女「一旦距離おこうか…」(19)
男「は?」
女「だから一旦距離おこうって言ってるの」
男「何で?」
女「私ね引退までバスケに集中したいと思ってるの」
男(女がそこまでバスケバスケ言うのは珍しいな)
男(でも頑張りを無駄にはできないな)
男「分かった。
引退するまでは距離おこうか」
女「ごめんねわがまま言って」
男「いいよ。
気にするな。」
この判断がのちに後悔するなんて
男は思っていなかった。
後輩「せーんぱいっ」ダキッ
男「うおっ!?……何だ、お前か」
後輩「どうしたんですかぁ、そんな悲しそうな顔して?」
男「ん……いや、色々と……あってな」
後輩「ふーん……もしかして、女先輩と別れちゃった、とか?」
男「ピク……いや、別れてはいないよ」
後輩「そうなんですか……(別れては……いないんですね)」ニヤ
後輩「……ふふ、じゃあ、その先輩の傷を癒してあげますよ!」グイグイ
男「え、あ、お、おい!?」
みたいなものかと
男「ちょ、何処行くんだよ?」タッタッタ
後輩「そりゃ、遊べる場所ですよー!」グイグイ
後輩「女先輩がいない分、私がその代わりになってあげますから!」
男「……そんなこと」
後輩「する必要ないって、言うんですか?」
後輩「でも、先輩はそうやって嫌な重荷を1人で背負ってばかりで」
後輩「……私、放っておけないんですよ」
後輩「先輩が……倒れちゃうんじゃないか、って……」
男「……そんなの大袈裟だぞ」
後輩「果たしてそうでしょうかね?……傍から見れば辛そうな顔ばっかしてますよ、先輩は」
男「……」
後輩「女先輩と先輩との間に何があったか詮索するつもりはありません」
後輩「……でも、何かあった事は確かですよね?それで、落ち込んだ顔をしてて……」
後輩「出過ぎた真似だと、充分承知です……でも、私だって先輩の役に立ちたいです」
男「……後輩」
後輩「……駄目なら駄目と言って、私の手を離して下さい」タッタッタ
男(……俺は)
後輩「……先輩?早く決めて下さい」
男(俺は……どうなんだ?)
男(女がいるのに……俺は何で迷ってるんだ?)
男(……こいつの優しさを求めてる……?)
男(……そんな訳……)
後輩「先輩……?」
男(……いや、否定しきれない)
男(……一回、だけ。女……一回だけ裏切る俺を許してくれ)
男「……」ギュ
後輩「!……先輩……」
後輩(……ふふ、ちょろい)
―――――――
後輩「先輩、何処に行きます?」
男「……お前が行きたい所で」
後輩「んもぅ……女の子に選択させるなんて、いけないですよ?女の子は引っ張ってくれる男の人に惹かれたりするんですからね?」
男「………そうか?」
後輩「そうなんですよ」
後輩(特に……私とか、ね。先輩?)
後輩「じゃ、ここはゲームセンターに行きましょう!」
男「分かった」
―――――――ゲームセンター
ワイワイガチャガチャ
男(……このタバコ臭いような、ゲーセンの特有の匂い。久しぶりに来たな……)
後輩「ね、先輩少し回りましょ?」
男「ん、あぁ……」
テクテク
後輩「……あっ、この人形あのアニメのだ!」
後輩「可愛いー……欲しいなぁ……」
男「……取ろうか?」
後輩「え、いいんですか?」
男「取れるか分からないけどな……試してみる」チャリン
男「確か……こうやって」
ウィーン
男「……この位置だな」
後輩「え?でも、この位置じゃ人形掴めないですよ?」
男「……まぁ、見てなって」
ウィーン
トス
後輩「あ……アームが人形に当たって……」
ゴトン
男「これで、落ちると……ほい人形」ヒョイ
後輩「あ、ありがとうございます!す、凄いですね先輩!」
男「ufoキャッチャーにはそこそこ自信あるんだ……ま、久しぶりにやったから取れないと思ったけど……」
後輩「それでも凄いですよ……ありがとうです、この人形大切にしますね!」
男(こんな物でも喜んでくれるのか)
男(女は……どうだろう)
男(…………)
男(……確か、一回取ってあげたな、ufoキャッチャーの人形。その時の女は……要らないけど貰っといてあげるって言ってたな)
男(……いや、女も、あんな事言ってたけど本当は嬉しいって思ってただろう)
男(……想像に、過ぎないが)
後輩「……せーんぱい?」
男「ん、何だ?」
後輩「また何か考えてましたね……暗い顔でしたよ?」
男「……そうか、ごめん」
後輩「もーう!そうやって謝る必要ないのに謝る!先輩の悪い癖ですよ?……全く、今は私と楽しむ事だけを考えて下さいね!いいですか?」グイグイ
男「……わ、わかったからそんな引っ張んないでくれ」
後輩「さぁ次は格ゲーですよ!」グイグイ
ポチポチ
後輩「この、とりゃ!」ガチャガチャ
男「ほらほら、そんな攻撃当たるかよ」カチャカチャ
後輩「言いましたねー!それ、食らえぇ!」ガチャガチャ
男「……よっ」ガチャガチャ
後輩「ぬぁ!?や、ヤバイ!」ガチャガチャ
男「ほい、足元が空いてるぞー」カチャカチャ
後輩「ま、待った!」ガチャガチャ
男「待ったなし、っと……」カチャカチャ
後輩「ひ、ひどっ!!」ガチャガチャ
後輩「うにゃああああ!負けたぁあ!!」
男「経験者と張り合おうとするからだよ……」
後輩「……いいですもんねいいですもんねーだ。先輩が大人気ないのがよーくわかりました」ムスゥ
男「ほら……飲み物奢ってやるから機嫌直せって」
後輩「飲み物程度で釣れると思わない事ですよ!……あ、私は午後のミルクティーで」
男「全く……」ハハ
チャリン……ガタン
男「ほら、お望みのもの」ピタ
後輩「つ、冷た!……もう、頬っぺたに押し付けないで下さいよぉー」
男「まぁ、奢ったんだし、これぐらい許してくれ」
後輩「……いいですよ、先輩だから許してあげます」ゴクゴク
後輩「……ぷは、やっぱり運動の後はミルクティーに限ります!」
男「……運動っていうのか?」
後輩「汗かけばどれでも運動ですよー……」ゴクゴク
男「……ったく、都合いいんだから」
後輩「……ふふ、先輩気付いてますか?」
男「……ん、なにが?」
後輩「先輩、さっきから笑ってるんですよ?雰囲気も連れてくる前とは大違いですし……」クスクス
男「!……そう、か」
男(何時の間にか、笑ってた……本当に無意識で……)
男(……こいつのお陰か。少しだけ、スッキリした気がする)
後輩「先輩の笑顔いいですよねー」
男「……そうか?」
後輩「記念にしておきたいぐらいですよ……そうだ!」
後輩「先輩、記念プリ撮りましょう!先輩と久しぶりに遊んだ記念に!」
男「あ、あぁ……」
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