男「小説」女「どこが?」 (2)
男「人死にを描くというのは人が小説を書く以上何らかの意味合いを強く持たさせられると思う。
大抵の作品は人の死を無駄にしていない。そのイベントを存分に用いては描かれるドラマと葛藤を広げ尽くそうとする。人の死を無駄にしたがらないというのは、どちらかというと現実的な願いだけれど、非現実的な望みだ。
逆に人死にを出来る限り軽く描くことでスリリングな現実感を煽り非現実的な世界に誘おうとする手法もある。けれど、人の死を無駄にしたがらないというのは変わらない。人の死が特別だと思うからこそ人の死を軽く描こうとしているだけだからだ。
一度だけ、絶対に「人が死んだ」という言葉を使わずに戦争の描写をしたことがある。突然友人が現れなくなったり、突然上司が入れ替わったりと、間接的には死んだことを表してはいたけど、意地になって人死にの感情的な連動を描かなかった。悲しいとか、悲しいからものが食べられないとか、怖いからものが食べられないとか、考えられないからものが食べられないとか。
結局途中でぷつんと主人公の死で小説を終わらせたけれど、何が言いたいのかよく分からないと言われて、なんでこんなに意地になっていたのか、自分でもよくわからなくなった。どうしてだろう?」
女「あんたが死にたくなかったからじゃないの?」
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男『眠りを書くときに意識すべきことは一体何なんだろう。死に近いというのなら、死んでいくように描写するのかな。毎晩人は死ぬというけれど、そんなにいちいち死んでいられるものなのだろうか。
眠気が死神に呼ばれていることの証左なら睡眠薬は毒薬になる訳じゃないか。毒薬をほしがる人間がそこら中にいるってことに否定はしないけどさ。毎晩死を求めるのは休みを求めるためであって、例えば魂が休みを求めるのを死として置換するのはあり得るけれど、そんなにロマンティックに考えられるほど遠い世界の話じゃないよね。薄く光る常夜灯と秒針の音。
特に最近は喉が乾いて仕方がないんだ。口を開けているつもりもないのに、朝起きたら喉がひりつくように痛くてたまらない。寝ている時の自分が憎くてたまらない。死んでいるようなものだから、風邪でも引かせて僕を殺そうとするんだよ。睡眠というのはやっぱり敵なんだと、そう思わないか?』
女『眠れないからって電話してこないで』
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