男「俺はボールマスター、球技で俺に敵う奴はいない」(30)

俺は人呼んで“ボールマスター”

ボールを扱うことにかけては、天下一品さ。

こと球技で、俺に敵う奴はいない。

さて、どのぐらいスゴイのかというと──

野球をやれば──





男「ほいっ」ブンッ

カキィンッ!

実況『またまたホームラン! これで全打席ホームランであります!』



男「ほれっ」シュッ

ズドンッ!

実況『時速180kmで変幻自在の変化球を放つ!』

実況『こんなの誰も打てるわけがなァ~い!』

キャッチャー(しかも、不思議とキャッチしやすいんだよな……どうなってんだコレ)

サッカーをやれば──





男「よっと」ポスッ

キーパー「うわぁっ!?」

パサッ……

実況『ゴォ~~~~~ル! これで10得点目!』

実況『フィールド上のどこから蹴っても、ゴールに入れてしまう! まるで魔法です!』

バスケをやれば──





ズバババババッ!

敵選手A「は、はやっ……!」

敵選手B「全然止められないッ!」

男「ほらよっと」ピョンッ

ズドォン!

実況『凄まじいダンク! 敵チームは、ボールに触れることすらできません!』

ゴルフをやれば──





男「あらよっと」パシュッ

ヒューン…… コトン……



オォォォォ…… パチパチパチ……

観客A「またホールインワンだ! 信じられねえ!」

観客B「しかも、このホールは世界でも有数のロングホールだってのに……!」

バレーボールをやれば──





男「えいっ」

スパァンッ!



味方選手A「すげえ……どんなボールにも対応してスパイク決めちまうぜ」

味方選手B「もう……あいつ一人でいいんじゃないかな」

卓球をやれば──





男「よっ、ほっ、ほいっ」コッ コツッ コッ

バババババッ!



審判(残像が出るほどのフットワークで……どんなボールも拾ってる……!)

審判(このセットも相手は1点も取れずに終わるだろうな……)

ボウリングをやれば──





インタビュアー「パーフェクトでの優勝おめでとうございます」

男「ありがとう」

インタビュアー「ちなみに興味本位で質問させていただきますが……」

インタビュアー「今までで一番低いスコアは何点なのでしょうか?」

男「300点以外取ったことないよ」

インタビュアー「え!?」

テニスをやれば──





ズガァンッ!

敵プレイヤー「ぐはぁぁぁぁぁっ……!」

実況『相手選手が会場の外まで吹っ飛んだ!』

実況『これはもはやテニスではない! テニス以外のなにかといえるでしょう!』



男(ちょっとやりすぎたかな……)

素人にもかかわらず、トップアマやトッププロ相手に次々と勝利し続け──

俺は一躍スターとなった。





キャーキャー…… ワーワー……

女性ファン「キャ~、ステキ~!」

男性ファン「いつも応援してます!」





俺のファンには女性だけでなく、男性も多いのさ。

しかし、こうなると面白くないのは、球技の専門家(プロフェッショナル)たちだ。

当然恨みも買うことになる。





選手A「……待てよ」ザッ

男「──ん?」

選手A「こないだはよくもコケにしてくれたな!」

選手B「キミみたいな素人に大敗して、ボクたちは大恥をかかされてしまった……」

選手C「タダじゃおかねェぞ!」パキポキ…

男(この人たちは……こないだボロ負けさせちゃったプロの人たちか)

男(なんのスポーツかは忘れちゃったけど……)

男「悪いけど、キミたちの相手をしてるヒマはないんだよ」

男「それに、俺の“ボールマスター”としての名声は今や世界中に轟いている」

男「今さら俺に負けたところで、キミらの商品価値は下がりゃしないだろう」

男「相手が俺(ボールマスター)なら仕方ない、と思ってくれてるよ」

選手A「うるさいっ! 顔に泥を塗られたことには変わりないんだよ!」

選手A「みんな、やっちまえっ!」ダッ

選手B&C「おうっ!」

男「ふぅ、仕方ないな……」ポイッ

選手A(サッカーボール!?)

男「そらっ」

ズドォッ!

ドゴッ! バゴッ! ガスッ!

選手A「バ、バカな……!」ドサッ

選手B「サッカーボールを蹴り飛ばして、一度にボクたち三人を……」ドサッ

選手C「倒す……なんて……」ドサッ

男「俺にボールがある限り、俺を倒すことはできないよ」ポーンポーン





こんな闇討ちにあったことも一度や二度じゃない。

もちろん、全て撃退してきたけどね。



選手A「なんてことだ……三人がかりでやられちまうなんて!」

選手B「さすがはボールマスターといったところだね」

選手C「あんなシュート撃たれたら、ひとたまりもねェよ……」

選手A「いや、だったら……ボールを持ってない時を狙えばいいんだ!」

選手A「ボールがなきゃ、ボールマスターはただの人になる!」

選手A「今度こそ、あいつから受けた屈辱を晴らしてやるんだ!」

男「──おや、またキミたちか。こりないな」

選手A「ふん! 今日お前がボールを持ってないことは調査済みだ!」

選手B「つまり、武器を持ってないってことさ」

選手C「覚悟しやがれッ!」

男「よく調べてあるね。たしかに俺は今日、ボールを持っていない」

男「サッカーボールも、野球ボールも、テニスボールも、卓球ボールすらもない」

男「──だけど」

ドスッ! ズブッ! ザクッ!

選手A「ぐああああっ……!?」ドサッ

選手B「なにか、鋭いもので、ツボを突かれて……」ドサッ

選手C「か、体が……いうことを……」ドサッ



男「ペン先で、ツボを刺激させてもらったよ」

男「体にダメージはないが、半日ぐらいはシビれて動けないだろう」

男(持っててよかった、ボールペン!)



選手A「くそっ、まさかボールペンを武器にするとは……!」

選手B「ボールなら、なんでも使いこなせてしまうようだね……」

選手C「これじゃ……手の出しようがねェぜ!」

選手C「ボールペンぐらい、いつだって持ち歩いてるはずだろうしな」

選手A「いや……まだ手は残ってる!」

選手A「こうなったら、本当に絶対に丸腰の時を狙うんだ!」

選手B「そんな時あるのかい?」

選手A「ヤツは銭湯好きで、月に何度かは銭湯通いをしてるらしい。そこを狙うんだ!」

銭湯にて──

男「ふんふ~ん」

男「──ん? またキミたちか」

選手A「よう! 三度目の正直ってやつだ!」

選手B「男同士……裸のド突き合いといこうじゃないか」ニヤ…

選手C「ここにボールらしきものはない……お前の負けだ!」

男「……」

選手A「覚悟しろっ!」ダッ

選手B「しばらく病院で過ごしてもらうよ」ダッ

選手C「どりゃああああっ!」ダッ

男「やれやれ……参ったな」フゥ…

男「こういう形でファンを増やすことは、あまりしたくないんだけど──」

男「他にボールもないし、やるしかないか」サッ

選手A「なにわけの分からないことをいってる! いくぞぉっ!」ブオンッ

コリッ コリッ コリッ

選手A「あふぅん……」

選手B「おふぅぅんっ!」

選手C「うあ……っ」

男「ちょっといじくらせてもらったよ」

男「キミたちの“ゴールデンボール”をね」

男「……って聞いてないか」

選手A「あふっ……あふっ……」ビク…ビク…

選手B「おふぅぅぅぅんっ!」ビクビクッ

選手C「ああっ……あっ……ああっ……」プルプル…

……

……

……

実況『奇跡のスーパースター、“ボールマスター”!』

実況『本日はハンドボールに挑戦します!』



ワーワー…… キャーキャー……



ファンA「ファイト~!」

ファンB「今日もミラクルを見せてくれ!」

ファンC「がんばれ~!」

選手A「キャー、ステキー!」

選手B「しっかり~! 絶対勝ってね~!」

選手C「こっち向いて~!」



男「みんな、応援ありがとう!」





こうして、俺の男性ファンがまた三人誕生してしまった。







おわり

ありがとうございました

指摘の通りただ走るだけの競技などは苦手と思われます

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