・『鷲尾須美は勇者である』と『その後の園子』の内容を両方含みます
・風の讃州中学卒業がもう少しっていう時期を想定
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~☆
風「うん、そう」
夏凜「私が、赤ちゃん……」
夏凜「なんで、そんな話が持ち上がってるわけ?」
風「だめ?」
夏凜「だって、赤ちゃんでしょ……?」
夏凜「赤ちゃんは……ねえ」
風「今、私が考えてる劇の配役さ、東郷がパパ役、友奈がママ役って予定なんだけど」
風「勇者部の中で、その二人の子ども役を割り振ろうとすると、一番適任なのは、夏凜ってことになるのよね」
夏凜「……樹は?」
風「樹は、基本BGM関係担当じゃない? それに、赤ちゃん役で、おぎゃああああああああああっ!
ってするのは、最近あの子場馴れしてきたとはいえまだきついかなーって」
風「というか、夏凜が赤ん坊役やるのが、多分一番お客さんに受ける」
風「つまり、いつもレクリエーションやらせてもらってる保育園の園児たちに、ってことだけど」
夏凜「え、ええ……?」
風「迫真の演技頼むわよ、夏凜」
夏凜「もう、それ決定事項なの?」
風「頼むわよー……。夏凜ー……」
風「今回の劇で私引退するのに、赤ちゃん役、私がやったら締まらないにもほどがあるでしょー?」
夏凜「園子は?」
風「園子には、生憎もっとはまる役があるのよ」
夏凜「なに?」
風「子どもたちを愛でほんわか包み込む、眼鏡をかけた若い保母さん」
風「お花に毎日お水をやって、窓際で優雅に紅茶飲んで、暇があったらのほほんとしてるようなタイプの人」
夏凜(……まあ、確かにそれは、園子以上の適任を探そうとしても中々見つからないでしょうね)
夏凜「園子とあんたの事情はわかったわ」
夏凜「でも、赤ちゃんに関して、別に部内だけで役の割り振りやらなくても、
小さい子供を赤ちゃん役として応援に呼べば済むと思わない?」
風「それだと、讃州中学勇者部、全員勢ぞろい最後の劇、ってコンセプトが薄くなっちゃうでしょ」
風「それに、夏凜が赤ん坊役やった方が絶対面白い」
夏凜「風、多分面白いってのが、一番の理由よね?」
風「いいじゃん、いいじゃんー」
風「赤ちゃん役なのは、あくまでも最初だけで、お話が進んでいくと成長していくからー」
風「パパとママに愛情持って育てられてきた子供が、
ある日その注がれてきた愛情の尊さに気付く、って心温まるストーリーだからー」
夏凜「……赤ちゃんのときだけ、子どもを呼んで――」
風「最初から最後まで、同じ人物が演じることにお話として意味があるのよー」
夏凜(ようするに、どうしても私に演じさせたいわけね、その赤ん坊役を)
夏凜(はー……。今回は、風が有終の美を飾れるかどうかが重要なんだから、私が折れるか)
夏凜(こんだけ私にやらせたがるってことは、風なりにその配役にちゃんとした理由があるんだろうし)
夏凜「わかったわよ、やるわ、赤ん坊役」
風「おっ! 本当!?」
夏凜「でも、赤ん坊のこととか、全然わかんないわよ、私」
夏凜「だから、赤ん坊のリアリティにはあんまり期待しないでね」
風「あー……。夏凜、赤ちゃんどころか子供全般苦手だもんね」
夏凜「別に、苦手ってほどじゃないけど……」
風「それは、いくらなんでも大嘘でしょうよ―」
風「いっつもあわあわして、園児に主導権握られて、弄ばれてるくせにー」
夏凜「い、いつもってほどじゃないわ!」
夏凜「それに、それと子供が苦手かどうかは、ちょっと違う話でしょっ!」
風「……うーん、しかし、そっかー」
風「夏凜には、ちょっとばかり赤ちゃん研修の必要があるわね」
夏凜「あ、赤ちゃん研修……?」
~☆
夏凜(ううー、寒い)
夏凜(朝からちょっと早く来過ぎたかもしれないわね)
夏凜(風曰く、そういうことなら、ちょうど私に会わせてみたい子がいる、
って園子が知り合いのちっちゃい子を紹介してくれるらしいけど……)
夏凜(いったいどんな子なのかしら)
園子「あ~、にぼっしー!」
園子「おはよう~」
夏凜「!」
夏凜「おはよう、園子」
夏凜「……その子が、例のお子さん?」
園子「うん、そうだよ~」
夏凜「へー……」
夏凜(年は、二才から三才ってところかしら)
園子「さ~、お姉ちゃんに自己紹介、しようね~」
?「んー」
?「みのわ、です!」
夏凜「みのわ……くん、か」
夏凜「よろしくね、みのわくん」
みのわ「よろしく!」
今日はここまで
全然書いてないし、途中の展開のプロットもふわふわしてて、しかもオチ考えてないけどとりあえず気分でスレ立て
この銀弟×夏凜の方向性、なんでみんなこぞって書かないのか不思議でしたが
実際に本気で書こうと思い立ってみると2~3歳児がよくわからなくて納得した
園子「それじゃあ、三人で何かしてあそぼっか~」
みのわ「や!」
園子「……あれ?」
みのわ「や!」
園子「あ、あれ~?」
夏凜「ねえ、園子」
夏凜「多分みのわくん、疲れてるんじゃない? ただの勘だけど」
園子「なるほど~」
園子「おうちからここまでちょっと距離あるもんね~」
みのわ「おんぶして!」
園子「いいよ~」
みのわ「や!」
園子「あ、あれ~?」
夏凜「……もしかして、私に、おんぶしろってこと?」
みのわ「ん!」
園子「おお~!」
園子「もうなつかれてるね~、にぼっしー」
夏凜「みたいね、なんでかよくわからないけれど」
夏凜(まさか、出会って早々おんぶすることになるとは思わなかったわ)
夏凜「ほら、乗りなさい、背中に」スッ
みのわ「ん」ヨジヨジ
夏凜「こ、こらっ! 髪を引っ張んな!」ワタワタ
みのわ「ごめんなさい」
夏凜「あっ、うん」
園子「準備できたみたいだし、行こうか~」
夏凜「そうね」
みのわ「でっぱ~つ!」ガッ!
夏凜「こら! 上でいきなり大きく動くんじゃない!」
みのわ「ごめんなさい」
夏凜「う、うん」
夏凜「こっちこそ、強く言ってごめんね」
みのわ「だいじょぶ」
テクテク
夏凜(なんか三才の子ってもっと聞き分けなさそうなイメージあったけど、
思ってたより素直で拍子抜け、って感じするわね)
園子「これから行くのはね~、私の、大事な大事なお友達が住んでた家なんだ~」テクテク
夏凜「ふーん」テクテク
夏凜(確かに、大きく動くなとは言ったけど、ここまで静かになるなんて――)テクテク
夏凜「…………」テクテク
園子「にぼっしー?」テクテク
夏凜「大丈夫、なんでもない」テクテク
夏凜(どうやらよだれ、いっぱい口から垂らして寝てるみたいね、みのわくん)
~☆
みのわ「zzzz」クカー
夏凜「この年の子をおんぶしたのは初めてだから、
家まで歩いてきただけなのに、なんだかドッと疲れたわ……」
園子「あれ~? にぼっしー、おんぶ自体はしたことあるの~?」
夏凜「勇者部の活動で、色々保育園でやるときにちょっとね」
園子「なるほど~」
みのわ「しっこ」
園子「あっ! 起きたんだ~」
園子「しっこ、行こうね~」
みのわ「ん」テクテク
テクテク
夏凜「……」
夏凜(トイレ、一応自分から行けるんだ、偉いわね)
夏凜(………で、三才児、ってどう話しかければいいのかしら?)
夏凜(えーと、共通の話題は――)
テクテク
みのわ「でたー!」
夏凜(な、なんでわざわざ私に報告するのよ)
夏凜「え、偉かったわねー」
みのわ「えへへ」ニコニコ
園子「それで、今度こそ、何しよっか~。三人で」
みのわ「ガラガラー!」
夏凜 園子「「…………ガラガラ?」」
~☆
夏凜「どうやらこのおもちゃみたいね、ガラガラ……」ガラガラ
みのわ「……」ニコニコ
園子「凄く喜んでくれてるね~、良かった良かった」
園子「途中みのわくんが泣き出しかけたときは、どうしようかと思ったけど~」
夏凜「本当にね」
夏凜(……まあ、私の赤ちゃん研修としては、
そういう泣いてる姿をこの目に収めておいた方がいいんでしょうけどね)
夏凜(そういう演技する場面があるらしいし)
夏凜(でも、ニコニコ笑ってくれてた方が、こっちも気楽でいいわ、やっぱり)
みのわ「うたってー」
夏凜「え?」ガラガラ
みのわ「うたってー」
夏凜「……え、ええ」
夏凜(ずいぶん急ね)
夏凜「キョロキョロリ 光るまつ毛~♪」
みのわ「ガラガラも~」
夏凜「あっ、うん」
夏凜「キョロキョロリ 光るまつ毛~♪」ガラガラ
みのわ「…………」ニコニコ
夏凜(これで、いいみたいね、どうやら)
夏凜(いやー、ここまで来るのに、予想以上に時間かかったわ)
園子「…………」ウルウル
夏凜(!?)
夏凜「ハ、ハートの形 ○△□~♪」
夏凜(なんで園子がちょっと涙目になってるのよっ!)
みのわ「…………」ニコニコ
~☆
園子「それでは~、にぼっしーによる演武の始まり始まり~」
夏凜(演武と言っても、両手に新聞紙の刀だけどね)
夏凜「…………」ブン! ブン! ブン!
みのわ「…………」ジー
夏凜「…………」ブン! ブン! ブン!
夏凜(な、なんだか一挙手一投足を、今更他人にじっと見られるのって、照れるわね……)
夏凜(全盛期ほど、綺麗な動きはまだ戻ってきてないだけに、余計そう思うのかも)
夏凜「…………」ブン! ブン! ブン!
夏凜「これで、終わりよ」
みのわ「すごーい!」パチパチ
みのわ「かっこいいー!」パチパチ
夏凜「そ、そう?」テレテレ
夏凜「だったら――」
園子「…………」グスッ
夏凜(だからなんで、園子は泣いてるのよ)
夏凜(さっきは涙目だったけど、今度は普通に泣いちゃってるじゃない)
~☆
夏凜「――それじゃ、だいぶ日も傾いてきたし、そろそろ帰るわ」
みのわ「?」
夏凜「帰る、ってことよ」
みのわ「かえる?」
夏凜「バイバイ、またね」
みのわ「っ!」
みのわ「やっ!!!!」
夏凜「や……って言われても、ねえ」
みのわ「やっ!」
みのわ「や、ダ!」ウルウル
園子「あわわ~……」
夏凜(そんなこと言われても、今から帰ったとして、
家ついた頃には日が完全に落ちちゃってる時間帯なのよね)
夏凜「や、って言われても、ダメ」
夏凜「私、帰るから」
みのわ「………………」グスッ
園子「あ……ああ……」オロオロ
みのわ「うええええええええええええっ!!!!!!」ビエエエエン!
夏凜「ちょ」ビクッ
みのわ「やあああああああ! いっちゃやあああああああ!!!!!!!」ビエエエエン!
夏凜(こ、子供の本気の叫びって、知ってたけど無茶苦茶でかいわねっ!)
園子「お~、よしよし~!」ヨシヨシ
みのわ「ああああああああああああああああ!!!!」ビエエエエン!
夏凜(困ったわね)
夏凜(えーと、泣き止ませるためには――)
夏凜「……」ガラガラ ガラガラ
みのわ「あああああああぁぁぁぁぁ!!」ビエエン!
夏凜「ハ、ハートの形、○△□~♪」ガラガラ
みのわ「ああああぁぁぁぁぁ!」
夏凜(あっヤバい、歌詞とんだわ)
夏凜「フ、フンフフ~ン♪」ガラガラ
みのわ「ああぁぁぁ……」
みのわ「…………」
夏凜「フンフンフ~ン♪」
夏凜(よ、よし、思惑通り泣き止んでくれたみたい)
夏凜(正直ここまでうまくいくとは、全く思ってなかったけど)
みのわ「……や」
みのわ「やダ」
夏凜(でも、まだ相当ムスっとした顔してるわね……)
夏凜(はー、仕方ない仕方ない)
夏凜「バカ」ギュッ
夏凜「今日帰るからって、明日来ない、とは言ってないでしょ」
みのわ「……あした?」
夏凜「また来る、って言ってるのよ」
みのわ「また……」
夏凜「う、うーん。どう説明したら……」
みのわ「……くる?」
夏凜「うん。来る。来るったら来るわ」
夏凜「必要なら、もううんざりするくらい来る」
夏凜「だから泣くんじゃないわよ、こんなことで」
みのわ「…………ん、がんばる」
夏凜「よしよし、偉いぞー」ヨシヨシ
みのわ「えへへ」グスッ
夏凜「あー、もう、鼻水垂れてるじゃない」
夏凜「えっと、ティッシュティッシュ……」
みのわ「きてね、また」
夏凜「はいはい」ゴシゴシ
夏凜「はい、チーンして」
みのわ「ん゛ん」チーン
夏凜「みのわくんは――」
夏凜「……」ハッ!
夏凜「ねえ、園子」
園子「ん~?」
夏凜「みのわくんの、みのわって、苗字?」
園子「うん、そうだよ~」
夏凜「そうよね。ありがと」
夏凜(だって、表札三ノ輪だったものね)
夏凜(よく考えたら当然だわ)
夏凜「みのわくん」
みのわ「ん?」
夏凜「私、三好夏凜」
みのわ「みよし……」
夏凜「夏凜。か、り、ん、よ」
みのわ「かりん」
夏凜「そう」
みのわ「かりん!」
夏凜「うん」
みのわ「かりん!」
夏凜「で、みのわくんのお名前は、なんて言うのかな?」
みのわ「みのわは、みのわだよ?」
夏凜「……いや、そうじゃなくて」
夏凜「みのわくんの三ノ輪は、私の三好と同じで――」
みのわ「?」
夏凜「……うーん、参ったわね、これ」
夏凜(園子に訊けば済む話だろうけど、
できることならこういうのは本人の口から聞きたいわ)
園子「…………」ウルウル
園子(ミノさん、私ね――)
~☆
東郷「ダメだ、ダメだ。子供の教育は厳しくせねばいかん」
友奈「もう、美森パパったら……」
東郷「子供の将来のためを思うなら、それしかなかろう」
東郷「教育こそが、親の義務なのだ」
友奈「でも……」
夏凜(家を仕事で空けがちながら、些か教育熱心すぎるパパと)
夏凜(子どもに甘くて、だけど意志のしっかりしてるママ)
夏凜(そして、私演じる、父親への反発が激しい、一人っ子の期待を一身に背負わされた子供)
夏凜(両親から愛情をもって、子供は育てられ、赤ちゃん、保育園、小学校低学年とすくすく育つ)
夏凜(そして、ある日、パパが施そうとする躾の厳しさ、家族の束縛から、私は逃れようとする)
夏凜(だけど、なんやかんやあって、
保育園のころ大好きだった保母さんに説得されて、パパと対話することを決める)
夏凜(二人は対話を経て、妥協点を見つけて、仲直りする)
夏凜(……まあ、王道な展開よね、多分)
夏凜(この役を私に風がやらせようとしたのって、私が勇者部に入部してから最初、頑なだったからかな)
夏凜(兄貴のこととか、家のこととか、友奈以外にわざわざ話したことないし、やっぱりあの第一印象せいよね)
夏凜(そういう諸々考えると、この子供に一番感情移入しながら演じられるの、勇者部の中では私ってことになる)
夏凜(……適役、か)
夏凜(今回はみのわくんも見に来ることになったらしいし、頑張らなくちゃ)
~☆
夏凜「うああああああああああっ!!!」ウェェェェン!
友奈「あー、よしよし、よしよしだよー」ヨシヨシ
夏凜「あああああああああ!!! ああああ!!! あああああ!!! 」ウェェェェン!
東郷「…………」ソワソワ
<ゲラゲラ ゲラゲラ
夏凜(なんか風の思惑通り無茶苦茶受けてるわね)
夏凜(そんなに、私が大泣きの演技してるのって、面白いのかしら?)
夏凜(……にしても、これだけ何度もレクリエーションしてると、園児たちの大抵にまあまあ見覚えあるわね)
夏凜(あそこでひときわ大笑いしてるの、私に毎度しつこくかけっこ挑んでくる奴じゃない)
夏凜(あっ。あそこにいるの、みのわくんだ)
夏凜(私の勇姿を、ちゃんと見に来てくれた、ってことか)
夏凜(……つうかなんか口パクしてるわね)
夏凜(『か』『っ』『こ』『い』『い』)
夏凜(『か』『り』『ん』)
夏凜(『が』『ん』『ば』『っ』『て』)
夏凜(呼び捨てなのは許すとして、流石にかっこよくはないでしょ、この姿)
夏凜「あああああああ!!!」ウェェェェン!
東郷「…………」オロオロ
友奈「お、おしめかなー? おしめなのかなー?」
夏凜「っ!?」
東郷「え……? 友奈……パパ?」
夏凜(どうしでこの序盤で、そんな無茶なアドリブ挟んでくるのよっ!?)
終わり
三才児難しすぎた 他には春信さんもそれっぽく書くの難しそうだけど勇者部との交流書きたい
これHTML化依頼してきます
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