猫♀「うちら、もう出会って三年やね」 (159)
男「お、おう……」
猫♀「……そろそろやない?」
男「……」
猫♀「そろそろ籍入れてもいいんやない?」
男「……」
猫♀「……なに黙っとんのけ……」
男「いや……だって俺、人間だし……」
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猫♀「関係ないッ! お互い愛し合ってれば種とか科、目なんか関係ないッ! そやろ?」
男「……」
猫♀「また黙る! なんやの? うちがこの家来た時の夜のこと覚えてるやろ!?」
男「……うん……」
猫♀「恥ずかしがるうちを無理やんこ布団の中に引きずりこんで! 体中まさぐって! あんときなんて言うたん?」
男「……『かわいいなコイツめ! うひー!!』って言いました……」
猫♀「そうやろ!? ほら見い! うちのこと愛しとる!」
男「だってあの時はまだお前、普通のネコサイズだったし……。今みたいに喋らなかったし……」
猫♀「なんや! アンタは今のうちのことを可愛くない言うんか!?」
男「……等身大だもん……。二足歩行だもん……」
猫♀「あー! 今の言葉は傷ついたわ! 乙女の心にグッサリ刺さったわ!」
男「……だって……」
猫♀「だってやない! 人は外見やなくて中身やろ? 違うんけ!?」
男「お前、人じゃないじゃん……」
猫♀「またそうやって人の揚げ足とる!!」
男「……」
猫♀「……」
男「……」
猫♀「……。確かにな……。確かにうちはアンタの赤ちゃんを産んであげられんかもしれん……」
男「あの、そういう話じゃないんすよ……」
猫♀「やけどな? うちはアンタのことを世界中のどのネコよりも愛しとるんや……。アンタがうちを愛しとるように……」
男「あの、だからその……」
猫♀「法律がなんや……。誰もうちらの愛を阻むことなんてできんのや……」
男「……」
猫♀「……籍をいれよう。確かに形だけのもんかもしれんけど、一つのけじめや。もううちはとっくにアンタと一生を添い遂げる覚悟はできとる」
男「あの、ちなみあと何年くらい生きる予定……?」
猫♀「あと70年は大丈夫や。なんやのアンタ? さっきはうちに全然気がないそぶりを見せといて、そんな先のことまで心配しとるんか? かわいいな、この! ///」クシャクシャ
男(な、70年……)ゲッソリ
***
2日後
猫♀「入れてきたよ~///」
男「何を?」
猫♀「籍///」
男「ファ!?」
猫♀「もうこれでうちら夫婦なんやなぁ~。なんか気恥ずかしいわ///」
男「待て待て待て! 俺は判を押した覚えはないぞ!!」
猫♀「そら、あんだけ酔っとったら無理もないわ///」
男「」
猫♀「ちゃんとお義父さんにも貰って来とるから大丈夫や。しっかしアンタもお義父さんも、お酒に弱いなぁ。やっぱり家族なんやなぁ///」
男「そ、そんなの無効だ! だいたい役所にお前が出しに行って許可が下りるわけ……」
猫♀「着ぐるみです言うたら『面白い奥さんやね』って笑いながら受理してくれたわ」
男「なんて適当な職員なんだ!!」
猫♀「まぁそんなカッカせんでもええやん。とりあえず日取り決めんと」
男「日取り?」
猫♀「分かっとるくせにぃ。式や! 結婚式! ///」ネコパンチ ネコパンチ
男「挙げるの!?」
猫♀「当たり前や! ///」
男「結婚にまだ一ミクロンも納得してないのにもう式の話!?」
猫♀「ジューンブライドって響きはええんやけど、日本はほら、梅雨でジメジメしとるやろ? やから4月かなぁ……。あ、でもあんまりポカポカしよったらうちの親戚、皆寝てまうわ」
男「……」
猫♀「でも寒いのもダメやしなぁ。となると秋か……。まだ暖かさが残ってるくらいがちょうどやな。さんまもおいしいし」
男「……あのさ、やっぱりはっきり言わせてもらう……」
猫♀「次は場所やけど、アンタなんか要望ある? ほら、うちあんまアンタの宗教とか知らんし」
男「……俺、人間の女の子が好きだ」
猫♀「はいはい、面白い面白い。でまぁ特に無ければうちんとこの様式でやらせてもらうわ」
男(マジで冗談だと思われてる……)
猫♀「浜辺でな、長老や皆の前で愛を誓い合ってチューするんや。ディープやないよ? なに想像してん、このスケベ! ///」ネコパンチ ネコパンチ
男(ヤベえ、これホントにヤベえ……)
猫♀「魚料理もズラッと並ぶんやよ。あ、うちのお父ちゃんな、七輪で焼くのがすごく上手いんよ。おいちゃんは釣り名人やし……」
男「え、ていうかでかいのってお前だけじゃないの?」
猫♀「うちの親戚はみんなうちくらいはあるよ? 弟と妹はまだ普通のネコサイズやけど」
男「怖ッ!!」
猫♀「まぁどこの浜でやるかはこれから決めていくとして、今日はおおまかにどういった式になるかのビジョンをやな……。あ、そうや! ウェディングドレスや! これも大事や!」
男「ネコの分際でウェディングドレスとか言いだしやがった……」
猫♀「これはまぁレンタルでいいかなぁ? あ、でもカップが10個ついとるプライダルインナーなんてあるかなぁ?」
男「ねーよ! お前にはユニクロの白いタートルネックがあるだろ。それで十分だよ」
猫♀「こんなん嫌やわ! いつもこんなんばっかしやん! ほんでジーンズ! 結婚式くらい綺麗なドレス着たいわ!」
男「お前が完全なネコ体型だから、わざわざ仕立て直してくれたいわばオーダーメードだぞ? こんなダボダボで短いジーンズ、他にねーよ」
猫♀「あ! 今アンタ、うちのこと短足やって暗に言うた!」
男(どっからどう見ても胴長短足だろうが)
猫♀「ええとあと……そう! ハネムーン! ……うち、いっぺんでいいから外国行ってみたいなぁ~?」チラリ
男「……」
猫♀「行きたいなぁ~?」スリスリ
男「……」
猫♀「こんなに可愛いうちが頼んどるんやけどなぁ~?」ゴロゴロ
男「……」
猫♀「……」スリスリ
男「……」
猫♀「よっしゃ、明日のアンタの朝ごはんにネズミ混ぜたるわ」
男「あーもう! 分かった分かった!」
猫♀「アンタ、大好き! ///」レロンレロン
男(うっわ、くっさ!!)ベチョベチョ
猫♀「シチリアの魚料理がおいしいらしいんよ。見てみ、今ネットで画像検索するから」カチャカチャカチャカチャ
猫♀「……」タンタンタンタンタン
猫♀「……」カチャカチャカチャカチャ
猫♀「……」タンタンタンタンタン
猫♀「なんやのこのキーボード! 打ちにくいわ!!」ポニュンポニュン
男(肉球だもんなぁ……)
猫♀「あ、間違えてフォルダーいっぱいあるとこ開いてもうた。どうすんのコレ?」
男「どれ?」
猫♀「ほら、コレよ。どうやって戻るん?」
男「……」
男「」サッ
猫♀「ちょっと待ちぃ!」パシッ
男「な、なに?」ドキドキ
猫♀「なんや、妙に慌てて消そうとして怪しいなぁ。やっぱ気になるからこのフォルダー開いてみて」
男「な、なんでもねえよ……」ドキドキ
猫♀「なんでもないなら開けるはずや。早う開きぃ」ジッ
男「うぅ……」カチカチッ
猫♀「あッ!! 人間の雌の裸の画像や!! そうか!! アンタそういう趣味か!!」
男「い、いたって健全な趣味だよォ……」
猫♀「うちが居りながら他の雌に鼻の下をのばしとったんやな!?」
男「だって……どうやってお前に興奮したらいいんだよ……」
猫♀「口答えするんか!」バリッ
男「痛ッ!!」
猫♀「アンタがそういう画像見るんやったらこっちにも考えがあるんやぞ! 田中さんとこのミー助と、白昼堂々日向ぼっこしてやる!」
男「ど、どうぞ……」
猫♀「ヤキモチ妬かんかい!!」バリッ
男「痛ッ! ってかどこにヤキモチ妬く要素があんだ!」
猫♀「ほ、ほんまに乙女心が分からん男や、アンタは」フシュウフシュウ
男「まさか飼い猫に嫉妬されて顔を引っかかれる日が来るとは……」
猫♀「飼い猫やない! もはや嫁や! 伴侶や! もしうちを捨てようもんならアンタを保健所に突き出すからな!」
男(どういうこと!?)
***
その夜
男「さーて、そろそろ寝るかな……」フワア
男「」
猫♀「何? うちのことジーッと見て……。うちの顔になんかついてる? ///」
男「な、何でもないです……(Yes/No枕置いてある……)」ビクビク
猫♀「ならさっさと布団に入りぃ。湯ざめするけん///」ポンポン
男「は、はい……」ビクビク スッ
猫♀「……///」
男「……」ビクビク
猫♀「……///」
男「……」ビクビク
猫♀「せ、せやけどあれやなぁ……。最近めっきり寒くなったなぁ……? ///」
男「……」ビクッ
猫♀「……ひ、人肌が恋しい季節やなぁ……? ///」チラリ
男「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」ブツブツ ブルブル
猫♀「……///」
男「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」ブツブツ ブルブル
猫♀「……温めて欲しいけ? ///」スススッ
男「……その気持ちだけで十分です……」ガタガタ
猫♀「そんなこと言うて……震えとるやん、アンタ……///」サワサワ
男「だ、大丈夫。寒くて震えてるわけじゃないから……」ガタガタ
猫♀「遠慮せんときッ! ほら、抱いたげるわ///」ギュッ
男「ど、どうも……(ディ〇ニーランドでグー〇ィーに抱かれた感覚に近いな……)」ブルブル
猫♀「ほら、あったかいやろ? ///」
男「う、うん……」ビクビク
猫♀「……アンタ、ええ匂いがするなぁ……///」スンスン
男(お前は獣臭いよ?)ビクビク
猫♀「……///」
男「……」ブルブル
猫♀「……///」
男「……」ブルブル
猫♀「……とりあえず……脱ごか? ///」
男(ウワアアアアアアアアア!!!!)
猫♀「とりあえず脱ごか。話はそれからや///」
男「……あの、寒いんで脱ぎたくないです……」
猫♀「大丈夫や。うちがもっとぬくくしたるけん///」モゾモゾ
男(嫌だあああああ!!!!)
猫♀「……ほーら、もううちは脱いだ。み、見たかったらチラッとだけ布団めくってもええよ? ///」
男「……結構だ……」
猫♀「なんやのアンタ、恥ずかしがり屋さんやな///」ナデナデ
男(誰が猫の体見てドキドキするかっての!!)
猫♀「まぁうちはいつでもOKや。アンタのタイミングで来てくれたらええわ///」
男「じゃ、じゃあお休み……」ビクビク
猫♀「誰が寝ていいって言ったんや? ///」ニッコリ
男「……グー……スピー……zzz」ダラダラ
猫♀「だ・れ・が! 寝ていいと? ///」ガクンガクン
男(うぅ……)シクシク
男「……あのさ、やっぱりこういうのは良くないと思うんだ……」
猫♀「なんやアンタ、据え膳を食わん言うんか?」
男「だって俺たち根本的に種が違うし……」
猫♀「そんなん言い訳にならんッ! それにアンタの目の前に据えられたのはただのご膳やない。熱々のさんまにおろしポン酢が乗っかった、極上もんや!」
男(さほど魅力的じゃねえな……)
猫♀「無理にとは言わんけど、無理してでもそれを食らうべきや、アンタは///」
男「どっちだよ」
猫♀「……///」
男「……」
猫♀「このままうちを生殺しにするん? ///」
男(……出来ることなら半殺しにしてやりたい……)
猫♀「……うちのこと、愛してないん? ///」
男「……」
猫♀「……」
男「……」
猫♀「……もうええ……」シュン モゾモゾ
男(た、助かった)ホッ
猫♀「今夜はもうええ……」プイッ
男(助かってなかった……)シクシク
***
翌日 12:30
男「あー、やっぱ職場の方が落ち着くな……」グイー
課長「家に小さい子どもとかいると特にそう感じるよな。っていうか君、結婚してたっけ?」
男「昨日結婚しました。式は秋ですけど」
課長「マジか。おめでとう」
男「全然めでたくないですよ。ハァー家に帰りたくねえ……」
課長「そ、そうか……。よく分からんけどお気の毒に……」
男「ですから課長、俺今日からバリバリ残業して社のため、そして何より自分のために身を粉にして働きますよ」
課長「立派な心がけだ。だが奥さんも大切にしろよ?」
男「ヤですよ」
課長「そ、そうか……。ま、まぁそれより飯にしよう! 腹が減った!」
男「……」
課長「……ん? もしかして君は今日から愛妻弁当か?」
男「愛は余計です」
課長「どんだけ奥さんのこと嫌いなんだ君!」
OL「先輩、奥さんの手作りなんですか?」
男「手っていうか前足かな……」パカッ
課長「なんかご飯がハート形に食い散らかされてるような気が……」
男「桜でんぶの原材料は白身魚っすからね。自分で作ってて我慢できなくなったんでしょう」
OL「ワイルドな奥さんですね」
男「ハァ……。なんでこんな奴の旦那になんなきゃいけないんだか……」
OL「先輩、それは言いすぎですよ」
男「じゃあ君、意地汚い犬と結婚しろって言われたらできる?」
OL「ひどいですよ! 奥さんを犬呼ばわりするなんて!」
男「似たようなもんだよ……」
課長「……」
課長「……でもね、君の奥さんはこうやって君のために早起きして作ってくれたんだよ?」
男「……」
課長「私だって弁当を作ってもらえるのがつい当たり前になってしまうときがある。でも実際毎朝早起きして作れって言われたら、なかなかできないもんだよなぁ……」
男「……」
課長「人の家庭はそれぞれだからとやかく言うつもりはないけど、少なくともそれは奥さんの愛が詰まった愛妻弁当であることには変わりないよ」
男「……すいません。俺が間違ってました……」
課長「うんうん」
男「俺、心を入れ替えてバリバリ残業します。社のため、そして自分のため!」
課長「それでもやっぱり家には帰んないんだ!?」
***
14:00
猫♀「掃除も洗濯も終わって暇やな……。いつもならここで昼寝スポットに出かけるとこやけど……」
猫♀「……もううちはあの人の奥さんやからな。あの人が喜ぶことをしたげんとあかんな……」
猫♀「……」
猫♀「……とりあえずうちが綺麗になるんが先決か」
***
イラッシャイマセー
猫♀「もともと可愛いんに、さらに可愛くなったらどないしょ? 仕事から帰って玄関開けたら鼻血ブーやわ」テクテク
猫♀「こら夜寝かしてくれんわ。どないしょ?」
猫♀「……あ、ちょいと店員さん、つけまつげってどこ?」
店員「つけまつげでしたらそちらの棚の……きゃあああああああ!!!!!」
猫♀「うわッ! どしたん? びっくりしたわ~」
店員「も、申し訳ございません……(ばばば化け物ッ!!)」ビクビク
猫♀「なんや不思議な店員さんやな。でも可愛らしいわアンタ。人間の中では凄い美人やわ」
店員「あ、ありがとうございます……」ビクビク
猫♀「あ、これがつけまつげか……。色々あってどれ買えばいいんか分からんなぁ……」ヒョイ
店員「どういった雰囲気にしたいかで変わってくるんですが……」
猫♀「ウインクしたときに鼻から血が飛び出るようなんにしたいんやけど。ディ〇ニーのロ〇ンフッドに出てくるマリ〇ン姫みたいのがええわ」
店員「でしたらこちらの長いのがよろしいかと」
猫♀「そやな。あんまりゴソッと生えてなくて気品のあるセクシーさやな」
店員「つけまつげ以外にお求めの商品はございますか?」
猫♀「ええとアイシャドーやろ? 口紅やろ? それから頬紅とかも欲しいわ。でも化粧なんかしたことないからどうすればええんか分からんのよ」
店員「かしこまりました。ではあそこのコーナーでお客様に合う化粧品をご一緒に見させていただきますね」
猫♀「助かるわー」
***
23:00
男「ただいまー……」
猫♀「お帰り! 遅かったやん!」
男「ああ、仕事が立て込んでて……ッて、ひいッ!! 何だそれお前ッ!?」
猫♀「あ、やっぱ分かる? どうや? 思ったことを素直に言うてみ? ///」
男「気ッ色悪ッ!!」
猫♀「ゴメン、よう聞こえんかった」バリッ
男「せ、セクシーです……」ビクビク
猫♀「せやろ? はい、ただいまのキス! ///」ンー
男「」
猫♀「んー///」シャキン
男「……ん、んー……」シクシク
猫♀「……///」ブッチュウウウウウウウウウウウ
男「」ジタバタ シクシク
猫♀「ぷはあッ! さ、お腹すいとるやろ? ご飯今温め直すからな///」トテトテトテ
男「うぅ……」オエエエエエ
***
猫♀「……///」チラッチラッ
男「……」モグモグ
猫♀「……///」チラッ パチッ パチッ
男「……」モグモグ ダラダラ
猫♀「……///」パチパチッ
男「……な、何なのさっきから……?」
猫♀「今のウインク……どうや? ///」
男「」
猫♀「ちょっとドキッとしたんやないけ? ///」
男「」
猫♀「ホントのとこ言うてみて? ちょっとドキッとしたやろ? ///」
男「……うん、したした。ドキッとした(棒)」モグモグ
猫♀「やっぱりそうか♪ あ、冷蔵庫にイクラあるから出したげるわ///」ガチャッ
男「うん」モグモグ
猫♀「……///」
男「……」モグモグ
猫♀「……もしかして今心臓バクバクしとらん? ///」
男「うん、してる。バクバクしてる(棒)」モグモグ
猫♀「思った通り♪ あ、そういえばカズノコもあるんやったわ///」ガチャッ
男「うん」モグモグ
猫♀「……///」パチッ パチッ
男「……」モグモグ
***
男「ふぅ食った食った……。ごちそうさん」
猫♀「お粗末さん。もう少しでお風呂沸くけん、テレビでも見よってな」
男「おう」
猫♀「ふんふんふーん♪」カチャカチャ キュッキュッ
男(今日はえらく上機嫌だな……)
***
カポーン
男(……アイツのことだ。きっと後から背中を流しに来たとか言って入ってくるだろう……)
男(つまり! 今俺がすべきことはチャッチャと頭と体を洗って湯船に浸かること!)
男(アイツが入ってくると同時に上がれば何も問題は……)
猫♀「背中流しに来たわ///」ガラガラッ
男「早ッ!」ビクッ
男「……」
猫♀「ちょ、ちょっと! あんまり体ばっかりジロジロ見んといてや! うちやって恥ずかしいんやから! ///」
男「見てねえよッ!!」
猫♀「はい、さっさとあっち向く! あ! でも鏡越しにジックリ見るのもダメやからな! これやから男って生き物はまったく! ///」
男(なんでコイツはこんなに自意識過剰なの?)
猫♀「このシャンプーハット被っとき! まずは頭からや///」スポンッ
猫♀「ちゃんと目を瞑っときよ? 目に入るけんね? ///」チュウウ
男(そうだ、眼を瞑るんだ! 脳内で裸の美女に変換するんだ!)
猫♀「痒いとこないかー? ///」シャコシャコシャコシャコ
男(お、想像で補えばコレは悪くないかも……。気持ちいいし……)
猫♀「え? 今のこの状況が嬉し恥ずかしでこそばゆいって? 何言うとんの、まったく!! ///」バシッ
男(あ、分かった。俺、コイツの見た目以前にこの中身にムカついてんだわ……)イラッ
ザー ゴシゴシゴシ
猫♀「よし、頭終わり。じゃあ背中流すな?」チュウチュウ ゴシゴシゴシゴシ
男「おう。背中だけ頼むわ」
猫♀「あ、当たり前や!! 前は自分でやりぃ!! ///」
男「あ、分かってるならいいんだ。すまんすまん」
猫♀「何期待しとんの、スケベ! 誰がそこまでするか! ///」ソー
男「何股間から洗おうとしてんだ」ペシッ
猫♀「ちッ! ///」
***
男「あー、やっぱ風呂はいいなぁ……。生き返る……」ザパーン
猫♀「ちょ、湯船が狭いからってどこ触ってんの! もう!! 好きにせえ! ///」
男(うるさいコイツが居なけりゃもっといいのに……)
猫♀「あ、そういえば明日土曜日やんな?」パシャパシャ
男「ああ。昨日はせっかくの代休を結婚式がどうのこうので潰されたからな。明日こそは昼まで寝ていたい」
猫♀「一応プランは2種類あるんよ。一つは朝まで布団の中で激しくフィーバーして、明日はお昼頃から一緒にお買い物にでも行くってやつや。もう一つは今夜のフィーバーは程々にしといて、朝から遊園地にでも出かけるってやつなんやけど、どっちがええ?」
男「そうだな、とりあえず今夜は何もせずにさっさと寝て、明日の昼頃からパチンコにでも行こうかな」
猫♀「それはうちのスケジュール帳には書いてないわ」
男「じゃあ書いておくといいぞ」
猫♀「嫌や! 今夜愛し合って明日はデート、これは決定事項や」
男「俺は動物と交尾する気なんか更々ないつってんだろ」
猫♀「なんで? もしかしてネコにはテクニックが無いとでも思っとんの?」
男「違えよ! 俺の倫理観だよ!」
猫♀「そんなもん捨ててまえ! 童貞と一緒に捨ててまえ!」
男「お前とヤるくらいなら死んだ方がマシだ」
猫♀「あ、そこまで言うんか!? 決めた! 今晩うちは無理やりにでもアンタを犯す!!」
男「と、とうとうレイプ宣言まで……」ビクッ
猫♀「ホントはアンタと同意の上でしたかったけど、これじゃいつまでたっても平行線や! ここいらで一線越える! 今日は寝かさん!! ///」
男「へッ! むざむざお前如きに犯されてたまるか! 雌が雄に力で勝てると思うな!!」
猫♀「アンタこそ猫の筋力を侮りすぎや。覚悟しときぃ! ///」
***
明け方
猫♀「良かったで……///」ポンポン
男「猫の筋力を侮り過ぎた……」シクシク
猫♀「ホントに良かったわ。これから毎晩やろうなぁ……? ///」ピトッ
男「ひぃッ! もう勘弁してくれッ!!」ビクッ
猫♀「何言うとんの、ホントは嬉しいくせに! あー、今夜も楽しみやわ///」
男「ま、毎晩は絶対に無理だッ! 10年……いや、せめて4年に一回のペースで頼むッ!!」ポロポロ
猫♀「オリンピックか! ダメダメ、却下や! アンタが休んでいいのは『コボちゃん』が休載する日だけや」
男「ほぼ休みなんかないじゃないか!」ポロポロ
猫♀「やからそう言うとるやないの」
男「嫌だああああああ!!」ウワアアアアアアアアアアア
猫♀「そ、そんなガチ泣きせんでも……」
男「いっぞのごど死んでやるううううううう!!!!!!! ああああああああああああ!!!!!!」バタバタ
猫♀「……」
男「ごんなの酷いよおおおおお!!!! 残酷だよおおおおおお!!!!!!」アアアアアアアアア
猫♀「……ハアー……。……分かった。確かにアンタの意見を全部無視するというのもアカンな……」
男「ホント?」ピタッ
猫♀「しゃーないわ。金曜の夜だけにしよう。その代りアンタはもっと積極的にうちを求めるんやぞ?」
男「あの、俺の意見は4年に一回なんすけど……」
猫♀「金曜は8時までには帰ってきぃよ?」
***
正午
猫♀「フワアア! よぉ寝た! あー、お腹空いた……」ゴロリ
猫♀「アンタもペコペコやろ? 昨日の残りもんやけどええよな?」チラリ
置手紙「さがさないでください」
猫♀「」
猫♀「あッ! 車も通帳も歯ブラシも無くなっとる!! 大変や! 家出してもうた!!」ダダダッ
猫♀「何で!? あの人、なんか悩みでもあったん?」オロオロ プルルルルルル
猫♀「……アカン。携帯もつながらんッ!!」
猫♀「と、とりあえず警察や! ほんであの人が行きそうな場所を捜さな……」アワアワ
TV「次のニュースです。今日午前7時頃、JR〇〇線の遮断機の故障がもとで列車と軽自動車が接触しました。自動車に乗っていた男性は死亡。列車の乗客の6名が軽傷を……」
猫♀「にゃッ!?」
***
霊安室
警察A「遺族との連絡はついたか?」
警察B「それがまだ……」
猫♀「アンタああああああああああああ!!!!!!!!!」バタバタバタバタ
警察A「ひッ!? 化け猫ッ!!」
猫♀「アンタああああああ!!!! うわあああああああ!!!!!」ダキッ
警察B「い、遺族の方ですか……?」
猫♀「そうや!! うッうッ……。なんでやあ! なんで死んでもうたんやあああ!!!!」ポロポロ
警察A「……ご愁傷様です……」
猫♀「……ウッ……ヒック……死に顔を見してもろうていいでしょうか……?」グスッ グスッ
警察B「どうぞ……」
猫♀「うぅ……ホントにまだ若いんに……なんで……」ポロポロ スッ
死体「」
猫♀「あ、人違いやったわ。よかった」パサッ
警察A「へ?」
猫♀「アンタああああ!!! どこやああああああああ!!!!!!!」バタバタ
警察B「」
警察A「」
***
19:00
ウィーン チーンチーン ジャラジャラジャラジャラ
男「今日はついてたな。儲けた儲けた」ピピピッ ガチャッ )))車
男「……さて、どこに行ったもんか……。実家で匿ってもらうか、それとも漫喫で身を潜めるか……」バタンッ
猫♀「家に帰るってのはどうなん?」
男「家に居たくないから出てきたんだぜ? 帰るわけ……ってぎゃああああああああああ!!!!!」
猫♀「……」
男「な、なんでここがッ!? 家から40キロ以上離れてんのにッ!!」
猫♀「……アンタの匂いを追ってあの自転車で来た……」
男「ああ! 俺のロードバイクッ! サドル低ッ!!」
猫♀「……」
男(せ、制裁を加える気か……?)ビクビク
猫♀「……」
男「あ、あの……」
猫♀「……」
猫♀「……」ジワア
男「……え?」
猫♀「……ごめんなさい……」ダキッ
男「……」
猫♀「……アンタの気持ちを考えんと、自分勝手なことして……ホントにごめんなさい……」ポロポロ
男「……」
猫♀「……うっ……うっ……」
猫♀「……ごめんなざいいいいいいいいい!! どうが帰ってぎでぐだざいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」ウワアアアアアアア
猫♀「どうがうぢを捨でんでぐだざいいいいいいいい!!!!!!!!!」ズルズル ボロボロボロボロ
男「……」
男「……」ギュッ
猫♀「!」
男「……俺も悪かった」
猫♀「う……」ポロポロ
男「動物だからって、お前の中身に全然目を向けなかった俺も悪かった。……いや、まぁ中身もそこそこに面倒臭いけど……」
猫♀「アンタ……」ポロポロ
猫♀「アンダああああああああ!!!!」ヒシッ アオオオオオオオオオオオオン
男「わ、分かった分かった! 分かったからもう泣き止めって……」ヨシヨシ
猫♀「……う、う゛ん゛……」ヒック ヒック
男「……腹減ったな。帰るか?」
猫♀「……その前に……いぎだいどごろがある……」ポロポロ ズルッズルッ
男「どこだ?」
猫♀「ホテル」
男「行かねえよッ!!!」
***
火曜日 13:00
猫♀「あれから少しはうちにも気を遣ってくれてるみたいやけど、まだ若干うちのこと警戒しとるな……」
猫♀「可愛く見せて悩殺してやりたいとこやけど、人間の化粧品は概ね不評やったもんなぁ……」ウーン
TV「……にゃーん♡ ご主人様の仰ることなら何でもしますにゃ♪」パチッ☆彡
TV「萌へ~!!!!!!!!!! ///////」ハァハァハァハァ
猫♀「……」ジーッ
猫♀「……やっぱ萌えに走るしかないな」メモメモ
猫♀「なんや、人間もネコミミとかしっぽに興奮するんけ……。なら問題はウチの顔やな」つ鏡
猫♀「顔は人間の方が萌えるんやろうなぁ……。とりあえずお面でも被るか」つ能面「小面」 スポッ
猫♀「……悪くないな///」
小面♀「……ほんで言葉遣いか……。うちは近畿と四国と北陸がゴッチャゴチャになりよるからなぁ……」
小面♀「……」
小面♀「……お、お帰りだニャン♡ ////」カアアアアアアア
小面♀「……あ、あかん! コレ思ったより恥ずかしいわ!! ///」
小面♀「……あと服もタートルネックとジーンズじゃ萌えんな。メイド服が欲しいところや」
小面♀「ちょっと奮発して買ってくるか」
***
ドン・キホーテ
小面♀「こ、このメイド服を買いたいニャン♡ ///」
店員「ありがとうございます、こちら一点でギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!」
小面♀「どうしたニャン?」
店員「ひいいいいいいい!!!!! 店長! 店長おおおおおおおおおお!!!!!!!!!」バタバタバタバタ
店長「どうしたの……ってひゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」ガクガクガクガク
小面♀「この服が欲しいニャン♡」
店長「きゅ、90%割引にしますッ!! だからッ!! だから命だけはッ!!」ガタガタガタガタ
小面♀「? とりあえずありがとうだニャン♡」ナゲキッス
店長「」ブクブクブクブク バタッ
小面♀「可愛すぎて悩殺しちゃったニャン」テヘッ
***
20:00
男「ただいま~」ガチャッ
小面♀「ご主人様、お帰りだニャン♡ ///」
男「」ガチャッ
小面♀「ど、どうしてドアを閉めるニャン?」ガチャッ
男「ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」バタバタバタバタ
小面♀「待ってほしいニャン!」サッ ガシッ
男「ひいいいいいいいいい!!!! 離せええええええ!!!!」ジタバタ
小面♀「せっかくの熱々オムライスが冷めてしまうニャン///」ズルズル
***
男「」ブルブルブルブル
小面♀「今からこのオムライスにおいしくなる魔法をかけてあげるニャン♡ ///」つケチャップ
男「」ビクビクビクビク
小面♀「帰命無量寿如来南無不可思議光法蔵菩薩因位時在世自在王仏所……」ブバッ ブバッ
男「」ジョババババ
小面♀「ハイ、あ~ん♡ ////」
男「」ブクブクブク パタッ
小面♀「だ、大丈夫ニャン?」
男「」
猫♀「お! 遂にこの人も悩殺できたわ!! やった!!」つ小面 スポッ
男「」
***
翌日
猫♀「昨日は散々叱られてもうたわ……」シュン
猫♀「妻が可愛くなるのが嬉しくないんか? 綺麗になりすぎて手元から離れていってしまいそうで怖いんか?」ウーン
猫♀「……」
猫♀「いっぺん離れてみるのも手やな……」
***
21:00
男「ただいまー」ガチャッ
シーン
男「……ん? いないのかー?」
男「……」
男(昨日のことで拗ねてんのかな……)
男「……飯も作ってねえな。仕方ない……カップ麺でも……」
置手紙「実家に帰ります」
男「……」
男「……ペットショップか?」
***
猫♀実家
猫父「おい、お前なんかあったんか?」
猫♀「別にー……」ゴロゴロ
猫母「別にってことないがいね。突然帰ってきて喧嘩でもしたんけ?」
猫弟「みぃみぃ♡」ノビー
猫妹「みゃーん♡」コロン
猫♀「なんもないって」
猫父「……」
猫父「……お父ちゃんな、お前が男くんの家に住むようになってからどうしとんのじゃろってずっと心配しとったんよ。彼は優しそうじゃけど、人間の中には猫を虐待するようなのもおるけんね」
猫♀「ぎゃ、虐待されたことはないよ? ……でも……」
猫父「夜のことか?」
猫♀「お父ちゃんッ! ///」
猫母「恥ずかしがる歳でもないがいね。うちのおチビちゃんたちはまだ理解しとらんやろうし」
猫妹「にーにー♡」
猫弟「にゃーご///」マエカガミ
猫♀「あ、コイツまだ喋れんのに理解しとる! ///」
猫父「……人間は年中発情期じゃけん、そりゃまあ仕方ない部分もあるかもしれん。じゃけんど嫌なときは嫌ってはっきり言うんがお互いが傷つかないために大切なんよ?」
猫母「そうやちゃ。愛し合う前に、それが本当に相手のためを想っての行為なんかを見直して……」
猫♀「違うんよ。その逆や。いくらうちが求めても応えてくれんのよ」
猫父「何、もうレスなんか?」
猫♀「化粧してもレイプしても萌えを極めても全然反応なしや!」
猫母「勃たないだけやないの?」
猫♀「そういうわけでもないねん! この前なんかうちに隠れて人間の雌のヌードなんか見よった!」
猫父「それは許せんのぉ」
猫母「なに言うとんのけ! アンタなんか昔、町中の雌を妊娠させたくせに」フン
猫父「こりゃまた一本取られた///」
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