春香「喧嘩もいい加減辞めたい」 (59)
春香「何?」
千早「…え、何かしら」
春香「今見てたよね」
千早「はぁ?」
春香「……」
春香「見てたもん」
千早「からかいなら他所でやってくれないかしら」
春香「からかってるのは千早ちゃんの方だよね!」ガタッ
小鳥「春香ちゃん!」ガシッ
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小鳥「落ち着いて春香ちゃん、ね?」
春香「話してください、小鳥さん!…って、何で笑ってるの!にやにやしてやっぱりからかってるんでしょ!」
千早「……」
スタスタスタスタ…
春香「千早ちゃん!!笑わないでよ!」
千早「……」
スタスタスタスタ…ガチャ、バタン
春香「千早ちゃん!!!」
小鳥「春香ちゃん落ち着いて!」
春香「うっ……ぐすっ」
春香「小鳥さぁぁぁん……」
小鳥「大丈夫よ春香ちゃん!必ず元に戻るから!」
春香「でも…もう千早ちゃん行っちゃいましたよぉ」
小鳥「しっかりして春香ちゃん!千早ちゃんは別に春香ちゃんが嫌いなわけじゃないの!」
春香「でも…」
小鳥「今、春香ちゃんが苦しいように、千早ちゃんもとっても苦しい時期にいるの、分かってあげて!」
春香「……」
春香「はい…」
ガチャッ
P「ただいま戻りました!」
小鳥「あっ、お疲れ様ですプロデューサーさん」
P「春香…千早は!?」
春香「今、出て行きました」
P「…そうか、探しに行ってくる」
小鳥「待ってください!」
P「どうした?」
小鳥「そっとしておいてあげられないでしょうか、千早ちゃんのことも考えて。大丈夫です、事務所には戻ってくると思います」
P「えっ…。あ、あぁ…」
P「その方が…いいかもしれないな」
響「あ、プロデューサー帰ってたのか?」
春香「響ちゃん…」
響「…ん、なんだ春香、また揉めたのか?」
春香「…うん」
響「ふーん…。春香も好きだな、自分はもうウンザリしてる。あいつには早く事務所から出て行って欲しいぞ」
P「何言ってるんだ!!お前は千早の気持ちが分からないのか!?」
響「分かってる、ちゃんと分かってるぞ。でも、だからと言って自分の仕事を何度もダメにされたり迷惑ばっかりかけられると流石に自分も嫌になるな。この前の大事なオーディション滅茶苦茶にされたのもプロデューサー覚えてるだろ?」
P「…だが」
響「いくら歌えないからってそこまでやられると度が過ぎるぞ」
P「……」
響「…ふぅ。じゃ、仕事行ってくるな、春香」
春香「……」
ガチャッ…バタン
春香「……」
春香「プロデューサーさん…」
P「あ、あぁ…ちょっと待ってくれ、頭を整理したい」
P「皆が千早を嫌い出してもうどれくらいになる」
春香「2週間くらいです」
P「千早が事故にあったのはいつだ」
春香「……2ヶ月前です」
P「大きな声が出せなくなったのはいつだ」
春香「……1ヶ月…半うぅ…ぐすっ」
小鳥「プロデューサーさん!春香ちゃんに何てことを言わせるんですか!!」
P「あぁ…悪い…俺も参ってるんだ。そうか、それでその時同時に医師から声の事を伝えられたのか、そうだったな」
P「……」
P「…そうか」
P「悪い…春香。取り敢えず今日はもう帰ってくれないか、春香には仕事があるんだ、お前も休息を取らないといけない」
春香「…はい」
P「…大丈夫だ春香。例え一生歌えなかったとしても、千早はいつか必ず…」
春香「お疲れ様です」
ガチャッ…バタン
P「……」
P「くっ…俺はまた、春香に酷いことを」
小鳥「期間は後どれくらいなんですか?」
P「あと1ヶ月だ。丁度次のライブがある頃だな。それを過ぎたら…もう千早はここに居られなくなる」
小鳥「そう…ですか」
P「………」
P「確かに…」
小鳥「え?」
P「確かに千早が皆迷惑をかけてるのは事実だ」
P「千早が退院してからの生活は異常だった。あの千早の目は、もうアイドルとして生きていく気持ちは微塵も感じなかった。手当たり次第に皆の仕事を邪魔しては滅茶苦茶にし、事務所の活動に少なくとも被害が掛かっているのは事実だ」
小鳥「でもそれは…」
P「あぁ、千早の気持ちも分からなくはない。誰だって、千早の立場になって悲しくない奴なんかいないだろ。でも、少し度が過ぎる。今は何とか内密に済ませてるが、このままだと千早の行動が公に知られて、本当に事務所から追い出されてしまう」
小鳥「そんな……で、でも、千早ちゃんを放っておけるわけがないじゃないですか!」
P「あぁ、だからどうにかしてやりたいんだ!…でも、どうすればいいんだ?」
小鳥「……」
春香「……」
スタスタスタスタ…
春香「……」
「ハンバーグがいい!」
「はーい」
春香「…………」
春香(確かに、あの時の千早ちゃんは異常だった)
………
………………
………………………
響「今日は大人しくしてるのか?」
千早「えぇ、今までごめんなさい。私、歌えなくなって何もかもが嫌になってた。自分の欲望のままに生きて、やりたいことができるあなた達を、私は恨んでいたのかもしれない」
春香「ううん、大丈夫だよ千早ちゃん。私、千早ちゃんが立ち直ってくれただけでこれ以上に無いくらい嬉しいよ」
やよい「また元気な姿が見れて、私嬉しいです」
伊織「絶対に勝ち取ってくるわ、あんたも参加しているつもりで今日のオーディションは受けるつもりよ」
真「…ボクも」
千早「みんな…」
あずさ「そろそろ、受付の時間です〜」
春香「じゃあ、受付済ませたら直ぐに向かうから」
千早「えぇ…控え室で待ってるわね」
「登録番号は11番です」
P「ありがとうございます」
スタスタスタスタ…
美希「…やるの」
真「うん」
亜美「千早お姉ちゃんの為にも」
貴音「えぇ…そうですね」
真美「……」
雪歩「頑張ります」
春香「……行こう」
ガチャッ
春香「受付済ませて…………」
「ヴゥァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ゴホッゴホッ」
ガッシャーーーン!!!!!!!!!
「ヴァァァァァァァァァァア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「アァァァァァァァァァァアァァァァァァァァァァア!!!!!!!!!!!!!!!」
「ゴホッゴホッゴホッ!」
バリバリッビリビリビリィィイッ!!!!
ガシャーーーーーー!!!!
春香「………………………えっ」
P「……………………………」
やよい「……………」
亜美「…………」
真美「………」
「ヴゥァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!!!」
響「な………なに、やってるんだ。衣装が………荷物が」
伊織「あ……………」
春香「………」
伊織「……………なにやってんのよ」
伊織「何やってんのよ千早!!!!」
ガッシャーーーーン!!!!
伊織「あんた、言ってたじゃない!」
伊織「下を見るのはもう辞める、今日のオーディションが終わったら、これからは前を見て生きていくって嬉しそうに言ってたじゃない!!!」
「クックックックックッ………」
「………………」
「…………アァァ!!!」
バァン!!
…………
……………………
(千早ちゃんの言葉に嘘はなかった。前を見ていくって言ってた千早ちゃんは、本当にそんな目をしてた。でも、結局千早ちゃんは変わらなくて、それから皆は段々…)
春香「……このまま」
ウィーン…
「ありがとうございました」
「これからもこの調子で頼むわよ」
「はーい」
「いぇえい!」
春香「…っ」
「……………あっ」
春香「…伊織」
亜美「おっ、はるるん」
あずさ「あらあら〜」
春香「仕事だったの?」
伊織「そうよ、あんたは?」
春香「私は……帰宅中かな」
伊織「ふーん…」
亜美「はるるん、亜美今日は絶好調だったよ!」
春香「えっ?」
伊織「はぁ…あんたは調子に乗らないの」
亜美「え〜〜、でも事実っしょ」
あずさ「うふふっ…確かに亜美ちゃん最近頑張ってるものね」
亜美「でしょでしょ!!」
春香「そう…なんだ」
亜美「こんなに楽しいのは今しか無いくらいだよ〜〜」
伊織「その調子をこれからも維持してくれたら助かるわね」
亜美「えぇ〜〜」
あずさ「うっふふ」
春香「……」
亜美「ん、どうしたのはるるん」
春香「いや、なんていうか…」
春香「なんで…そんなに楽しそうなのかなって」
伊織「………は?」
春香「千早ちゃんは辛い思いしてるのに、何で皆だけで楽しい思いしてるのかなって」
亜美「……」
あずさ「……」
亜美「ほーんと、参るよはるるん」
春香「…………えっ?」
亜美「はるるんまたその話?……亜美、そろそろいい加減にしてほしい」
春香「…え、」
伊織「あんたも何時迄もうじうじ付き合ってあげるのはやめなさい」
春香「なに…言ってるの」
伊織「甘えてんのよ、千早は」
春香「…………えっ」
伊織「確かに千早の状況は過酷よ、考えるだけで私も辛いわ。だからといって何もかも許されるわけじゃないわ。千早は少しやり過ぎた、あんたが何時迄も世話を焼くから、あぁやって事務所にもホイホイやってきて、また悪さをするんじゃないの?」
春香「…なにを!!」
あずさ「私も同感かしら」
春香「……」
春香「あずささんまで」
あずさ「でも勘違いしないで春香ちゃん。別に千早ちゃんの事が嫌いなわけじゃないの」
春香「……」
伊織「…それじゃ」
亜美「またねはるるん〜」
春香「……」
春香「みんな、もう千早ちゃんの事…嫌なのかな」
ウィーン………
「ありがとうございました」
「……あら?」
春香「…えっ」
律子「どうしたの…春香」
春香「…律子さん」
春香「律子さん!!」
律子「わわっ…はるか?」
春香「何でそんなに平気でいられるんですか!千早ちゃんがあんな目にあって、辛い顔して、1人でずっと抱え込んでるのに、何でそんなに平然としてるんですか!?」
律子「…春香」
春香「私…!!」
春香「千早ちゃんの為に何かしてあげたくて!歌が歌えるようになるわけじゃないのは分かってても、それでも、千早ちゃんのために何かしたくて!」
春香「……」
律子「……」
律子「そう………春香は、そう思ってるのね」
春香「……はい」
律子「よく聞いて…春香、あなたの気持ちは間違ってはないわ。誰よりも人のことを思うあなたのそういうところ、私は誇りに思ってる」
春香「……はい」
律子「でも…時にはそれが仇となってしまうこともあるの」
春香「……」
律子「千早の事しか見えてなくて分からないかもしれない。でも、薄々あなたも気付き始めてるはずよ。…あの娘は、少し甘え過ぎたの」
春香「…そんな」
律子「このままじゃいけないと分かってるのにいつまでも辞められない。そういう心境になってるあの娘に、あなたの気遣いは逆効果なの」
春香「でも、私は!!!」
律子「あなたもいい加減にしなさい!!」
春香「………」
春香「……そ、んな」
春香「………………………………」
春香「ふざけないでくださいよ、どうにもできないからってそうやって千早ちゃんを見捨てないでください」
律子「……なんですって」
春香「プロデューサーさんが言ってました、一番辛いのは千早ちゃんだって。そんな千早ちゃんが1人で頑張ってるのに、それを応援して何が悪いんですか」
律子「………でも、それは」
春香「お節介ですか、逆効果ですか?1人にさせないといけない状況で、こういう私の気遣いは無駄ですか」
春香「…本当にそう思いますか?」
律子「……」
春香「私には、千早ちゃんは呼びかけられるのを待ってるように見えるんです。助けて、誰か助けてって、そう言ってるように見えるんです。だって…そうじゃなかったら、前を見て生きていくって言ってた千早ちゃんが、暴れたり、皆の仕事滅茶苦茶にしたり、そんなことをするはずがないじゃないですか!!」
律子「………」
律子「……」
春香「……」
春香「…すいません…怒鳴っちゃったりして」
律子「いえ………」
律子「…………」
律子「………ねぇ、春香」
春香「…?」
律子「もう一度、千早に呼びかけてみたらどうかしら」
春香「えっ?」
律子「春香のその思いを、もう一度…千早にぶつけてみたらどうかしら」
春香「律子さん……いいんですか?」
律子「えぇ、私にもどうすればいいか分からなかったの。このままでいいのか、千早はどうなるのか、分からなかった…」
律子「…でも、春香の気持ちもわかる気がするわ、春香…行って来なさい」
春香「律子さん……」
律子「ほら、元気だしなさい」
春香「は……はい!」
春香「じゃあ…私」
春香「千早ちゃんにもう一度…!!!」
ウゥゥゥゥゥ〜〜〜〜ン
ウォォォォォォ〜〜〜〜〜〜〜〜ン
春香「………え?」
春香「な……なに」
ピーポーピーポー
キュキュシャドリマス!!
ピーポーピーポー
ピーーーーポーーーーピーーーーポーーーー
春香「千早ちゃん…」
タッタッタッタッタッタッ
律子「は、春香?」
春香「うそ…だよね」
タッタッタッタッタッタッ
春香「千早ちゃん…!!」
ピーーーーポーーーーピーーーーポーーーー
「おい!!人が倒れてるぞ!!」
「何であんなところに!!道の真ん中じゃないか!」
春香「千早ちゃん!!!」
……………………
春香「……どこ?」
春香「……」
春香「………………………………」
「う、うわぁ!!!」
「どうしたんだ、誰か倒れてるのか!?」
「ちょっとあれって!!!!!」
「おい、やばくないか!?あれ!?」
「関係者はあっちに行って、ほら!あっちに行きなさい!!!」
「く………くび…が、!!
」
「首がーーーーーーーーーーー!!」
春香「………………………………」
…………………
…………………………………
「今日のニュースです。昨日に続き、今日も街中の交差点で1人の女性が自殺しました。調べによると、その女性は、アイドルグループ、765プロで活動している、天海春香という女性の模様です。近くにいる人の話によると、『歩道橋からそのまま飛び降りた』らしく、警察は連続で起こる自殺事件に調査を進めています…次のニュースです…………………」
完
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うん