ケルベロス「チカラ ヲ カンジル」わぴこ「ぅわぁーーーい!」きん注×女神転生 (56)

非常にレベルの低い地の文あり。
きんぎょ注意報を久々に見て、無性に書きたくなりました。
本当にごめんなさい。

※総レス数46程度です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1424789534

新田舎ノ中学校。
その理事長室で、一人の少女がわなわなと身体を震わせていた。

「こ、これは……!」

広げている手紙を読み終えるなり、少女が呟く。
名は藤ノ宮千歳。
何を隠そう彼女こそが、この学校の創設者であり、生徒会長であり、理事長である。
加えて、年若く見目麗しいブロンドのお嬢様である。

(もっと言って、もっと言って)

胸中でそう繰り返し、ニヤニヤと顔を歪ませる様は、さながら童話に登場する性悪魔女……もとい、エデンの園から降り立った天使のよう。

(むふっ、わかってるじゃないのあんた)

もういいから話進めてください。

「あっ、そうだった。」

「……こんな挑戦状送りつけてくるなんて、由梨香のやつ……上等じゃない」

ぐしゃっ。
持っていた手紙を握りつぶし、床に投げつけ、足で踏みつけること十数回。

「ぜぇ、ぜぇ、……うふふ、大丈夫負けるわけない。こっちにはわぴこがいるんですもの」

右腕を突き上げ、中指を立てる。

「都会ノ学園がなんぼのもんじゃい!この私に喧嘩ふっかけた事を後悔させてやるわ!おーっほっほっほっほ!!」

夕暮れの理事長室に、千歳の甲高い声が響き渡る。
生徒たちの下校風景を見下ろしながら、一人笑う千歳。
その後ろ姿はどこか物寂しげなものがあった。

「うるさいわね!」

……。

きんぎょ注意報とかクッソ懐かしいな!

―――

一週間後。
新田舎ノ中は熱狂の只中にあった。

『決まりました!合同体育祭第4種目、お絵かき伝言ゲームの勝者は、都会ノ学園です!』

グラウンドに大きな歓声が上がる。

「ぅわーーーーい」

「敵の勝利を喜んでどうするのよ!」

千歳が突っ込みを入れたのは、校内一の元気少女、わぴこである。

「まあまあ、そう怒ってばっかりだと皺まみれになるぜ」

サングラスの少年、葵がニヒヒと笑う。

「ぬわぁあああんですってぇぇぇ!?」

千歳が葵の胸ぐらをひっ掴み、がっくんがっくんと揺らす。

「相手は都会ノ学園なのよ!?次の最終競技で負け越したりしたら承知しないわよおおおおおお」

「つ、次の出番はわぴこだろ!?それを言うならわぴこに言ってくれ!」

「確かにそうね」

ぱっと葵を離した千歳は、わぴこへと詰め寄る。

「わぴこ、絶対に勝つのよ!?」

「はぁーーーーい!」

顔を青くしてゴホゴホやってる葵を後目に、わぴこは元気良く右手を上げた。

「ごほっごほ……そんなに心配しなくたって勝つのはわぴこだろ、何てったって次の競技は……」

『次の競技は最終種目、代表生対抗、200メートル走です!』

葵の言葉をアナウンスが遮る。

『新田舎ノ中生徒会副会長であるわたくし、北田秀一が司会進行を勤めさせて頂きましたこの合同体育祭。白熱したバトルによって大いに盛り上がったこのビッグイベントもいよいよ大詰め。ここで一度、これまでの両校の成績を改めて発表したいと思います』

『第1種目、焼きそばパン食い競争は、新田舎ノ中に軍配が上がりましたね。これについてぎょぴちゃん、コメントをどうぞ』

大きな目が特徴的な、ピンク色の空飛ぶ金魚。
ぎょぴちゃんはにっこりとした表情で、マイクに向かう。

『不良牛くんが頑張ってたね!』

『そうですね。この競技において彼は、他を寄せ付けない強さを見せました。不良牛くん、皆さんの前で一言お願いします』

おおーーー!
歓声渦巻く中、不良牛が壇上に上がり、マイクを手に取る。
しばらくの沈黙の後……。

『焼きそばパンを笑う者は焼きそばパンに泣く』

おおおおおーーー!

『なんとも深い言葉でした。不良牛くんに拍手を!』

ぱちぱちぱち!
わーわーわー!

『次の第2種目はカン蹴り。辛くも勝利した新田舎ノ中ですが、その試合内容には圧倒されました。ぎょぴちゃん』

『田中山さんと校長さんの心理戦、ハラハラしちゃった!』

『水面下での謀略に次ぐ謀略、大人の本気を垣間見た思いでした。田中山弁護士、並びに校長、壇上へお願いします』

―――

人目の無い校舎裏の物陰。
そこに、地面にうずくまるようにしてパソコンを操作する少女の姿があった。

「うふふふ、これで、準備は完了よ」

彼女、菅原由梨香は都会ノ学園の生徒会長。
この合同体育祭の話を持ち掛けた張本人(冒頭の手紙は、千歳にこの件伝える為に送ったモノ)であり、千歳とは過去に幾度ものいざこざを起こしている、因縁浅からぬ間柄である。
そのような人物がこのような場所で不敵に笑う様子は、誰がどう見たって怪しい。
さながら、シンデレラに毒リンゴを差し出す老婆を彷彿させる。

「だぁぁあれが老婆ですってぇぇええ!?」

……。
えっと、そのパソコンがどうしましたって?

「……」

ギロリとした眼光。
やめてください。

「……あの金魚は時価数億。対して猫の目は時価数百億……。藤ノ宮千歳はおいしい話だと思ってるんでしょうけれど、こっちには必勝法がありますのよ……」

ふくくく、と邪悪……もとい瀟洒な笑みを浮かべる。

「覚悟なさい藤ノ宮千歳!……あとはこのキーを押せば」

高らかに上げた人差し指を、ENTERキーへ叩きつける。
黒色のモニター画面に何語ともつかぬ白い文字が羅列されていき、光りを放つ。
眩い光りは徐々に闇色へと変わり、モニターから発生したそれらが地面を這う。
溢れ出す"黒いもや"のような何かは、やがて1つの形をとり始め……。
銀色の毛皮に獰猛な牙と爪。
ギリシャ神話に冥界の番犬としてその名を刻む……。

「オレサマ ハ マジュウ ケルベロス。 コンゴ トモ ヨロシク......」

古の魔獣が、由梨香の前に顕現した瞬間だった。

「やった!成功ですわ!」

「ぅわぁーーーーい!」

由梨香の狂喜の声に被さるように、わぴこが万歳三唱した。

「……へ?」

「はよ~~ん!」

「……」

「犬さんもはよ~~ん!」

「オハヨウ ゲンキ ナ ワラベ ヨ」

由梨香の頬に一筋の汗が流れる。

「今の、見た……?」

「うん!」

わぴこがにこにこと目を輝かせる。

「ち、ちょっといい?」

「いいよー!」

由梨香がわぴこの肩を抱き寄せ、耳打ちする。

「いい?今見たことは全部内緒、わかった!?」

「ぜんぶ~?」

「全部!!」

「うーん……」

ゴクリ。
由梨香の喉が鳴る。

「うーん……うん、わかった!」

それを聞いて緊張が解けた由梨香は、ほっと胸を撫で下ろす。

「じゃあわたくしはこのへんで!行きますわよ、ケルベロス!」

言うや否や、一目散に駆け出す由梨香。

「リョウカイ シタ。 デハ サラバ ダ ワラベ」

「わぴこだよ~!」

「ム」

「むぅ?犬さんどうしたの?」

「キサマ カラ ハ ツヨイ チカラ ヲ カンジル」

「ぅわぁーーい、誉められた!」

「ワガ ナ ハ ケルベロス マタ アイマミエ ヨウゾ」

「うん、ケロちゃんばいび~ん!」

―――

手を振りケルベロスを見送ったわぴこは、ふと足元にあるパソコンに気付いた。

「なんだこりゃ?」

それは由梨香がつい先程ケルベロスの召喚に使用したモノ。

「あっ、前に秀ちゃんが見せてくれたやつだ」

なんだろう、とモニターを覗き込む。
が、わぴこには何が何やらわからない。

「えっと、たしかこのデコボコをパチパチして……」

パソコンの前に座り込み、キーボードを滅茶苦茶に叩く。

「最後にこのボタンをばし~ん!」

わぴこが楽しげにENTERキーを弾く。
すると、モニターに大きな文字が表示された。

"悪魔召喚プログラム オートモードが起動されました。データをロードします。(now loading...0.17/100)"

「ん~~?」

"(now loading...0.29/100)"

「……」

"(now loading...0.42/100)"

「ま、いっかぁ!ちーちゃんのところに戻ろーっと!」

もう飽きたと言わんばかりに走り出すわぴこ。
モニターに映る白い文字は、淡々と数字を数え続けていた。

―――

「おっそぉーーい!何やってたのよわぴこ!」

開口一番大声を張り上げたのは千歳である。

「遊んでたよ!」

いつもの調子でニコニコと答えるわぴこ。
千歳が、はぁ~、と深いため息をついて、まあいいわ。と仕切り直す。

「とにかく、勝ち点が2対2の今、次の勝負ですべてが決まるのよ!わぴこ、わかってるわね!?」

「うん、ちーちゃんまかせて!」

どんと胸をはるわぴこに、よーし行ってきなさい!と千歳が背中を叩いた。

(ふん、相手があの子だろうと関係ないわ。なんせこちらの走者は伝説の魔獣なんですもの)

田舎ノ中の動きを見ていた由梨香は勝ち誇った顔で、駆け寄るわぴこを迎えた。

「さっきはどうも」

「うん!」

「……」

「」ニコニコ

「ちょっとこっちきなさい」

由梨香がわぴこの身体を引き寄せる。

「……あなた、さっきのこと誰かに喋ったりしてないでしょうね!?」

「うん!」

由梨香は、それならいいのよ、とわぴこを突き放す。

『代表者は位置についてください。これより最終種目、200メートル走を始め……ん、なになに?』

『どうしたの?』

『うん、ぎょぴちゃんごめんね。たった今田中山さんから情報が入りました。すみませんが代表者の二人はそのままでお待ちください。……しかし、これは』

なんだー?
わいわい
はやくはじめろよー
わいわい

『えー、田中山さんの報告をまとめるとですね……新田舎ノ中が勝てば、時価数100億は下らないとされる"猫の目"が都会ノ学園から贈られるかわりに、都会ノ学園が勝てば、ぎょぴちゃんを差し出さなければいけないそうです。あははは……』

ええええええええええええ!?!??
だれだそんな賭けしたのは!
やいのやいの!
やっぱ生徒会長じゃない?
そうよ!私が賭けに同意したのよ、悪い!?
おい!さっきやけに必至だったのはこれが原因かよ!!
おーっほっほっほっほ勝てば、いいのよ勝てば!わぴこ、そういうことだから死ぬ気で走りなさいよぉー!!
やいのやいの!

金魚注意報とか、もうほとんど忘れてるわ。わぴこと歌しか覚えてない

『ぎょぴーん( ゚□゚)』

『ぎょぴちゃんしっかりして!会長の言う通り、わぴこちゃんが勝てば大丈夫だから!』

『そ、そうだねっ!』

『果たしてそう上手くいくかしら!?』

『ゆ、由梨香さん!いつの間にここへ……というか、代表者なんですから位置についていて下さい』

『おーほほほほほ、誰がこんな野蛮な競技に参加するものですか。走るのはわたくしではなく、わたくしの愛犬、ケルベロスですわ』

『ん?あ、ほんとだ、スタートライン付近にそれらしき犬が見える』

もうめちゃくちゃだー!
あはは!ぅわぁーーい、ケロちゃんまた会ったねぇ~!
わいやわいや
わぴこその呼び方は色々問題があるからやめろ!
オレサマ ハ モンダイ ナイ
わいやわいや

『わたくしのケルベロスは神話に名を轟かせる程の俊足でしてよ!覚悟なさい、新田舎ノ中!』

『大変なことになって参りました!和やかな合同体育祭から一転、勝てば天国負ければ地獄のデスマッチ!さあ、勝つのはどっちだー!……ということで、これより200メートル走を始めます。改めまして、代表者は位置についてください』

―――

「ワカラヌ。オレサマ ハ ナニ ヲ スレバ イイ」

「かけっこだよ~!」

「カケッコ……キョウソウ カ」

「うん!」

「イイダロウ。 ヒト ト アクマ ノ チガイ ヲ ミセテ クレル」

「あははは!ぅわぁーーい、ケロちゃんとかけっこ!」

飛び跳ねて喜ぶわぴこに対し、ケルベロスはニコリともせず前を見据える。
それ倣ってわぴこも、スタートラインに足をつけた。

―――位置について、よーい

ケルベロスが後ろ足に体重をかけた。
グラウンドの表面が小さく砕ける。

―――どん!

その瞬間に、一足でゆうに20メートルを跳ぶケルベロスの姿を、どれだけの人間がその目に正確に捉えられただろうか。
瞬く間にコースの半分を走破したケルベロスが、そこからさらに加速をかける。
ケルベロスが走る横に、わぴこの姿はない。
当然だ。年端もいかぬちんちくりんの少女が、どうして魔獣である自分と並ぶことができよう。
ケルベロスはそう思考し、なんという下らない戦いだと辟易しながら、ゴール地点をくぐる。

『早い、早すぎる!両者、同時にゴールラインを踏みましたー!』

本当に下らない余興だ。
先は人と悪魔の違いを見せると言ったが、これではそれ以前の問題ではないか。
……。
……まて。


「ドウジ ダト」

「やったぁ~!ケロちゃんと一緒!」

わぴこの声に振り向いたケルベロスの顔が、驚愕の色に染まる。

「キサマ ナニ ヲ シタ」

「頑張って走ったよ!」

「バカ ナ キサマ ハ」

確かに、ゴール前で確認したのだ。
あの時、わぴこはおそらく遥か後方にいたはず……。
一体何が起きた……?

『それでは、VTRをスロー再生してみましょう』

いつの間に運び出したのか、そういえばそこに置いてたねぇ的な巨大モニターに、ゴール前の映像が映し出される。

『まずはケルベロスくんが映っていますね。この時点でわぴこの姿はありません。このままゴールまでケルベロスくんの独走が続き、ゴールラインを踏んだ瞬間、ここです!スロー再生にもかかわらずものすごいスピードで駆け抜ける影、わぴこです!』

「けろーん( ゚□゚)」

思わず心が壊れかけたケルベロスだったが、すぐさまそれに気づき、慌てて我を取り戻す。

「イ…… イイ ショウブ ダッタ」

「ケロちゃん楽しかったねぇ~!」

「ソ ソウ ダナ……」

『完全に同着!よって、合同体育祭は両校引き分けという結果になりました!』

『きぃぃ、新田舎ノ中ぅぅぅ……!』

由梨香がドン、と拳を叩き付ける。

『あ、あはは……由梨香さん、お願いですから机とか壊さないでくださいね……、ん?』

『秀一くんどうしたの?』

『いえ……うーん、ぎょぴちゃんも聞こえませんか、この音?』

どどどどど……

『あ、ほんとだ聞こえる!』

『なんだろう、少し揺れてるし地震かな……?』

『あ!』

ぎょぴちゃんがヒレをパタパタさせて、あっち!とみんなの視線を誘導する。

『土煙?……大勢でここに向かってくる集団が見えます。……あれは』

ドドドドドドドド!!

『げっ』

由梨香の顔色が蒼白に変わる。
急いでバッグの中を確認するが……。

『パソコンが……なんでないんですのぉぉおぉお』

『あれは……一体何なんだあーー!?』

人面鳥に天狗や鬼、無数の人間の顔が貼りついた肉塊、美しい天使、まがまがしい翼を持つ怪物……。世界中の神話や伝承をひっくり返して闇鍋にしたような大行進が、新田舎ノ中のグラウンドになだれ込んだ!

わーわーわー!
キタロウを呼べー!
鬼だー、豆もってこーい!
やんややんや!
このスライムみたいなやつ塩かけたら縮むかな?
天使のねーちゃんおっぱい見えそう!
わいのわいのわいの!

『み、皆さん落ち着いてください!こういう時こそ、避難訓練大会を思い出して冷静に……うわあ
こっちにも来たーー!』

―――

新田舎ノ中学校校門前。
由梨香は息も絶え絶え、悪魔たちの大行進から逃れていた。

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……ここまでくれば……」

ふぅ、と息を整える。

「あぶないあぶない……多分アレ、悪魔召喚プログラムの暴走ですわよね……」

何故あんなことになっているのかは謎だが、自身の不始末によることは明確だった。

「今のうちに逃げましょう……」

「どぉぉこへ行くつもりかしらぁぁぁああ??」

ぐわし。
千歳が由梨香の肩を力強く掴む。

「ど、どっから湧きましたの、このくそ千歳!」

「あんたこそどういうつもりよ!さっきの独り言聞かせてもらったけど、ひょっとして全部あんたが……」

「おーーーほほほほほほほほ!!何のことですかしらぁぁぁぁああ???知りませんわねぇぇぇぇえええぇ」

ばしっ、と千歳の手を振り払う。

「憶えておきなさい、藤ノ宮千歳!この屈辱は必ず晴らさせていただきますわーーーー!!」

言いたいことだけ言って突風のように去っていく由梨香であった。

場所は戻ってグラウンド。

ウゥルルリリィィィィィ
うわっ、すごい声だした!すげぇー!
おっぱいはまだか?
ワガナヲタタエヨ ワガエイコウニミチタ ナラブモノナキナヲ タタエヨ
いやそのりくつはおかしい
わいわいわいきゃーきゃー!

「ぅわぁーーーい!すごぉーーーい!!」

きゃっきゃと飛び跳ねるわぴこに、ケルベロスが尋ねる。

「コノ サワギ ハ ナンダ」

「お祭りさわぎだよぉ~!」

「イヤ ソウデ ナク テ」

「ケロちゃんも一緒にあっそびーましょ!」

ケルベロスはげんなりした表情で一考する。
元来、血生臭い戦場を生きる場所としていた彼にとって、こういう無意味に喧しい現場は苦手であった。
力で解決できればいいが……いや、この雰囲気がそういうものじゃないのはわかる。
それぐらいの空気は読める。読めてしまうのだ。
早い話、彼は苦労人だった。

「ワカッタ タダシ ジョウケン ガ アル」

―――

『ふぅ、やっと戻ってこれた。ぎょぴちゃん、無事かい?』

『イソラくんとトモダチになったよ!』

『そ、そう。それは良かったね……』


わいわいわい!
がやがやがや!
きゃーきゃー!

『えっと、……どうしようかなこれ』

どうやら実害もなさそうだし、いつもの風景といえばそう言えなくもないのだが。
一応司会進行役としてこの場を収めなければ……。
秀一がそう思考したとほぼ同時。

「秀ちゃんはよ~~ん!」

『わぴこちゃん!』

呼ばれて飛び出てといった勢いで、わぴことケルベロスが秀一の前に現れる。

「ケロちゃんに頼まれてきたよ!」

『ケロちゃんに……?』

「マイク ヲ ワピコ ニ ワタセ」

『あ、はい』

言われるまま、わぴこにマイクを渡す秀一。
わぴこは呼吸を整えたのち、大きく息を吸い込み……。

『だるまさんが、ころんだ~~!!!』

ピタリ。
それまで騒いでいた生徒たちも、魑魅魍魎も、天使も、国津神、天津神、異国の神々や、口にできぬ四文字でさえ……。
わぴこの言葉は、すべての動きを停止させたのだった。

―――

翌日。

わいわいがやがや
わーすごい、マーラくんが噴水みたい!
そういえば四文字くんってどうやってお箸持つの?
カミノミエザルテ デ モチマス
やいのやいのやいの
タケミカヅチくんと相撲ごっこする人この指とーまれっ!
ウォレ スモウ ゴッコ シタイィィ
エンジェルねーちゃんポロリしねーかなあ
きゃっきゃきゃっきゃ

「これって一体どういうことなのよ……」

千歳が引き攣った面持で呟いた。

「そうだねぇー、この教室机足りないから増やさないと!」

「私はそういう事言ってるんじゃないの!」

「確かに、2クラスに分ける事も考えたほうがよさそうですね」

「ちょっと、北田くんまで何言って……」

「千歳!」

葵が千歳を呼び止める。

「お前の気持ち、わかるぜ」

「な、なによ」

「うん、お前の気持ちはわかってる。……けどさ、これだけ人数が多ければ、その中からお前を見つけたときの喜びも倍になるだろ?」

まっすぐに千歳と視線を交わす葵。

「……葵、それって……」

「この俺の気持ち、伝わってるかい、千歳?」

突然だが、葵と千歳の関係について記しておく。
実のところ千歳は、葵に対して密かな想いを寄せているのだが、理事長兼生徒会長という立場と自身の性格上、友人以上に踏み込むことができずにいた。

「だからさ千歳、みんながいたって、いいだろ?」

対する葵はといえば、そんな千歳の想いに薄々感づいており……。

「……わかったわ。悪魔のみんなの入学を許可します」

「やったぜぇぇぇぇええ!!見たかわぴこ!」

「ぅわぁーーーい!葵ちゃんすごぉーーーい!!」

度々、それを逆手にとり利用していた。

「さ、さすが葵だね……」

苦笑いをこぼす秀一の背中を前にして、教室を見渡すようにカメラが引いていく。

……なぜなら、このお話が大団円を迎えたから。
さて。
少し変わった、けれど平和で楽しい新田舎ノ中の面々を眺めながら、そろそろ筆者も、手を休めることとする。

わいわいわい!
ウォレタチ ココニイテ イイノカ
いいよー!
オレサマ ハ サイショ カラ イルツモリ ダッタ 。ワピコ ト ヤクソク シタ カラナ
わいわいわいわい!!
コレコソ ウチュウノ オオイナルイシ
そのりくつはおかしい
わいやわいやわいわい!!
このポテチという菓子、美味!人間に食させるには余りある代物です
先生ー、ぼくのポテチ取られたーー!
こらドミニオンくん、独り占めはいけませんよ
やいのいやいのやいの!
おれ、エンジェルちゃんに告白する!
ばかいうな!おっぱいを独り占めするつもりか!
がやがやがやがや!
ぅわぁーーーい!みんなみんな、よかったねぇ~!!!
わーいわーいわーい!

「あっ!」

「どうしたのわぴこちゃん?」

「うんとね、何か忘れてるような……ぎょぴちゃんわかる?」

「うーん……わかんないなあ」

「そっかぁ。うん、まいっかぁ~~!!」



終わり。

きん注ファンの方本当にごめんなさい、ゆるしてください。
こういう場に投稿する経験はあまりないので、ドキドキしながら書き込んでました。
お目汚しもうしわけないです。

>>5
すごく楽しい作品でしたよね!
>>25
あのopは忘れられませんよね~

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