カヲル「またね、アスカ」【短編、R18】 (37)
旧劇の量産機戦を見てたらときめきのようなものを覚えて書いたブツです。
エグくはないですがこの時点で嫌な予感がしたら読まない方がいいです(まごころ)
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朝から雲が天を覆っていたその日、碇シンジは眉間にしわを寄せて登校してきた。
彼にどうしたのかと声をかけようとした渚カヲルは一度思いとどまり、周囲を見回す。
予想通り、惣流・アスカ・ラングレーが不機嫌な顔をしていた。
「セカンドと何かあったのかい?」
普段通りの温厚な口調でカヲルはシンジへと問いかける。
彼の問い方が気に障ったらしいアスカが「どうせあたしは悪者よ」とぼやく。
アスカの言葉にムッとした顔をするシンジだが、ぽつぽつと語り出した。
「大したことじゃないよ。いつものことなんだから。
僕の料理の味が薄いってアスカがゴネてさ」
「料理?」
予想以上にちょっとしたことだったのに僅かに拍子抜けしつつも、カヲルはシンジの言葉を待つ。
「良く分かんないけど、昨日の夜からずーっと僕に難癖付けてきちゃってさ。
あんたのにくじゃがは砂糖も醤油も足りないのとか、あんたの人間性が現れた薄味ね、
なんて延々と文句言われてホント参るよ」
「それは大変だね。大丈夫だよ、シンジ君は薄味なんかじゃない。
いつまでも味わっていたくなる清々しい味だよ」
「カヲル君……」
シンジを取り巻く不機嫌な濁色のオーラが怪しげな薄桃色に中和されていくのを
鈴原トウジと相田ケンスケがはやし立てた。
「おっ渚がまたセンセを口説いとる」
「しかも変な口説き方で」
級友に弄られて表情を和らげたシンジを見て安堵したカヲルは、アスカへと目をやる。
アスカもこちら側を見ていたらしく、視線が合った。
「……」
一睨みしてすぐにアスカはカヲルから目を逸らしてしまったのだが。
「……やれやれ」
軽く息を吐いたカヲルは、アスカとあらためて会話すべきと結論付ける。
カヲルのその要望はあっさりと叶うこととなった。
―――
「雨が酷いね。君はちゃんと傘を持ってきているのかい?」
「……」
カヲルの問いに応えるものは無かった。
その空間にいたのはカヲルの他にはアスカしかおらず、アスカが応じなければ
誰ひとり答えないのだから当たり前だ。
そしてなぜここに二人でいるのかと言えば、理由は明確だった。
教室の掃除当番だったからである。
本来は他にも当番の人間がいたのだが、その人物が欠席だったために結果的に
二人きりとなってしまったのだった。
外は酷い天気であり、まだ遅い時間帯でもないのに真っ暗だ。
こんな時に好き好んで教室に残る人間などいない。
先ほどの問いかけの答えは分からないながらも、カヲルは言う。
「僕は折り畳み傘を持ってるから、帰りは送っていくよ」
「いい。あんたなんかにそんなことされたくない」
完全な拒絶。
他人を受け入れる気などまるでない。
「こんなに暗いんだ。君だって女の子なんだから気をつけた方がいい」
「小さいころから戦闘訓練受けてるあたしがそこらの変質者にやられるわけないじゃない。
男女の差なんてちっぽけなもんね」
ふん、と鼻を鳴らしたアスカはやる気なさげに箒で塵を掃いていた。
「君がそう言うのなら無理強いはしない。
でも、君一人の体じゃないってことは自覚した方がいいよ。みんなが心配する」
「みんなが心配……ね」
アスカはため息をついて、窓の外を見た。
それは何かにうんざりとしたような横顔だった。
その彼女に、かねてから語りたかったことを言うべくカヲルが口を開いた。
「セカンド」
「何よ。どうでもいい事なら話しかけないでほしいものね」
「僕にそんな態度を取るのは構わないよ。でも、シンジ君にはしないでほしい。
君の不調の原因は僕だろう? それなら」
青い瞳が鋭くつりあがった。
「なんであんたなんかがあたしの不調の原因になるのよ?
変な言いがかりやめて」
「僕の弐号機へのシンクロ率が君より高いから焦ってるんだろう。
そんなの僕の専用機体が来れば何の問題もないことだよ。所詮僕は」
「うっさい! 勝手に決め付けるな!」
アスカは声を張り上げる。
痛い部分を突かれた証拠のようだった。
「……ごめん」
それきり、カヲルは言葉を紡ぐのをやめる。
窓の外で雨が激しく降る音がして、どこかで雷が鳴るのが聞こえてきた。
自然環境の音を先に破ったのはアスカの方だった。
「別にあんたが原因とか、そういうもの以前の問題よ。
あいつ見てるとイライラすんのよ」
「シンジ君に、かい」
「それ以外誰が該当するっての? あいつはいつも人の顔色ばっかり見てる。
いい顔ばっかりしてくれるあんたといるのが一番気持ちいいんでしょうね」
彼にとって一番心地いい相手、と言われればそれは光栄な事だ。
だがカヲルにとって喜ばしいその事態はアスカにとっては歓迎しないものらしい。
「いい顔なんて言われても、そうしようと意識してるわけではないさ。
僕はただ彼と言葉を交わすのが楽しいだけ。……好きだからね」
好き。そうはっきりと言ったカヲルに、アスカは怪訝な目を向けた。
「呑気な男ね。
あんたじゃあいつの一番にはなれないわよ。だって、あいつも男だもん」
「……」
アスカの言葉にカヲルは柔和な笑みを失う。
攻撃的な表情でアスカは笑った。
「あんたは知らないわよね。あいつの家での顔なんて。
あいつはバレてないつもりなんだろうけど、時々あたしの下着を持っていくの」
「……」
「何に使うかなんてあんたも男なら見当つくでしょ。
あたしが何を言っても本質的にあいつはあたしを嫌うことなんてできないし、
あたしが誘えば簡単に乗ってくるでしょうね。
だからいいのよ、あたしは何を言っても」
「だからって彼を傷つけるのは容認できない。
それをやめてほしいと言っているんだけど」
「あいつが勝手に傷つくのよ。あたしは普通に思ったままに話して動くだけ」
「そうか、君はそんな考えなんだね」
なんだか酷く凶暴な感情が浮かび上がってくるのをカヲルは自覚していた。
アスカの弁によれば勝手気ままな行動で相手が傷ついてもいいということらしい。
それならば、彼女に対してはそう動いてしまってもいいんじゃないかと思えてくるのだ。
一際大きな雷がそう遠くない場所で落ちた。
その衝撃で電灯が一瞬消えて、もう一度点く。
それが合図だった。
「!?」
カヲルのあまりの素早さと力強さにアスカは何かを喋るよりも、抵抗するよりも早く、
彼女は窓同士の間の壁に押し付けられた。
いや、叩きつけられたとしか言いようのない衝撃に襲われた。
苦しげに顔を歪めるアスカを見て爽快感に似たものを覚えつつも、カヲルは無表情だった。
「いきなり何すんのよ!」
「思ったままに動いてみただけだよ。
痛かったのなら、それは君が勝手に痛がってるだけさ」
「な……」
先ほどのアスカ自身の言葉を使った返答をされ、彼女の反抗心は余計に強まった。
「ふん、あんたも暴力なんか振るうのね。意外よ。
あいつの一番になれない、って言われたのがそんなに悔しかった?」
煽り。嘲笑。彼女が示すのはそんな態度だ。
いつも通りとはいえ、どうもその時ばかりは神経に触った。
そしてそれを抑えなくてはならないと、不思議と思わなかった。
だから少年は。
「うぁっ!」
少女の頬に平手打ちを浴びせた。
叩かれてしばらくの間アスカは目を見開いて固まる。
赤い頬で呆然とした彼女を見つめながら、カヲルもまた驚愕する。
自分の中の衝動がそのまま出てしまったことへの驚きがあった。
だがそれだけではない。アスカを叩いた事で明確に、背筋にぞくぞくとした感覚が走っていたのだ。
この感覚がどういったものなのかを理解できないわけではない。
「……これは、不味いかな」
独り言のように呟くカヲルの声でアスカは我に返る。
「サイッテー! 女の顔を殴るなんてありえない!
ホモな上に女に暴力振るうなんてシンジが知ったらどう思うかしら……!」
怒りに身を震わせて睨みつけてくるアスカに対して、また先ほどの衝動が湧いてくる。
知識量に反し、カヲルの人生経験は乏しいものだった。
こうした衝動を自覚した事は多少はあった。しかし表に出したことなどない。
この少女が初の、カヲルの暴力をその身に受けた存在だった。
一体なぜこうなったのか。免罪符と思いこめるものを少女の口が与えていたからであろうか。
時が来るまでは人の器と人の掟の中に収まり生きることを義務付けられ、運命づけられ、
作られていた道から外れることなく穏やかに歩いていたというのに。
目の前にいるセカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーに対してだけは、
その魂の叫ぶままに動けるような感覚があった。
「―――」
アスカに手を出した瞬間の感覚がもう一度欲しくて、その思いのままに、魂の囁きのままに、
彼は再び腕を振るう。
「あっ!!」
再度叩かれ短い悲鳴を上げるアスカに、カヲルは口の端を上げて笑った。
「僕は男色家というわけじゃないよ。それは君に証明出来る」
「!」
それまでにアスカの見てきた渚カヲルの纏っていたものとは違う空気に、本能的な恐怖が
彼女の内側で沸き立つ。
ここにいてはいけない。
こいつから離れなくちゃ。
脳内に響く警鐘。
アスカは反射的に逃げ出そうとしたが、一瞬も持たない。
目にもとまらないような速さで襟元を掴まれ、突き飛ばされた。
彼女は受け身など取れず音を立てて近くの机ごと倒れる。
痛みに悶える暇もなくアスカの胸倉をカヲルが掴み、机の間の通路に放り投げるりように引っ張り出した。
普段のカヲルを見ている者には到底信じがたい光景だった。
アスカが声を上げることも出来ずにいるうちに、カヲルがマウントポジションを取る。
ほんの一瞬のうちにアスカは圧倒的に不利な体勢に持ち込まれていた。
彼女は警鐘どころでなく体に直接触れている危険を脱しようともがくが、
「あぐっ!!」
鳩尾に拳を突きこまれあっという間に無力化されて視界さえ揺らぐ。
激痛に体をびくつかせるアスカがなんとも愛らしく思えたカヲルは、彼女の頬に触れる。
「シンジ君が君のものを使うのも分かる気がするよ」
もっとも、シンジにこんな趣味は無いのだろうが。
顔を青ざめさせたアスカの姿を見ればどうしようもなく滾り、どこかに傷を刻みこんでしまいたいと
思わずにはいられなかった。
そのどこかとして彼の目に映ったのは、白い首筋だ。
内側で大量の血液が流れるそこは傷を作るには最適な場所に思えた。
表情こそ普段とさして変わらないというのに、赤い瞳をぎらつかせ自身の体に体重を
かけてくる存在は怪物を内に宿した造形物のようで、アスカの体が小刻みに震える。
彼女の恐怖の対象はその顔を寄せると、一気に首筋に文字通り齧りついた。
「ひっ、きゃ、―――っ」
悲鳴を上げる口まで塞がれ、痛みから逃れることも出来ない。
首に突きたてられた歯の感触は想像以上の痛みを少女に与える。
「ん、んぅ、んくぅっ」
肉が抉られる感触に涙が溢れ、その手足を引きつらせた。
ただ痛いだけではなく生物的で本能的な恐怖が彼女の身体の自由を奪っていた。
死ぬ。
殺される。
食べられる。
千切られる。
頭の中でその実感が浮かび、流れ、彼女本来の精神をガリガリと削り取る。
さきほどよりも酷く震えているアスカの肉体の感触も、体温も、匂いも、全てが心地よくて
その行為にカヲルは没頭してしまっていた。
理性と知性に造られた行動は、彼にとって美徳だった。
リリンが群として存在するための様式は、リリンに興味と関心を抱き
そのあり方に魅力を感じた彼にとっては愛すべきものであった。
彼はある時、自分とは何なのかと考えた事があった。
人の身体を持つ者。使徒の力を持つ者。
どこまでもニュートラルで曖昧な立ち位置の者。
しかし碇シンジ達との触れ合いを通じるうちに、少なくとも老人達の思う計画の実現までは
人の器を持つ者として、人のような存在であること、すなわち、理性と知性による行動を常に心がけていた。
それに反し、今の行動は人ではなくまさしく獣の行為で、平常の理知的な思想など欠片も残らない。
だがその内は喜悦に満ちている。
ぐちり、という音と共に、鉄の味がカヲルの口内に広がった。
それはアスカの血の味だ。
血液など正常な味覚の持ち主であればひたすら生臭い味のはずなのに、
それがどうしようもなく甘美なものに思えてその傷口に吸いつく。
常人を離れて整いすぎた風貌の怪物は、自らを解き放った少女の首を咀嚼して笑った。
「っふ、んんうーっ」
苦痛の声を上げるアスカの頭は完全に恐怖に塗りつぶされている。
ぼろぼろと涙を流し、温い液体が股ぐらから腿を濡らした自覚さえも無い。
死の恐怖がありながらも、痛みに襲われたままの生の感触がアスカの意識を刈り取らずにいて、
悪夢のような時間が続いた。
それが途絶えた瞬間には別の恐怖を覚えることとなる。
首から口を離したカヲルが、アスカの股間へと手を伸ばした。
痛みの恐怖に支配されていたアスカも、女としての本能からそちらの恐怖へと意識が向かった。
スカート越しに敏感な個所へ触れられた拒絶感に自由の利かない体でもがく。
無駄な抵抗に目を細めつつも、カヲルは触れた個所のある感触に気付いた。
「濡れてるね。……お漏らしするほど怖かったのかい?」
「!!」
アスカのスカート周囲には薄黄色の水たまりが出来ていた。
カヲルはアスカの体から下りて、ポケットの中の物を取り出す。
それは携帯電話だ。
無機質な音と共に、まばゆいフラッシュがアスカに注ぐ。
「な、に……」
「これは保険。弱みは握っておいた方がいいからさ」
「……最低すぎるわ……」
絶望感に呆然とするアスカの声にはもう勢いが無い。
いつもの気丈な彼女の姿は消え失せていた。
弱みを握られていなかったとしても、恐らくほとんど違いなど無かったのだろう。
カヲルは携帯を軽く操作してから携帯が破壊された際のために他の場所に写真を転送すると、
アスカに手を伸ばした。
それだけでびくりとアスカは震えて、その手から逃れようと後ずさる。
だがあっさりと腕を掴まれそれ以上の逃亡は不可能なものとなった。
「痛くしてごめんね。今度は気持ちよくしてあげるよ」
「ひっ!」
優しげな笑みを浮かべるカヲルの姿は普段通りのようでありながら、
その目には生々しく嫌悪感を喚起させる感情が渦を巻いていた。
「いや! 触らないで……!」
「さっき噛んだところは痛いだろう?
あんまり暴れるなら、また傷つけてしまうかもしれないな」
アスカのブラウスに手をかけ、ボタンを丁重に外していく。
急いてはいない手つきは優雅でありながらも、より追い詰めるものだった。
途中まではだけさせられ露わになった下着へと血の流れを思わせない白い指がかかり、
何のためらいもなく押し上げられた。
「お願いだからもうやめて!」
羞恥に顔を赤くして頭を振るアスカの行動は無駄そのものでしかなくて、
外気にむき出しにされた乳房に無遠慮にカヲルが触れる。
その感触にゾワリとした感覚がアスカの体を駆け抜けた。
触れている側にとってはそんなことはさして構うことでもなく、カヲルはアスカの肉体を
弄ぶようにやわやわと触った。
初めて触れる女性の胸の感触は心地よくて、なるほど世の中の男性がこれを愛でるのも納得だ、
と彼は内心一人ごちる。
弾力のある肌は真珠のように電灯の明かりを照り返していて、吸いつくような手触りだった。
胸の先端の桃色の乳輪の真ん中に鎮座した乳頭はとても愛らしく思えて、
その鮮やかな場所を優しく摘んだ。
「やっ!」
声を上げて体を跳ねさせた少女の乳首にさらに刺激を与える。
一般に性感帯とされる敏感な箇所というのは、受ける側の心情により
触れられた際の感覚に大きく差が開いてくるものだ。
快楽を受容できるだけの状態になくては与えられる刺激も苦痛になってしまう。
だが、こうした状態へと誘うのは互いへの愛情だけではない。
柔らかな乳房が軽く圧を受けながら下から上へと撫でられる。
擽られるような感触とマッサージをされるような感覚の両方を与える愛撫に
アスカの体は反応してしまっていた。
刺激を与えてくる相手には一切の愛情など覚えていない。
ひたすらに恐怖感しかない。
だというのに、真っ白い腕によってなされる愛撫は否応無く彼女の下腹部を熱くさせる。
本当は不快で堪らないはずなのに、心と体のバランスが崩れていた。
「いや……いやぁ、こんなの……」
ふるふると頭を振るって泣き出しそうな声音で弱々しく嘆くアスカにカヲルは笑いかけた。
「気持ちいいんだね。お漏らしするほど僕を恐れてるのに
こんな事されて感じるなんていやらしいな、君は」
「違う! そんなわけない!」
顔を赤くして否定しながらも、嘘を言っているのを自覚しているアスカは
失望感にまた泣き出しそうになっていた。
恐怖は時として快感に繋がる。
アドレナリンの分泌による興奮状態が発生し、ドーパミンの分泌を促進して
性感帯の神経を活性化させてしまうのだ。
屈辱と自己嫌悪、羞恥の入り混じるアスカの表情をじっくりと鑑賞したカヲルは、
少女の震える腿の間に手を入れた。
「やだ、やめて! やめてよ!」
「そんな頼まれ方をされても聞けないよ」
「っ……」
もっとも、どう言われようが聞き入れる気などさらさらなかった。
それはアスカも理解の上で、口で言うよりも行動で抵抗する。
「ホントにやめなさいよぉ……!」
両手を使ってカヲルの手を離そうとするが、満身の力を使ったつもりなのに押しのけることが出来ない。
それも相手は片腕しか使っていないというのに。
身長はそれほど変わらない。
身体の線がはっきりと出るプラグスーツを着た状態から見た身体は華奢。
だがそんなカヲルの見た目からは予測が出来なかったレベルで、歴然とした力の差があった。
「ふふ、男女の力の差なんてちっぽけなものじゃなかったのかい? セカンド」
普段誰にでも向けている温厚な笑みを浮かべたまま、
少年はもう片方の手でアスカの腕を掴んで捻り上げる。
「痛っ……たぁ!」
人ならぬ者は超常的な力を使わずとも人を圧倒することなど容易い。
外形は変わらずとも種としての壁は確実に開いていた。
どうあっても勝てない。
そう青い瞳が絶望感と無力感に淀んでいく。悲鳴を上げれば余計に酷いことをされそうで、
少女は息を詰めてしまった。
カヲルの侵攻はもう阻まれはしなくなっていた。
下着の隙間から指を差し込み、その場所を確かめるように触ると、
尿に濡れているだけではない感触があった。
そのぬるぬるとした体液の感触はアスカが快感を覚えていた事を伝えている。
その手触りが愉快で、粘液を塗りたくるように周囲にも手を動かす。何度も、緩やかに。
「う、ぁ……」
女の証を指の腹で撫でられていることに恐怖を覚えながらも、
触れられる感覚にアスカは物足りなさを覚えていた。
上下に動かされる度に、もっと上まで触ってほしいと思わずにいられなくて
何を考えてるのかと内心で葛藤する。
これがカヲルの狙いだった。
陰核への刺激は避けて執拗に膣口の周辺だけを触り続けて焦らしつつ、
彼はアスカの様子を観察していた。
クリトリスの近くへと指を滑らせる度に僅かに体をこわばらせ息を詰めるが、
予期していた刺激を与えられないままスルーされれば、どこかがっかりしたように脱力していた。
いつまでも弄られ、何度も期待するうちに白い下着の中のぬめりは酷くなり、
それも掻き回されてぐちゃぐちゃになっていく。
「すごく濡れてるよ。もっとしてほしいみたいだね」
「も、やだぁ……早く……」
「早く、なんだい?」
「……っ、出てって……もう、逆らわないから……」
「僕がいなくなったらどうするの?」
そう言いながら、彼は赤らんだ顔で押し黙るアスカの下着の中へと
指をもう一本追加してするりと滑らせる。
「自分でここを触って快感を得るのかな? こんな風にね」
ぐり、と最も過敏になっている場所を摘み上げた。
その瞬間電撃を流されたような感覚がアスカの中で弾ける。
「あっ、あぁ―――!!」
彼女は痛みのような叫びを上げ、頤をそらす。
悲鳴のようでありながらも、それは待ち望んでいた快感を与えられた歓喜の声だ。
ぐりぐりと陰核を押し潰すように圧力をかけては緩められる度にアスカは体を跳ねさせる。
「あっ、あっ、あっ、あっ、ああぁ!」
唾液を口から零しながら声を上げるアスカは耐える意識も吹き飛ばしてひたすらに快楽を享受する。
強すぎる快感により、また尿道から体液を吹き出してしまっていた。
「可愛い。そんなに気持ち良いんだ。嬉しいね、そんなに喜んでもらえると」
愛撫の手を止められてもビクビクと体をヒクつかせるその様からは完全に抵抗の力が
失せているのが明白で、もはや両手を戒める必要はなくなっていた。
アスカの下着から手を抜き去って両腕を自由にしたカヲルは、ズボンのチャックを開き
自らの半身を取り出して脱力したアスカの頭を掴み、それに近付けた。
「今度は僕も気持ち良くしてほしいな」
「……」
彩度の薄い肉体にはアンバランスなほどに赤いペニスを間近に寄せられ、
アスカは言葉を失うばかりだ。
初めて嗅ぐ生々しい青臭さが更に彼女から声を奪う。
「舐めて、セカンド」
「……噛み付いてやる」
「そんな事をされたら、君をお嫁に行けない体にしてしまうかもしれないよ」
「……」
今やとても冗談とは思えない言葉に戦慄して観念したアスカは口を開いた。
アスカとて思春期なのだから、それなりのものは見ている。
当然ある程度の知識は持っていた。
だが、それを決行するだけだというのに、どうしようもないほどに困惑していた。
同世代の性器など、同居人であるシンジのものすら生で見たことがない。
ましてや屹立しているとなれば、なおのことそうだ。
その上。
直に見るまではカヲルが通常の行動から結び付けないほど暴力的に動くのも、
肉体を弄ぶのも、自分への単なる嫌悪からのものだとどこかで思っていたが、
性的な興奮を明らかに示したものを見れば生々しい性欲からのものだと嫌でも理解せざるを得なかった。
それがアスカの困惑と動揺と恐れを掻き立てた。
しかしここから逃げる事などいずれにしても不可能で、強いられた行為を回避する事も
とっくに絶たれた道でしかないのだ。
裏スジというのが基本的に男の最も敏感な性感帯だと彼女は思い返す。
カリ首の下から続く筋張った箇所をそれだと認識して、意を決してアスカは赤いペニスに舌を這わせた。
出来る限り迅速にカヲルを満足させるために。
「そう、そこを重点的にね」
そう言われて安堵しつつ、アスカは愛撫を続ける。
ぴちゃぴちゃ、と隠微な音が控えめに上がる。
どくどくと流れる血液の循環を感じながら、体温の低そうな男の割にはここはやけに熱いんだ、
とどこか冷静に思えた矢先、その平穏は崩れ去る。
「セカンド、それはもういいから口を大きく開いて」
「……え」
気持ちいいのではなかったのか、と困惑しながらもアスカはそれに従う。
その瞬間、
「っ!?」
喉まで性器を押し込まれて目を剥いた。
「ん、ぐ」
「歯を立てたら許さないよ」
「ん、ううっ」
狭められた口からの呼吸は難しく、息苦しさにくぐもった声を漏らすアスカにカヲルの声が注ぐ。
「初めてなら仕方ないけど、下手だね君」
それは冷たいというより温度の無い声だ。
アスカの頭部を手で押さえ、彼は自らの手で彼女の頭を前後に動かした。
「っぐ!!」
喉の奥に硬い性器が当たった痛みにアスカが声を上げた。
その苦しげな声にも一切の温情も覚えないままカヲルの独り善がりな行為は続く。
「機械的に舐められても気持ち良くはないみたいだ。もっと必死に舐めてくれなきゃ」
「っ、―――!」
幸いにして、アスカの体温は高く口の中は熱い。弾力の強い舌もあって、
イラマチオをするには最適な環境だった。
ぬめる唾液と熱く柔らかな肉に覆われた場所に包まれているのは心地いい。
それに、道具のようにアスカの頭部を使うのは悪くないようにカヲルには思えた。
「んん、うっ、ふぅぅ」
苦悶の声と共にアスカの唾液が口から溢れる。
話に聞いたことのあるオナホールという性具を思い出しながら、それのように扱われている
自分を省みて湧き出した悲しみに涙が流れていた。
酸欠でアスカの意識が白んできた頃に、詰めていたような呼気と共に精液が吐き出される。
口の中に広がった苦味に、薄らいでいた意識が現実に引き戻された。
「っは、かはっ!」
「駄目だよ、ちゃんと飲まなきゃ」
カヲルの声にしまった、と思いながらも一度噎せてしまっては手遅れで、
アスカはだらりと口から精液を零してしまった。
咄嗟にカヲルの反応を伺ったアスカの眼差しは押し倒される以前のものとは
まるで違うものになっていた。
涙の伝う顔で脅えるアスカに、カヲルは柔らかに笑う。
「そんなに心配しなくても。少し脅かしすぎたかな?」
「……!」
その微笑みに似つかわしい優しい手つきで、彼はアスカを宥めるように撫でた。
恋人のように。親友のように。親のように。
飼い主のように。
甘く、柔らかに。
唾液に濡れているのに構わず、性器を服の中に収めてからカヲルは窓の外を眺めた。
「相変わらず酷い雨だ。早く帰らないとね」
そこに。アスカの視線の先に。
少女の帰路を心配していた時と何も変わらない少年の姿があった。
アスカの体は余計に固く縮こまってしまった。
「そんなところにいつまでも這いつくばってないで立ちなよ。手を貸そうか。
ああ、床の汚れはちゃんと雑巾で拭いたほうがいいね。
あと少しくらい遅くなっても大丈夫さ。帰りは僕が責任を持って送っていくから」
「……て、」
「どうしたんだい?」
女子生徒が見ていれば歓声を上げる極上の笑みを向けるカヲルに、アスカは叫んだ。
「帰って! 帰ってよ!!」
青い瞳からボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。
その愛らしい顔を歪めて、懇願するように続けた。
「あんただけで、帰って」
それに、きょとんとした表情をするカヲル。
「片付けは? それと、その傷の手当ても」
「あたしだけでやる。誰にもこの傷が出来た理由言わない。
だからお願い。もう、帰って……」
ふうん。とカヲルは呟き、アスカに背を向ける。
「それじゃ、任せたよ。帰りはちゃんと気をつけること。いいね?
君は女の子なんだから、自分は強いから平気だなんて油断しちゃ駄目だ」
自分の鞄を持って悠々と彼は歩き、教室の扉を閉めるときに言った。
「またね、アスカ。
家に帰ったらシンジ君とちゃんと仲良くするんだよ」
細められた赤い目に少女の姿が映る。
それはどこまでも小さなものだった。
たった一人だけになった教室で上がった泣き声は雨音に消され、
誰にも聞かれることはなかった。
おわり
このSSまとめへのコメント
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