少女「はい、こちら無機物あんない課です。」 (14)

四月下旬


ーーープルルルル、プルルルル

少女「はい、無機物あんない課です」

?「あ、もしもし少女ちゃん、俺だよ」

少女「ああ課長。今日は遠征では?」

課長「そぉうなんだよ、それでさ、参っちゃうよほんっと。やっぱ依頼人とんでもなっい人だったよ」

少女「ヤマダさんに聞いてます、やはりそうでしたか。わざわざタミアまで行って…ご苦労様です」

課長「ほぉんと。もう今すぐ帰りたい」

少女「えっと……この電話、報告はそれだけですか?」

課長「あん、違う違う。ちゃあんとお仕事の電話よぅ」

少女「ええ、ですよね。それでなんでしょう?」

課長「ナミハダ六丁目、無機物の緊急コールが外線で俺んとこまで経由してきたの。少女ちゃん、行ける?」

少女「ナミハダ六丁目…ですね。ええ、今なら行けます。このあと3件入ってるので早めに終わらせられれば」

課長「んん、たぶんねぇ前にも電話してくれた方だから大丈夫。現場処理と簡易書類書いてもらうのと、まあそれくっらいでいいから」

少女「わかりました。詳しい場所は?」

課長「海沿いから1キロほど離れたY字路を右に行って次の信号を左に曲がったところから二軒目の赤い屋根のおうち」

少女「………、はい。了解です」

課長「んーじゃ、よろしっく」


ーーー

少女「えー…たしかここを左だよな」スタスタ

少女「あ、みっけ。ここか。……なんだおわんさんちか」

ピンポーン

少女「すいませーん、役所の無機物あんない課ですー。おわんさん、入りますね」ガチャ

少女「うお、真っ暗」

少女「すいませーん!おわんさん、いらっしゃいますかー?」

?「………少女ちゃん?」

少女「あ、おわんさん」

お椀「やあ、来てくれてありがとう。どうも自分じゃうまく動けなくてね」

少女「いえ、無機物の皆さんが動けないのはこの世の誰もが知っていますので今さらなんてことないですよ」スタスタ

お椀「来てくれてありがとう。どうも自分じゃうまく動けなくてね」

少女「ええ、大丈夫ですよ」ス、ヒョイ

お椀「来てくれてあ、あ、ありがとう。どうも、自分じゃ」

少女「はいはい、大丈夫ですよー」

少女「おわんさーん、私の目見れますかー?」顔グイーッ

お椀「来てくれて、どうも、自分じゃ、ありが、しょうじょちゃん」

少女「おわんさーん?もう大丈夫ですよー。私の目、何色かわかりますかー?」

お椀「しょじょちゃ、しょ、う、……う、ぅぅうぅう…」

少女「おわんさん、一回床の方おかせてもらいますね」コト

少女「えー…外面異常なし、古傷処置オッケー、住んでた家は今まだ片付けられてない、と…」

少女「……この家、廃屋になってからもう3年も経つのに…土地管理課はなにやってんだ」むずむず

少女「おわんさん、いったん病院の方預けた方がいいなー」カキカキ…

お椀「しょ、ちゃん、ありとう、うぅ、うぅ、うっ…」

少女「おわんさん、大丈夫ですか?」ヒョイ

お椀「少女ちゃん、うぇ、ごめ、うぅう…うう」

少女「おわんさん、私の目の色わかりますか?」

お椀「ぐすっ、うぅ…みどり…」ズズー

少女「…意識に異常なし」カキカキ

少女「はぁー…とりあえず現場処理からやるか」

少女「おわんさん、今日はどうやってコールしてくれましたか?」

お椀「そこの…キッチンの緊急コールに叫んだ…」

少女「はい、ありがとうございます。では、今日はどうして定位置から落ちてしまいましたか?」

お椀「ぐすっ…近所の子供が、ときどき肝試しにこの家に入って来るんだ!それで…今日もそうだったんだけど、子供が食器棚に当たって…」

少女「なるほど、…えっと、ではその時おわんさんが」

お椀「なんて思ったかでしょ?…怖かったよ、ただそれだけ」

少女「……はい…なるほど。ありがとうございます。痛いところはないですか?」カキカキ

お椀「ぐすっ…ない」

少女「わかりました…えーと、おわんさん。無機物救命は呼びますか?それとも、定位置に戻られますか?」

お椀「別に、だいじょうぶ。……ねえ、少女ちゃん」

少女「はい?」

おわん「規約違反になっちゃうかもしれないんだけど……あの、あのね」

少女「なんでしょう?」

お椀「…いつもの定位置より、ちょっとだけ奥の方においてくれたら嬉しいんだ。ほんとに、ちょっとでいいから…」

少女「……んーまあ、少しなら大丈夫です。子供の出入りもあるということなので、特に厳しくは言われないと思いますよ」

お椀「あ、本当?じゃあ、お願い………あとさ」

少女「はい」

しえん

おわんは大抵有機物だが無機の家ってあんのかな?

>>11
有機物と鉱物の混じった物だとお考えください


ちょっと風呂入ってくる

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