翔。すまない、少しゴタついてる。」

鳳翔「はい…哨戒の引き継ぎ予定時刻を過ぎても隼鷹さんがいらっしゃらないので、念のため一度工廠まで戻ってきました。…ところで一体何を?」

提督「この馬鹿が酒を隠し持ってるんだ。もう5本みつけたんだがまだ持っているようでな…。」

鳳翔「はぁ…艦載機の中に小分けして入ってそうですね。あとは…下着の下かしら?」

隼鷹「!!!!…馬鹿な…」

提督「…鳳翔、すまないが隼鷹から酒類を取り上げてやってくれないか…」

鳳翔「わかりました。」えいっ

隼鷹「ギ、ギャアアアア!!血が!私の血がぁ!」

鳳翔「はい、小瓶6つと中瓶1つです。」

隼鷹「くそう…勤務時間外は飲まないようにしてたのに…!ささやかな楽しみが…」

提督「…お前、ほんと馬鹿だな…さっさと行ってこい。」

隼鷹「はいはい…うう…」

隼鷹「…」チラッ

隼鷹「(でも隠し場所がわかるってことは…鳳翔ももしかして…)」

たまに投下したのが見えなくなりますね…
確認

全部地の文だと進行が非常に遅くなってしまうので、擬音に留めるようにします


あと、戦闘シーン投下を焦るあまり、

提督が不知火に格闘戦禁止を言い渡すシーン

が抜け落ちてました…
不知火は念の為、格闘戦極力控えろ、と言われていたと思って下さい
分かりづらくてすいません

提督「やっと行ったか…」

鳳翔「提督、お疲れ様です。」

提督「ああ、ご苦労、鳳翔。すまないな、遅れてしまって。」

鳳翔「大丈夫ですよ。…ところで提督、お昼はお済みですか?何やら港が騒がしかった様子でしたが。」

提督「ああ、いや…もう1500か…まだだな。」

鳳翔「よろしければ何かお作りするので、食堂にいらして下さい。」

提督「…わかった、行こう。」

鳳翔「では、私は今から食堂へ向かいますので、いつでもどうぞ。お先に失礼しますね。」

提督「ああ、ありがとう。」


食堂


鳳翔「どうぞ。簡単な物ですが…。」

提督「頂こう。」

提督「…うむ、美味い。」モグモグ

鳳翔「お口に合ったようで何よりです。お代わりもありますよ。…ところで提督、お隣宜しいですか?」

提督「構わんよ。」

鳳翔「失礼します。…ご存知の通り、我々空母の艦載機は極めて小型の為、搭乗者はおらず、操作等は全て空母自身が管制します。」

提督「そうだな、そう聞いている。」

鳳翔「無論、飛行機からの視覚も認識出来るのですが…提督、本日午前の港での件、私は近海から偵察機を通して見ていました。」

提督「…(来たか。)」

鳳翔「単刀直入に申します。提督、あの戦艦は危険です。」

提督「…以降は私が責任を持って管理するとしても、不満か。」

鳳翔「それでも、榛名の作戦遂行能力には疑問が残ります。…提督、空母は主砲を持ちません。艦載機を飛ばしながら徒手格闘も難しい。…我々には頼れる前衛が必要なのです。」

提督「それは把握しているつもりだ。しかし、今現在榛名無しでは対応不可能な脅威は無い。余裕のある間に、榛名のトラウマを解消しようと考えている。」

鳳翔「…そうですか。すいません、お食事中にこんなお話をしてしまって。」

提督「…榛名の戦闘能力自体は高いことが確認できている。不安かもしれないが、少し私を信じてみてほしい。会って二日目では無理かもしれんが。」

鳳翔「…わかりました。…では、提督。私は晩御飯の下準備をして参りますので、失礼しますね。ごゆっくりどうぞ。」

提督「世話をかける。」

鳳翔「大丈夫です。では。」テコテコ

提督「しかし美味いなコレ…」モグモグ

暫く後、執務室


コンコン
不知火「…不知火です。」

提督「入れ。」

不知火「失礼します。…提督、この度は申し訳ございませんでした。不知火の、落ち度です。」

提督「…傷はもう大丈夫なのか。」

不知火「…はい。」

提督「そうか。…不知火。お前の実力は俺が一番よくわかっている。」

不知火「…はい。」

提督「たかが演習で負けたくらいで覆るような評価ではない。これは信頼の裏返しだ。…勝つべき時を見誤るなよ。能があるなら爪を隠せ。良いな。」

不知火「…はい。」

提督「しばらくは、事務の仕事を任せる。秘書艦だ。」

不知火「…はい。」

提督「今日はもう休め。明日0600に執務室へと来るように。」

不知火「…了解しました。不知火、失礼します。」

ガチャ、バタン

提督「さて、あとは足柄と雷を、隼鷹と入れ替わりで出すだけだな。…今晩は寝れると良いんだが。」

翌日


コンコン
不知火「失礼します。不知火です。」

提督「入れ。」

不知火「おはようございます。…あら?榛名さん?」

榛名「お、おはようございます…」

提督「おはよう、不知火。今日からお前は秘書艦な訳だが…もう一人、秘書艦をつける。」

不知火「…不知火一人では、ご不満ですか。」

提督「いや、違う。秘書艦の仕事を覚えてもらうためだ。」

不知火「…つまり、不知火が指導をするという訳ですか?」

提督「そういうことだ。榛名、隼鷹、鳳翔は秘書艦としての経験が無い、もしくはほとんど無いようでな。ローテーションで回していくから色々教えてやってくれ。」

不知火「はぁ…」

提督「ここから前線や本土に転属となった時、秘書艦経験が無いと困るかもしれないからな。」

不知火「そうかもしれませんが…」

提督「艦娘は常に必要とされている。癖の強い艦娘も、しっかり対応してやれば丸くなるさ。活躍すれば転属もあるだろう。そのための準備さ。私の目的はここの艦を一流にする事な訳だからな。」

不知火「…わかりました。努力します。」

提督「早速今日から榛名を頼むよ。」

榛名「よ、よろしくお願いします…」

不知火「榛名さん。…よろしくお願いします。」

提督「さて、始めるか。書類の振り分けから頼む。まだ3日目だ。仕事は山程あるからな。」

仕事中


榛名「あの、不知火さん…」

不知火「はい。」

榛名「演習の件、すみませんでした。」

不知火「いえ…あれは私が…」

榛名「そんなことありません!ほんと、私ああなると制御できなくて…。今までも止めようとして下さった、他の提督を血だるまにしてしまったり…」

不知火「…大丈夫ですよ。私も、私の提督も他とは違います。殺しても死にませんから。」

榛名「(私の提督…)そ、そうですか!殴っても死なないのですね!安心しました!」

提督「…その理屈はおかしい…」

ドドドドド…

提督「ん?…誰かが走ってくるな。」

隼鷹「オラァ!」
ドバン!

提督「…ドアを蹴るなドアを。静かに入れないのか…」

隼鷹「こまけぇこたぁ良いんだよ!提督アンタ、アタシの酒をどこへやった…!」

提督「…ああ…大量の安酒か…早朝に処分したな。」

隼鷹「きっ、貴様の血は何色だー!」

提督「執務室で暴れるな!…?!隼鷹こいつ血の涙を…!」

隼鷹「アタシの私物だぞあれは!」

提督「勤務中に飲んでた罰則だ。受け入れろ。」

隼鷹「そもそも女子寮に勝手に入るなぁ!下着入れに隠してあったのも持って行きやがって!」

提督「落ち着け、私は入ってない。鳳翔が掃除中に隠してあるのを見つけたと私の所に持ってきたんだ。」

隼鷹「げぇっ鳳翔!あの人アタシの下着入れまで漁ったのかよ…怖いわ…」

提督「(…確かに怖いな…自室の掃除は自分でやろう…)」

隼鷹「…ちくしょー…ノー酒ノーライフだよ…」

提督「暫く我慢する事だな。アルコール抜け。」

隼鷹「…くそー…」トボトボ

提督「それと、隼鷹、1400に執務室へ来い。良いな。」

隼鷹「…うん。」
ガチャ、バタン

榛名「…隼鷹さん、落ち込んでました…」

不知火「…自業自得とは言え、少しかわいそうでしたね。」

提督「…隼鷹は酒が問題だからな。安酒を延々と飲んでる。以前勤務していた鎮守府からも、それが原因でここへ転属となったようだし…暫く断酒させて様子を見る。しかたあるまい。」


更に仕事継続…


提督「(そろそろ頃合いか…)二人とも、キリのいいところで飯に行って来い。鳳翔の作り置きがあるらしい。」

榛名「提督はどうなさるのですか?」

提督「私の事は気にするな。仮眠を取る。」

不知火「しかし…」

提督「いい、いい。二人で行って来い。そのまま1400まで自由行動とする。時間になったら戻ってこい。ほれ、解散解散。」

二人「…では、お先に失礼します。」

提督「おう」

ガチャ、バタン

提督「さて、と。そこそこ事情が掴めて来たな…」

提督「不知火は置いとくか…
まず、榛名。これはトラウマから自己制御を失ってる艦。

次に隼鷹。酒癖の圧倒的悪さだな。大方暴れて上司あたりを殴り、出向だろうな。

足柄。前任者のレポートには悪口しか書かれていないな…こいつも足柄にめちゃくちゃされたようだ。」

提督「(…足柄、か。自分本位、と書類では分析されているが…こいつは多分、自分ではなく艦娘本位なんだろうな…艦娘と人間が同等の扱いを受けないのはおかしいと考えてる。だから人間に対して攻撃的なのか?)」

提督「うーん…軍にとって都合が悪い危険思想…か。俺は嫌いじゃないが…足柄は…

鳳翔。明らかに行動が行き過ぎてる感じがするな。隼鷹の酒にしても、昨日の意見具申にしても率直すぎるし…危険を考えれば妥当ではあるが…ここら辺の性格で失敗してそうだな…

最後に雷。接する機会が少ないが…全く自己主張が無いな。まだこの娘に関しては何も言えんか。」

提督「(まぁまずは…榛名か。戦闘を行わない限り落ち着いているようだが…)」

食堂


榛名「…」モグモグ

不知火「…」まぐまぐ

榛名「(き、気まずい…何か喋らないと…)あ、あの!不知火さん。」

不知火「はい。」

榛名「提督、そばで見てると、凄くお仕事の出来る方ですよね。」

不知火「当然です。私の自慢の司令です。」

榛名「(私の司令…)…不思議なんですけど、何故あんな方がこんな辺境に?」

不知火「それは…」

足柄「なになにー?あたしにも聞かせてよ、それ。」

榛名「足柄さん!夜間哨戒、いつもありがとうございます。きちんと睡眠はなさいましたか?」

足柄「腹減って目が覚めたのよね。なんせ飢えてんのよ…これ並んでるの一つ食べれば良いのね?」

榛名「はい。」

足柄「どっこらしょっと…で、何であの人こんなとこにいるの?やっぱセクハラ?」

不知火「司令はそんな事なさいませんよ。」

足柄「わかんないわよー。男は獣慾を持て余すものよ…」

不知火「…その発言、むしろあなたが司令にセクハラしてますよね…」

榛名「実際どうなんですか?なんというか、私の蹴りを避けれる人間の方は初めて見ました。」

不知火「司令は…一流です…でした。かつては最前線で指揮を取ってました。…何故、あの人がここに送られたかは…私の口からは言えませんが。少なくとも私は司令を尊敬しています。」

足柄「…あの人階級章とか勲章とか全く着けて無いわよね。不思議だったけど。身バレすると不味いのかしら。」

不知火「…いつか、司令からお話しされると思います。」

足柄「…そ。じゃ、待つわ。必死になって探す程の事でも無さそうだし。」

榛名「…(…私は知りたい、です。)」

不知火「…私はここで失礼しますね。榛名さん、足柄さん、1400に執務室でまた会いましょう。では。」

足柄「はーい。…何やらかしたのかしらね、提督。アナーキストなのかしら。ねえ、榛名?」

榛名「…」

足柄「…榛名?」

榛名「は、はい!榛名は大丈夫です!」

足柄「あ、そう…」モグモグ

榛名「…(気になります…)」モグモグ


1400、執務室にて


提督「よし、全員揃ったか。」

一同「はい!」

提督「では、今週の仕事の割り振りを発表する。週刻みで変えていくからな。まずは榛名、お前は秘書艦補佐として不知火につき、仕事を学べ。」

榛名「はい!」

提督「足柄。引き続き単艦で2000から0400までの夜間哨戒を頼む。」

足柄「…こうなるだろうと思ってたわ…夜更かし…私の美貌が…」ハァ…

提督「…コホン。雷。お前は0400から1200までの単艦哨戒を頼む。」

雷「わかったわ。」

提督「隼鷹。お前は1200から2000までの哨戒を頼む。一番接敵する可能性の高い時間だ。きっちり艦載機を飛ばして行ってくれ。」

隼鷹「…はい。」

提督「鳳翔。お前は哨戒の必要は無いが、食事洗濯等の雑事を任せる。」

鳳翔「お任せください。」

提督「不知火は以前伝えた通り、秘書艦とする。また、全員空いた時間に呼び出し、実力を見たり訓練を行う可能性があることに留意。以上だ。」

足柄「…実力を見るって全員模擬戦すんの?」

提督「いや、榛名は特例だ。引継ぎ時の書類で戦闘能力が不明とされていたからな。基本的には各々の能力をチェックする程度だ。」

足柄「…あ、そ。面白くないわねー。」

榛名「ちょっと足柄さん…」

提督「安心しろ。そのうち模擬戦もやる。…特に何もなければこれで一時解散とする。隼鷹は哨戒へ急げ。不知火と榛名は残る事。」

一同「了解。」

その後…


提督「不知火、すまないがしばらく仕事を頼む。榛名、着いてこい。」

榛名「は、はい。」


提督の部屋


榛名「執務室の隣の部屋、提督の私室だったのですね…」

提督「まぁな。適当に座ってくれ。…さて、榛名。ここなら外に声は通らない。今日から少しずつお前の話を聞かせて欲しい。昔お前の身に何があったのかを。」

榛名「私の、話、ですか…それは、この島での話では…無いですよね。」

提督「ああ。…少しずつで構わない。…無理そうなら別の日でも良い。」

榛名「いえ…少しずつ、ですよね。…頑張って思い出します。」

うーん
地の文だと進行が遅くなるんですよね…状況がわかりやすいのはその通りなのですが…
あんまり方針が迷走すると折角読んでくださってる方を混乱させてしまうので、地の文は他の艦これss書くときに使ってみます。

このスレはこのまま
平常時セリフ
戦闘時地の文
でいきたいと思います。複雑な形式ですがよろしくお願いします。
乙やご指摘など頂けて嬉しい限りです。


それと以下、話が少しわかりにくいので、予め軽い注釈を

主張派
とは、軍内部にあった一派閥の名称である

榛名「…私が艦娘として建造されたのは、7,8年前の事です。あの大反攻作戦の、そのまた前でした。その頃、軍内部ではある派閥が勢力を伸ばしていたそうです。後に、軍に大きな勝利と、そして裏切りをもたらした…」

提督「…主張派か。」

榛名「はい…私はその主張派系の開発工廠にて建造されました。艦娘の建造には妖精のいたずらと呼ばれる、不可解な現象が絡んでいます。だから莫大な資材を投入しても艦娘の建造が難しいのは提督もご存知だとは思います。」

提督「…そうだな。」

榛名「私の艦種は戦艦ですので、それは喜ばれました。大戦力であると。」

榛名「当初の予定では、私は主張派の主力艦隊であった第3艦隊の、第4機動群に編入される予定でした。第4と言えば、あの大反攻戦を勝利に導いた、英雄提督が指揮していた艦隊ですよ!…今思えば、これが私の最盛期だったのかもしれません。」

提督「…」

榛名「配属直前に、少し大きな問題が発生しました。第4群はその問題の対処に当たる為、急ぎ国を離れたのです。その結果、主張派本部の決定により、私は…私は、英雄提督では無く、彼の部下が指揮する、艦娘決戦部隊に配属されました。」

提督「主張派の、第3艦隊の艦娘決戦部隊…あの有名な黒提督だな…さぞ辛かったろう…」

榛名「ご存知なのですね。そうです、榛名は黒提督の元に配属されたのです。…」ブルブル

提督「…今日はここまでにしておこう。ありがとう榛名、話してくれて。…続きは落ち着いたらで良い。」

榛名「は、い…すいません…」

提督「…榛名、黒提督はここには居ない。俺がお前には指一本触れさせはしない。大丈夫だ。黒提督のやり方は間違っていた。…お前は悪く無い、大丈夫だよ。」

榛名「…ありがとうございます…すいません、ほんとに…あの、少し、風に当たってきてもよろしいですか。」

提督「構わん。」

榛名「すいません、失礼します。」


執務室


提督「すまない、不知火。今戻った。」

不知火「司令。」

提督「…榛名の元上司は黒提督だったよ。」

不知火「…そうでしたか。」

提督「…主張派にはバカとクズしか居なかった。黒提督も英雄提督も、糞食らえだ…」

不知火「司令…」

提督「畜生…」

数日後の夜、食堂にて


隼鷹「哨戒から戻った。あーダルしんど酒ー!」

鳳翔「あら、隼鷹さん。」

隼鷹「こんばんは。夜遅いね。もう2300回ってるけど大丈夫?」

鳳翔「大丈夫ですよ。まだ、仕事もありますし。ドックのお風呂掃除とか、朝ごはんの下準備やら何やら…休憩する暇がありません」

隼鷹「あへー。大変なもんだね。それに加えて戦闘に備えないといけないし…」

鳳翔「仕方ありませんよ。艦娘は民衆には秘匿とされていますから。家事などは艦娘同士でやらないと。」

鳳翔「軍の一部、それも提督と呼ばれるような方だけが艦娘と喋る事を許されているくらいですから。…洗濯や掃除だけでもこなしてくれる第三者が居ればもっと楽になるとは思うのですけどね。それに、提督は私を部屋に入れて下さらないし…掃除がしたいだけなのに。提督も、男の方と言う事でしょうか。」

隼鷹「(アンタ怖いもん…)提督はダメだなぁ!」

提督「私がなんだって?」

隼鷹「げえっ関羽!」

提督「誰が関羽だ…。隼鷹、鳳翔、任務ご苦労。二人とも今から暇があれば私の部屋に来るといい。良いものがある。」

隼鷹「(気になるけど、鳳翔さんまだ忙しいって言ってたしなぁ。一人で行くのなんか悪いし断るか。)アタ 鳳翔「行きます。」

隼鷹「」

提督「隼鷹はどうする?」

隼鷹「…行くよ!」

足柄さんは、人間への態度以外、悪いところは無し、というつもりですので、こんなものかなーと

レポートの、人間と平等ってとこはちょっと矛盾してますね…攻撃的であるとだけ解釈してもらえたらわかりやすいかもしれません

艦娘と軍規の両立は難しいですね…課題です

提督の部屋


提督「日本酒ウイスキーブランデー…日本酒だな。…ほれ。器がグラスしか無いが。」

隼鷹「酒?…酒は禁止じゃないのか。」

提督「もう非番だろう。せっかくの大吟醸だ。燗は…面倒だな。もうそのまま飲んでみろ。」トクトクトク

隼鷹「…いただきます…(!…美味しい…なんか腹立つな…)」

鳳翔「いただきます。んっ…かなり辛口ですね。提督の好みですか?美味しいです。」

提督「まあな。」くいっ

提督「何かつまみが欲しいな…」

鳳翔「では、何か用意してきましょう。」

提督「ありがたい。」

隼鷹「…何で急に酒を…」

提督「…隼鷹。…酒は良いものを飲めよ。」

隼鷹「…そんな酒ねーよ。」

提督「…お前の戦闘評価、見させて貰った。」

隼鷹「!…悲惨だったろ。」

提督「まぁな。変な笑いが出たよ。」

隼鷹「…それ計測したの、前任者の時だったけど…まぁ、その、泥酔してたしな。」

提督「…本当にそれだけか?」

隼鷹「…何が言いたいのさ。」

提督「…艦載機、シラフでいくつ展開出来る?」

隼鷹「…そりゃ、アタシは58しか積めないから、」

提督「…俺の目は節穴じゃないぞ。本当に58機、シラフなら余す事無くキチンと操作可能なのか?」

隼鷹「…」

提督「イチから鍛え直すぞ、隼鷹。」

隼鷹「…やめときなよ。無駄だって。」

提督「なんだ、えらい弱気だな。」

隼鷹「…みんな、さ。アタシが酒抜いたら出来るって言い方するんだ。…でもさ、そんな事無いんだよ。アタシゃ不器用でね。艦載機の扱いが難しいんだ。」

提督「…」くいっ

隼鷹「…大分前、この島に来るより前ね、遠洋に深海棲艦が出現した時迎撃に向かったんだけどさ、あ、勿論シラフね。…あれは傑作だったなー!まさか自分の艦載機同士ぶつけまくるとは思わなかったよ。ボンボン空中で爆発起こるんだけど接敵すらしてなくて。味方超混乱してたよ。アハハ。」

提督「…隼鷹、ほれ、飲め」トプトプトプ

隼鷹「ありがと。…もうさ、そのせいで凄い混戦になっちゃって。何とか勝てたけど、先制されたせいで結構な被害出てさ。同僚も上司もクチ聞いてくんなくて。…そんなん飲むしかないじゃん!」グイッ

提督「…」くいっ

隼鷹「アタシが悪いんだけどね…提督、もう一杯!」

提督「…」トプトプトプ

隼鷹「ありがとうございます!…なーんでアタシこんな話したんだろね。アハハ。」グイッ

提督「…お前、もう一人で酒は飲むな。」

隼鷹「…飲む酒がねーよ。」

提督「…酒に逃げるなという事だ。」

隼鷹「…わかってるよ。ダメだって思ってた。でもしゃーないじゃん。アタシ艦娘だし。逃げ場が酒しかないよ…戦えないのに期待されるって気持ち、仕事の出来る提督にはわかんないかもしんないけどさ。」

提督「…最初から仕事の出来る奴なんざいないさ。愚直に修練を積み上げねば実力は付かん。お前は積み直しだ、隼鷹。」

隼鷹「…きっと崩れる。」

提督「何、崩れそうになったら俺が支えてやる。…昔正規空母の部下が言ってたよ。艦載機の扱いなど才能ではなく積み上げた期間だと。昔のお前の上司はそれを見誤ったんだろう。」

隼鷹「…飲み込み悪いし。」

提督「人より多く、長くやれば良いさ。簡単なことではないが。」

隼鷹「でも!アタシはきっと失敗して!提督は…提督はアタシに失望するんだ!」

提督「簡単な話だ。失敗したら、飲んで笑って忘れて、また積み直しだな。」

隼鷹「…アンタ変だよ。」

提督「よく言われる。」

隼鷹「あーもう!もっと酒下さい提督!」

提督「明日からまた忙しいぞ。大丈夫か?」トプトプトプ

隼鷹「こんな湿っぽい空気のが嫌だわ!」

提督「…だ、そうだ。鳳翔、気を遣わせたな。」

鳳翔「いえ、今戻った所ですよ。」ガチャ

隼鷹「げえっ?!アタシの恥ずかしい話聞かれてた…?」

鳳翔「あら、何の話でしょうか?…どうぞ、刺身です。夕方に上がった魚ですよ。」ニコニコ

提督「お、釣ったのか?旨そうだな。ほれ、酒だ。」

鳳翔「ありがとうございます。…いえ、発破を少々。」

提督「おま…まぁ良いか。どうせ孤島だ。因みに何の魚だ?」

鳳翔「鯛…のお友達です。」

提督「居るもんだな…」

隼鷹「旨え!」

とりあえずここまで

各艦娘については個別にエピソード書いてきますので、各々が何故そうなったかとかの細い設定などはそこで広げてきます

週の終わり、夜

提督「哨戒中の足柄以外全員揃ったか。」

一同「はい!」

提督「初めの一週間ご苦労だった。上が変わって慣れない事もあったと思うが、引き続き頑張ってくれ。」

一同「はい!」

提督「尚、シフトは据え置きとする。ただ、雷は一月後から夜間哨戒を任せる可能性があるので留意しておけ。」

一同「はい!」

提督「では解散とする。時間も遅い。部屋で休め。」

一同「失礼します!」
ガチャ、バタン

提督「さて…」

提督「足柄、聞こえるか。」

足柄『聞こえてるわ。』

提督「すまないが、しばらく夜間哨戒は続けてもらう。」

足柄『どーせこうなると思ってたから良いわよ。夜は見えないから慣れた艦娘のが良いし。かと言って隼鷹は夜は飛ばせないし、榛名は万が一接敵したらヤバイし。』

提督「苦労をかけるな。」

足柄『…あー提督の誠意が見たいわー。誠意で喉を潤したいわー。』

提督「…哨戒が終わったら私の部屋に来い。」

足柄『マジ?酒?酒?隼鷹が美味いの飲んだって言ってたから狙ってたのよねー!役得役得。』

提督「…私は寝る。0400以降来るといい。油断するなよ。緊急の場合は起こせ。」

足柄『りょうかーい!』ブチッ

提督「…寝るか。」


早朝


コンコン
足柄「あたしよ。」

提督「…入れ。」

足柄「お邪魔するわね。さぁ、酒を寄越しなさい!何でもいいわ!」

提督「元気だな…ほれ、日本酒。」トプトプトプ

足柄「…うまいじゃない…」

提督「…当たり前だ…なぜ驚く。」

足柄「隼鷹のうまいはアテになんないのよね。あの子ついこないだまで常に酒飲んでたから。舌がバカんなってるわよアレ。」くいっ

提督「まぁ、全て取り上げたがな…」

足柄「アレ鳳翔さんがやったんですって?…鳳翔って何者なの?床下に隠してたのも消えてたとかなんとか。」

提督「初耳だぞ…私にもわからん。ただ…まぁ、物事を徹底的にやって、更にやり過ぎてそうだな。」

足柄「なるほどねー…要注意ね。私物隠しとこ…アンタもエロ本とか見つからないようにしなさいよ…見つかったら爆笑よ爆笑。」

提督「ああ…」

足柄「…え?あんの?ちょっと家探しして良い?てっきり枯れてんのかと。」

提督「アホか。…コーヒーを淹れてくる。」

足柄「アンタ飲まないの?」トプトプトプ

提督「勘弁してくれ。もう朝だぞ。仕事がある。」

足柄「いいじゃないの〜」

提督「酔っ払いめ…」

足柄「ああん。」

提督「…0600までには出て行けよ。仕事がある。」

足柄「わーってるわよー。そいえば日本酒以外ないの?」

提督「…一応いろいろあるな…忙しくて口にしてないから減ってない。」

足柄「このラック?見せて…ニッカじゃん!…ドライビールある?」

提督「もう日本酒三杯行ってるのか。もっと味わってだな…」

足柄「うるさいわねー。…これ冷蔵庫?…あったわ!」

提督「ウイスキーをビールで割るのか…お前悪酔いするぞ。」

足柄「たまにしか飲めないんだからいいじゃないの!今や鎮守府には提督の酒と鳳翔の料理酒しか無いんだから!隼鷹なんて料理酒飲もうとして鳳翔に捕まってたわよ。」マゼマゼ

提督「救いようがねえな。…もう好きにしろ」ハァ

足柄「これがうまいのよねー!…ツマミはないの?」グビー

提督「…この部屋には置いてないな。」

足柄「気が利かないわねー!まぁいいわ!酒のツマミは酒よ!」グビー

提督「おま、ペース考えろよ…」


0600


足柄「うう…」

提督「案の定潰れやがった…一気に飲みすぎなんだよ…ベッドで寝かしておくか。」

足柄「…那智、ねえさん…」

提督「!!…寝言か。」

足柄「…ぇくしっ」

提督「酒飲んで暑いからって服をはだけさせるからだぞ…布団くらいきちんと着せてやるか…」ファサ…

提督「…仕事中に執務室側のドアから出ないようにと書き置きしておかないとな…」

『外のドアから出ろよ。任務ご苦労。 提督』

提督「よし…今日も1日が始まるな。」


執務室


コンコン
不知火「おはようございます。不知火と榛名、参上しました。」

提督「ふぁあ…入れ。」

不知火・榛名「失礼します。」

提督「おはよう。さて、今日も始めるか…」

仕事中


榛名「秘書艦をやるまで、提督のお仕事を知りませんでした。」

提督「…まぁ、ここは楽な方だ。時間にかなりゆとりがある。だからこそ訓練を見てやったり出来る訳だが…。下からの要求と上からの指令があるからな、規模の大きいところは本当に忙しい。」

榛名「今私の手元にあるのでも、日品や資材の為の輸送船の依頼、それらの護衛の艦娘の依頼、物品リスト…まだまだたくさんありますね…」ゴチャ

提督「使った資材やら金勘定やらは私が確認せねばならんが、他を手伝ってもらえるだけで随分と助かる物だ。ありがとう、二人とも。」

不知火「…秘書艦の務めですから。」

榛名「…お役に立ててますか…えへへ。」

提督「さて、どんどん進めていこう。」


数時間後


不知火「司令、榛名さん。コーヒーが入りました。今持っていきますね。」スチャッ

提督「ああ、ありがとう。そこにーー」

ガチャ
足柄「…あれ?この扉で提督の部屋と執務室、繋がってんの?」

不知火「…は?え?…え?」ポロッガシャーン!

提督「…!(足柄こいつやりやがった…!お前服ぐらいきちんと着ろよ…!)」

榛名「え…足柄さん何で…提督の部屋から…服も乱れて…」

足柄「え?…夜伽?」

榛名「…!////」カアァ

提督「お前そろそろぶっ飛ばすぞ。」

足柄「冗談よ冗談。哨戒帰りにお酒を頂いて、そのまま1人で寝てしまっただけ。」

提督「…頼むぞ、本当に。」

足柄「あんな分かり辛いメモ残す方が悪いのよ。提督の部屋とか入った事無かったし。」

不知火「コーヒーを落としてしまってすいません。と、取り乱しました…」フキフキ

足柄「…なんか邪魔したわね。失礼するわ。…頭いてぇわね…」
ガチャ、バタン

提督「…」

不知火「…」フキフキ

榛名「…榛名は大丈夫です。」

提督「いや、本当に何も無いからな…」


ある日

バーン!
隼鷹「て、提督!助けて!助けてー!」

不知火「?!」ビクッ

榛名「じ、隼鷹さん?」

提督「なんだなんだ、お前は鳳翔さんと訓練中だろう。あとドアはもっと丁寧にだな…」

隼鷹「あかん…あかんでぇ…!鳳翔さんはマジモンの鬼やで…ウチ、殺されてまう!」

提督「落ち着け。エセ関西弁はやめろ。」

隼鷹「…しっ!…提督、聞こえるでしょう…鬼の足音が…」

…コツ、コツ、コツ

隼鷹「ひ、ひぃ!闇がすぐそこまで迫っているぅ!」

提督「闇って…お前言いたい放題だな…後でどうなっても知らんぞ…」

鳳翔「…隼鷹さーん?どこに隠れたのですかー?」コツ、コツ

提督「お、お前呼ばれてんぞ…早く行けよ…」

隼鷹「アンタは悪魔か?!…さっき八つ裂きにしますよ?って笑顔で言われたんだよ…・・」

提督「(鳳翔、やはりそんな感じなのか…?!)」

鳳翔「あら…提督、そこに隼鷹はいるのですかー?」コツ、コツ、コツ

提督「…」チラッ

隼鷹「…・・…・・・・」ブンブン

提督「い、いや、居ないが。」

榛名「(はわわ…提督が賭けに出ました…)」

鳳翔「あら、そうですか?」

隼鷹「…!鳳翔さんがココに来る!…提督の部屋に隠れる!」サッ

コンコン
鳳翔「失礼しますね?」

提督「あ、ああ。」

ガチャ、バタン
鳳翔「…」

不知火「(ハラハラ)」

榛名「(ドキドキ)」

鳳翔「…提督。少しよろしいでしょうか?」

提督「?…ああ。」

鳳翔「失礼します。」

提督「…?!ほ、鳳翔!顔が近い!」

不知火「…・・」ガタッ

榛名「…・・」ビクッ

鳳翔「…」クンクン

提督「(に、匂いか?!)」

鳳翔「…うふふ。提督?嘘はいけませんよ?隼鷹さんの匂いがします。」

提督「…なんのことかな。(お前終わったぞ隼鷹…)」

鳳翔「…提督のお部屋ですね?隼鷹さん、そこに居るのはわかっていますよ。出てこないと大変な事になりますよ。腕が。」

榛名「(う、腕?!腕って…腕が大変なことになるんですか?!)」

隼鷹「ひ、ひいいい・・ごめんなさい!でも!鳳翔さん、肘は後ろには曲がらないんだよおおお・・」

不知火「(会話の内容があまりに恐ろしいのですが…本当に味方ですかねこの人…)」

鳳翔「…わかりました。右は勘弁してあげますから出てきてください。」ハァ

提督「(あの酒の会の後、隼鷹に艦載機の扱いを教えてやってくれ、と頼んだ時にスパルタでも構わんとは言ったが…スパルタどころじゃないなこれ…)…すまん、隼鷹。」

隼鷹「謝るな!い、嫌だ!もう入渠と訓練と哨戒を繰り返すのは嫌だー!」

………
……


榛名「結局出てきて連れて行かれましたね、隼鷹さん…鬼とか悪魔とか叫んでましたけど、突然グッタリして聞こえなくなりました…」

提督「もう言うな、榛名…」

不知火「…鳳翔さん、恐ろしい人…隼鷹さんの魂に黙祷…」

ここまで

隼鷹と鳳翔と提督の飲むシーン、最後少し途切れてる事に今気づきました…
話が多少不自然かもしれませんorz

スレでキャラ安価取ってみたいとかは考えてますが、やってやろうって方居らっしゃいますかね…?
シリアスな感じのキャラにはなると思いますが。

皆様アドバイスありがとうございました
なにやらゴタついてるそうなので、この話では安価はとりあえずやめておきます
また安価は安価で別スレをそのうち立ててみたいと思います

それでは、ギャグ寄りの日常パートがもう少し続きますが、投下していきます

ある日

執務室、仕事中

不知火「…」ペラペラ

榛名「…」ウーン

提督「…ふむ。北で我が国が防衛線を前に押し上げた様だな。」ペラ…

不知火「本当ですか!喜ばしい事です…!」

提督「まぁ小さな勝利だが、喜ばしいことに変わりはない。」

榛名「はい!」

提督「ただ、深海棲艦に対抗できる艦娘を持っているのは我が国だけだったからな…他の国はどうなっているのやら…」

榛名「そういえば、最後の通信衛星が機能を停止して久しいですね。海底ケーブルも破壊され、新たな衛星を打ち上げようとすると、攻撃される…そのせいで諸外国と連絡が全く取れない訳ですが…」

提督「シーレーンはズタズタだから手紙は論外だしな…まぁ、内陸部は無事な可能性はある。深海棲艦は丘に長時間居られない。…深海棲艦が川を遡れたらわからんが…」

榛名「心配です…。」

提督「今は他の国を心配している場合ではないだろう。とりあえずは自分たちの今の領海を守らねばならない。」

榛名「そうですね…。…私はまた、きちんと戦えるようになるのでしょうか…」

提督「大丈夫だ。今は心配するな。それよりも、もうそろそろ秘書官任命から2週間か…どうだ?仕事は覚えられたか?」

榛名「は、はい!一通りは…」

提督「ふむ。どうだ、不知火。」

不知火「榛名さんは、とても飲み込みが早くて驚かされます。既に秘書艦としてほぼ問題ありません。」

榛名「不知火さん…!」

提督「素晴らしい。では、今日これから秘書艦は榛名一人に…」

不知火「と、思いましたが、よくよく考えると榛名さんはまだまだですね。」

榛名「…不知火さん…」

提督「どっちなんだ…いや、と言うのもだな。先程隼鷹がオーバーワークで完全にダウンしてしまったらしい。鳳翔が責任を感じ、隼鷹の分の哨戒をすると言って聞かなくてな。」

不知火「…はあ。」

提督「鳳翔曰く、隼鷹が自分でゴーサイン出したトレーニングメニューだったらしいが…。とにかく今、鳳翔が居ない訳だ。そこで不知火に料理と家事を処理してもらおうかと思っていた。」

不知火「…家事ですか…榛名さんの方が適任では?」

榛名「えぇ…いえ、榛名には勿体無いです…」

提督「何なんだお前らは…もういい、二人とも行ってこい。仕事は私一人でやっておく。」ハァ

不知火「…そんな!」

提督「もめるくらいなら早く行ってこい。ほれ、ほれ。」

不知火「あ、うぅ…失礼します。」

榛名「し、失礼します。(完全なとばっちりですよコレ…折角…折角?)」トボトボ

榛名「(…あれ?…何故、私は今少しモヤっと…?)」

不知火「…榛名さん、行きましょう…」

榛名「あ、はい。」パタパタ
ガチャ、バタン

提督「…そういや不知火と榛名って料理出来るのか…?…俺の采配とは言え、晩飯大丈夫かコレ…」

コンコン
雷「雷よ。」

提督「入ってくれ。」

ガチャ、バタン
雷「お疲れ様、司令!任務完了の報告に来たわ。引き継ぎ地点にて鳳翔さんに哨戒任務を引き継ぎました!」

提督「(雷…これまで殆ど、事務的な会話以外してこなかったが…そうだ、丁度良い。)ご苦労、雷。…一つ頼みがあるんだが。」

雷「?何かしら?」

提督「ちょっと今から秘書艦を頼む。」

雷「…私が?」

提督「ああ。」

雷「…わかったわ。」

提督「頼むよ。」

提督「(…さて、この艦娘に関しては全然情報が無い。と言うか、何故左遷されたのかがわからない。引き継ぎ書類には問題等無しと記されていたが、問題が無いのに、ここへ送られてくるとは考え辛いな。…)なぁ、雷。ここでの生活には慣れたか?」

雷「…え、えぇ。」

提督「…そうか。(…今ので返答が終わりか…これは手強い…足柄と二人で夜間哨戒に行かせた時も、殆ど会話が無かったと報告を受けているし…うーむ)」

雷「…」

提督「(そして、書類を見つめているだけで微動だにしないとな…何か強迫性の症状でもあるのか…対人恐怖症か…?)…大丈夫か?雷。」

雷「…あ、ご、ごめんなさい。大丈夫よ。」

提督「…辛ければ無理はするな。すまないな、急な仕事を頼んでーー『ボムン』…?!なんだ今の音は…」

…タッタッタッタ、バン

不知火「て、提督…!」プスプスプス

提督「不知火!なぜ黒焦げなんだ!しっかりしろ!何があった?」ガシッ

不知火「榛名さん…」ウウ…

提督「まさか榛名がまた…!」

不知火「違…榛名さん…飯…死」カクン

提督「…馬鹿な…少し様子を見てくる。雷、留守を任せた。起きろ不知火、行くぞ!」ダッ

雷「!…ま、任されたわ!」

雷「行っちゃった…提督、大丈夫かしら。」…チラッ

雷「(ど、どうしようかしら…留守を任されちゃったわ…くっ…部屋が私を誘惑する…うぅ…ダメよ、私…我慢しなきゃ…か、体が疼く!…うあ、ああ…あ?…あんなところにコーヒーのシミが!提督ったらもう…じゃない!…もうしないって決めたのにぃぃぃぃ!体が勝手に…)」

厨房


提督「…」

榛名「…」

不知火「…」

提督「…なんだ、この鍋の中にあるタール状の物体は…」

不知火「…爆発しました。」ウウ

榛名「ち、違うんです!お料理ってどうするかわからなくって…」

提督「…おう。」

榛名「足柄さんがまず最初に油をお鍋に入れてたのを思い出したので…」

提督「…おう。」

榛名「艤装の燃料をナミナミ注いで火にかけました…」

提督「いや、その理屈はおかしい。」

提督「爆発するに決まっているだろ!…まず、何故ナミナミ注いだ…!」

榛名「ちょっとのつもりが、不知火さんが艤装を傾けすぎて…でも、いけますよって言うのでつい…」

提督「不知火…やはりお前も同類なのか…しかし、よく厨房が無事だったな。その量の燃料を熱したら厨房くらい吹き飛びそうだが…」

不知火「爆発の瞬間、体張りましたから…ぐふっ」

提督「…お前らは明日から厨房立ち入り禁止な…鳳翔が戻る前になんとかするぞ、いいな。まずは掃除だ。その黒いのをなんとかしろ。」

榛名「ごめんなさい…」

提督「とにかく、時間がない。お前ら2人は掃除に専念しろ。私が晩飯を作っておく。」

不知火・榛名「は、はい…」

提督「…ええい、残り物と米を混ぜてチャーハンだ…!」

執務室への廊下


提督「…なんとか片付け、人数分の食事を用意したは良いが…疲れたな…今から残りの書類を一人で片付けるのは中々しんどいぞ…」テクテク

ガチャ
提督「すまない、雷。今戻っ…た…。」

雷「お帰りなさい、司令官!」

提督「…ここは本当に私の執務室か…?」

提督「(書類が綺麗に全てイロハ順でファイリングされ、さらに分類されて綺麗に棚に並べられている…丁寧に貼られたラベルで何がどこにあるか一目瞭然だ…埃一つ無いぞ…)」

雷「勝手に整理したの。ごめんなさいね。」

提督「(机の上にただ積まれていた書類までトレイに分類され、これにもラベルが…)」

雷「もちろん、今日の処理する書類の分類は終わらせて、提督のやる必要のないものは私がやっておいたわ…!」

提督「(…責任者の認可が必要な書類は残して、他は完璧にこなしてある、のか…)」

雷「更に!全体的に掃除をして、床の絨毯に染み込んでたコーヒーもシミ抜きをしておいたのよ!」

提督「(これは…)か…」

雷「か?」

提督「完璧だ…」

雷「えへへへ。雷だもの!さ、重要書類に目を通して、ご飯にしましょ!」

とりあえずここまで
また夜中にでも

やっぱり日常パートで同じ時間を過ごしていくの、重要だと思います

> 鳳翔曰く、隼鷹が自分でゴーサイン出した

鳳翔「あ、これも追加しておきましょう、このくらい大丈夫ですよね。」
ジュンヨウ「・・・ハイ。ホウショウサン、ダイジョウブデス」(ハイライトオフ)

提督「ありがとう、雷。もう仕事が片付いた。」

雷「…(やっちゃった…私のバカ…)」

提督「…雷?頼りになるな。」

雷「…あ、ええ!良かったわ!(…頼りなる…)」

提督「…。さぁ、飯を食いに行こうか。」


食堂


足柄「(あら…?あれは榛名と不知火じゃない。なんか雰囲気暗いわねー…)」

足柄「夜だけどおはよ、二人とも。」

不知火「あ、おはようございます、足柄さん。」

榛名「あ、足柄さん。これから哨戒ですか?」

足柄「そんなとこよ。…そいえば、今日の晩御飯、榛名と不知火が作ったらしいわね。臨時料理人って札立ってたわよ。中々美味しいじゃない!」

榛名「え"…」

不知火「…」ビクッ

足柄「…?どうしたのよ。結構いけてるわよ?」

榛名「いやー、実は…」

提督「…光栄だな、足柄。お褒めに預かるとは。」

足柄「あー…なんか色々察したわー…」

不知火「あ…提督、と…雷さん?」

雷「こ、こんばんは…」モジモジ

足柄「珍しい組み合わせね?というか、雷ちゃんがレアキャラよねー。」

提督「少し秘書艦の代わりをやって貰ってな。…ほれ、雷。足柄の横に座ると良い。私は不知火の横に失礼するよ。」

不知火「えっ…代わり…。…どうぞ。」

雷「お、お隣失礼するわ」

足柄「良いわよー。…ねぇ雷ちゃん、このチャーハン味付けにムラがあるわよね。」

提督「座って2秒で上司のネガキャンはやめろ…」

雷「そ、そんなことないわ!美味しチャーハンよ!」

足柄「な、なんていい子なの…ちょっと提督アンタ、この小さな天使に感謝なさいよ。」

提督「…足柄、文句があるなら食うなよ…」

足柄「冗談よ冗談…なーんかタール臭がするのは事実だけどね…」

榛名「…」ビクッ

不知火「…」ビクッ

雷「…」モグモグ

提督「そういう日もあろう。…榛名、不知火。あまり気にするな。今回はまだ良かったさ。まだ建造されて7,8年だろう?知らない事もあるさ。」

榛名・不知火「提督…」

足柄「何この空間…あーヤダヤダ。それじゃ、あたしは行くわね。またお話しましょ、雷ちゃん。」バイバイ

雷「え、ええ!是非!」

提督「さて…私もそろそろ寝るかな。また明日、諸君。早めに休めよ。おやすみ。」

榛名・不知火「おやすみなさい、提督。」
雷「おやすみなさい!」

翌日


提督「んぁ…もう1500か…昼飯忘れてたが…もう良いか…」

榛名「提督、やはりお昼食べてらっしゃらなかったんですね…」

不知火「適度な休息も仕事のウチですよ、司令。少しお休みになって下さい。」

榛名「そうですよ、提督。部下にだけ昼休みを取らせるなんて…」

提督「そうしたいのは山々なんだが、もうすぐ輸送船の到着があるからな…どうしても忙しくなる。」

コンコン
雷「雷よ!」

提督「雷か。入ってくれ。」

ガチャ、バタン
雷「こんにちは、提督!良い天気ね。ご飯出来てるわ。どうせ忙しくて食べてないと思って運んで来たわよ!」

提督「す、すまんな。」

雷「また机の上散らかして、ダメじゃないの…これはここ、これは秘書艦でも出来る書類…」ガサゴソ…

提督「あ、ああ…」

雷「はい!スペースが出来たわ。ここにご飯置くわね。」

提督「ありがとう…」

雷「私もお仕事手伝うから、その間に食べなさい!コーヒー淹れるわね。」

提督「う、うむ。(不知火と榛名の視線が痛い…)」

雷「あとメモよ、鳳翔さんから。」

提督「ああ、ありがとう。…メモ?嫌な予感が…」

『提督へ。二度と厨房でタールを作らないで下さい。鳳翔より』

提督「まぁ、バレるわな…」

雷「お手紙なの?見てもいい?」

提督「構わんが。」

雷「…もしかしてこれって榛名さんと不知火さんが…」

提督「言ってやるな。…色々悪いな、雷。助かるよ。」

雷「…もーっと私に頼ってもいいのよ、司令!」

榛名「なんだか我々空気ですねぇ…」

不知火「はい…」

数日後、艦娘寮内


不知火「…雷さんが、昼過ぎに毎日毎日来ては、毎日毎日毎日毎日、提督に近付き過ぎです…!」イライラ

榛名「…は、はぁ…確かに近いなーとは思いますが…」

不知火「これは由々しき事態ですよ!…私ですら提督と手を繋いだ事も無いのに…!」

榛名「(それはただの嫉妬じゃ…でも、私も少し…嫌です。)」

不知火「提督も提督です!ポンポン秘書艦増やして…!」

榛名「(あれー?これまた私にとばっちりですかー?)」

不知火「…それとも…最近不知火は失敗ばかりですから…失望、されたのでしょうか…雷さん、凄く仕事出来ますし…」

榛名「そ、そんな事無いですよきっと!…元気出してください!」

不知火「…かくなる上は!雷さんに演習を挑みます…!」

榛名「私情で演習はダメですよ!」

不知火「…う、うう…私は…どうすれば…」

………
……


足柄『ーーってな会話を聞いたわよ、今日』

提督「そうか。わざわざ夜間の哨戒中にすまんな。」

足柄『だって日中ずっと雷ちゃん側にいるじゃない。言えねーわよ。…なんかアンタ駆逐艦にモテるのね。』

提督「余計なお世話だ。」

足柄『で、なんとかしなさいよ。まずいんじゃないの?』

提督「そうしたいのは山々なんだがな…雷が、どうにも艦娘同士のコミュニケーションが少し苦手なようだ。」

足柄『あたしも話しかけてはいるんだけどね。目を合わせてくれないわ。』

提督「その為に三人目の秘書艦に置いて、不知火達との距離を物理的に縮めてみたが効果無しか。打ち解けてさえくれれば問題なくなると思うんだがな。」

足柄『…雷ちゃん、あの子そんなに仕事出来るの?』

提督「アレはヤバい。あんなのが秘書艦やってたらダメ人間になるぞ…。仕事だけじゃないからな…」

足柄『アンタが言うくらいなんだから凄いわね…』

提督「雷は、本人にも多少原因はあるが、周りが原因で島流しされたんだろうな。仕事の効率が段違いだし、何より上司に甘い。」

足柄『なる程ねー。それで艦娘同士のコミュニケーションが苦手だと孤立するわよね。孤立してる秘書艦は扱いづらいでしょうね。』

提督「聞いてみたところ、勤務先は様々なところを転々としていたようだ。一部では、雷を贔屓し過ぎて、提督が先にトんだりした事もあったらしいが。…恐らく、この島に来てから全然交流が無かったのも、こうなるのを恐れての事だったのだろうな。しかひ、やはりまだ幼いか…自分を抑えられなかったんだろう。」

足柄『世話したいのを抑えられないって…まぁある種の自己顕示欲なのかしら…で?どーすんの、アンタ。』

提督「策はあるが…隼鷹と鳳翔に大きな負担が掛かる…」

足柄『…隼鷹、死ぬのね。』

提督「まだそうと決まったわけじゃない。あきらめるな…それと、足柄。お前にももう少し…」

足柄『夜間でしょ?慣れてきたから良いわよ、別に。』

提督「…そうか、助かる。すまんな。」

足柄『…しゃーなしよ、しゃーなし。』

数日後、月末の前


提督「…というわけなんだ。鳳翔と雷にシフトを代わってもらいたい。短期間で良い。協力してもらえるか、二人とも。」

隼鷹「いいよ。…今のうちに休んどくぜっ!」

鳳翔「あらあら、隼鷹さん?哨戒終わってから次の哨戒まで16時間もあるんですよ?…夜は、長いですよ…うふふ。」

隼鷹「…うげぇー?!夜に飛行機飛ばせないよー?!というか哨戒終わってから訓練て辛すぎるよ?!」

鳳翔「頑張りましょうね!隼鷹さん!」

隼鷹「い、嫌だー!しんどいー!」

鳳翔「…頑張りましょうね?隼鷹さん?」

隼鷹「ア、ハイ。」

提督「…すまん。恩に着る。」

隼鷹「丸く収まったら、酒、思いっきり飲ませろよな!」

鳳翔「あら。それでしたら私も…」

提督「…そうだな、また三人で飲もうか。」


更に数日後、月末
執務室にて


提督「隼鷹以外揃ったな。」

一同「はい!」

提督「では、シフト変えを発表する。変更の部分のみ伝える。鳳翔!」

鳳翔「はい。」

提督「0400から1200までの哨戒を頼む。雷!」

雷「は、はい!(正式に秘書艦に任命かしら?)」

提督「お前には鳳翔の代わりに家事雑事をこなしてもらう。」

雷「…えっ」

提督「返事は?」

雷「は、はい…」

不知火「…」

榛名「…」

提督「よし、以上だ。雷と秘書艦はここに残れ。解散!」

とりあえずここまで

誤字脱字多すぎて…睡眠は大事ですね…

書き溜めしてたデータ飛びましたorz

ちょっと更新遅れます…あああああ…

雷「どうして?!司令官!私のどこがいけなかったの?!」

提督「落ち着け、雷。」

雷「…!(また…どこかへ飛ばされちゃうのかな…折角、司令官と仲良くなれたと思ったのに…)」グスッ

不知火「…」

榛名「…」

提督「ここでは話せない。私の部屋に来てくれ。不知火と榛名は仕事を頼む。」


提督の部屋


雷「…理由が知りたいわ…」

提督「…実はな、隼鷹から相談があったんだ。鳳翔の指導がキツすぎるから、自分が居る時に鳳翔を哨戒に出して欲しいと。(大嘘だが。)」

雷「えっ…確かに隼鷹はかなりしんどそうだったわね…」

提督「それでシフトを変更した訳だ。」

雷「でも、それは、どうして私が外れるの…?秘書艦としてダメだったから…?」グスッ

提督「…雷!」

雷「は、はい!」ビクッ

提督「私は雷だからこそ、頼んでいる。これはお前にしか出来ないことだ。」

雷「雷、だからこそ…」

提督「私はお前に、皆の秘書艦となって欲しい。私一人でなく、全員のな。その意味で、今の鳳翔のスペースに敢えて割り振った。」

雷「…」

提督「…お前より優秀な秘書艦は見たことが無い。だから、全員を提督だと思って仕事に取り組んでくれないか?」

雷「全員が提督…」

提督「雷。お前を頼らせてくれ。」

雷「…わかったわ!私に任せて、提督!」

1週間経過…


不知火「雷さん、ご飯おいしかったです。いつもご馳走様です。」

雷「お粗末様!バランスよく作ってるから、ちゃんと食べてもらえて嬉しいわ!」

………
……


榛名「いやぁぁぁぁ!雷さん!そこに虫が!黒光りする虫がー!助けて!助けてー!」

雷「スリッパで…えいっ」ペシンっ

雷「もう大丈夫よ!これは片づけとくわね!」

榛名「ありがとうございます!榛名、感激です!」

………
……


隼鷹「お!服のシミが綺麗に取れてる!ありがとー雷!」

雷「お洗濯してて気になったんだけど…そのシミ、まさか血じゃないわよね…?」

隼鷹「…世の中には知らない方が良いこともある。」

雷「…!!…負けないで!隼鷹さん!」

隼鷹「雷…お前って奴は!」ギュー

雷「無理そうならちゃんと言うのよ?」よしよし

隼鷹「…アタシ、また頑張るよ!うおおおお!」

………
……


雷「あら、提督!」

提督「…雷。調子はどうだ。」

雷「バッチリよ!提督はどう?ちゃんと寝てる?ご飯は毎日ちゃんと食べさせてるけど!」

提督「問題ない。」

雷「そう、良かったわ!」

不知火「あ、雷さーん、向こうでお茶しませんか?…あら、提督もいらしたのですね。お疲れ様です。」

雷「行くわ!お茶菓子は何が良いかしらね。提督も如何?」

提督「遠慮しておこう。私はすぐ執務室に戻る。」

不知火「それは残念です…雷さん、先に行ってお茶の準備しときますね。榛名さんの部屋ですよ。では。」パタパタ

雷「…あのね、提督。ありがとう!あなたのおかげで…皆と仲良くなれたわ。」

提督「それはお前の努力の結果だ。私の力じゃ無いさ。」

雷「…そんなことないわ!本当に感謝してるんだから!…お友達って初めてなの。」

提督「…良かったな。私も嬉しいよ。」

雷「…うん。…それじゃ、私は行くわね!本当にありがとう!」タッタッタ

提督の自室、早朝


コンコン
足柄「あたし。起きてる?」

提督「…入れ。」

足柄「あんがと。哨戒終わってお酒飲みたくなっちゃった。提督、頂戴?」

提督「…何が欲しい。」

足柄「スコッチ。」

提督「このご時世、国外の品があると思うな。…余市だ。」ゴトン

足柄「…マジ?良いの?」

提督「世話になったからな。…ほれ。ロックだ。」チョロロ…

足柄「やっぱり香りが違うわぁ…雷ちゃん、たった一週間で皆と友達になっちゃったわよ。その代償に、さっきお風呂で隼鷹が浮いてたけど。」

提督「…奴と鳳翔には苦労をかけたな。」

足柄「こう言っちゃアレだけど。何故あの程度で改善される事が、今まで改善されなかったのかしら?不思議よね。」

提督「…お前は偽装を装着する時、艤装の心情を考えるか?」

足柄「はぁ?艤装に心なんて…」

提督「艦娘を対深海棲艦の武器としか見ない提督は多い。そう言う事だ。」

足柄「…」

提督「特に雷は事務作業が恐ろしく早い。あれだけ仕事が出来たら、効率を上げる為に、戦闘には出さずにずっと秘書艦をさせておくだろう?戦闘に出したら、その間は秘書艦の仕事が出来ないからな。すると当然他の艦娘と接する時間が無くなり、提督とばかり接する。それは他の艦娘の嫉妬の対象になる。提督が贔屓すれば尚更な。何故戦わない奴が一番評価されるのかと。」

足柄「…確かに、嫉妬は理屈なんて関係無く起こるわね…」

提督「すると雷は排斥される。他の艦娘によってな。上が下の心情を考えなければこんな事はよく起こる。雷自身は原因を未だに理解してないだろうな。…自分では原因がわからずに、他の艦娘に嫌われると、どうなるだろうか。」

足柄「他の艦娘とコミュニケーションを取るのが怖くなる…」

提督「その結果が今回の雷だろう。接し方を知れば良いだけだが、それを経験で覚える余裕も、指し示す者も居なかった。そう言う事だ。」

足柄「…ねぇ、一つ聞いても良いかしら。」

提督「何だ。」

足柄「あなたは今までの提督とは違う。私達がまるで近しい人間かの様な態度を取るわ。雷の件にしたってそう。きちんと考えてる。」

提督「…」

足柄「…今までの提督は皆、高圧的で、命令は絶対。まるで艦娘を物のように扱っていたわ。」

提督「…それは艦娘が怖いからだ。人間は恐る物に対し、威圧し、上から制御しようとする。」

足柄「何でなの?私達艦娘は人間と共に深海棲艦と戦っているのに!何故恐れられるの?」

提督「…人間の目には敵の深海棲艦しか写っていない。種の存続を脅かす天敵だ。」

足柄「…?」

提督「そっくりだろ?艦娘と深海棲艦は。見た目だけの話じゃない。」

足柄「…!」

提督「…もう良い時間だ。そろそろ不知火と榛名が来る。部屋に戻れ。」

足柄「…わかったわ…」

提督「…風邪を引かんようにな。」

とりあえずここまで
内容的には問題ないはず

金剛さん可愛い…結婚したい…

以降消えないよう気をつけます
アドバイス、ドンマイありがとうございます
問題は、これが携帯投稿って事ですかね…
まぁ、なんとかします
エタりません

深夜、執務室


提督「(あのシフトをまた改変してからしばらく経って、皆また生活に慣れてきたな…)」

提督「(夜間哨戒を雷と不知火に、秘書官を榛名1人、足柄は午前の哨戒、鳳翔はまた主計として働いて貰いつつ隼鷹の訓練をして貰ってるが…)」

提督「(足柄が夜、ちょくちょく酒をねだるようになってきたな…勤務中に誰も酒を飲まなくなったのは良い事だが。あとは夕方頃に起きてきた雷と不知火が、執務室に居座ろうとしたり…)」

提督「(しかし、艦娘たちと接する時間が増えると、終わる仕事も終わらんな。榛名もまだ一人での秘書艦に慣れてないし。…まぁ、良い事ではある。)」

提督「あぁ…やっと終わった…。榛名は先に部屋に帰らせて正解だったな…ん?」

提督「…飲み水がもう無い。…仕方無いから食堂に降りて飲みに行くか。」

深夜、食堂


提督「…鳳翔?お前、なぜ机に突っ伏して…」

鳳翔「…」スー…スー…

提督「…なんだ、寝ているのか。…ん?」

鳳翔「…っ」ツー…

提督「…(涙が…泣いているのか…)」

鳳翔「…」ぽろぽろ

提督「…(悲しい夢か。それとも…記憶か。)」

提督「…(上着を掛けておいてやろう。)」ナデナデ

鳳翔「んっ…」スー…スー…

提督「…やれやれ、もう一踏ん張りするか。」

朝、食堂


鳳翔「…(…うっすら提督の匂いがします。)」

??「…さ…?…さん?大…夫?」

鳳翔「…(…あれ?私は何をして?…提督?そこにいるの?)」パチッ

雷「鳳翔さん?あ、起きたわね。」

不知火「大丈夫ですか?」

鳳翔「…あれ…今、何時でしょうか?」ぼーっ

雷「0600よ。食堂で鳳翔さんが寝てたからびっくりして…あまりに動かないから起こしたの。ごめんなさいね。」

鳳翔「…ごめんなさい、すぐご飯用意しますね。」

不知火「…え?ご飯なら先程カウンターに用意されてたのを頂きましたよ?少し冷めてましたけど…」

鳳翔「…えっ」ガタッ

バサッ

鳳翔「あ…(提督の上着が…私に着せられていた?…まさか。)」

鳳翔「…すみません、少し確認してきます。」パタパタ

鳳翔「…(お風呂場も、洗濯物も、工廠や寮のお掃除も、私のやっていなかった所が一通り済んでました…朝ご飯まで…)」

鳳翔「…提督に謝らないと。」


執務室


コンコン
鳳翔「鳳翔です。」

提督「入れ。」

ガチャ、バタン
鳳翔「失礼します。…あの、提督、」

提督「鳳翔。」

鳳翔「は、はい。」

提督「…睡眠はきちんと取れているのか?」

鳳翔「…は、い。」

提督「あまり無理はするな。家事も完璧にこなす必要はない。」

鳳翔「…はい。」

提督「ところで、隼鷹の調子はどうだ?」

鳳翔「もう空母として、独り立ちしていると言って良いレベルに達しています。」

提督「そうか…早かったな。二ヶ月、三ヶ月程度か?」

鳳翔「そうですね。」

提督「隼鷹、やれば出来るじゃないか…今度、自分の目で是非見てみたい。用意しておいてくれるか。」

鳳翔「はい、わかりました。」

提督「よし。では行って構わない。」

鳳翔「はい…失礼致します。」
ガチャ、バタン

榛名「あ、おはようございます、鳳翔さん。提督に御用ですか?」

鳳翔「あ…(…謝ってませんでした。出直して来ないと…)い、いえ、なんでも。失礼しますね。」

榛名「…?は、はい。(何だったのでしょうか…まぁ、今は秘書艦の仕事に集中です。)」

コンコン
榛名「失礼します!榛名です!」

提督「入れ。」

ガチャ
榛名「おはようございます…?あ、提督。今日はシャツなのですね。珍しいです。」

提督「…気分だ。(上着を返してもらうのを忘れてたな…)」

とりあえずここまで。

隼鷹は次くらいにヒャッハーします

提督「…(しかし、鳳翔を休ませる必要があるな…前々から気になっていたが…私より寝るのが遅く、私が0500に起きた時には既に起きている…明らかに、寝ていないな…いくら艦娘とは言え、無理は良くないぞ…)」


また、深夜、食堂


鳳翔「…」スー…スー…


ーー鳳翔さん、私、また強くなりました!

ーーいつもありがとな、鳳翔さん。

ーー鳳翔さん?大丈夫?

ーー鳳翔さんが大好き!なのです!

ーー鳳翔さん!鳳翔さん!…


ーー…ああ、鳳翔か。



第7水雷戦隊はその役目を全うし、全滅した。



鳳翔「…ッッ!!」ガバッ

鳳翔「あ…(また夢…涙が…)」ボロボロ

鳳翔「…」

鳳翔「…提督は…居ませんか。…居て欲しい時に、居ないものですね…」

鳳翔「…もう…女の子が泣いてるんですよ…」グスッ

鳳翔「…上着は…返してあげませんからね…」

鳳翔「…バカ…」

鳳翔「…」

鳳翔「…お仕事…しないと…」

着任から約3カ月…島の港にて


提督「さて、どの程度できるようになったか見せてくれ、隼鷹。」

隼鷹「へへへー。きっとビビるぜ、提督…!」

鳳翔「それでは、始めて下さい。」

隼鷹「…!いけーっ!」

提督「おぉ…」

榛名「隼鷹が展開した甲板から艦載機がどんどん飛びたってます…一体いくつ飛ばせるのでしょうか…」

隼鷹「まだまだー!」

提督「…そろそろ出尽くすな。」

隼鷹「ほら!全部出た!」

榛名「…凄いです…隼鷹さんの周りに飛行機があんなに…」

鳳翔「隼鷹さん、では、私が的を飛ばしますから。全て撃墜して下さい。」

提督「…(聞いてないぞ…ボーキサイトが…まぁ、良いか。)」

隼鷹「よっしゃ!」

鳳翔「…」…ブーン

榛名「…(左腕の甲板から飛行機が次々と飛び立ってます。隼鷹さんとは比較にならない程展開が早いですね…)そういえば提督、鳳翔さんは何故弓を持ってるのでしょうか。」

提督「それは矢を放つ為だろう。」

榛名「矢が艦載機になる訳では無いのですね。」

提督「成らんよ。」

榛名「しかし、何故弓なのですか?砲を持てば…」

提督「空母の艤装は砲に対応してないからな。搭載できない物は、仕方がない。」

榛名「そうなのですね。」

提督「ああ。…しかし、艤装を装着した艦娘の膂力から放たれる矢だ。かなりの威力があるぞ。だから、艦載機を操る事に慣れている空母は副兵装として持っている者が多いな。」

榛名「ほえー。そうだったのですね。」

提督「無論、持たぬ者も存在する。…そろそろ始まるか。」

確認

隼鷹「行くよ、鳳翔さん!」

鳳翔「来なさい。」

ブィーン…ボン…ボン

提督「…悪くない動きだ。鳳翔の艦載機が単純な動きをしているとはいえ、しっかり相手のケツを取れてるな。不利な場合は複数で処理に当たる。良いぞ。」

隼鷹「ヒャッハー!どんなもんよ、提督!」

提督「素晴らしい上達っぷりだ。感心したぞ、隼鷹!」

隼鷹「へっへっへー。じゃあ今夜は祝い酒かなー?」

提督「単純な奴だな。全く…」

榛名「…ついこないだまで呑んだくれてた隼鷹さんが…嘘、みたいです。昔は3機しか飛ばせなかったのに…」

隼鷹「…最後の一機、撃破だ!」

………
……


隼鷹「どんなもんだい!」

提督「よく頑張ったな。…宴会でも開くか。」

隼鷹「ええっマジかよ!開こう開こう!今日!今から!」

提督「落ち着け落ち着け…お前は今から哨戒だろうが。」

隼鷹「頑張った甲斐があったぜ!」

鳳翔「…隼鷹さん?まだ訓練が全て終わった訳ではありませんよ?」

隼鷹「わかってるよう。ただ、こう、嬉しいじゃん!…強くなれたんだな、アタシ。」

提督「そうだな。」

隼鷹「…提督には悪いけど、アタシ、鳳翔さんに一番感謝してる。本当にありがとう。」

鳳翔「…あなたが、実戦で死なない為ですから。」

隼鷹「提督もありがとう。…多分、2人がいなかったら、アタシはあのまま腐って行くだけだったよ。」

提督「…私は何もしてない。お前が変われたのは、お前と鳳翔の努力の結果さ。よくやってくれた、隼鷹、鳳翔。」

隼鷹「…ん。」

鳳翔「…はい、提督。」

隼鷹「…じゃ!酒、よろしくね!アタシはこのまま哨戒の準備して行ってくるよ!」

提督「気をつけてな。」

鳳翔「…では、私もそろそろ失礼します。」

提督「鳳翔。」

鳳翔「…はい。なんでしょうか。」

提督「お前はしばらく休め。」

鳳翔「…いえ、大丈夫です。」

提督「ダメだ。これは命令だ。」

鳳翔「…どうして…」

提督「着任してから3ヶ月。お前がきちんと休んでいる姿を見たことが無い。…雷にまた家事を頼む。お前はしばらく、休養を取れ。…何ならば、本土に一時的に戻る事も許す。


鳳翔「…わかり、ました…」

提督「…良し。では、そういう事だ。」

今日はここまで

カモ鎮…悪くない響きですね

日常パート、いつまで続くのでしょう
延々とやってたい気もします

夜、宴会


隼鷹「もっと酒持ってこんかい!!」

提督「おいおい、飲み過ぎだろ…明日辛いだろうな、これは。」

足柄「ちょっと榛名!器が空よ!入れたげるから出しなさいよ!」ドバドバ

榛名「これは…霧島と言えばライバル!ライバルと言えば霧島!って感じですね!行きます!」ゴキュゴキュ

雷「ちょっと!焼酎の一気飲みはダメよ!倒れちゃうわ!」

足柄「大丈夫大丈夫!雷ちゃんが居るじゃない!」

雷「もうわけわかんないわ…」



提督「混沌としてるな…」

鳳翔「提督。お注ぎしますよ。」

提督「すまん、ありがとう。…しかし、クジでハズレを引いた不知火が少し可哀想だな…こうやって哨戒を外せないからあまり宴会はやらなかったんだが。」

鳳翔「…私が変わってあげたかったのですが…」

提督「鳳翔。お前が遠慮する必要は無い。それに…まぁ、拒むだろうな。不知火の性格だ。…また労ってやらねば…」

足柄「ねぎらうってなんかやらしいわねこのスケベ!」

隼鷹「そうだそうだ!もっと酒!さらに酒!そして酒!」

提督「…お前らはもう黙って酒飲んでろ。」



榛名「隼鷹ざーん!榛名はがんどうじまじだぁー!!」ビエエーン

隼鷹「うおお榛名が泣いてるぞ!こいつ泣き上戸だっけ?」

雷「榛名さん、ちょっと大丈夫…?」フラフラ…

提督「雷、お前も釣られて飲み過ぎてるぞ。フラフラじゃないか。」抱きっ

雷「あっ…(提督のお膝に…)」

足柄「あー!提督が雷ちゃん抱いてる!ちょっとロリコンなの?死ぬの?」

隼鷹「…雷…テクニシャンだな…」

榛名「…雷ちゃん!」フラフラ

提督「ダメだこいつら…酔っ払ってやがる…おい鳳翔、助け…て…」

鳳翔「…」ギュッ

提督「(左腕に抱きつかれた…この人もダメだ…!)」

榛名「…私は提督の右腕です!」ギュッ

足柄「…両手に花ね。羨ましいじゃない…!」

提督「お前は何を言ってるんだ…」

隼鷹「提督、勝負だ!飲み比べだー!」

提督「もう飲んでるだろ…今からやるのか?」

隼鷹「当たり前だろ!いくぜ提督!まずは一杯!」

………
……


隼鷹「提督…酒…強…」オエッ

提督「お前も…充分強いわ…(飲まないようにしてたんだがなぁ…)」ウッ

足柄「次はあたしよ、提督…!」

提督「無茶だろ!今どれだけ飲んだか見てなかったのか…!」

足柄「鳳翔さん、榛名、雷ちゃん、そのまま提督を押さえててね…まずは一杯!」

提督「…ムグッ?!」

………
……


提督「…」死

足柄「…勝ったわ…オエッ…ザル過ぎでしょうあなた…」

足柄「…提督ー?起きてるー?」

提督「…」ウウッ

足柄「…あれ?これもしかしてやりたい放題?」

榛名「…!」

足柄「そこをどきなさい雷ちゃん…!」

雷「い、嫌よ!提督に何をするつもりなの?!」

足柄「そりゃ確認すんのよ!」

鳳翔「…何を?」

足柄「枯れて無いかをよ…!この提督、この私が夜に部屋に酒を飲みに行っても何もしてこないのよ…!枯れてるに違いないわ…!」

榛名「さ、流石にダメですよ…!」

雷「そ、そうよ!例え枯れてても提督は提督よ!」

鳳翔「…雷さん、どいて下さい。」

雷「鳳翔さん?!」

足柄「2対2ね…こうなったら!もうアレしかないわね!」

雷「て、提督の純潔は私が守るわ!」

鳳翔「…やるときは、やるのです!」

榛名「…勝手は!榛名が!許しません!」

「「「「まずは一杯!」」」」

不知火「帰ってきてみたら、案の定、惨劇が起きたようですね…死体の山が…提督?大丈夫ですか?提督ー?」

提督「う…うーん…」

不知火「下手に動かして吐いたら困りますし…不知火もお酒をいただきましょうか。」

隼鷹「…んむ。」ムクッ

不知火「…あら。おはようございます。」

隼鷹「あ、不知火。帰ってたんだ…おかえり。…あーきもちわりー迎酒ちょうだい。」

不知火「…迎酒して大丈夫なんですか…」

隼鷹「大丈夫大丈夫!…日本酒のんでんの?」

不知火「はい。菊正宗、好きなんですよ。提督の影響ですけど。」

隼鷹「…案外普通だね。もっとコアなのが好きだと思ってたよ、アハハ。」

不知火「…珍しい物は中々手に入りませんから。…偶にかつての部下から届くお酒がありますが。」

隼鷹「ほほう。」

不知火「提督は、それは中々飲ませてくれませんね。残念ながら。」

隼鷹「そうなんだ。飲んでみたいなぁそれ…あれ?鳳翔さんがいない。」

不知火「鳳翔さんなら、今哨戒任務にあたって下さってますよ。足柄さんが動けないからと、任務を引き継ぎしました。」

隼鷹「そうなのか…鳳翔さん、いつも目立たないとこでずっと働いてるよね。ほんと…アタシも訓練メニューとかアドバイスとか、ちゃんと考えてもらってたし。縁の下の力持ちって言うのかな。」

不知火「…いつも感謝しています。」くいっ

隼鷹「アタシもあれくらい、出来るようになりたい。ならなくちゃな…」

不知火「…頑張りましょうね。」

隼鷹「…うん。」

朝はここまで
何故いつも朝に酒の話を書いて、飲みたくなるのか…

自分はウイスキーですね
マッ○ン見てからまたハマって、今じゃ竹鶴が一番好きな酒に…
うーん飲みたい

提督「頭が…痛い…吐きそうだ…」

不知火「おはようございます、司令。」

隼鷹「おはよ、提督!」

提督「ああ、おはよう、二人とも…他の艦娘は…」

足柄「」

榛名「」

雷「」

提督「何でこいつらが潰れてるんだ…おい、起きろお前ら。特に足柄、お前哨戒だろ。」

不知火「あ、司令。哨戒は今、鳳翔さんが。」

提督「…鳳翔には苦労をかけてばかりだな…」

足柄「う、うう…ここは…?」

雷「…吐きそう。」

榛名「…頭が…」

提督「…お前らしっかりしろ。何故そんなになってるんだ。」

榛名「…足柄さんと鳳翔さんが、酔い潰れた提督にいやらしい事をしようとしたので…」

提督「足柄、お前…」

足柄「全っ然、記憶にございません…」

雷「…私たちが防ごうとして、飲み比べに…」

提督「何故そこで更に飲むんだ…馬鹿しか居ないな…」

榛名「足柄さんは一瞬で潰れたんですが…鳳翔さんがおかしくて…」

雷「足柄さんが沈んでからは、鳳翔さん1人に対して私たちは交互に飲んでたのに、2人共潰されたの…信じられない…」

不知火「鳳翔さんピンピンしてましたよ、さっき。」

雷「化け物ね…」ウップ

榛名「…ちょっと待って下さい。鳳翔さんが勝ったということはまさか、提督にいやらしい事を?!」

提督「ええ…」

不知火「…ピンピンしてましたね…さっき…」

隼鷹「えらい意味深だな、その言い方。」

提督「流石に無いと信じたい…。…ちょっと手洗いに行ってくる…」

榛名「…まさか、提督を守れなかった…?」

雷「嘘…でしょ…」

足柄「朝からなんて重い空気なの…!」

不知火「まぁ原因は足柄さんですよね。」

隼鷹「まぁ、そうなるな。」

足柄「…なんかさ、提督が居るとチョーシ狂うのよね、ほんとに。…なんであんな艦娘に甘いのかしら。」

不知火「…提督はあまり怒る方ではありませんから。」

足柄「…あたしは人間が嫌いだからさ。今までの上司とは衝突しかしてなかったワケよ。まぁ、それで飛ばされたんだけど。」

雷「…口が悪いとかじゃなくて?」

足柄「口も悪かったけど…あたしが本気で罵ってたらこんなんじゃないし。どっちかっていうと危険思想とか言われてたしね…今回の提督も見た感じ真面目そうだったから、どんな奴かと思ってたら、変なスピーチするし。榛名が暴れてもなんとかするし。あたしが嫌がらせしても気にも留めないし。そのうち、だんだん嫌いでもなくなって来てるし。」

不知火「…」

足柄「…ほんと、変な人よ。」


執務室


提督「また北の方で我が方の艦隊が勝利か。…随分と調子が良いな。…良い事ではあるが…うーん。」

榛名「…(隼鷹さんや、雷さん…それにあの、人間をあまり好かなかった足柄さんでさえ…今や提督に信頼を寄せています。…私も…提督の協力で…変われるでしょうか…)」

榛名「…提督。お話があります。」

提督「ん?何だ。」

榛名「私の、昔話の…続きです。」

提督「…部屋に移動しようか。」

提督の部屋


榛名「…この間、私が黒提督の元に配属になった事までお話しましたね。」

提督「ああ。」

榛名「…黒提督の勤務地、黒鎮守府で私は訓練を受けました。その鎮守府で私は初の戦艦でした。…黒提督は、戦艦無しでかなりの戦果を上げている方でしたので、そんな方が戦艦を手に入れたら、あの英雄提督と並ぶのではないか、と主張派の中ではもっぱらの噂だったそうです。」

榛名「一通りの訓練を終え、私は初の実戦に臨みました。いけると思ってました。」

榛名「…でも、榛名は悪い子でした。私は敵を前にして、足がすくんで一歩も動けませんでした。」

榛名「…私は結局、一発たりとも砲撃出来ませんでした。黒提督は私を叱りました。お仕置きもされました。それから、私は沢山訓練を積みました。ここで武勲をあげたら英雄提督の所に行けると思って、寝る間も惜しんで訓練をしました。そして、二回目の出陣の時。」

榛名「私はやっぱり敵が怖くて動けませんでした。その場で砲撃は出来ましたが、一発たりとも当たりませんでした。あれだけ訓練を重ねた時間も労力も無駄でした。榛名は無能でした。」

榛名「榛名は帰ると、沢山叱られて沢山お仕置きされました。黒提督に、英雄提督はお前なんて要らないと言うだろう、と言われました。私が英雄提督に憧れているのを、彼は知ってたのです。でも、私は黒提督の、そして英雄提督のお役に立ちたかった。」

榛名「榛名は悔しくて、もっともっと訓練を積みました。…不思議ですね、演習ではちゃんと弾が撃てるのに、3度目の実戦でも榛名は役立たずでした。」

榛名「私はもっと沢山叱られて、もっと沢山お仕置きされました。痛かったけれど入渠させてもらえなくて、2日くらいご飯が食べられませんでした。それでもまだ、私はお役に立ちたかった。」

榛名「しばらく謹慎を命じられた後、黒提督が私の前に、捕らえられた深海棲艦を連れてきました。深海棲艦はまだ生きてました。私はそれが動けないと知っていても、足がすくんで動けませんでした。素手で殴れ、と黒提督は言いました。でも、私は怖くて動けませんでした。」

榛名「黒提督と一緒に、とても意地悪な艦娘が居ました。私が動けないで居ると、その艦娘が私を殴りました。同時に黒提督は私を叱りました。何故殴らないのかと。」

榛名「私は何回も深海棲艦を殴ろうとしましたが、ダメで、その度にお腹を殴られ、叱られました。敵を殴れない私は悪い子だったのです。」

榛名「いっぱい殴られて、いっぱい叱られた後、やっと私は理解しました。敵は殴り殺さないといけないんだって。だから深海棲艦を殴りました。意外と柔らかかったですよ。5,6発お腹を思いっきり殴ったら動かなくなりました。私はその時始めて褒められました。同時に深海棲艦があまり怖くなくなりました。」

榛名「次の日私は実戦に出ました。少し賢くなった私は敵を4つ殴り殺しました。黒提督は言いました、英雄提督は榛名を誇りに思うだろうと。私はとても嬉しかったです。」

榛名「それから私は沢山殺しました。でも、たまに殺しきれなかったり、黒提督のご機嫌が悪いとお仕置きされました。役立たず、解体するぞ、と沢山言われました。私はだんだん黒提督が怖くなってきました。その頃からです…段々、自分が我を忘れて暴れる事が増えてきたのは。そこに居ないはずの黒提督が榛名に語りかけてくるようになったのは。」

榛名「制御を失いつつある私は、命令違反が増えました。そのせいでら黒提督もお上に叱られました。手ぶらで帰ったら解体するぞ、役立たずが。そのうち不機嫌な黒提督にそう言われるようになりました。」

榛名「私は死に物狂いで訓練し、技術を磨き、戦果を稼ぎました。そして敵を見つけたら何も考えずに突っ込んで殺しました。隊列から突出するので撃たれたりするのは痛かったですが、解体されたりお仕置きされるよりはよっぽどマシでした。何より黒提督は榛名を叱る時、役立たずと言います。それが何より嫌でした。私はお役に立ちたかったのに。」

榛名「私は英雄提督に拾われるのを夢見て戦い続けました。黒提督に睨まれていた私には艦娘のお友達も居なくて、深海棲艦を相手に快進撃を続ける英雄提督のニュースだけが私の支えでした。」

榛名「ある時、味方の艦娘に獲物を横取りされて、戦果無しで黒鎮守府に戻りました。黒提督は、役立たずは解体すると言いましたが、私は泣いて命乞いをしました。そしたら、きついお仕置きだけで済みました。その時から他の艦娘が信用できなくなりました。」

榛名「後日、その艦娘と演習を行いました。私はその艦娘が自分の敵だと思っていたので沢山殴りました。半殺しにしたところで他の艦娘数人に押さえ込まれました。そのあと黒提督に私は叱られました。私はまた泣きました。次やったら英雄提督に事態を伝えた上で解体すると言われました。それだけはやめて欲しかったので、私はもっと必死になりました。」

榛名「でも、私は、いくら結果を出そうと、いくら敵を殺そうと、役立たずだったのです。」

榛名「しばらく後。あの意地悪な艦娘がかなり強引に私の獲物を奪おうとしました。私はその頃、最早自分のコントロールが完全にできませんでした。私は、私の邪魔をするその艦娘を大破させてしまいました。黒提督は怒り狂いました。私は許されませんでした。そして、遂に私は解体される事になりました。」

榛名「でも、戦艦を解体するのは勿体無い、と言って他の提督が私を引き取る事になりました。転属先の鎮守府であった最初の演習で、私はまた自分のコントロールを失いました。私は殆ど初対面の、友好的な艦娘を徹底的に叩き潰しました。私を止めようとした艦娘も半殺しにしました。解体を止めた面子上、解体できなかったのでしょう。私は更に転属になりました。」

榛名「次の鎮守府で、私は英雄提督を馬鹿にする上司にあたりました。精神的に参っていた私は、逆上して、上司を殴り倒しました。幸いにも艤装をつけていなかったので、上司は死にませんでしたが。」

榛名「私は運良く解体されずに、この島に流されました。元々居た足柄さんや隼鷹さんは私にとても良くしてくれました。艦娘を信用できなくなっていた私でしたが、2人とずっと居る内に、だんだん打ち解けてきました。しかし、島での最初の上司は私達を怖がって滅多に接触がありませんでした。」

榛名「この島でも、昔は他の艦隊との交流がありました。無論、演習もありました。私はこの島に来て始めての演習で、また制御を失い、他の鎮守府の艦娘を血祭りにあげました。その所為か上司はどこかへ飛ばされ、他の艦隊との交流は二度となくなりました。」

榛名「次に来た島の上司には…提督?…泣いてらっしゃるのですか?」

提督「…」

榛名「…提督が泣くのは榛名が悪い子だからですね。ごめんなさい…」

提督「…違う。」

榛名「…では何故泣いているのですか?」

提督「…榛名、私は…」

榛名「おかしいですよ。何故涙を流すのですか。何故悲しそうにするのですか。いつものように、憮然としていて下さいよ!そして命令を下さい!隼鷹や雷を助けた時のように!悪い子の榛名を、役立たずの榛名をなんとかして下さい!」

提督「違うんだ…榛名…お前は…」

榛名「…止めて下さい。榛名のために泣かないで下さい。泣くくらいなら榛名を罵って下さい。榛名は悪い子なんです!榛名は悪い子なんです!」

提督「もういい!もうやめろ!榛名!」

榛名「私は誰の役にも立たない無能なんです!英雄提督の部隊に配属されなくて良かったんです!…こんな役立たず…!」

提督「榛名!!」ギュッ

榛名「…男が泣くなんて情けないですよ、提督!そして、こんな無能を抱かないで下さい!それより早く命令してあなたのお役に立たせて下さい!提督がお望みなら何だってやります!便所掃除でもいいです!靴だって舐めましょう!最早、死ねと言われれば死にます!」

提督「榛名…お前は…間違っている!…お前は役立たずなんかじゃない…」

榛名「…うう、ううううう」

提督「…お前は今、もう、とても良くやってくれているんだ…死ぬなんて、言うな…」

榛名「…なんで…提督…」ぐすっ

提督「…お前は役立たずじゃない。俺はお前を捨てたりしない。」

榛名「…嫌…優しくしないで…甘い言葉をかけないで…」えぐっ

提督「…もう良いんだ、榛名…もう、良いんだ…」

榛名「ううううう…ううう…」ボロボロ

提督「…お前はもう、私の大事な艦娘なんだ…」

眠いのでここまで


描写不足ですが、装備は開発とか無くて全部、艦隊にあわせて配給される、もしくは要求に応じて支給される、という事になってます
頭の中だと設定あるんですけどね…書けてない
訓練が必要ですね
ss習作という事で、ここはひとつお願いします

数時間後、執務室

コンコン
不知火「不知火です。」

提督「入れ。」

ガチャ、バタン
不知火「失礼します。…お一人ですか?」

提督「…奥で榛名が眠っている。」

不知火「…榛名さんの話を…?」

提督「…聞いた。」

不知火「…そうですか。」

提督「今後榛名には徹底的に事務能力をつけてもらおうと思っている。それこそ雷並みにな。」

不知火「…戦場には出さない、という事ですか。」

提督「そうだ。…榛名は私が面倒を見る。二度と手放さないと約束した。」

不知火「…一体彼女に何が…」

提督「…黒提督は、戦えない怖がりな艦娘に捕虜の深海棲艦を殺害させる事で、恐怖感を麻痺させるのと同時に、心身に対する暴力で艦娘を支配していたようだ。」

不知火「…戦えない艦を、無理矢理戦わせていた。」

提督「…主張派は…どこまでも…愚かな奴ばかりだな…」

不知火「…榛名さんを大切にする事は…あなたの贖罪なのですか?」

提督「…そう、なのかもしれない。」

不知火「…何故っ!!…あなたは罪を犯してなんかいないわ!あなたは、艦娘の為を思って!」

提督「思っているだけではダメなんだ!榛名は…榛名の心は…俺が壊したのも同然なんだぞ!榛名だけじゃない…他にも沢山の艦娘が死んだ…俺が…俺が殺した…!」

不知火「そんな事無い!もうやめて!何故あなたばかり苦しまなければならないの!あなたは悪くないのに!こんなの、こんなのおかしいわ!」

提督「…」

不知火「赤城さんも!愛宕さんも、那智さんも霧島さんも!…こんな司令官は…きっと、望み、ませんよ…!」

提督「…」

不知火「…加賀さんから、連絡がありました。近く様子を見に来たいと。」

提督「…そうか。…私から連絡を返しておこう。」

不知火「…私はこれで失礼します…」

提督「…すまない、不知火…」

不知火「…」
ガチャ、バタン

キィ…
榛名「あ、あの…提督?」

提督「あぁ、榛名。…聞かれていたか?」

榛名「い、いえ。今目が覚めた所です。…大きな声でしたけど、誰かと喧嘩ですか?…もしかして榛名が、」

提督「違う。お前の事では無い。…こっちへおいで、榛名。」

榛名「は、はい。」

提督「辛かったろうな…演習なんかさせて悪かった。」よしよし

榛名「榛名は…大丈夫ですよ…」

提督「…お前には、戦う才能より事務管理の才能を感じる。物覚えも早い。…常設の秘書艦に任命する予定だ。」

榛名「は、榛名が常設の秘書艦ですか?」

提督「そうだ。」

榛名「不知火さんや雷さんを差し置いて、何故私が…?それに、私は戦艦ですよ?」

提督「艦種で仕事を振り分けるのは良からぬ事だとは思わないか。」

榛名「…でも…榛名が、役立たずだからですか?」

提督「おいおい、それは世の秘書艦に失礼が過ぎるぞ。何故役立たずを秘書艦にするんだ。お前はきちんと役に立っているよ。」

榛名「し、しかし。」

提督「榛名。お前に戦場は似合わない。が、お前の戦う能力も私は高く評価している。常設秘書艦は、提督の最終防衛ラインでもある。両方をこなせる艦娘。だからこそ、お前なんだよ。」

榛名「だからこそ、私…ですか…」

提督「懐刀として私を支えてくれ。」

榛名「…わかりました。榛名、頑張りますね。…こんな榛名をよろしくお願いします。」

提督「よろしく頼むよ。頼りにしている。」よしよし

榛名「はい!(…頑張らねば、なりませんね。…提督の常設秘書艦…えへへ…)」

朝はここまで

面白いと思って頂けると、とても幸せです

今更ですが、主張派?黒提督って誰だよ…ってのは
>>84
>>85
あたりで榛名が喋ってます

執務室


コンコン
鳳翔「鳳翔です。足柄の代理として哨戒から戻りました。」

提督「…入れ。」

ガチャ、バタン
鳳翔「失礼します。」

提督「ご苦労だった。」

榛名「お疲れ様です。」

鳳翔「…あの。」

提督「どうした。」

鳳翔「不知火さんが、号泣しながらお酒を煽っていたのですが、大丈夫でしょうか。何かあったのですか?」

提督「…止めに行こう。」

榛名「…(さっきの大きな声、提督と不知火さんだったのでしょうか…泣き疲れて寝てしまっていたとは、榛名、不覚です…)」

鳳翔「いえ、今は寝ています。見てられない、と足柄さんが止めて、吐かせてから寝かしていました。」

提督「…そうか。」

鳳翔「…提督の名を呼びながら泣いてましたよ。」

提督「…そうか。…そのうち落ち着くだろう。手間を掛けたな。また不知火とは話をしておく。」

鳳翔「…何があったのですか?」

提督「…見解の相違だ。心配する必要はない。」

鳳翔「…わかりました。失礼します。


提督「…」

夜、提督の部屋


コンコン

提督「…誰だ。」

鳳翔「鳳翔です。」

提督「…入れ。」

鳳翔「失礼します。…お一人で晩酌ですか。」

提督「…何か用か。」

鳳翔「…しばらくお休みを頂けるとの事でしたので、早速お酒を頂きに。」

提督「…ウイスキーしか無いぞ。宴会で出したから日本酒はスッカラカンだ。ビールも無い。」

鳳翔「では、ウイスキーを下さい。」

提督「…何で割る。」

鳳翔「えっと…すみません。飲んだ事が無くて…」

提督「初めて。初めてか…山崎、のストレートで良いか。」

鳳翔「ありがとうございます。」

提督「…ほれ」コトン

鳳翔「…このお水は…?」

提督「チェイサー…口直しだ。」

鳳翔「成る程。では、頂きます。」くいっ

提督「あ、おいおい…」

鳳翔「けほっけほっ」

提督「…日本酒と同じ感覚で飲むなと言っておくべきだったな…水を飲め」

鳳翔「すみません…」

提督「…少しずつ飲むと良い。香りも楽しめるだろう。」

鳳翔「…はい。…木のような、不思議な香りがします。」チビチビ

提督「樽で熟成されてるからな…どうだ、気に入ったか。」

鳳翔「美味しいです。辛いのに甘いですね。後味が果実のようで…」チビチビ

提督「それは良かった。山崎はわりと飲みやすい。…舌が痺れて味がわからなくなる前に、水を口に含むと良い。」

鳳翔「はい。ありがとうございます。」

提督「酒は、良い物に限る。最初に悪い物に慣れると、繊細な味がわからなくなる。」

鳳翔「最初が肝心、ですか。」

提督「そうだな。酒に限った話では無いが…」

コンコン
足柄「あたし。」

提督「…入れ。」

足柄「お邪魔しまーす…あら?鳳翔さん?…本当にお邪魔だったかしら。」

鳳翔「いえ、大丈夫ですよ。」

足柄「良かった。あ、ウイスキー!…提督、あたしロックで。」

提督「お前…哨戒を代わってもらった身で、よく飲みに来たな…」コトン

足柄「まぁ、そういう事もあるわよね。ありがと。…やっぱ山崎は甘いわね。余市無いの?」

提督「今私が飲んでる。鳳翔も山崎と飲み比べてみると良い。」コトン

鳳翔「あら、ありがとうございます。」

足柄「…ありがと。なんか今日はやけに素直ね。…不知火さんと喧嘩して落ち込んでるの?」

提督「…そんな事は無い。」

足柄「なんか最初はコンビって感じだったのに、最近全然じゃない?」

提督「…」グイッ

足柄「最近不知火さんに冷たくない?」

提督「…いや。」

足柄「…とは言い切れなくない?」

鳳翔「ちょっと足柄さん…」

提督「…艦娘は不思議な生き物だな。まるで人間のように生き、恋をする。その想いはとても一途で、深い。…海よりもな。」

足柄「…はい?急に何?」

提督「足柄、何故人間が艦娘と距離を取るのか。もう一つ理由を教えよう。これは噂話だがな。」

足柄「…」

提督「艦娘は沈んだ後、海底の無念や怨念によって深海棲艦に成ると言われているのは知ってるな。」

鳳翔「はい。そう聞いたことがあります。」

提督「艦娘がもし、海底の怨念に負けない程の強い愛情を抱いて深海棲艦になったらどうなるか。…帰ってくるのさ。愛情を頼りにな。そして地獄の果てまで追ってくるらしい。一緒に海底に沈む、その時まで…」

足柄「…はあ?それで不知火さんと距離を取ってるって?提督、あんた酔ってるわね…」

提督「…ただの冗談じゃないか。不知火とは方針の違いから少し揉めただけだ。不知火はああ見えて繊細だからな…少し負担をかけ過ぎた。信頼してるからこそ負担を強いる事になってしまったが…明日謝ろう。」

足柄「…そいえば榛名を常設秘書艦にしたんだって?榛名は喜んでたけど、あの子、榛名に嫉妬してるかもよ。」

提督「…例えそうだとしても、榛名をこれ以上戦わせる訳にはいかん。」

足柄「あ、そういう結論になったんだ?」

鳳翔「やはり、危険であると?」

提督「いや…どちらかというと、榛名の事情を聞いて、少しな…陽菜の分の戦力の補強をしたい所だが…」

足柄「まぁ、無理よね。戦闘も全く無いような小さな島だし。」

提督「そうなるな…」

足柄「ま、人間側が勝ってるし良いんじゃない?」

鳳翔「…そういえば、もし、人間が深海棲艦を世界から駆逐したら、私達艦娘はどうなるのでしょうか…」

足柄「…ま、解体じゃない?良くて幽閉かしらね。」

提督「そんな事はさせんよ。」

足柄「あら、左遷のくせに言うじゃない。させんよ、ですって。」

鳳翔「…心強いですね、ふふふ。」

足柄「ま、気持ちは嬉しいけどね。」

提督「…本当にそんな事が決まったら、徹底抗戦だな。今度は全艦娘対全人類だ。」

足柄「…んで?誰が指揮を取るの?」

鳳翔「ふふ、提督ですよね。」

提督「まあな。」

足柄「なーに生意気言ってんのよこの酔っ払い!左遷のくせに〜!噛みついてやるわ!」

提督「痛っ!…酔っ払いに噛みつかれたぞ…」

鳳翔「やっぱり狼ですね…」

提督「…どっちかって言うとこれでは野良犬…痛い痛い痛い!」

鳳翔「うふふ。…敵が近くに居ないって、幸せ、ですよね。」

足柄「…ほうね。」

提督「噛んだまま喋るな…」

鳳翔「…約束ですよ?提督。戦いが終わったら…きちんと面倒、見て下さいね?ふふふ。」

提督「ああ…そうだな。」

鳳翔「あと、不知火さんの事も、約束ですよ。」

提督「…わかっている。」

鳳翔「…なら、良かったです。」ニッコリ

とりあえずここまで

また夜か朝に書きます
ゆっくり進めてきます

翌日、午前0500


コンコン
不知火「不知火です。」

提督「入れ。」

ガチャ、バタン
不知火「失礼します。任務完了の報告に上がりました。」

提督「ご苦労。…不知火、いつも苦労を掛けるな。…昨日は、すまなかった。」

不知火「…いえ、不知火こそ、必要以上に取り乱してしまいました。申し訳ありません。」

提督「…不甲斐ないのは私だ。…二回目だな。艦娘を泣かせてしまったのは。」

不知火「…不知火は、大丈夫ですよ。アレは…あなたを想って…泣いてしまった…だけです。」

提督「…」

不知火「それに、あの日誓いましたから。私は何があってもあなたについて行くと。だから、大丈夫です。」

提督「…ありがとう。今は、その言葉に甘えさせて貰おう。」

不知火「…はい、司令官。」

北の提督率いる、第3艦隊が駐屯する
北の前線基地にて


執務室


加賀「…そう。休暇もダメと言うのね。」

北提「ちょ、落ち着いて!!」

加賀「…」ギリギリギリギリ

北提「待って!加賀さん待って!矢はヤバいって!」

加賀「…」ピュン

北提「ああああああ!!」ドスッ

加賀「やりました。」

ガチャ
瑞鶴「大きな音がしたけど、どうかしたのー…北提?!お尻に矢が刺さってる?!…加賀さん、北提に何をしたんですか!」

加賀「なにって。粗相よ?」

瑞鶴「そんな当然かのように言われても…北提、大丈夫?」

北提「…あ…瑞鶴…今日もかわいいね…」

瑞鶴「大丈夫そうね。…何でこんな事するんですか、加賀さん!」

加賀「…」

瑞鶴「…だんまり…?」イラッ

北提「…待って、瑞鶴…加賀さんは左遷、されたいんだと。僕が休暇も断ったから実力行使に出たらしい。」

瑞鶴「…ちょっと意味がよく…何で左遷されたいんですかね」

北提「…あの左遷の島に、元上司が居るんだと」

瑞鶴「…え?左遷させた上司…もしかして、あの人ですか。最近少し話題になってた。」

加賀「…」

北提「…ねぇ、加賀さん。そこは、自らを貶めてまで、行かなくてはならない場所なのかい?」

加賀「そうよ。」

北提「はっきりと言おう。僕は君が粗相をしても、君を左遷するつもりはない。…今回のようなわざと嫌われようだなんて、悲しい真似は二度としないでくれ。」

加賀「…」

北提「今、僕たちは最も戦果を挙げている艦隊の一つだ。そして、加賀さん。君はその中心の一人なんだよ。」

加賀「…そう。」

北提「…君が、あの大反抗作戦で深く傷つき、1年以上を掛けて修復された後、僕の所に来てくれた時の事は忘れない。」

加賀「…嫌々配属されただけよ。」

北提「それでも、僕は君を大事に思っている。」

加賀「…」

北提「加賀さん。僕はここの艦隊を家族だと思ってるんだ。…君は軍務に復帰して以来、少し足腰が悪いだろう。あまり遠くにやりたくないんだ。休暇もまた然りだ。…わかってほしい。」

加賀「…」

北提「今回の件は不問とするし、下がっていいよ。」

加賀「…せめて休暇を…!」

北提「加賀さん。」

加賀「…ッ!…失礼します。」
ガチャ、バン!

瑞鶴「…北提、あんな人さっさと左遷したら良いのに。」

北提「そう言うな…何回、僕らがあの人に助けられたと思ってるんだ。君だってそうだろう。」

瑞鶴「あたしは別に!…そんな事ないし…」

北提「…素直じゃないなあ。」

瑞鶴「どっちがよ!」

北提「どっちもだよ。」

加賀の部屋


加賀「…休暇も断られるとは…電話をしなければ。」

ジーコジーコジーコ…

ガチャ
不知火『もしもし。』

加賀「…不知火?私です。」

不知火『…あら、加賀さん。最近はよく連絡を下さいますね。』

加賀「…休暇の許可が降りなかったの。残念だけれど、そちらへは行けないわ。」

不知火『ええー…加賀さん許可取ってたんじゃ無かったんですか…』

加賀「強引にすれば行けると踏んだのだけれど。ダメでした。」

不知火『慢心ですよそれ。…わかりました、伝えておきましょう。』

加賀「ありがとう。助かるわ。」

不知火『しかし加賀さん、何で自分で言わないんですか…』

加賀「提督、プライベートな電話って持ってないんじゃないかしら。あの人も面倒臭がりだから…」

不知火『あー…』

加賀「執務室の電話に電話をして、仕事に支障が出ては困るわ。」

不知火『…まぁ、それもそうですね。』

加賀「それよりも、不知火。あの人に変な虫は着いてないでしょうね。」

不知火『えっ…』

加賀「…教えて頂戴。」

不知火『…その、黒提督のとこにいた榛名さんが居て…』

加賀「大体把握しました。どうせあの人の事だから、甘やかしているのでしょう?」

不知火『まぁ…そんな感じですね…』

加賀「呆れた、と言いたいところだけど…あの人、大丈夫?」

不知火『身体面は問題無いかと。精神的にも、本土に居た時よりは安定してると思いますよ。…私は泣かされましたが。』

加賀「…そう。とりあえず、良かったわ。…でも、私という女を差し置いて、現地妻を作った提督には制裁が必要ね。」

不知火『早めに来てくださいよ。…取られちゃうかもしれませんよ。』

加賀「あら、不知火。貴女も言うようになったわね。…誰に取られるのかしら?」

不知火『…さぁ?』

加賀「…まぁ、良いわ。また連絡します。提督によろしく伝えて頂戴。では。」

不知火『はい。ではまた。』
ガチャ

龍驤「んでんで?今の誰なん?恋のライバル?」

加賀「…あら?龍驤。ドアは閉めてあったのだけれど…隙間から入ってきたのかしら。流石フルフラットね。」

龍驤「あんま言うてたら削ぎ落とすで自分。…鍵あいとったわ。」

加賀「そう。」

龍驤「…自分、北提のケツに矢を刺したんやって?瑞鶴が随分とお冠やったで。」

加賀「…」

龍驤「そんなおもろい事やってんのに、何でウチと日向をそこに呼ばんのや!えらい間抜けな絵やったらしいやん。」

加賀「…真面目な話だったから。」

龍驤「アホ抜かせや。自分の上司の尻に矢を刺しといて、何が真面目やねん。」

加賀「…」

龍驤「…何や元気ないなぁ自分。…せや、日向のとこに飲みに行こや!」

加賀「…そうね、行きましょう。」

日向の部屋にて、酒盛り


日向「あっはっは!北提の尻に矢か!それは良くやったな、加賀。」

龍驤「あの北提に『ああああああ!!』言わせるなんてホンマ鬼畜やなー。」

加賀「自業自得よ。私を手放そうとしないから…」くいっ

日向「まぁ、そう言うなよ加賀。君が就役当初から、その提督に会いたいと言っていたのは知ってるさ。でも、私達も君を頼りにしてるんだ。」

加賀「…あなた達はもう充分強いわ。最初とは見違えるほどに成長して。」

日向「君に皆鍛えられたからな…。まぁなんだ、信頼してると言いたいのさ。…恥ずかしいから言わせないでくれ。」

龍驤「素直な日向やん。珍し。」

日向「…」スッ

龍驤「やめて!殴ったらアカーン!」

ワイワイガヤガヤ

龍驤「でもなー好きな人に会えへんのは辛いなー。」

加賀「…チッ…知ったような事を…」

龍驤「え、今ウチなんで舌打ちされたんや…」

日向「北提じゃダメなのか?…私が言うのも何だが、アレは悪くない男だと思うぞ。」

加賀「滅多なことは言うもんじゃないわ。…彼に惚れてるのはあなたの方でしょう。」

日向「…やめてくれ、そんな大層な思いじゃない。」

加賀「後悔しないうちにヤる事はヤるべきです。」

龍驤「ちょ、完全に出来上がってるやんけこの人…いつもよりタチ悪い…」

日向「いや…私は…」

加賀「最近は瑞鶴がずっと提督のそばに居るけれど。それでいいのですか?」

日向「…」

龍驤「ちょ、やめーや!北提はウチらの事もちゃんと見てくれてるって!」

加賀「駆逐艦の貴女にはわからないかもしれないけど、これは重要な事よ。」

龍驤「誰が駆逐艦やねんシバき倒すぞ!」

日向「それは…嫌…かもしれない…が、既に割り切ったことだ。」

龍驤「日向…」

日向「最近始まったことじゃない。私は奴の最初の艦だ。長い時間を共に過ごせば…まぁ、そうなるな。」

加賀「いっそ好意をぶつけたらどうかしら。そうすれば、彼もそれを感じ取ってくれるでしょう。」

日向「好意を…ぶつける…か。それはきっと、彼の迷惑になるだろうな。彼はきっと迷い、戸惑う。…だからこの気持ちには、私は蓋をする。彼の伴侶は…彼自身が決める事だ。それが私なら、嬉しい。それだけだ。違うとしても、私はそれを祝福するだろう、な。」

加賀「…そう。見上げた覚悟ね。私が男ならこんないい女放っておかないのだけれど。」

日向「…よしてくれ。」グイッ

龍驤「しっかし、尻に矢が刺さってる男のどこがええねん…」

加賀「…好みは人それぞれよ。」

日向「とにかく!北提と同じように、私達も君を家族のように思ってるんだ。…私は寂しがりでな。あんまりそういうのは御免だぞ。」

加賀「…そう。」

龍驤「逆に、そんなええ男なんか?その、左遷なんちゃらの提督は。」

加賀「…どうかしら。」

龍驤「なんやそれ…」

加賀「恥ずかしいから、言いません。」

龍驤「うわぁ…こう言うのなんて言うか知っとる?日向…」

日向「…知らん。」グイッ

今日はここまで

艦の辿った運命を知るだけで心に来るものがありますね。このssにはほぼ関係ありませんが…
艦娘には幸せになってほしいですな
嫁艦をしっかり可愛がってあげねば

左遷の島、執務室


コンコン
不知火「不知火です。」

提督「入れ。」

ガチャ
不知火「失礼します。(…榛名さんが居ますね…)…提督、内密なお話が。」

提督「わかった、部屋に来てくれ。榛名、しばらくここを頼む。」

榛名「わかりました。(内密…なんだか気になります…)」


提督の部屋


不知火「加賀さんが来れなくなった、との事です。もうすぐ北の島攻略作戦があるとかで、休暇も許可されなかったそうで。」

提督「そうか…まぁ、仕方あるまい。加賀の今の上司は北提だったか。彼にとって加賀の力はどうしても必要な物だろう。しかし、てっきり許可を貰ってから言ってる物かと思っていたが…少し抜けているところは相変わらずだな、加賀は。」

不知火「そうですね…少し心配になります。」

また場所は戻って、北の前線基地、艦娘寮内


日向「…」スー…スー…

龍驤「…そんな…いくらうちがグラマラスやからって…あかん…」zzz…

加賀「あら…二人とも、寝てしまったのね。」

加賀「…家族、ですか。」

加賀「(…家族、それは艦娘にとってとても暖かい言葉。大切にされている証。)」

加賀「(…だけれど北提。あなたはそれがもたらす副作用に、耐えることが出来るの?…艦娘なんて、一瞬の油断から沈んでしまうものよ。…主張派と、同じ過ちを繰り返す事になるわ。)」

加賀「大体、私が今まで何度僚艦の被弾を防いだか…だからこそ私を手放せないのだろうけれど。」

加賀「…はぁ。飲み過ぎかしら。…もう寝ましょう。」

ここまで
また今日か明日にでも投下します


初期の不知火の会話を見ると、他の艦娘がどうなったとかわかるかも?

黒提督は…

鳳翔さんは自分の嫁艦なので描写が多いからかも…

翌日、北の前線基地、執務室


北提「瑞鶴、龍驤、日向、そして、加賀さん。皆揃ったかい。響には先に作戦概要を伝えて、この島の防衛部隊の所へ相談に行ってもらってるから居ないけど。」

一同「はい。」

北提「じゃあ、作戦会議を始めるよ。」

北提「えっと、今回の攻略目標はこの基地の東にある比較的大きな離島。現在は周辺に深海棲艦の艦載機が確認されていて、空母ヲ級及びその護衛戦力が存在すると考えられる。深海棲艦出現以前の資料によると、ここに地下資源が存在する事が確認されているらしい。僕たちはこの離島を深海棲艦より奪還し、資源の回収及び新たな前線基地として利用する意図がある。」

北提「戦力はこの4隻に加え、今ここには居ない響、更に本土からの増援が3隻手配されている。この離島の奪還は、戦略的戦術的に重要。諸君には一層の奮起を期待するよ。」

一同「はっ!」

加賀「(…離島は確か、かなり離れていたはず…数百キロを巡洋した後の戦闘…厳しくなりそうね。)」

北提「今は増援部隊を待ち、合流後調整が済み次第出撃、という流れだ。今すぐではないが、各員準備だけはしておいてくれ。」

艦娘寮内


龍驤「いよいよ出撃やな。離島を確保出来れば、周辺に島は無いからな。暫くはゆっくりできそうや。」

日向「そうだな。資源開発に力を注ぐだろうし、前線拡大は一時的に停止するらしいな。」

龍驤「しっかし深海棲艦もヘンやなー。海の底から上がって来よった癖に、陸地の付近に集中して居るもんな。ずっと海上を漂っとるワケではないと。ウチらの本土に近づいてた時も島を経由してたらしいし。」

日向「恐らく陸に、奴らに補給が必要な何かが存在するのではないかという話だが…まだよくわかってないようだな。」

龍驤「そもそも、深海棲艦がどこから来るねんっていう話になるねんけどな…もういっそ仲良くしたらええのにな。艦娘と人間みたいに、深海棲艦と人間も。」

日向「…まぁ、我々と違って深海棲艦は人間の天敵だからな。難しいだろうな。」

龍驤「ま、倒せばええねんけどな。」

加賀「慢心はダメよ。」

龍驤「加賀、おったんかいな!ビビらせんといてーや。」

加賀「勝てると決まったわけではないわ。」

龍驤「言うて瑞鶴の偵察によると、敵は今のところ4隻って話やん?大丈夫やろ。こっちは倍やで。」

加賀「だからと言って気を抜いてはダメよ。そういうのが思わぬ惨事に繋がるの。」

龍驤「そうかもしれんけどなぁ…」

響「皆、お疲れ様。」

日向「お、響。お疲れ様。防衛部隊の連中とは上手くいったか?」

響「うん。いい人達だったよ。」

日向「そうか。それは良かった。我々が留守の間は、ここを守って貰わねばならないからな。」

響「皆、ご飯は済ませた?」

日向「いや、こっちはまだだな。」

響「それなら、ご飯に行こうよ。」

日向「私は構わん。」

龍驤「ウチもええで。」

加賀「右に同じく。」


食堂


響「次の作戦は離島攻略なんだってね。偵察機によると確認された敵影は4なんだっけ?」

龍驤「それらしい影は4やって瑞鶴が言うてたね。」

響「なんだか、最近敵の数が少なくなったよね。どこか別のところに集まってるのかな?」

龍驤「ちょ、怖い事言わんといてーな。嫌やでまた総力戦とか。前の大反攻作戦でお腹いっぱいや。」

加賀「あり得ない話ではないわ。ただ、ここ以外でそんな話は聞かないわね。指揮可能な深海棲艦が残存してるかもわからないし…」

響「洋上に新たな拠点を求めているとか?」

日向「だとしても、本土からはかなり離れているはず…大反攻戦によって国近海の深海棲艦の拠点は潰れたからな。」

加賀「何れにせよ、我々が今出来ることは目の前の離島を攻略する事ね。余計な事に気を回していては、沈みますよ。」

龍驤「加賀はいっつもストイックやねぇ。」

加賀「あなたがユル過ぎるだけよ。」

響「…あー、間宮さん、また来てくれないかなぁ。そろそろ毎日同じ食事にも飽きてきたよー。」モシャモシャ

日向「間違い無いな。やれやれ、本土時代に舌が肥えてしまってかなわん。」

響「そういえば、龍驤と日向は北提と本土で出会ったんだっけ?」

龍驤「せやで。ペーペーの頃からずっと一緒や。」

響「私と瑞鶴と、あと加賀さんは北東海域の攻略のために、直前に編入されたんだよね。」

加賀「そうね。私は大反攻戦で受けた傷が原因で1年?2年?…それくらい眠っていたらしいから、突然違う人の元に配属されて驚いたわ。」

響「ま、私は良かったと思ってるけどさ。前の人が厳しい人だったし。」

加賀「本来ならば、厳しいのが普通なのだけれど。特に主張派が解体されてからは、以前の体制の保守派が主流だから。艦娘に甘い北提は特殊よ。」

龍驤「そんな他の上司は艦娘にきついん?」

加賀「きついというか…北提流に言うと、家族という扱いはあり得ないわ。」

日向「まぁ、我々は兵器だしな。…それだけに、人間扱いされるのは…素直に嬉しいんだが。」

龍驤「それに、ウチらが沈んだら深海棲艦なってまう言う話もあるくらいやしなぁ。仲良うし辛いんかなぁ。」

日向「…いつからだろうな、沈むのが怖くなったのは…」

加賀「ならば沈まないようになさい。それが全員にとっての最良なのだから。幸い、深海棲艦一つ一つは艦娘より弱い。入念に準備し、良い作戦を立てれば、滅多な事では死なないわ。」

日向「…そうだな、うん。…食い終わったら訓練に励むとしよう。」

響「がんばろうね。…あれ?もしかしてあれは瑞鶴と北提?」

日向「…ッ」

龍驤「お、ほんまや。二人でどこ行くんやろ。」

加賀「…さぁ?細かいブリーフィングじゃないかしら。電波の中継アンテナも瑞鶴の艦載機が持つのでしょう?」

龍驤「確か今回は攻略目標がかなり遠くにあるから、無線指示や映像電波の為のアンテナを艦載機につけて、中継地点で飛ばしとくんやっけ?」

加賀「そうね。北提が戦場に出るには船が必要だし、船は深海棲艦の格好の的。自ら弱点を作るよりは、基地で指示を出して貰った方がよっぽど良いわ。」

龍驤「深海棲艦はある程度のサイズの物体を感知できるんやっけ。難儀やなぁ。」

加賀「そう言われているわね。」

日向「…」

とりあえずここまで

部下などのお話はそのうち…
鳳翔さんはただ単にピンピンしてただけの可能性が!


訓練海域にて


日向「っふ!…っふ!」ブン!ブン!

龍驤「刀を振り回して…えろう気合入ってんなぁ。それ、特注品やっけ。」

日向「ああ、龍驤…そうだ。北提が私の為に無理を言って拵えさせたらしい。お陰で、深海棲艦共を何体切り捨てても折れない。ありがたい話だ。」

瑞鶴「あ、そうだったんだ。良いなぁ。」

日向「…なんだ。居たのか、瑞鶴。」

瑞鶴「居たのか、とはご挨拶ね。普通に龍驤、あと加賀…と演出よ!」

加賀「…あなたも偉くなったものね。」

瑞鶴「げぇっ加賀!…さん!」

龍驤「瑞鶴、自分弱いのぉ…」

加賀「まぁ、そんなことはどうでもいいのだけれど。さっさと演習を行いましょう。」

瑞鶴「今日も勝ちますからね!」

加賀「…そう。」

瑞鶴「最近、私また強くなったもの!」

龍驤「ほんま強なったもんな…。…?瑞鶴、どうしたんやその髪留め。今朝はつけてなかったやろ。」

瑞鶴「ふふ、よく気づいたわね龍驤!さっき北提から新しく頂いたのよ!」

加賀「あら、可愛いわね。」

瑞鶴「ふふふふ…似合ってますか?加賀さん?」

加賀「ドヤ顔はやめてほしいのだけれど。…まぁ、似合ってないことも無いわね。」

瑞鶴「やたっ!」

加賀「…」イラッ

龍驤「ほえー。ウチも前、勾玉とか色々もろたわそういえば。箪笥の中に封印されてるけどな。」

日向「私はこの刀一本あれば十分だな。」

瑞鶴「む!…北提、艦載機か弓くれないかしら…」

龍驤「瑞鶴、自分ワガママやなぁ…」

加賀「…ほら、そろそろ行くわよ。日が暮れたら着艦出来ないわ。」

龍驤「ほなまたね、日向!」

日向「ああ、気をつけてな。」

日向「…」

日向「さて、もうひと頑張りしようか。」

数日後、執務室


コンコン
響「響だよ。さっき到着した増援の艦娘たちを連れて来たよ。」

北提「おお!入ってくれ。」

ガチャ、ゾロゾロ
響「うん。…えっと、紹介すると、まずこの軽巡さんがーー」

那珂「初めまして!地方巡業に来ましたっ!艦隊のアイドル、那珂・ちゃん・です☆」

吹雪「あああああ…いきなりぶちかましてくれましたね那珂さん…どうすんですかこの空気…」

妙高「…(頭が痛い…)」

北提「(濃いのが来たなあ…)よ、よろしく頼むよ。」

吹雪「ほんとスイマセンスイマセン、こんなポンコツで。あ、私は駆逐艦の吹雪です、よろしくお願いします。」

那珂「ポンコツ?!」

妙高「私は妙高型重巡の妙高です。よろしくお願い致します。」

北提「皆、宜しく頼むね。ここの鎮守府の面子は隣の応接室に揃ってる。そっちへ移動してくれるかな。」

一同「はい。」

ガチャ

那珂「みんな、こんにちはー!那珂ちゃんだよー!」

吹雪「ちょ、那珂さんほんとやめて下さい!」

妙高「…妙高です。よろしくお願い致しますね。」

龍驤「なんか1人ヤバそうな奴、入ってきたで…」

瑞鶴「シッ!聞こえるわよ!」

那珂「会話筒抜けだよー?」

北提「…とまぁ、愉快な増援が来てくれた事だし、今晩は下の宴会場で、懇親会でも開こうかな?」

吹雪「よ、よろしくお願いします!」

妙高「…この私が愉快なキャラに…?」

日向「はっはっは。陽気なのは良い事だ。私は日向だ。よろしく頼む。」

加賀「…加賀よ。」

妙高「…!」

吹雪「懇親会、楽しみですね!…妙高さん?」

妙高「あ、いえ、ごめんなさい。楽しみですね!」

那珂「那珂ちゃん、ステージしちゃおかな?」

龍驤「なんやねん自分…」

夜、懇親会


北提「遠路遥々よく来てくれた!今宵はパーっと騒いで明日からに備えてくれ!乾杯!」

カンパーイ!ワー!キャー!

加賀「…」スッ

北提「あれ?加賀さん、酒持ってどこか行くの?」

加賀「ちょっと応接室でラッパ飲みしてきます。」

北提「ええ…」

加賀「では。」テコテコ、ガチャ

北提「行っちゃった…大丈夫かな?」

那珂「恋の!」

日向「トゥーぅー!」

瑞鶴「フォーぉー!」

龍驤「イレーブぅーン!」

わいのわいの

北提「なんやかんやで仲良くしてるみたいだね。良かった良かった。」

吹雪「那珂さんあっという間に3人を吸収してステージ始めちゃいましたね…ちょっと真似出来ません。」

響「恋の2-4-11か。私も実は聞いたことなかったんだよね。」

北提「CDも出してるのか…マジでアイドルだったんだね…」

吹雪「私も最初は半信半疑でしたよ…」

響「だろうね。私も吃驚ーー」

ズン…!!!

一同「?!」

北提「なんの音だ!敵襲か?!防衛部隊は何を…」

響「いや、上の階、応接室の辺りから聞こえたような…!」

日向「見てくる。」

北提「ま、待て日向!僕も行く。」

瑞鶴「私が行くわよ!」

那珂「ここは那珂ちゃんが!」

龍驤「いや、ここはウチが!」

一同「「「どーぞどーぞ」」」

龍驤「なんでやねん!こんな冗談言うてる場合ちゃうやろ!」

北提「とりあえず、様子を見に行こう。龍驤たちはここで待っていてくれ。行こう、日向。」

………
……



北提「こ、これは…」

加賀「…」

日向「応接室のテーブルが真っ二つに…大丈夫か、加賀。」

加賀「煩い。」

日向「…ッ(恐ろしく虫の居所が悪いな…こんな加賀は初めてだ。目が完全に据わっている。)」

北提「(一升瓶が3本も転がってる…短時間に全部一人で飲んだのか…)…一体何があったんだ…」

加賀「…お願いだから一人にして頂戴。」

北提「わ、わかった。とりあえず敵襲でないとわかって良かった。一旦戻ろう、日向。」

日向「…わかった。」
ガチャ、バタン

日向「加賀に一体何が…おや?妙高?」

妙高「あ、北提と日向さん…」

北提「妙高?何かあったのかい。」

妙高「申し訳ありません、私が少し加賀さんと言い争いを…」

北提「加賀さんと?何を…」

妙高「それは…」

数分前


加賀「…」グビー

ガチャ
妙高「失礼します。お久しぶりですね、加賀。大反攻戦以来ですか。驚きましたよ、此処に居て。」

加賀「…何か用?」

妙高「わかっていらっしゃるのでは?」

加賀「…来るんじゃないかとは思っていました。だから場所を移したのだけれど。」ハァ

妙高「…少し飲み過ぎですよ?」

加賀「…あなたの知った事では無いわ。」

妙高「…あなたの元上司が私の妹、足柄を現在指導していると聞きました。」

加賀「…未だに同型艦で姉妹を意識しているのはあなたくらいよ。」

妙高「何故、あの人が足柄の上司を?」

加賀「…さぁ?」グビー

妙高「あの人の所為で那智が死に、それによって羽黒がおかしくなったのは知っているでしょう…!何とか足柄を彼から離せないのですか!彼は足柄に己の正体を明かしていないと聞きましたよ!」

加賀「…知らないわ。足柄に直接言えば良いのでは?」グビー

妙高「事実を教えて、あの子が更に反抗したら解体されるかもしれないのに、そんな事は出来ません!」

加賀「…」グビー

妙高「…そもそも!主張派が解体された中、何故あの人は提督としてまだ残っているのですか!」

加賀「…」グビー

妙高「あの人は人類の味方かも知れませんが、艦娘の敵なのですよ!」

加賀「…」グビー

妙高「…何か答えなさい、加賀!あなたも艦娘なのでしょう!」

加賀「…ひとつ、良いかしら。」ゴトン

妙高「…?」

加賀「あなたは主張派を、あの人を取り違えているわ。保守派の情報工作か何か知りませんけど。あの人は艦娘の敵などでは無かった。」

妙高「何を馬鹿な!彼が艦娘を何人犠牲に…!」

加賀「…ねぇ、妙高。この議論はきっと平行線よ。あなたと私は交わる事は無いでしょう。あなたは彼を憎み、私は彼を愛している。それは、物の見方の問題よ。」

妙高「…」

加賀「だから、私はあなたと非生産的な罵り合いをしても構わないわ。」

妙高「…それは…」

加賀「…あなたが…あなたがこの…!私が内に秘めた怒りと苛立ちを!今!!ここで!!曝け出しても構わないと言うのなら!!!」

妙高「…遠慮しておくわ。…ごめんなさい、邪魔したわね。」

加賀「…さっさと失せなさい。」

妙高「そう、させてもらうわ。」
ガチャ、バタン

加賀「…ああああああ!!!どいつもこいつも!!!私の提督を!!!莫迦にしてぇぇぇ!!!」ズン…!!!

………
……



妙高「といった事が…」

北提「…」

日向「なるほど、な。加賀の気持ちはわからんでもない。が…」

妙高「…加賀…私としたことが…焦りから冷静さを欠いてしまい、彼女に八つ当たりのような真似をしてしまいました…」

ここまで
加賀さん飲み過ぎやでこれ…

御察しの方もいらっしゃるかと思いますが、そろそろ深海棲艦化した艦娘出ます。戦います。グロは書きませんが、深海棲艦化が苦手な方にはごめんなさい。ストーリーと密接に関わってくるので。

なにやら素敵な派閥が出来てますね

翌日朝、食堂


加賀「あったま痛い…」

龍驤「おはようさん、加賀。」

加賀「あら、龍驤。おはよう。」

龍驤「昨日えらい暴れてんて?」

加賀「さぁ…記憶にないわね。」

龍驤「応接室の机粉砕したって聞いたけどな。」

加賀「…存じません。」

龍驤「…さいでっか。」

日向「おはよう、加賀、龍驤。」

加賀「日向。おはよう。」

龍驤「おっはー。」

日向「加賀、大丈夫か?」

加賀「あんまり覚えて無いのだけれど…問題無いわ…心配掛けたわね。」

日向「こちらこそ問題無いんだがな。いや、北提は机が無いと嘆いていたが。…そうだ、今日と明日は合同演習だが、いけるか?」

加賀「私は仕事に私情は持ち込まないわ。」

日向「そうか…なら良いんだが。」

加賀「昨日は少し…飲みすぎただけよ。」

日向「まぁ日本酒の一升瓶3本も行けばなぁ…」

執務室


北提「皆、揃ったか。今回の作戦は、編成は単純に5名と増援隊の3名で別れて貰う。これは多数の艦娘が一箇所に集中し、深海棲艦に探知されるのを防ぐためだ。知ってると思うが、艦娘は多ければ多いほど感知されやすく、強襲されやすい傾向にある。特に1艦隊に7名以上は危険とされている。」

北提「まず、初動の5名で奇襲をかけて貰う。ここで決着をつけれたら、後続の3名は島の周囲を確保。もし、戦闘が泥沼状態になるなら、後の3名を前進させ、5名のうち2名を下げる事で対処する。簡単に言うとこうなるね。今日明日はその、前進と後退の打ち合わせと訓練をしておきたい。」

一同「はい!」

北提「よし、では早速準備に取り掛かろう。」

演習海域


響「ふぁ…暇だね、日向。港で艤装も無しに座ってるだけなんて」

日向「まぁ、既に6名が演習している以上、我々は海に出れないからな。万が一この島に深海棲艦が押し寄せてきたら大変だ。」

響「まぁ、私の役目は対潜と雷撃、日向は前衛って決まってるもんね。」

日向「そうだな。入れ替わりのある空母連中が、一番苦労するんだろう。あとその護衛に吹雪だっけか?」

響「まぁそんな感じらしいけどね。」

北提「や、お二人さん。」

日向「北提。」

北提「僕もここから無線で演習の指揮を取ろうかと思ってね…『チョット離脱遅いよ今の!』…と言うわけさ。」

響「しっかし、艤装の数が7以上だっけ?か何かで指数関数的に襲われる確率が伸びるって凄いよね…」

日向「実際のデータを整理したら6人以下の基地近海の航行で襲われた例は極めて少なかったらしいな。7名以上では頻繁に交戦があったらしいが。」

響「ね。…それを発見し、1艦隊6名以下を体系化したのが、加賀さんの元上司さんだっけ。」

日向「そうだな。加賀が酔った時、自慢げに話していたのを覚えている。」

響「まぁ、凄い人だよね。噂で聞く話によると、大変な事もしてたみたいだけど。」

日向「加賀はその話をすると、すぐムキになって否定してたな。…加賀が信用できるだけに、左遷提督について、加賀の語る人物像と軍内の一般認識に大きな齟齬があって…もう、よくわからないな。」

北提「…僕は、加賀さんをどうするべきなんだろうな。」

日向「…どうだかな。それは北提と加賀が決める事だ。」

響「ただ、サヨナラするとしたら…寂しくなるね。」

日向「まぁ、まずは無事に離島攻略を目指そうじゃないか。その話はそれからでも遅くはない。」

北提「…そうだね。」


作戦決行日、夜、工廠


北提「さて、目標の島はここから400キロ東にある。第一艦隊、加賀、瑞鶴、龍驤、日向、響は現時刻より基地を出撃、0400に作戦圏内到着、敵を撃破後帰投。第二艦隊、吹雪、那珂、妙高は2200より出撃、0700に作戦圏内到達後、周囲を哨戒をして命令まで待機とする。」

一同「はっ!」

北提「艤装を装備しているから体力的には問題ないはずだが、精神的には辛いだろう。しかし、本土から離島開拓の先遣隊が既にこちらへ向かっている以上、失敗するわけにはいかない。各員、心してかかってほしい!」

北提「では、第一艦隊は艤装装着後工廠内水路に降りてくれ。」

龍驤「いよいよやな…」ガチャ

日向「そうだな。」ガチャ

瑞鶴「余裕よね!」ガチャ

加賀「そうね。」ガチャ

響「とにかく、がんばろう。」ガチャ

加賀「第一艦隊、艤装装着完了。状態確認異常なし。命令待機中です。」

北提「よろしい。出撃を許可する。」

加賀「了解。第一艦隊、加賀、瑞鶴、龍驤、日向、響、出ます。」

………
……



加賀「各艦は間隔を開けて、尚且つ僚艦を見失わないように。迷子は御免よ。観測機をローテーションで飛ばしてるけど、各自で念の為潜水艦に注意。」

瑞鶴「あーあー。北提、全員、聞こえる?」

北提『バッチリだね。』

瑞鶴「無線感度良し!」

龍驤「しっかし夜の海は最高やね!風を切るこの感じ!」

日向「テンション高いな…空母に夜戦は辛いだろうに。」

龍驤「軍艦と艦娘はちゃうからな!敵が来たらワンパンやで!」

日向「はっはっは!それは心強いな。」

瑞鶴「…んで?加賀さん。なんで妙高さんと言い争うことに?」

加賀「…」

瑞鶴「無線入力切ってるわよ。」

加賀「…大反攻戦で、主張派の艦娘が大勢死んだわ。妙高の妹、那智もその一人。そして、指揮官の一人が左遷提督だったというだけよ。」

瑞鶴「…ねぇ、主張派は…なんで…」

加賀「軍事機密だから。あまり詳しい事はお話できないわ。今私が話してる事だって、聞かれたらとても怒られる。」

日向「…」

加賀「…そうね。軍機ついでにひとつだけ、教えてあげるわ。」

瑞鶴「…?」

加賀「主張派ってね。略語なのよ。」

響「…加賀さん?」

加賀「…主張派はね。艦娘の主張派、の略。」

龍驤「…は?…え?」

日向「初耳だぞ…」

加賀「そうでしょうね…だって、」

響「加賀さん。いけないよ。」

加賀「…あら。…ごめんなさい、戯言よ。忘れて頂戴。」

お昼はここまで

そろそろ簡単な戦闘シーン、地の文で突っ込みます

日向「…なぁ龍驤」ヒソヒソ

龍驤「なんや。」

日向「加賀、最近おかしいよな…」

龍驤「妙高はん来てから?」

日向「北提を矢でやったあたりからだよ。」

龍驤「まぁ、確かにな…あれはおもろかったけどビックリしたな。」

日向「…妙高さんの件にしたって、加賀さんは怒鳴るような人では無かったし、今回も、機密を漏らすような人では無かった筈だ。」

龍驤「やなぁ…苛々が募って昨日爆発して、今自棄になってるんちゃう?」

加賀「…そこ。集中なさい。」

龍驤「はーい。…怒られたわ。」

日向「…」

………
……



瑞鶴「うーん…(艦娘の主張…?…意味がわからないわね…響は何か知ってるのかしら。)」

龍驤「なんや自分、うんうん唸って。航行中やねんから前見いよ。」

響「大丈夫?」

瑞鶴「…ねぇ、響は何か知ってるんでしょ?加賀さんが言ってた事。」ヒソヒソ

響「…いや、知ってるというよりは…」ヒソヒソ

日向「なんだ、聞かせてくれ。」ヒソヒソ

龍驤「せや、なんで加賀さんを止めたん?」ヒソヒソ

響「…私の以前の知り合いに、同じ事を言ってる人が居た。」

瑞鶴「…それで?」

響「…その人は、暫くしたら怖い人たちに連れてかれて、二度と帰ってこなかったんだ。」

龍驤「こっわ…」

響「…私は、皆が好きだよ。北提も、瑞鶴も、日向も、龍驤も、勿論加賀さんも。…怖かったんだ。あの先を聞いてしまったら、皆が離れ離れになるかもしれないって。」

日向「響…」

響「加賀さんの気持ちもわかるよ。…でもね。私は今、ここにいる事の方が、大事かなって…。こういうのって保守的っていうのかな…わかんないな。」

龍驤「…」

瑞鶴「…とにかく今は、この話は忘れましょ。目前の敵を叩く事に集中しなくちゃ。その事は帰ってからね!」

龍驤「…せやな!鬱な話は忘れて、気合い入れていこや!ウホオオオワアアア!」

加賀「…随分と胸板の薄いゴリラね…」

龍驤「…キングコングスラムかますで。」

加賀「よろしい、来なさい。」

龍驤「うそやろ…」

………
……


加賀「離島を視認。偵察機が敵影を捉えました。一旦偵察機を回収、感ずかれないように離島に接近しますよ。」

瑞鶴「いよいよね。」

龍驤「やったるで!」

北提『よし、では十分近づいたら再び艦載機を飛ばしてくれ。』

加賀「では、気を引き締めて、取り掛かりましょう。」





離島の影。そこに艦娘達は居た。その上空を加賀の偵察機が飛んでいた。

「偵察機より、距離約5000東北東に推定イ級駆逐2、推定リ級重巡1、ヲ級空母1。先制攻撃の準備を。瑞鶴、龍驤。」

「ええで!」

「いつでもいけます!」

加賀は龍驤と瑞鶴からの返事を確認し、北提に指示を仰いだ。

「北提、こちら戦闘準備完了。敵目標を補足、全艦作戦圏内にて待機中。指示を。」

『艤装による攻撃を解禁。交戦を許可する。』

「「「了解。」」」

北提の指示直後、三人とも自分の艦載機を次々と発艦させていく。

「龍驤、瑞鶴、あなたたちは全機発艦させなさい。私は手元に幾つか残しておきます。艦戦による制空権の奪取を優先、敵艦載機不在の今が好機よ。」

加賀の指示に他二人は頷き、全ての艦載機を出し切った。

「こちら空母隊、艦載機発艦終わり。」

『よし。響を先頭に、日向はその後を追って。空母三人は艦載機による先制攻撃後、二人に追随して随時援護を行う事。全速前進!速攻!』

「「「了解!」」」

北提はさらに指示を出し、全員がそれに従う。そして、空母達の艦載機が離島の敵影を捉えたと同時に、

「!敵が艦載機に気付きました。対空砲火、来ます!」

敵がが動きを見せた。イ級やリ級による対空放火が行われ、ヲ級が艦載機を展開しようとする。しかし、

「今更遅いわ。」

加賀は薄い笑みを浮かべてそう呟く。ヲ級が艦載機を数機展開した時、最早敵艦隊はこちらの艦載機の攻撃圏内に入っていたのだ。

「…攻撃成功です!此方の被害は龍驤の艦戦、艦爆各1、敵の被害は空母、イ級1隻大破、もう1隻のイ級小破、リ級には回避されました!」

瑞鶴が興奮しながら叫ぶ。

(敵の戦力を大幅に削れて一安心、ね。後は日向と響が綺麗に〆てくれたら言う事ないのだけれど。…ただ、敵のリ級…あの爆撃の回避軌道はまさか…)

加賀は、攻撃から補給のため帰還させた艦載機を格納しつつ、心の中である疑念を抱いていた。リ級は対空放火をしつつも、複雑な軌道を取り、被弾していなかったのだ。

「残存しているイ級、及びリ級が此方に高速で接近してきています!接触まで、推定120秒!」

瑞鶴の報告に対し、北提は、

『もう一度艦載機による爆撃を頼めるか。』

と言い、加賀はそれに応じた。

「了解。残りの艦載機、発進します。」

再び加賀の艦載機が空を駆ける。

(さて、駆逐艦と重巡。これで沈んでくれると助かるのだけれど。)

艦爆が攻撃を開始した。しかし、

(駆逐艦を撃破したのは良いのだけれど…重巡の動き…これは…)

自慢の艦載機の爆撃を一発も喰らわない敵の重巡に対し、加賀の疑念は確信に変わった。

「…北提及び僚艦に進言。敵リ級重巡が我が軍の、爆雷撃回避マニュアルに準拠する航行軌道を描いているわ。…敵性リ級が、かつて沈んだ同胞である可能性があります。」

「!!!」

艦隊の中に緊張が走った。

「え、嘘やろ?流石に…こんなとこにおる?」

龍驤が冷や汗をかきながら加賀に問うが、瑞鶴の報告によってそれは遮られた。

「前方に推定リ級重巡を直接視認!更に接近してきます!…あれは、重巡のシルエットではありません!」

上空からは重巡に見えたそれは、同じ地平から見ると全く違う姿をしていた。瑞鶴の若干焦ってうわずった声に、北提が落ち着け、と瑞鶴を宥めながら言う。しかし、その北提の声もどこか震えていた。

『…今まで以上に、慎重に行ってくれ。日向を軸に戦闘を組み立てる。響は魚雷による波状攻撃を基本とし、空母三人は弓と艦載機で、同士討ちにならないよう注意しながら援護だ。そして日向、敵が何であろうとお前は背後に鼠一匹通すな…!』

「任せな、北提…!」

日向は薄く笑い、北提に答えた。

「ここが正念場よ、しっかり!」

瑞鶴も気合いを入れ直し、惚けていた龍驤を揺さぶる。我に帰った龍驤は、どうにかなるやろ!と叫びつつ、己の艦載機を展開していった。

『敵は空爆を避ける為、高速接近から格闘戦を挑んでくる事が考えられる。勢い余って味方ごと爆撃しないように、三人とも!』

「わかっているわ。…そろそろね。響!空から援護します。雷撃を!」

加賀が叫んで、再び艦載機を展開し、瑞鶴と龍驤もそれに続いた。

「任せて!」

響は更にスピードを上げ、敵の横に迂回しつつ魚雷を放とうとする。目標が艦載機に翻弄され、その好機に魚雷を水の中に離そうとしたその時。

艦隊に電撃が走った。敵のリ級と思しき存在が、顔を上げたのだ。

「…うそだ。」

それを間近で見た響は完全に停止した。驚きと恐怖に体を支配されて。敵の眼前で。

「響ぃーーー?!」

瑞鶴の悲鳴があがる。響と敵の距離が近すぎて、艦載機による援護は難しい。最早、響を守るものは何も無かった。

「北提!指示を!」

加賀が北提に指示を仰ぐが、

『そん…な…』

北提も戦場の映像を見て、思考がパニックに陥っていた。

「チッ…!…日向!急いで響のカバー!私も前に出るわ!…瑞鶴、龍驤。後ろに響を逃がすから、その救援を。そして…最悪の場合、私と日向及び響ごと敵を爆撃なさい。」

叫ぶ加賀に日向は返事も返さず加速して行くが、響にたどり着くのは敵の方が早かった。

「お久しぶり、響ちゃん。」

「いす…ず…そん…な…」

笑顔で響に接近し、話しかけてくる艦は。リ級などでは無く。姿形が五十鈴に酷似していて。そして、どこまでも黒かった。

「響ちゃんも…一緒に逝きましょ?」

その細腕で響の首を締めながら、軽々と体を持ち上げ、五十鈴は笑顔で言う。

「皆も居るのよ…きっと響ちゃんが居ると、もっと楽しいわ。」

その笑顔はどこか歪んでいて。

「あ…が…」

息が出来ずに、声の出ない響の言葉は涙となって頬を伝った。五十鈴はそれでも、笑いながら首を締め続けた。近付く日向には気付かずに。

「…響に、触れるなァ!!」

緊褌一番、気合十分の抜刀。日向の抜刀は、驚く五十鈴の両腕を、その主砲ごと切り飛ばした。
そして、日向は崩れ落ちた響を庇うように立つ。

「ああ…ああああああああああああああああ!!あああああ!!私の、私の腕ェェェ!!」

「下がれ、響。こいつは…私の獲物だ。」

「ゲホッ…ありがと、日向…」

狂ったように叫ぶ深海棲艦から、響は退避していった。

「…あああ…そう?貴女は誰?敵なのね?残念…」

両腕を失って尚、漲る敵意と一緒に、五十鈴は腰の砲を日向に向ける。

「是非も無し。」

呟く日向は刀を右上段に構え、艤装を操作し、同じく砲を向けた。

(踏み込むべきか…砲撃すべきか…微妙な距離だ。一撃で首を跳ばす事は可能かも知れないが…まず間違いなく撃たれる…いや、砲撃戦をしたとしても撃たれるな…しかし主砲は両手ごと切り飛ばした…副砲を艤装で受けるか。)

日向は一瞬で思考し、

「…決まりだ。」

凄まじい踏み込みで距離を一気に詰めた日向は、砲撃を一切行わずに刀で首を取りに行った。
それに対し、五十鈴は腰の砲を斉射し、更にその勢いで後ろに下がろうとする。
しかし、五十鈴の放った砲弾を日向の艤装はしっかり受け止め、その刃の勢いを止める事は叶わなかった。

「獲った…!」

が、日向の刀は五十鈴の首には届かず、胴を袈裟に斬り裂くだけに終わった。

「…〜〜!!」

五十鈴は苦痛に顔を歪めたが、闘志は揺るがず、刀を振り下ろして姿勢が戻りきっていない日向に再び砲を向ける。しかし。

ドスッ

「…え?」

発車直前に五十鈴の体に、鈍い衝撃が走り、バランスを崩した。鋼鉄の矢が、日向の背後から五十鈴の鎖骨に打ち込まれたのだ。

「日向、少し下がって、体制を立て直して。」

その矢を放った加賀が、追撃の矢を弓につがえつつ告げる。

「助かった、加賀。」

「詰めが甘いわ、日向。」

体制を立て直した日向は刀を正眼に構えなおし、後ろに下がる。その間に加賀はもう一発矢を放った。
ドスッと言う音とともに矢は五十鈴の太腿を貫き、逃げようとする五十鈴の機動力を奪った。

「あぐっ…痛ったいわね!くそっ!くそっ!人間も!お前らも!全員殺してやーーー」

動けなくなった五十鈴は吠えたが、その叫びは最後まで続かなかった。
加賀が事前に放った艦爆で追撃を行ったからだ。日向も五十鈴から距離を取った今、爆撃を躊躇する理由は無い。
動けない標的に対する爆撃の命中率は高く、全てが終わった後、そこには黒い残骸が浮いているだけだった。

今日の分&地の文ここまで

鎮守府へ行こうって番組かな?

誤字ありますね
なんだよ感ずくって…勘付くですね

上空から黒い五十鈴見たら、どの深海棲艦に似てるかな?→リ級
って事で、五十鈴が重巡って訳ではありませんよう

加賀「標的、喪失。」

日向「…刀を納めても問題なさそうだな」チン

龍驤「日向!大丈夫か?!撃たれてたやんな?!」

日向「何、軽巡如きの砲撃、問題無いさ。それよりも…」

響「五十鈴が…五十鈴が…」

日向「…響…」

瑞鶴「ちょ、加賀さんは大丈夫?」

加賀「鎧袖一触よ、心配要らないわ…と言いたいところだけど。脚をやったわ。少し速度を出し過ぎたかしら。」

龍驤「そういえば、脚が良くないんやったっけ…」

瑞鶴「…なんでそんな無理するのよ!私だって弓も艦爆もあるわ!少しくらい私に任せても…」

加賀「…こういうのは、慣れてる者がやるの。」

瑞鶴「それでも!後ろで見てて、しかも万が一の時は、味方ごと爆撃しろって…歯痒いのよそういうの!」

加賀「私がそう命令したのだから、私が行かないと。僚艦に死ねとは言えないわ。」

瑞鶴「〜〜〜!!!」

龍驤「ちょ、瑞鶴落ち着きーや!なんで怒ってんねん!」

北提『…瑞鶴。それは僕の失態だ。すまない。』

瑞鶴「…ッ!」

加賀「随分とご無沙汰ね、北提。」

北提『すまない、僕が命令できなかったから…ありがとう、日向、加賀さん。…また助けられてしまった…』

加賀「…北提。もっとしっかりなさい。あなた、日向が居なければ響を失っていたかもしれないのよ。」

北提『…返す言葉も、無い…』

加賀「提督として、あらゆる可能性を考慮し、常に最悪を想定なさい。」

北提『そうだ、ね…』

加賀「…驚いて指揮も出来ないなんて、情けない事…」

日向「お、おいおい。そのくらいに…皆も無我夢中だったし…」

響「元はと言えば、私が動けなくなったのが…」

加賀「それでも。響を先頭に据えたのは北提よ。…指揮官がそれでは困ります。」

日向「むう…」

北提『…とりあえず、今は安全に帰投を目指してほしい。後の事は後続が引き継ぐ。』

加賀「…了解。…帰りましょう。」

日向「…加賀、肩を貸そう。脚が悪いんだろう。」

加賀「あら、ありがとう。」

………
……



帰路


龍驤「(実質被害0で勝ったっちゅうのに、なんつー重い空気やねん…)」チラッ

龍驤「(皆ずっと無言やな…五十鈴やっけ、深海棲艦。ウチは知らん艦娘やったけど…響と北提は五十鈴の知り合いやったんかもしれんな…響がすごいショックを受けてたし。)」

瑞鶴「…」イライラ

龍驤「(瑞鶴は何故か機嫌がクソ悪いし…なんでやろ…)」

龍驤「…はぁ…」

数時間後、北の基地、港


龍驤「あー!やっと着いたで!」

加賀「…あら、北提のお出迎えね。」

日向「…ああ。」

北提「…皆、よく帰ってきてくれた。任務、ご苦労様。今日はもう休んでほしい。明日の1000に執務室に集合。以上、解散。…響はちょっと残って欲しい。」

一同「了解。」

龍驤「なぁ、加賀さんと日向と瑞鶴、一杯やらん?」

加賀「やりましょうか。」

日向「構わんよ。」

瑞鶴「…私は、いい。」

龍驤「え?瑞鶴?…行ってしもた。」

日向「…まぁ、まずは風呂だな。そのあとゆっくりやろうじゃないか。」

………
……



執務室


北提「疲れているところを済まない。早速なんだが…響。あの五十鈴に見覚えがあるか。」

響「…五十鈴は、前の前の同僚だったよ。明るくて、いい人だったけど…でも、大反攻戦で沈んだんだ…」

北提「やはりそうか…僕もあの五十鈴を知っている。本土でね、五十鈴がいた艦隊を指揮する司令官の補佐をしていた時代があった。響の事も見た事はあったよ。」

響「え…じゃあ私と昔同じ部隊に居たってこと?」

北提「まぁ、僕もまだ司令官ではなかったから、艦娘とは殆ど接せなかったんだけどね。唯一、五十鈴はよく話す仲だった。」

響「そうなんだ…知らなかった…」

北提「…あの深海棲艦。やっぱり大反攻戦の時に沈んだ五十鈴、だよね…彼女は、僕が、提督を志す…きっかけとなった艦娘だったよ…艤装も、姿も…当時と、よく似ていた…」

響「北提…」

北提「いや、すまない。確認だけとりたかったんだ…中央本部への報告用に。…変な事を言って済まなかったね。もう行ってくれて構わないよ。」

響「…は、い…失礼、します。」
ガチャ、バタン

北提「…何の因果なんだ…くそ…加賀さんはああ言うけど、冷静でいられる訳が無いさ…無いんだ…!…いや、それでもって事か…」

響「…こんな時、どう声を掛ければ良かったんだろう…」

………
……



艦娘寮内


ガン!ガン!ガン!
龍驤「(瑞鶴の部屋から凄い音が…!)」

ガチャ
龍驤「大丈夫か瑞鶴!?」

瑞鶴「くそっくそっくそっくそっ!」ガン!ガン!

龍驤「ちょ、何机殴ってんねん!やめーや!拳痛めるで!」ガシィ

瑞鶴「離し…て!」ブン

龍驤「痛ぁ!…落ち着きーな!勝ったのになんで自分が怒ってんねん!悪い事してへんやろ!」

瑞鶴「あんたは悔しくないの?!私達、後ろで見てろって言われたのよ!万一の際は味方を爆撃しろって!」

龍驤「何言うとんねん!ウチらが後ろにおらんとあかんかったやろ!」

瑞鶴「そんなの…誰でもできるじゃない!」

龍驤「…何を、」

瑞鶴「私は!私は!響が嬲られてても、咄嗟に動けなかった!日向や加賀さんみたいに!情けない悲鳴だけ上げて!…ほんと、私って馬鹿ね…平時に、日向や加賀さんに馬鹿みたいに対抗心燃やして!いざという時役立たずなんだからさぁ!」

龍驤「…瑞鶴…」

瑞鶴「…もう行ってよ…」

龍驤「…ウチは瑞鶴がーー」

瑞鶴「煩い!煩い煩い煩い!もう出てって!」

龍驤「…ごめんな…」
バタン

瑞鶴「ぁ…」

瑞鶴「ごめん…龍驤…」

瑞鶴「もうやだ…私…自分が悪いって…自分が弱いってわかってるのに…」グスッ

瑞鶴の部屋の外


龍驤「…なんや、二人とも盗み聞きかいな…」

加賀「あんな叫んでいて、盗み聞きも何もないわ。」

日向「…」

龍驤「…加賀さんはさ、歴戦の空母やし、きっと深海棲艦化した艦娘とも戦った事あるんやろうからさ。咄嗟に動けるのはわかんねんけど。」チラッ

日向「…なんだ。」

龍驤「いや…日向、よう突っ込めたな、思って。ビビるやん、真っ黒な艦娘歩いてきたら。」

日向「…勝手に身体が動いていた。誰だって、家族が危険に晒されたら、咄嗟に動くだろう。私が一番近かったのだしな。」

龍驤「…ほうか。」

加賀「…さ、早く風呂に行きましょう。」

龍驤「…ほっといてええんかな、瑞鶴。」

加賀「アレはこの程度で折れるタマでは無いでしょう。…後悔を繰り返して、艦娘の意思は強くなる。我々がすべきは、明日からまた平時通りに接してやる事よ。」

龍驤「…そうなんかな。」

日向「…まぁ、なんだ。もう風呂場で酒を飲むか。燗だ燗。部屋から隠し持ってきた。」

加賀「あら。良いわね。」

龍驤「…あーもーそーしよ。もーウチはなんもわからん。」

ドック、風呂場


日向「風呂で飲む日本酒は何故うまい!」

龍驤「かぁ〜!」

加賀「…」くいっ

日向「…しっかし、加賀。今日は北提にやたらと厳しかったな。」

加賀「…甘くして、後々失敗されるよりは良いわ。この先、こんなことなんていくらでもあるんだから。」

龍驤「…そうなんかね。」

加賀「指揮官の仕事は決断する事よ。その結果がどうであれ、決断しなければならない。たとえ全滅する事になったとしてもよ。今回の彼は最悪だった。」

日向「まぁ、それはそうかもしれないが…」

加賀「北提に甘えは許されない。彼は、艦娘を家族と呼んだ。それに対し、日向は覚悟を見せた。彼はそれに応えなければならない。」

日向「…」

加賀「…彼は艦娘に甘い。それはそのまま彼に跳ね返ってくるのよ。」

龍驤「…というと?」くいっ

加賀「艦娘は大事にすればする程、良いパフォーマンスを発揮するかもしれない。家族のように接すれば団結力も上がるでしょう。同時に、喪失した時の反動も大きくなるわ。物質的にも精神的にも。」

日向「まぁ、な。」

加賀「だから、北提は大きな失敗は許されないのよ。…彼にはもっとしっかりして貰わないと。」

龍驤「…失敗できない、か。…最近の加賀は饒舌やね。」

加賀「…少し。」

龍驤「なんやかんやで加賀も北提の事、考えてるんやなぁ。」

日向「…私達も、もっと練度を上げないとな。」

龍驤「…だぁー!もうウチに任せとけや!今回はウチ、全然ええとこ無かったけど!そのうち響も日向も瑞鶴も加賀も深海棲艦も!全員張り倒したるわ!」

加賀「そう。それは楽しみね。」クスッ

日向「はっはっは!私も負けてられんな!今は飲め飲め!」

翌1000、執務室


北提「皆、揃ったかい。」

一同「はい!」

北提「えっと、今回の戦闘記録を中央本部に報告した所、僕と僕の艦隊、つまり君達に対して本土への出頭命令が来た。」

一同「?!」

北提「深海棲艦化した艦娘に関してのデータ収集、だそうだ。既に本土からは、代わりの駐留部隊が派遣されている。数日後に到着する予定だそうだ。」

響「出頭、命令…」

北提「ああ、いや。君達がそこまで心配する必要は無い。君達は極めて高く評価されているし、今回の戦闘でもほぼ被害を出さなかった訳だし。艤装の大規模な整備と改修、及び休暇も兼ねてとの事だ。」

日向「休暇…初めてだな…」

龍驤「…艦娘の休暇とかあり得るんか…」

北提「無論、僕の監督下での話だけどね。だからまぁ、気軽に、気軽にね。」

一同「了解。」

最後駆け足でしたが、北編とりあえずここまで
書き忘れありそう…

深海棲艦化した艦娘は、艤装、姿そのまま深海棲艦化したと考えて貰えればと
色だけ深海棲艦ぽい感じで

姫や鬼は、考えてますがだいぶ先になりそう
第2章とかの主役かな?

妄想ばかり捗りますね…

場面は再びとある島に戻りーー


ある日、執務室


榛名「提督、お荷物が届いてましたよ。」

提督「ああ、取りに行ってもらって悪いな…本土からか。」

榛名「…本土から、ですか?」

提督「この島に来る前に少しな…」

提督は割れ物注意と書かれた荷物を開けた。

提督「これは…アードベッグ。…何故こんな貴重な物が…手紙が付いてるな。」

『私の上司が幾つか持っていたものだ。一本開けてみて、あまりにも香りが気に入らなかったらしく、捨てようとしていた所を譲り受けた。君が喜ぶだろうと思ってな。』

提督「そうか…まぁ、アードベッグは人を選ぶだろうな…ラッキーだ。」

榛名「アードベッグ…?」

提督「ウイスキーだ。スコッチだから洋酒だな。中々手に入らん。」

榛名「へぇ…」

提督「気になるか?」

榛名「は、はい。」

提督「今夜、部屋に来ると良い。」

榛名「お、お邪魔します!」

夜、提督の部屋


コンコン
榛名「は、榛名です!」

提督「お入り。」

ガチャ
榛名「失礼します…あ、あれ?」

足柄「あら、榛名。もしかしてお邪魔しちゃった?」

榛名「い、いえ!そんな事は…(…むぅ…)」

提督「すまないな、榛名。さっき無理矢理入られてしまった。」

足柄「無理矢理とは酷い言われようねー。」

提督「そう言いつつ帰らないんだな、お前は。」ハァ

提督「ほれ、アードベッグだ。」ゴトン

足柄「…え、スコッチ?これどこで?」

提督「本土から知り合いが寄越してくれた。」

足柄「すっごいわね…ワクワクしてきたわ…」

提督「そういえば、榛名は初めてだったか、ウイスキー。」

榛名「は、はい。」

足柄「いきなりアイラモルトはウイスキー嫌いになりそうね。しかもストレートって…最初ならジョニーウォーカーなりグレングラントなりの方が良いんじゃないかしら。ハイボールとか、せめてトワイスを…」

提督「まぁまぁ…とりあえず、飲んでみろ、二人とも。」コトン

榛名「い、いただきます!…うっ?!」クンクン

足柄「…いやー、やっぱアードベッグ、香りが正露丸よねー。」

提督「…だが、突き抜けるような後味と残り香は、他ではあまり無い。」グイッ

榛名「…ウイスキーって結構キツイ、ですね…」チビチビ

提督「まぁ、これはな…」

足柄「言わんこっちゃ無いわね。…あぁーピーティー…」グィ

榛名「(うう…榛名、これ苦手です…でも、折角提督が下さった物…)」

提督「…ふむ。」

提督「折角だ。アレを開けよう。」

榛名「…?」

足柄「おお…?」

提督は瓶を一本、棚から取り出した。

提督「竹鶴。17年。私の一番好きなウイスキーだな。」

足柄「…ウイスキー離れを防ごうって魂胆かしら…」

提督「これを榛名に飲んでもらう。」

足柄「あたしには?」

提督「アードベッグがあるだろ…」

足柄「ケチ。」

提督「…」

榛名「あ、でも、前のがまだ残って、」

提督「ほれ、そのグラスを寄越せ。私はそれを貰う。」

榛名「あっ…!」

提督は榛名からアードベッグの入ったグラスを奪い、新しいグラスを榛名に渡した。

榛名「の、飲んではダメです!それは榛名の唾液が付いてて汚いですから…」

提督「何を言っとるんだお前は…」グイッ

榛名「あぁっ…」ドキ…

提督「グラス、出せ。」

榛名「は、はい。」

提督「…」トプトプ

榛名「ありがとう、ございます。」

足柄「今、なんだか青春を感じたわ!」

提督「青春か。遠い昔の話だ。艦娘にも有るのか。」

足柄「…小説で読んだだけよ。あるわけないじゃない、戦闘マシーンに青春なんて。」

提督「…」グイッ

榛名「…あれ…これ、さっきと同じ種類のお酒なんですか?」

提督「そうだ。」

榛名「なんというか、全然違います…美味しいです…煙の香り…?」

提督「それは良かった。」

足柄「あぁー!いいなぁー!いいなぁー!」

提督「…ほらよ。」ゴト

足柄「イエーイありがとー!」

提督「全く…騒がしいな…静かに飲めんのか、静かに。」

榛名「…こういう雰囲気は、お嫌いですか?」

提督「…まぁ、悪いとは言わん…」

足柄「これがツンデレって奴よ、榛名!」

榛名「デレ…?」

提督「…何を言ってるんだか…」

まーた朝からウイスキーだ…
飲みたい…
ここまでです

執務室


榛名「…(提督がこの島に着任してから、早いものでもう半年、ですか…)」

提督「榛名、この書類の確認を。あと、雷から日用品の補充要請が上がってきている。目を通しておいてくれ。」

榛名「はい。わかりました!」

提督「…最近、仕事が早くなってきてるな。素晴らしい。」

榛名「え、本当ですか?自分だと中々実感が…」

提督「初期に比べると目覚ましい進歩だ。秘書艦業務ならもう不知火にも引けを取らないだろう。」

榛名「えへへ…嬉しいです…」

提督「お陰で、私の仕事にもかなり余裕が出てきたよ。」

榛名「…榛名は、お役に立ててますか?」

提督「ああ、勿論だ。」

榛名「良かった…」

提督「その書類が済んだら、一旦休憩を取ろうか。昼飯にしよう。鳳翔に休みを与えているから、最近はずっと雷が作ってくれているが…きちんと食べないと叱られるからな。」

榛名「はい!」

食堂


雷「ささ、司令官!食べて食べて!」ドン

提督「あ、ああ…ありがとう…」

榛名「(同じ昼食なのに、提督のだけ量が多い…食べきれるんでしょうかアレ…)」

雷「今日は、あなたの好きな豚カツよ!ちゃんと食べて、健康に過ごすのよ!」

提督「そうだな…頂くよ。」モグモグ

提督達が食堂で昼食を食べていると、哨戒を終えた足柄が食堂へ入ってきた。

足柄「あー疲れた。雷ちゃんごはんー…うわ、提督、量やば…」

提督「…」モグモグ

足柄「なんか提督だけ、日に日に量が増してるわね…」

提督「…どうだ、羨ましいだろう…」モグモグ

足柄「遠慮しとくわ…」

雷「はい、足柄さん!」

足柄「ありがとー雷ちゃん。いただきまーす。」

雷「あら、提督ったら、皿から溢れてるわよ!」

提督「ああ、すまん…」モグモグ

足柄「…(そりゃ、あんなに皿に盛ったら溢れるわよ…)」モシャモシャ

雷「もう、仕方ないわねぇ…」ゴシゴシ

提督「…」モグモグ

榛名「…(提督、大丈夫でしょうか…)」

………
……



提督「…」モグモグ

足柄「ご馳走様!」

雷「お粗末様!」

足柄「じゃ、お先に行くわね。バイバーイ。」

榛名「は、はい!お疲れ様です。(私も食べ終わりましたが…)」

提督「…うむ、うまかった。ご馳走様。」

雷「はあい。お粗末様でした。」

榛名「(秘書艦として、食事の量の事を雷に注意した方が良いのでしょうか?迷います…)」

提督「さて、午後からの仕事も頑張ろうか、榛名。」

榛名「はい!(まぁ、今度で良いでしょう…提督も何も言わない訳ですし。)」

雷「あ、二人とも!洗濯物、用意しておいてね!」

提督「わかった。」

榛名「はい。」

執務室


榛名「うーん…」

提督「どうかしたか。」

榛名「いえ、本土から配給された武装の数が一致していたか不安で…」

提督「そうずさんな管理はしていないと思うが…一応工廠を確認してきてもらえるか。哨戒に出てる隼鷹の標準兵装以外は今、揃っている筈だ。」

榛名「わかりました。行って参りますね。」

………
……



榛名「(装備は無事揃ってました。私の気のせいで良かったです。執務室に戻らないと…)」テクテク

榛名「…?(執務室のドアが半開きに…あ、雷さんが提督の洗濯物を回収に来たのですね。何やら二人で話してるみたいですが…)」

雷「はい、洗濯物はこれだけ?」

提督「そうだな。」

榛名「(…なんとなく入りづらいです…雷さんが出るのを待ちますか…)」

雷「わかったわ。…ああ、あと、司令官。」

提督「ん?」

雷「今日のお昼の量、あれくらいで丁度良かったかしら?少しずつ増やして様子を見てたんだけど。」

提督「…確かに満足したが…よく私が大食らいだと気がついたな?不満を言った事は鳳翔にもお前にもない筈だが。」

榛名「(…え!) 」

雷「見てたらわかるわ。ダメよ?ちゃんと言わないと。食は全ての基礎なんだから。幸い食料は十分すぎるほど配給されてる訳だし。」

提督「雷には敵わんな…」

雷「ふふふ!司令官、もっと私に頼っても良いのよ?」

提督「十分頼りにしてるさ。」

雷「…もーっと、私、私に、頼っても良いのよ?」

提督「…これ以上お前に頼ると、ダメになってしまいそうだな…」

雷「あら。それは褒め言葉として受け取っておくわ。…それじゃ、私はもう行くわね。無理しちゃダメよ?」

提督「ああ。ありがとう。…榛名?ドアの前で突っ立って無いで、入って来ると良い。」

榛名「あ、はい。すみません。」

雷「あら、榛名さんもお仕事頑張ってね!じゃあ、私はこれで!」
バタン

提督「どうだった、装備の方は。」

榛名「きちんと揃っていました。問題ありません。」

提督「それは良かった。さて、続きの業務に移るか…」

榛名「はい…(…お昼の量が多かったのは、雷さんの勝手では無く、提督を思っての事だったのですね…注意なんて、とんでもない…榛名はまだまだです…)」

ここまで

ウイスキーは、サントリー系列、ジョニーウォーカー系列とか飲みやすいですよ

寝ますー

ある日


足柄「あら、榛名?ちゃんと寝てるー?」

榛名「っ…。はい、榛名は大丈夫ですよ。」

足柄「嘘はダメー。今日はきちんと寝ること。良いわね?頑張るのは良い事だけど、あんまり寝てないと提督にご迷惑がかかるわよ?」

榛名「う…はい…」

足柄「よろしい。」

榛名「…(足柄さん、とっても優しいです…そう言えば、他の人にも…)」

………
……


榛名の回想


榛名「(今日も秘書艦業務、中々疲れました…寮に帰りますか…。…あれは足柄さんと隼鷹さん?)」

足柄「隼鷹?大丈夫?疲れてるんじゃない?」

隼鷹「うーん…そりゃねー…鳳翔さんのアレもあるし…」

足柄「うーん…明日の哨戒、あんた1600からで良いよ。1200から1600の四時間、あたしが追加で代わりにやってあげる。」

隼鷹「え?でも、悪いよ。0400から足柄ずっと哨戒してるだろ?12時間連続はしんどいんじゃ…」

足柄「1日だけよ、1日だけ。その間にゆっくり休みなさい。良いわね。」

隼鷹「ええー…悪いよー…」

足柄「ほら、もう決めたから!鳳翔さんに伝えて、たまには長めに睡眠とりなさい。」

隼鷹「なんだよ…ありがと。」

足柄「良いってことよ。」

………
……



榛名「(お昼の為に食堂に来ましたが、先客が。)

足柄「雷ちゃーん。哨戒終わって時間あるから家事手伝うわー。訓練所は不知火さんが占拠してるし。」

雷「あら、ほんと?助かるわ。」

足柄「あたしが洗濯しちゃうから、お料理やっちゃってー!」

雷「ありがと!」

………
……



榛名「(あら、不知火さんと足柄さんが厨房に…料理の講習でしょうか?)」

足柄「不知火さん、ちょっと塩とってー。」

不知火「これ、ですか?」

足柄「違うわ!それは砂糖よ…」

不知火「こっちですか?」

足柄「そうそう…あー!そんなに入れちゃダメよ。塩は一つまみ、良いわね。」

不知火「はい。」

榛名「(榛名も教えてもらいたかったです…)」

………
……


榛名「(あ、提督と足柄さんです。)」

足柄「提督、あんた風邪ひいてんじゃないの?」

提督「そんな事はな…な…」ッハクション!…ズズー

足柄「…」

提督「…」

足柄「…自己管理…」

提督「…少し仕事が詰まっててな…」

足柄「…はぁ。風邪薬持ってきたげる。早めに寝なさいね。」

提督「…ありがたい。」


………
……



回想終了


榛名「(…やっぱり足柄さん、気配りが上手です…たくさん助けられてます。それに比べて私は…頑張らないと…)」グッ…

短いですが、とりあえずここまで

後日、深夜


榛名「やっと品目の整理が終わりました…」

提督「うむ、ご苦労。今日はこのくらいにしておこうか。」

榛名「…すみません、提督。私の仕事が遅くて…」

提督「いや、大丈夫だ。輸送船の来る時期はいつもこんな感じだな。」

榛名「…それでも、私はもっと頑張らないと…」

提督「焦れば事を仕損じるぞ。…お前はよくやってくれている。この程度の事で気を落とす必要はない。」

榛名「…ありがとう、ございます…」

提督「…寮まで送ろう。」

榛名「え…いえ、そんな。」

提督「ほら、行くぞ。」

榛名「あう…すみません…」

艦娘寮


榛名「あの、ありがとうございました。」

提督「構わんさ。また明日、というか最早今日だが…頑張ってくれ。」

榛名「はい。」

提督「…」ヨシヨシ

榛名「わ、わ。」

提督「心配するな、榛名よ。お前は私の役に立っている。」

榛名「…はい。」

提督「早めに休めよ。」

榛名「ありがとう、ございました。」ペコ

提督「ああ。ではな。」

提督「喉が渇いたな…眠いが…自室に戻る前に、食堂で水を汲もう…」

食堂


提督「…」

鳳翔「…」スゥ…スゥ…

提督「(何故、自室で寝ずに、食堂の机で寝ているんだ…この人は…)」

鳳翔「…」ツー…

鳳翔の閉じられた瞳の目尻から雫が流れて、透明な軌跡を作った。

提督「(…また、涙が…まさか、毎晩こうしてここで泣いているのか?…何故だ?)」

鳳翔「…」ポロポロ

鳳翔「ぁ…いか、ないで…」

提督「…?!…寝言か…」

鳳翔は、目を瞑ったままの苦しそうな、悲しそうな表情で、虚空へと手を伸ばしていた。

提督「…」

提督は、鳳翔の向いに座ると、その手をそっ、と握った。反対側の手で鳳翔の頭を優しく撫でると、その苦しそうな表情が和らいだように、提督には見えた。

提督「…しばらく、このままでいてやるか…」

夜は、更けていく。

ここまで
書けたので投下

前々回あたりから、情景伝えたいなーと思った時は簡単な地の文入れてます
多用はしないので、いままで通りに見て頂ければ幸いです

早朝、食堂


鳳翔「ふぁ…あら?」ムクッ

鳳翔「…提督は何故、私の手を握りながらこんな所で寝ているのでしょうか…」

鳳翔「ん…朝日?…もう、そんな時間ですか…久しぶりですね、こんなに眠れたのは…」

鳳翔「…ふふふ。あなたが私の手を握って下さったからですか?提督。」頬ツンツン

提督「…」zzz…

鳳翔「…しかし、こんな所を見られると、提督にご迷惑がかかりそうですね。私は先に失礼しましょうか…。あ、そうだ…」

鳳翔「よいしょ、この毛布を掛けておきましょう…では、提督。…もう少し、お休み下さいね。」

鳳翔は提督の髪をすっと撫で、静かにその場を去った。影からその姿を見つめる者に気付かずに。

雷「…朝食の用意をしようと思って来たら、2人が手を繋いで寝てたからビックリしたわ…」テコテコ

雷「…提督ったらはしたないわねぇ…もうすぐ0500だけど、起こしたほうが良いかしら。うーん…」

雷「まぁ、もう少し寝かせてあげましょうか。どうせすぐに人が朝食に集まるし、その時起きるわよね。」

雷「…司令官、鳳翔さんが好みなのかしら…むぅ。…やだ、私ったら何を…さ、準備準備…」

食堂0530


隼鷹「おはよーみんな。不知火は哨戒お疲れ様!」

榛名「しーっ。隼鷹さん、静かに。」

隼鷹「あん?…提督が寝てる…」

不知火「何故こんなところで…」

隼鷹「…これは、衝撃的に起こすべきだ!」

榛名「で、でも、提督はお仕事で疲れてらっしゃいますから…」

隼鷹「いいや!起こすね!この冷水で…」ガバッ

雷「ちょおっと待ったー。」ドス

隼鷹「オンギャァァァ!しゃもじで鳩尾をやられた…」

雷「起こすにしても、水はダメよ、水は。…でも、司令官、最近は誰よりも遅く寝て、誰よりも早起きだったから。榛名さんの気持ちもわかるわ。」

隼鷹「雷と榛名は甘い!こういう時こそ厳しくならないと!」

不知火「…ここぞとばかりに提督を苦しめようとしてるように、私には見えますが…」

隼鷹「そんなことはない!これは部下として上司を思ってのことであって、こう、爽やかな目覚めを…」

不知火「本音は?」

隼鷹「普段あまり隙を見せない提督に、酒を取られた仕返しをしたい。」

不知火「根に持ちますね…隼鷹さん…」

隼鷹「あたしにはわかる。提督なら笑って許してくれる。ああ!未来が見えるようだよ!」

榛名「隼鷹さん…」ハァ

雷「ほら、ご飯できたわよ。馬鹿な事言ってないで、自分で運んで運んで。」

榛名「いい匂いです。」

隼鷹「美味そうだな!いただきます!」

………
……



「いい匂い〜!提督〜?ご飯〜?」

「ああ、演習お疲れ。今できた。」

「うふふ…いつもありがとね。」

「ああ。しかしこれでは、まるで主夫だな…」

「あらあら!夫婦だなんて、嬉しいわ。」

「…寝言は寝て言え。」

「あら、じゃあ一緒に寝ないとね!うふっ♪」

「何を馬鹿な…ほら、さっさと食え。」

「うふふっ♪…いただきます!」

もしゃもしゃ

「演習はどうだった?」

「新任提督の艦娘同士の戦いだったのよね。良い経験になったわ。素手で殴りかかってくる艦娘が居てビックリしたけど!私もアレ、習得できるかしら…」

「…そうか…。…よく、不安になる。深海棲艦はすぐそこまで来ているのに、俺は…椅子に座して…平和を守れるのか、と。自分が艦娘になって、前に出たいと何度願ったか。部下に全てを押し付ける等…」

その時、男はそっと撫でられて。

「焦っては事を仕損じるわ。指揮官は重要なお仕事。わかるでしょ、ねぇ、提督?」

「…子供みたいな扱いは…やめて…く…れ…)

………
……

隼鷹「冷水はともかく、提督も起こして飯食べさせた方が良いんじゃねーの?」

雷「…疲れてるんだから、少しくらい良いじゃないの…ねぇ、司令官?」なでなで

隼鷹「うわぁ…親子だな最早…」もしゃもしゃ

不知火「(アレ、良いですね。私も提督を撫でてみたい…)」もぐもぐ

提督「…?」ムクッ

雷「!」さっ

提督「あれ…皆…?私は寝てたのか…?すまん、今何時だ。」

榛名「え、えと、0530です!」

提督「ああ、そうか…あれは夢か…この毛布は?」

雷「多分、鳳翔さんの物よ。」

提督「そうか…立場逆転だな…やれやれ…ありがとう、雷。いつも世話をかけるな…」

榛名「あの、提督。大丈夫ですか?」

提督「ああ、問題無い。すまないな、心配をかけた。…先に執務室に戻ってシャワーを浴びてくる。いつも通りの時間に頼むよ。」

榛名「はい!」

提督「不知火も、哨戒ご苦労。頼りにしてるぞ。」

不知火「光栄です。」

提督「隼鷹も、訓練に励んでくれ。しんどいのは承知だが、お前には期待している。頑張れよ。」

隼鷹「…おう。」

提督「では、私はこれで…」

雷「ちょおっと待ったー。」ガシ

提督「…なんだ。」

雷「ご・は・ん。あなたのために作ったんだから、食べなさい。」

提督「いや、しかし時間が…」

雷「んー?」

提督「…わかった、いただきます。」

雷「はい!おあがりなさい!」

………
……



提督「では、先に戻る!榛名はゆっくり来てくれ!ご馳走様!」ダッ

雷「お粗末様ー!…たいした早食いだったわね…」

とりあえずここまで
また夜に投下あるかも

アドバイスありがとうございます

ウイスキーは加水で香りがはっきりわかるみたいですね!
トワイスくらいが丁度良いとか

榛名「…」

隼鷹「どした?榛名。」もぐもぐ

榛名「隼鷹さん、提督が着任してから、凄いなぁと思って…」

隼鷹「なんだなんだ、急に。」

榛名「隼鷹さん、よく執務中に話題に上がるんですよ。頑張ってるって、提督が褒めてます。」

隼鷹「マジ?なんか嬉しいなー。」

榛名「なんでお酒飲みにこないんだろうって不思議そうにもしてましたよ。」

隼鷹「…実際、フラフラで哨戒終わって飯食ったらバタンキューなんだよなー。部屋に酒があれば飲むんだろうけど…疲れた状態で酔っ払いたくない…失望されるのが、怖くなっちまってさ。」

榛名「大丈夫ですよ、隼鷹さんなら。…本当に、変わられました。」

隼鷹「よせよなー。」

榛名「…羨ましい。」ポツリ

隼鷹「…ん?なんか言った?」

榛名「いいえ、何も。」

後日


提督「よし、島を出た輸送船は無事中継地に到達した、と…」

榛名「物資の確認も取れました。」

提督「ああ…やっとひと段落ついたな…」

榛名「鬼のような…忙しさでしたね…すいません、足を引っ張ってしまって…」

提督「いや、榛名は十分やってくれたよ。助かった。…少し、外に出よう…」

榛名「はい。」




提督「風が心地良いな。」

榛名「はい。…?…あれは…鳳翔さんと、隼鷹さんですね…訓練中ですか。」

提督「うむ…今は艦載機を出しながら、自分も動き回る訓練をしているようだな。…悪くない動きじゃないか。」

榛名「そう…ですね…戦闘…訓練…」

提督「さて、と。榛名。お前はよく頑張ってくれた。まだ午前だが、仕事も少ないし、今日はこれから休んでくれて構わない。自由に過ごしてくれ。」

榛名「お休み、ですか。」

提督「ああ。半日休暇だな。私はもうしばらくしたら執務室に戻るよ。」

榛名「わかりました、提督。お疲れ様です。」

提督「ではな。」テクテク

榛名「…提督は戻られましたか…。」

榛名「…雷さんよりも仕事が遅く、足柄さんよりも気が利かず、不知火さんよりも信頼に足らない…鳳翔さんのように他人を指導も出来ず、隼鷹さんのような急成長も出来ない…」

榛名「提督は助かると仰って下さいますが…こんな、こんな、全てが足りぬ私が…提督のお役に立つには…」

ーー提督の、懐刀。

榛名「…最早戦えぬとは、言ってられません。私の、存在意義の、為に。」

訓練所


榛名「自分の艤装…勝手に持って来ちゃいました…。ええい、どうせ休暇です!固定射撃訓練…動体射撃訓練…格闘訓練…全て、やりますか…何セットやりましょう…とりあえず、無限で…訓練用機械の設定を、と」ポチ

榛名「艤装に模擬弾を装填して、と…」ガシャコン

榛名「まずは固定射撃訓練から、ですね…的が自動で浮かぶはずです。」

機械『第1セット、固定射撃訓練、開始』

榛名「よし…!」

ドン…ドドン…ドン…

榛名「きちんと弾は当たりますね…!良かった、あまり腕が鈍ってなくって…。どんどん続けます…!」

ドドン…ドン…

………
……

数時間後


機械『第23セット、固定射撃訓練、終了』

榛名「フー…フー…次は…動体…」ガシャコン

機械『第23セット、動体射撃訓練、開始』

ドン…ドドン…ドゥン…

榛名「…23セット目…何時間続けたかわかりません…それでも、ちゃんと、ちゃんと当たります…榛名は戦える、戦える筈なのに…!」

ドゥン…ドン…

榛名「いつからっ…!」

榛名「何故!何故私は味方に疎まれるようになったのですか!」

ドン…ドドドン…ドドン…

榛名「何故っ…!何故私は味方を撃つようになったのですか…!」

ーーそんなもの、わかっているんだろう?

榛名「私が、役立たずだったからっ…!」

ーーそうだ。

榛名「榛名は何故役立たずなんですか!榛名は何故役立たずなんですかっ!!!」

ーー敵を殺さないからだ。

榛名「敵ってなんなんですか!深海棲艦ですか!戦果を独り占めする私を、憎む艦娘ですか!仕方ないのに!仕方ないのにぃ!」

ーー…。

ドドン…ドン…ドン…

機械『第23セット、動体射撃訓練、終了。第23セット、格闘訓練、開始』

榛名「(…海面に、標的が浮かんで…こちらに向かって来ますね…)あれが敵ですか?」

バキィ!

榛名「これも敵ですか?」

ボコォ!

榛名「それも?そいつも…こいつも…全部、全部!」

グシャ!ボキッ!ベキャ!

榛名「それとも…フー…敵は…フー…フー…役立たずの…榛名自身ですか…?…役立たず…?…そもそも…誰の役に、私は立ちたいのーー。」

機械『標的、破損。標的、破損。訓練を中止します。』

榛名「…敵が消えた…?いえ、私の背後、陸上に人型の影が一つありますね…あれも、敵ですか?」ユラァ…

榛名「敵なら、やらないと…やらないと…陸地に上がって…やらないと…」ザバァ…

提督「…よう、榛名。もう夕方だぞ。休暇中に訓練とは熱心だな。」

榛名「…提督でしたか…提督は私の敵、ですか?」

提督「…お前には、どう見える。」

榛名「…私には、誰が敵で、誰が味方で、何が自分か、もうわかりません。わからないんです…」

提督「…そうか。」ザッ…ザッ…

榛名「…何故、私に近づくのですか。敵ですか?敵なんですね?」

提督「…」ザッ…ザッ…

榛名「攻撃しますよ?」

提督「…」ザッ…ザッ…

榛名「…あああ!」ブン!

提督「良いか。俺は提督だ。そしてお前は、俺の大事な秘書艦だ。」

榛名「…っ!」

榛名の心が揺れ、ムラの出来た攻撃を提督は回避し、手に持った大きなスパナのような装置、強制艤装解離装置で榛名の艤装を強制解除した。

提督「敵が、味方が、自分がわからないなら俺が教えてやる。だから、俺を信じろ。焦るな、榛名。」

榛名「…あ、あああ…」ドサッ

艤装を失った榛名は、際限無く訓練を続けた疲労から、提督に倒れこみ、意識を手放した。

さらに数時間後


榛名「…」パチリ

榛名「(視界に星空が…あれ?ここは?私は、寝てたのですか?)」

提督「目が覚めたか。」

榛名「…ぁ…膝枕、されて…」

提督「お前が倒れこんだからな。」

榛名「…すみません。」

提督「構わん。…訓練をするなら、言え。艤装を持ち出したら、執務室からわかるようになっているからな。」

榛名「…という事は…」

提督「最初から見ていた。」

榛名「…そう、ですか。」

提督「…綺麗な射撃だった。」

榛名「…血の滲むような、訓練を重ねましたから。」

提督「…黒提督の言った事が、忘れられないか。たとえ黒提督が過ちを犯したと知った上でも。」

榛名「…英雄提督が、私の全てでしたから。その部下の、黒提督の言葉にも…どうしても…逆らえません…それが、私を縛る為の言葉だったとしても…」

提督「…きっと、英雄提督はお前のことを役立たずとは思っていない。」

榛名「…ありがとう、ございます。…でも、私、また我を失いました。本当に…訓練も、こなせないなんて…休暇中に勝手に暴走して…」

提督「…」

榛名「…どうして、あなたはこんな私を大事と、言って下さるんですか?こんな、こんなお荷物を…」

提督「部下の艦娘を、大事と言うのに理由なんぞ要らん。」

榛名「…そんなの、甘過ぎますよ…」

提督「俺の勝手だろう。」

榛名「…変な方です…」

提督「…俺はお前を荷物とは思っていない。だから無断の訓練を止めなかった。現在の能力を確認する為にもな。」

榛名「…」

提督「…もう一度言おう。俺は、お前の味方だ。お前は、私の部下だ。そして、お前の敵は、俺の敵だ。」

榛名「…提督の、敵…」

提督「榛名。敵がわからなくなったら、お前の敵は俺が教えてやる。だから、焦るな。」

榛名「…でも、」

提督「少しは俺を信じたらどうだ。…あまり独り善がりになるな。」

榛名「…!…ごめん、なさい…。…信じて…良いのですね…」

提督「勿論だ。俺はお前の提督だからな。…そろそろ戻ろうか、榛名。夜も遅くなってきたーー」

榛名「すみません…」

提督「ん?」

榛名「もう、少しだけ…このまま…」グスッ

提督「…仕方ないな…」なでなで

榛名「…榛名、頑張りますね…榛名を捨てないで、下さいね…ヒック…こんなに、何回も助けてもらうまで…ヒック…信じて良いって…ごめんなさい…」ぇぐぇぐ

提督「ああ。」よしよし

榛名「…ぅぅぅぅぅ」グスッ

食堂


雷「提督!…と榛名さん…!」

榛名「…」ぺこり

提督「ああ、すまない、雷…今戻っーー」

雷「あなたは!なんで!無断で半日も居なくなるの!」

提督「す、すまん…」

雷「足柄が基地中探し回ってたわよ…私も心配したんだから…職務放棄って言われても反論出来ないわよ?」

提督「返す言葉もない…」

榛名「い、いえ!これは榛名がーー」

提督「よせ。」

雷「…無事だったから良かったわ。…二人とも、ご飯?」

提督「…ああ、頼む。」

榛名「…お願いします…」

………
……



ドドドドドド

提督「…来たか。」もぐもぐ

足柄「こんばんは、て・い・と・く?と榛名〜?」

榛名「ヒッ…ごめんなさい…」

足柄「あんたら2人がセットで消えて、私がどれだけ心配したか、わかる?」

提督「…申し訳ない…」

足柄「ほんとに、勘弁してよね。…まさか、二人で懇ろしてたとかじゃあ…」

榛名「ち、違います!////」

提督「…榛名の訓練を見ていた。」

足柄「…そう。まぁ、無事なら何でも良いわ。あー、心配して損した…」ハァ

提督「…心配をかけたな、足柄。すまない。」

足柄「…本当よ。全く…じゃ、私は無事が確認できたって事で。風呂入ってくるわ。」

提督「お前、飯は…」

足柄「飯は風呂の後に食べる主義なの。それじゃね。」

提督「そうか…すまなかった。」

足柄「…」スタスタ

執務室


提督「やれやれ…疲れたな…。まぁ、無断でずっと訓練所で榛名を覗いていた俺が悪いんだが…」

提督「しかし、榛名…どうしたものか…黒提督が亡霊のようにつきまとっている…戦わなければならないという強迫観念…厄介だーー」

ジリリリリリン!ジリリリリリン!

提督「…この時間に電話?」

ガチャ
提督「はい、此方、とある島基地執務室。」

『ああ、提督くん。私だ。』

提督「これは…ご無沙汰しております。」

『少し、マズイことが起こった。』

提督「…と、仰りますと。」

『ついこの間、北で離島攻略があったろう。君の加賀が今居る所だ。』

提督「はい。無傷の勝利と聞いておりますが。」

『敵に艦娘が出たらしい。』

提督「深海棲艦化した、艦娘…ですか。」

『それがまた、昔に君の考案した爆撃回避軌道を取ってたらしくてね…五十鈴らしいが。大反攻戦で沈んだ。わかるかい。』

提督「私の部下ではありませんでしたので、あまり…」

『そうか…ともかく、近日中に正式な要求が下ると思うが、本部は君を本土に召喚しようとしている。対策会議の参考人としてね。』

提督「本土…ですか…」

『これは、チャンスでもある。君が本土に返り咲く為のね。』

提督「私は返り咲こうなどとは…」

『…まぁ、今日は時間が無いからこれくらいにしておくが。本土に来たら、顔を出しなさい。息子や艦娘達も会いたがっている。』

提督「わかりました。必ず、そちらへお伺いさせていただきます。」

『結構。ではな。』
ブチッ

提督「本土…本土か…」

ここまでです
次は本土

初めてのウイスキーは、シングルを20分か30分くらいかけて、ゆっくり飲んで下さいね

提督の部屋


提督「…また本土に…榛名を常設秘書艦とした事が、ここで裏目に出るか。」

提督「1隻、出来れば2隻を、道中の護衛に付けたいが…」

提督「ここで榛名を置いていけば、榛名は自信を喪失するだろう…連れて行くしかない、な。」

提督「あと1人…これは不知火だな。本土で余計な事が露見するのは避けたい。」

提督「…よし、決まりだ。」

翌日、執務室


提督「よし、不知火以外全員揃っているな。」

一同「はい!」

提督「さて。今回、私は本土に召喚される運びとなった。」

榛名「え…」

鳳翔「…本土?」

足柄「…はぁ?」

隼鷹「…マジ?」

雷「…なぜ?」

提督「それは機密事項だ。…さて、本土へと向かう私の随伴艦には、榛名と不知火を任命する。私の不在時には、代理監督官が派遣される予定だが…」チラッ

隼鷹・足柄「…」

提督「…頼むから問題を起こさないでくれよ…お前らの為なんだぞ…」

隼鷹・足柄「…」

隼鷹・足柄「…」ニヤリ

提督「…ハァ…雷、鳳翔。頼りにしている。」

雷「…むぅ…私、大丈夫かしら…」

鳳翔「…それよりも、提督は大丈夫、なのですか?」

隼鷹「…そうだよ!なんで急に本土へなんか…アタシら、問題起こしちゃったかな?」

提督「ああ、いや、心配するな。詳しくは言えないが、作戦会議の参考人として向こうに赴くだけだ。」

鳳翔「そう、ですか。」

提督「…よし、では連絡事項はここまで。正式な命令が下るのは数日後となる。その際にまた詳しい説明を行うが、出来るだけ早く伝えておきたかった。慣れない環境になるかもしれないが、よろしく頼む。以上、解散。」

榛名「榛名が…随伴…えへへ。」

………
……



執務室の外、廊下


一同「失礼します。」
ガチャ

雷「…提督と榛名は執務室に残ったわね。」

鳳翔「…」

足柄「…」

隼鷹「…なんか皆、不満そう?」

足柄「…本土行きたかったわ…」

隼鷹「え?そうなの?」

足柄「本土でなら、提督の監視下であれば外出が出来るのよ。ああああ…甘味に私服にエンターテイメント!榛名と不知火さんが羨ましい…」

鳳翔「あ、遊びに行ってる訳ではないのですから…」

雷「…そんな事より、私を差し置いて二人を選ぶとは…むぅぅ…」

鳳翔「…(…まぁ、私もお休みいただいてましたからね…)」

隼鷹「アハハ。誰も提督の心配してなくてちょっと笑える。」

足柄「少しはしてるわよ、そりゃね。でもあの人が大丈夫って言ってるんだから大丈夫なんでしょ。信頼の裏返しよ。」

雷「しかし…左遷先から中央に参考人として召喚されるとは…提督って何者なのかしら…」

足柄「さぁ?…まぁ、あたし達とうまくやってるってだけでも、只者じゃない感じはするわね…今更過去なんてどうでもいいって思うけどね。」

鳳翔「…そうですね。」

隼鷹「…アタシはちょっと気になるなー。」

足柄「まぁまぁ。…あ、ちょっと。こっちも作戦会議しましょ。」

隼鷹「?」

足柄「お・み・や・げ。要求するわよ…!」

隼鷹「成る程な!」

鳳翔「もう…提督は遊びに行くんじゃないと何度…」

雷「私はプリンがいいわね!」

鳳翔「雷さん…ナマモノは…」

朝はここまで

レス、大変励みになります
頑張ります

執務室、早朝


コンコン
不知火「不知火です。」

提督「入れ。」

ガチャ
不知火「失礼します。」

提督「本土へと向かう事になった。お前と榛名に随伴してもらう。」

不知火「榛名さん、ですか。」

提督「ああ。…心配は残るが、秘書艦を外すわけにはいかん。」

不知火「…いえ、逆に良い機会なのでは?」

提督「…ふむ。」

不知火「彼女は主張派の工廠で建造され、黒提督の所へと配属されたという事ですから、基礎訓練期間以外で本土には居なかったでしょう。向こうで新しい価値観に出会う可能性も有りますし…それに、彼女が居ます。」

提督「…金剛か。」

不知火「はい。金剛さんでしたら、榛名さんに良い影響を与えてくれるかも知れません。姉妹艦ですし。」

提督「…今、奴は本土に居るのか?」

不知火「確認しておきます。」

提督「頼む。」

不知火「…して、司令官の呼び出しの理由は一体?」

提督「北でな。大反攻戦で沈んだ艦娘の深海棲艦化が確認されたそうだ。」

不知火「…!誰ですか?」

提督「五十鈴だ。」

不知火「…知らない艦ですね。」

提督「…これまでに、同じ型番の艦娘が同時に二隻存在した事はないが…沈んでしまった艦娘については、再建造が可能である事が確認されているな。成功例はほんの数例しか無いが…」

不知火「はい。」

提督「それでも、莫大な資材をつぎ込んでやっと、記憶も全て失い、戦い方も知らぬ艦が出来ると。」

不知火「…しかし、これまでに確認されている、深海棲艦化した艦娘については、一隻も再建造が出来ていませんでしたよね。」

提督「…輪廻を信じる訳では無いが…恐らくは、魂、のようなものは一つしか存在できないのだろうな…。」

不知火「…魂。」

提督「死者の魂に鞭打ち、再び戦わせるなど、あまりに惨いが…この、再建造出来ると言う点こそ、人間が艦娘の命を軽視する大きな理由となっているんだろうな…」

不知火「…司令…」

提督「再建造した艦娘は、何もかもが違う、全く別の艦娘だと言うのに…!」

不知火「…」

提督「…話が逸れたな。五十鈴は主張派の艦娘では無かったが、艦娘の艦載機の攻撃に対し、私の考案した爆撃回避軌道をとったらしい。それで私を召喚、だと。」

不知火「理解しました。では、不肖、不知火。司令官にお供させて頂きます。」

提督「よろしく頼む。榛名の事もしっかり支えてやってくれ。戦闘は無い筈だから問題無いとは思うが…」

不知火「お任せ下さい。」

ここまで
また深夜

数日後、執務室


提督「不知火以外、全員揃ったか。」

一同「はい!」

提督「よし、では…こちらが代理提督だ。私が不在の間、お前たちの監督役となる。くれぐれも失礼の無いように。」

代理「よろしくお願いします。」

一同「はっ!」

………
……



食堂


足柄「…なーんか、代理、気の弱そうな男だったわね。」

隼鷹「なー。ま、見るからに面倒くさそうなのよりはイイけどさっ!」

雷「ちょっと!声が大きいわよ…」

鳳翔「見た目通り、艦娘と衝突なさらない方なら良いのですけれど…」

足柄「そこはなんとかなるでしょ。あたしが我慢したら。榛名も居ないし。」

隼鷹「…まぁ、以前の上司と問題起こしてたの足柄と榛名だったしな…榛名は悪気無かったけど…」

足柄「あん?」

隼鷹「なんでもございませーん。」

足柄「…はぁぁぁぁぁ。そう言われると、あたし代理とやってけるか不安になってきたわ。我慢できるかしら。」

雷「ちょ、しっかりしなさいよ…」

足柄「提督があたしを甘やかすからよ!提督が悪いわ!」

雷「ええ…」

足柄「代理にポロッとタメ口とか出て、喧嘩になったらどうしましょ。」

雷「本当に勘弁して…提督に迷惑がかかるわ…」

隼鷹「アッハッハ!全く、足柄は…あれ?これもしかしてアタシ酒飲めーー」

鳳翔「ませんよ?」

隼鷹「うっす!!」

雷「提督は明日発つのよね。うーん…他の二人も居なくなって…寂しくなるわねー。」

鳳翔「ほんの少しの間ですよ、雷さん。」

雷「そうね…よし、気合い入れていくわよ!」

鳳翔「その意気ですよ。」ニコニコ

足柄「(…提督達に弁当でも作ってやろうかしら。)」

翌日、夜明け、厨房


足柄「な、無い…全然量が無い…!」

足柄「何故沢山あったはずの、余剰食料がこんなに減ってるのかしら…」

足柄「…何とか余りで作るしかないわね…」

………
……


足柄「…何とか出来たけど…量が…全然無いわ…一人分くらいしか無いわね…見た目も悪いし…でも、仕方無いわよね…うーん。」

数時間後、港


提督「…総出で見送りなど、する必要は…」

雷「まぁまぁ!良いじゃないのよ!代理の許可も取ってあるわ!」

鳳翔「隼鷹さんは、哨戒シフト改変で、現在哨戒中ですけどね。」

足柄「そういう事よ。」

提督「…まぁ、ありがたいがな。」

鳳翔「…はい、これ。皆さんにお弁当、お作りしました。」スッ

雷「えっ」

足柄「(…あー…)」

提督「弁当か。それは嬉しいな。」

不知火「不知火達にも…ですか。」

榛名「ありがとうございます!」

雷「ちょ、鳳翔さん…私も作ったんだけど…」スッ

提督「お前達は打ち合わせをしないのか…まぁ、ありがとう。」

不知火・榛名「ありがとうございます!」

足柄「(そりゃー、鳳翔さんと雷ちゃんが合計6人分も弁当作ったら余剰食料も無くなるわよね…それくらい気づきなさいよ、あたし…はぁ)」

雷・鳳翔「…」

雷・鳳翔「…」チラッ

足柄「…何よ〜。あたしは何もないわよ?」

雷「あら、足柄さんの持ってる風呂敷、お弁当だと思ってたわ。」

足柄「残念ながら、中身はただのゴミよ…」

提督「何、見送りに来てくれただけで充分嬉しいさ。」

榛名「感激です!」

提督「さて、そろそろ高速艇を整備しないとな…榛名と不知火は工廠で艤装を装備してくれ。打ち合わせ通り、お前たちの護衛で中継地点まで行き、そこから先は軍の高速船で本土へ行く。いくら領海内とは言え、万が一もある。気を抜くなよ。」

不知火・榛名「はい!」

提督「よし、足柄と雷と鳳翔、榛名と不知火の艤装装着を手伝ってやってくれ。私は高速艇を確認した後、一度執務室に戻る。」

足柄「あ、あたしちょっとゴミ捨ててくるわね〜。四人は先に行ってて。」テクテク

提督「…(何故足柄は、ゴミを捨てると言いながら、ゴミ集積所ではなくて浜辺の方へ歩いて行くんだ…?)」

………
……



無人の浜辺


足柄「あーあ。あたし何やってんだか。そりゃー皆、同じ事考えるわよね…」テクテク

足柄「あの二人の料理には勝てないわ…あたしの弁当、残り物の寄せ集めだし…」

足柄「ほんと…ダサい。」

足柄「こうなったら、この弁当、思いっきり沖合いまで投げてやるわ!」スッ

足柄「…と・ん・で・kーー」

ガシッ。
足柄が自分の作った弁当を全力で投げようとしたその時。提督の手が足柄の腕を掴んで止めた。

足柄「…居たのね。」

提督「部下が自称ゴミを不法投棄しようとしてたんでな…」

足柄「…ゴミよ。」

提督「ゴミなら俺が回収しておこう。小さいしな。」ゴソゴソ

足柄「…もう、2つも貰ってんじゃないの。…それに、それ一応3人分なんだけど。」

提督「ふむ。なら榛名と不知火には秘密だな。」

足柄「…馬鹿じゃないのかしら。」

提督「悪いな。俺は大食らいなんだ。…ありがとう。」

そう上機嫌で言いながら、提督は足柄の頭にポン、と手を載せ、ワシャワシャと髪を揉んだ。

足柄「ーッ…」

提督「じゃあ、私は執務室に向かう。またな。」

足柄「…早い所帰って来なさいよ。」

提督「なんだ、寂しいのか?」

足柄「は、はぁ?!」

提督は振り向かず、笑いながら手をヒラヒラさせて去っていった。

足柄「…ああもう!ほんと、調子狂うわ、あの人…」

足柄は無意識に手で口元を覆っていた。それは、少し染まった頬を隠す為だろうか。

ここまで
足柄さん好き
行き遅れ?私に下さい

本土とはなんだったのか…

島の沖合、高速艇


提督「やっと出発出来たな…ああ、まずいことをしてしまった気がする…しかし、わかっていて捨てさせる訳にも…」

不知火『こちら不知火、高速艇の両舷に艦娘の配置が完了しました。』

提督「了解。引き続き警戒に当たってくれ。」

不知火『了解。』

提督「さて、このまま北西に進み、一先ずは南方物資集積島で降り、そこから軍の大型高速輸送船に乗って本土だ。」

提督「…気が重いな…」

物資集積島


提督「着いたか。」

榛名「お疲れ様です、提督。」

提督「ああ、護衛ご苦労。お前たちは艤装を装備したまま、3番ドックへ向かってくれ。そこで停留している高速輸送船内に、艤装収容設備がある。そこでまた会おう。」

不知火「了解です。行きましょう、榛名さん。」


………
……



高速輸送船内


提督「無事収容出来たようだな。」

榛名「はい!」

不知火「問題ありませんでした。」

提督「輸送船の出航出来る条件は、領海内では最低2名の艦娘の同行だからな。これで本土へ行ける。」

榛名「それにしても大きな船ですね…きちんとした艤装収容設備があってビックリしました。」

提督「今の時代は艦娘が居ないと安心して海に出れないからな。」

榛名「先程の高速艇では、本土までは難しいのですか?」

提督「高速艇は小型の水雷艇を武装解除して、エンジンを増設しただけだからな…一人で操縦出来る分、安定性、航続性に欠ける。」

榛名「成る程…」

提督「もうすぐ船が出るが…出航してからは、出撃要請には直ぐに答えねばならない。緩み切らないようにな。」

榛名「はい!」

………
……



出航から数時間後、真夜中


提督「…本土か…」

不知火「甲板にいらしたのですか。」

提督「…船内は…な。」

不知火「風邪をひきますよ。」

提督「…ああ。」

不知火「…金剛さん、今の時期はちょうど艤装の整備関係で、本土にいらっしゃるそうです。」

提督「…そうか。それは良かった。榛名を彼女に任せるか…」

不知火「あと、加賀さんと…川内さんも。」

提督「…そうか。加賀は北の所に居たからな…。川内は…弱ったな…夜戦隊が居るのか。」ハァ

不知火「…」

提督「…実は、金剛は…少し、苦手だ…」

不知火「!そうだったのですか。」

提督「嫌いではないんだが…少しな…困る。」

不知火「…とっても慕われてますよね…」

提督「…困る。」

不知火「…私や加賀さんは、苦手ですか?」

提督「…お前達は別だろう。」

不知火「…私は?」

提督「…何が言いたい。」

不知火「…私を側に置き、加賀さんを遠ざける、理由は…それは私がッ!」

提督「…」

不知火「…いえ…失言でした…忘れて下さい…失礼します…」フラフラ

提督「…」


船内、艦娘用部屋


ガチャ、バタン
不知火「…」ボロボロ

榛名「不知火さん、おかえりーー不知火さん?!どうして泣いてるんですか?!」

不知火「うう…ぐすっエグッ」

不知火「加賀さんが…羨ましい…!私の気持ちなんて何も知らずにッ…!うううう…」ボロボロ

榛名「し、不知火さん?大丈夫ですか?て、提督を呼んできますーー」

不知火「やめて!」ガシッ

榛名「っ」

不知火「良いの…」ぐすっ

榛名「…わかり、ました…」

不知火「…」しくしく

榛名「…(…提督、真夜中に何やったんですか…)」

ここまで
次から本土

提督「(…不知火…最近かなり情緒不安定だな…加賀の名前を出していたが…何か言われたのか?)」

提督「…本土に着く前からこれでは…不安材料が増えたな…あいつ、大丈夫か?…少し思い込みが激しいからな…」


翌日、船内


船内放送『間も無く、本土、中央鎮守府に到着。』

提督「いよいよか…不知火、榛名。」

不知火「はい。」

榛名「はい。」

提督「下船処理が終わり次第、お前達の艤装は鎮守府側が工廠まで移動させる。艤装を装備せず、私についてこい。入港手続きだ。」

榛名・不知火「了解。」

提督「…不知火、大丈夫か?昨日の事だが…」

不知火「大丈夫です。ご迷惑をおかけしました。」

提督「…そうか。」

本土、到着ーー


船から舷梯を伝い、三つの影が本土の土を踏んだ。

提督「…よし、行くぞ。」

榛名「ここが、中央鎮守府…全てが大きい…」

不知火「榛名さんは初めてでしたか。」

榛名「はい、私は建造された、東の鎮守府から出た事がありませんでしたから…」

提督「…そろそろ港湾管理局だ。私語は慎め。」

港湾管理局


管理官「…はい、確かに。艦娘の本人確認、完了致しました。ようこそ、本土へ。」

提督「ありがとう。」


榛名「つ、疲れました…。」

不知火「乗船時も本人確認、ありましたよね…なんという二度手間…」

提督「艦娘については慎重なんだよ…この国はな。…さて、次は中央鎮守の長官にご挨拶だな…これより先は一切の私語を禁ずる。良いな。」

不知火・榛名「了解。」

提督「よし、付いて来い。」

中央鎮守府門


提督「私だ。中央長官に取り次いでくれ。」

受付「はっ!確認いたしますので少々お待ちください!」

受付「提督様ですね!お待ちしておりました!こちらの艦娘がご案内させていただきます!」

睦月「…」ぺこり

不知火「…」ぺこり

榛名「…」ぺこり

睦月「…?!」

提督「…どうかしたか?」

睦月「い、いえ!失礼しました…!」

提督「よろしく頼む。」

睦月「(…な、何でここに『魚雷』が居るの?!…怖い)」


執務室


コンコン
睦月「…提督様をお連れ致しました。」

中央長官「入れ。」

提督「失礼致します。私以下、2名の艦娘が本日付で中央鎮守府入り致しましたので、ご報告に上がりました。」

中央長官「うむ。ご苦労。…今回の招集理由はわかっているな?」

提督「はい。」

中央長官「しっかり頼むぞ、英雄。でなければ君を…軍部に残した意味が無い。」

提督「…はっ。精一杯努力させて頂く所存であります。」

榛名「(英雄…?)」

中央長官「励め。細かい予定等は追って通達する。もう行って構わん。」

提督「はい。失礼致します。」
バタン

中央長官「…しかし、連れていた艦娘…あの『魚雷』を手懐けたのか…流石と言わざるを得んな…」

………
……



鎮守府の外


提督「ふぅ〜…一度宿舎に帰るぞ。」

榛名「き、緊張しました…」

不知火「ですね…」

提督「各方面軍長官はまだ到着してないな…いや、確か南方長官は居らっしゃるな。…金剛もそこか。」

榛名「金剛さん、ですか?私の同型艦の?」

提督「そうだ。お前に是非会わせようと思ってな。」

榛名「同型、艦…姉妹、ですよね。」

提督「そうなるな。」

榛名「どんな方なんでしょう…楽しみです…」

提督「…電話もいただいたし、早速ご挨拶に伺うか…二人共、一時間後に宿舎門に来い。」

不知火・榛名「了解です!」

長官宿舎、夕方


榛名「長官宿舎…通常の物よりかなり大きいですね…」

提督「各方面軍長官はよく中央に招集されるからと、長官専用に建てたものらしいからな。」


「まさか…提督と不知火さん?」

提督「?…翔鶴か。久しいな。庭を掃除か?」

翔鶴「本当に、お久しぶりです。…手持ち無沙汰で、ついつい…」

不知火「翔鶴さん、お久しぶりです。」

翔鶴「ええ、とっても。」

提督「掃除中に悪いが、南方長官は今いらっしゃるか?」

翔鶴「はい。こちらにどうぞ。お連れしましょう。」

提督「ありがたい…」

翔鶴「…そういえば、あなたは榛名さん?」

榛名「は、はい!初めまして!」ぺこり

翔鶴「初めまして。」にこ

翔鶴「…」

翔鶴「…提督、少しお話が。ちょっとこちらへ。」

提督「ああ…不知火、榛名、少し待て。」

……


翔鶴「…あの娘、『魚雷』の榛名ですよね?」

提督「…そうだな。」

翔鶴「…大丈夫なのですか?」

提督「…ああ。」

翔鶴「…何故、彼女をここに?」

提督「金剛に、会わせてやってほしい。根は悪い艦娘では無い。」

翔鶴「…あなたが本土まで連れてきているくらいですから、大丈夫なのでしょうけど…うーん…」

提督「…南方長官とは私だけが面会する。榛名は長官と会わせる必要は無い…」

翔鶴「…わかりました。それでいきましょう。」


……

翔鶴「ここが、応接室になります。不知火さんと榛名さんはここでお待ち下さい。」

不知火・榛名「はい。」


南方長官の自室


コンコン
翔鶴「長官、提督をお連れ致しました。」

南「ぉんっ…?!ちょ、ちょっと待て…」

翔鶴「…」

ガチャ
翔鶴「南方長官〜?またお酒ですか〜?」

南「ち、違うんだ…今日は休みだし…ほら、提督くんが来ると言っていたからね、酒の確認だよ確認…な、提督くん?」タラー…

提督「…と言うことだ、翔鶴。」

翔鶴「ダメなものはダメです、南方長官!約束なさったではありませんか…」

南「ぬぅ…」

翔鶴「しっかりなさって下さい…我々は長官のお身体を心配しているのですから…」

南「すまん…」

翔鶴「…では、私は応接室へ戻りますね。くれぐれも、お酒はお止め下さい。」
バタン

南「…すまんな、どうも。」

提督「いえ、仲がよろしいようで、何よりです。」

南「…まぁ、君の影響だな。お陰で艦隊の士気も高い。…だが、やはり艦娘とはある程度の距離は置かねばならんだろうな…これがまた測りづらい。」

提督「心の距離は物差しで測れるものでは有りませんから。難しい所です。」

南「…息子がな。翔鶴に、少し、心を許し過ぎている。まるで嫁だ。そのせいで、翔鶴が私の世話も焼こうとする。」

提督「…」

南「…翔鶴が今ここに居るのはな、前線で大破したからだ。どうにも息子に良い所を見せようと無茶をしたらしいが。」

提督「それはまた…」

南「その結果、艤装が本土の工廠でないと修復不可能な段階まで破壊されてな…あわや轟沈する所だったと聞いて、肝を冷やした。」

提督「…翔鶴が無事で何よりです。」

南「全くだ。あれ程慌てたのは、大反攻戦以来だったよ。…あの時も、息子が世話になっていたな。親子共々、情けない話だが。」

提督「いえ、私の方こそ…」

南「まぁ、昔の話は良い。それよりも…今の話だ。」

提督「はい。」

南「明後日より始まる長官級会議、実際の戦闘記録と戦闘を行った艦娘の話を聴取し、それを軸に対応を検討する事となる。 まぁ、要するに、だ。」

提督「はい。」

南「今宵は飲もう。」

提督「…是非。」

南「よし、息子も呼んでこよう。アレも翔鶴と一緒に帰って来ている。一般宿舎だがな。」

提督「南方長官。その前に少し、金剛をお借りしても宜しいでしょうか。」

南「構わん。」

提督「ありがとうございます。」

長官宿舎、廊下


提督「ここが金剛の部屋か…」

コンコン
提督「金剛は居るか?」

ガチャ
金剛「…その声は…テートク?」

提督「久しいな、金剛。」

金剛「Oh my god...本物のテートクデース!」だきっ

提督「わかったから抱きつくな…」

金剛「でも、どうしてここに?」

提督「ちょっとした会議だ。」

金剛「I see. 丁度改装の時期に会えるとはgood luckデース!」

提督「金剛、早速で悪いんだが…頼みがある。」

金剛「Tell me!」

提督「榛名、わかるか。」

金剛「Hmm... the torpedo.」

提督「そうだ。…榛名は魚雷と呼ばれているかもしれないが、悪い子ではないんだ…少し、会ってやってくれないか。」

金剛「No problem!今どこにいるノー?」

提督「ここの応接室に居るはずだ。」

金剛「Ok, let's go!」

応接室


榛名「(な、なんだか翔鶴さんが私を睨んでる気がします…初対面ですよね…な、何故でしょう…不知火さんは無言ですし…空気が重い…)」

ガチャ!
金剛「Hey 榛名!Nice to meet you!」

榛名「な、ないすとぅ…?!こ、金剛さんですか?!」

金剛「あなたのお姉さん、金剛デース!」だきっ

榛名「は、榛名、感激です!」

金剛「Me, too!」ギュムー

榛名「わ、わ、わ。」

金剛「さ、さ!Sofaでお話しましょう!」

榛名「は、はい!」

提督「( 早速、金剛ワールドが炸裂しているな…あれで、もう少し落ち着けば可愛いんだがな…やれやれ。)」

中央鎮守府、工廠裏


用務員「毎日毎日雑用ばかりだ…今日も整備か…くそ、こんなもの普通の人間にも出来るだろう…何故私が…」ガチャガチャ


睦月「ね、ね、聞いて?!」

如月「どうしたのよ〜?」


用務員「(…艦娘同士の会話か…)」カチャカチャ


睦月「魚雷が来たのよ!ここに!しかもあの提督と一緒に!」

如月「…魚雷?あの榛名?と、あの提督?…」

睦月「そうそう!」

如月「怖いわね…」

睦月「でしょ?!ほんともう、案内してる時後ろから殴られないか、気が気でなかったわ…」


用務員「…榛名と、あの、提督…だと?…」ガタッ

用務員「これは…確認する必要がある…」

ここまで
ゆっくり進行です

話はまだまだ終わりませんが、是非お付き合いを〜

応接室


金剛「私は中央で生まれた後、色んな所を渡り歩いて、最終的に南方鎮守府勤務になったヨ!」

榛名「そうだったのですね!羨ましいです……」

金剛「特に北方拡張作戦の時はヤバかったネー!あれは確か……」

提督「(結局金剛が延々と喋ってるな……まぁ、榛名も楽しそうだから良いか……)」

不知火「……そういえば、そろそろ太郎さんがいらすとかで、翔鶴さんが外へ出てましたよ。」

提督「そうか。(……太郎君。南方長官の息子さんだな。)」

ガチャ
太郎「……提督さん!お久しぶりです!」

提督「太郎君。久しぶりだな」

太郎「いえ、本当に!」

南方長官の自室


南「それでは、久方振りの再会に乾杯といこうか。まずはビールで良いだろう……乾杯!」

太郎・提督「乾杯!」

チン

南「あぁ……このために生きているな……」グビー

太郎「そういえば、南方長官」

南「プライベートだ。南方長官は止めてくれ」

太郎「……父さん、翔鶴が、あまり飲まないでくれと……」

南「……全く。それよりも自分の身を案じたらどうなんだ、あの世話焼きは……」

太郎「そう言わないでやってくれよ……」

提督「そういえば、太郎君の艦隊は最近、活躍していたそうだな。機関紙で君の姿をよく見かけたよ」

太郎「本当ですか!いやぁ……提督さんにそう言われると、こう……嬉しいですね」

提督「ははは。なんだそれは」

ワイワイ

コンコン
翔鶴「失礼します」

南「……酒を隠せっ」さっ

提督「……」さっ

太郎「……」さっ

南「……おほん。入ってくれ。」

ガチャ
翔鶴「失礼します。……隠さなくても、大丈夫ですよ。簡単な料理をお作りしました」コト

太郎「あ、ありがとう……」

翔鶴「……胃に何も入れずに飲むと、いけませんから……控えめにお願いしますね」

太郎「あ、ああ……」

翔鶴「では、私はこれで……」
バタン

南「……お見通し、か」

太郎「……美味い」パク

提督「……まるで良く出来た嫁だな」

太郎「自慢の艦娘です」

提督「そうか。……なぁ、太郎君」

太郎「はい?」

提督「翔鶴と恋仲にあるのなら、絶対に沈めるな」

太郎「……は、い」

提督「俺と同じ轍は踏むなよ」

太郎「……提督さんは、ミスをした訳では……!」

提督「何事も結果が全てだ。……慎重に慎重を重ねても、間違いは起こる。そこで、どう対処するかだ」

太郎「……っ」

南「……まぁ、折角の料理だ。今のうちに食おう!」

提督「はい」

応接室


ワイワイ

榛名「そういえば、提督は何故皆様とお知り合いに?」

金剛「もう!金剛で良いネ!姉妹なんだから!」

榛名「い、いえ、そんな……」

金剛「榛名は真面目ネー……テートクが南方長官の所に居候し始めたのは、大反攻戦の後からデース。家もなくなってしまったテートクを南方長官は拾ったのデース」

榛名「え……家が無くなってしまったのですか……?」

金剛「……テートクから何も聞いてないノー?」

榛名「……はい」

金剛「Oh……(これは……私が話しても良いものなのかしら)」

榛名「……やっぱり、私は信頼されていないのでしょうか……」

金剛「No, 榛名。私の考えが正しければ、テートクはあなたの事をとても考えてマース」

榛名「え……」

金剛「提督が過去をお話しにならないのには、それなりに理由がありますヨ。時期が来たらきっと、教えてくれるはずネ!」

榛名「そう、ですか」

金剛「(テートクは多分、今の不安定な榛名に自分の過去を語りたくないだけ。自己を確立してからなら、きっと教えてくれるはずよ。)……大丈夫、榛名!私にはわかりますヨ!あなたはテートクの大切デース!」

榛名「た、大切……」

不知火「そうですよ、榛名さん。あなたは大事にされ過ぎです!羨ましい!」グビー!

金剛「Oh……不知火がいつの間にか酒を飲んでマース……」

榛名「不知火さんまで……」

不知火「自信を持ちなさい、自信を!」

榛名「は、はい……えへへ」

不知火「……」グビー!

金剛「Um…… Are you ok……?」

不知火「不知火は大丈夫です!」グビー!

金剛「Oh……」

ガチャ
翔鶴「あら、こちらでも酒盛りをしていたのですね……私もよろしいですか?」

不知火「……どぞ」スッ

翔鶴「ありがとうございます」ニコリ

しばらく後、応接室


ガチャ
提督「おい、不知火、榛名。帰る……ぞ……」

不知火「良いですか!提督はとにかくかっこいいんです!」

榛名「そうです!」

金剛「Yes!」

翔鶴「た、太郎さんだってかっこいいんですっ!」

不知火「あんな若造……」フッ

翔鶴「て、提督だってお年はそんなに変わらないじゃないですかっ!」

榛名「提督はかっこいいんですー!」グビー!

金剛「Yes!」グビー!

翔鶴「金剛!何故あなたまで提督側に……!」

金剛「テートクは優しいしネー!太郎より大人ネ!忘れもしないあの夜……」

榛名「よ、夜?!何したんですか?!」

金剛「Oops 口が滑ったネ……」

翔鶴「金剛!じ、上官を呼び捨てとは!許せませんっ」

金剛「翔鶴が怒ったヨ!ひえー!」

翔鶴「待ちなさいっ!」

不知火「いけー!やれー!」

提督「……」ハァ……

太郎「あれ、ドアの前で何してるんですか、提督さん?……うわぁ……」

提督「早い所連れて帰る……おい、不知火、榛名、行くぞ!」

榛名「あ!提督です!えへへ〜」すりすり

不知火「ちょ、榛名さん!狡いですよ!」

金剛「私もテートクと帰るネ!」

翔鶴「金剛!いい加減になさい!」

太郎「まぁまぁ、翔鶴……落ち着いて」

翔鶴「た、太郎さん……!お恥ずかしいところを……」

金剛「ヒューヒュー」

翔鶴「〜〜……!!金剛ー!!」

金剛「おわぁ?!」

提督「バカばっかりだな……翔鶴、南方長官はお休みになった。後の事は頼む」

翔鶴「は、はい!お任せ下さい」

提督「……お前と太郎、悪くない組み合わせだと思うぞ」

翔鶴「ふぇ?!」

提督「……翔鶴。戦場からどんな手を使ってでも生きて帰ってこい。どんな手でもだ。太郎。それを受け入れてやれ。良いな」

翔鶴・太郎「……はい」

提督「よし、では俺はそろそろ帰る。おい、榛名と不知火と金剛!腕から離れろ!自分で歩け!」

榛名「やです!」

不知火「やです!」

金剛「やです!」

提督「……」ベリベリッ

榛名「ああっ!」

不知火「剥がされてしまいました……」

金剛「Noooo!」

提督「お前ら……飲み過ぎだ……ほら、行くぞ。金剛は着いてくるな!」

宿舎の外


提督「一人で歩けんのか……」

榛名「えへへー」

不知火「不知火に何か落ち度でも?」

提督「全く……それはそうと榛名、随分と金剛と仲が良くなったようだな」

榛名「えへへ……本当に優しい方でした……お話も面白いし……」

提督「飲んでるとはいえ、ここまで上機嫌なお前も珍しいな。(……本土に連れてきた甲斐があったか?)」

榛名「また、お話したいです」

提督「そうだな。また、行こうか」

榛名「はい!」

………
……



茂みの中


用務員「やはり、あの榛名と提督……!」

用務員「……まずいのではないか……?早急に接触せねば……」

ここまで

ちょい書式見やすくしてみました

翌日


北提「本土に到着して、やっと落ち着いた、ね」

日向「うむ……中々疲れたな……」

北提「中央への挨拶は済ませたし……皆には明日からの会議に備えて休んで貰いたいな」

龍驤「やたっ!」

響「……そいえば、中央って間宮羊羹とか食べれるんだっけ」

龍驤「ほんまかいな」

瑞鶴「……」グー

加賀「……ちょっと瑞鶴あなた、涎が……」

響「どこかにお店、あるかな……」

龍驤「行くか?」

北提「行っておいで。僕は方面軍長官に挨拶しないと」

日向「む、お供しよう」

加賀「では、私も。瑞鶴も来なさい」

瑞鶴「はいはい……お腹すいた……」

あ、文頭抜けてました!ごめんなさいー

翌日…北の基地よりの艦隊、本土に到着

中央鎮守府敷地内


響「ここどこだ……」

龍驤「飛び出してきたのは良いものの……あかん……迷った……」

響「さっき艦娘区画って書いてあったし、ここら辺にあると思うんだけど……」

天龍「おう、駆逐艦が二人、こんなとこで何やってんだ?」

響「……おお?」

龍驤「……駆逐艦が二人……?もしかしてウチらの事か?」

天龍「お前ら以外に誰も居ねえだろ」

龍驤「……ウチは軽空ーー響「そだね。ところで、あなたはこの鎮守府の艦娘?」

天龍「んー……まあ、そうなるな……なんだ、迷子か?別の所から来たのか?」

響「そんな感じなんだ。間宮さんのお店、探してて……」

天龍「甘味処か。確かレクリエーション地区にあった筈だ……俺が連れてってやろうか?」

響「良いのかい?」

天龍「おう、訓練上がりだからな。風呂に行くついでだ」

響「ありがとう」

天龍「良いってことよ」

龍驤「……」

………
……



天龍「へぇ、じゃあお前らが北の!」

響「うん」

天龍「北提って優秀で優しくてイケメンなんだろ?中央でも噂になってたぜ」

響「へぇ、そうなんだ」

龍驤「(加賀さんの力も大きいねんけどな……)」

天龍「うちの提督はガサツだからなぁ……羨ましい」

響「天龍さんはどこの艦隊なの?」

天龍「今は……夜戦隊だな」

龍驤「いっ……?!夜戦隊て、あの、泣く子も黙るってやつ?」

天龍「巷じゃそう呼ばれることもあるみたいだな……残念だけどよ」

龍驤「や、なんかゴメンなさい……」

天龍「アハハ。いい、いい。夜戦隊は全員頭おかしいからな。仕方ねえよ」

龍驤「あ、あはは……(夜戦隊……川内を筆頭とする夜戦専門部隊……えげつないやり方で有名やけど……この人は良い人なんかな?)」

天龍「……ほら、ここがその店だ」

響「わ、ほんとだ。スパシーバ!」

天龍「あいよ。ここらへんのレクリエーション地区は他にも色々あるし、見て回ると楽しいかもな。じゃ、俺はこれで」バイバイ

龍驤「ありがとさーん!」

響「さ、入ろ入ろ!」

長官宿舎


北提「さて、着いたね。北方長官もここに居るはずなんだけど……アポは取ってあるし、中に入ろうか」

日向「警備が緩いんだな」

北提「そうでもないよ。さっき入ってきた門以外に長官宿舎に入る道は無いし、そこは常に人が居るからね」

日向「そんなものか」

北提「うん……あと、ここには南方長官と東方長官もいらっしゃるから、失礼の無いようにね。ご挨拶するのは北方長官だけだけど」

瑞鶴「わかってるわよ」

北提「あと、これ以降は絶対に口を開かないでね。何があっても」

加賀「わかっているわ」

北提「よし、じゃあ行こうか」

長官宿舎、廊下


翔鶴「〜♪」サッサッ

翔鶴「掃除は自分の心も洗われますね……」フキフキ

どたどた

翔鶴「あら?お客さんかしら……」

北提「……」ペコ

翔鶴「……(この人は確か北提……忌々しい北方長官の部下ね……ああ、道を譲らないと……)」ペコ

ゾロゾロ

瑞鶴「……!」

翔鶴「……(瑞鶴。姉妹艦ではあるけれど……艦娘としては、建造地もバラバラだったわね……特に接点も無かったし……)」ニコ

瑞鶴「……」ペコ

北方長官の自室


コンコン
北提「失礼します。北提です」

北方長官「入りたまえ」

ガチャ
北提「ご無沙汰しております、長官」

日向・瑞鶴・加賀「……」ペコ

北方長官「よく来てくれた、北のエースとその艦娘達よ。君の活躍ぶりは私の耳にもよく入る」

北提「光栄です」

北方長官「今回はわざわざ本土まで戻してすまないね。ただ、深海棲艦化した艦娘はかなり大きな問題だ。会議ではしっかり頼むよ」

北提「心得ております」

北方長官「……今回は、主張派の生き残りが召喚されている。」

加賀「(ーー!)」

北方長官「そして、昔あのボンクラを庇った南の連中は主張派に傾きつつある。全く忌々しいな。何故過ちを繰り返そうとするのか」

北提「ごもっともです」

北方長官「……艦娘は武器だ。道具だ。決して人間では無い。何故それがわからんのか。主張派のお陰でどれ程の不利益を被る事になったか……君も、知っているだろう?」

北提「……はい」

北方長官「……南の連中には気をつけたまえ。明日の会議には遅れる事の無いようにな。……大丈夫だ、会議が君の不利益になるような事は無い。今日は休んで英気を養ってくれ」

北提「ありがとうございます。では、失礼致します」

日向・瑞鶴・加賀「……」ペコ
ガチャ、バタン

………
……



長官宿舎、庭


北提「疲れた……」

日向「しかし、いつも思うが……あの方はよく、艦娘を前にして武器だの道具だの言えるもんだな」

加賀「艦娘の感情を抑圧しようという意図よ。保守派では良くあることよ。気にする事は無いわ」

瑞鶴「艦娘に抑圧的で、艦娘側は鬱憤たまらないのかしら……」

加賀「北方長官は少し……厳しい方ですから。前線に居る提督はもう少し艦娘との距離が近い筈よ。北提程ではないけれど。」

北提「……」

加賀「それに、艦娘のストレスの捌け口として、響や龍驤が行った甘味処を始めとした施設が幾つかあるわ。確かレクリエーション地区だったかしらね……」

瑞鶴「そうやってストレス解消するのかぁ」

瑞鶴「……と言うわけで、食堂に行きましょう!お腹空いたわ!」

北提「やれやれ、そうしようか」

加賀「(……しかし、さっきの北方長官の話……提督が、ここに居るのかしら?)」

北提「(加賀さん……)」

ゾロゾロ

長官宿舎、門


北提「さて、長官宿舎の敷地から出たね……食堂はどっちだっけ……?」

川内「そっちだよ」

北提「……あ、ありがとう。君は……?」

川内「アンタが北提?」

北提「あ、ああ……」

日向「……貴様、口の利き方にーー」ムッ

加賀「待ちなさい、日向」

川内「アタシは夜戦隊の川内だ。ちょーっと加賀に用事があるんでね、門の前で待たせて貰ったよ」

加賀「川内……久しぶりね」

川内「うん。久しぶり、じゃじゃ馬」

加賀「……私をその名で呼ばないで欲しいのだけれど」

川内「あれ、怒んないんだ。随分と丸くなったもんだね。アハハ」

加賀「……何の用?」

川内「長官宿舎の中にさぁ、提督居なかった?」

加賀「……やはり、本土に提督が居るのね……」

川内「あれ?知らなかったんだ?あんなに提督提督言ってたのに。アハハ」

加賀「……自分で見に行けば良いんでないかしら?」

川内「あー。アタシさぁ、金剛と翔鶴に死ぬ程嫌われてて、長官宿舎に入れないんだよねー」

加賀「……自業自得ね」

川内「そうかな?アハッ♪……んで、どうなの?居たの?」

加賀「居たと言ったら?」

川内「ここで待つよ」

加賀「……そう。……恐らく居なかったわ」

川内「そっかぁ〜残念!また明日別のとこ当たろうかな!」

加賀「その方が建設的ね」

川内「ありがとーじゃじゃ馬!アタシはもう行くよ!ごめんね、北提。時間取らせて!じゃあね!」てこてこ

加賀「……」

瑞鶴「何あいつ!ムカつくー!」

日向「……随分と失礼な奴だったな。同僚か?加賀」

加賀「本当に昔の、ね」

日向「全く……忠告ぐらいさせてくれ、加賀」

加賀「目を付けられるような事はしない方が良いわ。アレは少し……頭がおかしいから」

日向「……」むすっ

北提「ま、まぁ、とりあえず、食堂に行こうか」

ここまで

深夜あたりにまた投下します
そろそろ色々起こりますねぇ

中央鎮守府敷地内


北提「参ったな……まさか食堂が艦娘と人間で全く違う場所にあるとは……」

加賀「ここには、艦娘は入る事が出来ないわね。入り口で、中の人間の秘書艦と思しき艦娘が数人待っている様だし」

北提「うーん……艦娘用の食堂に僕は入れないだろうし……ここで一旦解散しようか。皆は艦娘の食堂に行ってくれて構わないよ」

加賀「……あなたの体裁の為に、秘書艦は残った方が良いと思うのだけれど」

北提「僕は誰か一人を秘書艦に決めてないからなぁ……書類の類は時間があったから一人で処理してたし」

日向「ふむ、では私が残ろう。あまり腹も減っていないんだ」

瑞鶴「あ、あたしもーー」

ぐぅぅぅぅ

瑞鶴「あ、あうう……」

日向「はっはっは。加賀と飯にしてこい」

北提「気持ちだけ、受け取っておくよ。いっておいで、瑞鶴」

瑞鶴「はいぃ……」

………
……



甘味処『間宮』


瑞鶴「……で、何故甘味処なのかしら?」

加賀「ここは食事も出してくれるわ。値は張るけれど、味は確かよ。休暇も兼ねているのだから、たまには贅沢も良いと思うのだけれど。それに、響たちも居るはずよ」

瑞鶴「そ、そうね!なんでも良いわよもう!お腹が空いたの!」

加賀「入りましょう」

カランカラン

間宮「いらっしゃいませ〜」

響「あ、加賀さん。こっちおいでよ」

龍驤「ほんまや。おいーっす」もしゃもしゃ

瑞鶴「パフェ!パフェ!」

加賀「煩いわね……ご免下さい、間宮さん。注文を……」

………
……



瑞鶴「おいしい!おいしい!」パクパク

加賀「……」もぐもぐ

響「……二人とも凄い食べるなぁ……」

龍驤「……ビックリやで、ほんまに……値段もビックリやで……」チラッ

カランカラン
不知火「……」

間宮「いらっしゃいませ〜」

加賀「!……不知火」

不知火「あ……どうも」ペコ

加賀「あなたがここに居ると言う事は、やはり提督もいらっしゃるのね」

不知火「……そう、ですね。加賀さんは北の方と一緒ですか」

加賀「そうね」

不知火「……では」

響「加賀さんのお知り合いなら、ここで一緒にどうだい?」

不知火「え……いえ、不知火は……」

加賀「折角だし、どうかしら?」

不知火「……わかり、ました」

………
……



瑞鶴「……しあわせ……」

加賀「もう少し落ち着いたらどうなのかしら……」

瑞鶴「何よ、加賀さんだって浮ついてるじゃない」

加賀「なんのことかしら……」

響「何かあったのかい?」

瑞鶴「加賀さんの旦那さんが本土にいるんだって!」

加賀「……ちょっと……」てれ

龍驤「へぇ……ほな、会いに行くんか?」

加賀「旦那様では無いのだけれど……そのつもりよ」コホン

不知火「……」もぐもぐ

響「そいえば、不知火さんは今は?」

不知火「……その提督の元に居ます」

龍驤「おお?……加賀と不知火はもともと一緒やったんやんな?」

加賀「そうよ……」ハァ

不知火「……」

瑞鶴「……もーしかーしてー?加賀さんポイッてされちゃったのー?」

龍驤「うわこいつ言いよったわ……」

響「うわー……」

加賀「……」イラッ

瑞鶴「……ごめん……」

不知火「……そんな事は、ありませんよ」

加賀「どうかしらね……」

不知火「そんな事は無いですって」

加賀「……」

不知火「……」

龍驤「(瑞鶴のせいで険悪になったやんけ……なんやねんこの空気……)」

瑞鶴「(うう……)」

響「ほ、ほら!不知火さんが大丈夫と言ってるのだから、大丈夫だよ!ね、加賀さん!」

加賀「……」

不知火「私は加賀さんの方が、羨ましいくらいですよ」

加賀「……あら?ならば、変わってほしいのだけれど」

不知火「……」

加賀「……チッ」イライラ

瑞鶴「……ほんとごめん!私が不用意な発言をしました!だから、喧嘩、しないで……」

不知火「……いえ、私こそ軽率でした。……ここらで、失礼しますね。お代は置いておきます」ガタッ

加賀「……」

響「あ……ごめんね!」

不知火「いえ……では」
カランカラン

不知火「(おとなしくなったかと思ってましたが……相変わらず、気性の荒い人。いつもは隠しているけれど……あぁ、苛々する……)」

………
……



瑞鶴「ごめん!」

響「瑞鶴……」

瑞鶴「ほんと、ごめん……調子に乗ってた……」

加賀「……」

龍驤「まぁ、向こうさんもなんや雰囲気悪かったしな……」

瑞鶴「うん……加賀さん、ごめんなさい……」

加賀「……発言には気を付けなさい」

瑞鶴「はい……」

加賀「(……ああ、苛々する。川内と言い、不知火と言い……私が提督を慕っているのを知っている癖に……)」

カランカラン
日向「おーい、お前たち。迎えに来たぞ。北提が待ってる」

響「……ん、いこっか」

ここまで

本土は書きたいことが多くて、描写不足が目立ちます、ごめんなさいorz

同じ頃……中央鎮守府、機密資料室


管理官「……はい、乙種資料閲覧許可証の確認が完了致しました。一名の秘書艦のみ随伴が許可されています」

提督「承知している。行くぞ、榛名」

榛名「はい」

提督「(北提の戦闘記録を確認しておくか……)」

榛名「(機密資料室……!こ、これは……司令官が最も信頼する秘書艦のみを随伴させると言う場所……榛名なんかが付いて行って大丈夫でしょうか……)」

提督「榛名、5号ラックから北の作戦計画書を引っ張り出してきてくれ。北提の着任当初からで頼む。私は向こうで結果報告書を読む」

榛名「は、はい!」

………
……



榛名「どうぞ。これで全てです」ドサ

提督「(五十鈴が出た戦闘の記録は無いな……もう一つ上、甲種機密に指定されているか……)」

提督「ありがとう、見ていくとする……榛名、次は作戦行動中の録画映像を取って来てくれるか」

榛名「お任せ下さい」

………
……



提督「(指揮は教科書通りだな……想定外の事態も起こらず、安定しているように見えるが……)」パラパラ

提督「(所々計画書と報告書で食い違いがあるのは、艦娘の現場指揮か?)」

榛名「……提督!……も、持ってきました……」ドチャ!

提督「凄まじい重さだな……ご苦労。少し休んでくれ」

榛名「いえ、榛名は大丈夫です!」

提督「そうか……(相変わらず五十鈴の物はナシ、か。……とりあえず気になった部分から、確認していくか)」

………
……



数時間後


提督「(特筆すべき点は無し、か。計画書や報告書、映像からは北提が艦娘といわゆる『不適切』な関係にあると露見はしないだろう……)」

提督「(それよりも……思ったより、加賀が過保護だ。艦隊の被害は出ていないが、北提の成長を阻害している様にも見える……)」うーむ

提督「(作戦は問題無いが、想定外の事態に、加賀が現場指揮で全て対応してしまっているな……友軍の轟沈を恐れての事だろうが)」

提督「(北提……提督としてのポテンシャル、艦隊への思いやりがあると思っての事だったが……余計な世話になったか)」

提督「……よし、北提のデータの把握は出来たな。ご苦労、榛名」

榛名「いえ、大丈夫です!」

提督「もう夕飯の時間だな……外に出るか」

榛名「はい!」

榛名「(……榛名、秘書艦出来てます、よね!)」

………
……



中央鎮守府、資料室の外


提督「うーん……少し疲れたな……」

榛名「お疲れ様です」

提督「一度宿舎に戻る。お前は不知火と共に食堂へ行くと良い。私も飯にする」

榛名「はい、わかりました……でも、中央鎮守府では人間と艦娘が一緒に食事出来ないなんて……やっぱり少し、不思議です。いつも提督と一緒でしたから……」

提督「郷に入らば郷に従え。そう言うものだ」

榛名「……はい」

提督「お前が気を落とす必要は無いさ。私個人はお前を信用している。人間のしがらみだ。あまり深く考えるな」よしよし

榛名「はい!」

金剛「それに、部屋に食事を頼めば一緒に食べられない訳では無いしネ!」

提督「おっと、金剛。お前はどこから……」

金剛「食堂に行く途中で偶然通りかかったネ!……榛名が羨ましいヨー。テートクは、大事な艦娘しか優しく頭を撫でてくれないネ……」

提督「……」

金剛「むー!ほら、私も撫でテ!」

提督「……」わしゃわしゃ

金剛「No!雑デース!」

榛名「……ふふ」

提督「なんだ、何か面白かったか?」

榛名「いえ……なんだか、嬉しくて」

提督「……そうか」

金剛「……むむむ」

榛名「(……榛名は、大切にされている……本土に来る少し前から、ようやく気付けた気がします……その思いに応えられるように、榛名、頑張りますね)」

金剛「……テートク!榛名はあげませんヨ!榛名は金剛の大事な妹デース!」

榛名「へ?」

金剛「このままでは榛名がテートクに取られそうデース!」

榛名「は、榛名は提督の物ですから!」

金剛「What?!」

榛名「い、いえ、その、変な意味では無くてですね……!」

提督「……ほら、お前達が漫才をしている間に宿舎に着いたぞ。不知火を呼んで、飯に行ってこい」

榛名「は、はい!呼んできます!(……そういえば、資料室は艦娘が1人しか入れないという事で、不知火さんはお昼の間、お一人でしたが……寂しそうでしたね……大丈夫でしょうか?)」トテテテ

………
……



金剛「……She's gone. これで良かったノ?」

提督「助かる。まずは自己肯定感を強めて貰いたい所だ。自分が大切にされていると感じる事が、自己肯定への第一歩だと、俺は考える」

金剛「ん……how about my feeling?」

提督「……Got no idea」

金剛「Haha, such a liar……私はもう行くネ。Farewell!」ダダダ

提督「……」

ここまで

また夕方あたり

………
……



金剛「……こんなところで何してるノ」

川内「アハ、見つかってたんだ?」

金剛「最初からネ」

川内「って事は、アタシが提督と話すのを防ぐ為にわざわざ出てきたの?暇な人だなぁ」

金剛「……Be gone.」

川内「せっかく提督とお話出来ると思ったんだけどなぁ……今喧嘩したら提督とお話出来なくなるしなぁ……」

金剛「……あなたはテートクを苦しめる。消えなさい」

川内「アハハ。そんな事ないよ。提督はアタシを大事にしてくれた……してくれてる……。今一緒に居れないのは周りが悪いんだ……金剛みたいな奴がさぁ。邪魔しないでよ……」

金剛「……freak……」

川内「……なんか、いつもよりウザいなぁ金剛……榛名と提督見て嫉妬しちゃったの?」

金剛「……」

川内「あ、図星だ図星だ!アハハ♪」

金剛「お前と一緒にするナ、クレイジーサイコ軽巡」

川内「アハハハ……うん……そろそろ殺すぞ色ボケ戦艦」

金剛「Ooh. You are sooooooo dead……!」

張り詰めた緊張の糸が切れる、その時。

神通「川内」

川内「……神通」

神通「帰りますよ」

川内「……わかった。……命拾いしたね、金剛」

金剛「Hell no.」

川内「……」ザッザッザッ……

神通「……姉がご迷惑をお掛けしました」ぺこり

金剛「なんとかしてヨ……そっちも大変じゃないノ?川内が提督を追い回してて」

神通「……さぁ、どうでしょうか。……私はここで失礼します」

金剛「……ほんと、夜戦隊って嫌いネ。……テートクに言うべきカナ……テートク、川内には特に甘いから……ウーン」

………
……



川内「うーん……金剛もウザイけど、榛名もウザイなぁ……魚雷のくせに提督とイチャイチャだもんなぁ」

川内「……そういえば、用務員のアイツ……榛名と話がしたいって言ってたなぁ……」

川内「よし、川内様が引き合わせてあげよう……榛名がぶっ壊れて提督は悲しむだろうけど、そこをアタシが慰めてあげよっと!ついでに加賀と不知火もなんとかできたらいいなぁ」ケラケラ

翌日、宿舎、提督の部屋


コンコン
榛名「提督、おはようございます。」

提督「ああ、おはよう。入れ」

ガチャ
榛名「失礼します」

不知火「おはようございます」

提督「不知火も榛名と一緒か。おはよう……さて、今日の話をしようか」

榛名「はい」

提督「この後、私は会議に出席する事になる。この会議は艦娘の参加は禁止のため、その間、不知火と榛名には共に行動してもらう。……と言っても、特に仕事は無い。恐らく明日からは忙しくなるが……二人で適当に過ごしてくれ」

榛名「はい!」

提督「それと……榛名、少し外してくれ」

榛名「わかりました」
ガチャ

提督「不知火。榛名から目を離さぬ様に。……特に何もないとは思うが、あまり長時間の外出は控えるようにな」

不知火「はい。お任せ下さい」

提督「……お前には苦労ばかりかけるな。すまない」

不知火「や、やめて下さい!不知火はそんな……」

提督「損な役回りばかりだが……なんとか、頼む」

不知火「……大丈夫です。不知火に、お任せ下さい」

提督「……助かる」

………
……



宿舎、玄関


提督「では、行ってくる。休暇のようなものだ。ゆっくりしてくれ」

不知火「はい」

榛名「はい!」

不知火「さて、我々はどうしましょうか」

榛名「榛名は少し、不知火さんが行ったという甘味処が気になります」

不知火「もう少しでお昼ですし……行きましょうか。(甘味処くらいなら、大丈夫でしょう)」

榛名「はい!」

艦娘区画、レクリエーション地区


榛名「艦娘専用地区……こんなところが有るんですね!」テクテク

不知火「遠隔監視はされていますが、少し気楽ですね。中央では数少ない、艦娘が自分の意思で動ける地区ですから。」テクテク

榛名「宿舎も提督と同じで、その提督の監視下に置かれなければならない、と言うのには驚きましたね」

不知火「基本的に大きい鎮守府は、そういうのに厳しいですから。あ、そこ曲がりましょう」

榛名「はい」

不知火「……最近、調子はどうですか」

榛名「えと……」

不知火「正直に。大丈夫ですよ」

榛名「……提督の思いが、やっとわかった気がします。今まで、周りが見えてなかったような……」

不知火「(……金剛さんの影響か、いたく前向きですね。いい傾向です。)」

不知火「それは良かったです!それに、秘書艦としての技能の方も、とても上達したと思いますよ」

榛名「そうですか?えへへ」

不知火「はい。(……今はまだ不安定でも、前向きに変わっていける。そんなあなたが羨ましいです)……あ、ここを左ですねーー」

川内「やあ不知火」

不知火「ッーー!!」

川内「『魚雷』借りるね?」

榛名「ッ」

不知火「……!榛名さんに触れるな、川内……!」

川内「なんだよ、連れないなぁ……魚雷がダメなら、不知火でも良いや。提督について話が有るんだけど?」

榛名「(魚雷……私が、かつて、そう、呼ばれていた事は、知っています……)」

不知火「魚雷じゃない、榛名です!撤回しろ……!」

川内「あ、そ。ゴメンゴメン。……で、ちょっと良い?」

不知火「(ここで無視しても付きまとわれるだろう……こいつをこれ以上榛名さんに近づけたくない……)……向こうで、聞きましょう。榛名さん、ここから動かないで下さいね」

榛名「は、はい」

………
……



川内「アハハ、魚雷、面白いくらい動揺してたね」

不知火「御託は要らない。要件だけを言って下さい!」

川内「うーん、じゃあ提督に会いたいんだけど、彼いついるの?」

不知火「教える訳がありますかっ!」

川内「どうして皆、アタシと提督を引き離したがるの?こんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこんなに提督を愛してるのに!」

不知火「おぞましい……あなたは危険なんですよ、川内!」

川内「はぁ?」

不知火「提督に愛される為に周りを排除するような、危険な艦娘を提督の側に置けると?」

川内「アハハ。ギャグ?」

不知火「何をーー」

川内「愛宕も赤城も死んだ。霧島も那智も死んだ。大反攻戦で提督と最後まで戦ってたのはアタシだけ。そして今加賀は飛ばされて、側に残ったのは、自分に自信のない駆逐艦一人。アタシがそいつらを排除?勝手に淘汰されてるじゃんか」

不知火「私が、役立たずでも……他は違う!あれは、皆が犠牲になって……!」

川内「違わないよ。あいつらは死んだんだ」

不知火「川内……お前はいつからそんな屑に……!」

川内「……まぁ、加賀。アレは強かな女だね。アタシ、あいつだけは怖いよ。お前と違ってね」

不知火「……私が役立たずだとしても、あなたが提督と会う理由にはならない!」

川内「……そっか。とりあえず、会わせる気が無いのならもう良いや。時間の無駄だしね?」ケラケラ

不知火「……では、私は行きますから。この事は提督に報告させていただきます」

川内「どーぞどーぞ。そしたら提督が会ってくれるかもしれないしね。……てかさ、提督って、不知火が思ってるよりもずーっと計算高いと思うよ?なんで、不知火が提督と一緒に居られるか、もちょっと考えたら?」

不知火「……煩い……(……そんな事、自分でも思ってますよ……!……とにかく、ここを離れなければ……榛名さんの元へ戻らないと……)」



不知火「……え?」

不知火「榛名さんが、居ない」

………
……



榛名は、怯えていた。
己の手を引く存在に。

「嘘です……嘘です……」

「黙れ、榛名。お前にはきちんと聞かねば為らぬ事がある」

己の手を引く存在は。
艤装整備の用務員の格好をしていた。

「嫌……離して……!」

少し前、不知火と川内が激しく口論しているのを遠巻きに心配しながら眺めていた時、榛名は突然腕を掴まれた。
そして、驚く榛名が見た顔は……罷免された筈の、黒提督の、それだった。

「……貴様。まさか今の上司にも、失礼な事をしているのではあるまいな……」

「してない……提督は榛名を大事にして下さいます!あなたとは違うんです!」

「貴様ぁ!」

榛名は、道端の空き倉庫に無理矢理連れ込まれた。
鍵を掛ける黒提督。

「……提督?提督だと?!様をつけんかぁぁぁぁ!」

黒提督の容赦無い平手打ちが榛名を襲った。

「痛い……ううううう……痛いです……助けて、提督……」

「だから提督『様』だろうが!」

パン!と乾いた音を立てて、黒提督の手が再び榛名を叩いた。

「あああ……この役立たずめ……やはり、恐れていた事を……」

「うえええ……痛い、痛いです……ううううう……ひぐっ……えぐっ……提督……うううう……」

「……榛名……お前は……本当に愚図だな……。私は情けない……何故、魚雷のように突っ込むしか能のないお前が、提督様の元で秘書艦をしているのかと……」

「榛名は違います……えぐっ……役立たずじゃないって提督は……ひぐっ……言って下さいます……」

「この役立たずにそんな言葉を掛けるとは……やはり、なんと寛大な方なんだ……どうお詫びしたら良いか……糞が……!」

「ひぃっ……どうして、どうしてこんな事するんですか!もう、もう黒提督は私の上司じゃないのに!」

顔を鼻血と涙でぐしゃぐしゃにしながら、榛名は問うた。

「……何故、何故だと?そんなものは決まっているだろう?それは、お前の言う提督様がーー」

「ーーえ」

榛名の、時が止まった

一方ーー


同時刻、中央鎮守府、大会議室


会議室には7人の男が居た。
1人は中央長官。
1人は北方長官。
1人は南方長官。
1人は東方長官。
1人は西方長官。
1人は北提。
そして、最後は……提督。

中央長官「……時間だ、緊急作戦会議を始めようか」

中央長官「よろしく頼む、4方面軍長官、北提。そして……」


中央長官「英雄提督よ」


提督「……ご期待に添えるよう、努力致します」

最後は、英雄提督。

ここまで

川内大好きなんですけどね……

中央長官「では、議論に入ろうか。今回の問題は、深海棲艦化した五十鈴だ。まずは、作戦の詳細からだな。戦闘記録映像を部屋の中央のモニターに出すぞ。では、北提。説明を頼む」ポチ

北提「はい、まずは作戦指揮からーー」

………
……


加賀『目標、沈黙』

プツン

北提「以上となります」

提督「(……見終わった訳だが……加賀の舌打ちがしっかり録音されていたな……北提の顔が真っ青だ……ハァ……)」

東方長官「……最後、艦娘加賀の舌打ちが聞こえたような気がしますねぇ……」

北提「……あ、いえ、あれは私のーー」

提督「機材のノイズだと考えるのが妥当と存じ上げます」

東方長官「……はぁん……ノイズねぇ……まぁ、良いでしょう。まさか北提が艦娘に舌打ちをされる訳はないでしょうし……つまらない事で時間をとって申し訳ありません」

北提「っ……」

中央長官「よし、では前提となる話をしようか。まず、我々が深海棲艦化した艦娘について知っている事だが……」

中央長官「最も重要な物に、艦娘が強い未練を抱いて沈むと、深海棲艦化するという事があるな」

南方長官「これまで深海棲艦化が確認された艦娘の例だと……人間への敵意や、最も多いのが……」

西方長官「人間への愛情」

中央長官「うむ。……次は五十鈴についてだが。これはどうやら人間に対して強い敵意を持って深海棲艦化したらしいな。更に完全に記憶もあった。これは回避軌道からも明らかだろう」

中央長官「そしてもう一つ。まるで、深海棲艦化した艦娘が、他にも多数存在するかのような発言がある。これは、危険だ」

北方長官「つまり、大反攻戦で沈んだ五十鈴、その仲間が多数、敵として我々の前に立ちはだかる可能性があると」

中央長官「その可能性は高いと私は見るが、どうだ、主張派から見ると。英雄提督」

提督「私は元、主張派ですが……私も中央長官と同意見です。大反攻戦で沈んだ艦娘の多くは練度の高い主張派の艦であった為、多数の深海棲艦化した艦娘が発生してもおかしくないかと」

北方長官「ハッ!だから私は主張派が嫌いだったんだよ!艦娘を愛する派閥?ケッコンカッコカリ?艦娘を娼婦か何かと勘違いしてるんじゃないかとね!そんな事をするから無駄な未練が生まれ、深海棲艦化するんだ!」

東方長官「その通り。艦娘は紛れもなく武器ですから。使い方を誤れば、自分が怪我をする。今回のようにね」

南方長官「……しかし、艦娘にも心情があり、戦意高揚が高い戦闘力に繋がるというのも事実だ」

北方長官「フン。わざわざ艦娘の心など、そんなものは考慮せずとも結果を出せると言っている!北提のようにな!」

北提「……!」

北方長官「なまじ人間への憧れを持たせるからこうなるんだ!」

提督「……人間への憎しみを持って深海棲艦化した艦娘も一定数存在します。一概に、艦娘の意思を尊重するという考えが誤っているとは思えません」

北方長官「笑わせるなよ、主張派!貴様ら主張派の指導者、旧東方長官がどれ程の損害を我々にもたらしたか……!」

提督「……それについて、艦娘に非はありません」

北方長官「ない訳がなかろう!」

中央長官「落ち着け。今はその議論をする時ではない」

北方長官「……失礼。つい、熱くなってしまいました」

中央長官「この、多数存在すると思われる深海棲艦化した艦娘に関して、どう対処すべきか。何か案はあるか」

北方長官「進軍ですな。万が一、深海棲艦が指揮系統を持つ事を阻止する為、早め早めに叩くべきです」

東方長官「同意見です。深海棲艦はもともと数では勝るものの、個々の能力は艦娘に勝らない。しかし、それが指揮系統を持てば甚大な被害が出る事は明らかです」

提督「深海棲艦の居る場所の目処は立っているのでしょうか?」

北方長官「そんなものは海域をシラミ潰しに捜査すれば良いことだ」

提督「万が一、敵が既に指揮系統能力を保持していた場合を考慮すると、それは悪手です。戦力をジリジリと削られる事になってしまいます」

北方長官「では、座して待てと言うのか?」

提督「私は艦娘への情報開示と、防衛線の強化を提案させていただきます」

北方長官「……情報開示だと?艦娘に、自分達が死ねば、深海棲艦に成ると、教えるのか?馬鹿な!」

提督「まずは敵を知るべきです。艦娘は意思のない銃では無いのですから、心構えで大きく戦局は傾きます」

北方長官「それこそ艦娘の戦意喪失に繋がるのではないか?」

提督「一時の戦意喪失より、その先を見据えるべきです。今回の五十鈴の件から、敵は話術で艦娘を揺さぶってくるであろう事が推測されます。戦いの時に知るよりは良いでしょう」

北方長官「……フン!」

南方長官「そして、防衛線の強化か……」

提督「方面軍間で連携を密にとり、機動打撃群の整備も必要かと」

東方長官「守りつつ攻めれば良いのでは?」

提督「それはーー」

中央長官「ーー?」

南方長官「ーー。ーーー」

北方長官「ーーーー!」

………
……



中央長官「一先ず、本日の結論は、艦娘への情報開示を検討する、という事だな。攻守や局地戦術・戦略の議論は明日行う。以上、解散とする」

一同「はっ!」

北提「(……全然、ダメだった。くそっ……英雄提督に助けられるとは……)」

提督「(……情報開示さえ決まれば後は自然と防衛の話になるだろう……問題は北方長官だな……)」

………
……



中央鎮守府、外


提督「(もう、夜か……随分と時間が経ったな……不知火と榛名は大丈夫だろうか?)」

南「ご苦労さん、提督くん」

提督「お疲れ様です、南方長官」

南「どうだ、この後一杯。君の所の艦娘も呼んで来ると良い」

提督「ありがとうございます。早速呼んで参ります」

南「うむ。では、また後でな」

とりあえずここまで

宿舎


コンコン
提督「榛名、不知火。私だ」

ガチャ
榛名「!……提督!」抱きっ

提督「うおお……(なんだなんだ……)」

榛名「会議、お疲れ様でした!」

提督「あ、ああ。……?榛名?どうした、その顔の傷は。服も汚れて……」

榛名「あ、これですか?今日お昼に甘味処へ行った時に、酷いこけ方をしてしまって……えへへ」

提督「……手を見せてみろ」

榛名「ぁ……」

提督「……何故、手の甲をこんなに怪我してるんだ。何か、揉め事か?」

榛名「いえ!本当にこけただけですよ!榛名ってば本当にドジで……」

提督「……そうか。気をつけろ(……転倒で手の甲に傷が出来る物か?……不知火に聞くか)」

宿舎


コンコン
提督「榛名、不知火。私だ」

ガチャ
榛名「!……提督!」抱きっ

提督「うおお……(なんだなんだ……)」

榛名「会議、お疲れ様でした!」

提督「あ、ああ。……?榛名?どうした、その顔の傷は。服も汚れて……」

榛名「あ、これですか?今日お昼に甘味処へ行った時に、酷いこけ方をしてしまって……えへへ」

提督「……手を見せてみろ」

榛名「ぁ……」

提督「……何故、手の甲をこんなに怪我してるんだ。何か、揉め事か?」

榛名「いえ!本当にこけただけですよ!榛名ってば本当にドジで……」

提督「……そうか。気をつけろ(……転倒で手の甲に傷が出来る物か?……不知火に聞くか)」

榛名「!……ぁ」

提督「……どうした」

榛名「……あの、我儘を言ってもよろしいでしょうか」

提督「ほう」

榛名「撫でて、いただきたいです」

提督「……そうか」よしよし

榛名「えへへ……」

提督「……所で、不知火は居るか?」

不知火「……ここに」

提督「酷い顔色だな……」

不知火「大丈夫です。それよりも、幾つかご報告が……」

提督「ああ……榛名、少し外して欲しい」

榛名「むー。わかりました!」テトテト
バタン

提督「(どうしたんだ、榛名は……違和感がある)」

不知火「……私達は川内に、会いました」

提督「……お前達が会ったのか?川内は艦娘と会うのを嫌がった記憶があるが……」

不知火「……わかりませんが、提督を探しているようでした」

提督「……何か、言われたか」

不知火「……いえ」

提督「(これは何か言われてるな……俺が浅慮だったか……しかし、艦娘と接するのが苦手な川内が……予測出来なかった……)」

提督「なんだ。言ってみろ」

不知火「……川内は、赤城さん達を馬鹿にして……!」

提督「……そうか。……お前はあまり気にするな。川内は後先考えずに発言する癖がある。俺の方から厳しく言っておこう」

不知火「ダメです!川内に会ってはいけません」

提督「……どういう事だ?」

不知火「川内は……本当に……危険です」

提督「そうか。留意する。(……しかし、そう言われると益々会う必要が出てくるんだがな……)」

提督「……そして、榛名のアレはなんだ?」

不知火「……」

提督「……」

不知火「……実は、川内さんに会った時、榛名さんに川内の話を聞かせたくなくて、少し距離をとって話し合いを始めたのですが……」

提督「それで?」

不知火「……言い争いをしている間に、榛名さんを少しの間、見失いました」

提督「……」

不知火「その後しばらくして、1人でフラフラと戻って来たのですが……それからずっとあんな調子です。何があったかと聞くと、『御手洗を探していて、転倒しました』の一点張りで……」

提督「……そうか。榛名はどの程度一人だった?」

不知火「一時間にも満たない時間です……」

提督「お前が川内と言い争っていた時間は?」

不知火「それは5分程度であったと記憶しています」

提督「そうか。わかった」

提督「(榛名が何かトラブルに巻き込まれたと見て間違いは無いだろうが……一体何だ?何故上機嫌に見える?)」

提督「(艦娘同士での争いで、この時間まで発覚しないと言うことは無いだろう……かと言って、艦娘区画への人間の出入りは厳しく制限されている……)」

提督「(何れにせよ、タイミング的に川内が一枚噛んでると見て間違い無さそうだな……会って問い詰める必要があるか)」

提督「……とりあえず、私は南方長官の所に呼ばれている。お前と榛名も連れていくつもりだったが……」

不知火「私は問題ありませんが……」

提督「榛名は大丈夫だろうか……」

とりあえずここまで

ヤーナムに狩りに出掛けていたので、遅くなってます……
明日から平常運転です

いただいたレスは全部読ませて貰ってますが、皆様の疑問に対して、ある程度合理的な設定は有ります
あくまで個人的な合理性ですが……

これまで、この先のストーリーに関わりそうだなーと思ったレスは、敢えてスルーしてます
ごめんなさい〜

夜中に投下できたらします

長官宿舎前


提督「(ここに来る前に中央鎮守府に立ち寄って、艦娘区画管理局に問題が発生したか問い合わせてみたが……今の所何もなしか……)」

榛名「♪〜」

提督「(結局、榛名も『大丈夫です!』と言って着いて来たが、状況が不可解過ぎる……何よりも上機嫌なのが不気味だな……)」

金剛「Oh!ようこそテートク。南方長官がお待ちデース」

提督「ありがとう、金剛」

金剛「榛名と不知火もwelcomeネ!Please come in!」

提督「ありがとう。私は長官殿の部屋に向かう。お前たち二人は、応接室で金剛と一緒に居てくれ」

榛名・不知火「わかりました」

南方長官の自室


コンコン
提督「失礼します」

南「ああ、待っていたよ。入ってくれ」

ガチャ
提督「お待たせして申し訳御座いません」

南「いやいや。疲れているところをすまないね」

提督「滅相も御座いません」

南「……さて、今日の会議の話だが……」

提督「情報開示ですか」

南「……ああ。やはり、太郎には時間がある時に話しておくべきだろう。会議で決定してからでは、太郎が作戦の為、本土に居ない可能性がある。……例え会議で情報開示しない事が決まったとしても、奴は知っておいた方が良いだろう」

提督「はい。それと、翔鶴にも……」

南「そうだ、な。……ほんの少し前まではこんな事は無かったんだが……半年も無い間に、あそこまで翔鶴と親密になっているとは……」

提督「……」

南「……艦娘と恋仲にあるなど、他の者に知られたらどうなるか……規則で過度な接近は禁じられていると言うのに……」

提督「左遷、でしょうね」

南「君に言われると現実的になるな……早速、2人を呼んでくるか」

………
……



ガチャ
太郎・翔鶴「失礼します。お呼びでしょうか?」

南「ああ……二人ともそこに座ってくれ」

太郎・翔鶴「はい」

提督「……君達は……恋仲にあるな?」

太郎「……はい?」

提督「恋仲に、あるな?」

翔鶴「……いいえ」

提督「……正直に答えろ。私と長官殿以外誰も聞いていない。この話題は外にも出さん」

翔鶴「……いえ、私はーー」

太郎「恋仲に、有ります」

翔鶴「……太郎さん!」

太郎「……どうせ、バレている事さ」

提督「……では、お前達に話しておく事がある。……宜しいですね、南方長官」

南「頼む」

提督「……数年前、東の前線基地で起きた騒ぎを覚えているか」

太郎「はい。主張派の艦娘同士の内紛ですよね。2名の艦娘とその提督が亡くなったという……あの事件から、艦娘関連の制限事項が増えたので、よく覚えています。……それこそ、艦娘との過度な接近禁止等……」

翔鶴「……お言葉ですが、まさか私が他の艦娘と太郎さんを巡って争うと……?」

提督「まぁ聞け。お前達も噂で、艦娘が沈めば深海棲艦となる事を聞いたことがあるだろう」

翔鶴「はい。しかし、それはただの噂だとばかり……」

提督「その噂は特定の条件下で事実になると言われている。……艦娘が未練を抱いて沈んだ時にな」

翔鶴「……未練」

提督「そうだ。例えば、慕情だな」

太郎「……それは、本当ですか?」

提督「冗談みたいな話だが、本当だ」

翔鶴「……つまり、私が太郎さんを想って沈むと、深海棲艦化すると仰るのですね……」

提督「ああ。無論、必ずそうなると言う確証は無いが……これまで我々が戦った、深海棲艦化した艦娘は全て、艦娘時代の何らかの因縁を持ち続けていた」

太郎「……そんなに深海棲艦化した艦娘と戦う機会があったのですか?私は聞いたことがありませんが……」

提督「緘口令などが敷かれて、秘匿とされていた。しかし、火のないところに煙は立たん。噂ぐらいは聞いたことがあるだろう」

太郎「……」

提督「話を戻そう。 東の前線基地の事件だが……あれは艦娘同士の内紛等ではない。あれは、深海棲艦化した艦娘に、基地内に侵入された結果ああなった」

翔鶴「え……」

提督「詳しい状況は不明だがな。深海棲艦化した艦娘の見た目、言動は生前と酷似している。恐らくは、そういったものに惑わされて、基地に接近する段階での排除ができなかったのだろう」

翔鶴「……」

提督「その結果、陸上での砲撃戦となったらしい。……艦娘が地上で機動性を確保するために、脚部の艤装を着用せずに、そのまま主砲を放ったらどうなるか、実証してしまった訳だ」

太郎「……吹き飛んだんですか」

南「基地はかなり、悲惨な事になっていた」

提督「……生き残りの証言から判明した、深海棲艦化した艦娘の存在。これに加えて凄惨な現場。これらによって、本部は過剰とも言える艦娘の締め付けに走った訳だ。表向きは、艦娘の同士討ち防止であるとしてな」

太郎「そんな事が……」

提督「……侵入した深海棲艦は元々、提督の寵愛を受けていたらしい。深海棲艦となっても、しきりに『提督に逢いたい』と連呼していた様だが……そういった者が、敵に回る可能性があるという事を知っておけ」

太郎「……」

翔鶴「……私は、太郎さんから離れた方が良い、という事でしょうか?」

提督「お前が太郎くんから離れた所で事態は解決しない。そんな簡単に忘れられる関係なら、こんな話はしない」

翔鶴「……では、どうすれば……」

提督「前にも言ったが……生き伸びろ。汚くても良い。それをお前達には肝に銘じてもらう必要がある」

翔鶴「……」

提督「焦って戦果を出そうとするな、という事だ。なぜ自分が今本土に居るのか、よく考えろ」

翔鶴「……しかし、私は艦娘です。私は、戦わねば……」

提督「お前は高潔過ぎる。……生きる事を考えろ」

翔鶴「……」

提督「二人でゆっくり話し合うと良い。まぁ、なんだ。死ぬな。」

太郎「提督さんが仰ってた、自分と同じ轍を踏むなとは、この事ですか」

提督「さぁな。……それと、この話を絶対に外に出すなよ。自分の艦隊含めてな」

………
……



長官宿舎、応接室


ワイワイ

金剛「そういえばネ、太郎さんは意外とお酒弱いんだよネー」

榛名「そうなんですか?意外です」

金剛「翔鶴は逆にザル過ぎてビックリするヨ」

榛名「ええ……榛名の同僚にもそんな方がいらっしゃいますが、もしかして空母は皆お酒に強いのでしょうか……?」

金剛「I dunno……ところで不知火、大丈夫ー?」

不知火「……はい。大丈夫です」

金剛「……Ok.(不知火が恐ろしく落ち込んでる……榛名は非常に上機嫌……修羅場の匂いがするわね……)」

ガチャ
提督「待たせてすまない、二人共。そろそろ戻ろうか」

金剛「もうお話は終わったノー?」

提督「一応」

金剛「残念。もう少し榛名達とお話してたかったヨ」

提督「明日もあるからな。また今度。行くぞ、榛名、不知火」

榛名「はい!」

不知火「……はい」

宿舎前


提督「すっかり遅くなってしまったな……二人とも、ご苦労だった。部屋で休んでくれ」

不知火「はい」

榛名「……あの、提督。早めに見ていただきたい物が有るのですが……」

提督「ほう。今からか?」

榛名「はい……できるだけ早くに……二人で」

提督「……わかった。不知火、外してくれるか」

榛名「いえ、少し遠くにあるのです」

提督「……まさか、昼間居た艦娘区画か?」

榛名「はい」

提督「……あそこは人間の立ち入り禁止だが……中か?」

榛名「中ですが……人間の立ち入り禁止だったのですか?知りませんでした……」

提督「……管理局に掛け合ってみよう」

………
……



艦娘区画


提督「拍子抜けする程簡単に許可が取れたな……」

榛名「こっちです!」

提督「はしゃぐな、はしゃぐな」

榛名「……夜に提督と二人で歩くの、気持ち良いです」

提督「……そうか」

榛名「えへへ……」

提督「しかし、倉庫街に来て何を見せるつもりなんだ?」

榛名「……うーん、ここら辺だった気がするのですが……」

川内「おーい、魚雷ー。探してる場所は此処じゃない?」

榛名「あら、あなたは昼間の……あ、そうですね!ここです。ありがとうございます!」

提督「川内……!」

川内「待ってたよ、提督!アタシに話が有るんじゃない?」

提督「……ああ、その通りだ」

榛名「……提督、少し荷物を取ってきますね!その倉庫の中なので……」

提督「(この倉庫は正面以外に出口は無い……入り口に居れば大丈夫か?)わかった。私は入り口で川内と話をしている」

榛名「はい!」

メキメキ、バキ、ガラガラガラ……

提督「(扉一つ開けるのに、凄まじい音だな……ん?そもそも錠はどうした?……明かりはつけないのか?)」

川内「いやー早めに来て貰えて助かったよー」

提督「……何がだ」

川内「この倉庫、扉が変形してて開かなかったんだよね」

提督「……」

ズル……

川内「そういえば、今のお気に入りは榛名なんだね。愛宕とか赤城もそうだし……長髪が好みなの?伸ばそうかな?」

提督「何を馬鹿な事を……」

ズル……

川内「アハハ。……しっかし、嫌な予感がするなぁ。死んでなきゃ良いんだけどね」

提督「……死ぬ?何の話だ?」

ズル……

川内「いやほんと、予想外でさ。榛名が壊れると思ったんだけどね。回収にも失敗するし、不覚だよ。アハハ」

提督「なんなんだ……一体何を言っている!」

ズル……ズル……

川内「すぐにわかるよ」

提督「おい、榛名!中は大丈夫か!」

ズル……ズル……ズル……

川内「落ち着きなよ、提督……」

ズル……ズル……ズル……ズル……

川内「……ほら、もう出て来た」

倉庫の暗い入り口から、まず現れたのは、闇の中で微笑みを浮かべる榛名。
提督がその姿を見て安堵しかけた、その次の瞬間。

ズルリズルリと。榛名に引き摺られて、闇の中より現れた大きな荷物。榛名が掴んでいた手を離すと、それはその場で崩れ落ちた。

「なんだ……?」

それは目を凝らすと人の形をしていて。微かに動いていて。

「……冗談だろ」

提督の呼吸が浅く、早くなる。心拍数が跳ね上がる。冷や汗が吹き出るのを感じる。

「ああ、クソ……クソ!」

耳を済ませば聞こえるのは、苦しげな呻き声。

「何故、ここに居る……!」

地に伏すは、顔の腫れ上がった黒提督。
その服は用務員の物であったが、どす黒く変色した血液が多量に付着しており、着ている者の状態を示唆していた。

「えへへ。英雄提督?」

時折ピクピクと動き、小さく呻く黒提督に駆け寄り、呼吸や脈を確かめる提督。その提督へ、榛名は笑顔で、静かに、優しく語りかける。

「敵を、倒しました」

ゾクリ。
背筋を這う感覚に、提督は身震いした。
倉庫から出た時、提督に安堵を与えた榛名の微笑みは、今は酷く歪んで見える。

「うふふふ。この人が教えてくれたんです。うふふふふ!あなたが英雄提督だって。ふふふふ!」

榛名は黒提督を指差し、告げた。

「言われてみれば、思い当たる節もあるかなって。うふふ。普通、左遷された人間が、長官の出席するような会議に出れませんよね。ふふ。それとか、艦娘にとても甘かったり……」

「昔の写真もあるんですよ!この人が持ってました」

そう言って榛名が懐から取り出す一枚の集合写真には、今より少し若い提督と黒提督が他大勢と共に映っていた。『主張派決起会』と言う文字が写真内に見て取れる。

「えへへ。私嬉しくて。だって、知らず知らずのうちに、私は英雄提督の大切になっていたんですから。やっぱり私は英雄提督の為に生まれてきたんだって!えへ」

「ふふふ。私が英雄提督に粗相をして無いかって、確かめに来たそうですよ?この人。私は英雄提督の艦娘であって、黒提督の艦娘では無いのに。不思議ですよね。うふふふふ!」

「あなたが『黒提督は過ちを犯した』と言っていたのを思い出して。ふふふ。英雄提督が間違ってるって言う人間なら、私に、英雄提督の艦娘に暴力を振るう人間なら、敵だから多少痛めつけても良いかなーって。ふふ」

「今まで一方的に殴ってたからでしょうか?反撃したら黒提督は腰抜かしちゃって。そのまま殴ったり蹴ったりしましたけど。えへへへ!」

「この人ったら鼻の骨折れたあたりから命乞いを始めて。ほら、鼻って折ると血が思ったより出るじゃないですか。ふふふ」

「それで、この人は怖くなったのかあなたの悪口を言ったんです!自分であんなに『英雄提督は凄い人だー』って言ってた癖に!」

「もう、私、許せなくって。半殺しにしてしまいました。うふふ。でも、殺すかどうか決め兼ねてしまって……それでお連れしました」

「……何故、今まで黙っていた」

提督は黒提督が生きている事を確認し、榛名へと問うた。

「不知火さんがいらしたので。……提督は榛名の為に不知火さんを付けて下さったようでしたから、余計な心配をお掛けするかと」

「……そうか……おい、黒。しっかりしろ。おい」

提督がペチペチと黒提督の頬を叩く。

「……あ……英雄、提督殿……」

黒提督の腫れ上がった瞼が持ち上がり、虚ろな目がかつての上司を視界に捉えた。

「呼吸は出来ているな。意識もある。……一安心か……」

川内「あ、生きてた?良かったー」

提督「……どういう事か、説明して貰おうか、川内!」

川内「どうもこうもないよ。アタシが全部やったってわかってるんでしょ?アハハ」

提督「お前……」

川内「怒んないでよ。気持ちはわかるけどさ。提督と同じ事しただけじゃないか」

提督「……」

川内「提督は榛名をオトす為に金剛と不知火を使って。アタシは提督をオトす為に榛名と黒提督を使っただけだよ。」

榛名「榛名は元々オチてますよ!えへへ……」

川内「……チッ。提督だって、金剛や不知火の気持ちを知りながら、見て見ぬ振りしてるじゃん。不知火の事は都合のいい時だけ頼って、金剛なんて別の艦隊の女なのに!」

提督「……」

榛名「榛名は大事にしていただいて、感激です……」

川内「……あーあ、使えねぇなぁ黒提督……榛名はお釈迦になる筈だろぉ……」

提督「……黒提督は主張派解体の際に辺境の補佐要員に降格された筈だろう。こいつを中央に呼び込んだのもお前か?」

川内「そうだよ」

提督「(……俺が榛名を連れているとは知らなかった筈だ……)」

川内「別に榛名の為じゃないよ。アタシの目的はもっと、別にある」

提督「……何?」

川内「ねぇ、英雄提督。栄光の第四機動群、復活させよ?」

少々多忙で投下できなかったので、
今回多めです
詰め込み過ぎかな……?

とりあえずここまで

病み榛名大好きです

提督「……何を、言っている」

川内「良いって、そういうの。アタシと提督の仲じゃん。わかるでしょ?アハハ」

提督「……」

川内「アタシは提督のやりたい事を知ってる。アタシはその手助けも出来る。アタシは、アタシが一番提督の側で上手くやれる!……だからさ、来て?」

提督「……」

川内「後始末、付けなきゃなんでしょ?……きっともうすぐ来るよ。提督が育てた敵が、海の底から」

提督「……そんな事は、わからんだろ」

川内「わかってるくせに。アハハ」

提督「……」

川内「勝てるの?今の戦力で」

提督「……仮定の話をしても無駄だ」

川内「現実を見なよ。左遷島に居るので、戦力になりそうなのを調べたけど、足柄くらいだよね」

榛名「榛名も戦えますから」

川内「……うるさいなぁ。敵も知らない癖に……」

榛名「敵は深海棲艦では?」

川内「……あーもう!ややこしいからお前は黙ってて!」

榛名「……相手が誰であろうと、やってみねばわかりませんから」

川内「……ウザいなぁ……」

榛名「……はぁ?」

川内「……まぁいいや。とにかく、提督。アタシと来てよ。じゃじゃ馬の加賀くらいなら連れて来て良いからさ。最悪、榛名も一緒で良いよ」

提督「……そんな中身もわからん話に、やすやすと乗れると思うのか」

川内「アタシが信用出来ないの?あなたの川内だよ?」

提督「……」

川内「まぁ、考えといて。何のために提督が皆に土下座して回ったのか、忘れてないよね」

提督「……」

川内「今度ゆっくり話そう。今日はもう時間が無いんだ。……この黒提督、貰ってくよ」

黒提督「う……」

川内「うーん、衰弱してるなぁ……そりゃ昼にボコられて夜まで放置されたらなぁ……」

提督「そいつをどうするつもりだ」

川内「殺しはしないよ。足がついちゃうからね。でも、ま、もう会う事も無いかな……」

提督「……」

川内「ほいじゃ、またね。ちゃんと考えといてよ、提督。……おら、起きろ、黒提督……」

黒提督「うう……英雄、提督殿……」

提督「……」

黒提督「ふ、ふ……やはり、あなたは……特別です……」

提督「……」

黒提督「私が……愚かでした……凡夫が……叶わぬ、夢を見ました……」

提督「……」

黒提督「……目が、醒めました……」

川内「……早くしてくんないと、艦娘区画にお前を入れたのが管理局にバレちゃうよ」

黒提督「……では、御達者で……ああ、それと……どうか、どうか榛名をーー」

川内「……ほら、早く」グイッ

黒提督「うっ……」ズルズル

………
……



提督「行ったか……」

提督「……」

榛名「提督?大丈夫ですか?」

提督「ああ……すまない。お前は怪我はないか?」

榛名「はい!拳に傷がついただけです!」

提督「……(黒提督は、無抵抗に殴られていたのか……)」

提督「……(そして、川内の話に、検討の余地はあるのか……?)」

提督「……(ダメだ……会議もあるし、考える事が多すぎる……)」

提督「……(榛名の事も……)」

榛名「……提督?……榛名は、幸せですよ?」

提督「……幸せ、か」

榛名「はい。苦痛も、苦悩も、この時の為に積み上げてきた物だと、そう思います。……榛名は、報われたのだと」

提督「……そうか」

榛名「うふふ。心が、踊ります。体を締め付けていた鎖が、全て落ちたような……そんな気分です」

提督「……」

榛名「榛名は今、幸せですよ。大丈夫です、提督。嫌な事は全部、あなたで上書きされてしまいましたから」

提督「……そう、か」

榛名「えへへ……帰りましょう、提督。黒提督も連れて行かれてしまいましたから」

提督「……(榛名の苦労も、苦悩も、体を締め付けていた鎖も、全て俺が原因だ……それが故意では無くともな……わかっていて俺は……)」

提督「ああ。そうしよう」

榛名「……あの」

提督「……ん?」

榛名「撫でて、いただけますか?」

提督「……」撫で

榛名「えへへへ……」

提督「……(……黒提督よ。愚かなのは、お前だけじゃない……俺もだ。特別?そうだな……俺は特別に、クズだ)」

ここまで

次スレまでにターニングポイントまで到達したい……

宿舎


不知火「……二人とも、遅いですね」

不知火「……何かあったのでしょうか?」

不知火「……何故、不知火は置いて行かれたのでしょう……」

不知火「……提督は……」

不知火「……」

コンコン
提督「すまない。今帰った」

不知火「……!お疲れ様です」ガチャ

提督「ああ……留守の間、問題は無かったか?」

不知火「はい」

提督「それは良かった……明日もある。そろそろ休もう」

不知火「はい……そちらも、大丈夫でしたか?」

提督「ああ。心配を掛けたな」

不知火「いえ、そんな……」

提督「ほら、榛名……あまりくっつくな……」

榛名「ん……ごめんなさい」

不知火「(……二人で一体何をしていたのですか……?)」

提督「では、また明日」

榛名「うふふ。はい。おやすみなさい、提督」

不知火「……おやすみなさい」

翌朝


コンコン
榛名「提督、おはようございます」

提督「ああ、入ってくれ」

榛名・不知火「失礼します」

提督「おはよう。本日も私は会議に赴く。その間、二人には資料室の方で最近の戦闘記録の洗い出しを頼みたい。恐らく、そろそろ必要になる」

榛名・不知火「はい!」

提督「特に探して欲しい資料はーーとーーー関連だな……よし、それでは頼んだ。私はもう出る。休息は適当に取ってくれ」

榛名・不知火「お任せ下さい」

提督「(問題が山積しているな……先ずは会議だ。なんとか情報開示に漕ぎ着けたい。それ以外は川内の動きが気にかかるが……最早榛名と不知火を信じるしかあるまい)」

榛名「提督、お気を付けて!」

提督「ああ。(……榛名……榛名か……結果的には、問題なかった。寧ろ、良かった……そう思う自分がいるな……馬鹿な話だ。馬鹿な話だが……)」

提督「……では、いってくる」

不知火「……」

榛名「さ、不知火さん!私達も資料室へ行きましょうか」

………
……



中央鎮守府、会議室前


提督「(……)」

龍驤「ウチこんなん聞いてないで……会議で証言せなあかんて……」

北提「……言った筈なんだけどな……」

龍驤「いやや……いやや……」

加賀「少しは落ち着きなさい……」

提督「(こいつらは会議室の前で何をやっているんだ……そして、何故俺は隠れて盗み聞きの様な真似を……)」

龍驤「あかんねんてウチ……緊張すんの苦手やねん……ほんまに胃が痛いんや……」

日向「心配しすぎだ」

龍驤「あああー……あああああー……」

響「ちょ、うるさいよ……」

龍驤「あ、あかん……胃が!胃が今取れた……出そうや……!」

瑞鶴「ちょ、ちょっと?」

北提「お、おい、大丈夫か?」

提督「(馬鹿なのかこいつらは……ここが何処かわかっているのか?それこそ北方長官に見つかったら……)」


カツン……カツン……

提督「(……やれやれ……噂をすれば、か。……加賀、気付け……!)」

龍驤「おうえ……」

加賀「ああ……もう……しっかりして頂戴」

瑞鶴「うわぁ……」

北提「こ、困ったな……」

提督「(……誰も北方長官の接近に気付いて無い……仕方ないか……)」

提督「……何を騒いでいる」

瑞鶴「いっ……」

加賀「ぁ……!」

提督「会議前だろう、北提。貴殿は艦娘の管理も出来んのか」

北提「申し訳、御座いません」

提督「遠足気分では困る。そこに整列しろ」

瑞鶴「……」イラッ

龍驤「うう……はい……」

提督「(耐えろよ龍驤……耐えてくれ……)」

龍驤「う……」フラッ

提督「(……)」はぁ

日向「!龍じょーー」

その時、提督は目眩からフラついて、崩れ落ちる龍驤を受け止めた

瑞鶴「龍驤?!」

提督「静かにしろ。何度も言わせるな」

瑞鶴「仲間がーー」

提督「黙れと言っている。……お前もだ、日向。姿勢を崩すな」

瑞鶴「〜〜!」

日向「……!」

北提「提督殿……!」

提督「落ち着け。……一人で立て、龍驤」

龍驤「ふぁい……」フラフラ

提督「フラつくな。……良いか。お前は証言をする必要は無い。喋れないなら、黙って背筋を伸ばして立っていろ」

龍驤「は、はい……」

北提「……お言葉ですが、提督殿ーー」

北方長官「おはよう、諸君」

北提「!……おはようございます、北方長官」

提督「おはようございます」

北方長官「うむ。して……これは何事だ?英雄提督殿が、我が配下の艦隊に何の御用かな?」

提督「……はっ。現在最も活躍している艦隊の様子を伺おうかと……」

北方長官「余計な事は止めて欲しいものだ。君には関係の無い事だろう」

提督「はっ……」

北方長官「己の立場を弁えたまえ」

提督「申し訳御座いません。……失礼致します」カツカツカツ……

提督「(北提……思っていたより……やはり、俺に人を見る目は無いのか……?)」

北方長官「フン、行ったか……大丈夫だったか、北提」

北提「はい、何も問題は御座いません」

北方長官「よし。今日の会議も期待している」

北提「はっ!」

北方長官「……あの落伍者と、その艦娘との接触は避けろ。皆、良いな」

一同「はっ!」

加賀「……」

数時間後、艦娘区画


龍驤「はぁー……緊張した……会議から解放されてスッキリや……」

響「北提と長官達はまだ会議を続けるみたいだね」

瑞鶴「疲れたわねー……ご飯よご飯!」

日向「うむ」

龍驤「ほんま一言も喋らんで良かったな、アタシ……」

瑞鶴「……そういえば、朝のあの人が英雄提督だっけ?」

加賀「……そうね」

日向「……私は好かんな」

加賀「……」

響「きつい感じの人だったね……」

瑞鶴「他と変わんないじゃん!北提のがよっぽど優しいよ!」

加賀「……優しければ良いと言う物でもないわ。龍驤、北提の仰った事も忘れているのは弛み過ぎよ」

龍驤「はい……」

瑞鶴「……英雄提督って昔からあんなだったの?」

加賀「それは……」

日向「大体加賀の事も無視じゃないか。昔同じだったなら他に何か……あるだろう」

加賀「……忙しい方、ですから……」

瑞鶴「……」

龍驤「ま、まぁ、でも助かったやん?北方長官にグラついてるとこ見られてたらヤバかったわ……整列させられたし」

響「……偶然だろう、流石に」

日向「怪我の功名、か」

加賀「……」

瑞鶴「……とりあえず、ご飯いきましょ。お腹空いたの!そこで話しましょうよ」

ここまで

新年度ですね
頑張りましょう

艦娘用食堂


不知火「……美味しそうに食べますね……」

榛名「美味しいですから!」もしゃもしゃ

不知火「うちの基地では、時間の都合上作り置きが多かったですからね……何時でも作りたてを食べれるというのは、確かに良いですね」

榛名「味は鳳翔さんが一番良い気がしますけど。ただ、揚げ豆腐とかは冷めたら食べられないですし……」

不知火「そして本土なら食材が豊富ですからね」もぐもぐ

榛名「はい!あ……アイスクリーム……も有るんですね」

不知火「後で頼みますか」クスクス

榛名「……はい」えへへ

不知火「……そういえば、昨晩は提督と何をしてらっしゃったのですか?」

榛名「何……何、ですか。うーん……」

榛名「デート、とか」

不知火「……デート」

榛名は不知火の表情の変化を見逃さなかった。
不知火の鋭角な目。それを僅かに揺るがす苛立ちを。

榛名「……」

榛名の双眸はほんの、ほんの少し薄められる。

榛名「なんて、冗談ですよ。えへへ」

不知火「……吃驚しました」

榛名「少し、提督にご相談をしていました」

不知火「……それは、昨日のお昼の事ですか?」

榛名「……はい」

不知火「……良ければ、不知火にも教えて頂けますか?」

榛名「……わかりました。実は……」

不知火「はい」

榛名「こけた時に、衣服を傷つけてしまって。補修に回すべきか、少し……」

不知火「そう、だったのですか」

榛名「はい……不知火さんにはご心配をお掛けしたくなくて……」

不知火「そんな気遣い、不要ですよ。同じ艦隊じゃないですか」

榛名「不知火さん……」

不知火「(もう少し、上手い嘘があるでしょうに……これではまるで、『お前には教えない』と言われているようで……いえ、事実そうなってますか)」

不知火「困った事があったら、ちゃんと言って下さいね?」

榛名「……はい。ありがとうございます」

ガチャ
龍驤「食ったるで!」

瑞鶴「食ってやるわ!」

日向「煩いぞお前達……」

加賀「……情けない。静かになさい」

瑞鶴「腹が減っては戦は出来ぬわ!恥ずかしくなんて」

ぐぅうー

瑞鶴「……」ぐー

龍驤「……」

加賀「……恥ずかしくなんて、何かしら」

瑞鶴「今すぐに海の底に沈んでしまいたい……」

日向「はっはっは。とりあえず、カウンターで食事を受け取ろう」

不知火「……騒がしいのが来ましたね」

榛名「楽しそうですねぇ……足柄さんとか居たら、こっちも賑やかなんでしょうねぇ……」もぐもぐ

不知火「大変な事になりそうですけどね……左遷島の皆は大丈夫なのでしょうか?」

榛名「さぁ……提督にお聞きすればわかるかもしれません」もぐもぐ

不知火「ですね……」

榛名「あ、食事を持ってこっちに来ますね」

日向「ここに座ろうか」

瑞鶴「いただきまーす!」

龍驤「うう……胃が喜んでる……こんな美味い飯は初めてや……」

響「大袈裟だなぁ……」

加賀「(朝の北方長官の接近……それに私が気付けていれば、恐らく提督は出てこなかったでしょう……あの人が居なければ、北方長官に睨まれていたのは私達。助けられてしまいました……不覚です……)」

加賀「(……それに、私が気付いていれば、必要以上に提督との接触を禁じられることも無かった……自分に、腹が立つ……)」

瑞鶴「……おーい、加賀さん?」

加賀「……ごめんなさい。少し考え事をしていたわ」

瑞鶴「どうせそうだろうと思ったわ……英雄提督でしょ?」

加賀「……」

瑞鶴「会いに行けば?」

加賀「いえ……」

龍驤「なんや気の無い返事やなぁ」もぐもぐ

加賀「……」

瑞鶴「待ってちゃダメよ。会いたかったら会いに行かないと」

日向「瑞鶴。そういう事では無いだろう。北提が許可しない。北方長官が英雄提督とは接触するなと仰っていただろ」

加賀「……この状況下で会うわけにはいきません。北提の不利益となります。瑞鶴、もう少し考えてから口を開きなさい。先日、不知火さんと私を怒らせたばかりでしょう」

瑞鶴「う……ごめんなさい」

加賀「……あなた、素直なのは良い事だけれど。素直過ぎるわ」

瑞鶴「……はい」

加賀「(……瑞鶴に当たってしまった……図星ね。私は、あの人に会えば、向こうから求められると思っていた。思っていたのに……)」

加賀「(……どうして、提督は私を見て下さらないのかしら。会議にいらっしゃるという事は、私がここにいる事はご存知のはず)」

加賀「(……提督と遠く離れはしたけれど、戦果を上げて、存在を知らせた。不知火からのアプローチもした。これ以上、どうすれば……)」

加賀「(まさか……私は、意図的に提督に遠ざけられている……?)」

加賀「(……いえ、止しましょう。提督にも事情がある筈……私は北の所属なのだから……)」

加賀「……」

加賀「(……逢いたい)」

別のテーブル


榛名「……近くに座ってるから、向こうのグループの話が聞こえてしまいますね。……不知火さん、向こうと何かあったんですか?」もぐもぐ

不知火「……ええ、少し。向こうに昔の同僚が居るので、それ関連で……」

榛名「成る程……」もぐもぐ

不知火「……榛名さん、そろそろ」

榛名「(え……)」もぐ……

榛名「(アイスクリーム……)」チラ

不知火「……」

榛名「……わかりました、行きましょう。ご馳走様でした!」カタン

不知火「すみません」

榛名「いえいえ」

不知火「ごめんなさい、椅子の後ろ、失礼します」

龍驤「あ、すんません……お?」

瑞鶴「げっ……」

加賀「……あら、不知火。そんな近くに居たのね……」

不知火「ども。これから皆様お食事ですか」

加賀「そのつもりだけれど。……あなた達はもう食べ終えた様子ね」

不知火「はい。そろそろ失礼しようかと」

加賀「そう」

不知火「では、ごゆっくり」

加賀「ぁ……」

不知火「……はい?何か」

加賀「……いえ」

不知火「……そうですか。では」

榛名「……」チラ

加賀「……」

榛名「……失礼します」ニコ
テコテコ

テコテコ

榛名「そういえば、あの方々はどこの……?」

不知火「北の艦隊ですよ」

榛名「確かに北提がどうのとか聞こえてましたね……不知火さんがお話していた方が元同僚の方ですか?」

不知火「そうですね」

榛名「……ふぅん……」

榛名「(あれらは敵……?なにやら剣呑な雰囲気を感じましたね。不知火さんと揉めたからでしょうか)」

日向「なんだ、あの連中は……」

響「不知火さんと……誰だろ。微笑んでたのに、目が全然笑ってなかったね」

瑞鶴「不知火さんはくたびれた感じだったけど……もう一人は何か、嫌な視線だったわね。艦娘を見定めるような……あの人も英雄提督の部下なのかしら」

加賀「そうよ。あの子は榛名ね」

日向「榛名?……『魚雷』か?」

龍驤「……マジ?」

瑞鶴「え、何?あのナリで駆逐艦か軽巡なの?」

日向「いいや。榛名は戦艦だ」

龍驤「瑞鶴は知らんのか……魚雷の榛名……」

瑞鶴「何それ……」

龍驤「標的見つけたら、いきなりすっ飛んで行って、わざわざ格闘戦でボコボコにするから『魚雷』言われてたんや」

瑞鶴「ふーん……」

日向「まぁ、すっ飛んで行く先が、敵だけなら良かったんだがな」

瑞鶴「まさか、味方も?」

日向「味方の2,3隻を大破に追い込んだ事があるらしい。そのうち1隻は再起不能まで追い込まれたとか」

瑞鶴「全然そんな感じに見えなかったけど……なんでそんなのが野放しになってんのよ……」

日向「建造当初は貴重な戦力だったんだ。武勲も多数あったしな……それで解体を避けた結果、更に犠牲者が増えて……」

龍驤「左遷、やね。それであの提督が手懐けたんちゃうか?」

瑞鶴「……手懐けたって……不安なんだけど」

日向「……まぁ、用心するに越したことは無い」

加賀「……(この苛立ちは嫉妬かしら。……なんとかして、提督にお会いしたい……)」

今日はここまで

会議終了後……夜、鎮守府庁舎前


提督「(北方長官にたっぷり嫌味を言われたな……北提のところの艦娘にも嫌われただろうし……今日は良い事が無い)」

日はとっくに暮れ、辺りは夜の冷たい空気に包まれていた。

提督「(だがしかし。北の艦隊による五十鈴戦の証言から、情報開示が重要である事は全員が理解しただろう。響が行動不能に陥った事等、な……これで、少しでも艦娘の被害が減ると良いんだが……)」

ほぅ、と提督は首を上に向け、溜息をついた。そして、その目に入るは中央鎮守府の港湾部を優しく照らす灯台。

提督「……帰るか」

暫くぼーっと灯台を眺めていた提督が、帰途に着こうとした時。何者かが提督の背後から抱き着き、提督の目をその掌で覆った。

「Hey, テートクー。Guess who?」

提督「……悪ふざけはよせ。川内」

川内「あれ?わかっちゃう?アハハ」

提督「……何の用だ」

川内「んー?……来ちゃった・」

提督「……」ハァ

川内「なんで溜息つくのさー」

提督「お前は昨日問題を起こしたばかりだろう……」

川内「まぁ、良いじゃん!それよりどう?久しぶりに飲まない?」

提督「……どこでだ」

川内「夜戦隊のねぐらさ」

夜戦隊のねぐら


提督「散らかっているな……」

川内「そりゃ、ここは夜戦隊四人の共同スペースだからね……なに呑む?」

提督「……任せる」

川内「ふむ……デュワーズのホワイトラベル。それか、ジョニーウォーカーのブラックラベル。どっちが良い?」

提督「ブラックラベル」

川内「アハハ。昔からジョニーウォーカー好きだね。はい」コトン

提督「しかし、両方ともスコッチのブレンドか。よく手に入ったな」

川内「提督の為さ……乾杯」

チン

川内「懐かしいなぁ、こういうの……昔はよく、二人で飲んだよね」

提督「まぁな」

川内「アタシは提督が会いに来てくれた毎回の事、全部覚えてるよ」

提督「そうか」ぐい

川内「ま、その頃アタシはもう第四機動群ではなかったけどさ」

提督「そうだな……だが、」グビー

提督「ーーそのおかげで、お前は死んでない」ゴトン

川内「注ぐよ……アタシなら、第四機動群に居ても死ななかったかもね」コポコポ

提督「どうだかな。まぁ、今更遅い」ぐい

川内「……アタシはーー」

提督「いや、過去は良い。これからの話をしよう」

川内「!……提督、アタシと来てくれるの?」

提督「落ち着け。詳しい話を聞かせろ……そのために待ってたんだろう」

川内「んー。……会わせたい面子が居るんだ」

提督「ほう」

川内「実はもう奥に居るんだけどね。……皆、出て来てー」

ゾロゾロ

天龍「うっす」

龍田「あらあら、今晩は〜」

神通「……提督様、お久しぶりです」

川内「じゃーん!我ら四人で夜戦隊だよ!」

提督「……」

川内「全員、強いよ。……フィジカルも、メンタルも。……相手が元艦娘でも、問題無く闘える」

提督「へえ」

天龍「よっ!アンタが英雄提督か!いやー会いたかったんだよなー!」

龍田「天龍ちゃん?言葉遣いを改めなさい?」

天龍「ん、んだよぉ」

神通「仲間の非礼をお詫び致します……」

提督「いや、構わん。プライベートだ」

天龍「お!話のわかる提督じゃん!」

龍田「天龍ちゃん?」

川内「とまぁ、こんな感じ。神通とは顔見知りじゃないっけ?」

提督「……大反攻戦の時、直接会ったな。獅子奮迅の働きを見せてくれたのを覚えている」

神通「……光栄です」

天龍「神通は『中』だっけ。オレと龍田はその時、無線で指示を貰っただけだからなー。くそー」

川内「ま、アタシも無線だったし。『中』で生き残ったのなんて、数える程しか居ないよ」

提督「天龍、龍田もよく聞く名だった。共に戦った事は無かったがな」

天龍「おお!嬉しいねぇ」

龍田「あらあら」

提督「……しかし、よく集めたな。これだけの面子を」

川内「でしょ?褒めてくれても良いよ?まぁ、そんなに難しくはなかったけどね」

提督「……」

川内「夜戦隊の面子はさ、現状に不満を持ってたのさ。保守派の奴らにね。アタシは、反抗的な態度を取る艦娘の中から仲間を選別しただけだよ」

川内「……そして、夜戦隊はこうも思ってる。何故、優秀な英雄提督が左遷されなければならないのか、と。それならば、我らの指揮を執って欲しいと」

提督「……夜戦隊の提督にならば、俺はなれるとお前は思う訳だ」

川内「夜戦隊は所属が中央とは言え、かなりの下位組織だし、お偉いさんのプライドを刺激する事も無い。降格人事になる訳だし。
……そして、今の夜戦隊の監督者はアタシの傀儡だから、いつでも首が飛ばせる」

提督「……五十鈴の出現に乗じて、中央に返り咲く、か」

川内「そうさ。提督は中央に呼ばれた。提督を呼ぶ程、中央は焦ったんだ、五十鈴の出現に」

提督「……」

川内「五十鈴が敵として出た以上、沈んだ主張派の艦娘は確実に深海棲艦となっていると見ていい」

川内「特に、提督の愛宕、赤城、霧島、那智は、深海棲艦化したら、東の前線基地の事件の様に、血眼になって提督を探すだろうね」

川内「……今がチャンスなんだよ、提督、わかるよね。中央は提督の、作戦参謀としての能力を高く買ってる。だから提督は『提督権』を失っていない」

提督「提督権。艦娘の指揮を執る為の権限、か」

川内「それが無いと、基本的に艦娘とは接触出来ないからね。まぁ、そんな秘密主義的な制度があるお陰で、元主張派の人間が軍部にそこそこ残ってるんだけどさ」

提督「提督権の取得は時間が掛かるからな。艦娘の世話を、艦娘自身が『主計艦娘』として行っているのも、その提督権の所為。とにかく、艦娘に接する人間を少なくしようと言う話だったが……」

川内「そ。提督権の存在から、育成の遅い後任が着任するまでの艦娘関連の雑務係として、仕方なく軍に残された元主張派の人々」

川内「それから時間が経ち、監視も緩くなった今、英雄提督に強く賛同する者を、アタシは中央に集めた」

川内「中央に長官達が集まるタイミングで、平時の作業員だけでは数が足りなくなるからね。地方からの増員に志願してもらった」

提督「……その中の一人が、黒提督だった訳だ」

川内「そうだよ。その集めた主張派の人々には、人数で提督を推してもらうつもりさ」

川内「……今は有事なんだ。中央はあなたを欲している。敗北を恐れる者からはケープゴートとして。勝利を願う者からは切り札として。」

川内「でも中央に呼ぶ口実が無い。そこで、扱い難い艦娘ばかりの、夜戦隊のポストが空くのさ。幸いにも、提督には厄介な左遷島をなんとかする手腕がある。ならば、と。中央はそう判断する……と、アタシは踏んでる」

提督「そう上手く行くとは思えんな」

川内「裏が取れてない訳じゃない。外野の一押しも用意してある。勝算はあるよ。何より……これは、あなたの為なんだから!」

川内「赤城。愛宕。霧島。那智。大反攻戦で沈んだこの四人、きちんと成仏させてあげないと、なんでしょ?だって。それが、あなたが頑として提督権を手放そうとしなかった理由、でしょ?」

ここまで

自分が思ってた以上に不知火と加賀がドロドロしてた……

あああ……
最後、ケープゴート=スケープゴートです

あと、那珂ちゃんはスレ内に存在しているッ……!

提督「……」

川内「準備は出来てる……後は、提督がこの話に乗るだけ、だよ」

提督「そいつは、どうも」ぐい

神通「……提督。我ら四人は滅私、粉骨砕身の覚悟を以って、あなたの手足と成りましょう」

龍田「血が見れるのなら、何だって構わないわぁ」

天龍「斬り込みはオレに任せな」

提督「やれやれ。どいつもこいつも頼もしい限りだな」ぐい

川内「ね、提督……来て、くれるよね」

提督「……まぁ、気持ちは嬉しいが、その申し出は受けられん」

川内「……一応聞くよ。どうして?」

提督「残された左遷島の艦娘はどうなる?俺は提督だ。かつて敗れたとはいえ、俺には信念がある。今の艦隊を裏切る事は出来ない」

川内「んー……やっぱそうか……冷静だなぁ。酔わせる為に、貴重なお酒も用意したんだけどなー。ま、もう少し考えてみてよ。まだ、猶予はあるからさ。アハハ」

提督「……」

川内「……よく、考えてよ。……赤城とか、単騎でも本当に殺されるぜ、提督」

提督「……その時は、その時だ」ぐい

川内「……ま、今晩はここまでかな。あんまり遅いと、提督のワンちゃん達が黙ってないだろうからね」

提督「……失礼する」

川内「んー。またね、提督」

神通「お気をつけて」

提督「ああ……っと」フラ

川内「おっと。しっかりしてよ」

提督「悪いな……では」
ガチャ、バタン

川内「んー……そんなに飲んでない筈なんだけどな」

天龍「ボトル半分空いてるぞ?」

川内「そこそこだよ。……神通、提督が無事に帰れるかどうか、影からで構わないから、見てきてくれるかな?」

神通「わかりました」

宿舎


コンコン
提督「私だ。会議は終わった」

ガチャ
榛名「お疲れ様です、提督!」

不知火「お疲れ様です。頼まれていた資料は出来上がっています」

提督「ああ、ありがとう」

不知火「今日ももう、遅いですから……お疲れでしたら明日、お渡ししましょうか?」

提督「ああ……すまないが、そうして貰えると助かる。ご苦労だった。二人も休んでくれて構わん」

榛名「……おやすみなさい、提督」

不知火「おやすみなさい」

提督「うむ。おやすみ」
バタン

榛名「……提督から、すごいお酒の匂いがしましたね……心配です」

提督の自室


提督「……」

扉を閉めると、部屋を闇が支配する。防諜の為か、しっかりとしたドアには隙間はなく、廊下の光を通さなかった。また、部屋に備え付けられた窓のカーテンは綺麗に閉められ、光の差し込む余地はない。

提督「暗いな……」

提督は灯りに手を伸ばそうとして、やめた。そして、そのまま暗闇に抱かれるかの様に、備え付けられたソファに深く腰掛ける。

提督「……疲れた」

溜息。そして、訪れる沈黙。体を支配する気だるさに耐え兼ねた提督は、目を瞑り、物思いに耽ることにした。

提督(川内の誘い、か)

提督の目的、その助けになると川内は豪語していた。

提督(……確かに川内の提案は魅力的で、現実的だ)

しかし。

提督(川内の言う目的と、俺の本来の目的は違う……)

悲しいけれど。

提督(川内の誘いに乗れば、俺は艦娘を、足柄を、鳳翔を、雷を、隼鷹を、不知火を、榛名を、そして何より、自分の信念を裏切る事になる)

自嘲する。
己の大義を失って尚、生きる意味などあるのか、と。

提督(過去、か)

どこで間違えたなど、そんな葛藤は遠く過ぎ去った。心に残ったのは悔恨のみ。

提督「……」

昏い、昏い部屋の空気が、質量を持って。提督に重く、重くのしかかってくる。
提督は、ソファから立ち上がる事が出来ないでいた。
次第に彼が息苦しさを感じ、服の前をはだけさせると、首元に吊るしたペンダントが露わになる。
提督はそのペンダントも手探りで外し、ソファの肘置きに置いた。

やっと、苦しさが少し和らいだ時。

提督(……嗚呼)

提督の心の隙に、魔は忍び寄る。

提督(逆に、今俺が死ねばどうなる?)

全てを放り出して、逃げてしまいたい。そう、心の中で呟く。
部屋の闇が、その色を増した。

提督(……死ねば、あいつらは来ないんじゃ、無いのか?)

わからない。わからない、けれど。

罪も。後悔も。信念も。

提督(全部忘れて、楽になってしまいたい)

いっそこのまま、この重圧で潰れてしまいたいと。
そう、思う。
提督の視界は、閉じられた瞼の裏側、闇の中をグルグルと回っていた。

………
……



ふと。
キィィ……カタン、と音がした。

それは、ドアの空いた音か。窓の開いた音か。
提督は瞼を開こうとしたが、上手くいかない。まるで、空気がねっとりと貼り付いているようだ、と提督は感じる。そのうち、誰かが提督に、優しく話し掛けてきた。

「……提督?大丈夫ですか?」

提督「……ああ……」

この声は誰だったか。提督にはわからない。わからないが、知っている。そんな声。

「ソファで寝ていては、風邪をひいてしまいます」

フワッと来た、浮遊感。
提督は誰かに持ち上げられている。
抵抗しようかと考えたが、やめた。
このまま自分を任せてしまおう、と開き直る。瞼は相変わらず重い。
そんな提督の頬を、誰かの髪が優しく撫でると。
どこか懐かしいような、そうでもないような、不思議な香りが提督を包んだ。

どうやらベッドまで運ばれたようで、提督の体は柔らかいマットレスの上に背中からゆっくりと降ろされた。

「……飲み過ぎですよ」

クス……と小さく笑い、優しく告げる誰かの言葉に、提督は初めて自分の状態を気付かされる。

提督「……そうか、俺は酩酊しているのか」

それで、体が思い通りに動かないのか。思えば、本土に着いてからは、短く浅い眠りしかしていなかった、と提督は自分を振り返る。
昨晩は特に、考え事をしてあまり寝ていなかった。今日は体調が良くないのに、調子に乗ってしまったな、と。

「……お休みに、なられますか」

どこか、愛情が感じられる声で提督に語りかける。
提督はだんだんと薄れゆく意識の中、無言で頷いた。

「……では、私はこれで……あら?この、ペンダントは……」

その声の主は、自分がベッドから離れる際に、ソファの肘置きに放置されたペンダントに気付き、興味を示した。

提督「なんだ。……欲しければ、くれてやる」

世話をさせた駄賃だ。提督は投げやりに言う。先程まで緩やかだった眠気の波は、今や津波のようになって提督に襲いかかっていた。

「……ありがとうございます。大切に、しますね……」

そう、嬉しそうに言って、誰かはペンダントを懐にしまった。

その言葉が提督の鼓膜を震わせた時は、提督の意識が深淵へと旅立つ瀬戸際。

「……おやすみなさい、私の提督……」

小さく苦笑し、その声の主は提督の頬を愛しそうにそっと撫でると、その場を後にした。

いつしか部屋の重圧は消え、提督は安らかな寝息を立てていた。

ここまで

本土編もあと少し

翌朝


「……とく、提督」

提督「ん……ああ?……榛名?……」

榛名「おはようございます」

提督「……おはよう」ぼーっ

提督「……部屋の鍵、空いてたか?」

榛名「は、はい。30分前にお伺いしたのですが、全く反応が無かったので……ついドアノブに触れてみたら、ドアが開いて……えへへ」

提督「そうか。……待て、30分前?……今、何時だ……?」チラ

0830

提督「……!」ガバッ

榛名「!」ビクッ

提督「……いかん……寝坊だ……!」

………
……



中央鎮守府、会議室


中央長官「おはよう、諸君。揃ったな。会議を始めよう」

提督「(提督就任以来、初めて寝坊したぞ……今回は間に合ったが、榛名が起こしに来てくれなければ危なかった) 」

提督「(しかし、榛名の奴……妙な事を言っていたが、まさか俺の部屋に30分も居たのか?違うよな?) 」

提督「(……そう言えば、昨晩部屋に来たのは榛名だったのか?聞くのを忘れていた……)」

中央長官「さて、今日は昨日のーー」

………
……



中央長官「では、情報開示をするという決定でよろしいかな?」

一同「……異議なし」

中央長官「よし、それではこの方針は決定だな」

提督「(よし、よし……)」

中央長官「次に、具体的な作戦の方だが……」

北方長官「断固として進軍を提言致します!」

提督「……まずは防衛線の強化を」

中央長官「……ふむ」

北方長官「大反攻戦では深海棲艦化した艦娘を中心として、組織立った行動が見られた。時間が経てば経つ程、敵戦力は強固になると予想される!今、叩くべきだ!」

提督「……今必要なのは柔軟な対応です。物資を蓄え、航路を整備し、戦略を整える事こそがそれに繋がります」

北方長官「平行して行えば良いだろう?」

提督「こちらの手勢が少数である以上、戦線を拡大すれば前線を突破された場合、取り返しのつかない事態に陥る可能性が高い事が推測されます」

北方長官「防衛線を固めた所で、それは同じだ。深海棲艦は数が多い。それらの統制が取れた時、防衛線とやらが絶対に突破されぬ自信があるのか?」

提督「その可能性を減らす為の防衛戦略を組み上げてーー」

北方長官「ーー!ーー」

………
……



東方長官「ですからそれはーー」

南方長官「しかしーー」

中央長官「……皆。少し、良いか」

一同「はっ……」

中央長官「私は、提督の案を推す」

提督「……」

北方長官「し、しかし!」

中央長官「落ち着け。無論、理由がある」

東方長官「それは……?」

中央長官「昨晩、三号計画について、国から許可が下りた」

北方長官「……!」

提督「……?」

中央長官「提督と北提には知らせて居ないが……丁度良い。教えておこう」

北提「は……」

中央長官「三号計画とは、大和型戦艦、伊四○○型潜水艦、装甲空母等の大型艦の建造を目的とする計画だ」

提督「……」

中央長官「これらは対深海棲艦の切り札的存在となるだろう。だが、その建造は手探り状態だ。就役までには凄まじい量の資源が必要となる。それこそ、これまでの数十、数百倍のな」

北方長官「……」

中央長官「今は資源を蓄えたい。各方面で、資源採掘場の奪還は進んでいる。最近だと、北提がかつての大規模資源採掘場を奪還してくれたな」

北提「は……」

中央長官「奪還した海域のシーレーンを回復、資源を集積し、戦力を増強する。その必要性も視野に入れておいてくれ」

会議終了後、鎮守府庁舎前


提督「話がトントン拍子に進んだな……防衛線構築に全力、か。鶴の一声だな。まぁ、大和型や大鳳、伊号への期待値を考えれば当然とも言える」

提督「(沈んだら深海棲艦化するという情報開示……これは無理な進軍への抑止力となるだろう。同時に、虐待等のストッパーにもなる。……無論、愛情のストッパーにも)」

提督「しかし、これで艦娘の待遇は更に改善するはず……悪くない結論だ」

提督「(そして、現在の戦術について知りたいと中央長官に申し出た所、許可も降りた。この後、今の作戦参謀と会える手筈だが……参謀は山口か……昔、数度会ったが……出世したな)」

提督「(……そして飛龍、蒼龍が居るようだな……これは自分から頼んだとは言え、気が重い)」

提督「……」

提督「雨が、降りそうだ」

訓練所


飛龍「でさ、山口さんがいきなり長官に呼ばれて。英雄提督に航空戦見せろって」

蒼龍「へぇ……」

飛龍「加賀もこの鎮守府に居るんでしょ?私たちじゃなくて、加賀に聞けば良いのにー」

蒼龍「どうせ北方長官が渋ったんじゃないの?北方長官は北方長官で面倒くさい人だよねぇ」

飛龍「わからなくもないけどさ。……てか、山口さんは結局英雄提督に見せるんだね、戦術。あの人、英雄提督を嫌ってたのにね……」

蒼龍「さぁ……昔対抗意識燃やしてたみたいだし、リベンジ、なのかな?」

飛龍「あんなクズにリベンジする事無いと思うんだけどな」

蒼龍「英雄提督はクズだけど、提督としての手腕は確かだったからかな……実際、今の航空戦術も英雄提督の航空戦術を叩き台としてる訳だし……」

飛龍「戦術はね?」

蒼龍「まぁまぁ、お仕事だから我慢しよう……」

飛龍「……本当は、顔も見たくない……」

山口「待たせたな、二人」

飛龍・蒼龍「はっ!」ビシッ

山口「英雄提督がいらっしゃった。準備をしておいてくれ」

飛龍・蒼龍「はっ!」

………
……



訓練所、展望台


提督「……よろしく頼む」

飛龍・蒼龍「……よろしくお願い致します」

山口「よし、二人とも。艤装の装着を許可する。湾内の訓練区域へ急げ」

飛龍・蒼龍「はっ!行ってまいります!」
タタタ……

提督「……」

山口「……英雄提督は、最新の航空戦術をご覧になるのは初めてですかな?」

提督「書面の方で確認はしておりますが……この目で見るのは初めてです」

山口「……現在の空母には、艦戦をかなり多めに積み、制空権の確保を最優先としています」

提督「……ほう……(北提の作戦報告書にも同じような事が書いてあったな……)」

提督「(……加賀の爆撃が五十鈴に当たらなかったのはその為か?本来の俺の構想、そして加賀の腕ならば、爆撃の密度の関係上いくら爆撃パターンを知っていても、一発も命中しない、なんて事はそうそう……)」

提督「……しかし、私が前線に立っていた頃とは、艦隊の運用思想がかなり異なるようですね」

山口「そうですね。貴方は空母艦載機による飽和攻撃を戦術の主眼に置かれたようですが。私は、空母は制空権の確保、沈没まで至らずとも敵の漸減を目標としました。爆撃パターンは貴方の考案したものをそのまま使用させて頂いていますが」

提督「……敵を撃破ではなく、敵戦力の漸減で留め、あくまで随伴艦の砲撃で決着を着けるという事ですか」

山口「御察しの通りです。これで、ほぼ全ての空母・軽空母がポテンシャルを発揮できています」

提督「……」

飛龍・蒼龍『準備完了しました。命令待機中です』

山口「始めてくれ」

飛龍・蒼龍『了解。訓練を開始します』

遠くで二人の空母が艦載機を発艦させてゆく。

提督「(……あくまで、艦載機は直線的な機動だな。その分、艦戦の数を増やす事で敵に対処するという事か……)」

山口「猛追する敵に対し、艦爆や艦攻をループ・バレルロールで逃がしつつ、艦戦を敵艦載機のケツに捻り込む……貴方の空母がしていた事です」

提督「……」

山口「しかし、多数の艦載機で同時にそんな事を出来るのはほんの一握りだけ。赤城や加賀以外に、満足にそれを行える艦娘が存在しましたか?」

提督「……」

山口「貴方は、空母以外には対空兵装を積んで支援させた。他にも、艦娘に格闘戦の基礎を叩き込んだ」

提督「……」

山口「時代は変わりましたよ、英雄提督。最早、空母以外に対空兵装を装備する事はありません。複雑な航空機動も、艦娘の肉弾戦も必要無いんです」

提督「……」

山口「それで戦果を上げる時代は終わりました。……今の私の戦術は全ての艦娘にとって有効な戦術であると、自負しております」

提督「……そうですね。私もそう思います」

山口「……貴方も変わりましたね。昔のあなたは、自分の戦術にもっと自身を持っておられた」

提督「貴方の仰る通り、時代は変わりましたから」

山口「……」

提督「当時は艦娘が出現して間も無い頃でしたから、その殆どが未熟でした。敵との相対速度が20ノットから30ノットの状態で、遠距離から人間大のサイズの的に砲撃を当てられる者が一体どれ程存在したのか」

山口「……」

提督「当然接近する必要がある。その時の護身にと教えた格闘術が役に立ったから、それを体系化したまでの話です」

山口「……」

提督「まぁ、砲撃がそんな状態でしたから、被害もかなり出ていました。遠距離戦の訓練をしようにも、人間に艤装を使っての訓練法などわかるはずもありませんでしたから」

山口「……」

提督「……艦娘黎明期の空母達は、自分でも艦載機をどう扱って良いものかわかっておらず、軍にとってもただのお荷物でした。しかし私は、空母に遠距離戦闘の活路を見出した。なんとか使った結果……後の主張派の大失態に繋がる訳ですが」

山口「……」

提督「艦娘の練度が向上し、砲撃が精密になった事は非常に喜ばしい事です。無駄な装備も要らず、空母に無理を強いる事も無い、良い戦術だとお見受けします。私の戦術は、皆が暗闇を手探りで進む中、間違った方向に明かりを灯したようなものですから」

………
……



訓練所内


蒼龍「ふぅーちかれたー。途中から雨も降ってきて最悪だったね」

飛龍「艦載機をコントロールするの、中々大変なのよね。これで英雄提督が満足してないとか抜かしたら……」

山口「二人とも、ご苦労」

飛龍・蒼龍「はっ!」ビシッ

山口「楽にしてくれ」

飛龍・蒼龍「はい」

山口「英雄提督は先程御帰りになられた。お前たちの事を褒めてらっしゃったよ」

飛龍「……褒められてもねぇ……」ボソッ

蒼龍「……飛龍!」ボソッ

山口「……艤装は工廠に回しておこう。今日はもう上がって構わん」

飛龍・蒼龍「はい!ありがとうございました!」
タッタッタ……

山口「……間違った方向に灯した明かり、か……」

山口「かつて一世を風靡した英雄提督様にそんな事を言われると、不安になるな……全く」

ここまで

次スレ行けそうですね!
読んで頂けて嬉しい限りです

最近説明回とドロドロ回多いですが、ゆるりと進めていきます〜

訓練所前


強い雨の中、訓練所の軒下でそれをやり過ごそうとしている男が一人。

提督「……風情の無い雨だな」

男の呟きは、水滴が地面を叩く乱暴な音に掻き消された。

提督「暫く待つか」

ふぅ、と溜息をつき、壁にもたれかかる。
しかし、一向に雨の止む気配は無かった。
侘び寂びの欠片も感じられない雨音に、提督がそろそろウンザリしてきた頃。来訪者があった。

榛名「提督。ここにいらっしゃったのですね」

提督「……榛名」

蛇の目傘を差す彼女は、雨の中から現れた。その手に、明らかに男物と分かる大きな番傘を携えて、こちらへと駆け寄ってくる。

提督「助かる。よく場所がわかったな」

榛名「榛名は、提督の秘書艦ですから」

少し胸を張り、そう得意げに言う彼女は、機嫌が良さそうだ。どうぞ、と笑顔で提督に番傘を手渡す。
ありがとう、と礼を言い番傘を受け取る提督。その時、榛名の手が濡れて氷のように冷えている事に驚き。次いで、榛名の服もずぶ濡れである事に気が付いた。

提督「……すまない。随分と探させたようだ」

榛名「いえ、大丈夫ですよ」

提督は、相変わらずニコニコしている榛名に再度礼を告げた。

提督「……所で、不知火とは一緒じゃないのか?」

榛名「急な雨だったので……抜け出してきちゃいました……少し、お話しておきたい事もありましたので」

提督「……一声掛けてきただろうな?」

榛名はその問い掛けに答えず、少し申し訳無さそうに、えへへ、と笑った。

提督「……言い付けは守ってくれ、榛名」

眉間に手を当て、提督は榛名を咎める。それに対し、榛名は少し慌てて言葉を発した。

榛名「そ、その!お話したい事が不知火さんの事でして……」

提督の表情が少し硬くなる。

提督「そうか。……宿舎に帰りながら聞こう。あそこなら、替えの服も風呂もある」

そう言って、提督は黒く、大きな傘を開き、二人は雨の中を歩みだした。

途端に激しい雨が彼らを包む。提督は、飛来する雨粒の冷たさに耐え兼ね、左手を上着のポケットに突っ込んだ。
その様子を少し後ろで見ていた榛名は、何かに気付き、考え込む様な表情になって、間も無くそれは小悪魔的な笑みに変わり。

そして突然、提督に向かってつんのめった。

真っ赤な蛇の目傘が宙を舞う。提督はそれを視界の端に捉えた。

提督「……!っと……」

反射的にポケットから出した左手は、榛名の右手を握ることに成功。
鮮やかな蛇の目傘が水溜りに落ちる頃、榛名は提督に抱き留められるような体勢になっていた。

榛名「……ごめんなさい」

暫くの沈黙の後、えへへ、という笑みと共に榛名は謝る。

提督「気をつけろよ」

そう言って、提督は左手を離そうとしたが、榛名は繋いだ右手を頑なに開こうとしなかった。
予想しなかった抵抗に、驚いた提督が振り向く。榛名はその両目をじっと見つめながら告げた。

榛名「……傘が、ダメになってしまいました」

その視線は、冷たい雨の中、どこか熱を帯びていた。

短いですが、ここまで!

バケツをひっくり返したような土砂降りの中を走る影が五つ。

龍驤「サイッアクや!何やねんこの雨!」

日向「やれやれだな……」

北提の艦娘達である。

響「自主訓練しないと、って飛び出したのが裏目に出たね」

瑞鶴「そもそも誰かさんが道を間違えるからっ……」

龍驤「しゃあないやろ!唯一鎮守府の地理を把握してる加賀が、今日はボーッとしてんねんから!」

反対側を指差して、多分こっちって言われたらどうしようもないやろ……とボヤく龍驤。

加賀「上々ね」

龍驤「やかましいわ!」

ギャアギャアと騒ぎながら駆け抜ける五人組は、どうやら訓練所を目指しているようだ。

龍驤「ヤバイヤバイ……濡れスケ状態やで……」

瑞鶴「フルフラットだし大丈夫よ」

龍驤「何がやねん。お前も変わらんやろ甲板胸」

瑞鶴「……」

殺気のこもった瑞鶴の視線を、龍驤は軽くいなす。

日向「しっかし、始める前からこうもずぶ濡れだと、訓練へのやる気も削がれるな……」

龍驤「自主訓練やしなぁ。もう風呂行かん?」

瑞鶴「それ、賛成」

響「ダメだよって言いたいところだけど……空母にこの土砂降りはキツイよね。艦載機飛ばせるの?加賀さん、いける?」

加賀「……え?……問題ないわ」

瑞鶴「いやいや離発着困難でしょ……」

響「……全然話聞いてないね……なんでこんな状態に?」

龍驤「よーわからん。昨晩部屋を出て行ったと思ったらニヤニヤしながら何かを持って帰って来てな。
それからずっと、えろうご機嫌やけど上の空や」

大げさなため息と共に告げる龍驤。

龍驤「……しっかし、あんなニヤけた加賀、初めて見たわ」

加賀「……」

加賀は無言で龍驤を小突いた。

龍驤「イタッ!なんでこんな時だけちゃんと聞いてるんや!」

うがー!と気炎を吐く龍驤。少しだけトゲトゲしかった空気が弛緩した。ふふふ、と誰からともなく笑みがこぼれる。

日向「……お?あれは訓練所じゃないか?」

日向が前方の、靄がかっている大きな建物の影を見つけた。
逸る心と、叩きつけるような雨への鬱憤が自然と彼女らを浮き足立たせる。

その瞬間は唐突に来た。
訓練所へ急ぐ集団と、訓練所から離れる者。土砂降りのせいで、広くない道幅であるにも関わらず、お互いにかなり接近するまで気が付かない。
両者がすれ違うその時、先頭を走る龍驤は、視界に入った物を判別する事なく走り去った。続く日向もチラリと人影を見たが、気に留めた様子はない。響に至ってはそれを見ようともしなかった。

だが。
加賀は。

番傘が一つ。
その下に人影が二つ。
向かって右方、その影の動きが、何故だか自分の注意を惹きつける。
背筋を伸ばして歩くその男は。

傘が揺れ、視線が交錯するその瞬間。
突如、稲光。
雨のカーテンに、提督の姿がはっきりと浮かび上がる。その左腕に縋る榛名と一緒に。
雨の音も何もかもが消える、一瞬の静寂。
加賀の鮮やかな栗色の瞳が、大きく見開かれた。
そこへ、光を追う轟音。
跳ね上がった心臓はその為か、あるいは。

提督は、加賀の視線から逃れるように目を逸らし、顔は傘の中に隠れてしまった。
その歩みの速度は変わらないままに、両者はすれ違う。

加賀は思わず足を止めた。否、止まってしまった。過ぎ行く黒い番傘に、目は釘付けとなって、首を引く。
体を叩く雨が痛い。時間がゆっくりと過ぎる。視界から番傘が消えそうになる。更に上体を捻る。呼吸が詰まる。
それでも見つめる。

しかし。
提督が振り向く事はあらず。
加賀の小さい呟きは雨音に吸われ、ただ二人は離れるのみ。

とりあえずここまで

また夜に続きをば

すれ違い様に見えた榛名の横顔は、幸せそうだった。

様々な思いが一瞬で胸を去来し。
冷徹の仮面が落ち、感情が溢れ、泣きそうになって。

その時、加賀は後ろから走って来ていた瑞鶴に、高速で激突された。
不安定な姿勢から突き飛ばされる加賀。抱いていた感情は、その時思わぬ形で表に出た。

加賀「痛い……!」

それは、普段加賀の発する事がない声色。最も幼稚で本能的で単純な心の発露。

驚いて振り返る龍驤ら。
加賀は強かな雨の中、うつ伏せのようになって、腕で上体を起こしていた。

その声は提督の耳にも届き、彼の歩みを縛った。
息が詰まる。
どうやら加賀は転んだらしい。
加賀の声が体の中を反響して、振り返りたい衝動に駆られる。
加賀は足腰が悪いのだ。今すぐ駆け寄って、無事を確認してやりたい。
しかし、提督は真っ直ぐ前を向いたまた、眉根を寄せて目を瞑り、唇を噛んでその感情をやり過ごした。
そんな提督と後ろの加賀を、榛名は不思議そうに交互に見比べる。

榛名「提督?」

小さく首を傾げ、愛しい人の顔を下から覗く榛名の目には、提督の行動が些か奇異に映った。まるで、何かを我慢するような仕草は、何を示しているのか。

提督「……いや……」

提督は榛名の声で、ふ、と我に帰った。
その背後では、龍驤や日向がうわずった声で加賀に何やら話しかけている。だが、あれだけ仲間が居るのなら、大丈夫だ。そう自分に言い聞かせ、提督はその場を離れようとする。
その時、あの声がもう一度聞こえた。ザァザァと、自己主張の激しい雨の中、決して大きくない、加賀の声がはっきりと。

加賀「痛い……」

提督の呼吸が震えた。
瞳が揺れ、目が泳ぐ。
榛名には、その声は聞こえなかった様子で、いよいよ怪訝な表情になった。提督の左手を掴む手に、少し力がこもる。

提督は再び立ち止まった。
逡巡の後、彼はチラリと後ろを伺う。我慢出来ずに。
再び交錯する視線。
自分を取り囲み、心配する仲間を他所に、加賀は提督だけを見つめていた。いつか見た、泣きそうな顔で。
それは雨粒のカーテン越しに、やけにはっきりと見えた。

提督「……すまない、榛名。傘を頼む」

榛名「え?」

確かに掴んでいた提督の左手は、驚くほど簡単に、スルリと榛名の元から抜け出した。
突然の事で榛名が呆気にとられているうちに、番傘を半ば押し付けるように彼女へ渡し、提督は雨の中を駆ける。加賀の元へ。

龍驤「ちょ、加賀!立てるか?」

加賀「……」

瑞鶴「……ごめんなさい……!」

日向「落ち着け、瑞鶴……とりあえず加賀を濡れない所へーー」

沈黙を貫く加賀に、北の艦娘達は焦りを募らせるが、それも提督の到着までだった。

提督「……すまない、少し退いてくれるか」

日向「!」

加賀「……ていとく」

提督「何処が痛む。腰か、足か」

加賀「……わからない」

提督は無言で加賀を抱き上げた。

加賀「ぁ……」

提督「この状態でどこか痛むか」

加賀「いえ……」

提督「……良し。取り急ぎ、私は加賀を船渠まで運ぶ。北の艦隊にも同行願いたい」

日向「……わかり、ました」

提督「ありがたい。……榛名!ドックに行くぞ!」

礼を述べた後、提督は少し遠くで佇む榛名に向かって大声で告げた。
ややあって、わかりましたー!と反応がある。
よし、と提督は呟き、加賀を抱いたまま船渠へと向かった。

ああ、私はこの人に甘えてしまった。
この人は、やっぱり優しい。
不思議な安心感を加賀は覚えた。
提督の首に手を回し、姿勢を安定させる。
チラリとこちらを確認する提督と目が合った。こんな近くで。私を案じて。
それが加賀には、堪らなく嬉しい事だった。

船渠は訓練所に程近い場所にあり、所謂風呂のような出で立ちで、さながら湯治を行っているかのように艦娘を癒す。
北の艦隊と提督及び榛名は、道中全員が全くの無言で船渠まで来た。ただ一人、加賀だけは安らかな雰囲気に包まれていたが。

提督「着いたな……」

提督はドックの中に入ると、加賀をいきなり入渠させず、艦娘が各々のコンディションチェックに用いる個室の前まで運んだ。

提督「これから少し加賀の状態を確認するが……北の艦隊から誰か一名、残ってくれるか。その他は、ずぶ濡れだから風呂に入ってこい。北提には私が連絡を取る」

瑞鶴「……私が、残ります」

日向「私も残ります」

龍驤「ぜ、全員残ります!」

提督「……どうせ加賀は入渠させるが」

日向「それまで待ちます」

提督「……ではそこで待て。榛名も頼む」

日向「あの」

提督「……なんだ」

日向「部屋はお二人だけ、ですか」

加賀と提督が密室で二人きりになる事に危険を感じたのか、日向が提督に尋ねる。
それには提督が口を開くよりも先に、加賀が反応した。

加賀「大丈夫」

日向「っ……」

提督「……という事だ。暫し、加賀を預かる」

そう言って、提督は加賀を抱いたまま個室へ入った。

加賀を、部屋の真ん中に置かれた台の上に寝かせ、その状態で問う。

提督「どこが痛む?」

少し考え、首を振る加賀。仕方が無いので、提督は。

提督「少し、脱がせるぞ」

加賀「ん……」

提督は手慣れた様子で、濡れそぼり加賀の肌に張り付く着物を脱がしてゆく。その下から現れる肢体もやはり濡れて、部屋の照明に艶かしく光った。

下着だけになった加賀を見て、思う。決して綺麗な体では無いと。
その肌は戦闘や訓練の傷跡が目立ち、かつて酷いダメージを受けた脇腹から太ももにかけては白く変色している部位も多い。
女性らしい部分といえば、その胸の豊かな膨らみだけで、体躯は基本的に細く、そして筋肉質である。
決して綺麗では無い。しかし、これは美しい。提督は思う。生きている証だと。

加賀「あの……提督……あまり見られては、恥ずかしいのだけれど……」

頬を薄っすらと染め、恥ずかしさに身を捩る加賀の瞳に、提督の姿が写る。濡れて張り付く髪が煽情的だ。
しかし、提督はそんな加賀を直視して尚動じず、冷静に答えた。

提督「今更気にする仲でもあるまい……それよりも、腰と足のサポーターはどうした」

加賀は少し困ったような顔をした。

加賀「……最近調子が良かったから……」

宿題を忘れてしまった子供のような顔で、上目遣いのまま告げる。

提督「仲間に隠しているのか?故障の事を」

加賀「……そういうことではなくて……あれ、蒸れるの……すごく……」

提督「……とりあえずプラスチックテーピングで固定してから入渠させる。良いな」

提督はやれやれと言った風で、個室に据えられた引き出しから耐修復液仕様のテーピングテープを取り出した。

そして提督は加賀をうつ伏せになるように転がし、告げる。

提督「下、脱がすぞ」

加賀「……はい」

赤面し、もぞもぞと動く加賀をよそに、提督は手早く下着を外した。
やはり筋肉質な臀部が露わになる。

提督「確かお前がダメなのは大腰筋と大臀筋、大腿筋あたりだったな……」

提督は事務的な動きでテープを次々と貼っていった。

提督「……きちんと食事は取っているか」

提督はテーピングする手を止めずに問う。

加賀「……ええ」

加賀もうつ伏せのまま答える。
それから暫く、提督は加賀に質問を重ねた。今の艦隊はどうか、司令官はどうか、無理はしていないか……
他愛も無い物ばかりだが、全て自分を慮る質問だった事を、加賀は覚えている。

提督「……そう言えば、酒を飲み過ぎて暴れたりしてないだろうな」

加賀「……」

提督「お前……」

加賀「……あなたを、悪く言う人が悪いのよ」

背面の固定を終えた提督は、はぁ、と溜息をついて、仕置とばかりに前触れも無く加賀を裏返した。躰が露わになる。
突然の事に、彼女の口から、やっ……と小さな声が漏れ、咄嗟に腕で顔を隠した。

提督「少し我慢してくれ」

提督はそう言い、太ももにテープを手際よく貼っていく。
内股に手が擦れる度、ん、と加賀の口から吐息が漏れた。
暫くの間、無言の空間にテープをロールからはがす音と、加賀の吐息だけが響く。
最後のテープを貼り終えると、提督は戸棚からバスタオルを取り出し、加賀に被せた。

提督「そのまま入渠してこい。それで良くなるだろう。……あと、隠している訳でないのなら、今日からはきちんとサポーターを着けろ。良いな」

そのまま提督は部屋から出て行こうとする。

加賀「……提督。あなたはーー」

提督「……なぁ、加賀」

提督は言葉を重ねる事で、強引に加賀を遮った。そして、ドアに手を掛け、困ったような笑顔を加賀へ向ける。

提督「その、なんだ。……すまない」

その微笑みは水平線に沈み行く夕陽のように、儚くて。そして、優しかった。

加賀「……待ってーー」

提督は加賀の声を最後まで聞かずに部屋を出てしまった。

加賀「……提督……」

残された者の感じる寂しさは、まるで夜。

ここまで
色気を出すのは難しいですね

第1章、もう少し?結構?続きます

バタン
提督「……処置は済んだ。誰か、中の加賀に肩を貸してやってくれ」

瑞鶴「……!」ダッ

龍驤「瑞鶴!まちーや!」テテテテ

提督「響。入渠申請は加賀の名前で出しておいたと、加賀にそう伝えてくれ」

響「……わかりました」タッタッタ

提督「ああ、日向は行くな。少し残れ」

日向「……はい」

提督「榛名、問題は無かったか」

榛名「榛名は大丈夫ですよ」

提督「すまんな……日向、北提の現在地は何処だ」

日向「はっ……中央作戦司令室より召喚を受けております」

提督「そうか。加賀の状態は思ったより悪く無い。緊急連絡を取る程でもないだろう。作戦司令室の意向を妨げる訳にもいかんしな……
ドックからも連絡が行く筈だが、お前の口から直接、北提に私が処置した旨を伝えておいてくれ。
あの程度なら、それで事足りる筈だ」

日向「……はっ」

提督「頼んだ。行くぞ、榛名」

榛名「はいっ」

提督「……ああ、そうだ。これを渡しておこう」

日向「……?」

提督は紙片にその場でサラサラと何かを書きつけ、日向に手渡した。

提督「私の電話番号と宿舎の場所だ。併せて伝えておいてくれ」

日向「はっ」

提督「ではな」

入口へ向かうと、船渠の外は相変わらず、雨が降っている事がわかる。
提督が引き戸を開けた時、後ろから微かに加賀の聲が聞こえた気がする。

提督「……いや、雨の音だな」

榛名「?」

提督「行こう」

榛名「はい」

提督と榛名は、雨の中へと踏み出した。
ザァザァと、降る雨の中へ。

………
……



戦闘の結果、余りにもダメージが深く、艦娘単独での本体の生命維持に問題がある場合。艦娘は工廠に隣接した場所に運び込まれ、集中的に補修が行われる。

それ以外の場合はここ、船渠の入渠スペースだ。
ここは四つの修復液に満たされた一人用浴槽と、通常の大浴槽一つで構成されている。
修復浴槽は、主に艤装が大破や中破したが、生命維持に問題の無い艦娘が体の傷の治癒に用いる。
大浴槽は普通の風呂である。
今も、大浴槽で寛ぐ艦娘が二人……


飛龍「あぁ〜あったかい〜訓練後は此処に限る。今日は厳密には違ったけど」

蒼龍「風呂はいいねぇ」

飛龍「雨が止むまでここに居たい」

蒼龍「あんまり長くはダメだよ、長門さんがまた怒るって」

飛龍「良いじゃん良いじゃん。牛乳飲んでゆったり過ごそうよ〜」

蒼龍「ダメだって……こないだ、あの人が胃薬飲んでるの見ちゃったよ、私……」

飛龍「あの人は自分から苦労しに行くねぇ」

蒼龍「中央作戦司令室付きの艦娘なんだし、何かと、ね」

飛龍「ま、一艦娘の私達には関係ありませーん」

蒼龍「もう……」

ガララと、引き戸を引いて、三人組が現れた。両肩を瑞鶴と龍驤に支えられた加賀である。

瑞鶴「加賀さん、足元気をつけてね……」

加賀「……ええ」

龍驤「ちょ、ほんま頼むで……」

飛龍「(……誰が入って来たかと思ったら、加賀かぁ)」

蒼龍「……」

龍驤と瑞鶴は、そのまま加賀を修復浴槽に注意深く入れた。

加賀「ごめんなさいね」

瑞鶴と龍驤、後から来た響は通常浴槽に入った。

瑞鶴「いや……ほんと、私の不注意で……」

加賀「それは私が急に立ち止まったから。自分を責めないで」

龍驤「まぁまぁ。雨も降ってたし!おあいこってことで……」

瑞鶴「……」

龍驤「ほら!加賀も愛しの提督と近付けたし……」

加賀「……そうね」

瑞鶴「……それでっ!加賀さんが怪我したら意味ないよ!いくら、英雄提督に会えても……」

加賀「……」

飛龍「まーた英雄提督かぁ……」ボソッ

蒼龍「ちょっ……聞こえるよ!」ヒソヒソ

加賀「……久しぶりね、飛龍、蒼龍」

飛龍「久しぶり。北提のとこに配属決まって以来だっけ。加賀は、まだ提督のおっかけしてるんだ?」

加賀「……」

飛龍「てか、本格的に振られたの?」

蒼龍「ちょっと……」

飛龍「だって未だに、北提のとこにいるみたいだしぃ。航空戦術のお披露目も私がやる事になったしさぁ。加賀に頼めば良いのにーって思ってたんだよね」

加賀「……!」

飛龍「……そういえば、加賀。あなたの航空訓練のスコア、見たよ。
数年のブランクと怪我の所為で満足に訓練こなせてないのなら仕方ないけどさ……」

飛龍の、それまで浮かべていた薄ら笑いが消え、顔が昏くなる。

飛龍「ちょっと酷すぎだよね?案外、そういうとこを見てんのかもよ、あの計算高い英雄サマは」

加賀「……ッ」ギリッ

瑞鶴「ま、待って下さい……!加賀さんは、訓練での目標達成率90%ですよ?勘違いなさっているのでは……」

飛龍「んー?あなたが瑞鶴?」

瑞鶴「は、はい」

飛龍「……呆れた。加賀、どういう教育してんの?」

瑞鶴「なっ……」

飛龍「アッハッハ!一つ教えてあげるよ、ひよっ子。あんな訓練なんか、達成率100%が当然……一人前ならね」

瑞鶴「……」

飛龍「ダメダメだなぁ、加賀。……も、上がろっか、蒼龍」ザバー

蒼龍「……ん」ザバァ

飛龍が浴槽から出て引き戸に手を掛けようとした時、外側からガララと川内が戸を開いた。
川内は飛龍を見るなり、嫌そうな顔をして声を上げる。

川内「出た、気違い!」

飛龍は不敵な笑みを崩さず、答える

飛龍「何を自己紹介してんのさ、川内」

川内「……相変わらず言ってる事が、頭おかしいなぁ……」

飛龍「ハッ!冗談は顔だけにして欲しいね」

川内「……寝言は寝てからーー」イラッ

飛龍「アッハッハ!やっすい挑発に乗るなよ川内。だからお前はいつまでも夜戦隊なんだ。ほら、どいたどいた」

飛龍は苛立つ川内をドンっと押し除けて、脱衣所へと消える。
その後、入渠スペースに川内が入り、戸をピシャリと閉めた。

川内「気分悪……お?じゃじゃ馬と仲間達じゃん」

川内はザブザブと浴槽に入りながら話しかける。

加賀「……」

川内「なんか機嫌悪いなぁ。気違い飛龍になんか言われた?それか提督に振られた?」

加賀「……」

川内「アタシも提督の事ストーキングしてたら榛名にバレてさー。雨の所為で撒かれちゃった。それでビショビショになったから来たんだけどさ。不覚不覚。アハハ」

加賀「……」

川内「……皆だんまりかよー。面白くないなぁ。なんか言えよー」

瑞鶴「……質問、良いですか」

川内「お、いいよ」

瑞鶴「……あのお二人って何者なんですか?」

川内「飛龍と蒼龍?アイツらは今の第一艦隊、第一機動部隊の空母様だよ。つまり、今んとこ最強の一角、だけど……」

瑞鶴「え……」

川内「知らないんだ?意外」

龍驤「ウチは知っとったけど……」

響「瑞鶴って結構そういうのに疎いよね……」

瑞鶴「……」

川内「例えば、今の加賀、故障抱えてるし比較にならないけどー。今の飛龍は、全盛期の加賀より強いと思うよ」

瑞鶴「……!」

川内「でもアイツ、それは味方殺しちゃってからーー」

龍驤「え?」

加賀「川内!」

川内「……や、ごめんごめん。忘れてー。てか、加賀。そこで入渠してるって事は大破でもしたの?飛龍にやられたとか?」

加賀「……」

川内「聞いちゃいない……はぁぁぁぁ……
あ、そうだ。加賀。全く話題変わって、提督をストーキング中に聞いたんだけどさ」

加賀「……あなた、よくその単語を臆面なく使えるわね……」

川内「まぁまぁ。聞いてよ。その内容がさーー」

ーーーーー

提督『……で、不知火の話とはなんだ、榛名』

榛名『はい。この間、不知火さんと二人で居た時の事なのですが……少し、提督に対して不信感と言うか……不安と言うか……。
苛立ち。そう、苛立ちを抱いている様子が垣間見えました』

提督『……そうか……』

榛名『その事をご報告しておかねば、と思いまして……』

提督『それは有難い、が……余計に不知火を一人にして欲しくなかったな』

榛名『うー……ごめんなさい……』

ーーーーー

川内「って」

加賀「……」

川内「榛名の奴、不知火を出し抜いて、提督と二人きりだぜ?なんとかなんない?」

加賀「……何故、それを私に言うのかしら。(というか、着目すべき点はそこでは無くて……)」

川内「不知火と仲、良いだろ?」

加賀「……だったら、何?」

川内「なんか、作戦、練れない?」

加賀「……出来たとしても、お断りね。提督にご迷惑がーー」

川内「迷惑。迷惑?アハハ」

ザバァと、浴槽から上がり、川内は加賀に近寄った。そして、耳元で加賀にだけ聞こえるように囁く。

川内「……ワザとコケた、イケない艦娘が今更何を、言ってるのかな」

加賀「……!」

川内「本当は、ポッと出風情が何故提督の横に、とか思ってんだろ?」

加賀「違っ……」

川内「提督の気を惹く為の、加賀のあんな声……痛くない癖に……やらしいなぁ……」

加賀「……五月蠅いっ」

腕をブンッと振って、川内を遠ざける。

川内「おっとっと」

龍驤「ちょ、川内はんとやら!加賀さんをあんま動かさんといて!」

川内「……ごめんごめん。アハハ」

川内は元の湯船に戻った。

川内「ま、考えといてよ……アタシも協力、するからさ……」

川内はニコニコしていたが、その実、目は全く笑っていなかった。

ここまで

家路


雨の中。
ずぶ濡れの二人が、一応傘をさして歩いている。

提督「(不知火の話、気付いていない訳では無かった……が)」

提督「(……やはり、新人教育を、赤城と愛宕に任せるべきでは無かった)」

提督「(不知火の自信の無さの原因は、そこにある、か……クソ、本当にあの頃の俺は周りが見えて無さ過ぎた……!)」

提督「(……それよりも、帰路に宿舎へ電話しても、不知火が取らなかった……今はそれが怖い)」

榛名「っ」クチュン

提督「……帰ったら、早めに風呂であったまってくれ。
(……鎮守府内の誰でも利用できる船渠に、この娘を入れるのはちょっとな……)」

榛名「ごめんなさい……ご迷惑、でしたよね」

提督「そんな事は無い。助かったよ」

榛名「本当ですか?」

提督「ああ」

榛名「……良かったです」

提督「(そう……助かった、助かったんだが……)
そろそろ宿舎だな……」

榛名「あ、ほんとです……ね……」

霞む遠方の中、宿舎の影が見えた。
しかし、宿舎前にあるものを見て、榛名の言葉が尻すぼみに消えた。

榛名「……あぁ……」

苦虫を噛み潰したような顔。
その視線の先には。

提督「(……まぁ、こうなる、か)」

雨の中。
不知火は一人。
傘もささずに佇んでいた。

不知火「……お帰りなさい……」

提督「……只今帰った」

不知火「ご一緒、だったんですね」

榛名「……ごめんなさい……」

不知火「……いえ、無事でしたら、それで……」

提督「取り敢えず、中に入るぞ」

宿舎内


提督「榛名、お前たちの部屋に備え付きの風呂に入ってこい」

榛名「いえ、不知火さんが先に……」

提督「不知火は俺の部屋の風呂に入れる。行ってこい」

榛名「それでは提督がーー」

提督「良いから入ってこい」

榛名「……わかり、ました」シュン
バタン

提督「来い、不知火」

不知火「はい……」


提督の部屋


ガチャ
提督「私は着替えで済ませる。風呂を使え」

不知火「……またしても、榛名を一人に……申し訳、御座いません……」

提督「榛名の勝手な行動だと聞いている。気にするな」

不知火「……」ギリ……

提督「……不知火。まずは風呂に入ってこい。頭を冷やせ」

不知火「……はい」
テクテク……

提督「(……どうしたものか……不知火の不安定さに対して、恐らく榛名がイニシアチブを握ろうとしている)」

提督「(不知火に、艦娘達を纏め上げて欲しかったが……荷が、重かったか)」

提督「(……いや……この言い方は良くないな。不知火は決して無能ではない……無いんだが……)」

提督「……」

………
……



鎮守府庁舎、執務室


コンコン
山口「山口、出頭致しました」

中央長官「入れ」

ガチャ
山口「失礼します」

中央長官「英雄提督はどうだった」

山口「良い感触は有りませんでした。やはり、大反攻戦が尾を引いている様子で」

中央長官「奴も人間だったと言う事か。事後処理を誤ったな……」

山口「……」

中央長官「ふむ、彼がああだと……来るであろう赤城への対処に加賀が使えるかと思って、アレを渡したが……早計だったか?」

山口「……お言葉ですが、加賀よりは飛龍の方が……」

中央長官「そんな事はわかっている。飛龍と蒼龍で赤城を撃破出来ればベストだ。だが、戦力が多いに越した事は無い。特に、加賀と提督の組み合わせならな」

山口「……」

中央長官「……赤城の演習を見た事があるが、一人だけ異次元だった。しかもアレは英雄提督の右腕として、戦術も把握している。
記憶がそのままだとすると、赤城自身が無傷の第一機動部隊と積極的に事を構えるとは考えにくい」

山口「……」

中央長官「そこで、だ。来襲される可能性が高い英雄提督。彼に着け、敵戦力を漸減できる最適な艦娘は、加賀だろう」

山口「……確かに、そうですが……北が黙っていませんよ」

中央長官「それは、ネックの一つだな……まぁ、段階を踏ませるつもりだ」

山口「……」

中央長官「対赤城本隊として、左遷島のある南西海域に第一機動部隊を放つ」

山口「……あくまで英雄提督は、餌ですか」

中央長官「……そうとも言える」

山口「……あれは、主張派だったとは言え、現場指揮としては優秀です。何より、人間として戦場に立っています」

中央長官「そんな事は知っている。だが、脅威は赤城だけではないのだ。
少なくとも、赤城は確実に処理せねばならない。多少の犠牲があってもな」

山口「……」

………
……



宿舎、提督の自室


不知火「提督、お風呂いただきました」

提督「着替えはそこに置いてある。着たらーー」

ジリリリリリ
提督「電話か。済まないが、風呂から出たら一旦部屋に戻ってくれ、不知火」

不知火「……はい」

ガチャ
中央長官『私だ』

提督「中央長官殿。如何なさいましたか?」

中央長官『少し内密な話がーー』

提督「ーー」

不知火「……失礼しますね」ボソッ
ガチャ、バタン

不知火「……部屋に戻りますか」


宿舎、榛名と不知火の相部屋


ガチャ
不知火「……」

榛名「ぁ……」

不知火「……どうも」

榛名「……」

不知火「……」

榛名「……ごめんなさい、勝手に出て行ってしまって」

不知火「……」

榛名「(やはり、怒ってますね……わかりきった事ですが。まぁ、折り込み済みです)」

榛名「……早く帰るつもりが、途中で提督のお知り合いにお会いして……確か、件の加賀さんでしたか」

不知火「……」

榛名「その方が転倒なさって、それで立てないとかで……提督が処置をなさって……」

不知火「……」

榛名「……あのーー」

ガチャ
提督「不知火、榛名。休んでいるところ悪いが、私は少し急用で出る。留守を頼みたい」

榛名「は、はい」

不知火「……私も少し、外へ」

榛名「……?!」

提督「不知火、今回は私は一人でーー」

不知火「いえ、少し……外の空気を吸いに……」

提督「……そうか。それなら自由にしてくれ。榛名、留守を頼む。抜かりの無いようにな」

榛名「はい!」

宿舎前


提督「雨は止んだか……では、私は鎮守府庁舎へ向かう。……不知火、お前は休暇扱いとしておこう。……早めに帰れ」

不知火「はい。提督もお気をつけて」

提督「……ではな。念の為傘は持てよ」カツカツカツ……

不知火「……」

不知火「……また、やってしまいました……本当に、私は……」

不知火「……」

不知火「……適当に、どこか行きますか」


北の宿舎


龍驤「いやー疲れたわ……ありがとうな、日向。着替え用意してくれて」

日向「構わん構わん。お安い御用だ。加賀もすぐに治ったようだし、良かった」

加賀「ごめんなさいね」

響「……北提に入渠の件、報告しないとね。気が重い……」

日向「それは私と加賀で行くさ。他の皆は部屋で休んでてくれ」

瑞鶴「……私も行くわ」

龍驤「……アタシもーー」

日向「あんま大人数で行くのも、な。ぶつかった瑞鶴は兎も角、龍驤と響は休んでいてくれ」

響「む……」

龍驤「……わかった。行こ、響」

響「むー」テクテク

日向「……さて、と。行くか」

加賀「はい」

瑞鶴「……」

北提の部屋の前


日向「着いたな……」
コンコン

シーン……

コンコン

日向「……反応がない?取り込み中か?いや、電気はついていたはず……」

加賀「どうかしたのかしら」

日向「……中から少し言い争うような声……?」

瑞鶴「!……少し確認を……」スッ
ガチャ……

日向「おいっ」

北提「いえ……それは……」

日向「なんだ、電話か。出直して……」

北提「……私に加賀を手放せと仰るのですか!」

日向「!」

北提「……しかし……彼女を教官にするなど……!」

加賀「ーー!」

北提「……瑞鶴ではまだ……!」

瑞鶴「……!」

北提「……わかりました。また明日、お伺いさせていただきます。では……はい。……はい」ガチャ

日向「……」
コンコン

日向は、半開きのまま、ドアをノックした。

北提「……!お前たち……聞いて、いたのか」

日向「すまない」

北提「……ノックを……」

日向「一応、したんだが。反応が無かったので、心配になってな」

北提「……」

日向「……加賀の異動の話……電話の相手は、あの英雄提督か?」

加賀「……」

北提「……だったらまだ良かったんだけどね……中央長官だよ」

加賀「?!一体何を」

北提「……前線から退かせて、教官にするって……言われたよ……」

加賀「……教……官」

北提「故障があるから、もう戦わせない、と」

加賀「……嘘……」

北提「……」

加賀「……」

北提「……そうだ、ここに来たのは、加賀さんの入渠の件かい?」

日向「……ああ」

北提「大丈夫だった?加賀さん」

加賀「……ええ」

北提「ついさっき、英雄提督から宿舎に電話があったんだ。その件で。サポーターはきちんとしろ、だそうだ」

加賀「……そう」

北提「……」

加賀「……でも、もう関係無いわね。……前線から消えるんだもの」

北提「……教官だからってーー」

加賀「艦娘の教官が、どういうものか、私が一番わかっているつもりよ……戦闘では使えない、旧型、故障艦の行き着く先」

北提「……」

加賀「……」

北提「……まだそうなると決まった訳じゃ無い。……今日は皆、下がってくれ」

日向「……わかった……失礼する」
バタン

加賀「……」フラフラ

瑞鶴「(さっきの話……私は、『まだ』……?まだ、何なの……?)」グッ……

加賀「……少し、風に当たってくるわ」フラ〜

日向「あっ……おい!」

瑞鶴「……加賀さんが、居なくなる……私が、もっとしっかりしないと……」

日向「瑞鶴……?」

瑞鶴「……ごめん、日向。ちょっと行くとこ出来た」ダッ

日向「ちょ、お前もか……」

日向「……ハァ。どうなるんだ……」

艦娘酒場


艦娘の酒場がある。
艦娘は休暇中にしか飲酒が許可されていない為、いつも閑散としている。
そんな中、夕方からビールを飲む加賀の姿があった。

加賀「(……この、この私が……!もう、もう、提督の横に立てない……?だったらあの夜……何故……)」

苛立ちに任せて、グラスに半分ほど残っていたビールを一気に飲み干した。

加賀「(……提督も、私を避けるようにっ……なんで、なんで!)」

飛龍の言葉が脳裏に浮かぶ。
『そういうとこも見てんのかもよ?』
ギリッと音の鳴る程、奥歯を噛み締めたのはいつ以来か。

加賀「……もう空っぽ」

空のグラスを見つめていると、急に涙が込み上げてくる。
それを拭い、それを忘れる為に、加賀は酒を頼む。

「「……すいません、ビール一つ」」

誰かと注文が被った。
その聞き覚えのある声は背後から。

加賀「不知火……」

不知火「……何してるんですか、加賀さん」

不知火もそこそこ飲んでいるようで、顔が微かに紅潮している。

加賀「……別に」

不知火「……ふーん」

その答えに加賀は苛立つ。

加賀「そちらこそ、何を?」

不知火「……別に」

鸚鵡返しに、負の感情は募る。

加賀「……」

不知火「そいえば、今日、提督に会ったんですか?榛名が言ってましたけど」

空のグラスを握る手に、力が篭った。

加賀「……それが何か」

不知火「……毎日、楽しそうですねぇ」

理性がトんだ。

掌の圧力でグラスが破裂する。
目の前の机を蹴り上げ、椅子を蹴飛ばし、加賀は振り返った。
向こう側を向いて座る不知火の肩を乱暴に掴み、こちらを向かせ、背後からテーブルに叩きつける。

不知火「……何か?」

それでも飄々とした態度を崩さぬ不知火。
加賀の思いが爆発する。

加賀「提督に、私は避けられているのにっ……楽しいだなんて……!」

不知火「仕方ないですよ。加賀さん、弱くなりましたし」

煽る不知火。
飛龍の姿が不知火に重なる。

加賀「私が弱くなったから……いけないの……?!」

不知火「そりゃ、そうですよ」

突きつけられた現実に、漏れる嗚咽。
不知火を抑えつけていた力が緩む。

加賀「……今日、艦娘の教官になれと、そういう話があったわ」

不知火「……それは、提督が喜びそうですね」

鼻で笑う不知火に、加賀は膝から崩れ落ちた。
涙が止まらない。

不知火「……」

それを見た不知火は立ち上がる。
立ち上がって。
加賀の胸ぐらを掴んだ。

不知火「……何、泣いてんですか……!」

加賀「……?!」

不知火「泣きたいのは……泣きたいのは、こっちだよ!」

不知火が吼える。
加賀の体がビクりと震える。

不知火「本当に自分の事しか見えてないんですか?!何故自分が避けられるか、本当にわからないんですか?!」

ガクガクと、加賀を揺さぶる。

加賀「……提督はっ……わだじを……遠ざげでっ……」

えぐっえぐっとしゃくり上げながら言う加賀の言葉は弱々しい。
不甲斐ないかつての先輩の姿に、我慢出来ずに、まくしたてる。

不知火「……そんなのっ!そんなの、あなたを守る為に決まってるじゃないですか!」

加賀「……?」

不知火「あなたが弱くなったから!今のあなたは、深海棲艦化した赤城さん達にきっと殺されちゃうから!
だから、提督はあなたを遠ざけてるのにっ!この、独り善がりの、分からず屋ぁぁ!」

加賀「っ……」

不知火「……五十鈴さんが敵対して、いつ赤城さんが来るかわからないこの状況で、提督があなたに優しく出来ると、本当にそう思ってるんですか……?」

不知火の目尻に涙が浮かぶ。

加賀「……」

不知火「あなたが反攻戦で倒れて!
その治療中、苦労して保守派の中でも穏健な人探してっ!
あなたを北提の元へ送る事に、どれだけ提督が苦労なさったか!」

加賀「……ぁぅ」

不知火「まさか、主張派の艦娘が、偶然あんな甘い上司に着けたと、そう思ってたんですか?」

加賀「……」

不知火「そんなに、そんなに愛されてるのにっ!……どうして……どうして、言わせる、かなぁ……」

ここまで

次くらい投下したら、次スレ建てます〜

不知火「……提督は加賀さんを遠ざけ、私を近くに置いています。そんなの、そんなのっ!」

不知火「私が沈んでも、大した損失にならないって!私が敵に回っても、大した事がないって!そう、そう言われてるような物じゃないですか!」

加賀「……そんな事はーー」

不知火「私は、私はっ……今日も、ミスを犯しました……二回目ですよ。同じミスを二度も。
目を離すなと言われた人に、二度も逃げられました」

不知火の語気が弱まる

不知火「なのに……なのに……提督は、気にするなと……」

加賀「……?」

不知火「怒らないんですよ、提督は……私を、怒らないんです。それが、それがどれ程の苦痛かっ……!」

加賀「……」

不知火「……あの人は、合理的な人です……その提督が、ミスをしても怒らないんですよ。それって……私がどうでも良いって事じゃないですか」

加賀「……」

不知火「……私は、沈んでも良い、艦娘なんですよ……」

加賀「……そんなこと、無いっ。あなたは間違ってる」

不知火「……知ったような口を……!」

加賀「私だって疑問だったわ。何故、あなたが側に居るのか。でも、いくら考えても、提督があなたを頼ってるからとしか思えなかった!」

不知火「……何をーー」

加賀「正直、あなたはセンスが無いわ。弱い。そして事務が有能な訳でもない」

不知火「……!」

加賀「……従順で有能なだけなら川内でも良かった……でも、あなたは、提督に選ばれた。あなたが頼りになると、それがあの人の心なのよ……!」

不知火「……そんな訳が……」

加賀「……そもそも、あの人が合理性を重んじるなら、自分に好意を持たぬ、仕事の出来る艦娘を使うでしょう。それこそ保守派の」

不知火「……」

加賀「自己肯定感を、責められる事で得ようとしないで。あの人が怒らないのは、本当に怒る必要が無いからよ。
提督の言葉を信じないで、誰の言葉を信じると言うの?」

不知火「……」

加賀「……愚直で、責任感が強くて、例え弱くても提督が重用なさるあなたが、私は羨ましかった……」

不知火「……」

加賀「……沈んだら困るから遠ざけられる艦娘と、弱くても側に置ける艦娘なら、私は後者が良い。……いえ、艦娘なら誰だって……」

不知火「……」

加賀「……」

不知火「……」

加賀「……」スクッ

不知火「……行くのですか」

加賀「……帰ります」

不知火「……」

加賀「……私もあなたも……人のことばかり……」

不知火「……」

加賀「……さよなら。また、会いましょう」
バタン

不知火「……」

ここまで

週末に向けて、少々立て込んでおります
投下量が少なく駆け足ですが、この場面書いとかないと心苦しかったので……

次回投下時に次スレ建てます

その頃……


飛龍「(蒼龍が山口さんに連れてかれて、暇ぁ)」

飛龍「山口さんてば、蒼龍ばっかり連れ回してるなぁ。……やっぱ、胸か?!」

飛龍「……ま、面倒じゃなくて良いけどサ。間宮行こっかなぁ……♪」

鼻歌を歌いながら、ぶらりぶらりと雨上がりの夕暮れを歩く。そこに、雨後の湿気た空気を吹き飛ばすような風が吹き、飛龍の髪を撫ぜた。

飛龍「あーきもち……」

間宮の甘味を思うと、自然と唾液が出る。飛龍の足取りは軽く、心は浮ついた。
来訪者があるまでは。
飛龍の元を訪れた者は、その前に立ちふさがり、飛龍の歩みを止めた。
瑞鶴である。

飛龍「……私間宮行きたいんだけど」

瑞鶴「……飛龍さんにお願いがあって来ました」

飛龍「何?」

瑞鶴「私に、戦い方を教えてください」

飛龍「……北のひよっ子は礼儀を知らないのかい?司令官通しな。
大体、加賀が居るだろ。教え方甘いみたいだけど、ひよっ子にはあいつで十分だよ」

瑞鶴「……そこをなんとか、お願いします!」

飛龍「……加賀に大恥かかせる事になるって事、わかってる?北提の顔にも泥を塗ることになるよ」

瑞鶴「……なんとしても、私は!強くなりたい……強くならないと、いけないんです!」

飛龍「ふぅーん。心意気は認めてあげるよ。でもパス」

瑞鶴「……そこを、なんとか!」

瑞鶴は飛龍にすがりつく。
飛龍は嫌そうな顔を隠そうともしない。

飛龍「……しつこいなぁ……」

瑞鶴「お願いします!」

飛龍「私は英雄提督は嫌いだけどさ、加賀に嫌がらせしたい訳じゃ無いんだ。この事は黙っててやるから、もう帰んな」

瑞鶴「……お願い、します!」

飛龍「……」

はぁぁぁぁ〜と長い溜息。

飛龍「私は口先だけの奴は嫌いだ」

瑞鶴「……はい」

飛龍「とりあえず訓練所に行こうか。練度と……根性、見せてもらおう。教えてあげるかはそれ次第」

瑞鶴「……はい!」


ーーそしてこの日、瑞鶴は初めて訓練で血を吐く事になる。
飛龍の教導の代償として。

艦娘酒屋前、外


ガチャ、とドアが開き、艦娘が一人、酒屋から出て来た。

川内「……もう行くんだ、加賀。早かったね」

その出て来た艦娘に、入り口で座り込んでいた艦娘が話しかけた。

加賀「……盗み聞き?最低ね」

川内「アハハ。そう言うなよ、提督の大切さん」

加賀「……チッ」ツカツカツカ

川内「あ、おーい!どこ行くのさー……あーあ、行っちゃった……折角、瑞鶴がヤバい事してるって教えてあげようとしたのに……」

ガチャ
不知火「……何してるんですか、川内」

川内「あ、提督の頼り人」

不知火「……それが何か?」

川内「……急に自身を得たなぁ……」

不知火「……そう言うあなたは、提督の何なんですか?」

川内「ーーは?」

沈黙。

不知火「……私は帰ります」フンス

テクテク

川内「あ、おい!……って行っちゃったよ……」

川内「やれやれ、ほんと、二人とも素直なんだから……」

川内「……アハッ♪
アハハッ
アハハハハ!」

川内「あいつら馬鹿だなぁ!実に馬鹿だなぁ!」

川内「お互い提督に直接言い寄れば良いのに!無駄な衝突して勝手に理解しあって!ありがたいよ、全く!アハハ!」

川内「単純だなぁ!すぐ、お互いの言葉信じて!」

川内「これで、加賀は北提の元で大人しくなるだろうし!本調子に戻った不知火は、榛名をしっかり管理するだろうし!」

川内「アタシにもチャンスが出来たじゃん!」

川内「アハハ!……ハハ……」

川内「……」

川内「……アタシ、いつから、こんなんなったんだっけ……いつから、かつての仲間の言葉、素直に聞けなくなったっけ……アタシ、提督のなんだっけ……?」

川内「……クソッ……見苦しいなぁ……」

川内が虚しい気持ちで夕日を眺めていると、酒屋の扉からまた誰かが出て来た。そして、川内に呼び掛ける。

ガチャ
「……おい、お前」

川内「……なんだい?」

不機嫌な川内がギロリと入り口を睨むと、そこには酒屋の主任が居た。

主任「む!その顔は夜戦隊の……また貴様か!」

川内「……げっ」

主任「言い逃れは出来んぞ!よくもまた、店の中で暴れてくれたな!」

川内「……いや、今回は本当にアタシじゃーー」

主任「問答無用!ここに居るという事は、休暇中だな?!さぁ、掃除してもらうぞ!……割ったグラスの分の皿洗いもな!」

川内「えちょ、待って待ってヤダヤダヤダぁぁぁ!」

首根っこを掴まれた川内は、ズルズルと店の中へ引き摺り込まれた。

川内「加賀っ不知火っ覚えてろよぉぉぉぉ!」
バタン!

鎮守府庁舎


コンコン
提督「失礼致します」

中央長官「入れ」

ガチャ
提督「遅くなり、申し訳ございません」

中央長官「急に呼び出したのは此方だ。気にするな」

提督「は……」

中央長官「……君の居るサセン島に配備されている艦娘は榛名、足柄、不知火に鳳翔。隼鷹と雷は兎も角、戦力だけを見るならば、ある程度揃っているな」

提督「はい」

中央長官「英雄提督。君に命令を下す」

提督「はっ」

中央長官「近く、南方海域に敵主力級の出現が予想されている。
南方方面軍サセン島防衛隊は更に練度を高め、これに備えよ」

提督「はっ!謹んで拝命いたします」

中央長官「ついては、これを渡しておこう」スッ

提督「……?(小箱?)」

中央長官「開けてみろ」

提督「失礼します」ぱかっ

提督「……これは……!……廃棄されたのでは……?」

中央長官「中身に関して、私は一切関知しない」

提督「……」

中央長官「困った事に、もう一箱有ったのだが、加賀が『勝手』に持って行ってしまった」

提督「……それは……しかし……」

中央長官「私は君を理解しているつもりだ」

提督「……」

中央長官「……加賀には本土にて『それなりの』訓練を積ませる。『あくまでも教官とする為』にな。しかし、今後どうするかについては、元上司の、君の意見を大いに取り入れるつもりだ」

提督「……」

中央長官「話が逸れたな……そのことはよく検討しておいてくれ。どうせ直ぐには動かせん」

提督「……はい」

中央長官「さて、赤城らはまだ動きを見せていない。だが、これまでの経験から、君の居場所が判れば、そこに敵が殺到することは予想出来る」

提督「……」

中央長官「今回の会議の結果に従い、情報開示し、今は防衛線を固める。君には、その奥で練度を高めておいて貰おう。今はまだ、息を潜めていろ」

提督「はっ」

中央長官「決戦の際は作戦の決定に伴い、部隊の再編を行う可能性があるだろうが、現時点で編成の変更予定はない。今の艦隊で最善を尽くせ」

提督「はっ」

中央長官「詳しい作戦等は検討の後、追って通達する。……君が今すべき事は、その小箱を持ってすぐさま島に戻り、部下と情報を共有し、防衛戦略を練る事だ」

提督「はっ!」

中央長官「他の南方方面軍とも連携して、抜かりなく頼むぞ。……行ってこい」

提督「はっ!失礼いたします」

宿舎


コンコン
提督「帰った」

ガチャ
不知火「お疲れ様です」

榛名「お疲れ様です!」

提督「ああ。……急だが、明日の便で島に戻る事になった。準備をしておけ」

不知火「……!そうですか。わかりました」

榛名「はい!」

提督「頼んだ」
バタン


提督の部屋


提督「中央長官も無茶をなさる……こんな物を用意するとは、な」

提督はチラリと手元の箱を見た。

提督「やれやれ、退去に伴う書類の処理を急がねばな……お陰で挨拶に回る暇もない」

提督は部屋の机に座り、書類作業を始める。
暫くして、ふと呟いた。

提督「……いよいよ、現実的になってきたな……赤城達との戦いが」

そう言って、提督は胸元に手を遣り、ペンダントが無いのを思い出す。

提督「……結局、誰に渡したんだか。超硬合金だし、御守りにでもと思ったが……」

翌日、港


榛名「いやぁ、入港は大変だったのに、出港は緩いもんですね。手続きが……」

提督「そんなものだ」

不知火「提督、お時間の方が迫っています。皆様にご挨拶を……」

提督「そうだな。少し、行ってくる」

………
……



提督「南方長官、本来ならば此方からお伺いせねばならぬ所を、申し訳御座いません。……お世話になりました」

南「構わん、こちらこそ世話になった」

提督「そう仰って頂けると、光栄です。情報開示や防衛戦略等、課題は山積しておりますが、必ずやこの戦い、勝利しましょう」

南「勿論だ」

南がスッと手を差し出した。
提督はそれをガシッと掴み、二人は握手を交わす。
そこへ、駆けて来る一団があった。

太郎「提督さー金剛「テイトクー!遅れてsorryネー!」

翔鶴「ちょっと金剛?!」

提督「太郎君、金剛、翔鶴……すまないな、わざわざ」

太郎「そんな!とんでもありません」

金剛「テイトクー寂しいヨー!」

提督「そうかそうか」よしよし

金剛「えへへ……」

提督「……やっぱり、姉妹だな」

金剛「?……what……?」

提督「こちらの話だ。……太郎君、例の件はくれぐれも慎重にな」

太郎「……はい。……私も翔鶴の艤装の改修が済み次第、直ぐに戦線に復帰します。その際、もし宜しければ、是非演習を……」

提督「構わん。こちらからお願いしたい位だ」

太郎「ありがとうございます!……船旅、お気をつけて」

翔鶴「……」ぺこり

提督「ああ。またな」

金剛「Bon Voyage、テートク!」

提督「Merci、金剛」

………
……



提督「見送りご苦労さん」

川内「えっへっへ!」

神通「……」ペコ

提督「……川内、随分と疲れているようだな」

川内「……朝まで皿洗って掃除しててたからねぇ……」

提督「……?」

川内「ま、それは良いよ。……アタシ、振られちゃったみたいだね」

提督「まぁ、最初から断っていた話だ」

川内「……」

提督「お前達は強い。本当に私の力となる心算が有るのなら、今は待て。そう遠くない日に、私の方からお前達を呼ぶ事になる」

川内「……それは夜戦隊として、だよねぇ」

提督「そうだな」

川内「……わかった!死ぬ前に呼んでよ?」

提督「……ありがとう。では、私は行く……これ以上、危険な真似はするな。良いな、川内」

川内「しないしない!」

提督「それは嘘つきの顔だな……」ハァ

川内「……ほんとだって」

提督「川内。一線は越えるな」

川内「……わかってるよ」

提督「私を失望させるなよ」

川内「うん」

提督「……じゃあな。また、会おう」

川内「バイバイ!」

神通「お気をつけて」


川内「行ったか。……ダメだよ、提督。赤城が、いつも言ってたろ。『一番以外に、価値は無い』って」

川内「……アタシはまだ諦めて無いぜ」

神通「……」

川内「……行くぞ神通」

神通「はい」

………
……



英雄提督が本土を離れるらしい。
その情報と共に、昨晩行方知れずだった瑞鶴は帰って来た。
全身ボロボロの状態で。

加賀は今すぐにでも走り出したかったが、瑞鶴をそのままにしておけなかった。
しかし、龍驤が、瑞鶴は見といたるから行っといで、とその背中を押す。
加賀は感謝の言葉と共に、港へ向けて駆け出した。


加賀「……提督!」

提督「……探したぞ、加賀」

加賀「私、もよ……」

全力で駆けて来た為、息が荒い。
それを落ち着けていると、提督が話し始めた。

提督「……昨晩、中央長官から懐かしい物を受け取った」

そう言って懐から取り出した物は。

加賀「それは……私も、その前の日に頂いたわ」

それを提督が無言で元の場所に戻すと、暫しの沈黙が訪れた。

提督「今まで色々すまなかった」

加賀「提督……」

提督「……私は、お前を近くに置きたくなかった。少なくとも、赤城とケリをつける迄は」

加賀「……知ってますよ。不知火から、聞きました」

提督「何?……言ったのか、奴は……」

加賀「あの子も、色々抱え込んでいたわ」

提督「……そうだろうな。不甲斐ない話だ。全部を赤城に丸投げしていた、そのツケだな」

加賀「あの人は、もう居ないわ。ちゃんと、不知火を見てあげて頂戴」

提督「……心掛けよう」

加賀「……そして、私は大丈夫よ。教官になる事に決まりそうなの。もう……戦う事も無いわ」

提督「……生憎だが、そうも言ってられなくなった」

加賀「え?しかし、中央長官の……」

提督「……相変わらず、お前は少し頭が硬いな」

加賀「何をーー」

ムッとした加賀の頭を優しく撫ぜる。

提督「よく考えてみろ。中央長官が俺とお前に渡した物を。このタイミングだ。明らかに赤城を意識しているだろう」

加賀「……という事は、これは、まだ機能するのですか?……これを使う事は禁じられて……まさか、また使えと……」

提督は狼狽する加賀を見て苦笑し、言った。

提督「本部も余裕が無い、という事だ」

加賀「……しかし」

提督「……真面目なのは、お前の美徳だな」

加賀「っ……」

再び髪を撫でる提督に、加賀は俯いて喋れなくなる。

提督「なぁ、加賀」

加賀「……はい」

提督「俺は最近、ふと自分がわからなくなる事がある」

加賀「……」

提督「俺は何をしているのか、とね……」

加賀「……人生、そんな日もあるわ」

提督「ふっ。加賀センセの有り難いお言葉だな」

加賀「馬鹿にしてるわね……頭に来ました」

提督「そんな事はない。怒るな、怒るな。……まぁ、なんだ。今は本土の最新鋭の授業とやらをみっちり受けてくれ、加賀センセ」

加賀「……その、センセって言うの、やめて欲しいのだけれど」

提督「俺は良いと思うぞ」

ははは、と笑ってから、提督は踵を返した。

提督「……そろそろ、時間だ。また連絡する」

加賀「そう……キチンとお願いね」

提督「ああ」

加賀「……」

提督「……」

加賀「……行かないの?」

提督「……なんか、最後に一言くれないか」

背を向けたまま、提督は加賀に頼んだ。
その背中は少し寂しそうで。
加賀は少し考え込み。

加賀「……」コホン

加賀「……こ、困ったら先生に相談なさい?」

提督は思わず振り返ると。
加賀の頬は染まり、綺麗な栗色の瞳は、斜め下を見つめていた。
羞恥心からか、指がモゾモゾと動いている。

提督「……それは、ありがたい事だ。心に留めておくよ」

恥じ入る加賀の姿を記憶に納め、提督は笑う。

提督「今度こそ、行く」

加賀「コホン……気をつけて」

提督「……また会おう」

加賀「……はい」

………
……



提督「待たせたな」

不知火「いえ、大丈夫です」

提督「よし、では、不知火及び榛名は艤装を受け取り、高速輸送船へ向かえ。輸送船内の艤装収容施設にて合流しよう」

不知火「了解です。行きましょう、榛名さん」

榛名「は、はい!」

不知火と榛名は艤装を受け取る為、提督の元を離れて行く。

提督「やれやれ、最後まで慌ただしい日々だったな……」

提督「…さて、と」

もうすぐ昼だ。
太陽はぐんぐんと高度を増して行き、その光は中央鎮守府を綺麗に照らしている。
しかし、ひとたび海を見れば、遠くに黒い、大きな積乱雲が見える。
嵐が来るか。そう、心の中で呟いて、提督は船へと歩き出した。

投下終わりです

このスレ内で終わらせようとした為、かなり強引な終わり方ですが、本土編はここまで
お付き合いありがとうございました!

次スレもよろしければ、お願いします

【艦これ】赤城「……さて、と」提督「昔話を、しようか」
【艦これ】赤城「……さて、と」提督「昔話を、しようか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429367001/)

明日も埋まって無ければ、本編と関係のない、1レスで完結する話を投下していこうかと考えています

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月30日 (月) 02:27:20   ID: ky-NKp8P

少なっ

2 :  SS好きの774さん   2015年04月15日 (水) 00:50:11   ID: kUz2Syne

なんちゅう惨い話や…英雄提督可哀想すぎやろ

3 :  SS好きの774さん   2015年04月15日 (水) 16:11:51   ID: SKQwQvbx

こういうヘビーでドロドロした感じ嫌いじゃない、続き楽しみだ。

4 :  SS好きの774さん   2015年04月15日 (水) 16:26:10   ID: 0aVOHkwC

この作品の川内大好きです
更新楽しみにしてます!

5 :  SS好きの774さん   2015年04月26日 (日) 16:33:11   ID: DEOsJSAv

続き楽しみ!

こういうSSいいね!

英雄提督かわいそう…

6 :  SS好きの774さん   2016年04月22日 (金) 14:07:44   ID: DOzOIJ83

みんな変わってしもうたんやなぁ…
英雄提督には頑張ってほしい

7 :  SS好きの774さん   2016年05月31日 (火) 01:58:41   ID: blUxtTii

西方長官、一言しか喋ってない・・・怪しいのね

8 :  SS好きの774さん   2019年01月16日 (水) 22:53:11   ID: CXdib8SZ

すげぇ

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