少女「小さな町の」男「珈琲店」~二杯目~ (14)
少女「男さん今日はどんなコーヒーを出してくれるんですか」
男「うーん、そうだなぁ。どうしようかな」
少女「珍しく悩んでますね。いつもパッと淹れてくれるのに」
男「うん、悩んでる」
少女「オススメがもう無くなってしまったとか?」
男「いや、オススメしたいものはまだまだ沢山あるよ。今日は特に飲んでもらいたい豆をあるにはあるんだけど……」
少女「なら勿体振らずに出してください。人が悪いですよ」
男「勿体振ってるワケでは、まぁいっか。それじゃあ淹れるね」
少女「お願いします」
おぉ、来たか>>1よ!
めっちゃ久しぶり!
男「今回淹れる豆はキリマンジャロだ、珈琲好きの間ではキリマンと呼ばれて親しまれている。珈琲を飲まない人でも1度は聞いたことがあるんじゃないかな?」
少女「確かによく聞きます」
男「栽培地域はタンザニアのキリマンジャロ山の麓中心、品種はアラビカ種。因みにこのキリマンジャロという名前なんだけど、これは山及び行政区分を表すものだから他国では国名のタンザニアと呼ばれている場合もある」
少女「名前が変わるんですか」
男「珈琲豆は基本が栽培地域の名前を付けるからね、広めの地域の総称で名前が通っている場合もあって違う豆だと思っていたら一緒だったりすることもある」
男「特に安い豆はかなり範囲が広かったりするから味さえ変わってしまう」
少女「安かろう悪かろうですね」
>>3
お久しぶりです!
ペース遅いですが書き込んでいきます
男「そういうこと。それじゃあキリの良いところで珈琲も入ったし、どうぞ」
少女「いい香りですね。いただきます」ゴク
男「キリマンジャロの特徴としてはまずカップが前に出された瞬間感じる抜群の香り、それだけじゃなく……」
少女「男さん、男さん」
男「ん?どうかした?」
少女「あの、言いにくいんですけど、これ少し傷んでません?なんというか、その……酸っぱくて」
男「…………」
少女「す、すいません!せっかく淹れて頂いたのに」
男「…………」
少女「あの、怒ってます?」
男「それなんだよ・・」
少女「え?」
男「その酸味がキリマンジャロの一番の特徴なんだ、そして酸味と一緒に感じられるコクから野性味溢れる味と称されているんだ」
少女「はぁ、えっと怒ってないんですか?」
男「怒るわけないよ、ちゃんと珈琲の味の違いがわかるってことじゃないか。……まぁちょっと傷付いたけどね」
少女「すいません」…シュン
男「いやいや、謝る必要はないよ。むしろ謝るのは僕の方なんだ」
少女「?」
男「なんというか、今回淹れたキリマンジャロはいつも店で出しているものとは違ってね」
少女「違うって?」
男「焙煎度が違うって言って分かるかな?」
少女「うーん、焙煎の度合いだということはわかるんですが、どう違うのかまでは」
男「いや、珈琲が豆を炒っているものだとさえ知っていれば話は早い」
男「焙煎度は豆、炒る前は生豆と呼ばれるだけどその生豆を焙煎した時の深さのことだ。珈琲を飲まない人からしたらそれで何が変わるのかといった感じだろうけど、この焙煎は珈琲の特徴を決める上でとても大切なんだ」
少女「特徴って豆の産地以外でも変わるんですか?」
男「うん、珈琲の淹れ方や挽いた時の粉の細さとかでも風味は変わるよ。それについてはまた後で話そうか」
少女「繊細なんですね」
男「それはもう。話を焙煎に戻そうか、焙煎にはその深さ毎に名前があるんだ。炒りが浅いものから順にライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストと言ってこれらを2つずつで区切って浅煎り、中煎り、中深煎り、そして深煎りと呼ばれている」
少女「それが味にどう影響が?」
男「ズバリ深いほどに苦く、浅いほど酸っぱい!」
少女「いきなり大雑把に」
男「どれくらい変わるかは豆の種類によって違うからね、こんな感じで覚えていれば十分さ。それに大体お店で流通しているのはシティやフルシティが中心だしね」
男「まぁもちろんそれ以外を置いているところもある、特に深煎りのものはデパートなどに入っている様なコーヒーショップにも1つは置いてあるんじゃないかな」
少女「深煎りということはかなり苦いんですよね?売れるんですか?」
男「売れよ、一応はね」
少女「一応?」
男「珈琲には一般的なドリップの他にも色々な淹れ方があるからね、それによって使う焙煎も違ってくるんだ。もちろんそれ以外がダメだというわけではないけど」
少女「つまり深煎りに合った淹れ方があってそれに使うために買う方がいるんですね」
男「とても分かりやすい説明をありがとう、その通り。だからもし自分で珈琲豆を買う時は苦いのが好きだからといっていきなり深煎りを買ったりしない方がいいね」
少女「苦くて飲めないってなったら大変ですもんね」
男「もったいないよね、その他に豆を買う時焙煎関係で気を付ける点が1つある」
少女「なんでしょうか」
男「焙煎日だよ、これは基本的にパッケージに記載されているからよく見るように」
少女「やっぱり早ければ早いだけいいんですか?」
男「そうだね。それと焙煎後豆の酸化が始まるからなるべく早いものを選んで挽かない状態で約1ヶ月以内に消費するのがベストだ。ただし焙煎直後はガスが出るから3日から1週間ぐらい置いた方がいいとも言われてるから焙煎してすぐに飲むのはオススメしないかな」
少女「なるほど。そういえばキリマンジャロは……」
男「あ、ゴメンすっかり忘れてたよ。キリマンジャロについてだったね」
少女「忘れてたんですね(言わなかったらどこまで話が広がっていたんだろう)」
男「えっとね、長々話しておいてアレなんだけど今回淹れたキリマンジャロはシナモンローストだって事を言いたかったんだ」
少女「え?なら」
男「正直最初の深いほど苦い辺りの説明だけで良かったんだよね。ホントに助かったよ、あのままなら淹れ方の説明から使う道具まで話すところだったよ」
少女「聞いてもいいんですけどね」
男「そう?なら……ってダメだ。元々君にただでさえ酸味が特徴のキリマンジャロをより酸味が際立つ煎り方で淹れたのを謝ろうと思って話をしたんだから」
少女「そういえばそうでしたね」
男「だからゴメン、ホントに」
少女「別に謝ることじゃないですよ、それに男さん最初悩んでたのに出してくれって言ったの私ですし」
男「優しいね、ありがとう。もちろんそれはサービスにさせてもらうよ」
少女「私そういうのは遠慮しませんよ?」
男「僕から言ったんだ気にしないでくれ。それでカップが空みたいだけどどうする?今度は違うのをいれようか」
少女「お願いします、これもサービスなんですか?」
男「……さてとお湯を沸かさないと」
少女「男さーん?」
男「豆を挽いてっと」
少女「さっきの謝罪は」
男「もちろんサービスで出しましょう!」
少女「冗談ですよ」クスッ
男「え?」
少女「キリマンジャロのお返しです」
男「もしかして実は根に持ってたり?」
少女「いえ全然。別に最初に酸っぱいって言ってくれても良かったなぁなんて思ってませんよ」
男「(絶対思ってるよ)」
少女「小さな町の」男「珈琲店」〜二杯目〜
ー 終わりー
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