ココノツ「おもちゃの指輪みたいだね。宝石の部分がキャンディ(でかい)なんだ……」
ヨウ「あー、ココノツは知らないか。父さんには懐かしいんだけどなぁ」
ココノツ「って、包装紙が英語だよコレ!?」
ヨウ「国内ではもう生産してないから。正式な商品名は『Ring Pop』だな」
ココノツ「わざわざ外国から取り寄せたの!? 何やってんだよ父さん!!」
ヨウ「そんなに怒るなよ。そりゃ儲けにはならないけど、お前のために仕入れたんだぞ」
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ココノツ「僕のため?」
ヨウ「ココノツ、お前さ。ほたるちゃんとはどうなの?」
ココノツ「ど、どうって……。またその話!? やだなぁ僕はそんな」 テレテレ
ヨウ「まあ、ジョークアイテムみたいなものだけど。彼女だったら食いつきがいいんじゃないか」
ココノツ「確かに……。僕と同じ年頃でも、普通に懐かしんでそうだよね」
ヨウ「それに指輪って意味深だろ? 上手く使えば少しはお近づきになれるかも知れないぞ」
ヨウ「そういうわけで、店番はよろしく☆」
ココノツ「どういうわけだよ!? 父さんは僕に仕事を押しつけたいだけだろ!!」
ヨウ「え~。でも俺が店に居たら、ほたるちゃんが来ても二人きりになれないぞ?」
ココノツ「べっ、別に僕は……。これをプレゼントして反応を見たいだなんて……」
ヨウ「ジュエルリングはまだ売り物にしなくていいから。それじゃ頼んだよ~」
ココノツ「ちょっと父さん!? くっ、逃げられた……」
ココノツ「まったくもう、父さんは……。不器用な父なりに、僕を応援してくれてるとか?」
ココノツ「いやいや! きっと駄菓子に興味を持たせて、この店を継がせるための方便だし!」
ココノツ「そもそも、こんなお菓子の指輪で女の子の気を引けるはずが……」
ココノツ「でも、ほたるさんならもしかして……。今日は店に来るかなぁ……」
ほたる「ごめんくださーい」
ココノツ「いきなり来たー!?」
ココノツ「いいいいらっしゃい、ほたるさん!! いい天気ですね!!」
ほたる「ココノツ君はお店番? いつも感心だわ、これならシカダ駄菓子屋は安泰――」
ココノツ「いや僕は継ぎませんから」
ほたる「またまた~」
ココノツ「ところで今日は何にします? よかったら、その、新しく仕入れた商品が……」
ほたる「こ、これは……!?」
ココノツ「あ、やっぱり知ってるんですね」
ほたる「当然じゃない!!」
ほたる「発売は昭和五十七年。当初は輸入商品だったけれども、やがて国内生産に――」
ほたる「しかしそれも平成初期に終了。現在はそもそもの輸入元からしか手に入らない」
ほたる「希少価値の高さもあり、女の子の憧れとなっている……。その名もジュエルリング!!」
ココノツ「知ってるなんてレベルじゃなかった」
ココノツ「憧れかぁ……。かわいいですもんね、これ」
ほたる「そうね。私も存在を知った幼い頃からずっと探してたの」
ココノツ「それって女の子じゃなくて好事家の視点じゃ……」
ほたる「まさかここで見つかるなんて。流石に侮れないわね。早速、買わせていただこうかしら」
ココノツ「あ、ごめんなさい。父さんがまだ品出しをしてないんですよ」
ほたる「何ですって……!?」
ほたる「くっ。い、いつになったらお店に並ぶのかしら」
ココノツ「いや、だから売り物としてでなく、その……」
ほたる「はっきりしてちょうだい!!」
ココノツ「ぼ、僕からほたるさんへの個人的なプレゼントってことでどうでしょうか……!!」
ほたる「えっ。いいの?」 パアア
ココノツ「ふ、深い意味はないんですが! お得意さまだし!!」
ほたる「ココノツ君……!!」 ガシッ
ココノツ「て、手を……! そこまで喜んでもらえるなんて」
ほたる「これって味の種類があったわよね。『Ring Pop』は四品種だったかしら」
ココノツ「」
ほたる「私に贈ってもらえる……?」 ウワメヅカイ
ココノツ「(貢がされる男のひとの気持ちがわかった気がする)」
ほたる「~♪」
ココノツ「ご機嫌ですね、ほたるさん……」
ほたる「これでやっと夢が適うんだもの」 ガサゴソ
ココノツ「そ、それは……!! 一本の指に幾つも指輪を嵌めるオシャレな感じの!!」
ほたる「ふっ、私の指では三個が限界みたいね……!!」
ココノツ「キャンディが原色なこともあって、下品な成金みたいだ……!!」
ほたる「そして、これを……。指に沿って流れるように舐める……!!」 レロオッ
ココノツ「色んな味が一度に楽しめるけど、指と口がベチャベチャだ……!!」
ほたる「ん……。正直、味が混ざって違いもよくわからないわ……!」
ココナツ「そ、そんな……!?」
ほたる「結局、憧れは憧れのままが一番ってことかしらね……」
ココノツ「あ、ティッシュ使います?」
ほたる「まだよ!! 私には遣り残したことがあるわ!!」 ガサゴソ
ココナツ「こ、今度は四本の指に一個ずつジュエルリングを嵌めた……!?」
ほたる「親指はサイズが合わなかったけど、キャンディが四種類だからむしろ好都合……!!」
ココノツ「これって……。指輪というよりメリケンサック……?」
ほたる「えっ」
ココノツ「キャンディが大きいから……。殴られると、すごく痛そうですよね」
ほたる「……」 ウズッ
ココノツ「(何か試したそうにしてる)」
トウ「ちはー、ココナツ居るー?」
ココノツ「いらっしゃい、豆くん」
トウ「暇だから遊びに来たぜ。今日も店番か?」
ほたる「こんにちは。遠藤くん」
トウ「ほたるさんも居たんだ。はは、お邪魔だったかな、俺」
ほたる「!! もう、私たちは別にそんなんじゃ……!」 ガッ
ココノツ「照れ隠しに見せかけて、ここぞとばかりにグーでいったぁ――!?」
トウ「ぐはっ!?」
ココノツ「と、豆くーん!?」
ワーワー
ココノツ「やれやれ、二人が帰ってようやく落ち着いた」
ココノツ「豆くんは災難だったな。あの後、ほたるさんも我に返って謝ってたし」
ココノツ「最初は喜んでくれてたけど……。成果もなくて、僕も悪いことをしちゃった気がするよ」
ココノツ「はぁ……。とりあえず、このジュエルリングは店に出すか」
サヤ「ココナツー、うちの馬鹿兄が来てないー?」
ココノツ「あ、サヤちゃん。豆くんならさっき帰ったよ」
サヤ「ちぇっ、行き違いか。ココナツは何やってんの?」
ココノツ「品出しだよ。ジュエルリングっていうんだけど、おもちゃの指輪みたいでしょ」
サヤ「お店の駄菓子? これかわいい!!」
ココノツ「かわいいかな? 僕にはもう凶器にしか見えない……」
サヤ「大きくてかわいい!! 色もきれいだし!!」
ココノツ「サヤちゃんに一個あげるよ。好きなの選んで」
ココノツ「まだ店には出してないから。僕からのプレゼント」
サヤ「いいの? じ、じゃあ赤いやつ!」
ココノツ「ここで食べてく?」
サヤ「んー、兄ちゃんを探さなきゃだし。持って帰るよ」
ココノツ「そっか」
サヤ「へへー本物の宝石みたい。ありがとココノツ、大切にするね!!」
おわり
>>17
× サヤ「へへー本物の宝石みたい。ありがとココノツ、大切にするね!!」
○ サヤ「へへー本物の宝石みたい。ありがとココナツ、大切にするね!!」
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