杏「飴が好きな理由?」 (27)

デレマスSSです。

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きらり「そうだゆ、杏ちゃんはよくキャンディなめてゆでしょ? なんでかなぁーって」

杏「特に理由なんてないよ、ただ好きなだけだし」

きらり「でも杏ちゃん前『杏は最高に美味しい飴を舐めたことがある!』って言ってたにぃ、もしかして〜☆」

杏「そういえばそんなことも言ったような……」

きらり「でしょでしょ! 杏ちゃんが好きな飴を教えてくれればきらり作っちゃうよ〜うぇへへ♪」

杏「けど言わない」

きらり「なんでなんで? 言いたくないこと?」

杏「……恥ずかしい話だからかな?」

きらり「にょ、にょわー……それなら、話さなくていいゆ」

杏「あれ、いいんだ」

きらり「恥ずかしいのは……むむー、だにぃ」

杏「ま、そっちの方が杏も楽だけど」

きらり「……えっちなこと?」

杏「ち、違うっ、なんでそうなるんだ!」

きらり「でもでも、恥ずかしいって……」

杏「い、色々あるんだよ」

杏「……けど、んー……やっぱり話すくらい別にいいかも」

きらり「だいじょーぶ?」

杏「うん、まぁ減るもんじゃないしね」

きらり「じゃあお茶を入れるにぃ、お菓子も用意して」

杏「美味しい飴もある?」

きらり「ご要望とあれば何なりと☆ハピハピキャンディもあるゆ」

杏「それなら一つちょーだい……あーん」

杏「何から話したらいいのかな」

きらり「何からでもいいよぉー☆」

杏「えーと、それならまず……杏が飴好きになったのってさ、実は最近なんだよ?」

きらり「にょわっ、ほんとかにぃ?」

杏「ホントホント、好きになったの、アイドルになるちょっと前くらいからだもん」

杏「その時の杏はね、本当に、本当に何もしたくなかったんだー……今もだけど」

きらり「お外には行かないとダメだゆ……?」

杏「その頃は外に出る気力もなかったし」

杏「毎日毎日家の中でゴロゴロして、たまにご飯食べているだけだし」

杏「ゲームもそんなにやってなかったよ、今と比べてだけど」

杏「何もない毎日だったなー」

杏「けどさ……杏、そんな生活してたら外追い出されちゃったんだ、親に」

きらり「か、かんどー……!?」

杏「べ、別に縁を切られたわけじゃないし、そんな大げさではないよ?」

杏「ただ、一度自分一人で暮らしてみろって、部屋とお金だけ与えられて」

杏「お金はあったからよかったんだけど、結構カツカツだから外出て買い物もしないといけなくて」

杏「自分で料理する気はさらさらなかったから安くなったお弁当をスーパーで買ってね」

杏「洗濯もする気なかったけど、流石に無理があったからちゃんとやったよ」

杏「掃除は……今の杏の部屋を見れば分かるけど全くやらなかった」

きらり「杏ちゃん……」

杏「そ、そんな顔しないでよ、杏だって杏なりに精一杯だったんだから」

杏「で、そんな暮らしをしばらく続けてた……そしたらさ、変な人にあったんだよ」

きらり「へ、変な人?」

杏「うん、変な人」

杏「お昼にいっつも公園で座ってて、コーヒー飲んでる人」

杏「買い物の帰りに公園を通る時に絶対いたんだ、その人が」

きらり「なんだか危ないにぃ……」

杏「人と関わることを全くしなかったからかなぁ、いつも一人でいるその人に親近感がわいたんだ」

きらり「それでそれで、どうしたの?」

杏「ある日その人にね、軽く会釈したんだちょっと腰を屈める感じで」

杏「そしたら向こうも軽く会釈を返してくれたんだ」

きらり「ふむふむ」

杏「でね、いつも無言で目さえ合わすこともなかったのに、たった一回会釈したその日から……杏たちはお互い会釈だけはするようになったんだ」

杏「本当にそれだけなんだけど……杏はなんだか心地よかった」

杏「関わってるようで関わってないような、それって楽でいいんだよね」

杏「でも、一度だけ、雨の日にその人に会ってさ」

杏「傘一つささないで公園にいて、その時も変わらずその人は会釈してきた」

杏「流石の杏も声を掛けたんだ『雨に濡れて大丈夫なの?』って」

杏「そしたらあっちは、凄く低くて聞きづらい声で『大丈夫』って一言言ったんだよ」

杏「見るに見かねて杏は指していた傘を渡して急いで家路についたんだ」

きらり「……杏ちゃんは風邪引かなかった?」

杏「うん、その時は大丈夫だった」

杏「そんで次の日にいつものように公園に行ったらさ」

杏「そしたらその人もいつものようにいて、でもその日だけは杏に声かけて来るの」

杏「傘ありがとうって……あと、なんか封筒渡そうとしてきた」

きらり「お、お金……?」

杏「お礼のつもりだったんだろうね……いや、でもさすがに傘くらいでそんなの貰えないしさ断ったよ?」

きらり「……おおー」

杏「……な、なんだよぅ、杏だってそういうの断る常識くらいあるぞ」

きらり「にょ、にょわ、ごめんにぃ、きらりそんなつもりはなくて……!」

杏「あ、じょーだん、じょーだんだってば、分かってる」

きらり「杏ちゃん、いじわるぅ……」

杏「ごめんごめん、はいこれで機嫌直して、あーん」

きらり「あむっ……うまぁー☆」

杏「そ、それ、杏の真似? 杏、そんなだらしない顔しねーし……!」

杏「って、どこまで話したんだっけ」

きらり「雨の次の日に、公園の人にまたあったところだゆ?」

杏「あ、そっかそっか……んでさ、そしたらその人はごそごそと自分のポケットを漁って飴を差し出してくれたんだ」

きらり「……その飴がもしかして!?」

杏「そう、杏が飴を好きになった始まり」

杏「ただその飴見たことないやつだったんだ、作った会社も見たことないところで」

杏「でもさ……それ、すっごく美味しくて」

杏「そのことを言ったら、またその人が飴をくれる約束してくれたんだ」

杏「……けど、次の日行ったらその人はもう公園にいなくて」

きらり「……」

杏「飴の包み紙も捨てちゃったから、その飴がなんなのか杏には結局分からないまま」

杏「だから、杏は飴をいっぱい舐めてその飴に出会おうとしているわけ」

杏「……もし見つかったらその人にももう一度会えるような気もするし」

きらり「杏ちゃんロマンチストだにぃ……」

杏「言ったなー」

きらり「でもでも、とってもとぉーってもすてきだと思うゆ?」

杏「……そうかな?」

きらり「うぇへへ……杏ちゃんっ☆」

杏「わっ、わっ、急に抱っこしないでよ……!」

きらり「にょわー☆ なんだか杏ちゃんぎゅーっとしたくなったの☆」

杏「な、なにさそれ……まぁ、いいけど」

きらり「……ありっ?」

杏「どうしたの?

きらり「そういえば杏ちゃん……このお話、何が恥ずかしい話だったんだにぃ……?」

杏「……」

杏「あ、あのさ」

きらり「?」

杏「……プロデューサーのくれる飴って、美味しいよね」

終わりです。
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